本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、ディジタルテレビジョン放送に対応した信号(以下、「放送信号」という)を受信し、受信した信号を増幅してから、送信する中継装置に関する。放送信号では、複数のチャンネルに対して周波数多重がなされている。また、各チャンネルは、複数のセグメントによって形成されている。なお、ひとつのチャンネルに含まれたひとつのセグメントは、1セグメント放送として使用される。つまり、当該セグメントを受信するだけでも、番組が視聴される。このような放送信号を中継する中継装置には、設置の自由度を高くしながらエリアを拡大することが要求される。これに対応するために、次の処理が実行される。
中継装置は、2つの中継装置、つまり第1中継装置と第2中継装置によって構成される。第1中継装置と第2中継装置とは、例えば、無線LAN(Local Area Network)システムのような通信システムによって接続される。以下では、通信システムにおいて規定された信号を「通信信号」と呼ぶ。第1中継装置は、放送信号を受信し、放送信号を中間周波数の信号(以下、「中間信号」という)へ周波数変換し、中間信号を通信信号に格納し、通信信号を送信する。ここで、中間信号には、放送信号に含まれた少なくともひとつのチャンネルが含まれる。また、少なくともひとつのセグメントが含まれてもよい。
第2中継装置は、第1中継装置からの通信信号を受信し、通信信号から中間信号を抽出する。また、第2中継装置は、中間信号を放送信号へ周波数変換し、放送信号を送信する。テレビジョン放送受像装置は、第2中継装置からの放送信号を受信する。ここで、第1中継装置は、中間信号を通信信号に格納する際、中間信号をAD変換器にてデジタル信号へ変換する(以下、デジタル信号に変換された中間信号も「中間信号」という)。その際、通信システムのトラヒック量の増加を抑制するために、AD変換器の量子化数は少ない方が望ましい。一方、量子化数を少なくしすぎると、第2中継装置とテレビジョン受像装置間における品質の悪化が大きくなる。このような量子化数は、第1中継装置において受信する放送信号の品質や、テレビジョン放送受像装置の受信特性、つまり所要CN値に応じて異なる。
これに対応するために、第1中継装置は、所要CN値と量子化数との対応を予めテーブルとして記憶しており、ユーザから所要CN値を受けつける。第1中継装置は、テーブルを参照しながら、所要CN値から量子化数を導出し、量子化数をAD変換器へ設定する。また、第1中継装置は、量子化数を通信信号に含めて第2中継装置へ送信する。第2中継装置は、受けつけた量子化数を使用しながら、通信信号をDA変換器にてアナログ信号へ変換する。このようなアナログ信号が前述の中間信号に相当する。なお、デジタルラジオ放送に対して、ひとつのセグメント成分を3つのセグメント成分と読み替えることによって、本実施例はデジタルラジオ放送に適用される。さらに、セグメントの概念を有するシステムに対して、少なくともひとつのセグメント成分であって、かつ復調可能な数のセグメント成分を抽出することによって、本実施例は当該システムに適用される。以下では、説明を明瞭にするためのこれらの変形例の説明を省略する。
図1は、本発明の実施例に係る中継システム100の構成を示す。中継システム100は、放送局10、第1中継装置12、第2中継装置14、受像装置16を含む。放送局10は、放送局用アンテナ18を含み、第1中継装置12は、第1中継装置受信用アンテナ20、第1中継装置通信用アンテナ22を含み、第2中継装置14は、第2中継装置通信用アンテナ24、第2中継装置送信用アンテナ26を含み、受像装置16は、受像装置用アンテナ28を含む。ここで、第1中継装置12、第2中継装置14、受像装置16は、建物40の中に設置されている。
放送局10は、放送局用アンテナ18から放送信号を送信する。ここで、放送信号とは、前述のごとく、ディジタルテレビジョン放送に対応した信号である。また、ディジタルテレビジョン放送とは、例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial)、DVB(Digital Video Broadcasting)にて規定されたシステムである。ISDB−Tでは、複数のチャンネルに対して周波数分割多重がなされている。
また、各チャンネルは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号によって形成されており、かつ複数のセグメントによって形成されている。具体的には、429KHz幅のセグメントが13個含まれている。13個のセグメントのうち、ひとつはワンセグメント放送用に予約されている。ワンセグメント放送用に予約されたセグメントは、中央のセグメントであり、セグメント番号「0」であるとする。また、放送信号の変調多値数は、可変に規定されている。例えば、13個のセグメントを使用する場合に、変調方式として64QAMが使用され、ワンセグメント放送を使用する場合に、変調方式としてQPSKが使用されている。
第1中継装置12は、建物40の外側付近、例えば、放送局10からの放送信号を受信できるような位置に設置されている。第1中継装置12は、第1中継装置受信用アンテナ20を介して、放送局10からの放送信号を受信する。第1中継装置12は、放送信号のうちの少なくともひとつのチャンネル成分、あるいはチャンネル中の少なくともひとつのセグメント成分を抽出し、それを周波数変換することによって中間信号を生成する。以下では、中間信号に含まれるチャンネル成分の数、セグメント成分の数は任意の値でよいとする。また、第1中継装置12は、中間信号をアナログ/デジタル変換することによってデジタル信号を生成する。
一方、第1中継装置12は、所要CN値と量子化数との対応が示されたテーブルを予め記憶しているとともに、ユーザから所要CN値を受けつける。第1中継装置12は、テーブルを参照しながら、所要CN値から量子化数を導出する。第1中継装置12は、前述のアナログ/デジタル変換の際に、導出した量子化数を使用する。つまり、量子化数をもとにデジタル信号が生成される。第1中継装置12は、無線LANシステムのような通信システムにも対応しており、量子化数の情報およびデジタル信号を通信信号に格納する。第1中継装置12は、第1中継装置通信用アンテナ22から、第2中継装置14へ通信信号を送信する。
第2中継装置14は、建物40の内側、例えば、放送局10からの放送信号を受信できないような位置に配置されている。第2中継装置14は、第2中継装置通信用アンテナ24を介して、第1中継装置12からの通信信号を受信する。第2中継装置14は、通信信号から、量子化数の情報およびデジタル信号を抽出し、量子化数の情報を使用しながら、デジタル信号をアナログ信号にデジタル/アナログ変換することによって中間信号を生成する。また、第2中継装置14は、中間信号を周波数変換することによって、放送信号を生成し、第2中継装置送信用アンテナ26を介して、放送信号を送信する。ここで、第1中継装置12および第2中継装置14の一方が、無線LANシステムのアクセスポイントに相当し、他方が、無線LANシステムのモバイルターミナルに相当する。また、アクセスポイントは、インターネットに接続する。
受像装置16は、建物40の内側、例えば、放送局10からの放送信号を受信できないような位置であり、かつ第2中継装置14からの放送信号を受信できる位置に配置されている。受像装置16は、受像装置用アンテナ28を介して、第2中継装置14からの放送信号を受信する。受像装置16は、放送信号のうち、少なくともひとつのチャンネル成分あるいは少なくともひとつのセグメント成分を復調することによって、少なくともひとつのチャンネル成分あるいは少なくともひとつのセグメント成分に含まれた番組を再生する。また、受像装置16は、図示しないモニタに番組を表示する。仮に、受像装置16が放送局10からの放送信号を直接受信できる位置に配置されていれば、受像装置16は、放送局10からの放送信号を受信し、放送信号に含まれた番組を再生できる。
図2は、第1中継装置12の構成を示す。第1中継装置12は、第1中継装置受信用アンテナ20、第1中継装置通信用アンテナ22、信号変換部130、シリアル/IP変換部134、パラメータ設定部136、通信部54、制御部58を含む。また、信号変換部130は、受信用BPF60、受信増幅部62、周波数変換器64、発振部72、AD変換部132を含み、パラメータ設定部136は、周波数設定部74、受付部138、導出部140、記憶部142を含む。
第1中継装置受信用アンテナ20は、図示しない放送局10からの放送信号を受信する。第1中継装置受信用アンテナ20は、受信した放送信号を受信用BPF60へ出力する。受信用BPF60は、第1中継装置受信用アンテナ20からの放送信号から通過帯域の部分を抽出する。ここで、通過帯域は、複数のチャンネル成分やひとつのチャンネル成分(以下、これらを「チャンネル成分」と総称する)を抽出できるような値に予め設定されている。受信用BPF60には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、ひとつのチャンネル成分には、複数のセグメント成分が含まれており、受信用BPF60は、少なくともひとつのセグメント成分を抽出してもよい。ここでは、説明を明瞭にするために、抽出したセグメント成分も「チャンネル成分」ということがある。受信用BPF60は、チャンネル成分を受信増幅部62へ出力する。
受信増幅部62は、受信用BPF60からのチャンネル成分を増幅する。ここで、チャンネル成分は、放送周波数帯域の信号である。また、受信増幅部62は、増幅したチャンネル成分を周波数変換器64へ出力する。周波数変換器64は、受信増幅部62からチャンネル成分を受けつけるとともに、発振部72から局部発振信号を受けつける。なお、発振部72は、周波数設定部74からの指示に応じて局部発振信号の周波数を設定する。ここでは、受信用BPF60において設定される通過帯域の周波数に合わせて、局部発振信号の周波数が設定される。
また、説明を簡易にするために、周波数設定部74は、放送信号におけるチャンネルの配置に応じて、周波数の設定を予め記憶しているものとする。なお、周波数の設定を切りかえる場合、周波数設定部74は、所定のインターフェイスを介して切替の指示を受けつければよい。周波数変換器64は、発振部72からの局部発振信号によって、受信増幅部62からの放送周波数帯域のチャンネル成分を中間周波数帯のチャンネル成分へ周波数変換する。ここで、中間周波数帯のチャンネル成分が、前述の中間信号に相当する。周波数変換器64は、中間信号をAD変換部132へ出力する。
AD変換部132は、IP/シリアル変換部160から中間信号を受けつけ、中間信号をアナログ/デジタル変換することによって、前述のデジタル信号を生成する。ここで、AD変換部132は、デジタル信号を生成する際に、量子化数に関する指示を導出部140から受けつける。ここでは、量子化数の設定について説明する。図1の受像装置16は、前述のごとく放送信号を受信して、番組を再生するが、その際、番組を再生するために最低限必要となる放送信号のCN値(以下、「最低CN値」という)が定められている。つまり、受像装置16は、最低CN値よりも低いCN値の放送信号を受信しても、番組を再生できない。
そのため、第1中継装置12および第2中継装置14には、受像装置16において最低CN値以上となるように、量子化および中継を実行することが要求される。ここでは、受像装置16における最低CN値を満たすための第1中継装置12でのCN値を「所要CN値」というものとする。その結果、AD変換部132では、所要CN値を満たすような量子化数が必要となる。一方、受像装置16におけるCN値には、最低CN値よりも高いことが要求されるが、余り高くなっても受像装置16において再生される番組の品質は向上しない。一方、そのようなCN値とするために、AD変換部132での量子化数を増加させると、通信信号にて伝送されるべきデータの量が大きくなってしまう。
これらのことを考慮すると、AD変換部132には、所要CN値を満たすような量子化数が設定されるべきである。また、所要CN値は、放送信号の変調多値数、放送信号の品質、受像装置16の受信特性等によって異なる。これに対応するために、受付部138は、ボタン等のインターフェイスを有し、インターフェイスを介してユーザからの所要CN値の入力を受けつける。また、受付部138は、所要CN値の他に、変調多値数の入力を受けつけてもよい。受付部138は、所要CN値や変調多値数を導出部140へ出力する。
記憶部142は、所要CN値と量子化数との対応が示されたテーブルを記憶する。図3は、記憶部142に記憶されたテーブルのデータ構造を示す。テーブルは、図示のごとく、変調多値数欄200、CN値欄202、量子化数欄204を含む。ここでは、変調多値数「A1」、CN値「B1」に対応した量子化数が「C11」のように規定されている。なお、変調多値数が固定の場合、変調多値数欄200は、使用されなくてもよい。図2に戻る。
導出部140は、受付部138から所要CN値および変調多値数を受けつける。導出部140は、記憶部142に記憶したテーブルを参照しながら、受付部138において受けつけた所要CN値および変調多値数から量子化数を導出する。導出部140は、導出した量子化数をAD変換部132へ出力することによって、量子化数をAD変換部132でのアナログ/デジタル変換に使用させる。なお、導出部140は、受付部138から所要CN値のみを受けつけた場合、記憶部142に記憶したテーブルを参照しながら、所要CN値から量子化数を導出してもよい。また、導出部140は、量子化数に関する情報をシリアル/IP変換部134にも出力する。
シリアル/IP変換部134は、AD変換部132からデジタル信号を受けつける。後述の通信部54にて通信に使用すべき信号は、IP(Internet Protocol)パケット形式を有している。IPパケットには、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。シリアル/IP変換部134は、デジタル信号をIPパケットに格納する。なお、シリアル/IP変換部134は、制御信号等もIPパケットに含める。制御信号の一例は、導出部140からの量子化数に関する情報である。以下では、デジタル信号が含まれたIPパケットを「通信信号」という。シリアル/IP変換部134は、通信信号を通信部54へ出力する。
通信部54は、無線LANシステムに対応した通信機能を有する。なお、無線LANシステムとして公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。通信部54は、第1中継装置通信用アンテナ22を介して、無線LANシステムの通信機能を有した図示しない第2中継装置14との通信を実行する。通信部54は、シリアル/IP変換部134から通信信号を受けつけ、第1中継装置通信用アンテナ22を介して通信信号を第2中継装置14へ送信する。制御部58は、第1中継装置12全体の動作を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図4は、第2中継装置14の構成を示す。第2中継装置14は、第2中継装置通信用アンテナ24、第2中継装置送信用アンテナ26、通信部80、IP/シリアル変換部160、信号変換部162、パラメータ設定部164、制御部86を含む。また、信号変換部162は、DA変換部166、周波数変換器116、送信増幅部118、送信用BPF120、発振部122を含み、パラメータ設定部164は、量子化設定部168、周波数設定部90を含む。
通信部80は、図示しない通信部54と同様に、無線LANシステムに対応した通信機能を有する。通信部80は、第2中継装置通信用アンテナ24を介して、図示しない第1中継装置12との通信を実行する。通信部54は、第2中継装置通信用アンテナ24を介して第1中継装置12からの通信信号を受信する。通信部80は、受信した通信信号を復調した後、IP/シリアル変換部160へ出力する。
IP/シリアル変換部160は、図示しないシリアル/IP変換部134とは逆の動作を実行する。IP/シリアル変換部160は、通信部80から、復調された通信信号を受けつける。ここで、通信信号は、量子化数に関する情報およびデジタル信号が含まれたIPパケットに相当する。IP/シリアル変換部160は、通信信号から、量子化数に関する情報およびデジタル信号を抽出する。IP/シリアル変換部160は、抽出したデジタル信号(以下、これも「デジタル信号」という)をDA変換部166へ出力し、抽出した量子化数に関する情報「以下、これも「量子化数に関する情報」という)を量子化設定部168へ出力する。
量子化設定部168は、IP/シリアル変換部160から、量子化数に関する情報を受けつける。量子化設定部168は、受けつけた情報をもとに、DA変換部166に対して、アナログ/デジタル変換を実行する際の量子化数を設定する。DA変換部166は、量子化設定部168から受けつけた量子化数を設定する。また、DA変換部166は、IP/シリアル変換部160から、デジタル信号を受けつける。DA変換部166は、設定された量子化数をもとに、デジタル信号をデジタル/アナログ変換することによって、中間信号を生成する。DA変換部166は、中間信号を周波数変換器116へ出力する。
周波数変換器116は、DA変換部166からの中間信号に対して、中間周波数帯域から放送周波数帯域へ周波数変換することによって放送信号を出力する。なお、図示しない第1中継装置12において受信した信号も放送信号というが、前述のごとく、第1中継装置12は、受信した放送信号のうちの一部のチャンネル成分やセグメント成分を抽出する。そのため、ここでの放送信号は、第1中継装置12において受信した放送信号のうちの一部のチャンネル成分やセグメント成分を含む。その結果、第1中継装置12において受信した放送信号と、ここでの放送信号とは、それぞれ含んでいるチャンネル成分やセグメント成分が異なっている。しかしながら、説明を簡易にするために、ここでは、両者を区別せずに放送信号という。
周波数変換器116は、周波数変換のために、発振部122からの局部発振信号を入力する。ここで、周波数変換器116によって生成される放送信号は、放送局10から送信される放送信号内でのチャンネルの相対的な配置に似たチャンネル配置を有しているが、放送信号の周波数とは異なった周波数を有しているとする。これに対応するように、発振部122からの局部発振信号の周波数は、設定されている。なお、周波数変換器116によって生成される放送信号の周波数は固定であるので、発振部122からの局部発振信号の周波数も固定である。周波数設定部90は、発振部122から発振される局部発振信号の周波数を制御する。周波数設定部90は、固定の周波数を設定するが、図示しない第1中継装置12からの指示を受けつけ、指示に応じた周波数を設定してもよい。周波数変換器116は、放送信号を送信増幅部118へ出力する。
送信増幅部118は、周波数変換器116からの放送信号を増幅し、送信用BPF120へ出力する。送信用BPF120は、受けつけた放送信号の放送周波数帯域外に含まれるイメージ信号等を減衰し、第2中継装置送信用アンテナ26から放送信号を電磁波として送信する。つまり、放送部92は、通信部80において受信した通信信号に含まれたデジタル信号を放送信号にて送信する。なお、送信用BPF120は、周波数設定部90からの指示に応じて通過帯域を設定する。前述のごとく、周波数変換器116によって生成される放送信号の周波数は固定であるので、周波数設定部90からの指示も固定であるとする。制御部86は、第2中継装置14全体の動作を制御する。
以上の構成による中継システム100の動作を説明する。ユーザは、受像装置16での受信特性を考慮しながら、第1中継装置12の受付部138を介して、所要CN値を入力する。導出部140は、記憶部142に記憶したテーブルを参照しながら、受付部138において受けつけた所要CN値から量子化数を導出する。導出部140は、量子化数をAD変換部132へ設定するとともに、量子化数に関する情報をシリアル/IP変換部134へ出力する。第1中継装置12の周波数変換器64は、放送局10からの放送信号を周波数変換することによって中間信号を生成する。AD変換部132は、導出部140によって設定された量子化数によって、中間信号をアナログ/デジタル変換することによってデジタル信号を生成する。シリアル/IP変換部134は、デジタル信号をIPパケットに格納するとともに、量子化数に関する情報もIPパケットに格納する。通信部54は、IPパケットを通信信号として送信する。
第2中継装置14の通信部80は、第1中継装置12からの通信信号を受信し、IP/シリアル変換部160は、通信信号からデジタル信号を抽出するとともに、量子化数に関する情報も抽出する。量子化設定部168は、量子化に関する情報に応じて、DA変換部166に量子化を設定する。DA変換部166は、デジタル信号をデジタル/アナログ変換することによって中間信号を生成する。DA変換部166は、中間信号を周波数変換することによって、放送信号を生成する。第2中継装置送信用アンテナ26は、放送信号を送信する。受像装置16は、第2中継装置14からの放送信号を受信し、放送信号に含まれた番組を再生する。
以下、本発明の変形例を説明する。変形例に係る中継システム100には、実施例に係る中継システム100と同様に、第1中継装置12と第2中継装置14が含まれている。しかしながら、変形例と実施例とでは、第1中継装置12の構成が異なる。第1中継装置12では、放送信号の変調多値数を検出し、変調多値数に応じた量子化数をAD変換器へ自動的に設定する。放送信号の変調多値数を検出するための処理は後述する。変形例に係る中継システム100は、図1に示された中継システム100と同様のタイプであり、変形例に係る第2中継装置14は、図4に示された第2中継装置14と同様のタイプである。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
図5は、本発明の変形例に係る第1中継装置12の構成を示す。第1中継装置12では、図2に示された第1中継装置12と比較して、パラメータ設定部136の構成が異なる。パラメータ設定部136は、周波数設定部74、チューナ部150、変調多値数検出部152、導出部140を含む。
第1中継装置受信用アンテナ20にて受信される放送信号は、13セグメント放送に対応する場合や、ワンセグメント放送に対応する場合がある。例えば、前者の変調方式は、64QAMであり、後者の変調方式は、QPSKである。そのため、放送信号には、可変の変調方式が規定されているといえる。チューナ部150は、受信増幅部62からチャンネル成分を受けつけると、チャンネル成分を復調する。復調には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。また、チューナ部150は、復調した結果(以下、「復調結果」という)を変調多値数検出部152へ出力する。
変調多値数検出部152は、チューナ部150からの復調結果から、変調方式に関する情報を抽出する。なお、復調結果は、TS(Transport Stream)に相当し、変調方式に関する情報は、TSのうちの予め定められた位置に含められている。変調多値数検出部152は、抽出した情報から、放送信号の変調方式を特定する。変調多値数検出部152は、特定した変調方式を導出部140へ出力する。導出部140は、変調多値数検出部152から変調方式を指定されると、変調方式から量子化数を導出する。例えば、導出部140は、図3に示されたテーブルの一部を記憶しており、テーブルを参照しながら、変調方式から量子化数を導出する。導出部140は、導出した量子化数をAD変換部132でのアナログ/デジタル変換に使用させる。
以下、本発明の別の変形例を説明する。別の変形例に係る中継システム100には、これまでの中継システム100と同様に、第1中継装置12と第2中継装置14が含まれている。しかしながら、別の変形例とこれまでの説明とでは、第1中継装置12の構成が異なる。これまでの説明における第1中継装置12は、放送信号を周波数変換することによって、中間信号を生成している。別の変形例に係る第1中継装置12は、放送信号を復調し、復調した信号を判定した後に、判定結果を変調することによって中間信号を生成する。中間信号に対する処理は、例えば、変形例と同様になされる。別の変形例に係る中継システム100は、図1に示された中継システム100と同様のタイプであり、別の変形例に係る第2中継装置14は、図4に示された第2中継装置14と同様のタイプである。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
図6は、本発明の別の変形例に係る第1中継装置12の構成を示す。第1中継装置12では、図2に示された第1中継装置12と比較して、信号変換部130、パラメータ設定部136の構成が異なる。信号変換部130は、受信用BPF60、受信増幅部62、周波数変換器64、ベースバンド処理部180、AD変換部132、発振部72を含み、ベースバンド処理部180は、直交検波部66、復調部68、判定部182、変調部184、直交変調部186を含む。また、パラメータ設定部136は、周波数設定部74、変調多値数検出部152、導出部140を含む。
直交検波部66は、周波数変換器64からの中間信号に対して直交検波を実行することによって、中間周波数帯からベースバンド帯への周波数変換を実行する。以下、ベースバンド帯へ周波数変換した中間信号をベースバンド信号という。直交検波部66は、ベースバンド信号を復調部68へ出力する。復調部68は、ベースバンド信号を復調する。具体的に説明すると、復調部68は、ベースバンド信号に対してFFTを実行することによって、時間領域の信号から周波数領域の信号へ変換する。このような周波数領域の信号は、複数のサブキャリア成分によって形成されている。復調部68は、周波数領域の信号をサブキャリア単位に復調する。以下、復調した周波数領域の信号もまた「周波数領域の信号」という。なお、復調部68は、以上の処理を実行する前に、ベースバンド信号に対して、アナログ/デジタル変換を実行する。また、以下では、アナログ信号であるかデジタル信号であるかにかかわらず、「ベースバンド信号」と呼ぶことにする。復調部68は、周波数領域の信号を判定部182へ出力する。
判定部182は、直交検波部66から周波数領域の信号を受けつけ、周波数領域の信号に対して誤り訂正の復号を実行した後に、判定を実行する。判定部182は、判定結果を変調多値数検出部152へ出力する。また、判定部182は、判定結果に対し誤り訂正の符号化を実行することによって、周波数領域の信号を生成する。ここで、復号に使用される誤り訂正と、符号化に使用される誤り訂正とは、同一であるとする。なお、誤り訂正の復号と符号化には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。判定部182は、生成した周波数領域の信号(以下、これも「周波数領域の信号」という)を変調部184へ出力する。
変調部184は、判定部182から周波数領域の信号を受けつけ、周波数領域の信号をサブキャリア単位に変調する。また、変調部184は、変調した周波数領域の信号に対して、IFFTを実行することによって、周波数領域の信号を時間領域の信号へ変換する。以下では、時間領域の信号もベースバンド信号という。変調部184は、ベースバンド信号に対してデジタル/アナログ変換を実行した後に、アナログ信号としてのベースバンド信号(以下、これも「ベースバンド信号」という)を直交変調部186へ出力する。
直交変調部186は、変調部184からのベースバンド信号に対して直交変調を実行することによって、ベースバンド帯から中間周波数帯への周波数変換を実行する。以下では、中間周波数帯に変換された信号もまた「中間信号」という。AD変換部132は、中間信号を周波数変換器116へ出力する。つまり、ベースバンド処理部180は、中間信号を一旦復調した後に、再び変調することによって中間信号を生成する。変調多値数検出部152は、判定部182から判定結果を受けつける。変調多値数検出部152は、判定結果から、前述のごとく、変調方式に関する情報を抽出する。また、導出部140も、これまでと同様に、AD変換部132における量子化数を設定する。AD変換部132は、直交変調部186からの中間信号をアナログ/デジタル変換することによって、デジタル信号を生成する。
本発明の実施例によれば、中継装置を第1中継装置と第2中継装置とに分割し、両者の間において、無線LANシステムを使用するので、第2中継装置からの送信電力を低くできる。また、第2中継装置からの送信電力を低くするので、干渉の発生を抑制できる。また、干渉の発生が抑制されるので、第2中継装置の設置の自由度を高くできる。また、第1中継装置と第2中継装置との間において、無線LANシステムを使用するので、エリアを拡大できる。また、第1中継装置と第2中継装置との間において、無線LANシステムを使用するので、第2中継装置の設置の自由度を高くしながら、エリアを拡大できる。
また、第1中継装置において、放送信号を復調せずに、通信信号に含めるので、処理量を低減できる。また、第1中継装置において、所要CN値に応じて量子化数を調節するので、通信品質の悪化を抑制しながら、通信信号の容量を削減できる。また、第2中継装置において、通信信号に対して変調せずに、放送信号を生成するので、処理量を低減できる。また、処理量を低減できるので、装置の小型化や低消費電力化を実現できる。また、通信信号の伝送容量の増加が抑制されるので、第1中継装置と第2中継装置との間において、インターネットアクセスのための信号が送信される場合であっても、インターネットアクセスに与える影響を低減できる。
また、放送信号から変調方式に応じて量子化数を自動的に調節するので、通信信号の容量を簡易に削減できる。また、放送信号をもとに自動的に量子化数の調節がなされるので、ユーザの利便性を向上できる。また、自動的に量子化数の調節がなされるので、13セグメント放送やワンセグメント放送を切替ながら受信する場合においても、量子化数を適応的に調節できる。また、第1中継装置において、放送信号を一旦復調した後に、通信信号を生成するので、通信品質の悪化を抑制できる。また、放送信号を一旦復調するが、放送信号に中間信号を含めるので、第2中継装置での処理量の増加を抑制できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、第1中継装置12と第2中継装置14との間の通信システムが、無線LANシステムであるとしている。しかしながらこれに限らず例えば、通信システムが有線LANシステムであってもよい。本変形例によれば、通信システムの伝送品質を向上できる。
本発明の実施例において、放送局10において入力される放送信号は、複数のチャンネルを含み、各チャンネルに、ワンセグメント放送用に予約されたセグメント成分(以下、「ワンセグメント放送用セグメント成分」という)がひとつ含まれている。しかしながらこれに限らず例えば、チャンネルに含まれた複数のセグメント成分のそれぞれが、ワンセグメント放送用セグメント成分であってもよい。その際、受信用BPF60は、周波数設定部74からの指示に応じて、複数のワンセグメント放送用セグメント成分の中から少なくともひとつを選択してもよい。本変形例によれば、さまざまな形式の放送信号に本発明を適用できる。
本発明の実施例において、ワンセグメント放送に適用する場合、第1中継装置12は、放送信号からワンセグメント放送用セグメント成分を抽出し、ワンセグメント放送用セグメント成分を通信信号に格納して、第2中継装置14へ送信している。しかしながらこれに限らず例えば、第1中継装置12は、放送信号から所定数のセグメント成分を抽出し、所定数のセグメント成分を通信信号に格納して、第2中継装置14へ送信してもよい。所定数のセグメント成分の一例は、3つのセグメント成分である。つまり、チャンネルに含まれたセグメント数よりも少ないセグメント成分であって、かつ少なくともひとつのセグメント成分が抽出されればよい。本変形例によれば、ディジタルラジオ放送に本発明を適用できる。
本発明の変形例において、変調多値数検出部152は、復調結果から、変調方式に関する情報を抽出している。しかしながらこれに限らず例えば、ディジタルテレビジョン放送に階層構造が適用されている場合、変調多値数検出部152は、変調方式に関する情報を複数抽出してもよい。階層構造は、ひとつのチャンネルにおいて複数の番組を伝送するための構成であり、例えば、A階層として0セグメントにQPSKのワンセグメント放送が配置され、B階層として1から12セグメントに64QAMのハイビジョン放送が配置されている。また、A階層として0セグメントにQPSKのワンセグメント放送が配置され、B階層として1から12セグメントに64QAMの標準放送番組が3つ配置されている。このような場合、変調多値数検出部152は、複数の番組のそれぞれに対応した変調方式に関する情報を抽出する。また、変調多値数検出部152は、複数の番組のそれぞれに対応した変調方式のうちからひとつを選択する。例えば、変調多値数検出部152は、変調多値数が最大となる変調方式を選択する。変調多値数検出部152は、選択した変調方式を導出部140へ出力する。本変形例によれば、本発明を階層構造にも適用できる。
本発明の実施例、変形例、別の変形例において、導出部140は、量子化数を特定し、AD変換部132に量子化数を設定する。しかしながらこれに限らず例えば、AD変換部132は、一定の量子化数でアナログ・デジタル変換を実行し、MSBから指定の量子化桁数のみを出力してもよい。その際、導出部140は、MSBからの量子化桁数を特定して、AD変換部132に設定する。本変形例によれば、AD変換部132の設計の自由度を向上できる。
本発明の実施例、変形例、別の変形例において、中継システム100は、ひとつの第1中継装置12とひとつの第2中継装置14とを含む。しかしながらこれに限らず例えば、中継システム100は、ひとつの第1中継装置12と複数の第2中継装置14とを含んでもよい。その際、各第2中継装置14における通信部80には、IPアドレスが付与されている。また、複数の第2中継装置14に対して、互いに異なったIPアドレスが付与されている。生成部84は、通信信号にIPアドレスも格納する。なお、第1中継装置12は、通信信号をマルチキャスト送信してもよい。本変形例によれば、第1中継装置12に図示しない複数の信号変換部130を設け、複数のIPアドレスに中継する場合に、中継可能なエリアを拡大できる。また、第1中継装置12に複数の信号変換部130を設け、それぞれに異なるIPアドレスを付与して中継する場合には、各第2中継装置14へ異なる番組を中継することが可能になり、第1中継装置12の台数を削減できる。
本発明の実施例、変形例、別の変形例の任意の組み合わせも有効である。例えば、実施例や変形例に係る第1中継装置12と、別の変形例に係る第1中継装置12とを組み合わせてもよい。その際、第1中継装置12の制御部58は、放送信号の品質、例えば受信電力を測定する。放送信号の品質がしきい値よりもよければ、制御部58は、実施例や変形例に係る第1中継装置12と同様の処理を実行させる。一方、放送信号の品質がしきい値よりもよくなければ、制御部58は、別の変形例と同様の処理を実行させる。本変形例によれば、放送信号の品質がよい場合に処理量を低減でき、放送信号の品質が悪化している場合に通信品質の悪化を抑制できる。
10 放送局、 12 第1中継装置、 14 第2中継装置、 16 受像装置、 18 放送局用アンテナ、 20 第1中継装置受信用アンテナ、 22 第1中継装置通信用アンテナ、 24 第2中継装置通信用アンテナ、 26 第2中継装置送信用アンテナ、 28 受像装置用アンテナ、 54 通信部、 58 制御部、 60 受信用BPF、 62 受信増幅部、 64 周波数変換器、 72 発振部、 74 周波数設定部、 100 中継システム、 130 信号変換部、 132 AD変換部、 134 シリアル/IP変換部、 136 パラメータ設定部、 138 受付部、 140 導出部、 142 記憶部。