以下、本発明の第1の実施形態である両面孔版印刷装置1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は第1の実施形態の両面孔版印刷装置1の概略構成図、図2は図1の両面孔版印刷装置1の要部詳細拡大図、図3は図2のA−A線断面図、図4は図2の矢印B方向から見た要部詳細図、図5は図4の矢印U1方向から見た概略図、図6は図4の矢印U2方向から見た要部詳細拡大図である。なお、図3、図4、図6では全吸着板42のうち一部の吸着板42の図示を省略している。また図2では搬入される用紙P2を受ける吸着板を含む一部の吸着板42の図示を省略している。
第1の実施形態の両面孔版印刷装置1は、図1に示す如く、装置ハウジング10と、装置ハウジング10の一側面(図1中、左側面)に設けられ、印刷媒体である複数枚の用紙P1が積載された給紙台2と、給紙台2から給紙される用紙P1の一面Aに印刷する第1の孔版印刷部(第1の印刷手段)3と、一面Aが印刷された用紙P2を複数枚貯留する貯留部4と、貯留部4に貯留されていた用紙P2の他面Bに印刷する第2の孔版印刷部(第2の印刷手段)5と、装置ハウジング10の他側面(図1中、右側面)に設けられ、両面すなわち一面A及び他面Bが印刷された用紙P3を積載する排紙台6とを備えている。
また両面孔版印刷装置1は、給紙台2から第1の孔版印刷部3及び第1の孔版印刷部3から貯留部4内部へ用紙P1、P2を搬送する第1の搬送部(第1の搬送手段)7と、貯留部4内部から第2の孔版印刷部5及び第2の孔版印刷部5から排紙台6まで用紙P2、P3を搬送する第2の搬送部(第2の搬送手段)8とを備えている。
第1の搬送部7は装置ハウジング10に設けられ、図1、図2に示す如く、給紙台2に積載された用紙P1の装置ハウジング10側の上方に設けられた第1ピックアップローラ71と、第1ピックアップローラ71によってピックアップされた用紙P1を所定のタイミングにて第1の孔版印刷部3に搬送する第1タイミングローラ72と、第1の孔版印刷部3により上側に位置する一面Aが印刷された用紙P2を円弧状の軌跡に沿って斜め下側(図1、図2中、右下側)に搬送する第1搬送装置73と、第1搬送装置73により搬送される用紙P2をさらに斜め下側に搬送する第2搬送装置76と、第2搬送装置76により搬送される用紙P2を貯留部4内部に搬入して後述する吸着移動部41に吸着させる搬入装置74とで概略構成されている。
第2の搬送部8は同じく装置ハウジング10に設けられ、図1、図2に示す如く、貯留部4内部の後述する吸着部材41から用紙P2を受け取って搬出する搬出装置81と、搬出装置81により搬出される用紙P2をピックアップする第2ピックアップローラ82と、第2ピックアップローラ82によってピックアップされた用紙P2を円弧状の軌跡に沿って反転させて一面Aを下側に位置させ、順次所定のタイミングにて第2の孔版印刷部5に搬送する第2タイミングローラ83と、第2の孔版印刷部5により他面Bが印刷された、すなわち両面が印刷された用紙P3を排紙台6に向けて搬出する排出装置84とで概略構成されている。
搬入装置74、第2搬送装置76、搬出装置81及び排出装置84は、それぞれ所定間隔を空けて配置された一対のプーリー74a、76a、81a、84aと、一対のプーリー74a、76a、81a、84aの外周に掛け渡されそれぞれプーリー74a、76a、81a、84aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト74b、76b、81b、84bと、吸引用のファン74c、76c、81c、84cとを備えている。
搬送ベルト74b、76b、81b、84bは、例えば図4に示す搬送ベルト74bのように表面に複数の孔74b’76b’、81b’、84b’(76b’、81b’、84b’は図示せず)が設けられており、搬送ベルト74b、76b、81b、84bとプーリー74a、76b、81a、84aとは、用紙P側に位置する搬送ベルト74b、76b、81b、84bの少なくとも上記孔74b’、76b’、81b’、84b’を含む一部のみを外部に露出させて、例えば図3に示すような略密閉されたケース74d、76d、81d、84d(76d、84dは図示せず)の中に配設されている。
ファン74c、76c、81c、84cは、各々のケース74d、76d、81d、84dに取り付けられ、ケース74d、76d、81d、84d内部の空気を外部に排出することにより、搬送ベルト74b、76b、81b、84bの孔74b’ 、76b’、81b’、84b’に吸引力を発生させる。
このように構成された各装置74、76、81、84は、図示しないモータによってプーリー74a、76a、81a、84aを回転させて搬送ベルト74b、76b、81b、84bを移動させると共にファン74c、76c、81c、84cを回転させて孔74b’ 、76b’、81b’、84b’に吸引力を発生させることにより、用紙Pを吸引しながら搬送する。
また第1搬送装置73は、図2に示す如く、円弧状の軌跡に沿って配設された3つのプーリー73a及び該3つのプーリー73aの近傍に配設された1つのプーリー73aと、この4つのプーリー73aの外周に掛け渡されプーリー73aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト73bと、吸引用のファン73cとを備えており、上記搬送装置74、76、81、84と略同様に構成されている。
なお本実施形態の搬入装置74、第2搬送装置76、搬出装置81、排出装置84及び第1搬送装置73は、上記の構成としたが、例えば搬送ベルト73b、74b、76b、81b、84bの内側面にファン73c、74c、76c、81c、84cを取り付けて吸引するようにしてもよいし、用紙Pを搬送可能であればどのような構造であってもよい。
また搬入装置74は、一対のプーリー74aの外周に掛け渡された搬送ベルト74b及びファン74cを並列に複数備えて、これらで一枚の用紙を吸引して搬送するようにしてもよい。第2搬送装置76、搬出装置81、排出装置84も同様にすることができる。
第1の孔版印刷部3は、図1に示す如く、第1ドラム31と第1プレスローラ32とからなり、第1ドラム31の下流側には図2に示す如く、用紙P2を剥ぎ取る剥取爪33が設けられている。第1ドラム31は内部に図示しない第1インクカートリッジを有し、第1ドラム31の外周面には入力された画像データに基づいて図示しない製版部により感熱穿孔済の、つまり製版された孔版原紙M1が巻装されている。そして第1タイミングローラ72により第1ドラム31の回転に同期して第1ドラム31と第1プレスローラ32との間に送り込まれた用紙P1の一面Aすなわち上側に位置する上面Aが第1プレスローラ32によって孔版原紙M1に押し付けられることにより用紙P1の一面Aに対して孔版印刷が行われる。
第2の孔版印刷部5は、上記第1の孔版印刷部3と同様に、第2ドラム51と第2プレスローラ52とからなり、第2ドラム51の下流側には用紙P3を剥ぎ取る剥取爪53が設けられている。第2ドラム51は内部に図示しない第2インクカートリッジを有し、第2ドラム51の外周面には製版された孔版原紙M2が巻装されている。そして一面Aが印刷され、さらに第1搬送装置73及び第2搬送装置76によって搬送された後、貯留部4を経て、第2タイミングローラ83により第2ドラム51の回転に同期して第2ドラム51と第2プレスローラ52との間に送り込まれた用紙P2の他面Bすなわち上側に位置する上面Bが第2プレスローラ52によって孔版原紙M2に押し付けられることにより用紙P2の他面Bに対して孔版印刷が行われる。
貯留部4は、第1の孔版印刷部3により一面Aが印刷された用紙P2を、第2の孔版印刷部5で用紙P2の他面Bに印刷を行なう前に複数枚一時的に貯留するものであり、本発明において特徴的なのは、この貯留部4が、この複数枚の用紙P2を、各用紙P2の他面Bをそれぞれ吸着して、互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えていることである。
貯留部4は、第1の搬送部7により搬送されてきた用紙P2が搬入される搬入位置と、貯留されている用紙P2を第2の搬送部8に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、保持機構が、搬入位置に1枚ずつ搬入された各用紙P2の他面Bをそれぞれ吸着して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させ、搬出位置から1枚ずつ搬出して他面Bの印刷に供することができるものであることが好ましい。
本実施形態における貯留部4は、図1に示す如く、第1の搬送部7から送られてきた用紙P2の搬入口および第2の搬送部8に用紙P2を受け渡す用紙P2の搬出口を上方にして斜めに配設されており、搬入された一面Aが印刷済みの用紙P2を印刷された一面Aを斜め上側(図2中右側)に位置させた状態で図5に示すように左右の両側縁部を吸着して、複数枚互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えている。
本実施形態の保持機構は、図2、図3、図4に示す如く、用紙P2の未印刷の他面Bの中央部を斜め下方から支える支持体である支持板40aと、用紙P2の印刷された一面Aを斜め上から覆う覆板40bと、複数枚の用紙P2を、各々の両側縁部をそれぞれ吸着して、互いに所定間隔を空けて搬入順に順次支持する左右の(図4、図5中、紙面左側を左、右側を右とする)吸着移動部41とを備えている。
なお、図2、図3に示す如く、支持板40aには上述した搬入装置74のケース74dと第1搬送装置76のケース76d(図示せず)、覆板40bには上述した搬出装置81のケース81dがそれぞれ取り付けられて、支持板40a及び覆板40bにそれぞれ設けられた図示しない開口から搬送ベルト74b、76b、81bがそれぞれ露出するように構成されている。
吸着移動部41は、図4に示す如く、搬入される用紙P2を挟んでその左右方向(図4中矢印Dで示す用紙P2の搬入方向Dに直交する方向)両側にそれぞれ設けられており、各吸着移動部41は、それぞれ用紙P2の左あるいは右側縁部に対応する位置にそれぞれ配設された吸着体の一例である複数の吸着板42と、各吸着板42を互いに所定間隔を空けて搬入位置から搬出位置に向けてつまり用紙P2の搬送方向(図4中、矢印F方向;以下搬送方向Fという)に順次移動させる移動部43とを備えている。搬入された1枚の用紙P2を吸着する左右一対の吸着板42が1つの吸着部材を構成している。
移動部43は、図4に示す如く、用紙P2の左右両側に設けられており、用紙P2の搬送方向Fに所定間隔を空けて配置された一対のプーリー43aと、一対のプーリー43aの外周に掛け渡されそれぞれプーリー43aの回転に伴って移動する環状の搬送移動体の一例としての搬送ベルト43bとが、それぞれ搬入方向Dに所定間隔を空けて、つまり上下に設けられている。
上下のプーリー43aはそれぞれ軸43a’で連結されており、図示しないモータによって同期駆動され、該モータと、上下の一対のプーリー43a及び軸43a’が搬送ベルト43bを環状に循環移動させる移動体駆動手段として機能する。
吸着板42は、図4、図5に示す如く、搬入される用紙P2の搬入方向の長さに対応するように、例えば用紙P2の長手方向の長さと略同じ長さに形成された長方形状をなし、各吸着板42は、該吸着板42の長手方向が用紙P2の搬入方向Dと略平行になるように、つまり長手方向を図4、図5中の上下方向にして配設されている。
各吸着板42は、各々の側縁部が搬送ベルト43bにその全外周に亘って所定間隔を空けて取り付けられていて、搬送ベルト43bの移動と共に用紙P2の搬入位置から搬出位置に向かう移動路部分(図3のR部分)を含む環状移動路に沿って繰り返し移動する。なお本実施形態では、図3に示す如く、搬送ベルト43bの内側(用紙P2が搬入される側)の直線状に位置する部分を移動路部分Rとし、移動路部分Rにおいて搬送方向Fの最も上流側を用紙P2が搬入される搬入位置C1、最も下流側を用紙P2が搬出される搬出位置C2に設定する。
各々の吸着板42は、略全域に亘って複数の孔42aが形成された前板42bと、該前板42bの該前板42bが移動路部分Rに位置するときに搬送方向F上流側に向く一面Kに接合されて該一面Kの下半分強を覆いそこに下端開放の吸引袋42cを形成する背板42dとで構成されている。
移動路部分Rに位置する吸着板42の下方には、後述する吸引ファン部44が設けられており、吸引ファン部44によって吸引袋42c内部の空気を該袋42cの下端開口から吸引することで、吸引袋42c部分の孔42aに吸引力を発生させることにより吸引袋42c部分の前板42bの他面Jに吸着力が発生するように構成されている。なお吸引袋42cより上部に位置する孔42aは、前板42bの他面Jと用紙P2の他面Bとが接触したときに生じる抵抗(接触抵抗)を低減させる役割がある。図3では用紙P2が各吸着板42の前板42bの他面Jに用紙P2の他面Bが接触していないが、実際には接触している。
吸引ファン部44は、図4、図6に示す如く、吸引袋42cの下端開口に連設された吸引ケース44aと,該吸引ケース44aに取り付けられ、該吸引ケース44a内部の空気を外部に排出する吸引ファン44bとを備えている。吸引ケース44aの上面には開口44a’が設けられ、該開口44a’を介して、吸引ケース44a内部と吸引袋42cの内部とが連通するように形成されている。
本実施形態では、図4に示すように、用紙P2の搬入位置から搬出位置に向かう移動路部分(図3のR部分)に対応する範囲のみに上記開口44a’が位置するように構成されており、この開口44a’の長手方向と直交する方向の幅は上記吸引袋42cの下端開口の幅と略同じ幅になるように形成されている。
また所定間隔を空けて配設された各吸着板42の前板42bの下端部には、図6に示す如く、吸着板42が開口44a’の上部に位置したときに、吸引袋42cの下端開口のみが開口44a’に臨むように、吸引板42同士の間に位置する開口44a’部分を塞ぐ為の蓋42eが設けられている。なお吸引ファン44bは常時駆動されており、開口44a’に位置する吸着板42の吸引袋42c部分には常時吸着力が発生する。
本実施形態では、吸引ケース44aの小型化の観点から上記のような構成としたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、吸引ケース44aの開口44a’を、搬送ベルト43bの環状移動路全周に配設された全ての吸着板42の下端に位置するように、環状に形成してもよいし、適宜変更することができる。
このように構成された吸着移動部41では、搬入位置C1を挟んで位置する2つの吸着板42の間に、用紙P2が印刷された一面Aを斜め上側(図2中右側、図3中上側)にした状態で挿入されたときに、図5に示す如く、用紙P2は、自重によって該用紙P2の左右側縁部の他面Bを搬送方向F上流側に位置する左右両側の吸着板42の他面Jに当接させて該他面Jに支持されながら、かつ搬入装置74によって搬入方向Dに搬入されて、図6に示す如く、吸着板42の吸引袋42c部分に位置したときに、用紙P2の他面Bは上述のようにして発生した吸着力によって吸着板42の他面Jに吸着される。
なお吸着板42の吸引袋42c部分の孔42aに発生する吸引力を、搬入装置74の搬送ベルト74bの孔74a’に発生する吸引力よりも小さく設定することにより、用紙P2は吸着板42に一部を吸着されていても、搬送装置74の搬送ベルト74によって所定位置まで搬送できるようにしている。
そして図示しないモータにより移動部43の搬送ベルト43bが搬送方向Fに吸着板42一枚分つまり1ピッチ分移動すると、用紙P2は搬入装置74の搬送ベルト74bから剥離されて左右両側の吸着板42に吸引されつつ吸着板42と共に搬送方向Fに1ピッチ分移動する。このとき搬入装置74の近傍に用紙P2を押し出す部材を設けておいて、搬送ベルト43bの移動と略同時にこの部材によって用紙P2を押し出すことにより、搬送ベルト74bから用紙P2を剥離するようにする。
次に新たに搬入位置C1を挟んで位置した2つの吸着板42の間に、搬入装置74によって次の用紙P2が搬入され、搬入された用紙P2は上記と同様にして搬送方向F上流側に位置する左右両側の吸着板42に吸着されて搬送ベルト43bの移動と共に搬送方向Fに移動する。このように搬送ベルト43bが1ピッチ分移動する毎に上記と同様の動作が繰り返し行われて用紙P2が順次搬入される。
そして搬送ベルト43bの搬送方向Fへのさらなる移動により吸着板42に吸着された用紙P2が搬出位置C2に位置すると、搬出装置81が用紙P2を吸引して用紙P2を吸着板42から剥離すると共に用紙P2を搬出する。なお吸着板42に発生する吸着力すなわち吸引袋42c部分の孔42aに発生する吸引力は、搬出装置81の搬送ベルト81の孔81a’に発生する吸引力よりも小さく設定されているので、搬出装置81は用紙P2が吸着板42に吸着されていても該用紙P2を搬送することができる。そして搬出装置81は搬送ベルト43bが1ピッチ分移動する毎に、同様にして搬出位置C2に到来した吸着板42から用紙P2を順次剥離して搬出する。なお搬出装置81は用紙P2の一面Aを吸引して、第2ピックアップローラ82に向けて搬送する。
このように貯留部4において、一面Aが印刷された複数枚の用紙P2が互いに所定間隔をあけて重ねた状態で保持されることにより、印刷された面の擦れや裏移りによる用紙P2の汚れを防止することができる。また搬送ベルト43bが搬入位置C1から搬出位置C2に移動する間、印刷された面すなわち一面Aが他の用紙P2と接触しないことにより、インクを効率よく乾燥させることができる。
また搬出位置C2にて用紙P2を吸着板42から剥離して搬出するときに、複数枚の用紙P2は一枚ずつ隙間をあけて貯留されているので、用紙P2の多重搬送を防止するために用紙P2表面の密着を剥がす捌き機構を設ける必要がない。これにより捌き機構により用紙P2を捌くときに印刷面が擦れることにより生じる用紙P2の汚れの発生を防ぐことができる。
また貯留部4内部の用紙P2は、左右両側の吸着板42によって両側縁部を吸着された状態で搬入位置C1から搬出位置C2まで搬送されるので、用紙P2を単に該用紙P2の自重で落下させて積載させた場合と比して、搬出位置C2における用紙P2の位置精度を確保することができる。
また貯留部4内部の用紙P2は、左右両側の吸着板42によって用紙P2の未印刷の面つまり他面Bが吸着されるので、用紙P2を爪等で把持する場合のように印刷面積に制限を設ける必要がないため、用紙P2に全体的に印刷する全面印刷(縁なし印刷)を行うことも可能である。
また本実施形態の貯留部4の保持機構は、用紙P2の他面Bの両側縁部を吸着するものであるため、端部が湾曲する腰折れが生じ易い用紙であっても、用紙のたわみを防ぎ平坦な状態を維持して用紙を保持することができると共に、例えば一面Aに転写されたインクの量が比較的多くて用紙P2の紙中水分が高い場合であっても、用紙P2の吸湿によって生じる上下方向に断面が湾曲するカールつまり用紙P2の搬送方向に沿ったカールが生じ難くなるので、用紙P2の搬送方向に沿ったカールに起因して生じる搬送経路での用紙P2の紙詰まりの発生を防止することができて、片面が印刷された用紙であっても安定して搬送することができるので、両面孔版印刷装置1は高速給紙での印刷に対応することができる。
また本実施形態の貯留部4の保持機構は、上記のように吸引ファン部44を吸着板42の下方に配設しているので、吸引ファン部44が吸着板42同士の間に位置しないために吸着板42同士の間隙を狭くすることができ、所定の空間において多数の吸着板42を配列することができるので、所定枚数の用紙P2を貯留する空間を小さくすることができ、装置の小型化が可能になる。
なお本実施形態では吸着移動部41を上記のような構成としたが、吸着移動部41はこれに限られるものではなく、用紙P2の他面Bを吸着して順次搬入位置C1から搬出位置C2に向けて搬送できるものであればどのような構造のものであってもよい。
次に以上のように構成された本実施形態の両面孔版印刷装置1の一連の動作について説明する。なお各動作は、装置ハウジング10に設けられた図示しない制御部からの指示により行われるものとする。
両面孔版印刷装置1は、図1に示す如く、給紙台2に積載された用紙P1をピックアップローラ71が順次ピックアップし、ピックアップされた用紙P1を第1タイミングローラ72が順次第1の孔版印刷部3に搬送し、第1の孔版印刷部3は、搬送された用紙P1を1枚ずつ、第1プレスローラ32により第1ドラム31に押し付けながら第1ドラム31を1回転させて用紙P1の上側一面Aに、第1ドラム31に巻装された製版済孔版原紙M1の画像を順次印刷する。
次に第1搬送装置73が、印刷された一面Aを上面にした用紙P2を、他面Bを吸引しながら円弧状の軌跡に沿って順次搬送し、続いて第2搬送装置76が他面Bを吸引しながら貯留部4内に向けて搬送する。そして図2、図4に示す如く、第2搬送装置76によって順次搬送された用紙P2を、搬入装置74が下面つまり他面Bの左右方向の中央部を吸引しながら貯留部4内に下方に向けて順次搬入する。
そして搬入装置74によって貯留部4内に搬入された用紙P2は、図4、図6に示す如く、左右両側の吸着移動部41において搬入位置C1を挟んで隣り合う吸着板42同士の間に挿入される。このとき図示しないモータが、搬入装置74による用紙P2の搬入と同期して吸着板42を間欠送りして、吸着板42の他面Jを搬入位置C1に停止させた状態で待機させ、用紙P2が搬入されて両側縁部が吸着板42に吸着されたタイミングで1ピッチ分送るようにプーリー43aを回転させるので、搬入位置C1に搬入される用紙P2は順次搬入位置C1を挟んで隣り合う2つの吸着板42の間に挿入され、次いで移動方向Fに移動せしめられる。
このとき左右両側の吸着移動部41は、搬入位置C1において隣り合う吸着板42の間に搬入された用紙P2の側縁部を吸引し、搬送ベルト43bが搬送方向Fに移動すると共に搬入装置74の搬送ベルト74bから用紙P2を剥離するので、搬入位置C1に順次搬入される複数枚の用紙P2を1枚ずつ吸着板42によって吸着できる。
吸着板42により1枚ずつ吸着された複数枚の用紙P2は、搬送ベルト43bの移動により搬出位置C2に位置すると、このとき用紙P2の搬出位置C2への到来と同期して図2に示す搬出装置81のプーリー81aを図示しないモータにより回転させることにより、搬出装置81によって用紙P2の下面つまり一面Aが吸引されて吸着板42から剥離され、該用紙P2は第2の孔版印刷部51に向けて搬出される。なお搬出装置81のファン81cは常時駆動されている。
このとき用紙P2は、搬入位置C1から搬出位置C2へ移動するために要する時間すなわち貯留部4における貯留時間にて、一面Aに転写されたインクを乾燥させることができるので、搬出装置81によって一面Aを吸引して搬送するときに搬送ベルト81bとの接触によって用紙P2の一面が汚れるのを防ぐことができる。
なお用紙P2の一面Aの印刷率に基づいて、つまり一面Aの全面積に対する該一面Aに占める実印刷面積の割合が高い場合には、一面Aへのインクの転写が多いので貯留時間を長くし、実印刷面積の割合が低い場合には、一面Aへのインクの転写が少ないので貯留時間を短くするように貯留時間を制御するようにしてもよい。この印刷率は、用紙P2の一面Aの全面積に対する実印刷面積の割合を意味するものであり、例えば孔版印刷の場合、第1の孔版印刷部3により印刷する画像を表わす白黒の二値画像データ(黒画像データは孔版原紙に穿孔を行う画像データ、白画像データは孔版原紙に穿孔を行わないデータ)の全画像データ数に対する黒画像データ数の割合で示すことができる。
貯留時間の制御は、先ず両面印刷を開始する前に上述のようにして第1の孔版印刷部3における印刷率を算出しておき、この印刷率が所定値以下のとき、即ち乾燥時間が比較的少なくてもよいときは、搬送ベルト43bの移動速度つまり用紙P2の移動速度を図6に示す場合に比して2倍にすることによって例えば1つおきの吸着板42に用紙P2が吸着されるようにする。なお搬送ベルト43bの移動速度は、図示しないモータを制御してプーリー43aの回転速度を変更することにより変更することができる。
そして上記のように1つ置きの吸着板42に用紙P2を吸着するように移動部43を駆動すると、用紙P2の搬送速度が速くなることから、用紙P2が貯留部4に貯留する時間が短くなり、印刷率が低い場合に無駄な乾燥時間を省略して用紙P2を搬出位置C2から搬出することができる。
また上記のように搬送ベルト43bの移動速度はモータを制御するだけで変更することができるので、複雑な制御を要することなく貯留時間すなわち乾燥時間を制御することができる。
以上のように貯留部4にて一面Aに転写されたインクが乾燥された用紙P2を搬出装置81が貯留部4から搬出した後、第2ピックアップローラ82が搬出装置81から搬出された用紙P2を順次ピックアップし、ピックアップされた用紙P2を第2タイミングローラ83が印刷済の一面Aが下側に位置するように、つまり未印刷の他面Bが上側に位置するように反転しつつ所定のタイミングにて第2の孔版印刷部5に順次搬送する。第2の孔版印刷部5は、搬送された用紙P2の上側の面すなわち他面Bに、第2ドラム51に巻装された製版済孔版原紙M2の画像を順次印刷する。
続いて排出装置84が、印刷された他面Bを上面にした用紙P3を、一面Aを吸引しながら順次排紙台6に搬送する。
次に他の実施形態について説明する。下記実施形態の両面孔版印刷装置は、上述した第1の実施形態の吸引ファン部44に吸着板42の吸着力発生を制御する吸着制御手段を備えている。図7は第2の実施形態の吸着移動部41の要部詳細断面図、図8は第3の実施形態の吸着移動部41の要部詳細断面斜視図である。
第2の実施形態の吸着移動部41はシャッタ部44cを備え、シャッタ部44cは、図7の左右の図に示す如く、吸引ケース44a内部に配設されて、搬送ベルト43bの搬送方向Fに所定間隔を空けて配置された一対のプーリー44c−1(一方のプーリー44c−1は図示を省略)と、一対のプーリー44c−1の外周に掛け渡されプーリー44c−1の回転に伴って移動する環状の搬送ベルト44c−2と、搬送ベルト44c−2の外周面の一部に設けられ、表面に嵌合歯を有する嵌合部材44c−3とを備えている。この嵌合部材44c−3は、搬送ベルト44c−2の移動に伴って環状に移動する。
またシャッタ部44cは、吸引ケース44a内部の、開口44a’の下方に配設され、吸着板42が前記開口44a’の上方に位置したとき、すなわち移動路部分R(図3参照)に位置したときに、該吸着板42の各吸引袋42cの下端開口の周囲を囲んで蓋42eと当接し、開口44a’を介して各吸引袋42cの下端開放部とそれぞれ連通する各空間44c−4aを形成する空間形成部材44c−4を備えており、該空間形成部材44c−4は各空間44c−4a毎に下端が開放されている。シャッタ部44cはさらに、前記各空間44c−4a毎に空間形成部材44c−4の下端を開閉するシャッタ44c−5を備えている。
シャッタ44c−5は、図7の左右の図に示す如く、各空間44c−4a毎に空間形成部材44c−4の下端を開閉する各蓋体44c−5aと、外周に前記嵌合部材44c−3と嵌合する嵌合歯を有する回転ダイヤル44c−5bとを備え、前記蓋体44c−5aは回転ダイヤル44c−5bの回転軸に接続され回転ダイヤル44c−5bの回転に伴って前記回転軸を中心にして回転する。
上記のように構成されたシャッタ部44cは、移動部43の搬送ベルト43bが搬送方向Fに1ピッチ分移動する毎に、嵌合部材44c−3も同長の1ピッチ分搬送方向Fと同じ方向F’に進むように図示しないモータによりプーリー44c−1を介して搬送ベルト44c−2を移動させる。これにより嵌合部材44c−3は、嵌合部材44c−3と回転ダイヤル44c−5bの嵌合歯が嵌合した状態で前記方向F’に進むので、回転ダイヤル44c−5bが図7中矢印M方向に90°回転すると共に蓋体44c−5aも90°回転して、図7の右図に示す如く、蓋体44c−5aが開状態となり空間形成部材44c−4の下端が開放される。
上記のように構成されたシャッタ部44cは、図示しない吸着制御部(吸着制御手段)によって、貯留部4にまだ用紙P2が搬入されていないときには各蓋体44c−5aは図7の左図に示すように閉状態にされ、第1ピックアップローラ71によって最初に給紙され第1の孔版印刷部3にて一面Aが印刷された用紙P2が搬入位置C1に挿入されるときに、該挿入される用紙P2を吸着する吸着板42の吸引袋42cと連通する空間44c−4aを閉じている搬送方向Fの最も上流側の蓋体44c−5aが上述のようにして開状態にされる。なお第1の搬送部7の搬送経路であって、貯留部4の搬入口の上流側に用紙P2があるか否かを検出する図示しない光センサを設けておき、該光センサが用紙P2を検出したときに上記最も上流側の蓋体44c−5aを開状態にする。
そして吸着制御部は、次回の移動部43の搬送ベルト43bの移動と連動させて、シャッタ部44cの搬送ベルト44c−2を移動させることにより、最初に挿入された用紙P2の搬送方向Fへの移動に伴って、該用紙P2が位置する下端の蓋体44c−5aを開き、全ての蓋体44c−5aを開いた後で、嵌合部材44c−3を搬送方向Fの最も上流側に位置する空間44c−4aの前記上流側近傍に位置させるまで、搬送ベルト44c−2をさらに移動させてから該搬送ベルト44c−2を駆動するモータを停止させる。
そして吸着制御部は、所定枚数の用紙P1が給紙台2から給紙され、順次第1孔版印刷部3により用紙P1の一面Aが印刷されて、最後に第1孔版印刷部3により印刷された用紙P2が、搬入装置74によって搬入位置C1にて吸着板42に沿って貯留部4内部へ搬入され、移動部43の搬送ベルト43bが搬送方向Fに1ピッチ分移動すると略同時にモータを駆動して搬送ベルト44c−2を移動させることにより嵌合部材44c−3によって蓋体44c−5を閉状態にし、同様にして順次、移動部43の搬送ベルト43bが搬送方向Fに1ピッチ分移動する毎に搬送ベルト44c−2を移動させて、すべての蓋体44c−5を閉状態にする。
なお貯留部4内部へ搬入された用紙P2が所定枚数の最後の用紙P2であるか否かの判断は、第1ピックアップローラ71と第1タイミングローラ72との間の搬送経路に、用紙P2があるか否かを検出する図示しない光センサを設けておき、吸着制御部が該光センサからの出力信号をカウントすることにより判断する。
以上のように用紙P2が搬入された吸着板42にのみ吸着力を発生させることにより、用紙P2が搬入されていない吸着板42の孔42aからのエアー吸引による吸着力の低下を防止することができる。
第3の実施形態の吸着移動部41は他のシャッタ部44dを備え、該シャッタ部44dは図8に示す如く、吸引ケース44a内部の、開口44a’の下方に空間形成部材44d−1を備えている。空間形成部材44d−1は、吸着板42が前記開口44a’の上方に位置している所定の数(本実施形態では5つ)毎の該吸着板42の吸引袋42cの下端開口の周囲を囲んで蓋42eと当接し、開口44a’を介して上記所定の数の吸引袋42cの下端開口と連通する各空間44d−1aを区画形成するものであり、該空間形成部材44d−1は各空間44d−1a毎に該空間44d−1aと連通する吸引開口を備えている。シャッタ部44dはさらに、各空間44d−1a毎に空間形成部材44d−1の前記吸引開口を開閉するシャッタ44d−2を備えている。
シャッタ44d−2は、図8に示す如く、各々複数(本実施形態では6つ)の開口44d−2aを有し、重ねて配設された2枚の円盤44d−2bと、2枚の円盤44d−2bの一方を該円盤44d−2bの軸を中心にして回転させる図示しないモータとを備えている。シャッタ44d−2は、前記モータにより一方の円盤44d−2bを回転させて、2枚の円盤44d−2の各々の前記開口44d−2aを重ね合わせたりずらしたりすることにより、前記吸引開口を開閉する。
この第2のシャッタ部44dは、図示しない吸着制御部(吸着制御手段)によって、上記第2の実施形態と同様に、貯留部4にまだ用紙P2が搬入されていないときには2枚の円盤44d−2を、各々の開口44d−2aをずらして閉状態にしておき、第1ピックアップローラ71によって最初に給紙され第1の孔版印刷部3にて一面Aが印刷された用紙P2が搬入位置C1に挿入されるときに、該挿入される用紙P2を吸着する吸着板42の吸引袋42cと連通する空間44d−1aを形成する空間形成部材44d−1の吸引開口つまり搬送方向Fの最も上流側の2枚の円盤44d−2bを、各々の開口44d−2aを重ねて開状態にする。なお第1の搬送部7の搬送経路であって、貯留部4の搬入口の上流側に用紙P2があるか否かを検出する図示しない光センサを設けておき、該光センサが用紙P2を検出したときに上記最も上流側の2枚の円盤44d−2bを開状態にする。
そして吸着制御部は、移動部43の搬送ベルト43bが吸着板42を5枚分つまり5ピッチ分搬送方向Fへ移動させたとき、すなわち前記最初に給紙された用紙P2が吸着された吸着板42が搬送方向F下流側の隣の次の空間44d−1a上に位置するときに、該次の空間44d−1aの円盤44d−2bを開状態にし、順次同様にしてすべての円盤44d−2bを開状態にする。なお吸着板42が前記隣の次の空間44d−1a上に位置したときにはすでに吸引可能になっている。
そして吸着制御部は、所定枚数の用紙P1が給紙台2から給紙され、順次第1孔版印刷部3により用紙P1の一面Aが印刷されて、最後に第1孔版印刷部3により印刷された用紙P2が、搬入装置74によって搬入位置C1にて吸着板42に沿って貯留部4内部へ搬入され、該吸着板42に吸着されながら5ピッチ分搬送方向Fに搬送された後、つまり前記最後の用紙P2が搬送方向Fの最も上流側に位置する空間44d−1aの上方を通過した後に、搬送方向Fの最も上流側に位置する円盤44d−2bを閉状態にし、同様にして順次、吸着板42が搬送方向Fに5ピッチ分移動する毎に前記閉状態となった円盤44d−2bの搬送方向F下流側の隣の円盤44d−2bを閉状態にする。
以上のように用紙P2が搬入された吸着板42を含む所定枚数毎の吸着板42の吸着面にのみ吸着力を発生させることにより、前記所定枚数全てに用紙P2が搬入されていない吸着板42の孔42aからのエアー吸引による吸着力の低下を防止することができる。
次にさらに他の実施形態の両面孔版印刷装置について説明する。図9は他の実施形態の両面孔版印刷装置の概略構成図である。本実施形態の両面印刷装置は上述した実施形態の両面孔版印刷装置1の各種搬送装置による用紙P1、P2、P3の搬送経路の途中に用紙の搬送エラーを検出するエラー検出部を備えている。
エラー検出部は、第1の搬送部7による用紙P1の第1の孔版印刷部3への給紙、第1の孔版印刷部3による用紙P1の一面Aへの印刷、第1の搬送部7による用紙P2の貯留部4への搬送、吸着移動部41による貯留部4内での搬入位置C1から搬出位置C2への用紙P2の搬送、第2の搬送部8による用紙P2の第2の孔版印刷部5への搬送、第2の孔版印刷部5による用紙P2の他面Bへの印刷、及び排出装置84による用紙P3の排紙台6への搬送が、各用紙Pに対して予め定められた所定時間間隔で順次連続的に行われている本装置1において、前記所定時間間隔で用紙P1、P2、P3が所定位置に存在しているか否かを検出するものであって、各検出タイミングに用紙P1、P2、P3が前記所定位置に存在していないときに、搬送エラーがあることを検出する。
エラー検出部は、用紙Pが存在するときに光が遮断されることにより用紙Pの存在を検出できる光センサで構成されていて、図9に示す如く、第1の搬送部7による搬送経路の途中であって、第1ピックアップローラ71と第1タイミングローラ72との間の搬送経路に第1センサS1、第1搬送装置73と第2搬送装置76との間の搬送経路に第2センサS2が配設され、さらに第2の搬送部8による搬送経路の途中であって、第2ピックアップローラ82と第2タイミングローラ83との間の搬送経路に第3センサS3、第2孔版印刷部5と排出装置84との間の搬送経路に第4センサS4が配設されていて、これら第1〜第4センサS1〜S4の各々が各検出タイミングに用紙Pが存在しているか否かを検出する。
そして本装置1による印刷動作を制御する図示しない印刷制御部は、本装置1が第1の搬送部7による用紙P1の第1の孔版印刷部3への給紙、第1の孔版印刷部3による用紙P1の一面Aへの印刷、第1の搬送部7による一面Aが印刷済の用紙P2の貯留部4への搬送、吸着移動部41による貯留部4内での搬入位置C1から搬出位置C2への用紙P2の搬送、第2の搬送部8による用紙P2の第2の孔版印刷部5への搬送、第2の孔版印刷部5による用紙P2の他面Bへの印刷、及び、排出装置84による一面A及び他面B(両面)が印刷済の用紙P3の排紙台6への搬送は、各用紙Pに対して予め定められた所定時間間隔で順次連続的に行う一連の印刷動作を継続中に、第3センサS3が前記検出タイミングに用紙P2を検出しないときに、貯留部4内において用紙Pの搬送エラーが生じたと判断して、前記一連の印刷動作を停止させると共に吸引ファン部44を制御する図示しない吸引制御部に吸引ファン44bの駆動を停止させることにより、吸着板42における吸着力の発生を停止させる。
一方、前記印刷制御部は、本装置1が前記一連の印刷動作を継続中に、第1センサS1、第2センサS2、第4センサS4の少なくとも1つが前記各検出タイミングに用紙Pを検出しないときに、貯留部4外において用紙Pの搬送エラーが生じたと判断して、前記一連の印刷動作を停止させると共に吸引ファン44bの駆動を継続させることにより、吸着板42における吸着力の発生を継続させる。
以上により貯留部4外において搬送エラーが生じたとき、すなわち貯留部4内において搬送エラーが生じていないときには、吸着板42に用紙P2を吸着しておくことができるので、貯留部4内で用紙P2の位置ずれが生じるのを防止することができ、貯留部4外での搬送エラーが解決されたときに、貯留部4内部の用紙P2を使用して前記一連の印刷動作を再開させることができる。これにより搬送エラーが生じたときに貯留部4内部の用紙P2を廃棄することなく有効に使用することができると共に、貯留部4内部の各用紙P2に対する貯留部4までの前記一連の動作に要した時間だけ、所定枚数の印刷に要する時間を低減することができて印刷生産性の低下を防止することができる。
次にまたさらに他の実施形態の両面孔版印刷装置について説明する。本実施形態の両面印刷装置は上述した実施形態の両面孔版印刷装置1の搬入装置74に、ファン74cにより搬送ベルト74bに吸引された用紙P2を剥離する剥離部材(剥離手段)75をさらに備えたものである。図10は、本実施形態の両面孔版印刷装置の貯留部4への用紙P2の搬入から搬出までの工程を説明する図である。なお図10の吸着部42は、便宜上図は異なっているが、上記実施形態の吸着部42と同様の構造のものである。また図10の吸着部42は便宜上、搬入装置74により搬入された用紙P2の先端部を吸着する図となっているが、実際には図4、図6に示す様に用紙P2の側縁部を吸着するものである。
剥離部材75は、図10に示す如く、用紙P2を吸引搬送する側の搬送ベルト74bの近傍に配置され、図示しないモータにより回転される回転軸75aと、一端部が回転軸75aに接続されて回転軸75aの回転と共に回転する剥離爪75bとから構成されている。この剥離部材75による剥離動作は図示しない剥離制御部(剥離制御手段)によって制御されるものであり、この剥離動作について以下説明する。
図10(a)に示す如く、用紙P2が搬入位置C1を挟んで位置する2つの吸着板42の間に挿入されて、該用紙P2の両側縁部が搬送方向F上流側に位置する左右両側の吸着板42に吸着されながら搬入装置74により吸引搬送されて所定位置まで搬送されると、搬入装置74の搬送ベルト74bを停止させる。
そして図10(b)に示す如く、図4に示す搬送ベルト43bの移動により吸着板42が搬入位置C1から搬出位置C2に向かって移動を開始すると略同時に、回転軸75aを回転させて剥離爪75bによって用紙P2を搬送ベルト74bから剥離する。
そして用紙P2が搬送ベルト74bから剥離されると直ぐに、図10(c)に示す如く、回転軸75aを逆回転させ剥離爪75bを用紙搬入の妨げにならない位置まで移動させ、搬入装置74は次の用紙P2を搬入して搬入位置C1を挟んで位置する2つの吸着板42の間に挿入し、図10(a)から図10(c)に示す動作が繰り返される。
以上のような剥離動作を行うことにより、搬送ベルト74bから用紙P2を確実に剥離することができるので、搬入装置74により次回搬送すべき用紙P2が搬送されてきたときにこの次回の用紙P2と前回の用紙P2との衝突による跳ね返り等に起因する用紙P2の位置ズレを防止することができる。また次回の用紙P2の一面Aが前回の用紙P2により擦られてしまうのを防止することもできる。これにより搬入装置74による用紙P2の搬送を確実に安定して行うことができる。
また吸着板42により用紙P2の両側縁部が吸着されている状態で、剥離動作を行うので、搬送ベルト74bから用紙P2を勢いよく剥離したとしても用紙P2の位置ズレを抑えることができる。
なお上述した実施形態の両面孔版印刷装置1は上記構成としたが、本発明の両面印刷装置はこれに限られるものではなく、例えば装置ハウジング10の上側に、原稿の画像を読み取るスキャナ部や、スキャナ部で読み取った原稿画像の画像データに基づいて生成された孔版画像データに基づいて孔版原紙を穿孔して製版を行う製版部等を備えていてもよい。
本発明の両面印刷装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。