本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、ディジタルテレビジョン放送に対応した信号(以下、「放送信号」という)を送信する放送システムに関する。放送信号では、複数のチャンネルに対して周波数多重がなされている。また、各チャンネルは、複数のセグメントによって形成されている。なお、ひとつのチャンネルに含まれたひとつのセグメントは、1セグメント放送として使用される。つまり、当該セグメントを受信するだけでも、番組が視聴される。放送事業者以外の団体等が放送信号を送信することによって、自主番組を放送する場合に、コストの増加の抑制、設置の自由度の向上、放送エリア拡大が要求される。これに対応するために、次の処理が実行される。
本発明の実施例に係る放送システムは、放送装置と中継装置とによって構成される。放送装置と中継装置とは、例えば、無線LAN(Local Area Network)システムのような通信システムによって接続される。以下では、通信システムにおいて規定された信号を「通信信号」と呼ぶ。放送装置は、番組が含まれた中間周波数の信号(以下、「中間信号」という)を生成する。ここで、中間信号には、番組が変調された状態にて含まれている。なお、放送信号は、放送周波数の信号である。また、中間信号と放送信号とは、周波数帯が異なるだけで、同一の信号形式を有する。つまり、中間信号は、放送信号へ周波数変換する前の信号といえる。放送装置は、中間信号を通信信号に格納し、通信信号を送信する。
中継装置は、放送装置からの通信信号を受信し、通信信号から中間信号を抽出する。また、中継装置は、中間信号を放送信号へ周波数変換し、放送信号を送信する。テレビジョン放送受像装置は、中継装置からの放送信号を受信する。このような構成において、エリアを拡大するために、複数の中継装置が備えられる。その際、複数の中継装置のそれぞれから送信される放送信号には、互いの干渉を低減するような放送周波数やセグメント(以下、「チャンネル」と総称する)の使用が望まれる。また、放送装置は、中間信号を通信信号に格納する際、中間信号をAD変換器にてデジタル信号へ変換する。その際、通信システムのトラヒック量の増加を抑制するために、AD変換器の量子化数は少ない方が望ましい。一方、量子化数を少なくしすぎると、中継装置とテレビジョン受像装置間における品質の悪化が大きくなる。このような量子化数は、中間信号や放送信号において使用される変調方式に応じて異なる。
これに対応するために、放送装置は、各中間装置が使用すべきチャンネルを規定し、チャンネルの一覧をテーブル(以下、「第1テーブル」という)に含めて記憶する。また、放送装置は、変調方式と量子化数との対応を予めテーブル(以下、「第2テーブル」という)として記憶しており、ユーザから変調方式を受けつける。放送装置は、第2テーブルを参照しながら、変調方式から量子化数を導出し、量子化数をAD変換器へ設定する。また、放送装置は、量子化数も第1テーブルに記憶する。さらに、放送装置は、第1テーブルを通信信号に含めて中継装置へ送信する。中継装置は、受けつけた第1テーブルから、対応したチャンネルおよび量子化数の情報を抽出する。中継装置は、抽出した量子化数にて通信信号をアナログ信号へ変換する。このようなアナログ信号が前述の中間信号に相当する。また、中継装置は、抽出したチャンネルに対応するように局部発振部の周波数を設定し、中間信号を放送信号へ周波数変換する。
なお、デジタルラジオ放送に対して、ひとつのセグメント成分を3つのセグメント成分と読み替えることによって、本実施例はデジタルラジオ放送に適用される。さらに、セグメントの概念を有するシステムに対して、少なくともひとつのセグメント成分であって、かつ復調可能な数のセグメント成分を抽出することによって、本実施例は当該システムに適用される。以下では、説明を明瞭にするためのこれらの変形例の説明を省略する。
図1は、本発明の実施例に係る放送システム100の構成を示す。放送システム100は、放送装置10、中継装置14と総称される第1中継装置14a、第2中継装置14b、第N中継装置14n、受像装置16と総称される第1受像装置16a、第2受像装置16b、第M受像装置16mを含む。放送装置10は、放送装置用アンテナ22を含み、中継装置14は、中継装置通信用アンテナ24と総称される第1中継装置通信用アンテナ24a、第2中継装置通信用アンテナ24b、第N中継装置通信用アンテナ24n、中継装置送信用アンテナ26と総称される第1中継装置送信用アンテナ26a、第2中継装置送信用アンテナ26b、第N中継装置送信用アンテナ26nを含み、受像装置16は、受像装置用アンテナ28と総称される第1受像装置用アンテナ28a、第2受像装置用アンテナ28b、第M受像装置用アンテナ28mを含む。
放送装置10は、番組が含まれた中間信号を生成する。前述のごとく、中間信号は、放送信号と同一の形式でありながら、異なった周波数の信号であり、放送信号とは、ディジタルテレビジョン放送に対応した信号である。また、ディジタルテレビジョン放送とは、例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial)、DVB(Digital Video Broadcasting)にて規定されたシステムである。ISDB−Tでは、複数のチャンネルに対して周波数分割多重がなされている。
また、各チャンネルは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号によって形成されており、かつ複数のセグメントによって形成されている。具体的には、429KHz幅のセグメントが13個含まれている。13個のセグメントのうち、ひとつはワンセグメント放送用に予約されている。ワンセグメント放送用に予約されたセグメントは、中央のセグメントであり、セグメント番号「0」であるとする。なお、前述のごとく、以下では、セグメントおよびチャンネルを「チャンネル」と総称する。また、中間信号や放送信号の変調多値数は、可変に規定されている。例えば、13個のセグメントを使用する場合に、変調方式として64QAMが使用され、ワンセグメント放送を使用する場合に、変調方式としてQPSKが使用されている。
ここで、放送装置10は、中間信号をアナログ/デジタル変換することによってデジタル信号を生成する。また、放送装置10は、変調方式と量子化数との対応が示された第2テーブルを予め記憶しているとともに、ユーザから変調方式を受けつける。放送装置10は、第2テーブルを参照しながら、変調方式から量子化数を導出する。放送装置10は、前述のアナログ/デジタル変換の際に、導出した量子化数を使用する。つまり、量子化数をもとにデジタル信号が生成される。さらに、放送装置10は、各中継装置14にて使用されるチャンネルが互いに干渉しないように、各中継装置14に対するチャンネルを規定し、それを第1テーブルに含める。また、放送装置10は、量子化数の情報も第1テーブルに含める。放送装置10は、第1テーブルおよびデジタル信号を通信信号に格納する。放送装置10は、放送装置用アンテナ22から通信信号を送信する。
中継装置14は、例えば、放送装置10からの通信信号を受信できるような位置に配置されている。中継装置14は、中継装置通信用アンテナ24を介して、放送装置10からの通信信号を受信する。中継装置14は、通信信号から、第1テーブルおよびデジタル信号を抽出し、第1テーブル中の量子化数の情報を使用しながら、デジタル信号をアナログ信号にデジタル/アナログ変換することによって中間信号を生成する。また、中継装置14は、第1テーブルに含まれた局部発振信号の周波数を設定しながら、中間信号を周波数変換することによって、放送信号を生成する。中継装置14は、中継装置送信用アンテナ26を介して、放送信号を送信する。なお、第1テーブルには、他の中継装置14に対する情報も含まれているので、中継装置14は、第1テーブルの中から、自らに関する情報を選択する。
受像装置16は、所定の中継装置14からの放送信号を受信できる位置に配置されている。受像装置16は、受像装置用アンテナ28を介して、中継装置14からの放送信号を受信する。受像装置16は、放送信号のうち、所定のチャンネル成分を復調することによって、所定のチャンネル成分に含まれた番組を再生する。また、受像装置16は、図示しないモニタに番組を表示する。仮に、受像装置16が、図示しない放送事業者の放送局からの放送信号を直接受信できる位置に配置されていれば、受像装置16は、当該放送信号を受信し、放送信号に含まれた番組を再生できる。
図2は、放送装置10の構成を示す。放送装置10は、生成部30と総称される第1生成部30a、第2生成部30b、第N生成部30n、AD変換部132と総称される第1AD変換部132a、第2AD変換部132b、第NAD変換部132n、シリアル/IP変換部134と総称される第1シリアル/IP変換部134a、第2シリアル/IP変換部134b、第Nシリアル/IP変換部134n、通信部54、放送装置用アンテナ22、制御部40、記憶部42、入力部44を含む。また、生成部30は、データ受付部32、変調部34、IFFT部36、直交変調部38を含み、制御部40は、RFチャンネル・セグメント番号決定部46、局発周波数決定部48、量子化数決定部50を含む。
複数の生成部30は、図1に示された複数の中継装置14にそれぞれ対応付けられるように設けられる。データ受付部32は、放送システム100において放送すべき番組を受けつける。データ受付部32は、図示しない記憶部に接続され、記憶部に記憶された番組を読み取る。ここで、番組は、動画像データであり、かつデジタルデータとして形成されている。なお、このような動画像データやデジタルデータには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。また、各生成部30に対応したデータ受付部32は、互いに異なった番組を受けつける。データ受付部32は、番組を変調部34へ出力する。
変調部34は、データ受付部32から番組を受けつける。変調部34は、番組に対応したデータを変調する。変調部34は、変調に使用すべき変調方式として、QPSKや64QAMを使用する。なお、変調部34は、制御部40からの指示に応じて使用すべき変調式を選択する。変調部34は、変調結果をIFFT部36へ逐次出力する。IFFT部36は、変調部34からの変調結果を受けつける。IFFT部36は、変調結果を周波数領域のサブキャリアに配置させることによって、周波数領域のOFDM信号を生成する。また、IFFT部36は、周波数領域のOFDM信号に対してIFFTを実行することによって、時間領域のOFDM信号を生成する。ここで、周波数領域のOFDM信号および時間領域のOFDM信号は、ディジタルテレビジョン放送において定められたOFDM信号に相当する。変調部34は、時間領域のOFDM信号を直交変調部38へ逐次出力する。
直交変調部38は、変調部34からの時間領域のOFDM信号を直交変調することによって、中間信号を生成する。前述のごとく、中間信号は、放送信号と周波数帯域が異なっているので、放送信号に対応した信号といえる。なお、放送信号にて使用すべき放送周波数は、複数規定されており、可変に規定されている。AD変換部132は、直交変調部38から中間信号を受けつけ、中間信号をアナログ/デジタル変換することによって、前述のデジタル信号を生成する。ここで、AD変換部132は、デジタル信号を生成する際に、量子化数に関する指示を量子化数決定部50から受けつける。つまり、AD変換部132は、量子化数決定部50において決定した量子化数をもとに、中間信号をデジタル信号へアナログ/デジタル変換する。
ここでは、量子化数の設定について説明する。図1の受像装置16は、前述のごとく放送信号を受信して、番組を再生するが、その際、番組を再生するために最低限必要となる放送信号のCN値(以下、「最低CN値」という)が定められている。つまり、受像装置16は、最低CN値よりも低いCN値の放送信号を受信しても、番組を再生できない。そのため、放送装置10および中継装置14には、受像装置16において最低CN値以上となるように、量子化および中継を実行することが要求される。ここでは、受像装置16における最低CN値を満たすための放送装置10でのCN値を「所要CN値」というものとする。その結果、AD変換部132では、所要CN値を満たすような量子化数が必要となる。
一方、受像装置16におけるCN値には、最低CN値よりも高いことが要求されるが、余り高くなっても受像装置16において再生される番組の品質は向上しない。一方、そのようなCN値とするために、AD変換部132での量子化数を増加させると、通信信号にて伝送されるべきデータの量が大きくなってしまう。これらのことを考慮すると、AD変換部132には、所要CN値を満たすような量子化数が設定されるべきである。また、所要CN値は、一般的に、放送信号や中間信号において使用される変調方式に依存する。例えば、変調方式の変調多値数が大きくなると、所要CN値も大きくなる。これに対応するために、入力部44は、ボタン等のインターフェイスを有し、インターフェイスを介してユーザからの変調多値数の入力を受けつける。つまり、入力部44は、生成部30において生成した中間信号の変調方式に関する情報を取得する。ここで、変調方式に関する情報は、生成部30ごとに入力される。また、入力部44は、変調多値数を量子化数決定部50へ出力する。
記憶部42は、変調多値数と量子化数との対応が示されたテーブルを記憶する。図3は、記憶部42に記憶されたテーブルのデータ構造を示す。テーブルは、前述の第2テーブルに相当する。テーブルは、図示のごとく、変調方式欄200、量子化数欄202を含む。変調方式欄200が変調多値数に相当し、ここでは、変調多値数「QPSK」に対応した量子化数が「4」ビットのように規定されている。図2に戻る。量子化数決定部50は、入力部44から変調多値数を受けつける。量子化数決定部50は、記憶部42に記憶したテーブルを参照しながら、受けつけた変調多値数から量子化数を導出する。量子化数決定部50は、導出した量子化数をAD変換部132へ出力することによって、量子化数をAD変換部132でのアナログ/デジタル変換に使用させる。つまり、量子化数決定部50は、入力部44において取得した変調多値数をもとに、AD変換部132におけるアナログ/デジタル変換の際の量子化数を決定する。
シリアル/IP変換部134は、AD変換部132からデジタル信号を受けつける。後述の通信部54にて通信に使用すべき信号は、IP(Internet Protocol)パケット形式を有している。IPパケットには、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。シリアル/IP変換部134は、デジタル信号をIPパケットに格納する。以下では、デジタル信号が含まれたIPパケットを「通信信号」という。シリアル/IP変換部134は、通信信号を通信部54へ出力する。
通信部54は、無線LANシステムに対応した通信機能を有する。なお、無線LANシステムとして公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。通信部54は、放送装置用アンテナ22を介して、無線LANシステムの通信機能を有した図示しない中継装置14との通信を実行する。通信部54は、シリアル/IP変換部134から通信信号を受けつけ、放送装置用アンテナ22を介して通信信号を中継装置14へ送信する。ここで、各中継装置14に対してIPアドレスが付与されており、通信部54は、通信信号を送信すべき中継装置14に対応したIPアドレスを通信信号に付与する。つまり、通信部54は、通信信号を送信すべき中継装置14を宛先として、当該通信信号をユニキャスト送信する。
前述の入力部44は、前述の変調方式に対する情報に加えて、中継装置14を識別するための情報、中継装置14からの放送信号に使用される帯域幅に関する情報も入力する。中継装置14を識別するための情報には、中継装置14の名称、中継装置14のIPアドレスが含まれ、中継装置14からの放送信号に使用される帯域幅に関する情報には、チャンネル数、セグメント数に関する情報が含まれる。さらに、入力部44は、中継装置14との間の通信システムにおいて使用する周波数に関する情報も入力する。入力部44は、入力したこれらの情報をRFチャンネル・セグメント番号決定部46へ出力する。
RFチャンネル・セグメント番号決定部46は、入力部44からの情報を受けつける。RFチャンネル・セグメント番号決定部46は、複数の中継装置14のそれぞれからの放送信号間の干渉が互いに小さくなるように、複数の中継装置14のそれぞれからの放送信号にて使用させるチャンネルを決定する。ここで、チャンネルは、RFチャンネルとセグメントとによって特定されるので、RFチャンネル・セグメント番号決定部46は、各中継装置14に対するRFチャンネル番号とセグメント番号とを決定する。具体的に説明すると、RFチャンネル・セグメント番号決定部46は、まだ使用されていないチャンネルを選択する。
局発周波数決定部48は、RFチャンネル・セグメント番号決定部46から、各中継装置14に対するRFチャンネル番号とセグメント番号とを入力する。局発周波数決定部48は、RFチャンネル番号とセグメント番号、つまり中継装置14において使用される放送周波数をもとに、中間信号と放送信号との間の周波数に関する指示を中継装置14単位に生成する。ここで、中間信号と放送信号との間の周波数とは、中継装置14での局部発振信号の周波数に相当する。図4は、局発周波数決定部48の動作概要を示す。これは、ひとつのOFDM信号を周波数領域にて示した図である。図の左側が低周波数側に相当し、図の右側が高周波数側に相当する。また、ひとつのOFDM信号は、前述のごとく、13個のセグメントに分割されており、セグメント番号が、低周波数側から順番に、「11」、「9」、「7」、・・・、「10」、「12」のように付与されている。
セグメント「0」だけが使用される場合、その中心の周波数「f1」が中間信号の周波数に設定されている。そのため、RFチャンネル・セグメント番号決定部46は、放送信号の中心周波数と中間信号の中心周波数との差を局部発振信号の周波数として設定する。一方、セグメント「0」と「1」とが使用される場合、それらの中心の周波数「f2」が中間信号の周波数に設定されている。そのため、RFチャンネル・セグメント番号決定部46は、放送信号の中心周波数と中間信号の中心周波数との差を、セグメント「0」の中心周波数と「f2」との差だけシフトさせた周波数を局部発振信号の周波数として設定する。局発周波数決定部48は、このように局部発振信号の周波数を決定する。図2に戻る。
制御部40は、入力部44において入力した情報、RFチャンネル・セグメント番号決定部46にて決定したRFチャンネル番号とセグメント番号、局発周波数決定部48にて決定した局部発振信号の周波数を含むように、ひとつのテーブルを生成する。当該テーブルが、前述の第1テーブルに相当する。また、第1テーブルには、複数の中継装置14に関する情報が含まれる。制御部40は、生成した第1テーブルを記憶部42に記憶する。図5は、記憶部42に記憶された別のテーブルのデータ構造を示す。当該別のテーブルが、前述の第1テーブルに相当する。第1テーブルには、図示のごとく、中継装置名称欄210、IPアドレス欄212、変調方式欄214、量子化数欄216、使用セグメント数欄218、RFチャンネル欄220、セグメント番号欄222、局発周波数欄224、無線LAN伝送路番号欄226が含まれる。
中継装置名称欄210には、中継装置14を識別するための名称が含まれ、IPアドレス欄212には、中継装置14のIPアドレスが含まれ、変調方式欄214には、放送信号や中間信号にて使用される変調多値数が含まれる。また、これらの情報は入力部44にて入力される。量子化数欄216は、量子化数決定部50にて決定された量子化数が含まれる。使用セグメント数欄218には、放送信号にて使用されるセグメント数が含まれ、この情報も入力部44にて入力される。RFチャンネル欄220、セグメント番号欄222には、RFチャンネル・セグメント番号決定部46にて決定されたRFチャンネル番号、セグメント番号が含まれる。局発周波数欄224には、局発周波数決定部48にて決定された局部発振信号の周波数が含まれる。無線LAN伝送路番号欄226には、中継装置14との通信に使用される無線通信システムの周波数に関する情報が含まれている。この情報も、入力部44にて入力される。図2に戻る。
制御部40は、記憶部42から第1テーブルを抽出し、第1テーブルが含まれた通信信号を生成する。制御部40は、通信信号を通信部54へ出力する。通信部54は、制御部40からの通信信号も受けつけ、当該通信信号も送信する。ここで、第1テーブルが含まれた通信信号は、複数の中継装置14へ送信されるべきであるので、当該通信信号には、ブロードキャスト送信あるいはマルチキャスト送信がなされる。このように第1テーブルが送信されることによって、局部発振信号の周波数に関する指示、量子化数が、各中継装置14へ通知される。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図6は、中継装置14の構成を示す。中継装置14は、中継装置通信用アンテナ24、中継装置送信用アンテナ26、通信部80、IP/シリアル変換部160、信号変換部162、パラメータ設定部164、制御部86を含む。また、信号変換部162は、DA変換部166、周波数変換器116、送信増幅部118、送信用BPF120、局部発振部122を含み、パラメータ設定部164は、量子化設定部168、周波数設定部90、抽出部170を含む。図1のごとく、放送システム100には、複数の中継装置14が含まれている。
通信部80は、図示しない通信部54と同様に、無線LANシステムに対応した通信機能を有する。通信部80は、中継装置通信用アンテナ24を介して、図示しない放送装置10との通信を実行する。通信部54は、中継装置通信用アンテナ24を介して放送装置10からの通信信号を受信する。ここで、通信信号には、第1テーブルも格納されている。そのため、通信部80は、局部発振信号の周波数に関する指示や量子化数に関する情報も受信する。通信部80は、受信した通信信号を復調した後、IP/シリアル変換部160へ出力する。
IP/シリアル変換部160は、図示しないシリアル/IP変換部134とは逆の動作を実行する。IP/シリアル変換部160は、通信部80から、復調された通信信号を受けつける。ここで、通信信号は、第1テーブルおよびデジタル信号が含まれたIPパケットに相当する。IP/シリアル変換部160は、通信信号から、第1テーブルおよびデジタル信号を抽出する。IP/シリアル変換部160は、抽出したデジタル信号(以下、これも「デジタル信号」という)をDA変換部166へ出力し、抽出した第1テーブルをパラメータ設定部164へ出力する。
抽出部170は、IP/シリアル変換部160から第1テーブルを受けつける。抽出部170は、第1テーブルから量子化数に関する情報を抽出し、抽出した量子化数に関する情報を量子化設定部168へ出力する。また、抽出部170は、第1テーブルから局部発振信号の周波数に関する情報も抽出し、局部発振信号の周波数に関する情報を周波数設定部90へ出力する。これらの抽出の際、抽出部170は、自らの中継装置14に対応した情報を抽出するように、第1テーブルを参照する。
量子化設定部168は、抽出部170から、量子化数に関する情報を受けつける。量子化設定部168は、受けつけた情報をもとに、DA変換部166に対して、アナログ/デジタル変換を実行する際の量子化数を設定する。DA変換部166は、量子化設定部168から受けつけた量子化数を設定する。また、DA変換部166は、IP/シリアル変換部160から、デジタル信号を受けつける。DA変換部166は、設定された量子化数をもとに、デジタル信号をデジタル/アナログ変換することによって、中間信号を生成する。DA変換部166は、中間信号を周波数変換器116へ出力する。
周波数設定部90は、抽出部170から、局部発振信号の周波数に関する情報を受けつける。周波数設定部90は、受けつけた情報をもとに、局部発振部122に対して、局部発振器の周波数を設定する。つまり、周波数設定部90は、周波数変換の際のパラメータを指示に応じて設定する。局部発振部122は、周波数設定部90による設定に応じた周波数の局部発振信号を周波数変換器116へ出力する。周波数変換器116は、局部発振部122から局部発振信号を入力するとともに、DA変換部166から中間信号を入力する。周波数変換器116は、中間信号に対して、中間周波数帯域から放送周波数帯域へ周波数変換することによって放送信号を生成する。周波数変換器116は、放送信号を送信増幅部118へ出力する。
送信増幅部118は、周波数変換器116からの放送信号を増幅し、送信用BPF120へ出力する。送信用BPF120は、受けつけた放送信号の放送周波数帯域外に含まれるイメージ信号等を減衰し、中継装置送信用アンテナ26から放送信号を電磁波として送信する。なお、送信用BPF120は、周波数設定部90からの指示に応じて通過帯域を設定する。ここで、送信用BPF120は、前述のようなチューナブルフィルタでなくてもよい。その際、局部発振部122をふたつ設けたダブルコンバージョンの構成とされ、さらにLPFも設けられる。制御部86は、中継装置14全体の動作を制御する。
以上の構成による放送システム100の動作を説明する。ユーザは、入力部44に、各中継装置14からの放送信号にて使用すべき変調方式やセグメント数の情報を入力する。量子化数決定部50は、量子化数を決定し、RFチャンネル・セグメント番号決定部46は、RFチャンネル番号およびセグメント番号を中継装置14ごとに決定する。さらに、局発周波数決定部48は、局部発振信号の周波数を中継装置14ごとに決定する。制御部40は、各種の決定結果をまとめるように第1テーブルを生成する。生成部30、AD変換部132、シリアル/IP変換部134、通信部54は、各中継装置14に対応した番組が含まれた通信信号を生成する。その際、AD変換部132は、量子化数決定部50によって設定された量子化数によって、中間信号をアナログ/デジタル変換する。通信部54は、宛先となる中継装置14へ通信信号を送信する。また、通信部54は、第1テーブルが含まれた通信信号をブロードキャスト送信する。
中継装置14の通信部80は、放送装置10からの通信信号を受信し、IP/シリアル変換部160は、通信信号からデジタル信号を抽出する。抽出部170は、第1テーブルを抽出する。量子化設定部168は、第1テーブルに含まれた量子化に関する情報に応じて、DA変換部166に量子化を設定する。DA変換部166は、デジタル信号をデジタル/アナログ変換することによって中間信号を生成する。周波数設定部90は、第1テーブルに含まれた周波数をもとに、局部発振部122からの局部発振信号の周波数を設定する。周波数変換器116は、局部発振部122からの局部発振信号を使用しながら、中間信号を周波数変換することによって、放送信号を生成する。中継装置送信用アンテナ26は、放送信号を送信する。受像装置16は、中継装置14からの放送信号を受信し、放送信号に含まれた番組を再生する。
以下、本発明の変形例を説明する。変形例は、実施例と同様に、放送装置10、中継装置14、受像装置16とを含む放送システム100に関する。変形例においても、放送装置10から中継装置14へ通信信号が送信され、中継装置14は、放送信号を送信する。しかしながら、変形例の放送装置10において量子化数を決定するための処理が、実施例において量子化数を決定するための処理と異なる。前述のごとく、番組を再生するために必要な所要CN値は、変調多値数に応じて定められる。そのような状況のもと、量子化数は、所要CN値を満たすように設定されればよい。変形例に係る放送装置10は、変調多値数と所要CN値との関係を記憶し、ユーザから受けつけた変調多値数をもとに所要CN値を選択する。放送装置10は、量子化数を変更しながらアナログ/デジタル変換を実行する。また、デジタル信号のCN値を測定することによって、放送装置10は、所要CN値を満たすような量子化数を決定する。
変形例に係る放送システム100は、図1と同様のタイプであり、放送装置10は、図2と同様のタイプであり、中継装置14は、図6と同様のタイプである。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。放送装置10の入力部44は、実施例と同様に、ユーザからの変調多値数の入力を受けつける。記憶部42は、変調多値数と所要CN値との対応が示されたテーブルを記憶する。図7は、本発明の変形例に係る記憶部42に記憶されたテーブルのデータ構造を示す。テーブルは、図示のごとく、変調方式欄200、所要CN値欄204を含む。変調方式欄200が変調多値数に相当し、ここでは、変調多値数「QPSK」に対応した所要CN値が「10dB」のように規定されている。図2に戻る。量子化数決定部50は、入力部44から変調多値数を受けつける。量子化数決定部50は、記憶部42に記憶したテーブルを参照しながら、受けつけた変調多値数から所要CN値を導出する。
量子化数決定部50は、量子化数を仮に決定し、AD変換部132へ出力することによって、仮に決定した量子化数をAD変換部132でのアナログ/デジタル変換に使用させる。その際、初期の段階において、量子化数はなるべく小さい値に設定される。また、量子化数決定部50は、AD変換部132において生成されたデジタル信号のCN値を測定する。測定したCN値が所要CN値を超えていれば、量子化数決定部50は、仮に決定した量子化数を最終的に決定する。一方、測定したCN値が所要CN値を超えていなければ、量子化数決定部50は、量子化数を増加させて、前述の処理を繰り返す。測定したCN値が所要CN値を超えたときの量子化数がAD変換部132に設定される。
図8は、本発明の変形例に係る放送装置10における量子化数決定手順を示すフローチャートである。入力部44は、変調方式を入力する(S10)。量子化数決定部50は、記憶部42に記憶したテーブルを参照することによって、変調方式に対応した所要CN値を取得する(S12)。量子化数決定部50は、AD変換部132の量子化数を初期値に設定する(S14)。量子化数決定部50は、デジタル信号のCN値を測定する(S16)。測定したCN値が所要CN値よりも大きくなく(S18のN)、量子化数を増加可能であれば(S20のY)、量子化数決定部50は、量子化数を増加して(S22)、ステップ16に戻る。一方、測定したCN値が所要CN値よりも大きい場合(S18のY)、あるいは量子化数を増加可能でなければ(S20のN)、量子化数決定部50は、量子化数を決定する(S24)。
以下、本発明の別の変形例を説明する。別の変形例も、これまでと同様に、放送装置10、中継装置14、受像装置16とを含む放送システム100に関する。また、別の変形例は、変形例と同様に、変調多値数と所要CN値との関係を記憶し、ユーザから受けつけた変調多値数をもとに所要CN値を選択する。しかしながら、別の変形例に係る放送システム100でのCN値の測定方法が変形例と異なる。別の変形例に係る放送装置10も、量子化数を変更しながらアナログ/デジタル変換を実行する。また、放送装置10は、通信信号を中継装置14へ送信し、通信信号のCN値を中継装置14に測定させる。放送装置10は、測定したCN値を中継装置14から帰還させることによって、CN値を取得する。
別の変形例に係る放送システム100は、図1と同様のタイプであり、放送装置10は、図2と同様のタイプであり、中継装置14は、図6と同様のタイプである。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。放送装置10の入力部44は、ユーザからの変調多値数の入力を受け、記憶部42は、変調多値数と所要CN値との対応が示されたテーブルを記憶する。量子化数決定部50は、記憶部42に記憶したテーブルを参照しながら、受けつけた変調多値数から所要CN値を導出する。量子化数決定部50は、量子化数を仮に決定し、AD変換部132へ出力することによって、仮に決定した量子化数をAD変換部132でのアナログ/デジタル変換に使用させる。その際、初期の段階において、量子化数はなるべく小さい値に設定される。通信部54は、AD変換部132において生成されたデジタル信号をもとに、通信信号を生成し、通信信号を中継装置14へ送信する。
中継装置14の通信部80は、通信信号を受信し、信号変換部162は、通信信号から放送信号を生成する。信号変換部162は、放送信号のCN値を測定する。また、通信部80は、測定したCN値を放送装置10へ送信する。放送装置10の量子化数決定部50は、通信部54を介して、測定したCN値を取得する。測定したCN値が所要CN値を超えていれば、量子化数決定部50は、仮に決定した量子化数を最終的に決定する。一方、測定したCN値が所要CN値を超えていなければ、量子化数決定部50は、量子化数を増加させて、前述の処理を繰り返す。測定したCN値が所要CN値を超えたときの量子化数がAD変換部132に設定される。
図9は、本発明の別の変形例に係る放送システム100における量子化数決定手順を示すシーケンス図である。放送装置10は、変調方式の入力を受けつける(S40)。放送装置10は、量子化数を設定し(S42)、通信信号を送信する(S44)。中継装置14は、放送信号を生成し(S46)、CN値を測定する(S48)。中継装置14は、測定したCN値を通信信号に含めて放送装置10へ送信する(S50)。放送装置10は、測定したCN値を所要CN値と比較し(S52)、量子化数を変更する(S54)。放送装置10は、通信信号を再び送信する(S56)。中継装置14は、放送信号を生成し(S58)、CN値を測定する(S60)。中継装置14は、測定したCN値を通信信号に含めて放送装置10へ送信する(S62)。放送装置10は、測定したCN値を所要CN値と比較し(S64)、量子化数を決定する(S66)。
本発明の実施例によれば、放送装置と中継装置との間において、無線LANシステムを使用するので、中継装置からの送信電力を低くできる。また、中継装置からの送信電力を低くするので、干渉の発生を抑制できる。また、干渉の発生が抑制されるので、中継装置の設置の自由度を高くできる。また、放送装置と中継装置との間において、無線LANシステムを使用するので、エリアを拡大できる。また、放送装置と中継装置との間において、無線LANシステムを使用するので、中継装置の設置の自由度を高くしながら、エリアを拡大できる。
また、中継装置において、放送信号に関する変調機能が省略されるので、中継装置の処理を簡易にできる。また、放送装置から中継装置へ第1テーブルを送信するので、第1テーブルにしたがって中継装置は動作するので、中継装置における処理を簡易にできる。また、中継装置の処理が簡易にされるので、コストを低減できる。また、放送装置は、中継装置間の干渉を考慮してチャンネルを決定するので、干渉を低減できる。また、干渉が低減されるので、放送の品質を向上できる。また、中継装置は、第1テーブルにしたがって局部発振信号の周波数を設定するので、処理を簡易にできる。また、複数の中継装置に関する情報を第1テーブルに含めるので、複数の中継装置を制御できる。
また、中継装置において、変調方式に応じて量子化数を調節するので、通信品質の悪化を抑制しながら、通信信号の容量の増加を削減できる。また、通信信号の伝送容量の増加が抑制されるので、放送装置と中継装置との間において、インターネットアクセスのための信号が送信される場合であっても、インターネットアクセスに与える影響を低減できる。また、実際に生成したデジタル信号のCN値をもとに量子化数を決定するので、量子化数の決定精度を向上できる。また、実際に生成した放送信号のCN値をもとに量子化数を決定するので、量子化数の決定精度を向上できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、放送装置10と中継装置14との間の通信システムが、無線LANシステムであるとしている。しかしながらこれに限らず例えば、通信システムが有線LANシステムであってもよい。本変形例によれば、通信システムの伝送品質を向上できる。また、有線LANシステムの伝送速度が高速である場合、放送システム100に収容する中継装置14の数を増加できる。
本発明の実施例において、量子化数決定部50は、量子化数を特定し、AD変換部132に量子化数を設定する。しかしながらこれに限らず例えば、AD変換部132は、一定の量子化数でアナログ・デジタル変換を実行し、MSBから指定の量子化桁数のみを出力してもよい。その際、量子化数決定部50は、MSBからの量子化桁数を特定して、AD変換部132に設定する。本変形例によれば、AD変換部132の設計の自由度を向上できる。
本発明の実施例において、量子化数が可変に設定されている。しかしながらこれに限らず、放送システム100で使用する変調方式が、QPSKのみのように1種類である場合など、AD変換部132は、予め定められた量子化数にてアナログ/デジタル変換を実行してもよい。本変形例によれば、処理を簡易にできる。
本発明の実施例において、放送装置10は、複数の中継装置14に関する情報をまとめるように第1テーブルを生成し、第1テーブルを複数の中継装置14へ報知している。しかしながらこれに限らず例えば、放送装置10は、各中継装置14に対して、第1テーブルをそれぞれ作成し、第1テーブルに対応した中継装置14のみへ当該第1テーブルをユニキャスト送信してもよい。その際、第1テーブルの宛先は、当該第1テーブルに対応した中継装置14のIPアドレスとされる。本変形例によれば、中継装置14は、第1テーブルから、自らに対応した情報を抽出しなくてもよいので、中継装置14の処理量を低減できる。
本発明の実施例において、放送装置10における複数の生成部30は、複数の中継装置14にそれぞれ対応付けられるように、つまり1対1で対応付けられるように設けられる。しかしながらこれに限らず例えば、複数の中継装置14に対して、ひとつの生成部30が設けられてもよい。その際、当該複数の中継装置14に対して、放送装置10は通信信号をマルチキャスト送信する。本変形例によれば、複数の中継装置14から同一の番組を送信する場合に、通信信号のトラヒックを低減できる。
10 放送装置、 14 中継装置、 16 受像装置、 22 放送装置用アンテナ、 24 中継装置通信用アンテナ、 26 中継装置送信用アンテナ、 28 受像装置用アンテナ、 30 生成部、 32 データ受付部、 34 変調部、 36 IFFT部、 38 直交変調部、 40 制御部、 42 記憶部、 44 入力部、 46 RFチャンネル・セグメント番号決定部、 48 局発周波数決定部、 50 量子化数決定部、 54 通信部、 80 通信部、 86 制御部、 90 周波数設定部、 100 放送システム、 116 周波数変換器、 118 送信増幅部、 120 送信用BPF、 122 局部発振部、 132 AD変換部、 134 シリアル/IP変換部、 160 IP/シリアル変換部、 162 信号変換部、 164 パラメータ設定部、 166 DA変換部、 168 量子化設定部、 170 抽出部。