JP3653412B2 - 水素吸蔵合金電極およびこの電極を用いたニッケル・水素蓄電池 - Google Patents
水素吸蔵合金電極およびこの電極を用いたニッケル・水素蓄電池 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本究明は、水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵合金電極に係り、特に、高率放電特性に優れた水素吸蔵合金電極およびこの水素吸蔵合金電極を用いたニッケル・水素蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、正極に水酸化ニッケルなどの金属化合物を使用し、負極に水素吸蔵合金を使用したニッケル・水素蓄電池が、ニッケル・カドミウム蓄電池に代わる次世代のアルカリ蓄電池として広く用いられるようになってきた。この種のニッケル・水素蓄電池は、ニッケル・カドミウム蓄電池と比較してエネルギー密度が大きく、かつ負極にカドミウムを使用しないことから環境適合性が高いという特徴を有している。
【0003】
このため、携帯電話、ノートブック型パーソナルコンピュータ等の携帯機器用電源としての需要が急速に拡大し、これに伴って、ニッケル・水素蓄電池のさらなる高容量化、長寿命化が要求されるようになってきた。また、電気自動車の電源としてのニッケル・水素蓄電池も開発され、その需要も、今後、急速に拡大していくものと予想される。電気自動車用の電源として用いられる蓄電池としては、高容量で長寿命であるとともに、高出力であることが特に要求される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ニッケル・水素蓄電池はニッケル・カドミウム蓄電池に比べてハイレート放電特性(高率放電特性)が劣るため、高出力が要求される用途に用いる場合にはハイレート放電特性をさらに向上させる必要がある。
このため、例えば、特開平10−3939号公報において、初期の充放電サイクル特性を向上させたニッケル・水素蓄電池が提案されている。この特開平10−3939号公報において提案されたニッケル・水素蓄電池は、二価の酸化コバルトを水素吸蔵合金電極に添加し、電解液中に生成した二価のコバルト錯イオン(HCoO2 -)を還元させ、あるいは添加した二価の酸化コバルトを充電により直接還元させて、水素吸蔵合金表面にコバルト金属からなる層を形成させるようにしている。
【0005】
しかしながら、特開平10−3939号公報において提案されたニッケル・水素蓄電池にあっては、大部分のコバルト化合物(二価の酸化コバルト)は還元されておらず、電解液中の酸素により酸化されて、電気化学的に不活性な黒色の四三酸化コバルト(Co3O4)となっていることが分かった。結果として、初期の充放電サイクル特性の向上にはある程度の効果があるものの、不活性な四三酸化コバルト(Co3O4)で水素吸蔵合金表面が被覆されるために、高率放電特性の向上には効果が小さいという問題点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高率放電特性に優れた水素吸蔵合金電極を得て、高容量で長寿命であるとともに、高出力であるニッケル・水素蓄電池を得ることにある。
このため、本発明の水素吸蔵合金電極は、少なくとも水素吸蔵合金粉末に、その表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルト(CoO)粉末が添加、混合されている。
【0007】
二価のコバルトの金属コバルトヘの還元電位は水素発生電位より貴であり、電気化学的には金属への還元が可能であるが、電解液中の酸素により酸化されて四三酸化コバルト(Co3O4)が一旦生成すると容易には還元されなくなる。このため、二価の酸化コバルト(CoO)の代わりに表面のみを還元させて、その表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルトを添加したところ、初期の充電によって電解液中のコバルトイオンおよび二価の酸化コバルト(CoO)の金属コバルトへの還元が効果的に起こり、高率放電特性が大きく向上することが分かった。これは、二価の酸化コバルト(CoO)は同一粒子内の還元された金属コバルトの電位に保持されて、四三酸化コバルト(Co3O4)への酸化が抑制されているものと考えられる。
【0008】
コバルト金属粉を水素吸蔵合金粉末に直接添加、混合する方法も考えられるが、コバルト金属紛の場合、最小でも水素吸蔵合金粒子に近い大きさの粒子しか調整できない。このため、より小さい粒径のコバルト金属粒子を用いた場合に比べて、添加量の割に水素吸蔵合金との接点が少なく、導電剤としての効果が小さい。一方、本発明のように、二価の酸化コバルトを出発物質として用いれば、サブミクロンオーダーの微粒子を調整することも可能となり、これが電池内ですべて還元されてコバルト金属となる。これにより、導電剤として効果的に作用するほか、表面積効果によって電極反応に対する触媒作用が著しく高まり、高率放電特性向上に対して高い効果が得られるようになる。
【0009】
【発明の実施の形態】
1.水素吸蔵合金粉末の作製
Mm(希土類元素の混合物),Ni,Co,Al,Mn(純度99.9%の金属単体)をモル比1.0:3.1:0.8:0.4:0.7の割合で混合し、アルゴン雰囲気のアーク溶解炉で溶解させた後、自然放冷して、組成式がMmNi3.1CoO.8Al0.4MnO.7で表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。このようにして作製した水素吸蔵合金のインゴットを800℃で6時間熱処理した後、放冷し、不活性雰囲気下で平均粒径が約65μmになるまで機械紛砕して、水素吸蔵合金粉末を作製した。
【0010】
2.表面をコバルト金属に還元した二価の酸化コバルト粉末の作製
平均粒径が20μmの市販の二価の酸化コバルトを水素流通雰囲気下で500℃で30分間加熱することによって、二価の酸化コバルトの表面部分のみを還元させた。このようにして水素流通雰囲気下で還元された二価の酸化コバルトをXPS(X線光分子分光法)を用いて測定すると、コバルト金属のピークが深さ方向に進むにしたがって小さくなっていることが分かった。このことから、二価の酸化コバルトの表面部分のみが還元されていることが確認できた。また、水素流通雰囲気下での還元処理の前後で、その重量を測定することによって、二価の酸化コバルトの還元率を求めた。その結果、コバルト金属への還元率は約12原子%であることが分かった。さらに、レーザー回折散乱法によって平均粒径を測定した結果、その平均粒径は18μmであることが分かった。
【0011】
3.水素吸蔵合金電極の作製
(1)実施例1
上述のようにして作製した水素吸蔵合金粉末に、結着剤としてのポリエチレンオキサイドの5重量%水溶液を水素吸蔵合金粉末に対して20重量%を添加し、混合して水素吸蔵合金ペーストを作製した。この水素吸蔵合金ペーストに、上述のようにして作製した表面を還元した二価の酸化コバルト粉末を水素吸蔵合金粉末に対して1.0重量%添加し、混合した。ついで、この混合物をニッケルメッキを施したパンチングメタルからなる芯体の両面に塗着し、室温で乾燥した後、所定の寸法に切断して、実施例1の水素吸蔵合金電極aを作製した。
【0012】
(2)比較例1
上述のようにして作製した水素吸蔵合金粉末に、結着剤としてのポリエチレンオキサイドの5重量%水溶液を水素吸蔵合金粉末に対して20重量%を添加し、混合して水素吸蔵合金ペーストを作製した。この水素吸蔵合金ペーストに、金属コバルト粉末を水素吸蔵合金粉末に対して1.0重量%添加し、混合した。ついで、この混合物を、ニッケルメッキを施したパンチングメタルからなる芯体の両面に塗着し、室温で乾燥した後、所定の寸法に切断して、比較例1の水素吸蔵合金電極xを作製した。
【0013】
(3)比較例2
上述のようにして作製した水素吸蔵合金粉末に、結着剤としてのポリエチレンオキサイドの5重量%水溶液を水素吸蔵合金粉末に対して20重量%を添加し、混合して水素吸蔵合金ペーストを作製した。この水素吸蔵合金ペーストに、酸化コバルト粉末を水素吸蔵合金粉末に対して1.0重量%添加し、混合した。ついで、この混合物を、ニッケルメッキを施したパンチングメタルからなる芯体の両面に塗着し、室温で乾燥した後、所定の寸法に切断して、比較例2の水素吸蔵合金電極yを作製した。
【0014】
(4)比較例3
上述のようにして作製した水素吸蔵合金粉末に、結着剤としてのポリエチレンオキサイドの5重量%水溶液を水素吸蔵合金粉末に対して20重量%を添加し、混合して水素吸蔵合金ペーストを作製した。この水素吸蔵合金ペーストを、ニッケルメッキを施したパンチングメタルからなる芯体の両面に塗着し、室温で乾燥した後、所定の寸法に切断して、比較例3の水素吸蔵合金電極zを作製した。
【0015】
4.ニッケル−水素蓄電池の作製
これらの各水素吸蔵合金電極a,x,y,zを負極として、水酸化ニッケルを主成分とする公知の焼結式ニッケル極を正極とし、これらの両極の間に耐アルカリ性の不繊布よりなるセパレーターを介在させて、それぞれ渦巻状に巻回して4種類の渦巻状電極群を作製した。ついで、これらの各渦巻状電極群をそれぞれの電池外装缶内に配設した後、30重量%の水酸化カリウム水溶液からなる電解液を注入して、4種類の電池容量が1000mAhのニッケル−水素蓄電池(AAサイズで正極支配型)を作製した。
【0016】
なお、実施例1の水素吸蔵合金電極aを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例1の電池Aとし、比較例1の水素吸蔵合金電極xを用いたニッケル−水素蓄電池を比較例1の電池Xとし、比較例2の水素吸蔵合金電極yを用いたニッケル−水素蓄電池を比較例2の電池Yとし、比較例3の水素吸蔵合金電極zを用いたニッケル−水素蓄電池を比較例3の電池Zとした。
【0017】
5.充放電試験
ついで、上述のように作製した4種類の各ニッケル−水素蓄電池を100mA(0.1C)の充電々流で12時間充電した後、1時間休止させる。その後、1000mA(1C)の放電々流で終止電圧が1.0Vになるまで放電させた後、1時間休止させる。この充放電を室温で所定回数繰り返す充放電試験を行った。この後、1000mA(1C)の放電々流で終止電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から1C放電時の放電容量(1C放電容量)を求めた。
【0018】
一方、上述のように作製した4種類の各ニッケル−水素蓄電池を100mA(0.1C)の充電々流で12時間充電した後、1時間休止させる。その後、4000mA(4C)の放電々流で終止電圧が1.0Vになるまで放電させた後、1時間休止させる。この充放電を室温で所定回数繰り返す充放電試験を行った。この後、4000mA(4C)の放電々流で終止電圧が1.0Vになるまで放電させて、放電時間から4C放電時の放電容量(4C放電容量)を求め、1C放電容量に対する4C放電容量を放電容量比(=(4C放電容量)/(1C放電容量))として求めた。この結果を下記の表1に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
上記表1から明らかなように、各電池A,X,Y,Zの1C放電時の電池容量(1C放電容量)はいずれも950mAhで等しかったが、4C放電時の放電容量(4C放電容量)はそれぞれの電池で異なり,表面を還元した二価の酸化コバルト紛未を添加した電池Aで最も高い放電容量が得られた。また、二価の酸化コバルトを添加した電池Yは、なにも添加していない電池Zよりも高率放電特性が向上したが、その効果はあまり大きくはなかった。
【0021】
これは、二価の酸化コバルトを添加した場合でも、初期充電あるいは充放電を繰り返すことによってコバルト金属への還元が起こるため、ある程度の高率放電特性向上効果があるものと考えられる。しかしながら、過充電時に正極から発生する酸素によって電解液中のコバルトイオンの大部分は酸化を受け、不活性な四三酸化コバルト(Co3O4)が生成する。また、二価の酸化コバルトの表面でも同様に四三酸化コバルト(Co3O4)が生成して酸化コバルトの還元が進行しなくなるため、電気化学的に利用されるコバルトの量はわずかであって、高率放電特性を向上させる効果が少ないものと考えられる。
【0022】
また、コバルト金属粉末を添加した電池Xは、コバルト粒子自体が導電剤としての役割を果たして、合金粒子同士の接触抵抗を低減させるため、高率放電特性向上に一定の効果が得られる。しかしながら,電気化学反応に対するコバルトの触媒的な効果はほとんど得られないため、高率放電特性を向上させる効果が小さくなったと考えられる。
【0023】
一方,本発明の表面を還元させた二価の酸化コバルト粉末を用いた電池Aの場合、1C放電容量に比べて4C放電容量の低下が小さく、高率放電特性が著しく改善された。これは、コバルト金属粒子を直接添加した場合においては、水素吸蔵合金との接触が点接触であるのに対して、表面が還元された二価の酸化コバルト粉末の場合は二価の酸化コバルト粒子が効果的に還元されて水素吸蔵合金粒子とつながるため、導電剤としての機能と電気化学的な触媒としての機能と両機能を併せ持つようになる。この結果、これらの両機能の効果によって高率放電特性が大きく向上したものと考えられる。
【0024】
なお、それぞれのコバルト化合物を添加した各電池A,Yを1回充放電させた後、X線光電子分光法(XPS)で水素吸蔵合金電極a,yを観察したところ、二価の酸化コバルトのみを添加した水素吸蔵合金電極yにおいては、電極y中に還元されていない二価の酸化コバルトが残存していた。一方、表面を還元した二価の酸化コバルト粉末を添加した水素吸蔵合金電極aにおいては、酸化物はほとんど残っておらず、二価の酸化コバルトの還元が効率的に行われたことが確かめられた。
【0025】
6.コバルト添加量の検討
ついで、水素吸蔵合金電極に添加するコバルト化合物(二価の酸化コバルト)の添加量について比較検討した。
(1)実施例2〜7
上述の実施例1と同様に作製した水素吸蔵合金粉末に、上述の実施例1と同様に水素吸蔵合金ペーストを作製した後、この水素吸蔵合金ペーストに、上述の実施例1と同様にして作製した表面を還元した二価の酸化コバルト粉末を、水素吸蔵合金粉末に対してそれぞれ0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、3.0重量%、5.0重量%、10重量%添加し、混合した以外は上述の実施例1と同様にして水素吸蔵合金電極を作製した。
【0026】
ここで、表面を還元した二価の酸化コバルト粉末を0.05重量%添加したものを実施例2の水素吸蔵合金電極bとし、0.1重量%添加したものを実施例3の水素吸蔵合金電極cとし、0.5重量%添加したものを実施例4の水素吸蔵合金電極dとし、3.0重量%添加したものを実施例5の水素吸蔵合金電極eとし、5.0重量%添加したものを実施例6の水素吸蔵合金電極fとし、10重量%添加したものを実施例7の水素吸蔵合金電極gとした。
【0027】
(2)放電容量比
これらの各水素吸蔵合金電極b,c,d,e,f,gを用いて、上述の実施例1と同様にしてニッケル−水素蓄電池を作製し、上述と同様に充放電試験を行い、1C(1000mA)放電時の放電容量(1C放電容量)に対する4C(4000mA)放電時の放電容量(4C放電容量)の比を求めると、下記の表2に示すような結果となった。
なお、水素吸蔵合金電極bを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例2の電池Bとし、水素吸蔵合金電極cを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例3の電池Cとし、水素吸蔵合金電極dを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例4の電池Dとし、水素吸蔵合金電極eを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例5の電池Eとし、水素吸蔵合金電極fを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例6の電池Fとし、水素吸蔵合金電極gを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例7の電池Gとした。
【0028】
【表2】
【0029】
上記表2から明らかなように、電池Aおよび各電池B〜Gの1C放電時の電池容量はいずれも945〜950mAhであった。そして、表面を還元した二価の酸化コバルト粉末は0.05重量%を添加しただけでも高率放電特性を向上させる効果があるが、添加量が0.1重量%を越えると高率放電特性はさらに大きく向上した。これは、二価の酸化コバルトが水素吸蔵合金表面上で還元された場合、金属コバルトが水素吸蔵合金表面上で電気化学反応を促進させる触媒の役割を果たしたためであると考えられる。
【0030】
そして、触媒の役割は、二価の酸化コバルトの添加量がわずかであっても効果を発揮するが、表面の金属コバルトが導電剤としての役割を果たすためには、ある程度以上の添加量が必要である。このため、高い高率放電特性が得られるようにするためには、表面を還元した二価の酸化コバルト粉末の添加量を0.1重量%以上とすることが望ましい。また、表面を還元した二価の酸化コバルトの添加量が多いほど高率放電特性は向上するが、添加量が増えるにしたがって水素吸蔵合金電極に含まれる水素吸蔵合金の量が減るため、表面を還元した二価の酸化コバルトの添加量は10重量%以下であることが望ましい。
【0031】
7.二価の酸化コバルトの平均粒径の検討
ついで、水素吸蔵合金電極に添加する二価の酸化コバルトの平均粒径を種々に変えて、二価の酸化コバルトの平均粒径について検討した。
(1)実施例8〜14
上述の実施例1と同様に作製した水素吸蔵合金粉末に、上述の実施例1と同様に水素吸蔵合金ペーストを作製した後、この水素吸蔵合金ペーストに、上述の実施例1と同様にして作製した表面を還元した二価の酸化コバルト粉末の平均粒径を0.1μm,1μm,5μm,10μm,25μm,30μm,40μmに変えたこと以外は上述の実施例1と同様にして、水素吸蔵合金粉末に対してそれぞれ1.0重量%添加し、混合して水素吸蔵合金電極を作製した。
【0032】
ここで、粒径が0.1μmの表面を還元した二価の酸化コバルト粉末を添加したものを実施例8の水素吸蔵合金電極hとし、1μmのものを実施例9の水素吸蔵合金電極iとし、5μmのものを実施例10の水素吸蔵合金電極jとし、10μmのものを実施例11の水素吸蔵合金電極kとし、25μmのものを実施例12の水素吸蔵合金電極lとし、30μmのものを実施例13の水素吸蔵合金電極mとし、40μmのものを実施例14の水素吸蔵合金電極nとした。なお、平均粒径の異なる表面を還元した二価の酸化コバルト粉末は、出発物質としての二価の酸化バルトを粉砕し、分級することによって調整した。
【0033】
(2)放電容量比
これらの各水素吸蔵合金電極h,i,j,k,l,m,nを用いて、上述の実施例1と同様にしてニッケル−水素蓄電池を作製し、上述と同様に充放電試験を行い、1C(1000mA)放電時の放電容量(1C放電容量)に対する4C(4000mA)放電時の放電容量(4C放電容量)の比を求めると、下記の表3に示すような結果となった。
なお、水素吸蔵合金電極hを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例8の電池Hとし、水素吸蔵合金電極iを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例9の電池Iとし、水素吸蔵合金電極jを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例10の電池Jとし、水素吸蔵合金電極kを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例11の電池Kとし、水素吸蔵合金電極lを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例12の電池Lとし、水素吸蔵合金電極mを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例13の電池Mとし、水素吸蔵合金電極nを用いたニッケル−水素蓄電池を実施例14の電池Nとした。
【0034】
【表3】
【0035】
上記表3から明らかなように、電池Aおよび各電池H〜Nの1C放電時の電池容量はいずれも950mAhであった。また、表面を還元した二価の酸化コバルト粉末の平均粒径が小さいほど高率放電特性に効果があることが分かる。特に、平均粒径が0.1μmでは、放電容量比は0.96と高い値を示した。これは粒子径が小さいほど、二価の酸化コバルトが水素吸蔵合金電極中に均一に分散し、導電剤として優れた効果が得られためである。また、還元された後のコバルト金属の比表面積が大きいことから、水素吸蔵合金表面における電気化学反応の反応面積を拡げる効果もあったと考えられる。
【0036】
一方、表面を還元した二価の酸化コバルト粉末の平均粒径が大きくなると、導電剤としての効果も小さくなり、比表面積も小さくなることから高率放電特性を向上させる効果も小さくなったと考えられる。このことから、水素吸蔵合金電極に添加される表面を還元した二価の酸化コバルト粉末の平均粒径は小さければ小さい程良いが、0.1μm以下の微粒子は通常の方法では安価に製造することができないことから、その平均粒径は0.1μm〜30μmが望ましい。
【0037】
上述したように、本発明の水素吸蔵合金電極においては、大部分の二価の酸化コバルトが不活性な四三酸化コバルト(Co3O4)にならずに金属コバルトに還元される。また、蓄電池中で二価の酸化コバルトは電解液中に一部が溶出し、初期の充電時にこの溶出したコバルトイオンが水素吸蔵合金表面で還元される。また、溶出しなかった二価の酸化コバルトも水素吸蔵合金から直接供給される電子によって直接還元される。これらの還元されたコバルトによって、水素吸蔵合金粒子間に導電ネットワークが形成され、水素吸蔵合金粒子間の電気的抵抗を低下させることができる。さらに、この金属コバルトは電極反応促進のための触媒としての役割も果たすので、高率放電特性に極めて優れたニッケル−水素蓄電池が得られる。
【0038】
なお、上述の実施形態においては水素吸蔵合金としてMmNi3.1CoO.8Al0.4MnO.7で表される水素吸蔵合金を用いる例について説明したが、水素吸蔵合金としてはTi−Ni系あるいはLa(もしくはMm)−Ni系の多元合金から適宜選択して使用することができる。また、上述の実施形態においては、正極として焼結式ニッケル電極を用いる例について説明したが、正極としては焼結式ニッケル電極に限らず、非焼結式ニッケル電極を用いても良い。
Claims (8)
- 電気化学的に水素を吸蔵・放出する水素吸蔵合金を備えた水素吸蔵合金電極であって、
前記水素吸蔵合金電極は少なくとも水素吸蔵合金粉末に表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルト粉末が添加、混合されていることを特徴とする水素吸蔵電極。 - 前記表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルト粉末の添加量は前記水素吸蔵合金粉末の重量に対して0.1重量%以上で10重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金電極。
- 前記表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルト粉末の平均粒径は0.1μm以上で30μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水素吸蔵合金電極。
- 前記表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルト粉末は二価の酸化コバルト粉末が水素化還元されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 電気化学的に水素を吸蔵・放出する水素吸蔵合金を主成分とする水素吸蔵合金電極と、水酸化ニッケルを主成分とするニッケル電極とを備えたニッケル・水素蓄電池であって、
前記水素吸蔵合金電極は少なくとも水素吸蔵合金粉末に表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルト粉末が添加、混合されていることを特徴とするニッケル・水素蓄電池。 - 前記表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルト粉末の添加量は前記水素吸蔵合金粉末の重量に対して0.1重量%以上で10重量%以下であることを特徴とする請求項5に記載のニッケル・水素蓄電池。
- 前記表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルト粉末の平均粒径は0.1μm以上で30μm以下であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のニッケル・水素蓄電池。
- 前記表面がコバルト金属で被覆された二価の酸化コバルト粉末は二価の酸化コバルト紛末が水素化還元されたものであることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載のニッケル・水素蓄電池。
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