以下、本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態の両面孔版印刷装置1の概略構成図、図2は図1の両面孔版印刷装置1の要部詳細拡大図、図3は図2のA−A線断面図、図4は図2の矢印B方向から見た図である。
本実施形態の両面孔版印刷装置1は、図1に示す如く、装置ハウジング10と、装置ハウジング10の一側面(図1中、左側面)に設けられ、印刷媒体である複数枚の用紙P1が積載された給紙台2と、給紙台2から給紙される用紙P1の一面Aに印刷する第1の孔版印刷部(第1の印刷手段)3と、一面Aが印刷された用紙P2を複数枚貯留する貯留部4と、貯留部4に貯留されていた用紙P2の他面Bに印刷する第2の孔版印刷部(第2の印刷手段)5と、装置ハウジング10の他側面(図1中、右側面)に設けられ、両面すなわち一面A及び他面Bが印刷された用紙P3を積載する排紙台6とを備えている。
また両面孔版印刷装置1は、給紙台2から第1の孔版印刷部3に用紙P1を給紙する給紙部(給紙手段)7Aと、第1の孔版印刷部3から貯留部4内部へ用紙P2を搬送する第1の搬送部(第1の搬送手段)7Bと、貯留部4内部から第2の孔版印刷部5及び第2の孔版印刷部5から排紙台6まで用紙P2、P3を搬送する第2の搬送部(第2の搬送手段)8と、貯留部4内部から第2の孔版印刷部5まで用紙P2を搬送するときの第2の搬送部8による用紙P2の搬送遅れを検出する搬送遅れ検出部(搬送遅れ検出手段)S1と、搬送遅れ検出部S1による搬送遅れの検出が、搬送遅れの検出対象である用紙P2が無いことによるものであるか否かを判断する遅れ原因判断部(遅れ原因判断手段)S2とを備えている。
給紙部7Aは、装置ハウジング10に設けられ、図1、図2に示す如く、給紙台2に積載された用紙P1の装置ハウジング10側の上方に設けられた第1ピックアップローラ71と、第1ピックアップローラ71によってピックアップされた用紙P1を所定のタイミングにて第1の孔版印刷部3に給紙する第1タイミングローラ72とで概略構成されていて、該第1タイミングローラ72を停止させると第1の孔版印刷部3への用紙P1の給紙が停止する。
第1の搬送部7Bは同じく装置ハウジング10に設けられ、図1、図2に示す如く、第1の孔版印刷部3により上側に位置する一面Aが印刷された用紙P2を円弧状の軌跡に沿って反転させて一面Aを下側に位置させる反転装置73と、反転装置73にて反転された用紙P2を貯留部4内部に搬入して後述する下端支持部41に支持させる搬入装置74とで概略構成されている。
第2の搬送部8は同じく装置ハウジング10に設けられ、図1、図2に示す如く、貯留部4内部の後述する下端支持部41から用紙P2を搬出する搬出装置81と、搬出装置81により搬出される用紙P2をピックアップする第2ピックアップローラ82と、第2ピックアップローラ82によってピックアップされた用紙P2を順次所定のタイミングにて第2の孔版印刷部5に搬送する第2タイミングローラ83と、第2の孔版印刷部5により他面Bが印刷された、すなわち両面が印刷された用紙P3を排紙台6に向けて搬出する排出装置84とで概略構成されている。
搬入装置74、搬出装置81及び排出装置84は、それぞれ所定間隔を空けて配置された一対のプーリー74a、81a、84aと、一対のプーリー74a、81a、84aの外周に掛け渡されそれぞれプーリー74a、81a、84aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト74b、81b、84bと、吸引用のファン74c、81c、84cとを備えている。
搬送ベルト74b、81b、84bは、例えば図4に示す搬送ベルト74bのように表面に複数の孔74b’81b’、84b’(81b’、84b’は図示せず)が設けられており、搬送ベルト74b、81b、84bとプーリー74a、81a、84aとは、用紙P側に位置する搬送ベルト74b、81b、84bの少なくとも上記孔74b’、 81b’、84b’を含む一部のみを外部に露出させて、例えば図3に示すような略密閉されたケース74d、81d、84d(84dは図示せず)の中に配設されている。
ファン74c、81c、84cは、各々のケース74d、81d、84dに取り付けられ、ケース74d、81d、84d内部の空気を外部に排出することにより、搬送ベルト74b、81b、84bの孔74b’、 81b’、84b’に吸引力を発生させる。
このように構成された各装置74、81、84は、図示しないモータによってプーリー74a、81a、84aを回転させて搬送ベルト74b、81b、84bを移動させると共にファン74c、81c、84cを回転させて孔74b’ 、 81b’、84b’に吸引力を発生させることにより、用紙Pを吸引しながら搬送する。
また反転装置73は、図2に示す如く、円弧状の軌跡に沿って配設された4つのプーリー73aと、この4つのプーリー73aの外周に掛け渡されプーリー73aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト73bと、吸引用のファン73cとを備えており、上記搬送装置74、81、84と略同様に構成されている。
なお本実施形態の搬入装置74、搬出装置81、排出装置84及び反転装置73は、上記の構成としたが、例えば搬送ベルト73b、74b、81b、84bの内側面にファン73c、74c、81c、84cを取り付けて吸引するようにしてもよいし、用紙Pを搬送可能であればどのような構造であってもよい。
また搬入装置74は、一対のプーリー74aの外周に掛け渡された搬送ベルト74b及びファン74cを並列に複数備えて、これらで一枚の用紙を吸引して搬送するようにしてもよい。搬出装置81及び/又は排出装置84も同様にすることができる。
搬送遅れ検出部S1は、図1、図2に示す如く、第2の搬送部8による搬送経路の途中の第1の位置s1に設けられ、第1の位置s1は第2ピックアップローラ82と第2タイミングローラ83との間の搬送経路に設定されている。搬送遅れ検出部S1は、この第1の位置s1に用紙P2が存在するか否かを検出するものであって、本実施形態では、用紙P2が存在するときに光が遮断されることにより用紙P2の存在を検出できる光センサで構成されている。
搬送遅れ検出部S1は、給紙部7Aによる用紙P1の第1の孔版印刷部3への給紙、第1の孔版印刷部3による用紙P1の一面Aへの印刷、第1の搬送部7Bによる用紙P2の貯留部4への搬送、第2の搬送部8による用紙P2の第2の孔版印刷部5への搬送、及び、第2の孔版印刷部5による用紙P2の他面Bへの印刷が、各用紙Pに対して予め定められた所定時間間隔で順次連続的に行われている本装置1において、前記所定時間間隔で用紙P2が第1の位置s1に存在しているか否かを検出し、各検出タイミングに用紙P2が第1の位置s1に存在していない場合には、搬送遅れがあることを検出し、各検出タイミングに用紙P2が第1の位置s1に存在している場合には、搬送遅れがない、すなわち正常に搬送されていることを検出する。
給紙部7Aによる用紙P1の給紙、第1の孔版印刷部3による用紙P1の印刷、第1の搬送部7Bによる用紙P2の搬送、第2の搬送部8による用紙P2の搬送及び第2の孔版印刷部5による用紙P2の印刷は、上記のように所定時間間隔で行われるので、用紙P2はその所定時間間隔で、上記第1の位置s1に到達する。搬送遅れ検出部S1による検出タイミングは用紙P2の先端が第1の位置s1に到達するタイミングに設定されており、これにより用紙P2の搬送遅れが検出される。
遅れ原因判断部S2は、図1、図2に示す如く、第2の搬送部8による貯留部4から第2の孔版印刷部5への搬送経路の途中の位置で、かつ前記第1の位置s1より所定距離だけ用紙搬送方向上流側に設定された第2の位置s2に設けられており、本実施形態の第2の位置s2は搬出装置81と第2ピックアップローラ82との間の搬送経路であって、前記第1の位置s1より略60mm離れた位置に設定されている。
遅れ原因判断部S2は、この第2の位置s2に用紙P2が存在するか否かを検出するものであって、本実施形態では、上記搬送遅れ検出部S1と同様に用紙P2が存在するときに光が遮断されることにより用紙P2の存在を検出できる光センサで構成されている。
遅れ原因判断部S2は、搬送遅れ検出部S1と同じ所定時間間隔で、かつ同じ若しくは略同じ検出タイミングで用紙P2が第2の位置s2に存在しているか否かを検出するものであって、上述した搬送遅れ検出部S1によって用紙P2の搬送遅れが検出されて、かつ、遅れ原因判断部S2がこの搬送遅れの検出対象である用紙P2が第2の位置s2に存在していることを検出した場合には、用紙P2の搬送方向の上流側の端部つまり用紙P2の先端が、図2の第1の位置s1から第2の位置s2の間に位置していることになるので、搬送遅れ検出部S1による搬送遅れの検出が、第1の位置s1から第2の位置s2までの搬送距離(本実施形態では60mm)よりも小さい搬送量の搬送遅れが用紙P2に生じたことによるものであると判断する。
一方、上述した搬送遅れ検出部S1によって用紙P2の搬送遅れが検出されて、かつ、遅れ原因判断部S2がこの搬送遅れの検出対象である用紙P2が第2の位置s2に存在していないことを検出した場合には、第1の位置s1から第2の位置s2までの搬送距離(本実施形態では60mm)よりも大きい搬送量の搬送遅れが生じたか、或いは搬送すべき用紙P2が存在していなかったとして、搬送遅れ検出部S1による搬送遅れの検出が、検出対象である用紙P2が存在していないことによるものであると判断する。
第1の孔版印刷部3は、図1に示す如く、第1ドラム31と第1プレスローラ32とからなり、第1ドラム31の下流側には図2に示す如く、用紙P2を剥ぎ取る剥取爪33が設けられている。第1ドラム31は内部に図示しない第1インクカートリッジを有し、第1ドラム31の外周面には入力された画像データに基づいて図示しない製版部により感熱穿孔済の、つまり製版された孔版原紙M1が巻装されている。そして第1タイミングローラ72により第1ドラム31の回転に同期して第1ドラム31と第1プレスローラ32との間に送り込まれた用紙P1の一面Aすなわち上側に位置する上面Aが第1プレスローラ32によって孔版原紙M1に押し付けられることにより用紙P1の一面Aに対して孔版印刷が行われる。
第2の孔版印刷部5は、上記第1の孔版印刷部3と同様に、第2ドラム51と第2プレスローラ52とからなり、第2ドラム51の下流側には用紙P3を剥ぎ取る剥取爪53が設けられている。第2ドラム51は内部に図示しない第2インクカートリッジを有し、第2ドラム51の外周面には製版された孔版原紙M2が巻装されている。そして一面Aが印刷され、さらに反転装置73によって反転された後、貯留部4を経て、第2タイミングローラ83により第2ドラム51の回転に同期して第2ドラム51と第2プレスローラ52との間に送り込まれた用紙P2の他面Bすなわち上側に位置する上面Bが第2プレスローラ52によって孔版原紙M2に押し付けられることにより用紙P2の他面Bに対して孔版印刷が行われる。
なお第1タイミングローラ72と第1プレスローラ32との間の搬送経路の所定位置には、用紙P1の先端を検出する、透過型や反射型などのフォトセンサからなる図示しない第1先端検出センサが、第2タイミングローラ83と第2プレスローラ52との間の搬送経路の所定位置には、用紙P2の先端を検出する、前記フォトセンサからなる図示しない第2先端検出センサがそれぞれ設けられていて、第1先端検出センサによって用紙P1の先端が検出された時点を基準として、第1タイミングローラ72による用紙P1の送りを第1ドラム31の回転に同期させ、第2先端検出センサによって用紙P2の先端が検出された時点を基準として、第2タイミングローラ83による用紙P2の送りを第2ドラム51の回転に同期させている。
貯留部4は、第1の孔版印刷部3により一面Aが印刷された用紙P2を、第2の孔版印刷部5で用紙P2の他面Bに印刷を行なう前に複数枚一時的に貯留するものであり、この複数枚の用紙P2を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えている。
この保持機構は、一面Aが印刷された複数枚の用紙P2を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持するものであればどのような構成のものでも良く、その具体的構成としては、用紙P2を立たせてその下端をそれぞれ支持する構成、用紙P2を1枚1枚それぞれ把持する構成、あるいは、用紙P2を1枚1枚それぞれ吸着保持する構成等、種々の構成を採用することができる。
貯留部4は、第1の搬送部7Bにより搬送されてきた用紙P2が搬入される搬入位置と、貯留されている用紙P2を第2の搬送部8に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、保持機構が、搬入位置に1枚ずつ搬入された各用紙P2を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させ、搬出位置から1枚ずつ搬出して他面Bの印刷に供することができるものであることが好ましい。
本実施形態における貯留部4は、図1に示す如く、第1の搬送部7Bから送られてきた用紙P2の搬入口および第2の搬送部8に用紙P2を受け渡す用紙P2の搬出口を上方にして斜めに配設されており、搬入された一面Aが印刷済みの用紙P2を複数枚互いに所定間隔を空けて重ねた状態で斜めに立たせて、かつ左右方向(斜めに立った状態の用紙P2の上下方向に直角な方向)の断面が一面Aを内側にして湾曲するようにカールさせた状態で保持する保持機構を備えている。
本実施形態の保持機構は、図2に示す如く、用紙P2の印刷された一面Aを斜め下方から支える支持体である支持板40aと、支持板40aの両側面(図2中、手前側と奥側)にそれぞれ支持板40aと略直角に設けられて支持板40aに用紙P2を導く側面ガイド体である側面ガイド板40bと、用紙P2の未印刷の他面Bを斜め上から覆う覆板40cと、複数枚の用紙P2をそれらの下端を互いに所定間隔を空けて搬入順に順次支持する下端支持部41と、下端支持部41により下端が支持された用紙P2に対してその左右方向の断面が、図3及び図7に示す如く、印刷が施された一面Aを内側にして湾曲するカールを付与するカール付与部42とを備えている。
なお、図3に示す如く、覆板40cには上述した搬入装置74のケース74d、支持板40aには上述した搬出装置81のケース81dがそれぞれ取り付けられて、覆板40c及び支持板40aにそれぞれ設けられた図示しない開口から搬送ベルト74b及び搬送ベルト81bがそれぞれ露出するように構成されている。図5に図2の下端支持部41の拡大詳細図、図6に図2の要部拡大詳細斜視図、図7に貯留部4内での用紙P2の状態を示す図をそれぞれ示す。なお図5では便宜上、搬送ベルト41bの片側の外周面の詳細を省略している。
下端支持部41は、図2、図5に示す如く、間隔を空けて配置された一対のプーリー41aと、この一対のプーリー41aの外周に掛け渡されて、図示しないモータによるプーリー41aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト41bとを備え、搬送ベルト41bには、搬送ベルト41bの外周面に立設し、搬送ベルト41bの全周に亘って所定間隔空けて配列された複数のプレート41cが設けられている。このように構成された下端支持部41は、一対のプーリー41aを結ぶ方向つまり搬送ベルト41の搬送移動方向(図5中の矢印F方向、つまり用紙P2を支持して搬送する役割を担うプーリー41aの上側を移動する搬送ベルト部分の移動方向)が、用紙P2の搬入方向(矢印D方向)及び搬出方向(矢印E方向)と略直交するように配設されている。
また複数のプレート41cは、図5に示す如く、それぞれ搬送ベルト41bの搬送移動方向上流側に隣接するプレート41cに向けて延びる金属片等からなる弾性変形可能な爪片41eを備えている。隣り合う一対のプレート41c、41cで構成されるそれぞれの凹部41dに、用紙P2が印刷された一面Aを斜め下側(図2及び図5中、右側)にした状態で一枚ずつ挿入されたときに、凹部41dに挿入された用紙P2の下端中央を上流側のプレート41cと下流側のプレート41cの爪片41eとで把持することにより複数枚の用紙P2を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持するように構成されている。このとき下流側のプレート41cの爪片41eと上流側のプレート41cとが1枚の用紙P2を把持するクランプ部41fとなる。
クランプ部41fは、直線状態にある搬送ベルト41b上では、隣接するプレート41c、41cが略平行となり、下流側のプレート41cの爪片41eの先端(下端)と上流側のプレート41cとの間隔が用紙P2の厚さより小さくなることから、凹部41dに用紙P2が挿入された場合、爪片41eは用紙P2によって該爪片41eが設けられているプレート41c側に弾性変形せしめられ、その結果爪片41eは用紙P2を上流側のプレート41cに弾性的に押し付けて用紙P2を把持することができ、プーリー41a上に位置して曲線状態にある搬送ベルト41b上では、隣接するプレート41c、41cが平行ではなくなり、先端(上端)側がより離れた状態となって、爪片41eの先端(下端)と上流側のプレート41cとの間隔が用紙P2の厚さより大きくなり用紙P2を解放することができる。
本貯留部4においては、第1の搬送部7Bによって搬送されて貯留部4に用紙が搬入される搬入位置C1(図2では矢印D位置)と貯留されている用紙P2を第2の搬送部8に受け渡して該第2の搬送部8によって搬出される搬出位置C2(図2では矢印E位置)とが搬送ベルト41bの搬送移動方向に所定間隔を空けて設定されており、下端支持部41は一対のプーリー41aがそれぞれ搬入位置C1及び搬出位置C2に対応させて配設されている。より詳しくは、搬入位置C1が、搬送ベルト41bの搬送移動方向上流側に位置する上流側プーリー(図中左側のプーリー)41aの中心よりも僅かに外側(図中左側)に位置するように、また、搬出位置C2が、搬送ベルト41bの搬送移動方向下流側に位置する下流側プーリー(図中右側のプーリー)41aの中心よりも僅かに外側(図中左側)に位置するように設定されている。
これにより、図5に示す如く、搬入位置C1に位置するクランプ部41fにおいては、該クランプ部41fを構成する一対のプレート41cのうち少なくとも上流側のプレート41cがプーリー41aに沿った曲線状態となっている搬送ベルト41b上に位置し、それによってそれらの一対のプレート41c間は上端が開いてクランプ部41fが開状態となり、搬入された用紙P2の下端をこのクランプ部41fの凹部41dに受け入れることが可能である。同様に、搬出位置C2に位置するクランプ部41fにおいては、該クランプ部41fを構成する一対のプレート41cのうち少なくとも下流側のプレート41cがプーリー41aに沿った曲線状態となっている搬送ベルト41b上に位置し、それによってそれらの一対のプレート41c間は上端が開いてクランプ部41fが開状態となっており、クランプ部41fの凹部41dに位置している用紙P2の下端の把持が開放されて該用紙P2をクランプ部41fから引き出すことが可能とである。
そして、図示しないモータによってプーリー41aを時計回りに回転させることで搬送ベルト41bを時計回りに移動させたときに、搬入装置74は搬入位置C1に位置して開状態となったクランプ部41fの凹部41dに用紙P2を搬入し、用紙P2の下端をプレート41cと爪片41eとの間に位置させる。そして搬入装置74は搬送ベルト41bが凹部41d一つ分移動する毎に搬入位置C1に位置する新たな凹部41dに用紙P2を順次搬入する。
搬入位置C1においてクランプ部41fに用紙P2が搬入された後、搬送ベルト41bが移動してそのクランプ部41fが直線状態となった搬送ベルト41b上に位置すると、該クランプ部41fが閉状態となるので爪片41eとプレート41cとで用紙P2の下端が確実に把持される。
そしてさらなる搬送ベルト41bの移動によってクランプ部41fが搬出位置C2に位置すると、該クランプ部41fが開状態となり、搬出装置81の搬送ベルト81bが移動を開始して爪片41eとプレート41cとの間から用紙P2を搬出する。そして搬出装置81は搬送ベルト41bが凹部41d一つ分移動する毎に、同様にして搬出位置C2に到来したクランプ部41fから用紙P2を順次搬出する。なお搬出装置81のファン81cによる吸引は休むことなく継続する。
カール付与部42は、図6に示す如く、用紙P2の左右方向の略中央部を吸引搬送するように覆板40cに設置された搬入装置74の左右方向の両側に設置されており、図3、図6に示す如く、覆板40cに立設された取付板に両端を固定された支点軸42aと、該支点軸42aを中心にして図3の矢印M方向に回転可能に設けられた支持板42b’と、該支持板42b’と一体的に回転し、斜め下方に羽根状に延びるガイド部材42bとを備えている。
用紙P2は搬入装置74によって一面Aを斜め下側にして図5の搬入位置C1に吸引搬送されるときに、ガイド部材42bの斜め下側の下面に沿って搬入されるので、ガイド部材42の下面によって用紙P2の左右側部を中央部よりも下側つまり一面A側に向けて押し出されつつ下端が下端支持部41のクランプ部41fに挿入される。これにより図7に示す如く、用紙P2は左右方向の断面が一面Aを内側にして湾曲するようにカールさせた状態で下端支持部41に下端が支持される。
下端支持部41の搬送ベルト41bが移動すると用紙P2は、上記のようにカールが付与された状態で、ガイド部材42bの下面から離れた後、次の用紙P2が同様にしてガイド部材42bの下面に沿って搬入される。そしてガイド部材42bの下面から離れた用紙P2は、搬出位置C2に向けて送られ、搬出位置C2にて搬出装置81によって一面Aが吸引されて、第2ピックアップローラ82に向けて搬送される。搬出装置81は、用紙P2の先端を第2ピックアップローラ82に送り込むのに要する時間のみ図示しないモータによりプーリー81aを回転させる。
なおガイド部材42bは図3に示すように支点軸42aを中心として矢印M方向に回転可能にされているので、用紙Pが厚いときや硬いときには、ガイド部材42bを支点軸42aを中心として矢印M方向の時計回りに回転させ覆板40cとガイド部材42bとがなす角度θを小さくすることにより、ガイド部材42bの下面を図3の下方つまり用紙P2の移動方向(矢印F方向)に移動することができ、用紙Pが薄いときや軟らかいときには、同様にしてガイド部材42bを支点軸42aを中心として反時計回りに回転させ角度θを大きくすることにより、ガイド部材42bの下面を図3の上方つまり用紙P2の移動方向(矢印F方向)と逆の方向に移動することができるので、用紙Pの紙質に対応して上記カールさせるときの押し出し量を調整することができる。
このように貯留部4において、一面Aが印刷された複数枚の用紙P2が互いに所定間隔をあけて重ねた状態で保持されることにより、印刷された面の擦れや裏移りによる用紙P2の汚れを防止することができる。なお本実施形態では複数枚の用紙P2の下端中央のみを保持するので、用紙P2の上端及び/又は左右端は重ねられた別の用紙P2と接触してしまう場合があるが、この接触は、図2に示すように、用紙P2の自重によるものであり、用紙P2の一面Aが他の用紙P2と擦れて接触するものではないので、用紙P2が汚れる可能性は低い。また、上端及び左右端の接触部分には印刷が行われないことが多く、その意味からも用紙P2が汚れる可能性は低い。
また搬送ベルト41bが搬入位置C1から搬出位置C2に移動する間、印刷された面すなわち一面Aが他の用紙P2と接触しないことにより、インクを効率よく乾燥させることができる。
また搬出位置C2にて用紙P2を凹部41dから搬出するときに、複数枚の用紙P2は一枚ずつ隙間をあけて貯留されているので、用紙P2の多重搬送を防止するために用紙P2表面の密着を剥がす捌き機構を設ける必要がない。これにより捌き機構により用紙P2を捌くときに印刷面が擦れることにより生じる用紙P2の汚れの発生を防ぐことができる。
また貯留部4内部の用紙P2は、クランプ部41fによって下端中央を把持された状態で搬入位置C1から搬出位置C2まで搬送されるので、用紙P2を単に該用紙P2の自重で落下させて積載させた場合と比して、搬出位置C2における用紙P2の位置精度を確保することができる。
また本実施形態の貯留部4の保持機構は、用紙P2の下端のみを支持する簡単な構造であるため、貯留部4が占める空間を比較的小さくすることができる。
また用紙P2はガイド部材42によって左右方向の断面が湾曲するようにカールさせた状態に保持されるので、例えば一面Aに転写されたインクの量が比較的多くて用紙P2の紙中水分が高い場合であっても、用紙P2の放湿によって生じる上下方向に断面が湾曲するカールつまり用紙P2の搬送方向に沿ったカールが生じ難くなる。従って用紙P2の搬送方向に沿ったカールに起因して生じる搬送経路での用紙P2の紙詰まりの発生を防止することができて、片面が印刷された用紙であっても安定して搬送することができるので、両面孔版印刷装置1は高速給紙での印刷に対応することができる。
さらに、用紙P2は上述のように左右方向の断面が湾曲するようにカールされているので、下端を支持して立たせた状態にしても上下方向の断面が湾曲する腰折れが生じ難く、下端を支持するだけで立った状態を維持することができる。
次に以上のように構成された本実施形態の両面孔版印刷装置1の一連の動作について説明する。なお各動作は、装置ハウジング10に設けられた図示しない制御部からの指示により行われるものとする。
両面孔版印刷装置1は、図1に示す如く、給紙台2に積載された用紙P1をピックアップローラ71が予め設定された所定時間間隔で順次ピックアップして、第1タイミングローラ72へ搬送する。第1タイミングローラ72は、図示しない第1先端検出センサが用紙P1の先端を検出した時点に基づいて、順次所定のタイミングで用紙P1を第1の孔版印刷部3に搬送する。第1の孔版印刷部3は、搬送された用紙P1を1枚ずつ、第1プレスローラ32により第1ドラム31に押し付けながら第1ドラム31を1回転させて用紙P1の上側一面Aに、第1ドラム31に巻装された製版済孔版原紙M1の画像を順次印刷する。
次に反転装置73が、印刷された一面Aを上面にした用紙P2を、他面Bを吸引しながら円弧状の軌跡に沿って順次搬送することにより、一面Aが下面となるように反転しつつ貯留部4内に向けて搬送する。そして図2に示す如く、反転装置73によって順次搬送された用紙P2を、搬入装置74が上面つまり他面Bの左右方向の中央部を吸引しながら貯留部4内に下方に向けて順次搬入する。このとき搬入装置74によって搬入される用紙P2は、図6に示す如く、他面Bの左右側部が上述したガイド部材42bの下面に当接しながら搬入される。
上記のように搬入装置74によって貯留部4内に搬入された用紙P2は、図5に示す如く、搬入位置C1の凹部41dに挿入される。このとき図示しないモータが、搬入装置74による用紙P2の搬入と同期して凹部41dが搬入位置C1に位置するようにプーリー41aを回転させるので、搬入位置C1に搬入された用紙P2は順次搬入位置C1に位置する新たな凹部41dに挿入され、矢印Fで示す搬送移動方向に移動せしめられる。
これにより下端支持部41は、搬入位置C1の凹部41dにおいて搬入された用紙P2の下端を支持し、搬送ベルト41bが矢印Fの搬送移動方向に移動すると共にクランプ部41fが用紙P2bの下端中央を上述したようにして把持するので、搬入位置C1に順次搬入される複数枚の用紙P2を1枚ずつクランプ部41fによって把持できる。
搬入位置C1の凹部41dにて支持された用紙P2は、図6に示す如く、ガイド部材42bによって上面つまり他面Bの左右側部が中央部よりも下方向つまり一面A側に押し付けられているので、図7に示すように一面Aを内側にして湾曲したカール状態となり、用紙P2はカール状態を維持したまま搬送ベルト41bの移動に伴ってクランプ部41fに下端中央が把持されつつ搬送ベルト41bと共に移動する。
クランプ部41fにより1枚ずつ把持された複数枚の用紙P2は、搬送ベルト41bの移動により搬出位置C2に位置すると、上述したようにしてクランプ部41fから解放される。このとき用紙P2の搬出位置C2への到来と同期して、図2に示す搬出装置81のプーリー81a及びファン81cを図示しないモータにより回転させることにより、搬出装置81で、クランプ部41fから解放された用紙P2の下面つまり一面Aを吸引して該用紙P2を第2の孔版印刷部51に向けて搬出する。
このとき用紙P2は、搬入位置C1から搬出位置C2へ移動するために要する時間すなわち貯留部4における貯留時間にて、一面Aに転写されたインクを乾燥させることができるので、搬出装置81によって一面Aを吸引して搬送するときに搬送ベルト81bとの接触によって用紙P2の一面が汚れるのを防ぐことができる。
なお用紙P2の一面Aの印刷率に基づいて、つまり一面Aの全面積に対する該一面Aに占める実印刷面積の割合が高い場合には、一面Aへのインクの転写が多いので貯留時間を長くし、実印刷面積の割合が低い場合には、一面Aへのインクの転写が少ないので貯留時間を短くするように貯留時間を制御するようにしてもよい。この印刷率は、用紙P2の一面Aの全面積に対する実印刷面積の割合を意味するものであり、例えば孔版印刷の場合、第1の孔版印刷部3により印刷する画像を表わす白黒の二値画像データ(黒画像データは孔版原紙に穿孔を行う画像データ、白画像データは孔版原紙に穿孔を行わないデータ)の全画像データ数に対する黒画像データ数の割合で示すことができる。
貯留時間の制御は、先ず両面印刷を開始する前に上述のようにして第1の孔版印刷部3における印刷率を算出しておき、この印刷率が所定値以下のとき、即ち乾燥時間が比較的少なくてもよいときは、搬送ベルト41bの移動速度つまり用紙P2の移動速度を図5に示す場合に比して2倍にすることによって例えば1つおきのクランプ部41fの凹部41dに用紙P2の下端が挿入されるようにする。なお搬送ベルト41bの移動速度は、図示しないモータを制御してプーリー41aの回転速度を変更することにより変更することができる。
そして上記のように1凹部おきに用紙P2を把持するように下端支持部41を駆動すると、用紙P2の搬送速度が速くなることから、用紙P2が貯留部4に貯留する時間が短くなり、印刷率が低い場合に無駄な乾燥時間を省略して用紙P2を搬出位置C2から搬出することができる。
また上記のように搬送ベルト41bの移動速度はモータを制御するだけで変更することができるので、複雑な制御を要することなく貯留時間すなわち乾燥時間を制御することができる。
以上のように貯留部4にて一面Aに転写されたインクが乾燥された用紙P2を搬出装置81が貯留部4から搬出した後、第2ピックアップローラ82が搬出装置81により搬出された用紙P2を順次ピックアップし、第2タイミングローラ83へ搬送する。第2タイミングローラ83は、図示しない第2先端検出センサが用紙P2の先端を検出した時点に基づいて、順次所定のタイミングで用紙P2が第2の孔版印刷部5に到達するように搬送する。第2タイミングローラ83は用紙P2を第2の孔版印刷部5に所定のタイミングで送り込むため、第2先端検出センサが用紙P2の先端を検出した時点に基づいて第2タイミングローラ83の回転速度が制御される。
なお第2ピックアップローラ82は、搬出装置81のプーリー81aの回転と略同時にモータによって回転させておき、第2ピックアップローラ82は搬出装置81のプーリー81aの回転が開始されてから用紙P2の先端を第2タイミングローラ83に送り込むのに要する時間のみモータを回転させてピックアップした用紙P2を第2タイミングローラ83向けて搬送し、その後モータによる回転を停止させて第2タイミングローラ83による用紙P2の搬送に伴って連れ回りする。
また第2タイミングローラ83は、第2ドラム51が所定の角度(回転位置)に達したときにモータによって回転されて、用紙P2の先端が第2ドラム51と第2プレスローラ52との間に送り込まれ、第2プレスローラ52が第2ドラム51側に移動すると、モータによる回転を停止させて、第2ドラム51と第2プレスローラ52による用紙P2の搬送に伴って連れ回りする。
第2の孔版印刷部5は、搬送された用紙P2の上側の面すなわち他面Bに、第2ドラム51に巻装された製版済孔版原紙M2の画像を順次印刷する。続いて排出装置84が、印刷された他面Bを上面にした用紙P3を、一面Aを吸引しながら順次排紙台6に搬送する。
以上のように給紙部7Aによる用紙P1の第1の孔版印刷部3への給紙、第1の孔版印刷部3による用紙P1の一面Aへの印刷、第1の搬送部7Bによる一面Aが印刷済の用紙P2の貯留部4への搬送、第2の搬送部8による用紙P2の第2の孔版印刷部5への搬送、及び、第2の孔版印刷部5による用紙P2の他面Bへの印刷は、各用紙Pに対して予め定められた所定時間間隔で順次連続的に行われる。なお用紙Pに対して順次行われる前記連続的な動作を、以下、一連の印刷動作という。
本発明において特徴的なのは、装置ハウジング10に設けられた図示しない印刷制御部が、用紙P2が搬出装置81により貯留部4から搬出されてタイミングローラ83に搬送されるまでの搬送経路において、搬送遅れ検出部S1により用紙P2の搬送遅れが検出されたときに、給紙部7Aによる用紙P1の第1の孔版印刷部3への給紙を停止させることである。図8は印刷制御部による一連の制御処理のフローチャート、図9A、図9Bは印刷制御時の下端支持部41の動作の一例である。なお図9A、図9Bの下端支持部41は、便宜上図は異なっているが、上記実施形態の下端支持部41と同様の構造のものである。
印刷制御部は、先ず図8に示す如く、給紙部7Aに各用紙P1を第1の孔版印刷部3へ順次給紙させて(ステップS1)、上述のように第1の孔版印刷部3による用紙P1の一面Aへの印刷、第1の搬送部7Bによる一面Aが印刷済の用紙P2の貯留部4への搬送、貯留部4内での搬入位置C1から搬出位置C2への用紙P2の搬送、第2の搬送部8による用紙P2の第2の孔版印刷部5への搬送、及び、第2の孔版印刷部5による用紙P2の他面Bへの印刷すなわち一連の印刷動作を順次行わせると共に、印刷制御部は搬送遅れ検出部S1が搬送遅れを検出したか否かを判別し(ステップS2)、搬送遅れが検出されていない場合(ステップS2;NO)には、給紙部7Aによる第1の孔版印刷部3への用紙P1の給紙を継続させて(ステップS4)、前記一連の印刷動作を継続させる。
一方、ステップS2にて搬送遅れが検出された場合(ステップS2;YES)には、印刷制御部は、遅れ原因判断部S2が第2の位置s2に検出対象である用紙P2が存在していないことを検出したか否か、すなわち搬送遅れ検出部S1による搬送遅れの検出は、検出対象である用紙P2が無いことによるものであるか否か判別する(ステップS3)。
そして搬送遅れ検出部S1による搬送遅れの検出が、検出対象である用紙P2が無いことによる場合(ステップS3;YES)には、給紙部7Aによる第1の孔版印刷部3への用紙P1の給紙を継続させ(ステップS4)、前記一連の印刷動作を継続させる。
一方、搬送遅れ検出部S1による搬送遅れの検出が、検出対象である用紙P2が無いことによらない、つまり用紙P2の搬送遅れによるものである場合(ステップS3;NO)には、印刷制御部は、給紙部7Aによる第1の孔版印刷部3への用紙P1の給紙を1回停止させる(ステップS7)。このとき第1の孔版印刷部3にて現在印刷中の用紙P1については、印刷が完了するまで第1の孔版印刷部3による印刷を継続させて、次回の第1の孔版印刷部3による印刷は、用紙P1が給紙されないため、第1ドラム31の回転を停止せずに、第1プレスローラ32による用紙P1の一面Aの孔版原紙M1への押し付け、つまり孔版印刷のみを停止する。
なお搬送遅れ検出部S1が搬送遅れを検出したときには、第1の位置s1にて用紙P2に搬送遅れが生じていることにより、搬送遅れが生じた用紙P2の先端は所定のタイミングで第2タイミングローラ83に到達できないので、該用紙P2を所定のタイミングで第2ドラム51に同期させて第2孔版印刷部58へ搬送することができない。従って、第2の孔版印刷部5は、第2ドラム51の回転を停止せずに、第2プレスローラ52による用紙P2の他面Bの孔版原紙M2への押し付け、つまり孔版印刷のみを停止する。
このように搬送遅れが検出されたときは、第1プレスローラ32及び第2プレスローラ52による前記押し付けの動作は行わないが、第1ドラム31及び第2ドラム51の回転動作は継続されているので、第1の孔版印刷部3及び第2の孔版印刷部5の動作は継続しているものとする。
そして印刷制御部は、搬送遅れ検出部S1が、ステップS3にて搬送遅れの原因判断の対象となった用紙P2つまり搬送遅れ検出の対象となった用紙P2の次の用紙P2の搬送遅れを検出したか否かを判別する(ステップS8)。そして前記次の用紙P2の搬送遅れが検出された場合(ステップS8;YES)には、印刷制御部はステップS3へ処理を移行して、以降の処理を繰り返す。
一方、ステップS8にて前記次の用紙P2の搬送遅れが検出されなかった場合(ステップS8;NO)には、印刷制御部は給紙部7Aによる第1の孔版印刷部3への用紙P1の給紙を再開させる(ステップS9)。
そして次に印刷制御部は、給紙部7Aが予め設定された所定枚数の用紙P1を給紙したか否かを判別し(ステップS5)、所定枚数の給紙が行われていない場合(ステップS5;NO)には、ステップS1へ処理を移行して以降の処理を繰り返す。一方、所定枚数の給紙が終了した場合(ステップS5;NO)には、印刷制御部は、給紙部7Aによる第1の孔版印刷部3への用紙P1の給紙を停止させて(ステップS6)、装置ハウジング10内部の用紙Pに対して上記一連の印刷動作を行わせる。このようにして印刷制御部は印刷制御を行う。
上記のように印刷制御が行われると貯留部4の下端支持部41では、搬送遅れが検出されない正常な給紙動作では、図9Aに示すような搬入及び搬出動作が繰り返し行われる。図9A(1)に示す如く、搬入位置C1の凹部41dに用紙P2−Aが搬入された搬送ベルト41bが、用紙搬送移動方向F(以下、移動方向Fという)に1ピッチ分移動した後、搬出位置C2の凹部41dから図2に示す搬出装置81により用紙P2−Bが搬出される。なお前記用紙P2−Aが搬入された凹部41dから用紙P2−Bが搬出される凹部41dに至る範囲の搬送ベルト41bの各凹部41dにはそれぞれ用紙P2が挿入されているものとする。
そして図9A(2)に示す如く、用紙P2−Bが正常に搬出されると、図9A(3)に示す如く、搬入位置C1の凹部41dに搬入装置74により次の用紙P2−Cが搬入され、図9A(4)に示す如く、搬送ベルト41bが移動方向Fに1ピッチ分移動して、用紙P2−Bよりも移動方向Fの1ピッチ上流側の凹部41dに挿入されていた用紙P2−Dが、搬出位置C2の凹部41dに位置し、搬出装置81により上記と同様に用紙P2−Dが搬出される。
また搬送遅れが検出されたときの給紙動作では、図9Bに示すような搬入及び搬出動作が繰り返し行われる。図9B(1)に示す如く、搬出位置C2の凹部41dから搬出された用紙P2−Dの搬送遅れが検出されると、図1の給紙部7Aによる第1の孔版印刷部3への用紙P1の給紙は1回停止されるが、給紙部7Aにより既に給紙されて第1の孔版印刷部3にて一面Aが印刷された用紙P2−Eは、図9B(2)に示す如く、搬入位置C1の凹部41dに搬入される。
このとき搬送遅れが検出された用紙P2−Dは、その先端が第2タイミングローラ83に到達する前に、第2ピックアップローラ82のモータによる回転が停止されているので、用紙Pのサイズ及び搬送経路の長さにもよるが、本実施形態では用紙P2−Dの後端は搬出装置8の搬送ベルト81bに位置することになり(図2参照)、用紙P2−Dが貯留部4から搬出されていない状態で前記用紙P2−Eが貯留部4に搬入されるので、貯留部4内部には正常搬送時よりも用紙P2が一枚多く貯留されてしまう。
そして図9B(3)に示す如く、搬送ベルト41bが移動方向Fに1ピッチ分移動すると、搬出位置C2にはこの用紙P2−Dと、用紙P2−Dよりも移動方向Fの1ピッチ上流側の凹部41dに挿入されていた用紙P2−Fとが存在することになり、搬出装置81は図9A(4)に示す如く、搬出位置C2の下流側に位置する方の用紙P2−Dのみを吸引して搬出する。
このとき搬出装置81の搬出方向Eと略直交する方向の両側(図2中、搬出装置81の紙面奥側及び紙面手前側)には図示しないファンが取り付けられていて、該ファンが、搬出装置81のファン81cにより搬送ベルト81bに用紙P2−Dが吸引されたときに、吸引された用紙P2−Dと用紙P2−Fとの間に風を吹き付けることにより用紙P2−Dと用紙P2−Fとを剥離し、用紙P2が重送されるのを防止する。
なお用紙P2-Dは、搬送遅れは生じているものの、その先端が第1の位置s1と第2の位置s2との間に位置するまではすでに搬送されているため、搬出装置81及びピックアップローラ82による再度の搬送による第2タイミングローラ83への到達時間は短くなるが、ピックアップローラ82は用紙P2−Dが第2タイミングローラ83に到達すると回転が停止されるので、用紙P2−Dの搬送は第2タイミングローラ83にて一旦停止することとなり、第2タイミングローラ83はその後用紙P2−Dを所定のタイミングで第2の孔版印刷部5へ搬送することができる。
また搬送遅れが検出されたときと搬送遅れが検出されていないときとは、どちらの場合も第2タイミングローラ83を所定のタイミングで回転駆動する動作が継続されているので、第2の搬送部8の動作は継続しているものとする。
そして用紙P2−Dが正常に搬送されると、本来ならば搬入装置74により搬入位置C1の凹部41dに用紙P2が搬入されるが、給紙部7Aが給紙を1回停止しているため、該停止したときの分の用紙P2が搬入位置C1の凹部41dに挿入されないまま、図9B(5)に示す如く、搬送ベルト41bが移動方向Fに1ピッチ分移動するので、搬入位置C1よりも移動方向Fの1ピッチ下流側の凹部41d’は用紙P2が挿入されていない状態となる。
また搬出位置C2の凹部41dに挿入されていた用紙P2−Fは、搬送ベルト41bの移動に伴って搬出位置C2よりも移動方向Fの1ピッチ下流側の第2の搬出位置C2’に移動し、搬出装置81はこの第2の搬出位置C2から用紙P2−Fを吸引して搬出する。搬出装置81による用紙P2の搬出は、今後、第2の搬出位置C2’で行うことになる。
搬出装置81により用紙P2−Fの搬出が完了すると、次に搬入装置74が搬入位置C1の凹部41dに用紙P2−Hを搬入し、以後、予め設定された所定枚数の用紙P1の両面印刷が終了するまで、上記動作が繰り返し行われる。
そして上記動作が繰り返されるうちに、つまり搬送ベルト41bが移動方向Fへの移動を1ピッチずつ行い、上述した搬入及び搬出を行ううちに、図9B(6)に示す如く、上述した用紙P2が挿入されなかった凹部41d’が第2の搬出位置C2’に位置すると、搬出装置81は凹部41d’が位置する第2の搬出位置C2’ではなく、用紙P2が挿入されている凹部41dから用紙P2を搬出する。
すなわち搬出装置81による用紙P2の搬出は、給紙部7Aによる給紙が停止される前と同じ通常の搬出位置C2で行うことになり、搬送遅れが検出される前の搬入及び搬出動作に戻すことができる。このとき搬出装置81が搬送した用紙P2にさらなる搬送遅れが生じていなければ、貯留部4には予め設定された枚数の用紙P2のみが貯留されることになる。
以上のように、本実施形態の両面孔版印刷装置1によれば、第2の搬送部8による用紙P2の搬送遅れが生じたときに、貯留部4に貯留される用紙P2の枚数が一時的に増加することにより貯留部4からの用紙P2の搬出動作が不安定な状態になるが、給紙部7Aによる第1の孔版印刷部3への用紙P1の給紙を停止させることによって、貯留部4に貯留される用紙P2の枚数を元に戻すことができ、前記不安定な状態を可及的速やかに解消することができるので、搬送遅れが発生しても連続的な機械動作を止めることなく所定枚数の用紙P1の両面印刷が終了するまで連続して安定した印刷を行うことができて、印刷生産性が低下するのを防止することができる。
なお本実施形態では印刷制御部は、搬送遅れ検出部S1により搬送遅れが検出されたときに給紙部7Aによる第1の孔版印刷部3への用紙P1の給紙を1回停止させ、次回の給紙から給紙を再開させたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば2回、3回と停止させた後で給紙を再開させるように制御してもよいし、貯留部4内の用紙P2が全て搬出された後に給紙を再開させるように制御してもよいし、適宜変更することができる。
次に他の実施形態の両面孔版印刷装置について説明する。本実施形態の両面孔版印刷装置は、上述した実施形態の両面孔版印刷装置1の搬入装置74に、ファン74cにより搬送ベルト74bに吸引された用紙P2を剥離する剥離部材(剥離手段)75をさらに備えたものである。図10は、本実施形態の両面孔版印刷装置の貯留部4への用紙P2の搬入から搬出までの工程を説明する図である。なお図10のクランプ部41fは、便宜上図は異なっているが、上記実施形態のクランプ部41fと同様の構造のものである。
剥離部材75は、図10に示す如く、用紙P2を吸引搬送する側の搬送ベルト74bの近傍に配置され、図示しないモータにより回転される回転軸75aと、一端部が回転軸75aに接続されて回転軸75aの回転と共に回転する剥離爪75bとから構成されている。この剥離部材75による剥離動作は図示しない剥離制御部(剥離制御手段)によって制御されるものであり、この剥離動作について以下説明する。
図10(a)に示す如く、用紙P2が搬入装置74により吸引搬送され該用紙P2の下端中央が凹部41dに挿入されて搬入位置C1に到達すると、図5に示す搬送ベルト41bの移動により凹部41dが搬入位置C1から搬出位置C2に向かって移動を開始し、この移動に連動してクランプ部41fが閉動作を開始する。
そして搬送ベルト41bが1ピッチ分移動して図10(b)に示すようにクランプ部41fが閉状態となって用紙P2を把持すると、該把持と略同時に、搬入装置74の搬送ベルト74bを停止させると共に回転軸75aを回転させ、図10(c)に示すように剥離爪75bによって用紙P2を搬送ベルト74bから剥離する。
そして用紙P2が搬送ベルト74bから剥離されると直ぐに、図10(d)に示す如く、回転軸75aを逆回転させ剥離爪75bを用紙搬入の妨げにならない位置まで移動させ、搬入装置74は次の用紙P2を搬入して凹部41dに挿入し、図10(a)から図10(d)に示す動作が繰り返される。
以上のような剥離動作を行うことにより、搬送ベルト74bから用紙P2を確実に剥離することができるので、搬入装置74により次回搬送すべき用紙P2が搬送されてきたときにこの次回の用紙P2と前回の用紙P2との衝突による跳ね返り等に起因する用紙P2の位置ズレを防止することができる。また次回の用紙P2の一面Aが前回の用紙P2により擦られてしまうのを防止することもできる。これにより搬入装置74による用紙P2の搬送を確実に安定して行うことができる。
またクランプ部41fにより用紙P2の下端中央が把持されている状態で、剥離動作を行うので、搬送ベルト74bから用紙P2を勢いよく剥離したとしても用紙P2の位置ズレを抑えることができる。なお図10(b)に示すようにクランプ部41fが1ピッチ分移動して用紙P2の下端中央を把持したとき、搬入装置74のファン74cは回転しており用紙P2は搬送ベルト74bに吸引されているので、用紙P2はクランプ部41fに把持された下端中央が搬送ベルト74bに吸引されている搬送方向の中央部よりも搬送ベルト41bの移動方向下流側に湾曲することになるが、実際にはクランプ部41fのピッチ距離は小さく形成されているので、この湾曲は僅かなものであり、用紙Pの搬送時に問題となる位置ズレを招来する可能性は低い。
なお上述した実施形態の両面孔版印刷装置1は上記構成としたが、本発明の両面印刷装置はこれに限られるものではなく、例えば装置ハウジング10の上側に、原稿の画像を読み取るスキャナ部や、スキャナ部で読み取った原稿画像の画像データに基づいて生成された孔版画像データに基づいて孔版原紙を穿孔して製版を行う製版部等を備えていてもよい。
本発明の両面印刷装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。