JP4868809B2 - 円筒型アルカリ蓄電池 - Google Patents
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Description
そこで、例えば、特許文献1が開示するAAサイズのニッケル水素蓄電池では、正極板の厚さを厚くすることにより、高容量化が図られている。この電池では、正極板の巻回数が3回以上4回未満であって、巻回直後の電極群の断面形状が略真円形状になる。この結果として、この電池では、外装缶により大きな電極群(正極板)が収容され、高容量化が図られる。
そこで、本発明者らは、電池容量を低下させずに正極板の長さを増大せるべく種々検討を重ね、この過程で次のように思考した。
ここで、円筒型アルカリ電池の仕様では、通常、電池の最大径のみが規定され、楕円形状の電池は、その長軸の長さが最大径を超えないように製造される。このため、楕円形状の電池の実際の体積は、仕様上の最大径から見積もられる円柱体の体積、つまり、仕様で規定される体積よりも大幅に小さくなっている。従って、もし、活性化処理後に略真円形状の電池を製造できれば、仕様で規定される体積寸前まで電池の実際の体積を増大することができ、この結果として、電池容量を低下させることなく、正極板の長さを増大することができる。
更に、本発明の電池によれば、正極板の巻終わり端部の周方向位置から正極板に沿って測った基準位置、つまり巻始め端部の周方向位置までの角度θが180°以上265°以下の範囲にあるため、高容量化が図られる。この理由を以下に示す。
そして、電池の横断面でみたときに、空洞部を除いた電極群の断面積を、外装缶の内断面積から電極群の空洞部の断面積を差し引いた値で除した値が95%以上100%以下であるため、外装缶内に歪な電極群が収容されると、内側からの押圧力により外装缶の周壁が変形する。このため、組立て直後の電池の横断面形状も真円度が低下し、楕円形状になってしまう。
このように、空洞部が大きく潰れ、電極群が径方向内側に向けて大きく膨張すると、電極群に残されていた空洞部が発電要素としての正極板及び負極板により占有されて有効に活用されることになる。また、空洞部が大きく潰れることにより、電極群の径方向外側に向けた膨張が抑制されるとともに、その横断面形状が真円形状になるよう電極群が膨張する。この結果として、この電池の真円度は活性化処理により高くなり、電池の実際の体積が仕様上の体積寸前まで増大され、高容量化が図られる。
本発明の電池では、正極板の巻回数が多いことから、電極群中央の空洞部が小さくなることに加え、活性化処理により空洞部が大きく潰れることから、巻始め端部を含む正極板の1巻(最内周部)には、内部短絡の原因になる破断や亀裂が生じ易い。そこで、この態様の電池は、正極板の最内周部を覆う最内周保護部材を更に備え、この最内周保護部材により、破断や亀裂の生じた部位がセパレータを突き破って負極板と直接接触するのが防止される。この結果、内部短絡の発生が容易且つ確実に防止され、この態様の電池では、生産性及び品質が確実に高くなる。
この態様によれば、正極板における薄肉部と本体部との境界からばりが突出していたとしても、境界保護部材によりばりがセパレータを突き破って負極板と直接接触するのが防止される。この結果として、この態様の電池では、品質がより一層向上する。
好適な態様として、前記薄肉部は一定の厚さ若しくは徐々に変化する厚さを有する(請求項6)。一定の厚さ若しくは徐々に変化する厚さを有する薄肉部は容易に形成され、電池の生産性を高めるのに適している。
この電池は、一端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備え、外装缶10は、ニッケルメッキされた鋼板からなる。この鋼板としては、SPCC(一般用),SPCD(絞り用),SPCE(深絞り用)等の一般冷延鋼板を用いることができ、外装缶10の周壁の厚さは0.17mm以下である。電池の活性化処理後において、外装缶10の外径Dの最大値(最大径Dmax)は13.5mm以上14.5mm以下の範囲にある。なお、電池がAAAサイズであるならば、最大径Dmaxは9.8mm以上10.5mm以下の範囲にある。
蓋板14は中央にガス抜き孔16を有し、蓋板14の外面上にはガス抜き孔16を閉塞するようにゴム製の弁体18が配置されている。更に蓋板14の外面上には、弁体18を囲むようにフランジ付きの円筒形状の正極端子20が同軸上に固定され、正極端子20は開口端側にて外装缶10から軸線方向に突出している。正極端子20は弁体18を蓋板14に押圧しており、通常時、外装缶10は絶縁パッキン12及び弁体18とともに蓋板14により気密に閉塞されている。一方、外装缶10内でガスが発生してその内圧が高まった場合には弁体18が圧縮され、ガス抜き孔16を通して外装缶10からガスが放出される。つまり、蓋板14、弁体18及び正極端子20は、電池の内圧が所定圧力を超えたときに作動する安全弁を形成している。
Vb=π(Dmax/2)2×H
により規定される。
更に外装缶10内には、電極群22の一端と蓋板14との間に、正極リード30が配置され、正極リード30の両端は正極板24及び蓋板14に溶接されている。従って、正極端子20と正極板24との間は、正極リード30及び蓋板14を介して電気的に接続されている。より詳しくは、正極リード30は帯状をなし、蓋板14を外装缶10の開口内に配置する時に、電極群22と蓋板14との間にて折り曲げられて収容され、正極リード30の電極群22側の端部は、正極板24の一方の面に面接触した状態で溶接されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の絶縁部材32が配置され、正極リード30は絶縁部材32に設けられたスリットを通して延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の絶縁部材34が配置されている。
電極群22の最外周にセパレータ28は巻回されておらず、負極板26の最外周部が電極群22の最外周に巻回され、負極板26の最外周部と外装缶10とは互いに直接接触して電気的に接続されている。
ここで、電極群22の横断面積は、図3(a)に斜線で示したように、外装缶10の周壁内側の断面積から、空洞部44の断面積と、電極群22と外装缶10との間に生じた隙間46の断面積とを差し引いた値となるが、この電極群22の横断面積を、外装缶10の周壁内側の断面積から空洞部44の断面積を差し引いた値、つまり図3(b)に斜線で示した横断面積で除した値が95%以上100%以下の範囲内に入っている。なお、本明細書では、この値を電極群断面積比率ともいう。
正極板24は、導電性の正極芯体と、正極芯体に保持された正極合剤とからなる。
正極合剤は、正極活物質粒子と、正極板の特性を改善するための種々の添加剤粒子と、これら正極活物質粒子及び添加剤粒子の混合粒子を正極芯体に結着するための結着剤とからなる。
境界保護部材56は、正極板24と、正極板24の径方向外面に隣接するセパレータ28との間に介挿され(図2参照)、正極本体部50と、巻始め端部36及び巻終わり端部40との境界をカバーしている。境界保護部材56は、絶縁性のPP製テープからなり、正極板24の稜52全体を被覆可能である。
また、境界保護部材56の材質及び形態についても、電極群22を外装缶10内へ挿入した時に、稜52及びその周辺部分のばりが境界保護部材56及びセパレータ28を貫通しないよう設定されるけれども、特に限定されることはない。ただし、境界保護部材56の材質としては、耐アルカリ性及び親水性の両方を有するポリオレフィン系のポリマー、例えばPP(ポリプロピレン)が好ましく、また境界保護部材56の形態は、不織布又はテープ等のシート状であるのが好ましい。
より詳しくは、負極合剤は、電池がニッケル水素二次電池であることから、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子及び結着剤からなる。ただし、水素吸蔵合金に代えて、例えばカドミウム化合物を用いて電池をニッケルカドミウム二次電池としてもよい。しかしながら、電池の高容量化には、ニッケル水素二次電池が好適する。なお、活物質が水素の場合、負極容量は水素吸蔵合金量により規定されるので、本明細書では、水素吸蔵合金のことを負極活物質ともいう。
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。なお、本実施形態では、図2に示したように、セパレータ28として、正極板24の径方向外面と負極板26の径方向内面との間に介挿された第1セパレータ28aと、正極板24の径方向内面と負極板26の径方向外面との間に介挿された第2セパレータ28bとが巻回されている。
なお、アルカリ電解液の種類としては、特に限定されないけれども、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びこれらのうち2つ以上を混合した水溶液等を用いることができ、またアルカリ電解液の濃度についても特には限定されず、例えば8Nのものが用いられる。
図7に示したように、電極群22は、円柱状の巻芯60を一定方向に回転させながら、巻芯60に向かって、正極板24、負極板26、第1セパレータ28a及び第2セパレータ28bを連続的に繰り出して巻回される。ここで、巻芯の外径Pは、特に限定されないが、外装缶10の最大径Dmaxの0%以上30%以下の範囲内に入っているのが好ましい。
上述した電池では、電極群22における正極板24の巻回数をNとしたとき、巻回数Nと外装缶10の最大径Dmaxとの間には、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係が成立している。従って、この電池では、正極板の巻回数は4回以上であり、最大径Dmaxの割合に正極板24の巻回数Nが多く、電池反応に関与する正極板24の面積が広いことから、充放電時の電流密度が低くなる。このため、この電池は、高容量化に適するのみならず、急速充電特性及び放電特性において優れている。
更に、この電池では、その横断面でみて、正極板24の巻終わり端部40の周方向位置から正極板24に沿って測った基準位置、つまり巻始め端部36の周方向位置までの角度θが180°以上270°以下の範囲A、更には、200°以上240°以下の好適な範囲Bにあるため、高容量化が図られる。この理由を以下に示す。
そして、この電池では、電極群断面積比率が95%以上100%以下であるため、外装缶10内に歪な電極群22が収容されると、内側からの押圧力により外装缶10の周壁が変形する。このため、組立て直後の電池の形状も真円度が低く、楕円形状になってしまう。
1.正極板の作製
各粒子の全部若しくは一部がコバルト化合物で被覆された水酸化ニッケル粉末を用意し、この水酸化ニッケル粉末100質量部に対し、40質量%のHPCディスパージョンを混合して正極用スラリを調製し、この正極用スラリが塗着・充填された3次元網目状の骨格を有するニッケル製の金属体を、乾燥を経てから、圧延・裁断してAAサイズ用の正極板を作製した。
組成がMm1.0Ni3.7Co0.8Al0.3Mn0.2(ただし、Mmはミッシュメタル)となるように金属原料を秤量して混合し、この混合物を高周波溶解炉で溶解してインゴットを得た。このインゴットを、温度1000℃のアルゴン雰囲気下にて10時間加熱し、インゴットにおける結晶構造をAB5型構造にした。この後、インゴットを不活性雰囲気中で機械的に粉砕して篩分けし、AB5型の水素吸蔵合金粉末を得た。なお、得られた水素吸蔵合金粉末は、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した重量積分50%にあたる平均粒径が50μmであった。
得られた正極板と負極板とを、ポリプロピレン繊維製不織布からなり、厚さが0.1mmで目付量が40g/m2のセパレータを介して渦巻状に巻回し、電極群を作製した。得られた電極群を外装缶内に収納して所定の取付工程を行った後、外装缶内に、7Nの水酸化カリウム水溶液と1Nの水酸化リチウム水溶液とからなるアルカリ電解液を注液した。そして、外装缶の開口端を蓋板等を用いて封口し、定格容量が2500mAhでAAサイズの実施例1の密閉円筒形ニッケル水素蓄電池を組立てた。
表1に示したように、正極板の巻始め端部の周方向位置に対する巻終わり端部の周方向位置(角度θ)を変化させるべく、長さの異なる複数の正極板を作製した。この際、正極板の長さが長いほど、金属体への正極用スラリの充填量を少なくするとともに、圧延率を高めて正極板の厚さを薄くし、電池の容量が一定になるようにした。これらの正極板を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜3のニッケル水素蓄電池を組立てた。
まず、組立て直後の各電池について、最大径及び最小径をそれぞれ測定し、最小径を最大径で除して真円度を求めた。
この後、各電池について、温度25℃の環境において、0.1Itの充電電流で15時間充電した後、0.2Itの放電電流で終止電圧1.0Vまで放電させる活性化処理を施した。そして、活性化処理後の各電池についても、最大径及び最小径を測定し、最小径を最大径で除して真円度を求めた。
また、実施例1〜6の電池の真円度は、組立て直後で比較すると、比較例1〜5の電池の真円度よりも低いけれども、活性化処理後で比較すると、比較例1〜5の電池の真円度以上である。
なお、実施例1〜6のなかでも、正極板の巻終わり端部の周方向位置が200°,220°,240°の実施例4,5,6では、真円度が特に高い。
(3)活性化処理の前後で、実施例1〜6の電池では、最大径が小さくなるとともに最小径が大きくなり、これに伴って真円度が高くなる傾向が認められた。これに対して、比較例1〜5の電池では、最大径及び最小径が大きくなり、これに伴って真円度が低くなる傾向が認められた。
本発明は、上記した一実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々変形が可能であって、例えば、安全弁には弾性体として圧縮コイルばねを用いてもよい。
そして、正極板24は、巻始め端部36及び巻終わり端部40の両方が薄肉部として形成されていることが好ましいが、どちらか一方のみであってもよく、或いは巻始め端部36及び巻終わり端部40を含む長手方向全体に亘って厚さが一定であってもよい。
更に、巻始め端部36側の境界保護部材56に代えて、または、これとともに、図12に示した最内周保護部材62を用いてもよい。最内周保護部材62も絶縁性を有するシート状材料からなり、巻始め端部36を含む正極板24の1巻(最内周部)の径方向外面全体を覆っている。この最内周保護部材62を用いた場合、内部短絡が容易且つ確実に防止され、電池の生産性及び品質がより一層高くなる。これは以下の理由による。
そこで、最内周保護部材62を用いれば、破断や亀裂の生じた部位がセパレータ28を突き破って負極板26と直接接触するのが防止される。この結果、内部短絡の発生が容易且つ確実に防止され、生産性及び品質がより一層高くなる。
なお、図12中、作図上の都合によりセパレータ28を省略した。
22 電極群
24 正極板
26 負極板
28 セパレータ
36 正極板の巻始め端部
40 正極板の巻終わり端部
Claims (7)
- 導電性の円筒状外装缶内に、正極板、負極板及びセパレータを巻回してなる電極群を備えた円筒型アルカリ蓄電池において、
前記外装缶の最大径をDmax(mm)とし、前記正極板の巻回数をNとしたとき、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係を満たし、
前記電極群は、巻芯を用いて巻回されて前記巻芯に対応した空洞部を中央に有し、
前記電池の横断面でみて、前記空洞部を除く前記電極群の断面積を、前記外装缶の内断面積から前記電極群の空洞部の断面積を差し引いた値で除した値が95%以上100%以下であり、且つ、前記正極板の巻始め端部の周方向位置を基準位置としたときに、前記正極板の巻終わり端部の周方向位置から前記正極板に沿って測った前記基準位置までの角度θは180°以上265°以下の範囲にある
ことを特徴とする円筒型アルカリ蓄電池。 - 前記巻始め端部を含む前記正極板の1巻の径方向外面を覆う絶縁性の最内周保護部材を更に備えることを特徴とする請求項1記載の円筒型アルカリ蓄電池。
- 前記正極板は、前記巻始め端部及び巻終わり端部のうち少なくとも一方に、これら端部間の正極本体部よりも厚さが薄い薄肉部を有することを特徴とする請求項1記載の円筒型アルカリ蓄電池。
- 前記正極板の径方向外面側を覆うセパレータと前記正極板との間に、前記薄肉部と前記正極本体部との境界上に位置して絶縁性の境界保護部材を更に備えることを特徴とする請求項3記載の円筒型アルカリ蓄電池。
- 前記保護部材は、樹脂製のテープ及び不織布のうちいずれかからなることを特徴とする請求項2又は4記載の円筒型アルカリ蓄電池。
- 前記薄肉部は一定の厚さ若しくは徐々に変化する厚さを有することを特徴とする請求項3記載の円筒型アルカリ蓄電池。
- 前記巻芯の外径は、前記外装缶の最大径の30%以下であることを特徴とする請求項1記載の円筒型アルカリ蓄電池。
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