JP2004006258A - ニッケル−水素蓄電池用負極板およびその製造方法ならびにそれを用いたニッケル−水素蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性の支持体10と、支持体10の表面に、支持体10側から順に積層された第1、第2および第3の層11、12および13とを含む。第1の層11は水素吸蔵合金の粉末と炭素質材料からなる第1の粉末とを含む。第2の層12は水素吸蔵合金の粉末と第1の粉末と導電性の第2の粉末とを含む。第3の層13は第2の粉末を主成分として含む。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル−水素蓄電池用負極板およびその製造方法、ならびにそれを用いたニッケル−水素蓄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素吸蔵合金を含む負極を用いたニッケル−水素蓄電池は、従来のニッケル−カドミウム蓄電池に比べて、環境に優しく、エネルギー密度が高いという特徴を有する。このため、ニッケル−水素蓄電池は、通信機器・パソコンなど、各種のコードレス機器や電子機器の電源として広く使用されている。さらに、ニッケル−水素蓄電池は、大電流での充放電が不可欠な電動工具や電気自動車にも用いられている。このように、ニッケル−水素蓄電池の用途は拡大しているため、さらに特性の高い電池が望まれている。
【0003】
ニッケル−水素蓄電池においては、満充電に近い状態または過充電状態の際に、(式1)に示す反応によって酸素ガスが正極において発生する。
(式1)OH−→1/2H2O+1/4O2+e−
この反応で発生した酸素はセパレータを通過して負極に到達し、以下の(式2)および(式3)に示すように、負極の水素吸蔵合金中の水素と反応して消費される。
(式2)1/2O2+H2O+2e−→2OH−
(式3)MH+1/4O2→M+1/2H2O
ところが、(式2)および(式3)の酸素ガス消費反応が速やかに行われないと、正極における酸素ガスの発生速度が負極における酸素ガスの消費速度を上回り、発生した酸素ガスによって電池の内圧が上昇する。そして、電池の内圧が安全弁の作動圧以上になると、安全弁が作動して電池内のガスが放出され、電池の特性が低下する。また、ニッケル−水素蓄電池の負極では、水素吸蔵合金粒子間の電気的接触が不完全になりやすく、導電性が低下しやすい。導電性が低下すると、充放電に関与しない水素吸蔵合金の割合が増加するため、電池の内圧が上昇しやすくなる。また、導電性が低下すると、高率の充放電特性が低下する。これらの問題は、急速充電を行なった場合に特に顕著となる。
【0004】
電池の内圧上昇を抑制し、負極の導電性を高めるために、炭素粉末層を表面に備える負極が提案されている(たとえば特許文献1参照)。また、金属粉末と炭素粉末との混合層を表面に備える負極も提案されている(たとえば特許文献2参照)。これらの負極では、負極表面の導電性が向上することによって表面の水素吸蔵合金が充電されやすくなる。また、炭素粉末の触媒作用も加わって、負極の酸素ガス処理能力が向上する。
【0005】
また、炭素粒子(子粒子)で被覆した水素吸蔵合金粒子(母粒子)からなる酸化抑制層を表面に備える負極も提案されている(たとえば特許文献3参照)。このような粒子は、酸素触媒作用と酸化抑制作用とを有しているため、酸素ガスの消費を促進する。
【0006】
さらに、金属で被覆した水素吸蔵合金粉末と炭素粉末との混合物からなる層を表面に備える負極も提案されている(たとえば特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−195960号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平3−274664号公報
【0009】
【特許文献3】
特開昭63−195961号公報
【0010】
【特許文献4】
特開昭63−55857号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在、より高い酸素消費能力とより高い導電性とを有する負極が求められている。このような状況に鑑み、本発明は、ニッケル−水素蓄電池用の新規な負極板およびその製造方法、ならびにそれを用いたニッケル−水素蓄電池を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のニッケル−水素蓄電池用負極板は、導電性の支持体と、前記支持体の表面に、前記支持体側から順に配置された第1、第2および第3の層とを含み、前記第1の層は水素吸蔵合金の粉末と炭素質材料からなる第1の粉末とを含み、前記第2の層は前記水素吸蔵合金の粉末と前記第1の粉末と導電性の第2の粉末とを含み、前記第3の層は前記第2の粉末を主成分として含む。
【0013】
また、本発明の他のニッケル−水素蓄電池用負極板は、導電性の支持体と、前記支持体の一主面上および他主面上に形成された活物質層とを備えるニッケル−水素蓄電池用負極板であって、前記活物質層は水素吸蔵合金の粉末を主成分として含み、前記活物質層の表面には複数の凹部が形成されており、前記活物質層の表面を覆うように且つ前記凹部内を充填するように形成された、導電性粉末を主成分とする導電層を備える。
【0014】
また、本発明のニッケル−水素蓄電池は、上記本発明のニッケル−水素蓄電池用負極板を備える。
【0015】
また、ニッケル−水素蓄電池用負極板を製造するための本発明の方法は、(i)水素吸蔵合金の粉末と炭素質材料からなる第1の粉末とを含む第1のスラリーを、導電性の支持体の両面に塗布し乾燥させることによって、前記支持体の両面に形成された第1の層を形成する工程と、(ii)導電性の第2の粉末を含む第2のスラリーを前記第1の層に吹きつける工程とを含む。
【0016】
また、ニッケル−水素蓄電池用負極板を製造するための本発明の他の方法は、(I)水素吸蔵合金の粉末と炭素質材料からなる第1の粉末とを含む第1のスラリーを、導電性の支持体の両面に塗布し乾燥させることによって、前記支持体の両面に形成された活物質層を形成する工程と、(II)前記活物質層の表面に凹部を複数個形成する工程と、(III)導電性の第2の粉末を含む第2のスラリーを前記活物質層に塗布する工程とを含む。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、同一の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
【0018】
(実施形態1)
実施形態1では、本発明の負極板の一例について説明する。本発明の負極板は、ニッケル−水素蓄電池に用いられる。実施形態1の負極板100について、断面図を図1に模式的に示す。
【0019】
負極板100は、導電性の支持体10と、支持体10の両面に順に形成された第1の層11、第2の層12および第3の層13とを備える。
【0020】
支持体10には、たとえば、ニッケルからなるパンチングメタル、または、ニッケルメッキを施したスチール製のパンチングメタルなどを用いることができる。図1には、複数の貫通孔を備えるパンチングメタルを示している。
【0021】
第1の層11は、水素吸蔵合金と、炭素質材料からなる第1の粉末とを含む。水素吸蔵合金としては、ニッケル−水素蓄電池に一般的に用いられる合金を用いることができ、たとえば、Mm(ミッシュメタル:希土類元素の混合物)とニッケルとを含む合金を用いることができる。一般的に、粉砕された水素吸蔵合金はさまざまな形状となっているため、第1の層11の内部には合金間の接触は点接触となっていることが多い。
【0022】
第1の粉末には、カーボンブラック、黒鉛またはコークスといった炭素質材料の粉末(炭素質粉末)を用いることができる。第1の粉末の粒径は、1μm〜20μmの範囲であり、好ましくは、5μm〜10μmの範囲である。なお、本願明細書において定義される粉末の粒径の範囲は、「実質的な範囲」であり、ほとんどの粒子の粒径が含まれる範囲を意味する。たとえば、90重量%以上の粒子の粒径がその範囲に含まれることを意味する。定義される粒径の範囲外の粒径を有する粒子が、微量だけ含まれていたとしても、本発明の効果が損なわれない限り本発明に含まれる。
【0023】
第2の層12は、水素吸蔵合金と、上記第1の粉末と、導電性の第2の粉末とを含む。実施形態1の負極板では、第2の粉末は炭素質材料からなる粉末である。なお、第1の粉末と第2の粉末とは、同じ炭素質材料で形成されても、異なる炭素質材料で形成されてもよい。第2の層12の厚さは、負極板全体の厚さの1%〜10%であることが好ましい。炭素質粉末としては、一般に市販されている黒鉛、天然黒鉛ブラック、コークス、およびアセチレンブラックなどを用いることができる。黒鉛粒子は、水素の吸蔵・放出ができ、優れた導電性を有するため、黒鉛粉末を用いることによって、負極のガス吸収性および高率充放電特性を向上できる。第2の粉末の粒径は、7.0μm以下(好ましくは、0.05μm〜4.0μmの範囲)である。粒径を7.0μm以下とすることによって、水素吸蔵合金の間に第2の粉末が入りやすくなる。
【0024】
第3の層13は、上記第2の粉末と結着剤とを含む。第3の層13の厚さは、負極板全体の厚さの0.3%〜6.0%である。結着剤には、たとえばポリビニルアルコール(PVA)や、ポリビニルピロリドン(PVP)やポリエチレンオキシド(PEO)やスチレン−ブタジエンゴム系ポリマー(SBR)を用いることができる。第1および第2の層11および12も、通常、上記結着剤を含む。なお、これらの層は、さらに増粘剤などを含んでもよい。第3の層の厚さは、負極全体の厚さの1.0%〜4.0%であることが好ましい。
【0025】
第2の粉末の量は、負極板1cm2当たり0.0001g以上0.002g以下であることが好ましい。炭素質粉末の量をこの範囲内とすることによって、第2の粉末に多量の電解液が吸収されることを防止できる。第2および第3の層12および13は、実施形態3で説明する方法で形成できる。
【0026】
以下、第1〜第3の層について説明する。第1〜第3の層に含まれる第1および第2の粉末は、ともに導電剤として機能する。第1〜第3の層は、異なる含有率でそれらの導電性粉末を含む。第2の層は、第1の層とほぼ同じ含有率で第1の粉末を含み、さらに第2の粉末を含む。また、第3の層は、第2の粉末を主成分とし、水素吸蔵合金を含まない。従って、導電性粉末の含有率(重量%)は、第1の層、第2の層、第3の層の順に大きくなる。このため、従来の負極板と比較して、本発明の負極板は、表面近傍の導電性が高くなっている。これは、第1〜第3の形成方法に起因している。
【0027】
実施形態1の負極板は、第1の層11の表面により導電性が高い第2の層を備える。そして、その最表面に、最も導電性が高い第3の層を備える。そのため、この負極板を用いることによって、電池の内圧が高くなりすぎることを防止できるとともに、高率充放電特性に優れたニッケル−水素蓄電池が得られる。
【0028】
(実施形態2)
実施形態2では、本発明の負極板の他の一例について説明する。実施形態2の負極板101の断面図を、図2に模式的に示す。
【0029】
負極板101は、導電性の支持体10と、支持体10の両面に順に積層された第1の層11と第2の層22と第3の層23を備える。支持体10および第1の層11については、実施形態1で説明したものと同様である。
【0030】
第2の層22は、水素吸蔵合金と、第1の粉末と、導電性の第2の粉末とを含む。実施形態2の負極板では、第2の粉末は、炭素質粉末(実施形態1の第2の粉末)と金属粉末との混合粉末である。第2の層22は、通常、さらに結着剤を含む。水素吸蔵合金、第1の粉末、炭素質粉末および結着剤については、実施形態1で説明したものと同様である。金属粉末は、酸素ガスと水素との反応に対する触媒性と、導電性とを有する金属粉末を用いることができる。具体的には、ニッケル粉末、コバルト粉末、銅粉末などを用いることができる。金属粉末の粒径は、7.0μm以下(より好ましくは、0.05μm〜4.0μmの範囲)であることが好ましい。炭素質粉末の粒径も、7.0μm以下(より好ましくは、0.05μm〜4.0μmの範囲)であることが好ましい。第2の層22の厚さは、負極板全体の厚さの1%〜10%であることが好ましい。
【0031】
第3の層23は、第2の粉末と結着剤とを主成分として含む。第2の粉末は、第2の層22に含まれる粉末と同じものである。結着剤は、実施形態1で説明したものを用いることができる。第3の層23の厚さは、負極板全体の厚さの1.0%〜4.0%であることが好ましい。
【0032】
第2の粉末の量、すなわち金属粉末と炭素質粉末の合計量は、負極板1cm2当たり、0.0001g以上0.002g以下であることが好ましい。金属粉末の量は、炭素質粉末の50wt%以下である。金属粉末の量を炭素質粉末の50wt%以下とすることによって、負極の水素過電圧が低下しすぎることを防止できる。第2および第3の層は、実施形態3で説明する方法で形成できる。
【0033】
このように実施形態1および2の負極板は、表面から一定の深さまで、第2の粉末が添加されている。この構成によれば、以下の理由によって酸素ガスの消費能力および高率充放電特性を向上できる。
【0034】
一般的な負極板では、充放電時において、支持体の近傍の水素吸蔵合金から充放電されていく。このため、負極表面の近傍の水素吸蔵合金は充放電されにくい。これに対して、本発明の負極板は、第2の粉末によって、表面の導電性が高いため、表面近傍の水素吸蔵合金が充放電されやすくなる。従って、充電時の早い時期から負極板表面において、水素吸蔵合金中の水素と酸素ガスとの反応が速やかに進行する。その結果、酸素ガスの消費能力が向上する。また、この負極板では、高率充放電時における抵抗分極が小さいため、高率充放電特性が向上する。
【0035】
さらに、本発明の負極板は、最表面に炭層質材料からなる層を形成することによって、負極表面に水素吸蔵合金が露出しない。酸素ガスによって水素吸蔵合金が酸化されることを抑制でき、充放電に伴って電池の特性が低下することを防止できる。
【0036】
さらに、第2および第3の層に、上述した金属粉末を添加することによって、酸素ガスの消費能力および高率充放電特性を向上できる。
【0037】
(実施形態3)
実施形態3では、本発明の負極板のその他の一例について説明する。実施形態3の負極板102の断面図を図3に示す。
【0038】
負極板102は、導電性の支持体10と、支持体10の両面に順に形成された活物質層31および導電層32とを備える。
【0039】
支持体10は、実施形態1で説明したものと同じである。活物質層31は、実施形態1で説明した第1の層11と全く同じ材料で形成できるため、重複する説明は省略する。ただし、活物質層31は、その表面形状が第1の層11とは異なる。
【0040】
導電層32は、実施形態1で説明した第3の層13と全く同じ材料で形成できるため、重複する説明は省略する。
【0041】
活物質層31の表面には、深さが、活物質層31の厚さの50%以下(好ましくは5%以上で好ましくは20%以下)の複数の凹部が形成されている。凹部の深さは、たとえば5μm〜60μm程度である。活物質層31の厚さは、たとえば100μm〜300μm程度である。図3には、凹部が溝35である場合を示す。
【0042】
図3に示す溝35は、断面がV字状の溝である。活物質層31の表面における溝35の配置を、図4(A)に模式的に示す。複数の溝35は、ストライプ状に配置されている。図3の断面図に示すように、一主面側の溝35aは、他主面側の溝35bと溝35bとの中央部に配置されるように形成されることが好ましい。このように、一主面側の凹部と他主面側の凹部とを、できるだけ重ならない位置に配置することによって、極板の強度が低下することを防止できる。
【0043】
なお、溝35は、格子状に配置されてもよい。そのような溝35の配置の一例を図4(B)に模式的に示す。また、活物質層31に形成される凹部は、孔の形状であってもよく、たとえば、すり鉢状の孔であってもよい。そのような孔36を備える負極板103の断面図を図5(A)に示す。また、孔36の配置を図5(B)に模式的に示す。なお、凹部の配置は、図示した例に限定されず、本発明の効果が得られる限り、どのような配置であってもよい。
【0044】
活物質層31に形成された凹部は、導電層32によって充填されている。導電層32の厚さ(凹部を除く)は、負極板全体の厚さの0.2%〜5.0%である。
【0045】
なお、導電層は、炭素質粉末と金属粉末とを主成分としてもよい。この場合には、導電層は、実施形態2で説明した第3の層23と全く同じ材料で形成できる。第3の層23と同じ材料で形成された導電層42を備える負極板104の断面図を図6に示す。
【0046】
実施形態3の負極板では、活物質層の表面に凹部が形成されている。その凹部は、導電性が高い材料によって充填されているため、活物質層のうち表面側の部分の導電性がより高くなっている。また、凹部によって活物質層の表面積が増大している。その結果、実施形態1および2の負極と同様に、酸素ガスの消費能力および高率充放電特性が高い負極板が得られる。また、導電層によって、活物質層中の水素吸蔵合金が酸化が抑制されるため、充放電に伴う特性の低下が小さい負極板が得られる。
【0047】
さらに、導電層に、上述した金属粉末を添加することによって、酸素ガスの消費能力および高率充放電特性を向上できる。
【0048】
(実施形態4)
実施形態4では、実施形態1および2で説明した負極板を製造するための本発明の方法の一例について説明する。
【0049】
この製造方法では、まず、図7(A)に示すように、導電性の支持体10の表面に第1の層11aを形成する。具体的には、水素吸蔵合金の粉末と炭素質材料からなる第1の粉末とを含む第1のスラリーを、支持体10の両面に塗布し乾燥させることによって、支持体10の両面に形成された第1の層11aを形成する(工程(i))。第1の層11aの一部は、のちの工程によって第1の層11となる。塗布および乾燥の方法としては、負極板の製造に用いられている公知の方法を適用できる。たとえば、スラリー中に支持体(たとえばパンチングメタル)を通過させて塗布を行い、その後、乾燥炉中で乾燥を行うことができる。
【0050】
水素吸蔵合金および第1の粉末は、それぞれ、実施形態1で説明した水素吸蔵合金および第1の粉末である。スラリーは、水素吸蔵合金や、第1の粉末、結着剤、増粘剤などの材料を、水と混練することによって形成できる。
【0051】
次に、第2の粉末を含む第2のスラリーを、第1の層11aに吹きつける(工程(ii))。第2の粉末は、実施形態1または2で説明した導電性の第2の粉末である。実施形態1の負極板を製造する場合には、第2の粉末は炭素質粉末である。実施形態2の負極板を製造する場合には、第2の粉末は、炭素質粉末と金属粉末の混合粉末である。
【0052】
第2のスラリーは、通常、実施形態1で説明した結着剤をさらに含む。第2のスラリーは、第2の粉末や結着剤などの材料を、水と混練することによって形成できる。第2のスラリーは、たとえば、第1の層11aを移動させながら、その第1の層11aに、ノズルから圧力をかけて吹きつけられる。
【0053】
その後、第2のスラリーを乾燥させ、必要に応じて圧延および切断を行う。このようにして、図7(B)に示すように、負極板100が形成される。第1の層11aのうち、第2のスラリーが侵入した部分は第2の層12(または第2の層22)となる。一方、第1の層11aのうち、第2のスラリーが侵入しなかった部分は第1の層11となる。また、第2のスラリーのみが堆積した部分は、第3の層13(または第3の層23)となる。
【0054】
各層の厚さは、第1の層に吹きつける第2のスラリーの量および吹きつける圧力によって調整できる。吹きつける圧力によって、第2のスラリーが侵入する深さを制御できる。スラリーを吹きつける圧力は、たとえば、0.2MPaである。これによって、形成される第2の層の厚さが、負極板全体の厚さの1%〜10%の範囲になるようにする。第2のスラリーは、極板1cm2当たりの第2の粉末の量が、0.0001g以上0.002g以下となるように吹きつけられることが好ましい。
【0055】
実施形態4の製造方法によれば、実施形態1および2で説明した負極板を容易に製造できる。なお、実施形態1および2の負極板は、第1の層を形成するための第1のスラリーと、第2の層を形成するための第2のスラリーと、第3の層を形成するための第3のスラリーとを順に塗布することによっても形成できる。この場合には、第2の層に含まれる炭素質粉末と、第3の層に含まれる炭素質粉末とが異なってもよい。
【0056】
(実施形態5)
実施形態5では、実施形態3で説明した負極板を製造するための本発明の方法の一例について説明する。
【0057】
まず、図8(A)に示すように、導電性の支持体10の両面に、公知の方法で活物質層31を形成する。具体的には、水素吸蔵合金と炭素質材料からなる第1の粉末とを含む第1のスラリーを、支持体10の両面に塗布し乾燥させて活物質層31を形成する(工程(I))。なお、乾燥後に、必要に応じて圧延を行ってもよい。第1のスラリーは、実施形態4で説明した第1のスラリーと同じである。この工程は、実施形態4で説明した工程(i)と同様である。
【0058】
次に、図8(B)に示すように、活物質層31の表面に、深さが活物質層31の厚さの50%以下(好ましくは5%以上で好ましくは20%以下)の凹部81を複数個形成する(工程(II))。凹部81は、実施形態3で説明したように、断面V字状の溝やすり鉢状の孔である。凹部81は、所定の形状の凸部を設けたプレスローラを用いて、活物質層31をプレスすることによって形成できる。
【0059】
断面V字状の溝をストライプ状に形成する場合には、ローラの円周に沿って複数のリング状の凸部が形成されたローラを用いる。また、格子状の溝を形成する場合には、格子状の凸部が形成されたローラを用いる。凹部が孔である場合には、表面に円錐状の凸部を複数個形成したローラを用いる。
【0060】
次に、図8(C)に示すように、導電性の第2の粉末を含む第2のスラリーを、活物質層31に塗布する(工程(III))。この工程によって、導電性が高い導電層32が形成される。導電層32は、活物質層31の凹部81内にも充填される。
【0061】
第2の粉末には、実施形態1または2で説明した第2の粉末を用いることができる。すなわち、第2の粉末は、炭素質粉末、または炭素質粉末と金属粉末との混合粉末である。第2のスラリーは、実施形態1で説明した結着剤を含む。第2のスラリーは、第2の粉末と結着剤と水とを混練することによって形成できる。第2のスラリーは、一般的な塗布方法で塗布してもよいし、第2のスラリーを吹きつけることによって塗布してもよい。
【0062】
このようにして、実施形態3で説明した負極板を容易に製造できる。
【0063】
(実施形態6)
実施形態6では、本発明のニッケル−水素蓄電池の一例について説明する。実施形態6のニッケル−水素蓄電池90(以下、電池90という場合がある)の一部分解斜視図を図9に示す。
【0064】
電池90は、ケース91、負極板92、正極板93、セパレータ94、電解液(図示せず)、および封口板95とを備える。負極板92と正極板93との間には、セパレータ94が配置されている。負極板92と正極板93とセパレータ94とは、コイル状に捲回されており、電解液と共にケース91内に封入されている。封口板95は、安全弁を備える。
【0065】
負極板92には、実施形態1〜3のいずれかで説明した負極板を用いる。ケース91、負極板92、正極板93、セパレータ94、および電解液には、ニッケル−水素蓄電池に一般的に用いられているものを用いることができる。
【0066】
電池90は、本発明の負極板を用いているため、電池の過充電時および大電流充電時に電池の内圧が高くなりすぎることを防止できる。また、電池90は、高率(大電流)の充放電特性に優れている。
【0067】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0068】
(実施例1)
実施例1では、本発明の負極板を作製し、さらにその負極板を用いて本発明のニッケル−水素蓄電池を作製した一例について説明する。
【0069】
(サンプルA)
負極板は次のようにして製作した。まず、組成がMmNi3.55Co0.75Mn0.4Al0.3で表わされる水素吸蔵合金を用意し、この水素吸蔵合金をボールミルで粉砕して平均粒径24μmの粉末を得た。その後、この水素吸蔵合金粉末100重量部と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース0.15重量部と、導電剤であるカーボンブラック0.3重量部と、結着剤であるスチレン−ブタジエン共重合体0.8重量部とを、分散媒である水と混合して、ペーストを作製した。このペーストを、支持体であるパンチングメタルに塗着・乾燥することによって、ベース極板1を得た。
【0070】
次に、天然黒鉛粉末95重量部と、結着剤であるポリビニルアルコール5重量部と、分散剤である水とを混合してスラリーを作製した。天然黒鉛粉末の粒径は0.2μm〜3.0μmであり、平均粒径は2.0μmであった。次に、得られたスラリーを上記ベース極板1の両面に圧力をかけて吹きつけた。スラリーの吹きつけには、二流体ノズルを用いた。スラリーは、極板1cm2当たりの天然黒鉛粉末の量が0.001gとなるように吹きつけた。
【0071】
その後、乾燥および圧延を行い、厚み0.33mm、幅3.5cm、長さ31cmに切断することによって本発明の負極板(以下、負極板Aという場合がある)を作製した。得られた負極板Aの断面図は、図1に模式的に示されるような状態であった。
【0072】
負極板Aの断面について、EPMA元素分布分析を行った。その結果、負極板Aの表面近傍に水素吸蔵合金と黒鉛粉末とを含む層(第2の層12)が観察され、最表面には黒鉛粒子からなる層(第3の層13)が観察された。
【0073】
次に、負極板Aを用いて、図9に示すニッケル−水素蓄電池を作製した。まず、負極板Aを、正極板およびセパレータと組み合わせて渦巻き状に巻回させて電極群を構成した。そして、正極板および負極板のそれぞれに集電体を付けた。ここで、正極板には、一般的なペースト式ニッケル正極板(幅3.5cm、長さ26cm、厚み0.57mm)を用いた。セパレータには、親水基を付与したポリプロピレン製不織布を用いた。そして、電極群および電解液をSCサイズの電池ケースに収納した。電解液には、比重1.30の水酸化カリウム水溶液に40g/Lの割合で水酸化リチウムを溶解した電解液を用いた。
【0074】
その後、ケースの上部を封口板で密閉した。このようにして、公称容量3000mAhの本発明のニッケル−水素蓄電池(以後、サンプルAという場合がある)を作製した。
【0075】
(サンプルB)
次に、負極板表面に吹き付けるスラリーのみがサンプルAとは異なる負極板を作製した。具体的には、サンプルAで説明したベース極板1(スラリーを吹き付ける前の極板)に、サンプルAとは異なるスラリーを吹きつけた。スラリーは、天然黒鉛粉末66.5重量部と、金属ニッケル粉末28.5重量部と、結着剤であるポリビニルアルコール5重量部と、分散剤である水とを混合することによって作製した。なお、金属ニッケル粉末の量は黒鉛粉末に対して30wt%とした。天然黒鉛粉末の粒径は0.2μm〜3.0μmであり、平均粒径は2.0μmであった。ニッケル粉末の粒径は1.0μm〜4.0μmであり、平均粒径は2.0μmであった。スラリーは、黒鉛粉末および金属ニッケル粉末の合計の量が極板1cm2当たり0.001gになるように吹き付けた。
【0076】
このようにして得られた極板を乾燥、圧延、切断することによって、本発明の負極板(以下、負極板Bという場合がある)を得た。負極板Bの断面図は、図2に模式的に示されるような状態であった。
【0077】
負極板Bの断面について、EPMA元素分布分析を行った。その結果、負極板の表面近傍には水素吸蔵合金と黒鉛粒子とニッケル粒子とを含む層(第2の層22)が観察され、最表面には黒鉛粒子とニッケル粒子とを含む層(第3の層23)が観察された。
【0078】
このようにして得られた負極板Bを用いたことを除き、サンプルAと同様の電池(以下、サンプルBという場合がある)を作製した。
【0079】
(比較サンプルC)
次に、負極板のみがサンプルAと異なるニッケル−水素蓄電池を作製した。
【0080】
負極板は以下の方法で作製した。まず、サンプルAで説明したベース極板1(スラリーを吹き付ける前の極板)を作製し、ベース極板1を圧延した。その後、サンプルAで説明した、天然黒鉛粉末を含むスラリーをベース極板1の両面に塗布し、乾燥、圧延、切断して、負極板を得た。塗布は、一般的な方法である二流体ノズルを用いた吹きつけ方法によって行った。この負極板の断面図を、図10に模式的に示す。図10に示すように、支持体10上には、第1の層11と、第3の層13とが積層されていた。
【0081】
上記方法で得られた負極板を用いたことを除き、サンプルAと同様の電池(以下、比較サンプルCという場合がある)を作製した。
【0082】
(比較サンプルD)
次に、負極板のみがサンプルAと異なるニッケル−水素蓄電池を作製した。
【0083】
負極板は以下の方法で作製した。まず、水素吸蔵合金を粉砕機で粉砕して合金粒子(母粒子)を作製した。次に、この合金粒子の表面に、粒径が0.2μm〜3.0μm、平均粒径2.0μmの天然黒鉛粒子(子粒子)を強固に結合させた。具体的には、合金粒子の表面に静電気的に黒鉛粒子を付着させたのち、回転ドラムの中で粒子(粉末)を回転させることによって粒子に衝撃を与えた。これによって、合金粒子の表面に黒鉛粒子が打ち込まれ、合金粒子の表面に黒鉛粒子が強固に結合した。
【0084】
このようにして得られた合金粉末と、結着剤であるスチレン−ブタジエン共重合体0.8重量%と、分散媒である水とを混合してペーストを作製した。一方、サンプルAで説明したベース極板1(スラリーを吹き付ける前の極板)を作製し、これを圧延した。このベース極板1の両面に、上記ペーストを塗布し、乾燥、圧延、切断を行い、負極板Dを得た。負極板Dは、図10に示される負極板と同様の積層構造を有していた。負極板Dでは、第3の層13が上記ペーストで形成された。
【0085】
このようにして得られた負極板を用いたことを除き、サンプルAと同様の電池(以下、比較サンプルDという場合がある)を作製した。
【0086】
(電池の特性評価)
上記4種類の電池を組み立てたのち、これらの電池を25℃で一日放置した。その後、20℃において300mAで15時間充電した後、電池の端子電圧が1.0Vになるまで600mAで放電した。その後、この充放電をもう一度繰り返した。このようにして、作製した電池を活性化した。得られた電池について、過充電時の内圧特性および高率放電特性を評価した。
【0087】
過充電時の内圧特性は、20℃において3000mAの電流で1.2時間充電を行い、充電後の電池の内圧を測定することによって評価した。また、高率放電特性は、以下の方法で評価した。まず、20℃において3000mAで1.2時間充電し、電池の端子電圧が1.0Vになるまで3000mAで放電する充放電サイクルを10サイクル行った。その後、20℃において3000mAで1.2時間充電した後、電池の端子電圧が0.8Vになるまで30Aで放電を行った。この大電流放電時の平均放電電圧を求めた。また、20℃において3000mAで1.2時間充電した後、600mAで電池電圧が1.0Vになるまで放電した時の放電容量を100%とし、これに対する大電流放電時の放電容量比率を求めた。過充電時の電池の内圧、大電流放電時の放電容量比率、および大電流放電時の平均放電電圧の結果を(表1)に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
(表1)から明らかなように、本発明のサンプルAおよびBは、比較サンプルCおよびDに比べて、過充電時における内部圧力の上昇が抑制されていた。また、サンプルAおよびBは、比較サンプルCおよびDに比べて、大電流放電時の放電容量比率および放電電圧が高かった。
【0090】
サンプルAおよびBの特性が高いのは、実施形態で説明した効果に基づくものである。これに対して、比較サンプルCは、極板の最表面のみに黒鉛粉末層を形成したため、負極表面の導電性が向上するが、それ以外の部分の導電性は向上しない。そのため、比較サンプルCでは、酸素ガス消費能力および大電流充放電特性がともに十分ではなかった。また、比較サンプルDにおいては、水素吸蔵合金の表面に結合した黒鉛粒子は合金と比べて導電性が低いため、水素吸蔵合金同士の接触が妨害されたことによって電極の導電性が低下した。その結果、比較サンプルDでは、酸素ガス消費能力および大電流充放電特性がともに十分ではなかった。
【0091】
(実施例2)
この実施例では、ベース極板1に塗布する黒鉛粉末の量のみが異なることを除き、サンプルAの負極板Aと同様に負極板を作製した。具体的には、(表2)に示すように、活物質層に吹きつけられる黒鉛粉末の量を変化させ、負極板E1〜E7を作製した。その後、負極板E1〜E7を用いて、サンプルAと同様の方法で7種類の電池(サンプルE1〜E7)を作製した。なお、サンプルE5は、サンプルAと同一の電池である。これらの電池を、実施例1と同様の方法で活性化した。そして、得られた電池の特性を、実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を(表2)に示す。表に示す塗布量は、1cm2の負極板の両面に塗布される量を示している。
【0092】
【表2】
【0093】
(表2)に示されるように、黒鉛粉末の塗布量が増加するに従って、電池の内部圧力が低下した。これは、負極表面における酸素ガス消費反応が促進されたためである。しかしながら、塗布量が0.003g/cm2の場合には、大電流放電時の放電容量比率と放電電圧が低下した。これは、塗布量が増加することによって負極に吸収される電解液の量が増加するためであると考えられる。負極に吸収される電解液の量が増加すると、セパレータに保持される電解液が減少してしまい、電池の内部抵抗が増大する。その結果、大電流放電特性が低下すると考えられる。実施例2の結果を考慮すると、黒鉛の塗布量は、極板1cm2当たり0.0001g〜0.002gが望ましい。
【0094】
(実施例3)
この実施例では、ベース極板1に塗布する黒鉛粉末およびニッケル粉末の量が異なることを除き、サンプルBの負極板Bと同様に負極板を作製した。具体的には、(表3)に示すように、ベース極板1に吹きつけられる黒鉛粉末およびニッケル粉末の量を変化させ、負極板F1〜F7を作製した。なお、ニッケル粉末の量は黒鉛粉末に対して30wt%とした。その後、負極板F1〜F7を用いて、サンプルAと同様の方法で7種類の電池(サンプルF1〜F7)を作製した。なお、サンプルF5は、サンプルBと同一の電池である。これらの電池を、実施例1と同様の方法で活性化した。そして、得られた電池の特性を、実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を(表3)に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
表3に示されるように、導電性粉末(炭素粉末および金属粉末)の塗布量が増加するに従って、電池の内部圧力が低下した。これは、負極表面における酸素ガス消費反応が促進されたためである。しかしながら、塗布量が0.003g/cm2の場合には、大電流放電時の放電容量比率と放電電圧が低下した。これは、実施例2で説明した理由によるものであると考えられる。実施例3の結果を考慮すると、炭素粉末と金属粉末の混合粉末の塗布量は、0.0001g〜0.002gが好ましい。
【0097】
(実施例4)
実施例4では、本発明の負極板を作製し、さらにその負極板を用いて本発明のニッケル−水素蓄電池を作製した他の一例について説明する。
【0098】
(サンプルG)
以下のようにして、図3に示す負極板を作製した。まず、組成がMmNi3.55Co0.75Mn0.4Al0.3で表わされる水素吸蔵合金を用意し、この水素吸蔵合金をボールミルで粉砕して平均粒径24μmの粉末を得た。その後、この水素吸蔵合金粉末100重量部と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース0.15重量部と、導電剤であるカーボンブラック0.3重量部と、結着剤であるスチレン−ブタジエン共重合体0.8重量部と、分散媒である水とを混合してペーストを作製した。このペーストを、支持体であるパンチングメタル(厚さ:0.06mm)に塗布し乾燥することによって活物質層を形成した。このようにしてベース極板2を形成した。
【0099】
次に、ロールプレス機を用いてベース極板2をプレスした。このとき、断面V字型の凸部が円周方向に複数形成されているローラを用いてプレスを行った。このプレスによって、ベース極板の厚さを0.32mmとし、1つの活物質層の厚さを0.13mmとした。また、このプレスによって、ベース極板の両面に、図4(A)に示されるようなストライプ状の溝を形成した。形成された溝の深さは0.02mmであり、幅は0.05mmであった。隣接する溝の間隔は1mmであった。一方の面の溝と、他方の面の溝とが離れるように、一方の面の溝の位置と他方の面の溝の位置を0.5mmずらした。このときの溝の配置は、図3および4(A)に模式的に示される。
【0100】
本発明の負極板によって得られる効果は、溝の形状に影響を受ける。たとえば、活物質層の厚さに対する溝の深さの比率によって影響される。活物質層に対して溝が浅すぎると、本発明によって得られる効果が小さくなる。一方、活物質層に対して溝が深すぎると水素吸蔵合金層の緻密度が大きくなり過ぎ、その結果、負極の酸素ガス吸収性能が低下する。
【0101】
次に、活物質層の表面に導電層を形成した。まず、天然黒鉛粉末95重量部と、結着剤であるポリビニルアルコール5重量部と、分散剤である水とを混合してスラリーを作製した。天然黒鉛粉末の粒径は0.2μm〜3.0μmであり、平均粒径は2.0μmであった。そして、このスラリーを、上記の活物質層の両面に塗布した。スラリーは、塗布される天然黒鉛の量が極板1cm2当たり0.001gになるように塗布した。
【0102】
最後に、極板を、乾燥、圧延および切断し、厚さ0.33mm、幅3.5cm、長さ31cmの負極板を作製した。このようにして、図3に示される本発明の負極板(以下、負極板Gという場合がある)を作製した。そして、負極板Gを用いることを除いて、サンプルAと同様に、公称容量3000mAhの電池(以下、サンプルGという場合がある)を作製した。
【0103】
(サンプルH)
まず、活物質層表面に形成する溝の配置が異なることを除いて、負極板Gと同様の方法で本発明の負極板Hを作製した。負極板Hの活物質層には、図4(B)に示されるように、格子状の溝を形成した。次に、負極板Hを用いたことを除いて、サンプルAと同様の電池(以下、サンプルHという場合がある)を作製した。
【0104】
(サンプルI)
まず、活物質層の表面に塗布するスラリーのみが負極板Gとは異なる負極板を作製した。スラリーは、天然黒鉛粉末66.5重量部と、金属ニッケル粉末28.5重量部と、結着剤であるポリビニルアルコール5重量部と、分散剤である水とを混合して作製した。なお、金属ニッケル粉末の量は黒鉛粉末に対して30wt%とした。黒鉛粉末の粒径は0.2μm〜3.0μmであり、平均粒径は2.0μmであった。ニッケル粉末の粒径は1.0μm〜4.0μmであり、平均粒径は2.0μmであった。このスラリーを、サンプルGで説明した、ストライプ状の溝が形成された活物質層に塗布した。スラリーは、塗布される天然黒鉛および金属ニッケルの合計の量が極板1cm2当たり0.001gになるように塗布した。
【0105】
このようにして得られた極板を乾燥、圧延、切断し、図3に示される本発明の負極板Iを得た。次に、この負極板を用いたことを除いて、サンプルAと同様の電池(以下、サンプルIという場合がある)を作製した。
【0106】
(サンプルJ)
活物質層表面に形成する凹部の形状が異なることを除いて、負極板Gと同様の負極板を作製した。まず、サンプルGで説明したベース極板2を作製した。次に、ロールプレス機を用いてベース極板をプレスした。このとき、複数の円錐状の凸部が表面に形成されているローラを用いてプレスを行った。このプレスによって、ベース極板の厚さを0.32mmとし、ベース極板の両面に複数のすり鉢状の孔を形成した。形成された孔は、深さが0.02mmで開口部の直径が0.05mmであった。隣接する孔と孔との間隔は1mmであった。一方の面の孔と、他方の面の孔とが離れるように、一方の面の孔の位置と他方の孔の位置とを0.5mmずらした。このようにして、図5(A)および(B)に示される負極板を得た。
【0107】
本発明の負極板によって得られる効果は、孔の形状に影響を受ける。たとえば、活物質層の厚さに対する孔の深さの比率によって影響される。活物質層に対して孔が浅すぎると、本発明によって得られる効果が小さくなる。一方、活物質層に対して孔が深すぎると水素吸蔵合金層の緻密度が大きくなり過ぎ、その結果、負極の酸素ガス吸収性能が低下する。
【0108】
次に、活物質層の表面に導電層を形成した。まず、天然黒鉛粉末95重量部と、結着剤であるポリビニルアルコール5重量部と、分散剤である水とを混合してスラリーを作製した。天然黒鉛粉末の粒径は0.2μm〜3.0μmであり、平均粒径は2.0μmであった。そして、このスラリーを、上記の活物質層の両面に塗布した。スラリーは、塗布される天然黒鉛の量が極板1cm2当たり0.001gになるように塗布した。
【0109】
最後に、極板を、乾燥、圧延および切断し、厚さ0.33mm、幅3.5cm、長さ31cmの負極板を得た。このようにして、図5(A)および(B)に示される本発明の負極板Jを作製した。そして、負極板Jを用いることを除いて、サンプルAと同様の電池(以下、サンプルJという場合がある)を作製した。
【0110】
(サンプルK)
まず、活物質層に塗布するスラリーのみが負極板Jとは異なる負極板を作製した。最初に、サンプルGで説明したベース極板2を作製した。次に、負極板Jと同じ方法で活物質層の表面に複数の凹部を形成した。凹部の形状および配置は、負極板Fと同じとした。
【0111】
次に、活物質層の表面に導電層を形成した。まず、天然黒鉛粉末66.5重量部と、金属ニッケル粉末28.5重量部と、結着剤であるポリビニルアルコール5重量部と、分散剤である水とを混合してスラリーを作製した。天然黒鉛粉末の粒径は0.2μm〜3.0μmであり、平均粒径は2.0μmであった。金属ニッケル粉末の粒径は1.0μm〜4.0μmであり、平均粒径は2.0μmであった。なお、金属ニッケル粉末の量は黒鉛粉末に対して30wt%とした。そして、このスラリーを、上記の活物質層の両面に塗布した。スラリーは、塗布される天然黒鉛および金属ニッケルの合計の量が極板1cm2当たり0.001gになるように塗布した。
【0112】
その後、極板を、乾燥、圧延および切断し、負極板Kを得た。このようにして、図5(A)および(B)に示される本発明の負極板を作製した。そして、負極板Kを用いることを除いて、サンプルAと同様の電池(以下、サンプルKという場合がある)を作製した。
【0113】
(比較サンプルL)
サンプルGの負極板Gの製造過程において、導電層を形成する直前の負極板を形成した。この負極板は、図3に示される負極板と比較して、導電層がないことのみが異なる。この負極板を用いたことを除いて、サンプルAと同様の方法で電池(以後、比較サンプルLという場合がある)を作製した。
【0114】
(比較サンプルM)
サンプルJの負極板Jの製造過程において、導電層を形成する直前の負極板を形成した。この負極板は、図5(A)に示される負極板と比較して、導電層がないことのみが異なる。この負極板を用いたことを除いて、サンプルAと同様の方法で電池(以後、比較サンプルMという場合がある)を作製した。
【0115】
(電池の特性評価)
上記7種類の電池を組み立てたのち、これらの電池を、実施例1と同じ方法で活性化した。得られた電池について、実施例1と同じ方法で電池の特性を評価した。過充電時の電池の内圧、大電流放電時の放電容量比率、および大電流放電時の平均放電電圧の結果を(表4)に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
(表4)から明らかなように、サンプルG、HおよびIは、比較サンプルLに比べて、過充電時における電池の内部圧力の上昇が抑制されていた。また、サンプルG、HおよびIは、比較サンプルLに比べて、大電流放電時の放電容量比率と放電電圧が高かった。
【0118】
また、(表4)から明らかなように、サンプルJおよびKは、比較サンプルMに比べて、過充電時における内部圧力の上昇が抑制されていた。また、サンプルJおよびKは、比較サンプルMに比べて、大電流放電時の放電容量比率および放電電圧が高かった。
【0119】
サンプルG〜Kの特性が高いのは、実施形態3で説明した効果に基づくものである。これに対して、比較サンプルLおよびMは、負極表面に導電層が形成されていないため、負極の表面近傍の導電性が低い。このため、比較サンプルLおよびMは、酸素ガス消費能力および大電流充放電特性が十分ではなかった。
【0120】
(実施例5)
この実施例では、導電層を形成する際に塗布される黒鉛粉末の量のみが異なることを除き、サンプルGの負極板Gと同様に負極板を作製した。具体的には、(表5)に示すように、活物質層に塗布される黒鉛粉末の量を変化させ、負極板N1〜N7を作製した。その後、負極板N1〜N7を用いて、サンプルGと同様の方法で7種類の電池(サンプルN1〜N7)を作製した。なお、サンプルN5は、サンプルGと同一の電池である。これらの電池を、実施例1と同様の方法で活性化した。そして、得られた電池の特性を、実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を(表5)に示す。
【0121】
【表5】
【0122】
(表5)に示されるように、黒鉛粉末の塗布量が増加するに従って、電池の内部圧力が低下した。これは、負極表面において酸素ガス消費反応が促進されるためである。しかしながら、塗布量が0.003g/cm2の場合には、大電流放電時の放電容量比率および放電電圧が低下した。これは、塗布量が増加することによって負極に吸収される電解液の量が増加するためであると考えられる。負極に吸収される電解液の量が増加すると、セパレータに保持される電解液が減少してしまい、電池の内部抵抗が増大する。その結果、大電流放電特性が低下すると考えられる。
【0123】
実施例5では、黒鉛粉末の塗布量は、極板1cm2当たり、0.0001g〜0.002gが望ましいという結果が得られた。
【0124】
(実施例6)
この実施例では、導電層を形成する際に塗布される黒鉛粉末およびニッケル粉末の量のみが異なることを除き、サンプルIの負極板Iと同様に負極板を作製した。具体的には、(表6)に示すように、活物質層に塗布される黒鉛粉末およびニッケル粉末の量を変化させ、負極板P1〜P7を作製した。その後、負極板P1〜P7を用いて、サンプルAと同様の方法で7種類の電池(サンプルP1〜P7)を作製した。なお、サンプルP5は、サンプルIと同一の電池である。これらの電池を、実施例1と同様の方法で活性化した。そして、得られた電池の特性を、実施例1と同様の方法で評価した。評価結果を(表6)に示す。
【0125】
【表6】
【0126】
(表6)に示されるように、黒鉛粉末と金属粉末の合計の塗布量が増加するに従って、電池の内部圧力が低下した。これは、負極表面において酸素ガス吸収反応が促進されるためである。しかし、塗布量が0.003g/cm2の場合には、大電流放電特性が低下した。これは、実施例5で説明した理由と同様の理由によるものであると考えられる。
【0127】
実施例6では、黒鉛粉末と金属粉末の塗布量の合計は、極板1cm2当たり、0.0001g〜0.002gが望ましいという結果が得られた。
【0128】
なお、上記実施例では、炭素質粉末として天然黒鉛粉末を用いたが、他の炭素質粉末を用いても同様の結果が得られる。また、ニッケル粉末に代えてコバルト粉末や銅粉末といった他の金属粉末を用いても同様の効果が得られる。
【0129】
また、上記実施例では、ストライプ状の溝または格子状の溝を形成した場合について説明したが、他の配置であっても同様の効果が得られる。
【0130】
以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用することができる。
【0131】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の負極板およびその製造方法によれば、電池の過充電時に電池の内圧が高くなりすぎることを防止できるとともに、大電流充放電特性に優れたニッケル−水素蓄電池を形成できる負極板が得られる。この負極板を用いることによって、特性が高い電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の負極板について一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の負極板について他の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の負極板についてその他の一例を示す模式断面図である。
【図4】図3に示した負極板の活物質層の表面に形成される溝の配置の(A)一例および(B)他の一例を示す図である。
【図5】本発明の負極板についてその他の一例を示す(A)模式断面図、および(B)活物質層の表面に形成される孔の配置を示す図である。
【図6】本発明の負極板についてその他の一例を示す模式断面図である。
【図7】負極板を製造するための本発明の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【図8】負極板を製造するための本発明の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【図9】本発明のニッケル−水素蓄電池の一例を模式的に示す一部分解斜視図である。
【図10】比較例の負極板の構造を示す模式断面図である。
【符号の説明】
100、101、102、103、104 ニッケル−水素蓄電池用負極板
10 支持体
11、11a 第1の層
12、22 第2の層
13、23 第3の層
31 活物質層
32、42 導電層
35、35a、35b 溝(凹部)
36 孔
81 凹部
90 ニッケル−水素蓄電池
91 ケース
92 負極板
93 正極板
94 セパレータ
95 封口板
Claims (27)
- 導電性の支持体と、前記支持体の表面に、前記支持体側から順に配置された第1、第2および第3の層とを含み、
前記第1の層は水素吸蔵合金の粉末と炭素質材料からなる第1の粉末とを含み、
前記第2の層は前記水素吸蔵合金の粉末と前記第1の粉末と導電性の第2の粉末とを含み、
前記第3の層は前記第2の粉末を主成分として含むニッケル−水素蓄電池用負極板。 - 前記第2の粉末が炭素質材料からなる粉末である請求項1に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記第2の粉末が炭素質材料からなる粉末と金属粉末との混合粉末である請求項1に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記金属粉末がニッケル粉末である請求項3に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記第2の層の厚さは、負極板全体の厚さの1%〜10%の範囲にある請求項1に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記第2の粉末の量が負極板1cm2当たり、0.0001g以上0.002g以下である請求項1に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記第2の粉末を構成する粒子の粒径が、0.05μm〜7.0μmの範囲にある請求項1に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記第1の粉末を構成する粒子の粒径が、1μm〜20μmの範囲にある請求項7に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 導電性の支持体と、前記支持体の一主面上および他主面上に形成された活物質層とを備えるニッケル−水素蓄電池用負極板であって、
前記活物質層は水素吸蔵合金の粉末を主成分として含み、
前記活物質層の表面には複数の凹部が形成されており、
前記活物質層の表面を覆うように且つ前記凹部内を充填するように形成された、導電性粉末を主成分とする導電層を備えるニッケル−水素蓄電池用負極板。 - 前記導電性粉末が、炭素質材料からなる粉末である請求項9に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記導電性粉末が、炭素質材料からなる粉末と金属粉末との混合粉末である請求項9に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記凹部は、断面V字状の溝である請求項9に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記一主面側の前記溝と、前記他主面側の前記溝とが重ならないように配置されている請求項12に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記凹部がすり鉢状の孔である請求項9に記載のニッケル・水素蓄電池用負極板。
- 前記一主面側の前記孔と、前記他主面側の前記孔とが重ならないように配置されている請求項14に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記導電性粉末の量が、負極板1cm2当たり0.0001g以上0.002g以下である請求項9に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 前記導電性粉末の粒径が0.05μm〜7.0μmの範囲にある請求項9に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板。
- 水素吸蔵合金を含む負極板を備えるニッケル−水素蓄電池であって、
前記負極板が、請求項1ないし9のいずれかに記載のニッケル−水素蓄電池用負極板であるニッケル−水素蓄電池。 - (i)水素吸蔵合金の粉末と炭素質材料からなる第1の粉末とを含む第1のスラリーを、導電性の支持体の両面に塗布し乾燥させることによって、前記支持体の両面に形成された第1の層を形成する工程と、
(ii)導電性の第2の粉末を含む第2のスラリーを前記第1の層に吹きつける工程とを含むニッケル−水素蓄電池用負極板の製造方法。 - 前記第2の粉末が炭素質材料からなる粉末である請求項19に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板の製造方法。
- 前記第2の粉末が炭素質材料からなる粉末と金属粉末との混合粉末である請求項19に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板の製造方法。
- 前記第1の粉末を構成する粒子の粒径が1μm〜20μmの範囲であり、前記第2の粉末を構成する粒子の粒径が0.05μm〜7.0μmの範囲である請求項19に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板の製造方法。
- (I)水素吸蔵合金の粉末と炭素質材料からなる第1の粉末とを含む第1のスラリーを、導電性の支持体の両面に塗布し乾燥させることによって、前記支持体の両面に形成された活物質層を形成する工程と、
(II)前記活物質層の表面に凹部を複数個形成する工程と、
(III)導電性の第2の粉末を含む第2のスラリーを前記活物質層に塗布する工程とを含むニッケル−水素蓄電池用負極板の製造方法。 - 前記第2の粉末が炭素質材料からなる粉末である請求項23に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板の製造方法。
- 前記第2の粉末が炭素質材料からなる粉末と金属粉末との混合粉末である請求項23に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板の製造方法。
- 前記第1の粉末を構成する粒子の粒径が1μm〜20μmの範囲であり、前記第2の粉末を構成する粒子の粒径が0.05μm〜7.0μmの範囲である請求項23に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板の製造方法。
- 前記凹部が、断面V字状の溝である請求項23に記載のニッケル−水素蓄電池用負極板の製造方法。
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