JP3761763B2 - 水素吸蔵合金電極、それを用いた電池およびこれらの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気化学的に水素を吸蔵(充電)および放出(放電)することが可能で、ニッケル・水素蓄電池などに利用できる水素吸蔵合金電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、水素吸蔵合金を負極に用いたニッケル・水素蓄電池は、パーソナルコンピュータや携帯電話などの小型ポータブル機器用二次電池として、急速に我々の生活において用いられるようになった。この電池は、同じアルカリ蓄電池として従来から多用されてきたニッケル・カドミウム蓄電池と比べて、容量が1.5〜2倍高く、かつカドミウムを使用しないことにより公害性が低いという特徴を有している。さらに最近では、ニッケル・水素蓄電池は、小型ポータブル機器以外にも、電気自動車(EV)およびハイブリッド電気自動車(HEV)、さらには従来からニッケル・カドミウム蓄電池の得意とする電動工具や非常灯などへの応用、展開も活発である。
【0003】
これらのニッケル・水素蓄電池に用いられている水素吸蔵合金電極は、従来から主にペースト塗着式によって得られる電極であった。これは水素吸蔵合金粉末、SBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)またはCMC(カルボキシ・メチル・セルロース)などの有機バインダー、およびカーボンなどの導電性粉末をペースト状にして混練し、鉄にニッケルメッキなどを施した安価なパンチングメタルなどの導電性芯材の両面に塗着し、その後乾燥およびプレスを施し、切断して電極とする方式である(例えばUSP5,527,638号公報)。このペースト塗着式方法は、比較的量産化に向いており多くの実施化が図られているが、高率充放電特性が充分ではなく、瞬間的に大電流で充放電を行うことが必要な用途には適しないという問題があった。
【0004】
これとは別の方式として、焼結式と呼ばれる方法によって得られる電極がある。例えば特開平3−294405号公報においては、負極の連続製造法として、水素吸蔵合金微粉末をワイヤメッシュスクリーンに供給した後、圧縮することによりデボジットを形成し、これを焼結して水素雰囲気下で冷却する方法が開示されている。この方法は、前述した塗着式に比べて高率充放電特性の向上が期待できる方法であるが、工程が極めて複雑であり、焼結によって合金性能が低下し易いなどの問題を有しており、これまでもあまり一般的に用いられていなかった。
【0005】
また、前記ペースト塗着式および焼結式とは別に、水素吸蔵合金とフッ素樹脂を混合してシート状に成形した後、このシートを機械的な圧力で集電体に圧着して電極を得る方法が、例えば特開昭62−216163号公報などにおいて提案されている。ところが、この方法は、得られる電極が発火する危険性が高く、さらに依然として高率充放電特性が不充分であるといった問題を有している。
さらに、前述したUSP5,527,638号公報および特開昭62−216163号公報記載の方法によって得られる電極は、いずれもその製造工程において必須構成要素として用いられている有機バインダーを何らかの形態で含んでおり、この有機バインダーの存在が電極抵抗増大の原因となっている。
【0006】
これに対し、電極抵抗の増大の原因となる有機バインダーを使用しない方法として、鱗片状の銅粉やニッケル粉を用いて乾式プレス法で電極を作製する方法が、例えば特開平7−307154号および特開平9−245797号各公報において提案されている。ところが、この方法によって得られる電極においては、水素吸蔵合金部分と導電性金属部分の接触が不充分であり、高率充放電性能を向上させるためには、導電材の含有量を絶対的に多くする必要があった。また、電極体積当たりの容量密度にも問題があると考えられる。
【0007】
この他にも多くの水素吸蔵合金電極およびその製造法が提案されているが、簡便で安価な方法で、かつ特に出力特性に優れた電極を得ることが望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、ニッケル・水素蓄電池などに利用される水素吸蔵合金電極が、その使用目的から具備すべき条件として、(1)高率充放電特性に優れること、(2)耐久性が高く長寿命であること、(3)高エネルギー密度であること、(4)高い導電性を有すること、(5)機械的強度が高く堅牢であること、(6)製法および構成が容易かつ安価であり、実用的価値が大きいこと、および(7)リサイクルが容易なことなどがあげられる。
確かに、前述した従来技術に基づく水素吸蔵合金電極はこれらの要件を比較的満足するものであるが、特に最近の市場からの要望から、(1)、(6)および(7)についてさらなる改善が望まれている。
そこで、本発明の目的は、特に高率充放電特性を有し、リサイクルが容易で新規な水素吸蔵合金電極を、安価で実用的価値の高い方法で提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水素吸蔵合金および導電性金属を主構成材料とし、有機バインダーを一切用いずに構成される水素吸蔵合金電極を、水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末を主体とする活物質保持材層と、導電性金属を主体とする導電性金属層との少なくとも二層を一体成形して構成し、かつ電極全体に連通する導電ネットワークをもたせることを特徴とする。
なお、ここで、「主体とする」とは、本発明の効果を損なわない範囲で、ほかの成分を含んでいてもよいことをいう。
この場合、前記導電性金属がNiもしくはCuの単体またはNiおよびCuを含む合金からなり、前記水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末を主体とする活物質保持材層が70〜95重量%の水素吸蔵合金および30〜5重量%の導電性金属で構成され、前記導電性金属層が95重量%以上の導電性金属で構成されるのが好ましい。
【0010】
また、電極の厚さ方向において、中心部を前記導電性金属層、両端部を活物質保持材層を主体に構成するのが好ましい。
また、電極の厚さ方向において、前記導電性金属層および活物質保持材層の組成に、連続的な傾斜をもたせることが好ましい。
さらに、電極の厚さ方向において、両端部にメッキによる導電性金属層を設けるのも有効である。
前記導電性金属層の少なくとも一部が二次元または三次元構造の金属多孔体で構成されているのが好ましい。このような二次元または三次元構造の金属多孔体は、エンボス板、パンチングメタル、エキスパンドメタル、スポンジ状メタル、ラスメタルまたは金属繊維布であるのが好ましい。
前記導電性金属層の少なくとも一部が金属箔で構成されているのも好ましい。また、電極の幅方向において、一端もしくは両端が前記導電性金属層のみで構成されていてもよい。
本発明の電極は、厚さが0.5mm以下、多孔度が5〜20%であるのが好ましい。
また、前記水素吸蔵合金粉末をあらかじめ熱アルカリ処理および/または酸処理し、その表面がニッケルリッチな状態であるのが好ましい。
また、前記水素吸蔵合金粉末をあらかじめメカノフュージョン処理またはメッキ処理し、その表面が金属ニッケル層を有するのが好ましい。
【0011】
さらに本発明は、水素吸蔵合金と導電性金属を主構成材料とし、有機バインダーを一切用いずに構成される水素吸蔵合金電極の製造法であって、
(a)水素吸蔵合金粉末、導電性金属粉末および/または導電性金属多孔体を供給する工程、(b)水素吸蔵合金粉末と導電性金属粉末との混合物からなる活物質保持材層、および導電性金属粉末または導電性金属多孔体を主体とする導電性金属層の少なくとも二層を積層する工程、(c)得られる積層体を加圧することによって前記活物質保持材層および前記導電性金属層を一体成形してシート状とし、かつ電極全体に連通する導電ネットワークを付与する工程を含むことを特徴とする水素吸蔵合金電極の製造方法にも関する。
【0012】
この製造方法においては、前記工程(b)および工程(c)を同時に行うのが好ましい。なかでも、表面に凹凸部を有するロールを用いたロールプレス法で、前記工程(b)および工程(c)を同時に行うのが好ましい。
また、前記混合物を、前記工程(c)において、または前記工程(c)の後において、非酸化性雰囲気下、500℃以上でかつ電極を構成する元素からなる金属単体の融点のうち最も低い融点以下の温度範囲で、10分間以下加熱するのが好ましい。
また、加熱方法としては、誘導加熱法、通電加熱法、ホットプレス加熱法、光線または熱線照射法が好ましい。
【0013】
さらに本発明は、水素吸蔵合金および導電性金属を主構成材料とし、有機バインダーを一切用いずに構成される水素吸蔵合金電極を用いた電池であって、前記水素吸蔵合金電極が、水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末を主体とする活物質保持材層と、導電性金属を主体とする導電性金属層との少なくとも二層が一体成形されて構成され、かつ電極全体に連通する導電ネットワークを有することを特徴とする電池をも提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、水素吸蔵合金および導電性金属を主構成材料とし、有機バインダーを一切用いずに構成される水素吸蔵合金電極であって、水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末を主体とする活物質保持材層と、導電性金属を主体とする導電性金属層との少なくとも二層が一体成形して構成され、かつ電極全体に連通する導電ネットワークを有することを特徴とする水素吸蔵合金電極およびその製造方法に関するものである。そして、本発明はこのような水素吸蔵合金電極とその製造方法を用いて構成した電池にも関する。
【0015】
すなわち、本発明の電極は、従来から主に用いられている有機バインダーを使用せず、活物質保持材層と導電性金属層との少なくとも二層をプレス圧延により一体成形して得られる水素吸蔵合金電極である。
【0016】
前述のように、従来から、電極反応の抵抗成分を削減するために、結着材として用いられていた有機バインダーを除去するための試みがいくつかなされてきた。しかし、従来の方法では水素吸蔵合金と導電材との接触状態が不充分であった。本発明の水素吸蔵合金は、この点を改善し最適な電極構成とその製法を提案するものである。
【0017】
前記導電性金属粉末は、NiもしくはCuの単体またはNiおよびCuを含む合金からなるのが好ましい。これは、NiおよびCuは、電子伝導性、化学的安定性および展延性に優れているという理由からである。
【0018】
前記水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末を主体とする活物質保持材層は、70〜95重量%の水素吸蔵合金および30〜5重量%の導電性金属で構成されるのが好ましい。
また、前記導電性金属層は、得られる電極の95重量%以上の導電性金属で構成されるのが好ましい。これは得られる電極の高率充放電特性を向上させるためである。また、導電性金属層は、粉末から構成されていても、後述するように金属多孔体から構成されていてもよく、さらに導電性金属のほか、前記水素吸蔵合金を含んでいてもよい。
【0019】
また、この電極は、電極の厚さ方向の分布において、中心部が導電性金属層を主体に、両端部が活物質保持材層を主体に構成されているのが好ましい。
ただし、両端部を導電性金属層で構成する場合、中心部の活物質保持層の反応を阻害しないように、前記導電性金属層が多孔性を有するのが好ましい。この場合、極端に大電流での放電特性が改善でき、厳しい使用条件においても電池の長寿命化が図られる効果が発揮されるという効果がある。
また、前記導電性金属層は、高出力特性を発揮する場合、電極全体の電子電動のネットワークを確保する重要な構成要素であるとともに、電極の柔軟性を確保するための必須構成要件である。
【0020】
そして、さらに電極の高率充放電特性を向上させるという観点から、前記導電性金属層の少なくとも一部を、二次元または三次元構造の金属多孔体で構成してもよい。このような二次元または三次元構造の金属多孔体としては、エンボス板、パンチングメタル、エキスパンドメタル、スポンジ状メタル、ラスメタルまたは金属繊維布などが使用でき、これらのいずれかであることが望ましい。
この場合、二次元または三次元構造の金属多孔体を構成する材料は、NiもしくはCuの単体、またはNiおよびCuを含む合金であることが望ましいが、価格的に安価な鉄鋼板に、NiまたはCuをメッキ処理した材料でも使用可能である。
【0021】
また、電極の厚さ方向において、前記導電性金属層および活物質保持材層の組成に、連続的な傾斜をもたせることも好ましい。このような傾斜をもたせることにより高率充放電特性を向上させることができ、サイクル寿命特性および機械的強度の点でも有効である。
特に、水素吸蔵合金粉末と導電性金属粉末との組成を連続的に変化させることによって、実際に使用する電池において、高率放電特性やサイクル寿命特性などの必要特性をバランスよく発揮させることが可能であるという利点がある。
【0022】
さらに本発明においては、活物質保持材層に用いられる水素吸蔵合金を、熱アルカリ処理、酸処理、メカノフュージョン処理などにより、あらかじめニッケルリッチな状態にしておくのが、電極全体に連通するネットワークを形成するために有効である。
また、本発明の電極は、電極自身の放電率が高く放電性能が良好であるが、電池としてその優れた性能を発揮させるためには、電極内に集電部を設けることが望ましい。そこで、電極の幅方向において、一端もしくは両端にメッキによる導電性金属層を設けるのが有効である。メッキに用いる金属としては、CuおよびNiが好ましいものとしてあげられる。
この端部に設けた導電性金属層と直接電気的な接触を取ることにより、電極を電池に組み込んで電池として機能させる場合の内部抵抗を低減し、高率放電を可能にする。さらに、この電極表面部の導電性金属層は、充電末期に正極で発生する酸素ガスの還元を促進し、急速な充電を可能とする。
【0023】
また、急速な充放電をを可能にするという観点から、電極の厚さは従来よりも比較的薄い厚さである0.5mm以下が好ましい。この範囲であれば、本発明の電極の有する特徴を生かし易く、より望ましい。
さらに、高容量密度の確保、サイクル寿命特性の安定化および機械的強度向上のために、構成材料を比較的高密度で充填して低多孔度とし、電極全体としての多孔度を5〜20%の範囲にするのが好ましい。多孔度が5%以下では電解液が電極と接触する確率が減少し、高率放電特性が低下する傾向を示す。反対に、20%以上の多孔度を有する電極にすると、高率放電特性は特に問題ではないが、サイクル寿命特性が低下する傾向が認められるからである。
【0024】
つぎに、本発明は、前記水素合金電極の製造方法にも関する。
すなわち、本発明は、水素吸蔵合金と導電性金属を主構成材料とし、有機バインダーを一切用いずに構成される水素吸蔵合金電極の製造法であって、
(a)水素吸蔵合金粉末、導電性金属粉末および/または導電性金属多孔体を供給する工程、(b)水素吸蔵合金粉末と導電性金属粉末との混合物からなる活物質保持材層、および導電性金属粉末または導電性金属多孔体を主体とする導電性金属層の少なくとも二層を積層する工程、(c)得られる積層体を加圧することによって前記活物質保持材層および前記導電性金属層を一体成形してシート状とし、かつ電極全体に連通する導電ネットワークを付与する工程を含む水素吸蔵合金電極の製造方法にも関する。
【0025】
前記水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末の混合物は、加圧成形により高密度のシートに成形される。ここで用いることのできる加圧成形の方法としては、例えば平板式のプレス機などを用いるプレス成形法、ロールなどを用いるロールプレス法や圧延(カレンダー)法などがあげられる。
本発明の製造方法においては、製造工程の効率化などの観点から、工程(b)および工程(c)を同時に行うのが好ましい。
このとき、図2を用いて後述するように、2本のロールを用いるロールプレス法において、水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末などの供給方法を制御するのが好ましい。
さらに、ロールの表面に凹凸部を設けておけば、その凹凸部の形状に応じた形状を表面に有する水素吸蔵合金電極を得ることができる。
【0026】
図10は、従来からのロールを用いる圧延方法を説明するための模式図である。
従来のロール圧延法では、水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末を混合させて得た混合物3を、仕切板1で規制しながら2本のロール5の間に供給し、シート状に成形して水素吸蔵合金電極6を得る。
【0027】
これに対し、本発明の水素吸蔵合金電極の製造方法においては、加圧成形に供する前記水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末の混合物を、得られる活物質保持材層および導電性金属層の構成に対応させて、加圧成形用装置に供給する。
ここで、図2を参照し、2本のロールを用いて圧延する場合に代表させて、本発明の製造方法を説明する。ここでは、厚さ方向において、中心部を前記導電性金属粉末4からなる導電性金属層とし、両端部を前記水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末からなる活物質保持層とした電極を製造する場合である。
図2に示すように、得られる電極の層構造に応じて2つ以上の仕切板1を設け、それぞれの仕切板1の間の供給部2に前記水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末の混合物3、または前記導電性金属粉末4を導入して、ロール5の間に供給する。そして、図3に示すように、導電性金属層7および活物質保持層8からなる水素吸蔵合金電極6を得るのである。図3は、本発明の一実施の形態に係る水素吸蔵合金電極の概略斜視図である。なお、仕切板1は、いわゆるホッパーの形状を有していてもよい。
【0028】
ここで、本発明の水素吸蔵合金電極の製造に用いることのできるロールの形状について述べる。
本発明においては、前述の図2に示すような表面が平滑なロールを用いても良いが、表面に種々の凹凸部を有するロールを用いると有効である。これによれば、その凹凸部の形状に応じて、表面に種々の形状を有する水素合金電極を製造することができるからである。このような凹凸部の形状としては、例えば、なし地やキャタピラなどの形状があげられる。また、通常のエンボス加工やグラビア加工に用いられる形状であってもよい。このような形状を有するロールは、加圧される粉末のスリップを防止して優れた圧縮効果を発揮する。また、得られる電極の表面積を増大させ、充電末期に発生する酸素ガスの還元能力を向上させる。
具体的には、ロールは凹部および凸部のいずれかを有していても両方を有していてもよい。さらに、2本のロールを用いる場合は、一方のロールの表面に凸部を設け、他方のロールの表面に凹部を設けてもよい。このように、種々の組合せを用いることにより、種々の表面形状を有する水素吸蔵合金電極を得ることができる。
このように、水素吸蔵合金電極の表面に凹凸部を設けることにより、得られる水素吸蔵合金シートの曲げ加工が容易となり、さらに得られる水素吸蔵合金電極に電解液が浸透し易くなるという効果を奏する。
【0029】
図4〜図9に、ロール表面の凹凸部と、そのロールを用いて得られる水素合金電極の形状とを示す。図4、6および8は、本発明において用いることのできるロールの概略斜視図である。また、図5、7および9は、それぞれ図4、6および8に示すロールを用いて得られる水素合金電極の概略斜視図である。
図4に示すロール5の表面には、その回転方向に平行に2本の凸部5’が設けられている。このロール5を用いて得られる水素吸蔵合金電極6は、図5に示すように、両面にロール5の凸部5’に対応する凹部11を有する。
また、図6に示すロール5の表面には、その回転方向と平行な方向に凸部5’が設けられている。このロール5によれば、図7に示すような凹部11を有する水素吸蔵合金電極を得ることができる。
さらに、図8に示すロール5の表面には、格子状の凸部5’が設けられている。このロール5を用いれば、図9に示すように、表面に格子状の凹部11を有する水素吸蔵合金電極6を得ることができる。
なお、図5、7および9においては、中心の導電性金属層としてNiの多孔性エンボス芯材を用いている。
【0030】
平板式プレス機を用いる場合も、これに倣って、前記水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末の供給方法を適宜工夫することにより、前記構造を有する本発明の水素吸蔵合金電極を製造することができる。
【0031】
また、本発明の水素吸蔵合金電極の製造方法においては、前記混合物を、加圧成形工程(c)において、または前記工程(c)においてシート状に成形した後の工程において、非酸化性雰囲気下、500℃以上前記水素吸蔵合金および導電性金属を構成するすべての元素の融点のうち最も低い融点以下の温度範囲で、10分間以下加熱するのが好ましい。
このような短時間の加熱処理を行うことにより、水素吸蔵合金の内部までが導電性金属と反応して焼結することがなく、水素吸蔵合金の表面層のみを導電性金属と反応、焼結させて傾斜機能を付与することができるからである。そして、水素吸蔵合金と導電性金属が強固に接触した電極とすることができる。さらに、これにより高率放電特性、サイクル寿命および機械的強度をさらに向上させることができる。
【0032】
このような短時間加熱処理は、水素吸蔵合金および導電性金属が何らかの反応を起こして本来の機能を損なわないように、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下、真空下などの非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。
特に、高温で酸素ガスによる水素吸蔵合金などの酸化を極力防止することが重要である。
短時間加熱処理の加熱温度としては、500℃以上であり、かつ電極を構成する元素からなる金属単体の融点のうち最も低い融点以下の温度範囲であるのが望ましい。最も低い融点以上の温度では、その温度以下の融点をもつ金属部分で反応焼結が加速的に進行し、水素吸蔵合金としての水素吸蔵能力が極端に低下する可能性が生じるからである。また、逆に500℃以下の温度では、ほとんど加熱処理の効果が発揮されないからである。
【0033】
短時間加熱処理の処理時間としては、極力短時間にすることが反応焼結を制御しやすい点で重要であり、例えば10分間以内が望ましい。
この短時間の条件は非常に微妙であるが、通常の電気炉などを用いた加熱焼結では水素吸蔵合金と導電性金属との反応焼結が進みすぎて、水素吸蔵合金としての水素吸蔵能力が極端に低下することが判明している。したがって、常識的には10分間以内、できればさらに秒単位での短時間加熱処理が望ましい。
【0034】
このような短時間加熱処理は、例えば誘導加熱法、通電加熱法、ホットプレス加熱法、光線または熱線照射法により行うのが好ましい。
特に、優れた性能を有する電極を得るためには、加工する材料を加圧成形しながら同時に短時間加熱を施すことが好ましく、加熱ロールなどでの処理も有効である。なかでも、最も効果的なものは、通電加熱法である。これは電極の構成材料を通電するために電流分布に沿って効果的な加熱ができるという利点があるからである。
また、誘導加熱法を利用することも有効である。この場合、ニッケルリッチ層を設けた水素吸蔵合金中の強磁性部分が優先的に発熱すると考えられるからである。
【0035】
【実施例】
以下に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0036】
《実施例1》
水素吸蔵合金粉末としては、AB5タイプで、組成式:MmNi3.6Mn0.4Al0.3Co0.7で示される合金を用いた。この粉末は、公知の高周波溶解−鋳造法で前記組成を有する合金を作製した後、高温熱処理して得られる鋳塊(インゴット)を機械的に粒状に粉砕したものであり、約30μmの粒径をもつものである。また、この合金粉末の一部は、80℃の30重量%KOH水溶液中に1時間浸漬する処理を行った。このアルカリ処理により、水素吸蔵合金粉末の表面層は、処理を施さない水素吸蔵合金粉末に比べて、金属ニッケルがリッチな状態になっていることが確認された。
これらの水素吸蔵合金粉末と、導電性金属粉末として粒径が約5μmのNi粉末とを10重量%の比率で均一に混合して混合粉末とした。この混合粉末および前記Ni粉末から、前述した図2に示される装置を用い、厚さ方向において、中心部をNi粉末からなる導電性金属層とし、両端部を前記合金粉末およびNi粉末からなる活物質保持層としたシート状成形物を作製した。ついで、このシートを切断し、水素吸蔵合金電極を得た。ここで、無処理水素吸蔵合金を用いて構成した電極をA1、アルカリ処理を施した水素吸蔵合金を用いて構成した電極をA2とした。このとき、電極A1およびA2において、厚さ方向における中心部、すなわち導電性金属層の厚さが約60μmとなるように、仕切板1の位置を調節した。また、電極の厚さは約300μmとなるようにした。
【0037】
この電極A1およびA2は、有機バインダーを一切用いず構成される水素吸蔵合金電極であって、水素吸蔵合金と導電性金属を主体とする活物質保持材層、および導電性金属を主体とする導電性金属層が一体になって構成し、電極全体に連通する導電ネットワークを有する電極である。
ここで、電極A2の層構造の断面を表すSEM写真(100倍)を図1に示す。図1は、倍率が100倍の写真であるが、電極の中心部に導電性金属層が配されていることがわかる。また、導電性金属層と活物質保持材層が密に接触および結着しており、電極全体に導電ネットワークが形成されていることが目視によっても充分確認される。なお、三層構造の電極の上部および下部の黒色部分は背景である。
【0038】
《比較例1》
実施例1の電極A2で用いたものと同じ合金粉末およびNi粉末を用い、合金粉末とNi粉末とを10重量%の比率で均一に混合して混合粉末とした。つぎに、この混合粉末から、図10に示す装置を用いて、活物質保持材層のみからなるシート状の電極Bを作製した。
得られた電極Bの厚さは約300μmであった。この電極Bの層構造の断面を表すSEM写真(100倍)を図11に示す。また、1000倍の倍率の写真を図12に示す。なお、電極の上部および下部の黒色部分は背景である。
電極Bは、水素吸蔵合金の周囲にNi粉末が分散した状態であり、活物質保持材層が構成されている。しかし、本発明の電極の必須構成要素である導電性金属層が形成されておらず、機械的に脆く壊れやすいものである。
なお、図11から、このロールを用いた加圧成形によれば、バインダーを用いなくても構成成分である各粉末が互いに結着し、シート状の成形物を得ることができるのがわかる。
【0039】
《比較例2》
さらに、比較のため、従来から公知であるパンチングメタルに、水素吸蔵合金、導電材としての炭素粉末、ならびに有機バインダーとしてのSBRおよびCMCの混合ペーストを塗着した後、乾燥およびプレスによって得られたペースト塗着式電極Cを作製した。
【0040】
[評価]
つぎに、これらの電極A1、A2、BおよびCについて性能評価を行った。ここでは、水素吸蔵合金電極としての性能評価を開放型のハーフセルにより評価した。
まず、シート状電極を所定のサイズに切断し、さらにその電極にNiリボンのリードを取りつけた。対極には水素吸蔵合金電極に対して充分に過剰な容量を有するニッケル正極を選んだ。この水素吸蔵合金電極と対極であるニッケル正極を、親水性を有するポリプロピレン製セパレータを介してサンドイッチ構造体とした。ついで、前記構造体の両端をプラスチック板で挟み込み、加圧した状態での発電要素を構成した。なお、ここで用いた電解液は、比重が1.30の水酸化カリウム水溶液であった。水素吸蔵合金電極の容量を規制して、得られた発電要素の充放電試験を行った。
なお、この評価において、電極A1、A2、BおよびCの寸法はほとんど同様にし、厚さは単位面積当たりの水素吸蔵合金量がほぼ均等となるように調整した。また、この評価において、前記合金は300mAh/gの放電容量をもつものと仮定して、電流レートを設定した。すなわち、合金1g当たり300mAで1Cとした。
【0041】
まず、充放電の1〜5サイクル目は、25℃で0.1Cの電流で12時間の充電と0.2Cの電流でセル電圧が0.8Vになるまでの放電を繰り返した。その結果、電極A、BおよびCの5サイクル目の放電容量は、いずれも290mAh/g前後の値を示し、通常の容量確認を行うような低レートの放電では、放電容量や放電電圧に大きな差異は認められなかった。
つぎに、6サイクル目以降の充放電試験で高率放電特性の評価を行った。すなわち、充電を25℃で0.5Cの電流で2.5時間行った後、各サイクル毎に1C、3Cおよび5Cの電流での放電をセル電圧が0.8Vになるまで行った。また、低温での高率放電特性を評価するため、0℃で1Cの電流で放電を行った。結果を表1に示す。なお、表1で各温度、各放電レートでの放電容量は、25℃、0.2C放電の値を100%として、容量比率で示した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、本発明の電極A1およびA2は、1C、3Cおよび5Cなどの高率放電特性や、0℃、1Cでの低温高率放電特性においても、比較の電極Bおよび従来の電極Cと比較して非常に優れた高率放電性能を有することがわかった。
なお、この中で無処理合金を用いて構成した電極A1と比較して、アルカリ処理を施した合金を用いて構成した電極A2はより優れた放電特性を示すことがわかった。
さらに、10サイクル目以降の充放電試験として、サイクル寿命試験を行った。この試験条件は、25℃で充電は0.5Cの電流で2.5時間、放電は0.5Cで終止電圧が0.8Vになるような充放電を繰り返し、初期の放電容量に対し、サイクル試験によりその電極の容量が70%以下に到達するサイクルを一応の寿命と判定した。
そのサイクル寿命試験の結果を図13に示す。図13は、充放電サイクルと放電容量の関係を示す図である。図13から電極A1およびA2は有機バインダーを一切使用していないにも関わらず、有機バインダーを使用した従来の電極Cと比較しても全く問題のないサイクル寿命特性を得ることが可能であった。なお、比較としての電極Bは比較的早い段階で寿命劣化を迎えた。
この試験結果から、本発明の電極A1およびA2は、目的とする高率放電特性を大幅に改善し、懸念されたサイクル寿命特性の問題を発生することなく、密閉電池にした場合に非常に有効なものであることを確認した。
なお、本発明の製造方法においては、材料混合工程、加圧成形工程、(加熱工程)および切断工程により、高性能の電極Aを製造することができる。これに対し、特に、従来のペースト塗着式方法によれば、材料(ペーストを含む)工程、塗着成形工程、乾燥工程、加圧工程および切断工程により、本発明の電極に比べて性能に劣る電極しか製造することができない。
したがって、本発明の製造方法は、は従来の方法と比較して非常に簡単な工程で優れた電極を作製することが可能であることが理解できる。特に、本発明の製造方法は、乾式で処理するという点が従来例と大きく異なる点である。なお、加熱工程を含む製造方法については、後述する実施例において説明する。
【0044】
《実施例2〜6》
つぎに、実施例1で作製した本発明の電極A2を基本とし、本発明の製造方法の範囲において構成を変えて電極を作製した。ここでは、実施例1で用いたものと同じ水素吸蔵合金粉末にあらかじめ表面処理を施し、水素吸蔵合金の表面を導電材と同一の元素で修飾した。
具体的には、粒径が0.03μmのNi微粉末を前記水素吸蔵合金粉末に対して3重量%混合し、その混合粉末をアルゴンガス雰囲気中でメカノフュージョン装置(ホソカワミクロン社製のAM−15F型)によりメカノフュージョン処理を施した(実施例2)。
また、無電解Niメッキ処理により、Niメッキを前記水素吸蔵合金粉末に対して3重量%施した(実施例3)。
【0045】
これらの処理により、水素吸蔵合金粉末の表面がいずれもNiによって適度に被覆された状態を形成することができた。これらの水素吸蔵合金粉末を用いて、以降の工程は実施例1(電極A2)と同様にして電極を作製した。Niメカノフュージョン処理を施した場合を電極D、Niメッキ処理を施した場合を電極Eとした。
【0046】
つぎに、実施例1と同様にしてシート状成形物を作製した後、得られたシートをさらにアルゴンガス雰囲気下に保持した。ついで、図14に示す構成を有する装置を用い、シーム溶接ローラ9により、シーム溶接電源10を用いて前記シートに抵抗加熱を施した(実施例4)。このとき、シートはローラ9の間に通電した抵抗加熱により最大で950℃まで加熱されていることを確認した。そしてこのシートは抵抗加熱するロールに接触しているわずかの時間だけ加熱され、その後、環境雰囲気で冷却され、数秒で500℃以下の温度に冷却された。
この抵抗加熱処理によりシートの一部が焼結され、より機械的に強固なシートに加工された。このようにして得た電極を電極Fとした。
【0047】
つぎに、図15に示すように、一対のローラ5の間の中心に、導電性金属層を構成する材料として、Ni粉末に代えて両面に凹凸加工を施したNiの多孔性エンボス芯材7’を供給し、その両側に活物質3を供給することにより活物質保持材層8を形成した他は、電極Fと同様にして電極G(図16参照)を作製した(実施例5)。
【0048】
また、導電性金属粉末として、粒径が約5μmのNi粉末に代えて、粒径が約30μmの鱗片状Ni粉(福田金属箔粉工業(株)製)を用いたほかは、実施例1と同様にして電極を作製した(実施例6)。この方法で得た電極を電極Hとした。
これらの本発明の電極D〜Hの性能を、前述した試験方法により評価した。その結果のうち、特に高放電率特性の評価結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2から明らかなように、本発明の電極D〜Hはいずれも本発明の電極A2よりもさらに高率放電特性に優れていることがわかる。
すなわち、水素吸蔵合金にあらかじめ表面処理を施し、水素吸蔵合金の表面を導電材と同一の元素で修飾すること、水素吸蔵合金とNi粉末からなるシートを作製した段階で短時間熱処理を行うこと、さらにNi粉末に代えて鱗片状Ni粉を用いること、電極の中心部に導電性芯材を配することなどの改善は、いずれも効果的である。そのなかでも、特に短時間熱処理を行った電極Fが特に優れていた。なお、電極D〜Hのサイクル寿命特性などの評価結果は示さなかったが、電極A2と同等であった。
【0051】
《実施例7〜18》
本実施例では、導電性金属としてNiおよびCuを用い、水素吸蔵合金との最適な配合比率について検討した。
まず使用した導電材の種類を説明する。Niとして、平均粒径が約5μmのNi粉末、および粒径が約10μmの鱗片状Ni粉末の2種類を用いた。また、Cuとして、粒径45μm以下のCu粉末、および粒径が約10μmの鱗片状Cu粉末の2種類を用いた。一方、水素吸蔵合金としては、実施例1に示したものと同様のAB5タイプの組成式:MmNi3.6Mn0.4Al0.3Co0.7で示される合金を用いた。
水素吸蔵合金粉末と4種類の導電性金属粉とを、水素吸蔵合金が100〜50重量%の範囲で5重量%づつの幅で配合比を変えて混合粉末を得、実施例1の電極A2と同様にして11種の電極を作製した。
【0052】
そして、これらの電極を同様に開放型のハーフセルにより性能評価した。
その結果以下のことがわかった。ここでは、水素吸蔵合金電極の特性評価の重要なポイントとして、特につぎの3点を取り上げた。まず、(1)高容量密度の電極であること、つぎに(2)高率放電特性に優れること、さらに(3)サイクル寿命特性が優れることである。
評価結果では、導電性金属粉の割合が増えるにつれて、低レート放電での電極としての体積容量密度は減少した。高い容量密度を確保するためには、導電性金属粉を混入しないことが重要である。しかし、導電性金属粉を混入しない電極において認められる現象として、高率放電性能が極端に劣り、サイクル寿命特性が極端に低下した。
また、評価試験後の電極の観察により、導電性金属粉末が存在せず、充放電の繰り返しにより電極板の機械的強度が極端に低下し、合金の微粉化による脱落や電極の導電性の低下が認められた。この現象が、低い高率放電性能や低いサイクル寿命特性を招いたものと考えられた。
したがって、電極中の導電性金属粉の比率が上昇すれば、その比率に応じて高率放電特性とサイクル寿命特性はほぼ連続的に向上することが確認された。
【0053】
ニッケル・水素蓄電池用の水素吸蔵合金電極としては、その電池の使用条件によって、高容量密度、高率放電特性およびサイクル寿命特性のどの性能を重要視するかは多少異なる。しかし、これら重要な特性をすべて満足するには、水素吸蔵合金と導電性金属を主体とする活物質保持材層を、水素吸蔵合金95〜70重量%、導電性金属5〜30重量%の範囲の比率で構成することが好ましい。
水素吸蔵合金が95重量%以上では、低い高率放電性能および低いサイクル寿命特性が問題になる。逆に、水素吸蔵合金が50重量%以下では、容量密度が低くなるため電池の高容量化ができないという問題が生ずることがわかった。
【0054】
なお、導電性金属粉としてのNiとCuの差異に関しては、評価した範囲では性能上大きな違いは認められず、いずれも導電性金属として有効であることが解った。むしろ比較的差異が現れたのは、粉末形状の差異によるところである。通常の粒状の粉末よりも鱗片状の粉末のほうが、比較的少ない量で優れた高率放電特性およびサイクル寿命特性を発揮するという傾向を示した。
【0055】
《実施例19、20および比較例3》
つぎに、本発明の水素吸蔵合金電極を用いて実際の密閉電池を構成した。
実施例1で得た本発明の電極A2、比較例2で得た電極C、および電極Fを用いた密閉電池を作製し、その特性比較を試みた。
正極はつぎのようにして得た。公知の粒状の水酸化ニッケル粉末にコバルト酸化物および酸化亜鉛を添加したペーストを、網目構造を有するスポンジ状ニッケル多孔体に充填した後、乾燥およびプレスを行ってSME式と呼ばれるペースト式ニッケル正極を作製した。また、セパレータとしては、これも公知の親水性処理を施したポリプロピレン不織布を用いた。そして、負極としては、電極A2、電極Cまたは電極Fを用いた。
ただし、これに用いた電極A2、CおよびFには、電極の幅方向に一端が導電性金属層のみで構成した部分を設け、電池での集電性を向上するためにこの導電性金属層と電極端子を直接抵抗溶接できるように工夫した。
【0056】
密閉電池として、SCサイズと呼ばれる直径23mmで高さが43mmの電池を作製した。先の正極、セパレータ、負極の三層を渦巻き状に巻いた発電要素を電池ケース内に収納した。リードの取り出しは、通常の高率放電用に用いられるタブレスと呼ばれる集電構造を採用した。その後、比重が1.30の水酸化カリウムに水酸化リチウムが30g/リットル溶解した電解液を注液し、通常のカシメ封口により、金属外装缶と安全弁付きの蓋体である封口キャップを封口し、密閉形のニッケル・水素蓄電池とした。この電池は正極で電池容量が規制されており、その容量は3Ahとした。すなわち、3Aで1Cである。
【0057】
つぎに、電極A2、CまたはFで構成したSCサイズの密閉形ニッケル・水素蓄電池をそれぞれ5個づつ作製し、まず比較的低い電流での完全充放電を5サイクル行った。すなわち、25℃で0.2Cで6時間の充電と、0.2Cで電池電圧が1.0V間での放電を繰り返した。この初期サイクルでの充放電により、各々の電池は当初予想した通りの性能を有していることを確認した。
その後25℃で3.3C、10Cでの高率放電試験を行った。充電は25℃で1Cで1.2時間の条件を用い、放電をそれぞれ10Aおよび30Aの電流で終止電圧が1.0Vまで行った。
その結果、電極A2、CまたはFを用いた電池の中間放電電圧と放電容量比率の平均値を表3に示す。なお、放電容量比率は、25℃で0.2Cでの放電容量を100%とした時の、10Aおよび30Aの高率放電での放電容量をその容量比率(%)で示した。
【0058】
【表3】
【0059】
以上のことから、本発明の電極A2またはFで構成した電池は、比較として加えた従来からの電極Cと比べて著しく高率放電性能が優れていることが明らかになった。
つぎに、電極A2、CまたはFを用いた密閉形電池でサイクル寿命試験を行った。この試験条件は、25℃で充電は1Cの電流で1.2時間、放電は1Cで終止電圧が1.0Vになるような充放電を繰り返し、初期の放電容量に対し、サイクル試験によりその電極の容量が70%以下に到達するサイクルを一応の寿命と判定した。
その結果を図17に示す。図17から明らかなように、500サイクルまでは、電極Aは有機バインダーを一切使用していないにも関わらず、有機バインダーを使用した従来の電極Cと比較しても全く問題のないサイクル寿命特性を得ることが可能であった。この試験結果から、本発明の電極A2またはFは、目的とする高率放電特性を大幅に改善し、懸念されたサイクル寿命特性の問題を発生することなく、密閉電池にした場合に非常に有効なものであることを確認した。
なお、前記実施例に示した各種の電極構成技術を組み合わせることによって、一層本発明の効果を引き延ばすことが可能である。例えば、電極Fと電極Hの技術を組み合わせることにより、これらの相乗効果が期待できる。
また、前述のように、本発明はこれらの実施例の内容に限定されることはなく、前記発明の詳細な説明に記載された範囲、さらには当業者が適宜修正および変更できる範囲も本発明に含まれる。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、一般的に求められる性能を満足しながら、特に高率充放電特性に優れ、リサイクルが容易な水素吸蔵合金電極を、簡便で比較的安価な方法で製造することができる。また、本発明によれば、有機バインダーを一切含まないために、過去から水素吸蔵合金電極の回収・リサイクルにおいて問題となっていた電極中の有機物の除去処理が不要となり、画期的な水素吸蔵合金電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において得られた水素吸蔵合金電極の層構造の断面を表すSEM写真(100倍)である。
【図2】本発明の実施例において用いた水素吸蔵合金電極を製造するための装置の模式図である。
【図3】本発明の実施例において、図2に示す装置により得られた水素吸蔵合金電極の概略斜視図である。
【図4】本発明におけるロール表面の形状を示すロールの概略斜視図である。
【図5】図4に示すロールを用いて得られる水素吸蔵合金電極の概略斜視図である。
【図6】本発明におけるロール表面の形状を示すロールの概略斜視図である。
【図7】図6に示すロールを用いて得られる水素吸蔵合金電極の概略斜視図である。
【図8】本発明におけるロール表面の形状を示すロールの概略斜視図である。
【図9】図8に示すロールを用いて得られる水素吸蔵合金電極の概略斜視図である。
【図10】従来のロールを用いた加圧成形装置の模式図である。
【図11】本発明の比較例において得られた水素吸蔵合金電極の層構造の断面を表すSEM写真(100倍)である。
【図12】本発明の比較例において得られた水素吸蔵合金電極の層構造の断面を表すSEM写真(1000倍)である。
【図13】電極A1、A2、BおよびCの充放電サイクルと放電容量の関係を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例において用いた水素吸蔵合金電極を製造するための別の装置の模式図である。
【図15】本発明の実施例において用いた水素吸蔵合金電極を製造するためのさらに別の装置の模式図である。
【図16】本発明の実施例において、図15に示す装置により得られた水素吸蔵合金電極の概略斜視図である。
【図17】電極A2、CまたはFを用いた密閉型電池の充放電サイクルと放電容量の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 仕切板
2 供給部
3 水素吸蔵合金粉末と導電性金属粉末との混合物
4 導電性金属粉末
5 ロール
5’ 凸部
6 水素吸蔵合金電極
7 導電性金属層
7’ 導電性金属層(多孔性エンボス芯材)
8 活物質保持材層
9 シーム溶接ローラ
10 シーム溶接電源
11 凹部
Claims (17)
- 水素吸蔵合金および導電性金属を主構成材料とし、有機バインダーを一切用いずに構成される水素吸蔵合金電極であって、
水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末を主体とする活物質保持材層と、導電性金属を主体とする導電性金属層との少なくとも二層が一体成形して構成され、かつ電極全体に連通する導電ネットワークを有することを特徴とする水素吸蔵合金電極。 - 前記導電性金属がNiもしくはCuの単体またはNiおよびCuを含む合金からなり、前記水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末を主体とする活物質保持材層が70〜95重量%の水素吸蔵合金粉末および30〜5重量%の導電性金属粉末で構成され、前記導電性金属層が95重量%以上の導電性金属で構成されることを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金電極。
- 電極の厚さ方向において、中心部が前記導電性金属層、両端部が活物質保持材層を主体に構成されることを特徴とする請求項1または2記載の水素吸蔵合金電極。
- 電極の厚さ方向において、前記導電性金属層および活物質保持材層の組成が、連続的な傾斜を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 電極の厚さ方向において、両端部がメッキによる導電性金属層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 前記導電性金属層の少なくとも一部が二次元または三次元構造の金属多孔体で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 前記二次元または三次元構造の金属多孔体が、エンボス板、パンチングメタル、エキスパンドメタル、スポンジ状メタル、ラスメタルまたは金属繊維布である請求項6記載の水素吸蔵合金電極。
- 前記導電性金属層の少なくとも一部が金属箔で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 電極の幅方向において、一端もしくは両端が前記導電性金属層のみで構成されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 厚さが0.5mm以下、多孔度が5〜20%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 水素吸蔵合金粉末があらかじめ熱アルカリ処理および/または酸処理され、その表面がニッケルリッチな状態である請求項1〜10のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 水素吸蔵合金粉末があらかじめメカノフュージョン処理またはメッキ処理され、その表面が金属ニッケル層を有する請求項1〜10のいずれかに記載の水素吸蔵合金電極。
- 水素吸蔵合金と導電性金属を主構成材料とし、有機バインダーを一切用いずに構成される水素吸蔵合金電極の製造法であって、
(a)水素吸蔵合金粉末、導電性金属粉末および/または導電性金属多孔体を供給する工程、
(b)水素吸蔵合金粉末および/または導電性金属粉末との混合物からなる活物質保持材層、および導電性金属粉末または導電性金属多孔体を主体とする導電性金属層の少なくとも二層を積層する工程、
(c)得られる積層体を加圧することによって前記活物質保持材層および前記導電性金属層を一体成形してシート状とし、かつ電極全体に連通する導電ネットワークを付与する工程を含み、
前記工程(b)および工程(c)をロールプレス法で行うことを特徴とする水素吸蔵合金電極の製造方法。 - 前記工程(b)および工程(c)を同時に行う請求項13記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
- 前記混合物を、前記工程(c)において、または前記工程(c)の後において、非酸化性雰囲気下、500℃以上で電極を構成する元素からなる金属単体の融点のうち最も低い融点以下の温度範囲で、10分間以下加熱することを特徴とする請求項13または14記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
- 誘導加熱法、通電加熱法、ホットプレス加熱法、光線または熱線照射法により加熱することを特徴とする請求項15記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
- 水素吸蔵合金および導電性金属を主構成材料とし、有機バインダーを一切用いずに構成される水素吸蔵合金電極を用いた電池であって、
前記水素吸蔵合金電極が、水素吸蔵合金粉末および導電性金属粉末を主体とする活物質保持材層と、導電性金属を主体とする導電性金属層との少なくとも二層が一体成形されて構成され、かつ電極全体に連通する導電ネットワークを有することを特徴とする電池。
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