JP5213314B2 - アルカリ蓄電池 - Google Patents

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Description

本発明は、電動自転車やハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(PEV:Pure Electric Vehicle)等の大電流放電を要する用途に適した水素吸蔵合金負極板を備えたアルカリ蓄電池に関する。
近年、二次電池(蓄電池)の用途が拡大して、携帯電話、ノートパソコン、電動工具、電動自転車、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(PEV)など広範囲にわたって用いられるようになった。このうち、特に、電動自転車、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(PEV)などの高出力が求められる機器の電源用としては、従来の範囲を遙かに超えた高出力が求められるようになった。このような従来の範囲を遙かに超えた高出力化を達成するための手法が、例えば、特許文献1(特開2000−82491号公報)などで提案されるようになった。
ところで、特許文献1にて提案された高出力化を達成するための手法においては、正極板と負極板との総対向面積を大きくするようにして、両極板間に流れる電流の密度(電流密度)を小さくするようにしている。これにより、高い放電率で作動させても内部抵抗に起因する作動電圧の低下を防止することが可能となって、大きな放電電流を取り出すことができるようになる。この場合、正極板と負極板との総対向面積を大きくするために、正極板および負極板の厚みをできる限り薄くして、渦巻状電極群における正極板および負極板の層数(巻回数)をできる限り多くするようにしている。
特開2000−82491号公報
ところが、上述した特許文献1に示されるように、正極板および負極板の厚みをできる限り薄くして、正極板と負極板との総対向面積を増大させるようにすると、各極板が長手方向に波状に変形して様々な不具合を来すようになることが分かった。例えば、正極板と負極板をセパレータを介して渦巻状に巻回する際、渦巻形状の変形や、対向面積の低下などである。このような変形や、対向面積の低下などが生じる原因について調査したところ、渦巻状電極群の波打ち(極板長手方向での波状変形)が渦巻状電極群の径の長さが増大するに伴って顕在化したためであることが分かった。
これは、薄型化に伴い、水素吸蔵合金からなるスラリーをパンチングメタルからなる極板芯体に塗着し、乾燥させた後、圧延することにより作製される水素吸蔵合金負極板は、高い押圧力で圧延される必要がある。このため、水素吸蔵合金粉末の平均粒径やその粒径分布、水素吸蔵合金粉末の充填密度、極板芯体および水素吸蔵合金の硬さなどの関係により、水素吸蔵合金粉末間や水素吸蔵合金粉末と極板芯体との間での歪や、極板芯体の伸び率に部分的なバラツキが発生し、極板変形(波打ち)に繋がっていると考えられる。
このような現象は、極板長さが従来を遥かに超える領域で特に顕在化するようになった。これは、このような極板変形(波打ち)はこれまでは最大波打ちの手前で所定の極板長さになるように切断されることが殆どであったため、考慮されることがなかった。ところが、従来を遥かに超える極板長さとなるように切断されるようになったために顕在化したと考えられる。
そこで、本発明は上記した問題を解決するためになされたものであって、高密度充填された水素吸蔵合金負極板を用いても、水素吸蔵合金負極板の波打ちの発生を抑制できるようにして、高出力化を達成できるアルカリ蓄電池を提供することを目的とするものである。
本発明のアルカリ蓄電池は、水素吸蔵合金粉末を負極活物質として含有するスラリーをパンチングメタルからなる極板芯体の両面に塗着して形成された水素吸蔵合金負極板と、
ニッケル酸化物あるいはニッケル水酸化物を正極活物質とするニッケル正極板と、これらの両極板を隔離するセパレータと、アルカリ電解液とを外装缶内に備えている。そして、上記目的を達成するため、水素吸蔵合金負極板における水素吸蔵合金の充填密度が5.0g/cm3以上あるとともに、パンチングメタルからなる極板芯体のビッカース硬度をB1とし、水素吸蔵合金のビッカース硬度をB2としたときの両者のビッカース硬度比B2/B1が5.1以下(B2/B1≦5.1)であり、前記水素吸蔵合金は、一般式がLn 1-x Mg x (Ni 1-y y z (ただし、式中のLnはランタノイド元素、Ca,Sr,Sc,Y,Yb,Er,Ti,ZrおよびHfから選ばれる少なくとも一つの元素で、TはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Al,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBから選ばれる少なくとも一つの元素で、0<x≦1、O≦y≦0.5、3.3≦z≦3.8である)で表され、Lnは少なくともNdを含み、Ln中のNdの比率が50%以上であり、 前記水素吸蔵合金負極板の極板容量(X)に対する前記水素吸蔵合金負極板の表面積(Y)の割合(Y/X)が74cm 2 /Ah以上(Y/X≧74cm 2 /Ah)であり、前記水素吸蔵合金粉末の平均粒径は15μm〜35μmであることを特徴とする。
ここで、パンチングメタルからなる極板芯体のビッカース硬度をB1とし、水素吸蔵合金のビッカース硬度をB2としたときの両者のビッカース硬度比B2/B1が5.1以下(B2/B1≦5.1)であると、水素吸蔵合金負極板の波打ちの発生を抑制できることが明らかとなった。これは、極板芯体と水素吸蔵合金のビッカース硬度比B2/B1が5.1以下(B2/B1≦5.1)になると、極板芯体と水素吸蔵合金粉末間の歪が抑制されるようになっためと考えられる。
そして、極板芯体と水素吸蔵合金のビッカース硬度比B2/B1が5.1以下(B2/B1≦5.1)であると、水素吸蔵合金負極板における水素吸蔵合金粉末の充填密度が5.0g/cm3以上という高充填密度であっても、水素吸蔵合金負極板の波打ちの発生が防止されるようになる。また、極板芯体と水素吸蔵合金のビッカース硬度比B2/B1が5.1以下(B2/B1≦5.1)であると、水素吸蔵合金負極板の極板容量X(Ah)に対する表面積Y(cm2)の割合Y/Xが74cm2/Ah以上(Y/X≧74cm2/Ah)の高対向面積であっても、水素吸蔵合金負極板の波打ちの発生が防止されるようになる。
この場合、水素吸蔵合金粉末の平均粒径が35μmより大きくなると、当該水素吸蔵合金負極板の製造時の圧延により水素吸蔵合金粉末単体が受ける荷重が大きくなって、水素吸蔵合金粉末が変形することに起因して、水素吸蔵合金負極板に波打ちが発生するようになることが明らかになった。
また、水素吸蔵合金粉末の平均粒径が15μm未満においては、水素吸蔵合金粒径が小さいことに起因して著しい水素吸蔵合金が著しく酸化されるようになって低寿命となることが明らかになった。さらに、水素吸蔵合金粉末の平均粒径が15μm未満においては、水素吸蔵合金負極板の活物質層の厚み方向に水素吸蔵合金の粒子数が著しく増加して、合金粒子間での歪による極板の波打ちが発生するようになることが明らかになった。
このことから、水素吸蔵合金粉末の平均粒径は15μm以上で、35μm以下であることが必要である


なお、一般式がLn1-xMgx(Ni1-yyz(ただし、式中のLnはランタノイド元素、Ca,Sr,Sc,Y,Yb,Er,Ti,ZrおよびHfから選ばれる少なくとも一つの元素で、TはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Al,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBから選ばれる少なくとも一つの元素で、0<x≦1、O≦y≦0.5、3.3≦z≦3.8である)で表され、Lnは少なくともNdを含み、Ln中のNdの比率が50%以上である水素吸蔵合金、例えば、Ln0.89Mg0.11Ni3.2Co0.1Al0.2、Ln0.87Mg0.13Ni3.4Co0.1Al0.2で表される水素吸蔵合金は、ビッカース硬度が低くて、極板芯体と水素吸蔵合金のビッカース硬度比B2/B1を5.1以下にすることが可能であることが明らかとなった。このため、本発明においては上述した水素吸蔵合金を用いることが必須となる

本発明においては、従来の範囲を遥かに越える高充填密度の水素吸蔵合金負極板を用いても、極板芯体と水素吸蔵合金とのビッカース硬度比を最適化することにより極板の波打ちを抑制することを可能となり、従来の範囲を遥かに超える高出力特性を有するアルカリ電池を提供することが可能となる。
ついで、本発明の実施の形態を以下の図1〜図3に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。なお、図1は本発明のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である。図2は水素吸蔵合金負極板の波打量(mm)を説明するための図である。図3は水素吸蔵合金負極板において、水素吸蔵合金の平均粒径(μm)に対する水素吸蔵合金負極板の波打量(mm)の関係を示すグラフである。
1.水素吸蔵合金
Ln(Yを含む希土類元素)、Mg、Ni、Co、AlあるいはLn(Yを含む希土類元素)、Ni、Co、Al、Mnを所定のモル比の割合で混合した後、これらの混合物をアルゴンガス雰囲気の高周波誘導炉に投入して溶解させた後、冷却し、ついで、得られた水素吸蔵合金の融点よりも100℃低い温度で所定時間の熱処理を行って、水素吸蔵合金のインゴットを作製した。この場合、組成式がLn0.89Mg0.11Ni3.2Co0.1Al0.2で表されるものを水素吸蔵合金aとし、Ln0.87Mg0.13Ni3.4Co0.1Al0.2で表されるものを水素吸蔵合金bとした。また、LnNi4.3Co0.6Al0.3Mn0.2で表されるものを水素吸蔵合金cとした。
なお、これらの水素吸蔵合金a,bは合金主相の結晶構造がCe2Ni7構造を有し、水素吸蔵合金cはCaCu5型結晶構造を主結晶相とするAB5型系水素吸蔵合金である。そして、これらの水素吸蔵合金a,b,cのビッカース硬度を求めると下記の表1に示すような結果となった。この場合、微小硬度計(島津製作所製 測定荷重:300g)を用いて測定した。
Figure 0005213314
上記表1の結果から明らかなように、水素吸蔵合金の組成によりビッカース硬度は変化し、Ln0.89Mg0.11Ni3.2Co0.1Al0.2、Ln0.87Mg0.13Ni3.4Co0.1Al0.2のような組成とすることで、水素吸蔵合金のビッカース硬度を低下させることが可能であることが分かる。この場合、Ln1-xMgx(Ni1-yyz(ただし、式中のLnはランタノイド元素、Ca,Sr,Sc,Y,Yb,Er,Ti,ZrおよびHfから選ばれる少なくとも一つの元素で、TはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Al,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBから選ばれる少なくとも一つの元素で、0<x≦1、O≦y≦0.5、3.3≦z≦3.8である)で表され、Lnは少なくともNdを含み、Ln中のNdの比率が50%以上であると、水素吸蔵合金のビッカース硬度を低下させることが可能である。
2.水素吸蔵合金負極板
これらの各水素吸蔵合金a,b,cの塊を粗粉砕した後、不活性ガス雰囲気中で平均粒径が30μmになるまで機械的に粉砕して、水素吸蔵合金粉末を作製した。この後、得られた各水素吸蔵合金粉末100質量部に対し、非水溶性結着剤としてのSBR(スチレンブタジエンラテックス)を1.0質量部と水(あるいは純水)を加え、水素吸蔵合金スラリーを作製した。ついで、ビッカース硬度が125Hvで、開孔率が30%のNiメッキ軟鋼材製のパンチングメタルからなる負極芯体を用意した。この場合、厚みが60μmのものを負極芯体αとし、厚みが80μmのものを負極芯体βとした。この後、用意した負極芯体に水素吸蔵合金スラリーを塗着し、乾燥させた後、所定の厚みで、充填密度が5.0g/cm3となるように圧延した。この後、所定の寸法になるように切断して、水素吸蔵合金負極板11(a1〜a2,b1〜b2,c1〜c2)をそれぞれ作製した。
ここで、水素吸蔵合金aを用い、負極芯体がα(厚み60μm)で、負極容量X(Ah)が10.8Ahで、表面積Y(cm2)が1030cm2のものを水素吸蔵合金負極板a1とし、負極芯体がβ(厚み80μm)で、負極容量X(Ah)が10.8Ahで、表面積Y(cm2)が800cm2のものを水素吸蔵合金負極板a2とした。また、水素吸蔵合金bを用い、負極芯体がα(厚み60μm)で、負極容量X(Ah)が10.8Ahで、表面積Y(cm2)が1030cm2のものを水素吸蔵合金負極板b1とし、負極芯体がβ(厚み80μm)で、負極容量X(Ah)が10.8Ahで、表面積Y(cm2)が800cm2のものを水素吸蔵合金負極板b2とした。さらに、水素吸蔵合金cを用い、負極芯体がα(厚み60μm)で、負極容量X(Ah)が10.8Ahで、表面積Y(cm2)が1030cm2のものを水素吸蔵合金負極板c1とし、負極芯体がβ(厚み80μm)で、負極容量X(Ah)が10.8Ahで、表面積Y(cm2)が800cm2のものを水素吸蔵合金負極板c2とした。そして、これらの水素吸蔵合金負極板a1〜a2,b1〜b2,c1〜c2の内容を表に示すと、下記の表2に示すようになる。
Figure 0005213314
3.水素吸蔵合金負極板の波打量の測定
上述の水素吸蔵合金負極板a1〜a2,c1〜c2を作製する際の各負極板a1〜a2,c1〜c2の波打量を測定すると、下記の表3に示すような結果が得られた。ここで、波打量(mm)は、図2に示すように、完成した水素吸蔵合金負極板11を作業台20上に配置して測定するが、この場合、水素吸蔵合金負極板11の長手方向での変形により、水素吸蔵合金負極板11が波状に変形している。この時の、水平な作業台20からの最大の弧の高さhを測定することにより、波打量の測定を行った。
Figure 0005213314
上記表3の結果から明らかなように、水素吸蔵合金のビッカース硬度(B1)に対する負極芯体のビッカース硬度(B2)の比(ビッカース硬度比:B2/B1)の違いより、水素吸蔵合金負極板の波打量が変化することが分かる。例えば、水素吸蔵合金a(ビッカース硬度B1は552Hv)を用い、負極板の容量Xに対する表面積Yの割合Y/Xが95(cm2/Ah)である水素吸蔵合金負極板a1の波打量は3.8mmであるのに対して、水素吸蔵合金c(ビッカース硬度B1は690Hv)を用い、負極板の容量Xに対する表面積Yの割合Y/Xが95(cm2/Ah)である水素吸蔵合金負極板c1の波打量は6.5mmである。
また、水素吸蔵合金a(ビッカース硬度B1は552Hv)を用い、負極板の容量Xに対する表面積Yの割合Y/Xが74(cm2/Ah)である水素吸蔵合金負極板a2の波打量は2.9mmであるのに対して、水素吸蔵合金c(ビッカース硬度B1は690Hv)を用い、負極板の容量Xに対する表面積Yの割合Y/Xが74(cm2/Ah)である水素吸蔵合金負極板c2の波打量は4.4mmである。即ち、ビッカース硬度比(B2/B1)が小さい水素吸蔵合金負極板の波打量が低減されていることが分かる。
一方、ビッカース硬度比(B2/B1)が同じであってもY/Xが大きくなると水素吸蔵合金負極板の波打量が大きくなるが、水素吸蔵合金a(ビッカース硬度B1は552Hv)を用い、負極板の容量Xに対する表面積Yの割合Y/Xが95(cm2/Ah)である水素吸蔵合金負極板a1の波打量は3.8mmであるのに対して、水素吸蔵合金c(ビッカース硬度B1は690Hv)を用い、負極板の容量Xに対する表面積Yの割合Y/Xが74(cm2/Ah)である水素吸蔵合金負極板c2の波打量は4.4mmであって、ビッカース硬度比(B2/B1)が小さい水素吸蔵合金負極板を用いることにより、水素吸蔵合金負極板の波打量を低減させることが可能であることが分かる。
4.水素吸蔵合金粉末の粒径の検討
ついで、水素吸蔵合金粉末の平均粒径について検討した。そこで、水素吸蔵合金a(Ln0.89Mg0.11Ni3.2Co0.1Al0.2:ビッカース硬度は552Hv)を用い、この水素吸蔵合金aの塊を粗粉砕した後、不活性ガス雰囲気中で平均粒径が15μm,20μm,25μm,35μm,50μmになるまで機械的に粉砕して、水素吸蔵合金粉末を作製した後、上述と同様に水素吸蔵合金スラリーを作製した。ついで、上述と同様にビッカース硬度が125Hvで、厚みが80μmで、開孔率が30%のNiメッキ軟鋼材製のパンチングメタルからなる負極芯体を用意した。
この後、この負極芯体に水素吸蔵合金スラリーを塗着し、乾燥させた後、所定の厚みで、充填密度が5.0g/cm3となるように圧延した。この後、所定の寸法になるように切断して、負極板容量(X)が10.8Ahで、表面積(Y)が74cm2の水素吸蔵合金負極板11(a3,a4,a5,a6,a7)をそれぞれ作製した。ここで、平均粒径が15μmの水素吸蔵合金粉末を用いたものを水素吸蔵合金負極板a3とした。同様に、平均粒径が20μmの水素吸蔵合金粉末を用いたものを水素吸蔵合金負極板a4とし、平均粒径が25μmの水素吸蔵合金粉末を用いたものを水素吸蔵合金負極板a5とし、平均粒径が35μmの水素吸蔵合金粉末を用いたものを水素吸蔵合金負極板a6とし、平均粒径が50μmの水素吸蔵合金粉末を用いたものを水素吸蔵合金負極板a7とした。
ついで、これらの水素吸蔵合金負極板a3,a4,a5,a6,a7を用いて、上述と同様に負極板の波打量(mm)を測定すると下記の表4に示すような結果が得られた。なお、下記の表4には、水素吸蔵合金負極板a2の結果も併せて示している。また、表4の結果から水素吸蔵合金粉末の平均粒径を横軸(X軸)にプロットし、波打量(mm)を縦軸(Y軸)にプロットしてグラフに表すと、図3に示すようなグラフが得られた。
Figure 0005213314
上記表4および図3の結果から明らかなように、水素吸蔵合金粉末の平均粒径が35μmより大きい場合、水素吸蔵合金負極板の波打ち量は飛躍的に増大することが分かる。また、水素吸蔵合金粉末の平均粒径が30μm未満では25μm程度で波打ち量の極小値をとるものの、その変動は小さいことが分かる。なお、水素吸蔵合金粉末の平均粒径については、15μm以下では、水素吸蔵合金が著しく酸化されて低寿命となるだけでなく、活物質層の厚み方向の水素吸蔵合金粉末数が著しく増加して、水素吸蔵合金粉末間での歪による変形が発生する。このため、水素吸蔵合金粉末の平均粒径の下限値は15μmであるのが望ましい。これらのことから、水素吸蔵合金粉末の平均粒径は15μm以上、35μm以下が望ましいということができる。
5.ニッケル−水素蓄電池
ついで、上述のような水素吸蔵合金負極板11(a1)を用いてニッケル−水素蓄電池を作製する例について、以下に説明する。まず、多孔度が約85%の多孔性ニッケル焼結基板を比重が1.75の硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液に浸漬して、多孔性ニッケル焼結基板の細孔内にニッケル塩およびコバルト塩を保持させた。この後、この多孔性ニッケル焼結基板を25質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に浸漬して、ニッケル塩およびコバルト塩をそれぞれ水酸化ニッケルおよび水酸化コバルトに転換させた。
ついで、充分に水洗してアルカリ溶液を除去した後、乾燥を行って、多孔性ニッケル焼結基板の細孔内に水酸化ニッケルを主成分とする活物質を充填した。このような活物質充填操作を所定回数(例えば6回)繰り返して、多孔性焼結基板の細孔内に水酸化ニッケルを主体とする活物質の充填密度が2.5g/cm3になるように充填した。この後、室温で乾燥させた後、所定の寸法に切断してニッケル正極12を作製した。
この後、上述のようにして作製した水素吸蔵合金負極11とニッケル正極12とを用い、これらの間に、ポリプロピレン製不織布からなるセパレータ13を介在させて渦巻状に巻回して渦巻状電極群を作製した。なお、このようにして作製された渦巻状電極群の下部には水素吸蔵合金負極板11の芯体露出部11cが露出しており、その上部にはニッケル正極板12の芯体露出部12cが露出している。
ついで、得られた渦巻状電極群の下端面に露出する芯体露出部11cに負極集電体14を溶接するとともに、渦巻状電極群の上端面に露出するニッケル正極板12の芯体露出部12cの上に正極集電体15を溶接した。この後、正極集電体15の上部に円筒状の正極用リード16を溶接した。この場合、円筒状の正極用リード16には、正極集電体15の溶接電極挿入用の中心開口15bに対応する位置にこの開口15bに連通する開口16aが形成されている。
ついで、鉄にニッケルメッキを施した有底筒状の外装缶(底面の外面は負極外部端子となる)17内に収納した後、開口17aおよび中心開口15bを通して図示しない溶接電極を挿入し、水素吸蔵合金負極板11に溶接された負極集電体14を外装缶17の内底面に溶接した。ついで、外装缶17の上部内周側に防振リング19bを挿入し、外装缶17の上部外周側に溝入れ加工を施して防振リング19bの上端部に環状溝部17aを形成した。この後、外装缶17内に30質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液からなるアルカリ電解液を注入した。なお、アルカリ電解液の注液量は電池容量(Ah)当たり2.5g(2.5g/Ah)とした。
さらに、この外装缶17の開口部の上部に、封口板18aの底面が正極用リード16の円筒部分に接触するように配置した。ここで、封口板18aの上部には正極キャップ(正極外部端子)18bが設けられており、この正極キャップ18b内には弁板18cとスプリング18dからなる弁体を備えており、封口板18aの中央にはガス抜き孔が形成されており、封口板18aと正極キャップ18bとで封口体18が形成されている。ついで、正極キャップ(正極外部端子)18bの上面に一方の溶接電極(図示せず)を配置するとともに、外装缶17の底面(負極外部端子)の下面に他方の溶接電極(図示せず)を配置した。
この後、これらの一対の溶接電極間に所定の圧力を加えながら、これらの溶接電極間に電池の放電方向に所定の電圧を印加し、所定のパルス電流を流す通電処理を施した。この通電処理により、封口板18aの底面と正極用リード16の周側縁との接触部分が溶接されることとなる。このように、一対の溶接電極間に所定の圧力を加えながら、これらの溶接電極間に電圧を印加して、通電処理を施すことにより、円筒状の正極用リード16の高さ寸法にばらつきがあっても、円筒状の正極用リード16の周側縁と封口板18aの底面との間に接触点を形成することが可能となる。これにより、溶接強度に優れた溶接部を形成することができるようになる。
ついで、封口体18の封口板18aの周縁に絶縁ガスケット19aを嵌着させ、プレス機を用いて封口体18に加圧力を加えて、絶縁ガスケット19aの下端が外装缶17の上部外周に設けられた環状溝部17aの位置になるまで封口体18を外装缶17内に押し込む。この後、外装缶17の開口端縁17bを内方にかしめて電池を封口することによりニッケル−水素蓄電池を組み立てた。なお、この封口時の加圧力により、円筒状の正極用リード16は押しつぶされ、その断面形状は円形が押しつぶされた楕円形状となる。
本発明のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である。 水素吸蔵合金負極板の波打量(mm)を説明するための図である。 水素吸蔵合金負極板において、水素吸蔵合金の平均粒径(μm)に対する水素吸蔵合金負極板の波打量(mm)の関係を示すグラフである。
符号の説明
11…水素吸蔵合金負極板、11c…芯体露出部、12…ニッケル正極板、12c…芯体露出部、13…セパレータ、14…負極集電体、15…正極集電体、16…正極用リード、17…外装缶、17a…環状溝部、17b…開口端縁、18…封口体、18a…封口板、18b…正極キャップ、18c…弁板、18d…スプリング、19a…絶縁ガスケット、19b…防振リング

Claims (1)

  1. 水素吸蔵合金粉末を負極活物質として含有するスラリーをパンチングメタルからなる極板芯体の両面に塗着して形成された水素吸蔵合金負極板と、ニッケル酸化物あるいはニッケル水酸化物を正極活物質とするニッケル正極板と、これらの両極板を隔離するセパレータと、アルカリ電解液とを外装缶内に備えたアルカリ蓄電池であって、
    前記水素吸蔵合金負極板における水素吸蔵合金の充填密度が5.0g/cm3以上であるとともに、
    前記パンチングメタルからなる極板芯体のビッカース硬度をB1とし、前記水素吸蔵合金のビッカース硬度をB2としたときの両者のビッカース硬度比B2/B1が5.1以下(B2/B1≦5.1)であり、
    前記水素吸蔵合金は、一般式がLn1-xMgx(Ni1-yyz(ただし、式中のLnはランタノイド元素、Ca,Sr,Sc,Y,Yb,Er,Ti,ZrおよびHfから選ばれる少なくとも一つの元素で、TはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Al,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBから選ばれる少なくとも一つの元素で、0<x≦1、O≦y≦0.5、3.3≦z≦3.8である)で表され、Lnは少なくともNdを含み、Ln中のNdの比率が50%以上であり、
    前記水素吸蔵合金負極板の極板容量(X)に対する前記水素吸蔵合金負極板の表面積(Y)の割合(Y/X)が74cm 2 /Ah以上(Y/X≧74cm 2 /Ah)であり、
    前記水素吸蔵合金粉末の平均粒径は15μm〜35μmであることを特徴とするアルカリ蓄電池。
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