本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、ディジタルテレビジョン放送に対応した信号(以下、「放送信号」という)を送信する放送システムに関する。放送信号では、複数の無線チャンネルに対して周波数多重がなされている。また、各無線チャンネルは、複数のセグメントによって形成されている。なお、ひとつの無線チャンネルに含まれたひとつのセグメントは、1セグメント放送として使用される。つまり、当該セグメントを受信するだけでも、番組が視聴される。放送事業者以外の団体等が放送信号を送信することによって自主番組を放送する場合に、放送エリアを拡大し、かつ中継を継続的に実行することが要求される。これに対応するために、次の処理が実行される。
本発明の実施例に係る放送システムは、放送装置と中継装置とによって構成される。放送装置と中継装置とは、例えば、無線LAN(Local Area Network)システムのような通信システムによって接続される。以下では、通信システムにおいて規定された信号を「通信信号」と呼ぶ。放送装置は、自主番組が含まれた中間周波数の信号(以下、「中間信号」という)を生成する。ここで、中間信号には、自主番組が変調された状態にて含まれている。なお、放送信号は、放送周波数の信号である。また、中間信号と放送信号とは、周波数帯が異なるだけで、同一の信号形式を有する。つまり、中間信号は、放送信号へ周波数変換する前の信号といえる。放送装置は、中間信号を通信信号に格納し、通信信号を送信する。
中継装置は、放送装置からの通信信号を受信し、通信信号から中間信号を抽出する。また、中継装置は、中間信号を放送信号へ周波数変換し、放送信号を送信する。テレビジョン放送受像装置は、中継装置からの放送信号を受信する。このような構成において、エリアを拡大するために、複数の中継装置が備えられる。その際、複数の中継装置のそれぞれから送信される放送信号には、互いの干渉を低減するような無線チャンネルやセグメントが使用される。以下では、無線チャンネルとセグメントとの組合せを「周波数チャンネル」という。これに対応するために、放送装置は、各中間装置が使用すべき周波数チャンネルを規定し、チャンネルの一覧をテーブルに含めて記憶するとともに、テーブルを各中間装置へ送信する。各中間装置は、テーブルを参照しながら、周波数チャンネルを選択する。
一方、中間装置は、中間信号をメモリに記憶し、メモリから中間信号をFIFO(First−In First−Out)にて抽出し、抽出した中間信号を放送信号へ変換する。通信システムでの伝送路環境が悪化すると、中継装置は、通信信号を受信しにくくなる。そのため、メモリに記憶される中間信号が少なくなり、FIFOによる中間信号の抽出ができなくなる。その結果、中継装置からの放送信号の送信がなされなくなり、中継が継続的になされなくなってしまう。本実施例に係る中継装置は、メモリに記憶された中間信号のうち、放送していない部分のデータ量を監視する。データ量が少なくなると、中継装置は、FIFOによる中間信号の抽出を中止し、中間信号の繰り返しの抽出へ切りかえる。
なお、デジタルラジオ放送に対して、ひとつのセグメント成分を3つのセグメント成分と読み替えることによって、本実施例はデジタルラジオ放送に適用される。さらに、セグメントの概念を有するシステムに対して、少なくともひとつのセグメント成分であって、かつ復調可能な数のセグメント成分を抽出することによって、本実施例は当該システムに適用される。以下では、説明を明瞭にするためのこれらの変形例の説明を省略する。
図1は、本発明の実施例に係る放送システム100の構成を示す。放送システム100は、放送装置10、中継装置14と総称される第1中継装置14a、第2中継装置14b、第N中継装置14n、受像装置16と総称される第1受像装置16a、第2受像装置16b、第M受像装置16mを含む。放送装置10は、放送装置用アンテナ22を含み、中継装置14は、中継装置通信用アンテナ24と総称される第1中継装置通信用アンテナ24a、第2中継装置通信用アンテナ24b、第N中継装置通信用アンテナ24n、中継装置送信用アンテナ26と総称される第1中継装置送信用アンテナ26a、第2中継装置送信用アンテナ26b、第N中継装置送信用アンテナ26nを含み、受像装置16は、受像装置用アンテナ28と総称される第1受像装置用アンテナ28a、第2受像装置用アンテナ28b、第M受像装置用アンテナ28mを含む。
放送装置10は、自主番組が含まれた中間信号を生成する。中間信号は、放送信号と同一の形式でありながら、異なった周波数の信号であり、放送信号とは、ディジタルテレビジョン放送に対応した信号である。また、ディジタルテレビジョン放送とは、例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial)、DVB(Digital Video Broadcasting)にて規定されたシステムである。ISDB−Tでは、複数の無線チャンネルに対して周波数分割多重がなされている。
また、各無線チャンネルは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号によって形成されており、かつ複数のセグメントによって形成されている。具体的には、429KHz幅のセグメントが13個含まれている。13個のセグメントのうち、ひとつはワンセグメント放送用に予約されている。ワンセグメント放送用に予約されたセグメントは、中央のセグメントであり、セグメント番号「0」であるとする。なお、前述のごとく、以下では、セグメントおよび無線チャンネルを「周波数チャンネル」と総称する。また、中間信号や放送信号の変調多値数は、可変に規定されている。例えば、13個のセグメントを使用する場合に、変調方式として64QAMが使用され、ワンセグメント放送を使用する場合に、変調方式としてQPSKが使用されている。
ここで、放送装置10は、中間信号をアナログ/デジタル変換することによってデジタル信号を生成する。また、放送装置10は、各中継装置14にて使用される周波数チャンネルが互いに干渉しないように、各中継装置14に対する周波数チャンネルを規定し、それをテーブルに含める。放送装置10は、テーブルおよびデジタル信号を通信信号に格納する。放送装置10は、放送装置用アンテナ22から通信信号を送信する。
中継装置14は、例えば、放送装置10からの通信信号を受信できるような位置に配置されている。中継装置14は、中継装置通信用アンテナ24を介して、放送装置10からの通信信号を受信する。中継装置14は、通信信号に格納されたテーブルおよびデジタル信号を抽出する。また、中継装置14は、抽出したデジタル信号、つまり自主番組をメモリへ記憶した後、当該メモリに記憶したデジタル信号をFIFOにて抽出する。中継装置14は、デジタル信号をアナログ信号にデジタル/アナログ変換することによって中間信号を生成する。また、中継装置14は、テーブルに含まれた周波数チャンネルの情報に応じて局部発振信号の周波数を設定しながら、中間信号を周波数変換することによって、放送信号を生成する。中継装置14は、中継装置送信用アンテナ26を介して、放送信号を送信する。ここで、中継装置14は、メモリに記憶したデジタル信号のうち、未抽出の部分のデータ量がしきい値よりも小さくなった場合、メモリに記憶したデジタル信号を繰り返して抽出する。
受像装置16は、所定の中継装置14からの放送信号を受信できる位置に配置されている。受像装置16は、受像装置用アンテナ28を介して、中継装置14からの放送信号を受信する。ここで、放送信号は、所定の周波数チャンネルに配置されている。受像装置16は、放送信号を復調することによって、所定の周波数チャンネル成分に含まれた自主番組を再生する。また、受像装置16は、図示しないモニタに番組を表示する。ここで、自主番組は、内容が順次更新されていることもあれば、内容が繰り返されていることもある。前者は、中継装置14においてFIFOによる抽出がなされている場合に相当し、後者は、中継装置14において繰り返しの抽出がなされている場合に相当する。仮に、受像装置16が、図示しない放送事業者の放送局からの放送信号を直接受信できる位置に配置されていれば、受像装置16は、当該放送信号を受信し、放送信号に含まれた番組を再生できる。
図2は、放送装置10の構成を示す。放送装置10は、生成部30と総称される第1生成部30a、第2生成部30b、第N生成部30n、AD変換部132と総称される第1AD変換部132a、第2AD変換部132b、第NAD変換部132n、シリアル/IP変換部134と総称される第1シリアル/IP変換部134a、第2シリアル/IP変換部134b、第Nシリアル/IP変換部134n、通信部54、放送装置用アンテナ22、制御部40、記憶部42、入力部44を含む。また、生成部30は、データ受付部32、変調部34、IFFT部36、直交変調部38を含む。
複数の生成部30は、図1に示された複数の中継装置14にそれぞれ対応付けられるように設けられる。データ受付部32は、放送システム100において放送すべき自主番組を受けつける。データ受付部32は、図示しない記憶部に接続され、記憶部に記憶された自主番組を読み取る。ここで、自主番組は、動画像データであり、かつデジタルデータとして形成されている。なお、このような動画像データやデジタルデータには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。また、各生成部30に対応したデータ受付部32は、互いに異なった自主番組を受けつける。なお、図示しない記憶部は、記憶部42であってもよい。データ受付部32は、自主番組を変調部34へ出力する。
変調部34は、データ受付部32から自主番組を受けつける。変調部34は、自主番組に対応したデータを変調する。変調部34は、自主変調に使用すべき変調方式として、QPSKや64QAMを使用する。なお、変調部34は、制御部40からの指示に応じて使用すべき変調方式を選択する。変調部34は、変調結果をIFFT部36へ逐次出力する。IFFT部36は、変調部34からの変調結果を受けつける。IFFT部36は、変調結果を周波数領域のサブキャリアに配置させることによって、周波数領域のOFDM信号を生成する。また、IFFT部36は、周波数領域のOFDM信号に対してIFFTを実行することによって、時間領域のOFDM信号を生成する。ここで、周波数領域のOFDM信号および時間領域のOFDM信号は、ディジタルテレビジョン放送において定められたOFDM信号に相当する。変調部34は、時間領域のOFDM信号を直交変調部38へ逐次出力する。
直交変調部38は、変調部34からの時間領域のOFDM信号を直交変調することによって、中間信号を生成する。前述のごとく、中間信号は、放送信号と周波数帯域が異なっているので、放送信号に対応した信号といえる。なお、放送信号にて使用すべき放送周波数、つまり無線チャンネルは、複数規定されており、可変に規定されている。AD変換部132は、直交変調部38から中間信号を受けつけ、中間信号をアナログ/デジタル変換することによって、前述のデジタル信号を生成する。例えば、AD変換部132は、デジタル信号を生成する際に、変調方式に応じた最適な量子化数を使用する。
シリアル/IP変換部134は、AD変換部132からデジタル信号を受けつける。後述の通信部54にて通信に使用すべき信号は、IP(Internet Protocol)パケット形式を有している。IPパケットには、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。シリアル/IP変換部134は、デジタル信号をIPパケットに格納する。以下では、デジタル信号が含まれたIPパケットを「通信信号」という。シリアル/IP変換部134は、通信信号を通信部54へ出力する。
通信部54は、無線LANシステムに対応した通信機能を有する。なお、無線LANシステムとして公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。通信部54は、放送装置用アンテナ22を介して、無線LANシステムの通信機能を有した図示しない中継装置14との通信を実行する。通信部54は、シリアル/IP変換部134から通信信号を受けつけ、放送装置用アンテナ22を介して通信信号を中継装置14へ送信する。ここで、各中継装置14に対してIPアドレスが付与されており、通信部54は、通信信号を送信すべき中継装置14に対応したIPアドレスを通信信号に付与する。つまり、通信部54は、通信信号を送信すべき中継装置14を宛先として、当該通信信号をユニキャスト送信する。
入力部44は、中継装置14を識別するための情報、中継装置14からの放送信号に使用される帯域幅に関する情報を入力する。中継装置14を識別するための情報には、中継装置14の名称、中継装置14のIPアドレスが含まれ、中継装置14からの放送信号に使用される帯域幅に関する情報には、無線チャンネル数、セグメント数に関する情報が含まれる。さらに、入力部44は、中継装置14との間の通信システムにおいて使用する周波数に関する情報も入力する。入力部44は、入力したこれらの情報を制御部40へ出力する。
制御部40は、入力部44からの情報を受けつける。制御部40は、複数の中継装置14のそれぞれからの放送信号間の干渉が互いに小さくなるように、複数の中継装置14のそれぞれからの放送信号にて使用させる周波数チャンネルを決定する。ここで、周波数チャンネルは、無線チャンネルとセグメントとの組合せによって特定されるので、それらが決定される。具体的に説明すると、制御部40は、まだ使用されていない周波数チャンネルを選択する。また、制御部40は、中継装置14において使用される周波数チャンネルをもとに、中間信号と放送信号との間の周波数に関する指示を中継装置14単位に生成する。ここで、中間信号と放送信号との間の周波数とは、中継装置14での局部発振信号の周波数に相当する。
さらに、制御部40は、入力部44において入力した情報、決定した周波数チャンネル、局部発振信号の周波数を含むように、ひとつのテーブルを生成する。また、テーブルには、複数の中継装置14に関する情報が含まれる。制御部40は、生成したテーブルを記憶部42に記憶する。制御部40は、記憶部42からテーブルを抽出し、テーブルが含まれた通信信号を生成する。制御部40は、通信信号を通信部54へ出力する。通信部54は、制御部40からの通信信号も受けつけ、当該通信信号も送信する。ここで、テーブルが含まれた通信信号は、複数の中継装置14へ送信されるべきであるので、当該通信信号には、ブロードキャスト送信あるいはマルチキャスト送信がなされる。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図3は、中継装置14の構成を示す。中継装置14は、中継装置通信用アンテナ24、中継装置送信用アンテナ26、通信部80、IP/シリアル変換部160、記憶部180、信号変換部162、パラメータ設定部164、制御部86を含む。また、信号変換部162は、DA変換部166、周波数変換器116、送信増幅部118、送信用BPF120、局部発振部122を含む。図1のごとく、放送システム100には、複数の中継装置14が含まれている。
通信部80は、図示しない通信部54と同様に、無線LANシステムに対応した通信機能を有する。通信部80は、中継装置通信用アンテナ24を介して、図示しない放送装置10との通信を実行する。通信部80は、中継装置通信用アンテナ24を介して放送装置10からの通信信号を受信する。ここで、通信信号には、デジタル信号やテーブルが格納されている。通信部80は、受信した通信信号を復調した後、IP/シリアル変換部160へ出力する。
IP/シリアル変換部160は、図示しないシリアル/IP変換部134とは逆の動作を実行する。IP/シリアル変換部160は、通信部80から、復調された通信信号を受けつける。ここで、通信信号は、テーブルやデジタル信号が含まれたIPパケットに相当する。IP/シリアル変換部160は、通信信号から、テーブルやデジタル信号を抽出する。IP/シリアル変換部160は、抽出したデジタル信号(以下、これも「デジタル信号」という)を記憶部180へ出力し、抽出したテーブルをパラメータ設定部164へ出力する。
記憶部180は、前述のメモリに相当し、IP/シリアル変換部160からのデジタル信号を受けつけ、デジタル信号を記憶する。つまり、記憶部180は、通信部80において受信した通信信号に格納された自主番組を記憶する。また、記憶部180は、記憶したデジタル信号をDA変換部166へ出力する。ここで、記憶部180へのデジタル信号の書き込みの際のアドレス制御、記憶部180からのデジタル信号の読み出しの際のアドレス制御は、制御部86によってなされる。
通常の状態において、制御部86は、記憶部180に記憶したデジタル信号をFIFOにて出力する。つまり、記憶部180に記憶したデジタル信号のうち、先に書き込まれたデジタル信号から優先的に読み出される。なお、読み出しの対象となるデジタル信号は、その時点において読み出しがなされていないデジタル信号である。そのため、制御部86は、一度読み出されたデジタル信号が再び読み出されないように、自主番組の進行の順番にしたがってデジタル信号を記憶部180から読み出す。
一方、制御部86は、記憶部180に記憶したデジタル信号のうち、未抽出の部分のデータ量を監視する。例えば、連続したデジタル信号が、連続したアドレスに書き込まれる場合に、制御部86は、書き込みアドレスと読み出しアドレスとの差分を計算することによって、未抽出部分のデータ量を把握する。制御部86は、データ量がしきい値よりも小さくなった場合、前述のFIFOによる出力を中止し、デジタル信号を所定期間において繰り返して読み出す。つまり、制御部86は、所定期間の自主番組が繰り返し放送されるように制御する。
ここで、繰り返し読み出される際のデジタル信号は、IP/シリアル変換部160から受けつけたデジタル信号であってもよいが、当該デジタル信号とは別に、別のデジタル信号が記憶部180に予め記憶されていてもよい。つまり、繰り返し放送用の自主番組が予め記憶されていてもよい。その際、所定期間において完結する内容の自主番組が用意される。DA変換部166は、IP/シリアル変換部160から、デジタル信号を受けつける。DA変換部166は、予め設定された量子化数をもとに、デジタル信号をデジタル/アナログ変換することによって、中間信号を生成する。DA変換部166は、中間信号を周波数変換器116へ出力する。
パラメータ設定部164は、IP/シリアル変換部160からテーブルを受けつける。パラメータ設定部164は、テーブルから局部発振信号の周波数に関する情報を抽出し、局部発振信号の周波数に関する情報をもとに、局部発振部122に対して、局部発振器の周波数を設定する。局部発振部122は、パラメータ設定部164による設定に応じた周波数の局部発振信号を周波数変換器116へ出力する。周波数変換器116は、局部発振部122から局部発振信号を入力するとともに、DA変換部166から中間信号を入力する。周波数変換器116は、中間信号に対して、中間周波数帯域から放送周波数帯域へ周波数変換することによって放送信号を生成する。周波数変換器116は、放送信号を送信増幅部118へ出力する。
送信増幅部118は、周波数変換器116からの放送信号を増幅し、送信用BPF120へ出力する。送信用BPF120は、受けつけた放送信号の放送周波数帯域外に含まれるイメージ信号等を減衰し、中継装置送信用アンテナ26から放送信号を電磁波として送信する。なお、送信用BPF120は、パラメータ設定部164からの指示に応じて通過帯域を設定する。ここで、送信用BPF120は、前述のようなチューナブルフィルタでなくてもよい。その際、局部発振部122をふたつ設けたダブルコンバージョンの構成とされ、さらにLPFも設けられる。
以上の構成による放送システム100の動作を説明する。図4は、中継装置14における中継処理の手順を示すフローチャートである。制御部86は、記憶部180における未送信のデータ量を確認する(S10)。データ量がしきい値よりも少なくなければ(S12のN)、制御部86は、FIFOによる送信を実行する(S14)。一方、データ量がしきい値よりも少なければ(S12のY)、制御部86は、繰り返しによる送信を実行する(S16)。
次に、変形例を説明する。放送事業者の放送局から送信された放送信号を受信し、受信した信号を増幅してから、送信する中継装置に関する。実施例と同様の課題に対応するために、変形例に係る中継装置は、次の処理を実行する。中継装置は、2つの中継装置、つまり前段中継装置と後段中継装置によって構成される。前段中継装置と後段中継装置とは、実施例での放送装置と中継装置と同様に、無線LANシステムのような通信システムによって接続される。前段中継装置は、放送信号を受信し、放送信号を中間信号へ周波数変換し、中間信号を通信信号に格納し、通信信号を送信する。ここで、中間信号には、放送信号に含まれた少なくともひとつの無線チャンネルが含まれる。また、少なくともひとつのセグメントが含まれてもよい。後段中継装置は、実施例での中継装置と同様の処理を実行する。
図5は、本発明の変形例に係る放送システム500の構成を示す。放送システム500は、放送局510、前段中継装置512、後段中継装置514、受像装置516を含む。放送局510は、放送局用アンテナ518を含み、前段中継装置512は、前段中継装置受信用アンテナ520、前段中継装置通信用アンテナ522を含み、後段中継装置514は、後段中継装置通信用アンテナ524、後段中継装置送信用アンテナ526を含み、受像装置516は、受像装置用アンテナ528を含む。ここで、前段中継装置512、後段中継装置514、受像装置516は、建物502の中に設置されている。
放送局510は、放送局用アンテナ518から放送信号を送信する。前段中継装置512は、建物502の外側付近、例えば、放送局510からの放送信号を受信できるような位置に設置されている。前段中継装置512は、前段中継装置受信用アンテナ520を介して、放送局510からの放送信号を受信する。前段中継装置512は、放送信号のうちの少なくともひとつの無線チャンネル成分、あるいは無線チャンネル中の少なくともひとつのセグメント成分を抽出し、それを周波数変換することによって中間信号を生成する。
以下では、中間信号に含まれる無線チャンネル成分の数、セグメント成分の数は任意の値でよいとする。また、前段中継装置512は、中間信号をアナログ/デジタル変換することによってデジタル信号を生成する。前段中継装置512は、無線LANシステムのような通信システムにも対応しており、デジタル信号を通信信号に格納する。前段中継装置512は、前段中継装置通信用アンテナ522から、後段中継装置514へ通信信号を送信する。また、前段中継装置512は、前述のテーブルを通信信号に格納して、通信信号を送信する。後段中継装置514は、図1の中継装置14に相当し、受像装置516は、図1の受像装置16に相当するので、ここでは説明を省略する。
図6は、前段中継装置512の構成を示す。前段中継装置512は、前段中継装置受信用アンテナ520、前段中継装置通信用アンテナ522、信号変換部530、シリアル/IP変換部534、パラメータ設定部536、通信部554、制御部558を含む。また、信号変換部530は、受信用BPF560、受信増幅部562、周波数変換器564、発振部572、AD変換部532を含む。
前段中継装置受信用アンテナ520は、図示しない放送局510からの放送信号を受信する。前段中継装置受信用アンテナ520は、受信した放送信号を受信用BPF560へ出力する。受信用BPF560は、前段中継装置受信用アンテナ520からの放送信号から通過帯域の部分を抽出する。ここで、通過帯域は、複数の無線チャンネル成分やひとつの無線チャンネル成分(以下、これらを「チャンネル成分」と総称する)を抽出できるような値に予め設定されている。受信用BPF560には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、ひとつのチャンネル成分には、複数のセグメント成分が含まれており、受信用BPF560は、少なくともひとつのセグメント成分を抽出してもよい。ここでは、説明を明瞭にするために、抽出したセグメント成分も「チャンネル成分」ということがある。受信用BPF560は、チャンネル成分を受信増幅部562へ出力する。
受信増幅部562は、受信用BPF560からのチャンネル成分を増幅する。ここで、チャンネル成分は、放送周波数帯域の信号である。また、受信増幅部562は、増幅したチャンネル成分を周波数変換器564へ出力する。周波数変換器564は、受信増幅部562からチャンネル成分を受けつけるとともに、発振部572から局部発振信号を受けつける。なお、発振部572は、パラメータ設定部536からの指示に応じて局部発振信号の周波数を設定する。ここでは、受信用BPF560において設定される通過帯域の周波数に合わせて、局部発振信号の周波数が設定される。
また、説明を簡易にするために、パラメータ設定部536は、放送信号におけるチャンネルの配置に応じて、周波数の設定を予め記憶しているものとする。なお、周波数の設定を切りかえる場合、パラメータ設定部536は、所定のインターフェイスを介して切替の指示を受けつければよい。周波数変換器564は、発振部572からの局部発振信号によって、受信増幅部562からの放送周波数帯域のチャンネル成分を中間周波数帯のチャンネル成分へ周波数変換する。ここで、中間周波数帯のチャンネル成分が、前述の中間信号に相当する。周波数変換器564は、中間信号をAD変換部532へ出力する。
AD変換部532は、周波数変換器564から中間信号を受けつけ、中間信号をアナログ/デジタル変換することによって、前述のデジタル信号を生成する。ここで、AD変換部532は、デジタル信号を生成する際に、量子化数に関する指示をパラメータ設定部536から受けつける。ここでは、説明を簡易にするために、量子化数は固定であるとする。シリアル/IP変換部534は、図2のシリアル/IP変換部134に相当し、通信部554は、図2の通信部54に相当するので、ここでは、説明を省略する。なお、通信部554は、前述のテーブルが格納された通信信号も送信する。
次に、別の変形例を説明する。これまでの説明において、中継装置14や後段中継装置514は、通常の状態に、FIFOにて読み出したデジタル信号を送信し、未送信のデータ量が少なくなった場合に、繰り返して読み出したデジタル信号を送信している。一方、別の変形例に係る中継装置は、通常の状態に、これまでと同様に動作し、通信信号を受信できない場合に、その旨(以下、「無線LAN故障情報」という)を放送信号にて放送する。その結果、受像装置16や受像装置516において、無線LAN故障情報が受信されている場合に、ユーザは、障害が発生していることを認識できる。一方、受像装置16や受像装置516において、無線LAN故障情報が受信されていないが、放送信号も受信されていない場合に、ユーザは、中継装置14や後段中継装置514との間にて、障害が発生していることを認識できる。ユーザは、障害の発生原因を容易に特定できる。
別の変形例に係る放送システムは、図1の放送システム100や図5の放送システム500と同様のタイプである。別の変形例に係る通信システムが放送システム100と同様のタイプである場合、放送装置10は、図2と同様のタイプであり、中継装置14は、図3と同様のタイプである。また、別の変形例に係る通信システムが放送システム500と同様のタイプである場合、前段中継装置512は、図6と同様のタイプであり、後段中継装置514は、図3と同様のタイプである。ここでは、差異を中心に説明する。また、中継装置14か後段中継装置514かにかかわらず、中継装置14として説明する。
記憶部180は、前述のごとく、IP/シリアル変換部160からのデジタル信号を記憶する。制御部86は、記憶部180に記憶したデジタル信号のうち、未抽出の部分のデータ量を監視する。制御部86は、データ量がしきい値よりも小さくなければ、前述のごとく、FIFOにてデジタル信号を出力する。一方、制御部86は、データ量がしきい値よりも小さくなった場合、通信部80における通信信号の受信状況が悪化している旨をデジタル信号へ格納し、デジタル信号を出力する。なお、制御部86は、制御部86でのデータ量を監視する代わりに、通信部80において受信している通信信号のスループットを測定してもよい。ここで、スループットの測定には公知の技術が使用されればよい。制御部86は、スループットがしきい値よりも小さくなった場合に、通信部80における通信信号の受信状況が悪化している旨をデジタル信号へ格納し、デジタル信号を出力してもよい。
次に、さらに別の変形例を説明する。これまでの説明において、通常の状態に、FIFOにて読み出したデジタル信号が送信され、未送信のデータ量が少なくなった場合に、繰り返して読み出したデジタル信号が送信されている。さらに別の変形例に係る中継装置も、これまでと同様に動作するが、TS(Transport Stream)信号がそのまま通信信号に含められている。
図7は、本発明のさらに別の変形例に係る放送システム600の構成を示す。放送システム600は、放送装置602、中継装置604を含む。また、放送装置602は、第1記憶部610、通信部612、放送装置通信用アンテナ614を含む。また、中継装置604は、中継装置通信用アンテナ646、通信部648、生成部620、信号変換部622、中継装置放送用アンテナ624、制御部626を含む。さらに、生成部620は、データ受付部628、第2記憶部630、変調部632、IFFT部634、直交変調部636を含み、信号変換部622は、周波数変換部638、局部発振部640、送信増幅部642、送信BPF644を含む。
第1記憶部610は、自主番組をデジタルデータとして記憶する。また、第1記憶部610に記憶された自主番組は、TS信号の形式を有する。なお、TS信号は公知の技術であるので、ここでは説明を省略する。通信部612、放送装置通信用アンテナ614は、図2の通信部54、放送装置用アンテナ22に対応し、第1記憶部610に記憶されたTS信号が格納された通信信号を生成し、通信信号を送信する。
中継装置通信用アンテナ646、通信部648は、図3の中継装置通信用アンテナ24、通信部80に相当し、通信信号を受信する。また、通信部648は、通信信号からTS信号を抽出する。データ受付部628は、図2のデータ受付部32に相当し、通信部648からTS信号を受けつける。第2記憶部630は、図3の記憶部180に相当し、データ受付部32からTS信号を受けつけ、TS信号を記憶する。記憶部180へのTS信号の書き込み、記憶部180からのTS信号の読み出しは、制御部626によってなされる。制御部626は、図3の制御部86と同様に動作するので、ここでは説明を省略する。
変調部632、IFFT部634、直交変調部636は、図2の変調部34、IFFT部36、直交変調部38に相当する。また、周波数変換部638、局部発振部640、送信増幅部642、送信BPF644、中継装置放送用アンテナ624は、図3の周波数変換器116、局部発振部122、送信増幅部118、送信用BPF120、中継装置送信用アンテナ26に相当する。その結果、中継装置放送用アンテナ624は、放送信号を送信する。
本発明の実施例によれば、放送装置と中継装置との間において、無線LANシステムを使用するので、中継装置からの送信電力を低くできる。また、中継装置からの送信電力を低くするので、干渉の発生を抑制できる。また、干渉の発生が抑制されるので、中継装置の設置の自由度を高くできる。また、放送装置と中継装置との間において、無線LANシステムを使用するので、エリアを拡大できる。また、放送装置と中継装置との間において、無線LANシステムを使用するので、中継装置の設置の自由度を高くしながら、エリアを拡大できる。
また、未送信の部分のデータ量が少なくなった場合に、自主番組が繰り返された放送信号を送信するので、継続的な中継を実行できる。また、繰り返して放送信号へ格納させるための自主番組を別途記憶しておくので、当該自主番組の長さを自由に設計できる。また、自主番組の長さが自由に設計されるので、自主番組の長さを繰り返し期間に合わせることができる。また、自主番組の長さが繰り返し周期に合わされるので、ユーザの違和感が少なくなるような自主番組を提供できる。
また、中継装置において、放送信号に関する変調機能が省略されるので、中継装置の処理を簡易にできる。また、放送装置から中継装置へテーブルを送信し、テーブルにしたがって中継装置は動作するので、中継装置における処理を簡易にできる。また、中継装置の処理が簡易にされるので、コストを低減できる。また、放送装置は、中継装置間の干渉を考慮してチャンネルを決定するので、干渉を低減できる。また、干渉が低減されるので、放送の品質を向上できる。また、中継装置は、テーブルにしたがって局部発振信号の周波数を設定するので、処理を簡易にできる。また、複数の中継装置に関する情報をテーブルに含めるので、複数の中継装置を制御できる。また、通信信号の受信状況が悪化した場合に、その旨を放送するので、障害の要因を簡易に通知できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、放送装置10と中継装置14との間の通信システム、前段中継装置512と後段中継装置514との間の通信システムが、無線LANシステムであるとしている。しかしながらこれに限らず例えば、通信システムが有線LANシステムであってもよい。本変形例によれば、通信システムの伝送品質を向上できる。また、有線LANシステムの伝送速度が高速である場合、放送システム100や放送システム500に収容する中継装置14や後段中継装置514の数を増加できる。
本発明の実施例において、放送装置10や前段中継装置512は、複数の中継装置14や複数の後段中継装置514に関する情報をまとめるようにテーブルを生成し、テーブルを報知している。しかしながらこれに限らず例えば、放送装置10は、各中継装置14に対して、テーブルをそれぞれ作成し、テーブルに対応した中継装置14のみへテーブルをユニキャスト送信してもよい。その際、テーブルの宛先は、当該テーブルに対応した中継装置14のIPアドレスとされる。また、前段中継装置512において同様の処理がなされてもよい。本変形例によれば、中継装置14や後段中継装置514は、テーブルから、自らに対応した情報を抽出しなくてもよいので、中継装置14や後段中継装置514の処理量を低減できる。
本発明の実施例において、放送装置10における複数の生成部30は、複数の中継装置14にそれぞれ対応付けられるように、つまり1対1で対応付けられるように設けられる。しかしながらこれに限らず例えば、複数の中継装置14に対して、ひとつの生成部30が設けられてもよい。その際、当該複数の中継装置14に対して、放送装置10は通信信号をマルチキャスト送信する。本変形例によれば、複数の中継装置14から同一の番組を送信する場合に、通信信号のトラヒックを低減できる。
本発明の実施例において、放送装置10から中継装置14へ、中間信号を格納した通信信号が送信されている。しかしながらこれに限らず例えば、放送装置10から中継装置14、ベースバンドの時間領域のOFDM信号やベースバンドの周波数領域のOFDM信号が送信されてもよい。以下では、これらの信号は、ベースバンド信号と総称される。その際、中継装置14は、ベースバンド信号に対して直交変調を実行した後に、放送信号への変換を実行する。また、前段中継装置512と後段中継装置514との間においても、同様の処理がなされてもよい。その際、前段中継装置512は、中間信号に対して直交検波、復調を実行する。本変形例によれば、放送システム100や放送システム500の構成の自由度を向上できる。
10 放送装置、 14 中継装置、 16 受像装置、 22 放送装置用アンテナ、 24 中継装置通信用アンテナ、 26 中継装置送信用アンテナ、 28 受像装置用アンテナ、 30 生成部、 32 データ受付部、 34 変調部、 36 IFFT部、 38 直交変調部、 40 制御部、 42 記憶部、 44 入力部、 54,80 通信部、 86 制御部、 100 放送システム、 116 周波数変換器、 118 送信増幅部、 120 送信用BPF、 122 局部発振部、 132 AD変換部、 134 シリアル/IP変換部、 160 IP/シリアル変換部、 162 信号変換部、 164 パラメータ設定部、 166 DA変換部、 180 記憶部。