本発明は、半導体レーザダイオード、特に、活性層に窒化物半導体を使用して青色より長波長の可視光を出力する半導体レーザダイオードに関する。
従来、活性層にIII-V族窒化物半導体を使用した半導体レーザダイオードとして、例えば、特許文献1および特許文献2に記載された技術が知られている。
特許文献1に記載された窒化ガリウム系化合物半導体レーザダイオード素子の製造方法では、サファイア基板の(0001)面の表面に窒化ガリウム系化合物半導体をレーザ素子の構造に積層した後、サファイア基板を、(1_100)面(m面)又はm面に等価な5つの面のずれかの面方位で割ることにより半導体レーザダイオード素子の光共振面を作製する。
特許文献2に記載された窒化物系半導体レーザダイオードは、窒化物半導体層と、窒化物半導体層の(11_22)面上に形成され、活性層と活性層を挟む2つのクラッド層とを有する積層体と、を有し、窒化物半導体層の(11_22)面と垂直な共振器端面を有する。
特開平8−153931号公報
特開2006−128661号公報
ところで、上記特許文献1に記載された従来技術のようにサファイア基板上にIII-V族窒化物半導体(以下、「窒化物半導体」という。)をレーザ素子の構造に積層した場合、サファイア基板の六方晶と窒化物半導体(例えばGaN)の結晶とが30度位回転してしまうので、端面をへき開したときに、基板は割れるが、基板より上に成長させて形成した窒化物半導体層が割れにくい。つまり、この従来技術では、へき開で共振器端面を奇麗に形成するのが難しいという問題があった。
また、上記特許文献2に記載された従来技術では、InGaN等、Inを含む窒化物半導体よりなる活性層の格子定数と異なる基板(サファイア基板、SiC基板、n型GaN基板)を使っているので、活性層のInの組成比を大きくするのが難しい。このため、青色より長波長の可視光(例えば緑色)の発光が可能な半導体レーザダイオードの実現が難しいという問題があった。
さらに、半導体レーザダイオードの端面を形成するのに、反応性イオンエッチング(RIE)や化学的エッチングを用いる方法も用いられているが、窒化物半導体の結晶は科学的に非常に安定であり、後者の方法を用いて、活性層に窒化物半導体を使用した半導体レーザダイオードダイオードの端面形成する場合、実際には極めて困難である。また、前者の方法を用いてその半導体レーザダイオードの端面形成する場合、端面に与える損傷や平坦性の悪さが問題となる。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、へき開で共振器端面を奇麗に形成することができ、青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオードを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る半導体レーザダイオードは、ZnO単結晶基板を用いた半導体レーザダイオードであって、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層を有し、前記ZnO単結晶基板の基板面上にレーザ素子構造に積層して形成された半導体層を備え、共振器端面が(1_100)面或いはこのm面と等価な面になっていることを特徴とする。
本発明者により、次のことが実験的に分かった。
ZnO単結晶基板上に窒化物半導体層を堆積しても、その半導体層の結晶面は回転することなく、ZnO単結晶基板と同じ結晶面を持って成長する。
この態様によれば、ZnO単結晶基板の基板面上に、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層を有し、レーザ素子構造に積層した半導体層を形成しているので、ZnO単結晶基板の六方晶の上に半導体層の六方晶が回転することなく、綺麗に重なる。つまり、半導体層の結晶がZnO単結晶基板の結晶と揃って形成される。そして、共振器端面が(1_100)面或いはこのm面と等価な面になっているので、端面をへき開したときに、ZnO単結晶基板だけでなく、その上に成長させて形成した半導体層の端面も(1_100)面或いはこのm面と等価な面で綺麗に割れる。これにより、へき開で共振器端面を奇麗に形成することができ、共振器端面の形成が容易な半導体レーザダイオードを実現できる。
また、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層と格子定数の近いZnO単結晶基板を使うことで、Inの組成比の高い活性層を作れるので、青色より長波長の可視光(例えば緑色)の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
ここで、「m面と等価な面」は、(10_10)面又は(01_10)面又は(_1100)面又は(_1010)面又は(0_110)面のいずれかの面である。
また、本明細書では、結晶面を表すのに、数字の上にバーを付ける通常の表記の代わりに、数字の前に「_」の記号を付した表記を用いる。例えば、m面は(1_100)面、a面は(11_20)面、c面は(0001)面と表記する。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記基板面は(0001)面又はわずかに傾斜させた面であることを特徴とする。
この態様によれば、活性層であるInGaNの格子定数に近いことにより、相分離や貫通転位を抑制することに加えて、さらに非極性面を利用することにより、ピエゾ電界による影響を低減して、発光効率の高い青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記基板面はピエゾ電界の影響を受けにくい面方位の結晶面であることを特徴とする。
この態様によれば、活性層であるInGaNの格子定数に近いことにより、相分離や貫通転位を抑制することに加えて、さらに非極性面を利用することにより、ピエゾ電界による影響を低減して、発光効率の高い青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記ピエゾ電界の影響を受けにくい面方位の結晶面は、(11_20)面又はこのa面と等価な面又はa面を傾斜させた(11_22)面又は(11_22)面と等価な面のいずれかの面であることを特徴とする。
この態様によれば、ピエゾ電界による影響を低減して、発光効率の高い青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記半導体層のうち前記活性層を除く各層は、Al,Ga,Inの少なくとも一つを含む窒化物半導体層又はZn,Mg,Be,Cdの少なくとも一つを含む酸化物系化合物半導体層であることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記半導体層は、前記ZnO単結晶基板の基板面上に形成され、ZnO単結晶基板に格子整合されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成された下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に形成され、In x Ga 1-x N (0<x<1)からなる活性層と、前記活性層上に形成された上部クラッド層と、前記上部クラッド層上に形成されたコンタクト層とを備えることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記バッファ層と下部及び上部クラッド層は、前記ZnO単結晶基板および活性層の少なくとも一方に格子整合されていることを特徴とする。
この態様によれば、Inの組成比の高いInGaN活性層を作れるので、青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様に係る半導体レーザダイオードは、ZnO単結晶基板を用いた半導体レーザダイオードであって、前記ZnO単結晶基板の(0001)面又はこのc面から傾斜した面を基板面とし、この基板面上に非極性面の傾斜面を持つように窒化物半導体で台形状に形成された凸部と、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層を有し、前記凸部の傾斜面上にレーザ素子構造に積層して形成された半導体層とを備え、共振器端面が(1_100)面或いはこのm面と等価な面になっていることを特徴とする。
この態様によれば、ZnO単結晶基板の(0001)面又はこのc面から傾斜した面を基板面とし、この基板面上に非極性面の傾斜面を持つ台形状の凸部を化合物半導体で形成して、非極性面を形成している。そして、その非極性面に、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層を有し、レーザ素子構造に積層した半導体層を形成している。このため、ZnO単結晶基板の六方晶の上に、凸部の化合物半導体および半導体層の六方晶が回転することなく、綺麗に重なる。つまり、凸部の化合物半導体の結晶およびその非極性面上に形成される半導体層の結晶が、ZnO単結晶基板の結晶と揃って形成される。そして、共振器端面が(1_100)面或いはこのm面と等価な面になっているので、端面をへき開したときに、ZnO単結晶基板だけでなく、その上に成長させて形成した半導体層の端面も(1_100)面或いはこのm面と等価な面で綺麗に割れる。これにより、へき開で共振器端面を奇麗に形成することができ、共振器端面の形成が容易な半導体レーザダイオードを実現できる。
さらに、凸部の非極性面上にInを含む窒化物半導体で構成された活性層を有する半導体層を形成しているので、半導体層を簡単な方法で成長させることができ、製造コストを低減できると共に、発光効率の高い青色より長波長の可視光(例えば緑色)の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。なお、ZnO単結晶基板は、水熱合成法により3インチサイズの大口径バルク単結晶が実現されているので、この点でも、ZnO単結晶基板を用いた半導体レーザダイオードの低価格化を図れる。つまり、ZnO単結晶基板の(0001)面又はこのc面から傾斜した面を基板面としても、その基板面上に形成した非極性面を下地とした半導体の成長が可能になるので、安価な基板の使用による発光波長480nm以上、例えば緑色波長域で発光する光デバイスの普及が可能になる。
また、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層と格子定数の近いZnO単結晶基板を使うことで、Inの組成比の高い活性層を作れるので、青色より長波長の可視光(例えば緑色)の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。 本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記非極性面は(11_22)面又は(11_22)面と等価な面のいずれかの面であることを特徴とする。
この態様によれば、凸部の(11_22)面又は(11_22)面と等価な面のいずれかの面を下地とした半導体の成長が可能になるので、安価な基板の使用による発光波長480nm以上、例えば緑色波長域で発光する光デバイスの普及が可能になる。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記凸部は、前記ZnO単結晶基板の基板面に成長されたAl,Ga,Inの少なくとも一つを含む窒化物半導体又はZn,Mg,Be,Cdの少なくとも一つを含む酸化物系化合物半導体からなるバッファ層であることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記バッファ層は、前記ZnO単結晶基板および活性層の少なくとも一方に格子整合されていることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記半導体層のうち前記活性層を除く各層は、Al,Ga,Inの少なくとも一つを含む窒化物半導体層又はZn,Mg,Be,Cdの少なくとも一つを含む酸化物系化合物半導体層であることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記半導体層は、前記凸部の傾斜面上に形成された下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に形成された光ガイド層と、前記光ガイド層上に形成され、In x Ga 1-x N (0<x<1)からなる量子井戸構造の活性層と、前記活性層上に形成された光ガイド層と、前記光ガイド層上に形成された上部クラッド層と、前記上部クラッド層上に形成されたコンタクト層と、を備えることを特徴とする。 この態様によれば、Inの組成比の高いInGaN活性層を作れるので、青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記半導体層のうち前記活性層を除く層は、前記ZnO単結晶基板および活性層の少なくとも一方に格子整合されていることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記活性層において、インジウム(In)の組成比は、発光波長が480nm以上となるように設定されていることを特徴とする。
この態様によれば、青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記活性層を構成するIn x Ga 1-x N (0<x<1)のうち、Inの組成比は20%以上であることを特徴とする。
この態様によれば、青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記活性層と前記クラッド層との間に光ガイド層を有していることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る半導体レーザダイオードは、前記共振器端面のうちの光出射側端面には、窒化ガリウムよりも低い屈折率を有する2層以上の低反射膜が、前記光出射側端面からの屈折率が徐々に低くなるように形成されており、前記共振器端面のうちの光反射側端面には、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した誘電体多層膜からなる高反射膜が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、へき開で共振器端面を奇麗に形成することができ、青色より長波長の可視光(例えば緑色)の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現することができる。
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る半導体レーザダイオード10を、図1〜図3に基づいて説明する。図1は半導体レーザダイオード10の概略構成を示す斜視図であり、図2は半導体レーザダイオード10の共振器端面を示す説明図である。また、図3はZnO単結晶の面方位を表すユニットセル図である。
第1実施形態に係る半導体レーザダイオード10の特徴は、以下の構成にある。
・ ZnO単結晶基板12を用いている。
・ Inを含む窒化物半導体で構成された活性層15を有し、ZnO単結晶基板12の基板面上にレーザ素子構造に積層して形成された半導体層を備えている。
・ 共振器端面がm面である(1_100)面(図3参照)になっている。
ZnO単結晶基板12の基板面は、ピエゾ電界の影響を受けにくい面方位の結晶面である。本実施形態では、ピエゾ電界の影響を受けにくい面方位の結晶面を、a面である(11_20)面(図3参照)としている。
半導体レーザダイオード10は、図1に示すように、下部電極層11と、ZnO単結晶基板12と、バッファ層13と、格子整合系下部クラッド層14と、InGaN系活性層15と、格子整合系上部クラッド層16と、コンタクト層17と、パッシベーション膜18と、上部電極層19とを備えている。 半導体レーザダイオード10の半導体層は、ZnO単結晶基板12の基板面上に形成され、ZnO単結晶基板12に格子整合されたバッファ層13と、バッファ層13上に形成された下部クラッド層14と、下部クラッド層14上に形成され、In x Ga 1-x N (0<x<1)からなるInGaN系活性層15と、活性層15上に形成された上部クラッド層16と、上部クラッド層16上に形成されたコンタクト層17と、パッシベーション膜18とを備える。下部クラッド層14及び上部クラッド層はZnO単結晶基板12およびバッファ層13および活性層15の少なくとも一方に格子整合されている。
下部電極層11は、ZnO単結晶基板12の裏面側に配置されている。これは、ZnO単結晶基板12が導電性であるためである。このため、半導体レーザダイオード10は、縦型デバイスを構成することが可能となっている。
ZnO単結晶基板12の導電型はn型である。そのため、バッファ層13と下部クラッド層14はn型であり、上部クラッド層16、コンタクト層17はp型である。なお、バッファ層13は必ずしも無くても良い。また、ZnO単結晶基板12の単位格子cに対応する格子定数(=5.1955Å)は、窒化ガリウムGaNの単位格子cに対応する格子定数(=5.186Å)と窒化インジウムInNの単位格子cに対応する格子定数(=5.76Å)との間の値を有しており、In組成20%程度の窒化ガリウムインジウムInGaNの単位格子cに対応する格子定数と非常に近い値を有している。
バッファ層13は、Zn,Mg,Be,Cdの少なくとも一つを含む酸化物系化合物半導体層(酸化物)で構成されている。バッファ層13は、ZnO単結晶基板12と格子整合を行うために設けられた層であり、InGaN系活性層15の格子定数に等しい格子定数或いはそれより小さい格子定数を有するように設定されている。
また、下部クラッド層14と、上部クラッド層16と、コンタクト層17とは、Al,Ga,Inの少なくとも一つを含む窒化物半導体層(窒化物)で構成されている。
また、パッシベーション膜18は、SiO2やZrO2などの絶縁体層で構成されている。
格子整合系下部クラッド層14は、InGaN系活性層15の格子定数に等しい格子定数或いはそれよりも小さい格子定数を有するように格子整合されるので、コアとして機能するnGaN系活性層15よりも屈折率が小さく、活性層15内に光を安定に閉じ込めておく役割を果たしている。
InGaN系活性層15は、格子整合系下部クラッド層14および格子整合系上部クラッド層16に挟まれたダブルヘテロ接合構造をとっており、外部電極により順方向に電圧がかけられると、下部クラッド層14から電子が注入され、上部クラッド層16から正孔が注入される。この結果、InGaN系活性層15は、反転分布の状態となり、誘導放射が起こることになる。さらにInGaN系活性層15の両端面は、図2に示すように、光出射側端面21と光反射側端面22とを有する共振器構造となっており、誘導放射を繰り返すうちに光が増幅され、レーザ光として外部に放射される。そして、反射ループが平衡状態に至り、レーザ光が連続発振状態に至ることとなる。
格子整合系上部クラッド層16は、活性層15の格子定数に等しいに格子定数或いはそれよりも小さい格子定数を有するように格子制御されるので、下部クラッド層14と同様に、コアとして機能する活性層15よりも屈折率が小さく、活性層15内に光を安定に閉じ込めておく役割を果たしている。
コンタクト層17は、上部電極層19とオーム性接触を実現するための層である。パッシベーション膜18は、保護膜として機能している。上部電極層19は、外部からの電源が供給される端子として機能している。 図2に示すように、半導体レーザダイオード10において、共振器端面のうちの光出射側端面21には、窒化ガリウムよりも低い屈折率を有する2層以上の低反射膜23が、光出射側端面21からの屈折率が徐々に低くなるように形成されている。また、共振器端面のうちの光反射側端面22には、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した誘電体多層膜からなる高反射膜24が形成されている。
誘電体多層膜からなる高反射膜24において、低屈折率層に用いる低屈折率材料と、高屈折率層に用いる高屈折率材料の組み合わせは、例えば以下に示す通りである。なお、括弧内の数字は屈折率を表す。
・低屈折率材料としてSiO2(1.5)を用い、高屈折率材料としてTiO2(2.5)を用いる。
・低屈折率材料としてSiO2 (1.5)を用い、高屈折率材料としてZrO2(2.3)を用いる。
・低屈折率材料としてAl2O3(1.7)を用い、高屈折率材料としてZrO2 (2.3)を用いる。
・低屈折率材料としてAl2O3 (1.7)を用い、高屈折率材料としてTiO2 (2.5)を用いる。
上記構成を有する半導体レーザダイオード10は、以下の工程により製造される。
(工程1)まず、(11_20)面(a面)が基板面(表面)となっているZnO単結晶基板12を用意する。
(工程2)次に、ZnO単結晶基板12の表面平坦化処理を行う。
具体的には、大気中で熱処理(例えば、1100℃で2時間程度)を行い、原子状のステップ・テラス構造を形成する。酸化ジルコニアや酸化亜鉛などの無機材質平板で挟んだ状態で行うのが好ましい。
(工程3)次に、成長チャンバー内で大気圧下または減圧下でサーマルクリーニング処理を行う。
具体的には、真空中、700〜750℃の温度で30〜60分加熱し、有機物などを除去する。
(工程4)次に、バッファ層13としてAlGaInN層を用いる場合には窒化処理を行う。
具体的には、窒素プラズマガンによって基板温度500℃で30〜60分、窒素ラジカルを供
給し、ZnO単結晶基板12の表面の酸素を窒素で置換して上面に堆積させる窒化物の結晶状態を良好とする。
一方、バッファ層13として、ZnMgBeCdO層を用いる場合には酸化処理を行う。
具体的には、酸素プラズマガンによって基板温度500℃で30〜60分、酸素ラジカルを供給し、ZnO単結晶基板12の表面を酸素にして上面に堆積させる酸化物の結晶状態を良好とする。
(工程5)次に、バッファ層13の形成処理を行う。
ここで、バッファ層13形成の際の成長温度は、750℃未満とする。
具体的には、III-V族窒化物半導体を形成する場合には、例えば、V族原料を窒素ラジカルとして供給できるRFラジカルセルを有するRFMBE(radio-frequency molecular beam epitaxy)法によりAlInNを堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、
プラズマ電力P=300〜500W、窒素ガス(N2)流量1.0〜5.0sccm(standard cc/mIn)とする。III族原料としては、高純度のAlおよびIn金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
或いは、RFMBE法によりInGaNを堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、窒素ガス(N2)流量1.0〜5.0sccmとする。III族原料としては、高純度のInおよびGa金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
または、RFMBE法によりAlGaInNを堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg =400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、窒素ガス(N2)流量1.0〜5.0sccmとする。III族原料としては、高純度のAl、GaおよびIn金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
または、II-VI族酸化物半導体を形成する場合には、例えば、RFMBE法によりZnOを堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、酸素ガス(O2)流量1.0〜5.0sccmとする。II族原料としては、高純度のZn金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
或いは、RFMBE法によりZnCdOを堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、酸素ガス(O2)流量1.0〜5.0sccmとする。II族原料としては、高純度のZnおよびCd金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
或いは、RFMBE法によりZnMgCdOを堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、酸素ガス(O2)流量1.0〜5.0sccmとする。II族原料としては、高純度のZn、MgおよびCd金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
或いは、RFMBE法によりZnBeMgCdOを堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、酸素ガス(O2)流量1.0〜5.0sccmとする。II族原料としては、高純度のZn、Be、MgおよびCd金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
(工程6)次に、下部クラッド層14を形成する。
ここでは、下部クラッド層14形成の際の成長温度は、750℃未満とする。
具体的には、例えば、RFMBE法、或いは、V族原料としてアンモニア(NH3)を用いるGSMBE(Gas source molecular beam epitaxy)法によりAlGaInNまたはAlInNまたはInGaNを堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、窒素ガス(N2)流量1.0〜5.0sccmとする。また、GSMBE法ではTg=400〜750℃、アンモニアガス(NH3)流量を50sccmとする。III族原料は高純度な金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
また、例えば、RFMBE法、或いは、GSMBE法によりZnMgBeCdOまたはZnMgCdOまたはZnCdOを堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、酸素ガス(O2)流量1.0〜5.0sccmとする。II族原料は高純度な金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
(工程7)次に、InGaN系活性層15を形成する。
この場合において、活性層15の成長温度は、750℃未満とする。
具体的には、例えば、RFMBE法或いはGSMBE法により、InGaN井戸層/InGaN障壁層またはInGaN井戸層/AlInN障壁層を堆積する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、窒素ガス(N2)流量1.0〜5.0sccmとする。
一方、GSMBE法ではTg=400〜750℃、アンモニアガス(NH3)流量を50sccmとする。III族原料は高純度な金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。III族原料は高純度な金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
(工程8)次に、格子整合系上部クラッド層16を形成する。
この場合において、上部クラッド層16形成の際の成長温度は、750℃未満する。
具体的には、例えば、RFMBE法、或いは、GSMBE法によりAlGaInNまたはAlInNまたはInGaNを堆積して上部クラッド層16を形成する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、窒素ガス(N2)流量1.0〜5.0sccmとする。一方、GSMBE法ではTg=400〜750℃、アンモニアガス(NH3)流量を50sccmとする。III族原料は高純度な金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。III族原料は高純度な金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
(工程9)次に、コンタクト層17を形成する。
この場合において、コンタクト層17形成の際の成長温度は、750℃未満とする。
具体的には、例えば、RFMBE法或いはGSMBE法により、GaNまたはInGaNを堆積してコンタクト層17を形成する。この場合の条件としては、成長温度Tg=400〜600℃、プラズマ電力P=300〜500W、窒素ガス(N2)流量1.0〜5.0sccmとする。III族原料は高純度な金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。
工程1〜工程9において、n型ドーパントとしてはシリコンSi、p型ドーパントとしては、マグネシウムMg、ベリリウムBeや、マグネシウムMgとシリコンSiの(コドープ)などを用いる。
以上の工程1〜工程9により青色より長波長の可視光を出力する半導体レーザダイオード10用のエピタキシャルウェハが製造される。
(工程10)次に、上述した半導体レーザダイオード用のエピタキシャルウェハの裏面側に下部電極層11を形成する。ここで、ZnO単結晶基板12はn型導電性を有する場合を考える。
具体的には、フォトリソグラフィーにより電極パターンを形成し、抵抗加熱、EB(電子ビーム)或いはスパッタ法により電極金属を蒸着させた後、シンタリング(焼結)処理により、例えば、Ti/Al或いはTi/Pt/Au電極をn型下部電極層11として形成する。この場合、形成されたn型の下部電極層11は、ZnO単結晶基板12に対してオーム性接触することとなる。
なお、下部電極を形成する前に、ZnO単結晶基板12をCMP(機械化学研磨)処理により薄くしておくのが好ましい。
(工程11)次に、リッジ構造を形成する。
リッジ構造は、半導体レーザダイオードの構造の一種で、光導波路での光の損失を小さくできる実屈折率導波路構造を実現できる。比較的単純な構造ではあるが、レーザ光の発振状態を安定に保つためには加工技術の精密制御が必要となる。具体的には、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング技術によりリッジ構造を形成する。
(工程12)次に、パッシベーション膜18を形成する。
パッシベーション膜18は、保護層として機能しており、SiO2、ZrO2をPCVD(Plasma
ChemicAl Vapor DepoSition )法により堆積させて形成する。
(工程13)次に、上部電極19を形成する。ここで、コンタクト層17がp型伝導性を有する場合を考える。
具体的には、フォトリソグラフィーにより電極パターンを形成し、パッシベーション膜18を除去した後、抵抗加熱、EB(電子ビーム)或いはスパッタ法により電極金属を蒸着させた後、シンタリング(焼結)処理により、例えば、Ni/Au或いはPd/Pt/Au電極をp型の上部電極層19として形成する。この場合に、形成されたp型の上部電極層19は、p型のコンタクト層17に対してオーム性接触することとなる。
(工程14)次に、半導体レーザダイオード10の共振器端面を形成する。
この半導体レーザダイオード10では、共振器端面がm面である(1_100)面になっている。このため、ZnO単結晶基板12をm面である(1_100)面で割ると、ZnO単結晶基板12だけでなく、この基板面上に形成されたバッファ層13、下部クラッド層14、活性層15、上部クラッド層16、コンタクト層17、およびパッシベーション膜18の各層もm面で割れ、半導体レーザダイオード10の共振器端面がへき開で奇麗に形成される。
(工程15)次に、形成された共振器端面の光出射側端面21および光反射側端面22に低反射膜23および高反射膜24をそれぞれ形成する。
これにより、青色より長波長の可視光を出力する半導体レーザダイオードの製造が完了する。 以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○ZnO単結晶基板12上に、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層15を有し、レーザ素子構造に積層した半導体層を形成しているので、ZnO単結晶基板12の六方晶の上に半導体層の六方晶が回転することなく、綺麗に重なる。つまり、半導体層の結晶がZnO単結晶基板12の結晶と揃って形成される。そして、共振器端面が(1_100)面なっているので、端面をへき開したときに、ZnO単結晶基板12だけでなく、その上に成長させて形成した半導体層の端面も(1_100)面で綺麗に割れる。これにより、へき開で共振器端面を奇麗に形成することができ、共振器端面の形成が容易な半導体レーザダイオード10を実現できる。
また、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層15と格子定数の近いZnO単結晶基板を使うことで、Inの組成比の高い活性層を作れるので、青色より長波長の可視光(例えば緑色)の発光が可能な半導体レーザダイオード10を実現できる。
従って、へき開で共振器端面を奇麗に形成することができ、青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオード10を実現できる。
○ZnO単結晶基板12の基板面を、ピエゾ電界の影響を受けにくい面方位の結晶面である(11_20)面(a面)としているので、ピエゾ電界による影響を低減して、発光効率の高い青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオード10を実現できる。
○In x Ga 1-x N (0<x<1)からなるInGaN活性層15と格子定数の近いZnO単結晶基板12を使うことで、Inの組成比の高いInGaN活性層15を作れるので、青色より長波長の可視光の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
○導電性を有するZnO単結晶基板12を使うことで、ZnO単結晶基板12の裏面側に下部電極11を形成することができるので、縦型の半導体レーザダイオードを構成できる。
○バッファ層13として格子整合材料を堆積させることにより、ZnO単結晶基板12の結晶情報(面方位、格子定数など)を格子整合系下部クラッド層14や活性層15に伝達し、均一なIn組成を有するInGaN活性層15を作れる。
○格子整合系下部クラッド層14として格子整合材料を堆積させることにより、ZnO単結晶基板12の結晶情報を活性層15に伝達し、均一なIn組成を有するInGaN活性層15を作れる。
○In x Ga 1-xN (0<x<1)からなるInGaN活性層15のバンドギャップエネルギーは2.2eVとなり、緑色域の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
○基板としてGaNよりもInGaNに格子定数が近いZnO単結晶基板12を用いることと、InGaNを格子整合系下部クラッド層14に用いることにより、活性層15内で相分離が生じ難くなってIII-V族窒化物半導体のIn組成比を20%以上の均一なIn組成を有するInGaN活性層15を実現することができる。
次に具体的な実施例について説明する。
以下の説明において、光ガイド層は、半導体発光素子を分離閉じ込めヘテロ構造(Separate ConfInement heterostructure:SCH)とする場合に必要なものであり、これ以外の構造とする場合には設ける必要はない。
まず実施例1の半導体発光素子の構成について説明する。
第1実施例の半導体発光素子は、以下の構成となっている。
・p型電極 :オーム性接触
Ni/Au,Pd/Pt/Au
・p型コンタクト層:p型高キャリア濃度(例えば、Mgドーピング)
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・p型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・活性層 :井戸層のIn組成比は20%以上
InGaN/InGaN QW(Quantum Well)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・n型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・バッファ層 :基板に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・基板 :無(非)極性面ZnO単結晶基板
(11_20)面;a面あるいは(1_100)面;m面あるいはa面を傾斜させた面(11_22)面;あるいは(10_1_1面)を使用
・n型電極 :オーム性接触
Ti/Al,Ti/Pt/Au
次に実施例2の半導体発光素子の構成について説明する。
第2実施例の半導体発光素子は、以下の構成となっている。
・p型電極 :オーム性接触
Ni/Au,Pd/Pt/Au
・p型コンタクト層:p型高キャリア濃度(例えば、Mgドーピング)
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・p型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・活性層 :井戸層のIn組成比は20%以上
InGaN/InGaN QW(Quantum Well)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・n型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・バッファ層 :基板に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)超格子
・基板 :無(非)極性面ZnO単結晶基板
(11_20)面;a面あるいは(1_100)面;m面あるいはa面を傾斜させた面(11_22)面;あるいは(10_1_1面)を使用
・n型電極 :オーム性接触
Ti/Al,Ti/Pt/Au
次に実施例3の半導体発光素子の構成について説明する。
第3実施例の半導体発光素子は、以下の構成となっている。
・p型電極 :オーム性接触
Ni/Au,Pd/Pt/Au
・p型コンタクト層:p型高キャリア濃度(例えば、Mgドーピング)
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・p型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・活性層 :井戸層のIn組成比は20%以上
InGaN/InGaN QW(Quantum Well)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・n型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・バッファ層 :基板に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)
・基板 :無(非)極性面ZnO単結晶基板
(11_20)面;a面あるいは(1_100)面;m面あるいはa面を傾
斜させた面(11_22)面;あるいは(10_1_1面)を使用
・n型電極 :オーム性接触
Ti/Al,Ti/Pt/Au
次に実施例4の半導体発光素子の構成について説明する。
第4実施例の半導体発光素子は、以下の構成となっている。
・p型電極 :オーム性接触
Ni/Au,Pd/Pt/Au
・p型コンタクト層:p型高キャリア濃度(例えば、Mgドーピング)
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・p型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・活性層 :井戸層のIn組成比は20%以上
InGaN/InGaN QW(Quantum Well)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・n型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・バッファ層 :基板に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)超格子
・基板 :無(非)極性面ZnO単結晶基板
(11_20)面;a面あるいは(1_100)面;m面あるいはa面を傾
斜させた面(11_22)面;あるいは(10_1_1面)を使用
・n型電極 :オーム性接触
Ti/Al,Ti/Pt/Au
次に実施例5の半導体発光素子の構成について説明する。
第5実施例の半導体発光素子は、以下の構成となっている。
・p型電極 :オーム性接触
Ni/Au,Pd/Pt/Au
・p型コンタクト層:p型高キャリア濃度(例えば、Mgドーピング)
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・p型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・活性層 :井戸層のIn組成比は20%以上
InGaN/InGaN QW(Quantum Well)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・n型クラッド層 :活性層に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)
・バッファ層 :基板に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)
・基板 :無(非)極性面ZnO単結晶基板
(11_20)面;a面あるいは(1_100)面;m面あるいはa面を傾
斜させた面(11_22)面;あるいは(10_1_1面)を使用
・n型電極 :オーム性接触
Ti/Al,Ti/Pt/Au
次に実施例6の半導体発光素子の構成について説明する。
第6実施例の半導体発光素子は、以下の構成となっている。
・p型電極 :オーム性接触
Ni/Au,Pd/Pt/Au
・p型コンタクト層:p型高キャリア濃度(例えば、Mgドーピング)
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・p型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・活性層 :井戸層のIn組成比は20%以上
InGaN/InGaN QW(Quantum Well)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・n型クラッド層 :活性層に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)
・バッファ層 :基板に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)超格子
・基板 :無(非)極性面ZnO単結晶基板
(11_20)面;a面あるいは(1_100)面;m面あるいはa面を傾斜させた面(11_22)面;あるいは(10_1_1面)を使用
・n型電極 :オーム性接触
Ti/Al,Ti/Pt/Au
次に実施例7の半導体発光素子の構成について説明する。
第7実施例の半導体発光素子は、以下の構成となっている。
・p型電極 :オーム性接触
Ni/Au,Pd/Pt/Au
・p型コンタクト層:p型高キャリア濃度(例えば、Mgドーピング)
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・p型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・活性層 :井戸層のIn組成比は20%以上
InGaN/InGaN QW(Quantum Well)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)
・n型クラッド層 :活性層に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)
・バッファ層 :基板に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)
・基板 :無(非)極性面ZnO単結晶基板
(11_20)面;a面あるいは(1_100)面;m面あるいはa面を傾
斜させた面(11_22)面;あるいは(10_1_1面)を使用
・n型電極 :オーム性接触
Ti/Al,Ti/Pt/Au
次に実施例8の半導体発光素子の構成について説明する。
第8実施例の半導体発光素子は、以下の構成となっている。
・p型電極 :オーム性接触
Ni/Au,Pd/Pt/Au
・p型コンタクト層:p型高キャリア濃度(例えば、Mgドーピング)
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・p型クラッド層 :活性層に格子整合
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Al1-y-zGayInzN(0≦y<1、0≦z<1、y+z≦1)
・活性層 :井戸層のIn組成比は20%以上
InGaN/InGaN QW(Quantum Well)
・光ガイド層 :光閉じこめ
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)
・n型クラッド層 :活性層に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)
・バッファ層 :基板に格子整合
Zn1-a-b-cBeaMgbCdcO(0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c≦1)超格子
・基板 :無(非)極性面ZnO単結晶基板
(11_20)面;a面あるいは(1_100)面;m面あるいはa面を傾斜させた面(11_22)面;あるいは(10_1_1面)を使用
・n型電極 :オーム性接触
Ti/Al,Ti/Pt/Au
実施例1〜8において、活性層がInGaN(井戸層)/AlInN(障壁層)の量子井戸構造からな
っている。
以上の各実施例によれば、480nm以上の緑色域等の長波長の可視域の発振波長を得るに際し、貫通転位を低減し、高In組成であっても、相分離を抑制するとともに、ピエゾ電界の影響を抑制することができ、発光効率を向上させることができる。(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体レーザダイオード30を、図4乃至図7に基づいて説明する。
図4は半導体レーザダイオード30の概略構成を示す断面図であり、図5(a)〜(e)および図6(a)〜(d)は半導体レーザダイオード30の製造工程を示す説明図である。また、図7は半導体レーザダイオード30のエネルギーバンド図である。
第2実施形態に係る半導体レーザダイオード30の特徴は、以下の構成にある。
・ ZnO単結晶基板31を用いている。
・ ZnO単結晶基板31のc面である(0001)面を基板面とし、この基板面上に非極性面である(11_22)面の傾斜面を持つように窒化物半導体で台形状に形成された凸部を備える。
・ Inを含む窒化物半導体で構成された活性層35を有し、凸部の(11_22)面上にレーザ素子構造に積層して形成された半導体層を備えている。
・ 共振器端面がm面である(1_100)面(図3および図5(e)参照)になっている。
半導体レーザダイオード30は、図4に示すように、下部電極層39と、ZnO単結晶基板31と、バッファ層32と、下部クラッド層33と、光ガイド層34と、活性層35と、光ガイド層36と、上部クラッド層37と、コンタクト層38と、絶縁層40と、上部電極層42a,42bとを備えている。図4で符号「41」は電流狭窄領域である。
(11_22)面の傾斜面を持つように窒化物半導体で台形状に形成された凸部(以下、台形状凸部という。)50は、バッファ層32に形成されている(図5(d)参照)。この台形状凸部50には、(11_22)面の傾斜面が左右上部に形成されている。 半導体レーザダイオード30の半導体層は、図4に示すように、台形状凸部50の左右の傾斜面上に形成され、バッファ層32に格子整合された下部クラッド層33と、下部クラッド層33上に形成された光ガイド層34と、光ガイド層34上に形成され、In x Ga 1-x N (0<x<1)からなる量子井戸構造の活性層(MQW活性層)35とを備える。さらに、半導体層は、活性層35上に形成された光ガイド層36と、光ガイド層36上に形成された上部クラッド層37と、上部クラッド層37上に形成されたコンタクト層38と、コンタクト層38上に形成された絶縁膜40とを備える。
上記構成を有する半導体レーザダイオード30は、以下の工程により製造される。
(工程1)まず、図5(a)に示すように、(0001)面であるc面を主面(基板面)31fとするウルツ鉱型結晶のZnO単結晶基板31を用意する。
(工程2)次に、その主面31fの上にフォトレジストRを塗布した後に、フォトレジストRを露光、現像して幅が数μm〜数十μmのストライプ形状のパターンを形成する。
ここで、主面1fは、c面から微傾斜、例えば±5°以内程度に傾斜させたオフ面であってもよい。また、ストライプ形状のパターニングは、<1_100>軸(m軸)と等価な方向に平行である。これにより、半導体レーザダイオード素子30を作製した際にm面を共振器端面に形成できる。
(工程3)次に、図5(b)に示すように、フォトレジストRをマスクにしてZnO単結晶基板31の主面31fを反応性イオンエッチング(RIE)、誘導結合型(ICP)エッチング等のドライエッチング法によりエッチングして、フォトレジストRの下にZnOの例えば断面が四角形の凸部31aを形成する。エッチングガスとして、例えばアルゴン(Ar)、メタン(CH4)の混合ガスを使用する。この場合、ZnO単結晶基板31のうちエッチングされて露出した面はc面となる。
(工程4)次に、図5(c)に示すようにフォトレジストRを溶剤により除去し、その後、ZnO単結晶基板31表面の平坦化処理を行う。
具体的には、例えば、酸化ジルコニア等の無機材質平板でZnO単結晶基板31を挟んで大気中で熱処理を行う。例えば、1100℃で2時間程度行う。或いは、図5(c)に示すようにフォトレジストRを溶剤により除去した後、成長チャンバー内に導入して、真空中において1100℃で60分程度サーマルクリーニングを実施しても良い。
(工程5)次に、図5(d)に示すように、ZnO単結晶基板31から露出している四角形の凸部3aの表面とその周囲のc面上にRFMBE(Radio Frequency Molecular Beam Epitaxy)法によりn型InGaNよりなるバッファ層32を形成する。
RFMBE法は、RF(高周波)ラジカルセルを有する装置を用いて行われる。RFMBE法によって、セル内部に窒素ガスを導入して、成長に関与する窒素ラジカル種を生成して基板へ供給することができる。その際、ZnO単結晶基板31とInGaNバッファ層32との界面反応を抑制するために、III族原料と窒素ラジカルの供給を同時に行い、低温で成長するのが好ましい。
InGaNよりなるバッファ層32の成長温度Tgは、750℃未満、例えば400〜600℃に設定され、プラズマ電力Pは300〜500Wに設定される。III族原料としては、高純度のIn及びGa金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。V族原料として、N2ガスを1.0〜5.0sccmの流量でRFラジカルセルに導入して窒素ラジカルを生成してZnO単結晶基板31に供給する。また、n型ドーパントとしてSiを用いる。
こうしてZnO単結晶基板31上に成長させて形成されたバッファ層2には、(11_22)面の傾斜面を持つように窒化物半導体で台形状に形成された台形状凸部50が形成される。この台形状凸部50にあっては、四角形の凸部31aの上方にある上面はc面であり、凸部31aの上部の両角から成長する傾斜面は非極性面である(11_22)面であり、凸部1aの両側方の面は(11_20)面であるa面になる。さらに、凸部31aの前方および後方の共振器端面は(1_100)面であるm面となる。
(工程6)次に、図5(e)に示すように、RFMBE法によりn型の窒化物半導体よりなる下部クラッド層33、例えばn型AlGaInNの下部クラッド層33をバッファ層32上に成長させて形成する。
AlGaInNの成長温度Tgは、750℃未満、例えば400〜600℃に設定され、プラズマ電力Pは300〜500Wに設定される。III族原料としては、高純度のIn、Ga及びAl金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。V族原料として、N2ガスを1.0〜5.0sccmの流量でRFラジカルセルに導入して窒素ラジカルを生成してバッファ層32上に供給する。また、n型ドーパントとしてSiを用いる。
(工程7)次に、図6(a)に示すように、下部クラッド層33上に、RFMBE法により、窒化物半導体として例えばAlGaInNよりなる第1の光ガイド層34と、InxGa1-xN井戸層/InyGa1-yN障壁層(0<x<1、0<y<1、y<x、x>0.2)よりなる多重量子井戸(MQW)活性層35と、窒化物半導体として例えばAlGaInNよりなる第2の光ガイド層36とを順に成長させて形成する。
第1及び第2の光ガイド層34,36を構成するAlGaInNの成長温度Tgは、750℃未満、例えば400〜600℃に設定され、プラズマ電力Pは300〜500Wに設定される。III族原料としては、高純度のIn、Ga及びAl金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて供給する。V族原料として、N2ガスを1.0〜5.0sccmの流量でRFラジカルセルに導入して窒素ラジカルを生成して供給する。
また、活性層5を構成するInxGa1-xN井戸層/InyGa1-yN障壁層の成長温度Tgは、750℃未満、例えば400〜600℃に設定され、プラズマ電力Pは300〜500Wに設定される。III族原料としては、高純度のIn及びGa金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて供給する。V族原料として、N2ガスを1.0〜5.0sccmの流量でRFラジカルセルに導入して窒素ラジカルを生成して供給する。なお、井戸層、障壁層ではIn、Gaの供給量は異なる。
(工程8)次に、図6(b)に示すように、RFMBE法により、p型の窒化物化合物系半導体として例えばp型AlGaInNよりなる上部クラッド層37を第2の光ガイド層36の上に形成し、さらに、p型の窒化物化合物系半導体として例えばp型InGaNよりなるコンタクト層38を形成する。
上部クラッド層37を構成するAlGaInNの成長温度Tgは、750℃未満、例えば400〜600℃に設定され、プラズマ電力Pは300〜500Wに設定される。III族原料としては、高純度のIn、Ga及びAl金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて供給する。V族原料として、N2ガスを1.0〜5.0sccmの流量でRFラジカルセルに導入して窒素ラジカルを生成して供給する。
また、コンタクト層38を構成するInGaNの成長温度Tgは、750℃未満、例えば400〜600℃に設定され、プラズマ電力Pは300〜500Wに設定される。III族原料としては、高純度のIn及びGa金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。V族原料として、N2ガスを1.0〜5.0sccmの流量でRFラジカルセルに導入して窒素ラジカルを生成してZnO基板1に供給する。また、上部クラッド層37、コンタクト層38に含有されるp型ドーパントとしてMg、Beや、MgとSiのコドープなどを用いる。
(工程9)次に、図6(c)に示すように、ZnO単結晶基板31の下面(裏面)にオーミック接触する下側電極39を形成する。下部電極を形成する前に、ZnO単結晶基板12をCMP(機械化学研磨)処理により薄くしておくのが好ましい。
下側電極39は、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム共蒸着(EB)法、スパッタ法等により形成されるTi/Al、Ti/Pt/Au等の複数層構造の金属膜から構成され、成膜後にシンタリング(焼結)される。ZnO単結晶基板31はn型導電性を有しており、これによりその裏面にn型電極である下側電極39を形成することができる。
(工程10)次に、図6(d)に示すように、酸化シリコン等の絶縁膜40をプラズマCVD法等によりコンタクト層38の上に堆積させた後、(11_22)面上にある絶縁膜40のうち、後の工程でコンタクト層38に接続される電極の形成領域部分をフォトリソグラフィー工程により除去する。即ち、図示しないフォトレジストのパターンを用いて、コンタクト層38の両側の斜面、即ち(11_22)面上にある絶縁膜40に開口部40a、40bを形成する。絶縁膜40に覆われた部分は、電流が流れないので電流狭窄領域41となる。
(工程11)次に、図6(d)に示すように、開口部40a、40bを通してコンタクト層38にオーミック接触される上部電極42a、42bを形成する。
上部電極42a,42bは、抵抗加熱蒸着法、EB法、スパッタ法等により形成されるNi/Au、又はPd/Pt/Auのような複数層構造の金属膜から構成される。また、上部電極42a,42bは、形成後にシンタリングされる。コンタクト層38はp型導電性を有しており、これによりp型電極である上部電極42a,42bを形成することができる。
(工程12)次に、半導体レーザダイオード30の共振器端面を形成する。
この半導体レーザダイオード30では、共振器端面がm面である(1_100)面になっている。このため、ZnO単結晶基板31をm面である(1_100)面で割ると、ZnO単結晶基板31だけでなく、この基板面上に形成されたバッファ層32、下部クラッド層33、光ガイド層34、活性層35、光ガイド層36、上部クラッド層37、コンタクト層38、および絶縁膜40の各層もm面で割れ、半導体レーザダイオード30の共振器端面がへき開で奇麗に形成される。
(工程13)次に、上記第1実施形態の場合と同様に、形成された共振器端面である光出射側端面21および光反射側端面22に低反射膜23および高反射膜24をそれぞれ形成する(図2参照)。
これにより、青色より長波長の可視光を出力する半導体レーザダイオード30の製造が完了する。
この半導体レーザダイオード30では、上部42a,42bから下部極39に向けて駆動電流を流すと、電流はコンタクト層38の(11_22)面から斜め下方に流れ、上部クラッド層37、光ガイド層36、MQW活性層35、光ガイド層34、下部クラッド層33、バッファ層32、凸部31a、ZnO単結晶基板31内を通って下側電極9に流れ、光反射側端面22から例えば緑色の光が出射される。
(第3実施形態) 次に、本発明の第3実施形態に係る半導体レーザダイオードを、図10および図11に基づいて説明する。
図10(a)〜(e)および図11(a)〜(d)は半導体レーザダイオードの製造工程を示す説明図である。
第3実施形態に係る半導体レーザダイオードの特徴は、図4に示した第2実施携帯に係る半導体レーザダイオードと基本的に同じであり、以下の工程により製造される。
(工程1)まず、図10(a)に示すように、(0001)面であるc面を主面(基板面)31fとするウルツ鉱型結晶のZnO単結晶基板31を用意する。そのZnO単結晶基板31に対して表面平坦化処理処理を行う。例えば、酸化ジルコニア等の無機材質平板でZnO単結晶基板31を挟んで大気中で熱処理を行う。例えば、1100℃2時間程度行う。あるいは、成長チャンバー内に導入して、真空中において1100℃60分程度サーマルクリーニングを実施しても良い。続いて、窒化処理(又は酸素アニール)あるいはIII族処理を順に行う。なお、主面31fは、c面の微傾斜面であってもよい。
(工程2)次に、図10(b)に示すように、ZnO基板31の主面31f上に、AlGaInN等よりなる格子整合系バッファ層32をRFMBE法により形成する。バッファ層32の厚さは、その後の選択成長の際にZnO単結晶基板31の劣化が防止される値とする。バッファ層32をIII-V属窒化物半導体としてAlGaInNを形成する場合には、成長温度Tgを400〜600℃、プラズマ電力Pを300〜500Wに設定する。また、窒素ガスを1.0〜5.0sccmで導入する。III属原料としては、高純度のAl、Ga、In金属元素をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。この場合、ドーパントとしてSiを導入する。
(工程3)次に、図10(c)に示すように、バッファ層32上に、m軸方向に長いストライプ状の開口部53aを有する選択成長用マスク53を形成する。選択成長用マスク53は、バッファ層32上に例えばSiO2、Si3N4、Al2O3や、又は、Ti、W等若しくはその窒化物からなる膜をプラズマCVD法などにより形成した後に、フォトレジスト(不図示)を用いてその膜をパターニングすることにより開口部53aを形成する。なお、プラズマCVD法によって選択成長用マスク53を形成しても、既にバッファ層32により覆われたZnO単結晶基板31の表面からの昇華は防止される。
(工程4)続いて、図10(d)に示すように、選択成長用マスク53の開口部53aから露出したバッファ層32上に有機金属気相成長(MOCVD)法又はガスソース分子線エピタキシー(GSMBE)法によりInGaN層54を選択成長する。選択成長されたInGaN層54は、断面が略台形状の凸部となり、その上面はc面となり、両側の斜面は(11_22)面となり、前後の面は劈開によりm面となる。
GSMBE法によりInGaN層54を選択成長する場合には、成長温度Tgを400〜750℃、アンモニア(NH3)ガスを50sccmで導入する。III属原料としては、高純度のInおよびGa金属元素をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。この場合、ドーパントとしてSiを用いる。
MOCVD法による場合には、成長温度を900〜1150℃に設定し、窒素ソースガスとしてアンモニア、Gaソースガスとしてトリメチルガリウム(TMG)を用いる。また、ドーパントとして導入するSiとしてソースガスとしてシランを用いる。
(工程5)次に、図10(e)に示すように、InGaN層54の表面に下部クラッド層33としてn型AlGaInNをGSMBE法又はMOCVD法により選択成長する。
下部クラッド層33となるn型AlGaInNをGSMBE法により形成する場合には、その成長温度Tgを例えば400〜750℃に設定し、プラズマ電力Pを400〜500Wに設定する。III属原料としては、高純度のIn、Ga及びAl金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて供給する。V属原料として、アンモニアガスを50sccmの流量で成長雰囲気中に導入する。n型ドーパントとしてSiを用いる。
また、n型AlGaInNをMOCVD法により形成する場合には、 成長温度を900〜1150℃に設定し、窒素ソースガスとしてアンモニア、Alソースガスとしてトリメチルアルミニウム(TMA)、インジウムソースガスとしてトリメチルインジウム(TMI)、ガリウムソースガスとしてTMGを導入する。n型ドーパントとしてSiを用い、そのソースガスとしてシランを使用する。
(工程6)次に、図11(a)に示すように、アンドープAlGaInNよりなる第1の光ガイド層34と、アンドープInxGa1-xN井戸層/InyGa1-yN障壁層(0<x<1、0<y<1、y<x、x>0.2)よりなるMQW活性層35と、アンドープAlGaInNよりなる第2の光ガイド層36とを順に成長する。
第1、第2の光ガイド層34,36となるアンドープAlGaInNをGSMBE法により形成する場合には、その成長温度Tgを例えば400〜750℃に設定し、III属原料としては、高純度のIn、Ga及びAl金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて供給する。V属原料として、アンモニアガスを50sccmの流量で成長雰囲気中に導入する。
また、アンドープInxGa1-xN井戸層/InyGa1-yN障壁層をGSMBE法により形成する場合には、その成長温度Tgを例えば400〜750℃に設定し、III属原料としては、高純度のIn及びGa金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて供給する。V属原料として、アンモニアガスを50sccmの流量で成長雰囲気中に導入する。なお、井戸層、障壁層ではIn、Gaの供給量は異なる。
MOCVD法によりアンドープAlGaInNを形成する場合には、成長温度を900〜1150℃に設定し、窒素ソースガスとしてアンモニア、AlソースガスとしてTMA、インジウムソースガスとしてTMI、ガリウムソースガスとしてTMGを導入する。MOCVD法によりアンドープInxGa1-xN井戸層/InyGa1-yN障壁層を形成する場合には、成長温度を900〜1150℃に設定し、窒素ガスソースとしてアンモニア、GaガスソースとしてTMG、インジウムガスソースとしてTMIを導入する。なお、井戸層、障壁層ではTMI、TMGの供給量は異なる。
(工程7)次に、図11(b)に示すように、p型AlGaInNの上部クラッド層37を第2の光ガイド層36の上に形成し、さらに、p型InGaNよりなるコンタクト層38を形成する。
上部クラッド層37となるAlGaInNをGSMBE法により形成する場合には、成長温度Tgを例えば400〜750℃に設定し、III属原料としては、高純度のIn、Ga及びAl金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて供給する。V属原料として、アンモニアガスを50sccmの流量で成長雰囲気に導入する。
また、コンタクト層38となるInGaNをGSMBE法により形成する場合には、成長温度Tgは例えば400〜750℃に設定され、III属原料としては、高純度のIn及びGa金属原料をクヌーセンセルで蒸発させて基板に供給する。V属原料として、アンモニアガスを50sccmの流量で成長雰囲気内に導入する。
なお、上部クラッド層37、コンタクト層38のp型ドーパントとしてMg、Beや、MgとSiのコドープなどを用いる。
MOCVD法により上部クラッド層37となるAlGaInNを形成する場合には、成長温度を900〜1150℃に設定し、窒素ソースガスとしてアンモニア、AlソースガスとしてTMA、インジウムソースガスとしてTMI、ガリウムソースガスとしてTMGを導入する。また、MOCVD法によりコンタクト層38となるInGaNを形成する場合には、成長温度を900〜1150℃に設定し、窒素ガスソースとしてアンモニア、GaガスソースとしてTMG、インジウムガスソースとしてTMIを導入する。なお、コンタクト層38、上部クラッド層37に含有されるp型ドーパントのガスソースとして、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いる。
以上の下部クラッド層33からコンタクト層38までの各層において、InGaN層54の上方ではc面となり、その両側では(11_22)面、即ち非極性面となる。
(工程8)次に、図11(c)に示すように、ZnO単結晶基板31の下面にオーミック接触する下側電極39が形成される。下側電極39は、抵抗加熱蒸着法、EB法、スパッタ法等により形成されるTi/Al、Ti/Pt/Au等の複数層の金属膜から構成され、その形成後にシンタリングされる。
(工程9)次に、保護膜(絶縁膜)52をプラズマCVD法等によりコンタクト層38上に堆積させた後、(11_22)面のうち、後の工程でコンタクト層38に接続される電極の形成領域部分のみをフォトリソグラフィー工程により保護膜52を除去する。図示しないフォトレジストのパターンを用いて、コンタクト層38の両側の斜面、即ち(11_22)面の上にある保護膜52に開口部52a、52bを形成する。保護膜52のある部分は、電流が流れないので電流狭窄領域41を形成する。
(工程10)次に、図11(d)に示すように、図示しないフォトレジストのパターンを用いて、InGaN層54の上部の両側で斜め上方向に成長する面、即ち(11_22)面の上にある保護膜52に開口部52a、52bを形成する。さらに、リフトオフ法により開口部52a、52bを通してコンタクト層38にオーミック接触される上側電極64a、64bを形成する。上側電極64a、64bは、スパッタ法、抵抗加熱蒸着法、EB法等によりNi/Au、又はPd/Pt/Auのような複数層構造の金属膜から構成され、リフトオフ法によりパターニングされる。なお。その金属膜は、形成後にシンタリングされる。コンタクト層はp型導電性を有しており、これによりp型電極を形成することができる。
(工程11)ZnO単結晶基板31上のInGaN層54の前後の端面には劈開によりm面が現れる。そして、InGaN層54の前と後をm面で劈開した後に現れる活性層35、光ガイド層34,36、クラッド層33,37のm面(端面)のうちの一方には、GaNより低い屈折率を有する1層以上の低反射膜であって、膜厚がλ/(4n)(λ:発光波長、n:屈折率)であり、非反射膜を形成する。また、他方の端のm面上には、低屈折率と高屈折率を交互に積層してなる高反射膜を形成する。膜厚がλ/(4n)(λ:発光波長、n:屈折率)である。
以上のように構成された第2及び第3実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
○ZnO単結晶基板31の(0001)面を基板面とし、この基板面上に非極性面である(11_22)面の傾斜面を持つ台形状の凸部50を窒化物半導体で形成して、(11_22)面を形成している。そして、その(11_22)に、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層35を有し、レーザ素子構造に積層した半導体層を形成している。このため、ZnO単結晶基板31の六方晶の上に、凸部50の窒化物半導体および半導体層の六方晶が回転することなく、綺麗に重なる。つまり、凸部の窒化物半導体の結晶およびその(11_22)面上に形成される半導体層の結晶が、ZnO単結晶基板31の結晶と揃って形成される。そして、共振器端面が(1_100)面になっているので、端面をへき開したときに、ZnO単結晶基板31だけでなく、その上に成長させて形成した半導体層の端面も(1_100)面で綺麗に割れる。これにより、へき開で共振器端面を奇麗に形成することができ、共振器端面の形成が容易な半導体レーザダイオード30を実現できる。
○台形状の凸部50の非極性面である(11_22)面上にInを含む窒化物半導体で構成された活性層35を有する半導体層を形成しているので、半導体層を簡単な方法で成長させることができ、製造コストを低減できると共に、発光効率の高い青色より長波長の可視光( 例えば緑色)の発光が可能な半導体レーザダイオードを実現できる。
○ZnO単結晶基板31は、水熱合成法により3インチサイズの大口径バルク単結晶が実現されているので、この点でも、ZnO単結晶基板31を用いた半導体レーザダイオード30の低価格化を図れる。つまり、ZnO単結晶基板31の(0001)面を基板面としても、その基板面上に形成した(11_22)を下地とした半導体の成長が可能になるので、安価な基板の使用による発光波長480nm以上、例えば緑色波長域で発光する光デバイスの普及が可能になる。 ○台形状の凸部50の(11_22)面を下地とした半導体の成長が可能になるので、安価なZnO単結晶基板31の使用による発光波長480nm以上、例えば緑色波長域で発光する光デバイスの普及が可能になる。
○(11_22)面を下地として形成された半導体レーザダイオード30は、外部量子効率を高めることができるとともに、電流密度が高くなるにつれて発光波長が短くなるブルーシフト現象を抑制することができる。
○(11_22)面を下地として形成された半導体レーザダイオード30の活性層35のバンド構造が例えば図7に示すようになり、ピエゾ電界が小さくなるので、発光再結合確率を高くして内部量子効率を高めることが可能になる。
上記各実施形態で説明した半導体レーザダイオード10、30は、エンターテインメント(レーザディスプレイ、ゲーム)、ストレージ(ホログラフィー)、バイオライフサイエンス(緑色蛍光試薬)、自動車の車載ネットワークであるMOST(Media Oriented Systems Transport)、光検査、各種表示装置等、情報家電分野に利用可能である。
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記第1実施形態では、ZnO単結晶基板12の基板面を、a面である(11_20)面(図3参照)としているので、半導体レーザダイオード10の共振器端面が(1_100)面(m面)になっているが、本発明はこの構成に限定されない。ピエゾ電界の影響を受けにくい面方位の結晶面として、(11_20)面と等価な面を選択し、その等価な面を基板面(成長面)としてもよい。(11_20)面と等価な面(無極性面)としては、5つの結晶面がある。これら5つの結晶面のうちの一つを基板面として選択すると、その選択された結晶面に応じて共振器端面が決まる。この場合の共振器端面は、m面と等価な5つの結晶面のいずれかの面になる。
このように、本発明は、ZnO単結晶基板12の基板面を(11_20)面と等価な面とし、その共振器端面がm面と等価な面になっている半導体レーザダイオードにも本発明は適用可能である。m面と等価な面は、(10_10)面又は(01_10)面又は(_1100)面又は(_1010)面又は(0_110)面のいずれかの面である(図3参照)。 ・また、上記第1実施形態において、ピエゾ電界の影響を受けにくい面方位の結晶面として、a面である(11_20)面を傾斜させた(11_20)面(図8に示す非極性面)を選択し、この(11_20)面をZnO単結晶基板12の基板面としてもよい。この場合、共振器端面が(1_100)面(m面)になる。
・また、上記第1実施形態において、ピエゾ電界の影響を受けにくい面方位の結晶面として、(11_20)面を傾斜させた(11_22)面と等価な面(非極性面)を選択し、この等価な面をZnO単結晶基板12の基板面としてもよい。この場合の共振器端面は、m面と等価な5つの結晶面のいずれかの面になる。
・上記第2実施形態では、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層35を有し、凸部の(11_22)面上にレーザ素子構造に積層して形成された半導体層を備え、共振器端面がm面である(1_100)面になっている。本発明はこの構成に限定されない。つまり、(11_22)面と等価な面(5つの面のいずれかの面)を持つように台形状凸部50を形成し、その等価な面(傾斜面)上にレーザ素子構造に積層して形成された半導体層を備えた半導体レーザダイオードにも本発明は適用可能である。この場合の共振器端面は、m面と等価な5つの結晶面のいずれかの面になる。
・上記第1実施形態では、半導体層に含まれる活性層15を、InxGa1-xN (0<x<1)からなるInGaN系活性層としているが、Inを含む窒化物半導体で構成された活性層を有する半導体レーザダイオードにも本発明は広く適用可能である。
・上記第1実施形態では、n型のZnO単結晶基板12を用いているが、n型のZnO単結晶基板12に比べて作製は難しいがp型のZnO単結晶基板12を用いた半導体レーザダイオードにも本発明は適用可能である。
・上記第1実施形態では、バッファ層13を上記酸化物系化合物半導体層(酸化物)で構成し、下部クラッド層14と、上部クラッド層16と、コンタクト層17と、パッシベーション膜18とを上記窒化物半導体層(窒化物)で構成しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、バッファ層13を窒化物半導体層(窒化物)で構成し、下部クラッド層14を酸化物系化合物半導体層(酸化物)で構成した半導体レーザダイオードにも本発明は適用可能である。
・上記第1実施形態において、上記半導体層のうち活性層15を除く各層(下部クラッド層14、上部クラッド層16、コンタクト層17、およびパッシベーション膜18)を、Al,Ga,Inの少なくとも一つを含む窒化物半導体層又はZn,Mg,Be,Cdの少なくとも一つを含む酸化物系化合物半導体層のいずれかの層とした構成の半導体レーザダイオードにも本発明は適用可能である。
・上記第2実施形態では、ZnO単結晶基板12の主面(基板面)31fをc面である(0001)面としているが、そのc面を傾斜させた面を主面1fとした半導体レーザダイオードにも本発明は適用可能である。このような構成の半導体レーザダイオードによっても、(11_22)面を下地とした半導体の成長が可能になるので、安価なZnO単結晶基板31の使用による発光波長480nm以上、例えば緑色を発光する半導体レーザダイオードの普及が可能になる。 ・上記第2実施形態では、2つの上部電極42a,42bが形成されているが、絶縁膜40全体を一つの上部電極が形成された半導体レーザダイオードにも本発明は適用可能である。
本発明の第1実施形態に係る半導体レーザダイオードの概略構成を示す斜視図。
同半導体レーザダイオードの共振器端面を示す説明図である。
ZnO単結晶の面方位を表すユニットセル図。
本発明の第2実施形態に係る半導体レーザダイオードの概略構成を示す断面図。
(a)〜(e)は同半導体レーザダイオードの製造工程を示す説明図。
(a)〜(d)は図5(a)に続く製造工程を示す説明図。
同半導体レーザダイオードのエネルギーバンド図。
ZnO単結晶の面方位を表すユニットセル図。
ZnO単結晶の面方位を表すユニットセル図。
(a)〜(e)は半導体レーザダイオードの製造工程を示す説明図。
(a)〜(d)は図10の(e)に続く半導体レーザダイオードの製造工程を示す説明図。
符号の説明
10,30…半導体レーザダイオード、11,39…下部電極層、12,31…ZnO単結晶基板、13,32…バッファ層、14,33…下部クラッド層、15,35…活性層、16,37…上部クラッド層、17,38…コンタクト層、18…パッシベーション膜、19,42a,42b,64a,64b…上部電極層、34、36…光ガイド層、40…絶縁膜、50…台形状凸部、52…保護膜。