JP5208738B2 - 無水結晶β−マルトースとその製造方法並びに用途 - Google Patents

無水結晶β−マルトースとその製造方法並びに用途 Download PDF

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Description

本発明は、無水結晶β−マルトースとその製造方法並びに用途に関し、詳細には、154乃至159℃に融点を有する新規無水結晶β−マルトースと、含水結晶β−マルトースを有機溶媒中で室温以上の温度で保持して脱水する工程を含んでなることを特徴とする当該無水結晶β−マルトースの製造方法、並びに当該無水結晶β−マルトースの含水又は含アルコール組成物などの固化又は粉末化基材としての用途に関するものである。
マルトースは、2分子のグルコースがα−1,4結合で結合した還元性二糖であり、麦芽糖とも呼ばれている。マルトースは、還元末端、つまりアルデヒド基を有するため、異性体としてα−アノマー(α−マルトース)とβ−アノマー(β−マルトース)とが存在している。また、結晶マルトースとしては、1含水結晶(以下、単に「含水結晶」と呼称する)と無水結晶とが知られている。含水結晶マルトースは、通常、β−マルトースとして得られ、工業的には、β−マルトース含水結晶含有粉末が製造され市販されている。
一方、水分5質量%未満のマルトースの濃縮液からは無水結晶が晶出(特公平5−43360号公報を参照)する。この無水結晶マルトースは、α−アノマーを55乃至80質量%、β−アノマーを20乃至45質量%含んでいることから、その実体はα/β複合体結晶であるものの、α−アノマーの含量が高いことから、一般には、「無水結晶α−マルトース」と呼ばれている(特公平5−43360号公報及び特公平7−10341号公報などを参照)。無水結晶α−マルトースは、吸湿して安定な含水結晶β−マルトースに変わり、含水結晶β−マルトースが相対湿度90%以下でほとんど吸湿せず安定であることから、無水結晶α−マルトースは含水食品の粉末化に応用されている(特公平5−59697号公報及び特公平7−10341号公報を参照)。なお、上記の無水結晶α−マルトース粉末は登録商標『ファイントース』として株式会社林原商事より市販されている。
一方、特公平5−59697号公報及びジェイ・イー・ホッジ(J.E.Hodge)ら、『Cereal Science Today』、第17巻、第7号、180乃至188頁(1972年)には、無水結晶β−マルトースと、含水結晶β−マルトースを減圧下で加熱・脱水して無水結晶β−マルトースを調製する方法が開示されている。しかしながら、この無水結晶β−マルトースは吸湿し易いという欠点があるため、工業的に生産されるに至っていない。また、ジェイ・イー・ホッジ(J.E.Hodge)らの文献において、上記の方法で得られる無水結晶β−マルトースは、融点120乃至125℃を示すと報告されている。しかしながら、125℃よりもさらに高い温度に融点を有する無水結晶β−マルトースは知られていない。
本発明は、新規な無水結晶マルトースとその製造方法並びに用途を提供することを課題とする。
本発明者らは、結晶糖質の製造方法に着目して、鋭意研究を続けてきた。その研究の過程で、含水結晶β−マルトースを有機溶媒中で室温以上の温度に保持して脱水して得た無水結晶マルトースが、意外にも、従来の無水結晶α−マルトース(α/β複合体無水結晶マルトース)の融点(168乃至175℃)より低く、且つ、ジェイ・イー・ホッジ(J.E.Hodge)ら、『Cereal Science Today』、第17巻、第7号、180乃至188頁(1972年)記載の無水結晶β−マルトースの融点(120乃至125℃)よりも高い、154乃至159℃に融点を有する新規な無水結晶β−マルトースであることを見出した。また、この新規無水結晶β−マルトースが、既知の無水結晶β−マルトースと異なり吸湿性が低く、粉末結晶としての取り扱いが容易であるとの優れた作用効果を備えていることを見出した。
さらに、本発明者らは、この新規無水結晶β−マルトースが、意外にも、含水又は含アルコール組成物などの固化又は粉末化基材として、既知の無水結晶α−マルトースよりも有用性を有することを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づき、新規無水結晶β−マルトースとその製造方法並びに用途を確立することにより本発明を完成した。
すなわち、本発明は、154乃至159℃に融点を有する新規無水結晶β−マルトースと、含水結晶β−マルトースを有機溶媒中で室温以上の温度に保持して脱水する工程を含んでなる当該無水結晶β−マルトースの製造方法並びにその含水又は含アルコール組成物などの固化又は粉末化基材としての用途を提供することにより上記課題を解決するものである。
本発明の無水結晶β−マルトースは、従来の無水結晶β−マルトースよりも吸湿性が低いという優れた特徴を有していることから粉末結晶としての取り扱いが容易である。また、本発明によれば、含水結晶マルトースを有機溶媒中で脱水する工程を含んでなる製造方法により、新規無水結晶β−マルトースを容易に製造することができる。さらに、本発明の無水結晶β−マルトースは、比較的高濃度に溶解させると、アノマーがβ型であるがゆえに速やかに含水結晶β−マルトースを晶出し、この晶出により含水組成物を固化することができ、また、本発明の無水結晶β−マルトースの粉末は、吸湿させると粉末の形態を維持したまま、速やかに安定な含水結晶β−マルトースに変換される。さらに、本発明の無水結晶β−マルトースの粉末は多孔性で大きい細孔体積を有することから、アルコールなどを比較的多量保持することができる。これらの特性から、本発明の無水結晶β−マルトースは、含水又は含アルコール組成物などの固化又は粉末化基材として、これまで当該分野で利用されてきた無水結晶α−マルトースよりも有利に、各種飲食品、化粧品及び医薬品用途に利用することができる。
エタノール中で70℃、480分間処理することにより得た無水結晶マルトースのSEM写真(倍率100倍)である。 エタノール中で70℃、480分間処理することにより得た無水結晶マルトースのSEM写真(倍率2,000倍)である。 対照1の含水結晶マルトースのSEM写真(倍率100倍)である。 対照1の含水結晶マルトースのSEM写真(倍率2,000倍)である。 対照2の無水結晶α−マルトースのSEM写真(倍率100倍)である。 対照2の無水結晶α−マルトースのSEM写真(倍率2,000倍)である。 対照3の無水結晶β−マルトースのSEM写真(倍率100倍)である。 対照3の無水結晶β−マルトースのSEM写真(倍率2,000倍)である。 エタノール変換無水結晶マルトースの粉末X線回折図を対照1の含水結晶β−マルトース、対照2の無水結晶α−マルトース及び対照3の無水結晶β−マルトースの粉末X線回折図と比較した図である。 エタノール変換無水結晶マルトースの示差走査熱量計(DSC)における吸熱パターンを対照2の無水結晶α−マルトース及び対照3の無水結晶β−マルトースの示差走査熱量計(DSC)における吸熱パターンと比較した図である。 エタノール変換無水結晶マルトースのアノマー比を調べたGLCクロマトグラムである。 水銀圧入法で測定したエタノール変換無水結晶β−マルトースの細孔分布を、対照2の無水結晶α−マルトース及び対照3の無水結晶β−マルトースの細孔分布と比較した図である。 エタノール変換無水結晶β−マルトース(本発明)と無水結晶α−マルトース(対照)の固化基材としての有用性を脱イオン水の固化試験により比較(試料の添加・溶解後2時間)した写真である。 エタノール変換無水結晶β−マルトース(本発明)と無水結晶α−マルトース(対照)の固化基材としての有用性を脱イオン水の固化試験により比較(試料の添加・溶解後20時間)した写真である。 エタノール変換無水結晶β−マルトース(本発明)と無水結晶α−マルトース(対照)の粉末化基材としての有用性を脱イオン水の添加試験により比較した写真である。 エタノール変換無水結晶β−マルトース(本発明)と無水結晶α−マルトース(対照)の粉末化基材としての有用性をエタノールの添加試験により比較した写真である。
符号の説明
図9において、
a:エタノール変換無水結晶マルトース(本発明)
b:無水結晶β−マルトース(対照3)
c:無水結晶α−マルトース(対照2)
d:含水結晶マルトース(対照1)
↓:エタノール変換無水結晶マルトースに特徴的な回折ピーク
図10において、
a:エタノール変換無水結晶マルトース(本発明)
b:無水結晶β−マルトース(対照3)
c:無水結晶α−マルトース(対照2)
図11において
a:マルトースのα−アノマー(α−マルトース)
b:マルトースのβ−アノマー(β−マルトース)
図12において、
○:エタノール変換無水結晶β−マルトース(本発明)
●:無水結晶β−マルトース(対照3)
△:無水結晶α−マルトース(対照2)
図13及び図14において、
a〜e:エタノール変換無水結晶β−マルトース(本発明)を18.8g、13.3g、11.5g、10.0g又は8.2g添加・溶解した試料
a´〜d´:無水結晶α−マルトース(対照)を18.8g、13.3g、11.5g又は10.0g添加・溶解した試料
図15において、
a:10gのエタノール変換無水結晶β−マルトース(本発明)に脱イオン水を1.25ml添加・混合した試料
b:10gの無水結晶α−マルトース(対照)に脱イオン水を1.25ml添加・混合した試料
図16において、
a:10gのエタノール変換無水結晶β−マルトース(本発明)にエタノールを6ml添加・混合した試料
b:10gの無水結晶α−マルトース(対照)にエタノールを6ml添加・混合した試料
本発明の無水結晶β−マルトースとは、154乃至159℃に融点を有する新規な無水結晶β−マルトースを意味する。本発明の無水結晶β−マルトースは、通常、マルトース異性体としてのβ−アノマー(β−マルトース)含量が90%以上を示す。また、本発明の無水結晶β−マルトースは、その粉末X線回折図において回折角(2θ)7.8°、19.5°、20.7°及び22.6°に、従来の含水結晶β−マルトース、無水結晶α−マルトース又は無水結晶β−マルトースでは認められない特徴的なピークを示す。
本発明の無水結晶β−マルトースは、多数の細孔を有する多孔性結晶の形態を有する場合がある。ここで言う多孔性結晶とは、具体的には、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と略称する)を用いて、例えば、倍率2,000倍で写真撮影すると、多数の細孔が認められる結晶糖質を意味する。多孔性結晶は、その物理的特性として、比較的大きな比表面積と特有の細孔分布を有している。本発明の無水結晶β−マルトースの多孔性結晶は、具体的には、窒素ガスを用いたガス吸着法により測定される比表面積が1m/g以上であって、且つ、水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔が、0.1ml/g以上の細孔体積を有し、細孔径5μm未満に明確なピークを示すという特有の物理的特性を有している。
本発明の無水結晶β−マルトースは、含水結晶β−マルトースを有機溶媒中で室温以上の温度で脱水処理することにより製造することができる。有機溶媒としては、通常、アルコール、アセトンなど水と混ざり合う比較的極性の高い有機溶媒が好ましく、望ましくは、アルコール含量85%以上のアルコール水溶液、さらに望ましくは、エタノール含量85%以上のエタノール水溶液が好適に用いられる。
含水結晶β−マルトースを脱水処理するに際し、含水結晶β−マルトースと有機溶媒の比率は、その目的が達成される範囲であれば特に限定されない。有機溶媒としてエタノールを用いる場合は、含水結晶β−マルトースの質量に対し、容量で、通常、5倍量以上、望ましくは、10倍量以上を用いるのが好適である。脱水処理の温度は処理時間を考慮すると、通常、40℃以上、望ましくは、50℃以上、さらに望ましくは、60℃以上の温度で行うのが好適である。脱水処理においては、脱水を効率よく行うために含水結晶β−マルトースを懸濁した有機溶媒を攪拌するのが望ましい。また、脱水処理に用いた有機溶媒は水を含んだ溶媒となるものの、蒸留することにより再利用することができる。
本発明の無水結晶β−マルトースは、従来の無水結晶β−マルトースが吸湿し易く、粉末結晶として取り扱うのが困難であるのに対し、吸湿性が低く粉末結晶として取り扱い易いという優れた特徴を有している。また、比較的高湿度の条件下で吸湿させると、従来の無水結晶β−マルトースや無水結晶α−マルトースと同様に、含水結晶β−マルトースに変換するものの、従来の無水結晶マルトースに見られるように過度の吸湿を示すことがない。さらに、本発明の無水結晶β−マルトースの多孔性結晶は、細孔を多数有し、比表面積が大きいため、従来の含水結晶β−マルトースに比べ、水への溶解性に優れ、とりわけ、冷水に対して速やかに溶解させることができる。
本発明の無水結晶β−マルトースは、含水結晶β−マルトースの飽和濃度を超えた比較的高濃度になるよう水に溶解させると、一旦、溶解した後、速やかに含水結晶β−マルトースを晶出し、ブロック状に固化するという特徴を有する。実施例において後述するように、従来から含水組成物の粉末化に使用されてきた無水結晶α−マルトースは、同様に処理しても、含水結晶β−マルトースの晶出及び固化に比較的高濃度、長時間を要するのに対して、本発明の無水結晶β−マルトースは、より低濃度で、含水結晶β−マルトースを晶出し、固化を速やかに行うことができる。この本発明の無水結晶β−マルトースの特性は、各種の含水組成物、例えば、日本酒、洋酒などの酒類、果物や野菜などのジュース類、シラップ類や、生クリームなどの含脂肪含水物をブロック状に固化させることができ、食品分野をはじめとする種々の分野で有用である。
また、本発明の無水結晶β−マルトースは、水分を吸収させると、粉末の形態を保持したままで、速やかに含水結晶β−マルトースに変換されるという特性を有しており、粉末ジュースなどを容易に調製することができる。さらに、本発明の無水結晶β−マルトースの多孔性結晶は、細孔を多数有し、比表面積が大きく、大きな細孔体積を有するため、粉末形態のままアルコールや油脂などを比較的多量保持する性質を有していることから、この特性を利用して粉末アルコール、粉末油脂などを容易に調製することができる。
さらに、本発明の無水結晶β−マルトースの多孔性結晶は、その物理的特性を生かして、様々な用途に利用できる。例えば、多孔性結晶粒子の細孔に各種の有用物質を収容することにより有用物質を安定化したり、粒子の細孔に揮発性の香料を収容した後、コーティングして細孔表面を塞ぐことにより、マイクロカプセルとしても使用することができる。また、この多孔性結晶糖質は、その細孔に空気を含んでいるため、起泡性を有しており、きめ細かいホイップクリームなどの調製に利用できる。また、本発明の無水結晶β−マルトースが、従来の含水結晶β−マルトース又は無水結晶α−マルトースと同様に、飲食品、化粧品、医薬部外品及び医薬品分野で幅広く利用できることはいうまでもない。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
<無水結晶マルトースの調製>
攪拌機及び温度計を装着した2L容丸底フラスコに、エタノールを1,200ml入れ、70℃に予熱した後、市販の含水結晶β−マルトース(商品名「マルトースOM」、株式会社林原製、マルトース純度98%以上)を120g投入し、回転数170rpmで攪拌した。一定の時間毎に結晶懸濁液約100mlを採取し、バスケット型遠心分離機で固液分離した後、結晶をバットに広げて50℃の通気乾燥機内で20分乾燥することにより、結晶表面に付着したエタノールを除去した。得られた結晶の水分含量は、常法のカールフィッシャー法にて測定した。結晶の水分含量の経時変化を表1に示す。
表1から明らかなように、含水結晶β−マルトースは、70℃で480分のエタノール中での脱水処理(エタノール変換法)により水分含量が1質量%未満にまで低下し、無水結晶マルトースに変換されることが判明した。480分処理して得られた無水結晶マルトース標品の水分含量及び粉末X線回折図形に基づくルーランド(Ruland)の方法で求めた結晶化度はそれぞれ0.32質量%及び78%であった。以下、エタノール中で加熱・脱水処理して得た無水結晶マルトースを、従来の無水結晶マルトースと区別して「エタノール変換無水結晶マルトース」と呼称する。
<エタノール変換無水結晶マルトースの諸物性>
実施例1で得たエタノール変換無水結晶マルトースと諸物性を比較するための対照として、原料として用いた含水結晶β−マルトース、従来法で調製した無水結晶α−マルトース(株式会社林原製、α/β複合体結晶、マルトース純度98%以上)、及び、ジェイ・イー・ホッジ(J.E.Hodge)ら、『Cereal Science Today』、第17巻、第7号、180乃至188頁(1972年)の文献記載の方法に準じて含水結晶β−マルトースを減圧下、95℃で40時間加熱することにより調製した無水結晶β−マルトースをそれぞれ対照1、対照2及び対照3として用いた。なお、対照1乃至3とした結晶マルトースの各標品の水分含量、ガスクロマトグラフィー(GLC)法により求めたα−アノマーとβ−アノマーの比率(以下、「アノマー比」と呼称する)、及び、粉末X線回折図形に基づくルーランドの方法により求めた結晶化度を表2にまとめた。
<実施例2−1:エタノール変換無水結晶マルトースの走査型電子顕微鏡写真>
実施例1で得たエタノール変換無水結晶マルトースを、倍率100倍及び2,000倍で撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1及び2にそれぞれ示す。また、対照1、対照2及び対照3の結晶マルトースそれぞれについて、同様に撮影した倍率100倍及び2,000倍のSEM写真を図3及び図4、図5及び図6、及び、図7及び図8にそれぞれ示した。
図4、図6及び図8から明らかなように、原料の含水結晶β−マルトース(対照1)、従来法で調製した無水結晶α−マルトース(対照2)及びジェイ・イー・ホッジ(J.E.Hodge)らの文献記載の方法に準じて調製した無水結晶β−マルトース(対照3)には細孔がほとんど観察されないのに対し、エタノール中で加熱・脱水して得た無水結晶マルトースには、図2に示すように微細な柱状結晶の凝集体とともに、多数の細孔が認められ、多孔性の無水結晶マルトースであることが判明した。
<実施例2−2:エタノール変換無水結晶マルトースの粉末X線回折図>
エタノール変換無水結晶マルトースの粉末X線回折分析は、X線回折装置「ガイガーフレックスRDA−IIB」(Cu、Kα線使用)(株式会社リガク製)を用いて行った。実施例1で得たエタノール変換無水結晶マルトースと、対照1、対照2及び対照3の結晶マルトースの粉末X線回折図を併せて図7に示した。
図7から明らかなように、エタノール変換無水結晶マルトースの粉末X線回折図(図9における符号a)は、対照3の無水結晶β−マルトース(図9における符号b)、対照2の無水結晶マルトース(図9における符号c)及び対照1の含水結晶β−マルトース(図9における符号d)のいずれとも全く相違していた。エタノール変換無水結晶マルトースは、粉末X線回折図において回折角(2θ)7.8°、19.5°、20.7°及び22.6°に、対照1乃至3の結晶マルトースには認められない特徴的なピークを示した。このことは、エタノール変換無水結晶マルトースが、従来の結晶マルトースとは全く異なる結晶型を有することを意味している。
<実施例2−3:エタノール変換無水結晶マルトースの示差走査熱量計分析>
示差走査熱量計(DSC)分析における吸熱パターンは、示差走査熱量計「DSC8230」(株式会社リガク製)を用いて測定した。実施例1において調製したエタノール変換無水結晶マルトースと対照2及び対照3の無水結晶マルトースのDSC分析における吸熱パターンを併せて図10に示した。
図10から明らかなように、エタノール変換無水結晶マルトースは、DSC分析における吸熱パターン(図10における符号a)において、167.3℃に鋭い吸熱ピークを示した。一方、対照3の無水結晶β−マルトースの吸熱パターン(図10における符号b)は、131.4℃に吸熱ピークを示し、対照2の無水結晶α−マルトースの吸熱パターン(図10における符号c)は、176.8℃及び187.7℃に幅広い吸熱ピークを示した。エタノール変換無水結晶マルトースのDSC分析における吸熱パターンは対照の無水結晶マルトースのいずれとも全く異なっていた。
エタノール変換無水結晶マルトースの粉末X線回折図及びDSC分析における吸熱パターンが、対照2及び3として用いた従来の無水結晶マルトースのいずれとも全く異なっていることから、実施例1で得たエタノール変換無水結晶マルトースは新規な無水結晶マルトースであると判断された。そこで、以下、実施例2−4及び2−5において、エタノール変換無水結晶マルトースの融点及びマルトースのアノマー比を測定し、対照とする従来の無水結晶マルトースと比較した。
<実施例2−4:エタノール変換無水結晶マルトースの融点>
実施例1で得たエタノール変換無水結晶マルトース粉末を試料とし、融点測定装置(商品名「MP−21」、ヤマト科学株式会社製)を用いて、常法に従い、融点を測定した。その結果、エタノール変換無水結晶マルトースの融点は154乃至159℃であることが判明した。この値は、ジェイ・イー・ホッジ(J.E.Hodge)らの文献に記載された無水結晶α−マルトース(α/β複合体無水結晶、α−アノマー含量73%)の融点168乃至175℃よりも明らかに低く、また、同文献に記載された無水結晶β−マルトース(β−アノマー含量88%)の融点120乃至125℃よりも明らかに高かった。実施例1で得たエタノール変換無水結晶マルトースは、従来公知の無水結晶α−マルトース及び無水結晶β−マルトースのいずれとも全く異なる結晶であり、融点154乃至159℃を有する無水結晶マルトースは、従来未知の新規な無水結晶マルトースである。
<実施例2−5:エタノール変換無水結晶マルトースのアノマー比>
実施例1で得たエタノール変換無水結晶マルトース約70mgを無水ピリジン5mlに溶解した後、この100μlを、常法に従いトリメチルシリル化(TMS化)し、GLC法にて分析し、マルトースのα−アノマーとβ−アノマーの含量を単純面積百分率法により求め、アノマー比とした。なお、GLCは以下の条件で行った。
<GLC条件>
ガスクロマトグラフ:GC−14A(株式会社島津製作所製)
カラム:2%シリコンOV−17/クロモソルブW・AW・DMCS(内径3mm,長さ2m)
カラム温度:210℃
注入口温度:330℃
キャリアーガス:窒素 流速:40ml/min
燃焼ガス:水素 流速:40ml/min
助燃ガス:空気 流速:600ml/min
検出:FID法
エタノール変換無水結晶マルトースのGLCクロマトグラムを図11に示す。実施例1で得たエタノール変換無水結晶マルトースはα−アノマー(図11における符号a)含量5.5%、β−アノマー(図11における符号b)含量94.5%と、その大部分をβ−アノマーが占めていた。この結果から、エタノール変換無水結晶マルトースはβ−マルトースであることが判明した。この結果を踏まえ、エタノール変換無水結晶マルトースを、以下、「エタノール変換無水結晶β−マルトース」と呼称する。
<実施例2−6:エタノール変換無水結晶β−マルトースの比表面積>
実施例1で得たエタノール変換無水結晶β−マルトースの比表面積は、比表面積/細孔分布測定装置(モデルASAP−2400、島津マイクロメリテックス製)を用い、窒素ガス吸着法にて測定した。実施例1において得た無水結晶β−マルトースを約3g採取し、装置の前処理部において約40℃で約15時間、減圧乾燥した後、窒素ガス吸着法による比表面積の測定に供した。測定値は常法のBET法により解析した。また、対照2の無水結晶α−マルトース及び対照3の無水結晶β−マルトースについても同様に比表面積を測定した。
エタノール変換無水結晶β−マルトースの比表面積は3.39m/gと測定され、対照2の無水結晶α−マルトース及び対照3の無水結晶β−マルトースの比表面積がそれぞれ0.48m/g及び0.82m/gであったのに比べて約7〜4倍大きい値を示した。エタノール変換無水結晶β−マルトースは多数の細孔に起因する大きい比表面積を有していた。
<実施例2−7:エタノール変換無水結晶β−マルトースの細孔分布>
エタノール変換無水結晶β−マルトースの細孔分布及び細孔体積は、細孔分布測定装置(モデル9520、島津オートポア製)を用い、水銀圧入法にて測定した。実施例1において70℃で480分間処理して得た無水結晶マルトースを約0.5g採取し、初期圧15kPaの条件で測定した。併せて、対照2の無水結晶α−マルトース及び対照3の無水結晶β−マルトースについても同様に測定した。結果を表3に、また、細孔分布図を図12に示す。
表3から明らかなように、エタノール変換無水結晶β−マルトースは1.05ml/gと比較的大きい細孔体積を示し、細孔分布図において細孔径5μm未満に明確なピーク(図12における符号○)を有していた。なお、図12において、対照2の無水結晶α−マルトース及び対照3の無水結晶β−マルトースに観察される分布(図12における符号△及び●)は、細孔ではなく、結晶粒子が小さいために粒子の間隙に水銀が圧入されたことにより観察されたものである。
<エタノール変換無水結晶β−マルトースの吸湿性>
常法により吸湿試験を行い、エタノール変換無水結晶β−マルトースの吸湿性を、対照1の含水結晶β−マルトース、対照2の無水結晶α−マルトース及び対照3の無水結晶β−マルトースのそれと比較した。硝酸リチウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム又は塩化バリウムの飽和水溶液でそれぞれ相対湿度(RH)47%、58%、75%又は90%になるよう調湿した密閉容器(300mm×210mm×100mm)に、精秤した各結晶マルトース試料約1グラムをアルミ製の秤量カップ(径50mm×高さ25mm)に入れた状態で静置し、27℃で2、4、6、8、24、96、192時間保持し、それぞれの時間における試験開始時からの試料の質量変化から水分含量を測定した。試験開始時の各試料の水分含量はカールフィッシャー法にて測定した。各湿度条件下での各試料の水分含量の経時変化を表4にまとめた。
表4の結果から明らかなように、対照1の含水結晶β−マルトースは、いずれの湿度条件においてもほとんど水分含量は約5.3質量%と変化せず、吸湿性の低い安定な結晶であった。対照2の無水結晶α−マルトースは、RH75%以上の湿度条件下では試験開始直後から吸湿するものの、RH58%以下ではほとんど吸湿せず水分含量約0.8質量%を維持した。一方、対照3の無水結晶β−マルトースは、RH58%の条件下においても試験開始直後から吸湿して4時間で水分含量約7質量%に達し、その後、試験開始6時間から24時間にかけて水分含量約5.5質量%まで放湿した。これに対し、本発明のエタノール変換無水結晶β−マルトースは、RH58%の湿度条件下においても24時間までは水分含量約0.4質量%を維持し、その後は吸湿するものの、従来の無水結晶β−マルトース(対照3)と比較して、吸湿しにくい特性を有していた。
また、表4の結果からも明らかなように、対照3の無水結晶β−マルトース及び対照2の無水結晶α−マルトースは、RH90%の条件下においてみられるように、一旦、吸湿すると水分含量が含水結晶の水分含量約5.3質量%を超えて約10質量%若しくは17質量%まで達し、その後、放湿する傾向を示した。これに対し、エタノール変換無水結晶β−マルトースは、RH75%の条件下では2乃至6時間で、RH90%の条件下では0乃至4時間で徐々に吸湿し、含水結晶の水分含量約5.3質量%を超えることなく、含水結晶に変換されることが判明した。このような特性を有する本発明のエタノール変換無水結晶β−マルトース(新規無水結晶β−マルトース)は、含水組成物を固結させることなく粉末化するための粉末化基材として有用である。
<水溶液の固化基材としてのエタノール変換無水結晶β−マルトース>
本発明のエタノール変換無水結晶β−マルトースの、含水組成物の固化基材としての有用性を調べる目的で、脱イオン水をモデル含水組成物として用い、固化試験を行った。すなわち、60ml容のガラス容器(内径44mm、高さ57mm)に水温25℃の脱イオン水10gを秤取し、攪拌子で240〜250rpmにて攪拌しつつ、実施例1の方法で得たエタノール変換無水結晶β−マルトースを8.2g、10.0g、11.5g、13.3g又は18.8gをそれぞれ1分間かけて添加し溶解させた。試料添加・溶解終了時から4分間攪拌を続け、攪拌を停止した後、試料溶液を静置し、含水結晶マルトースの晶出による試料溶液の固化を2時間にわたって肉眼観察した。固化が認められたものについては、結晶の晶出が始まった時間と、晶出による固化が完了した時間を記録した(但し、18.8gを添加・溶解した試験系では溶解後3分で含水結晶マルトースの晶出が始まったため、その時点で攪拌は中止した。)。また、2時間にわたって肉眼観察したそれぞれの試料溶液は、容器に蓋をした後、さらに18時間静置し、試料添加・溶解から20時間後の試料溶液の状態を肉眼観察し、(1)透明な液状;(2)白濁した液状;(3)固化;の3段階で評価した。実施例2で用いた無水結晶α−マルトースを10.0g、11.5g、13.3g又は18.8g用いた以外は同様に処理したものを対照とした。なお、試験は温度25℃を保持した室内にて実施した。各試験系で2時間観察した結果を表5及び図13に、また、試料添加・溶解から20時間後の試料溶液の状態を表6及び図14にそれぞれ示した。
表5及び図13から明らかなように、エタノール変換無水結晶β−マルトースを18.8g添加・溶解した試料溶液は、溶解後3分で晶出が始まり、3.5分後には固化が完了した(図13における符号a)。また、エタノール変換無水結晶β−マルトースを13.3g添加・溶解した試料溶液は、溶解後6分で含水結晶マルトースの晶出が始まり、8分後には固化が完了した(図13における符号b)。エタノール変換無水結晶β−マルトースの添加・溶解量が11.5g以下の試験系(図13における符号c〜e)では固化は観察されなかった。一方、無水結晶α−マルトースを添加・溶解した対照の試験系では、試験したいずれの系(図13における符号a´〜d´)においても2時間以内での固化は観察されなかった。
また、表6及び図14から明らかなように、溶解後、3.5分若しくは8分で固化が完了した、エタノール変換無水結晶β−マルトースを18.8g若しくは13.3g添加・溶解した試験系では、20時間後においても完全に固化した状態を維持していた(図14における符号a若しくはb)。溶解後2時間以内に固化しなかった、エタノール変換無水結晶β−マルトースを11.5g添加・溶解した試験系では20時間後においても、含水結晶マルトースの部分的な晶出による白濁は認められたものの固化は認められなかった(図14における符号c)。また、エタノール変換無水結晶β−マルトースの添加・溶解量が10.0g以下の試験系(図14における符号d〜e)では晶出は認められなかった。一方、無水結晶α−マルトースを18.8g添加・溶解させた試験系では、20時間後には完全に固化が完了していた(図14における符号a´)ものの、13.3g添加・溶解させた試験系では白濁した液状(図14における符号b´)であり、11.5g以下の試験系では晶出は認められず、透明な液状を保持していた(図14における符号c´〜d´)。
これらの結果は、従来、含水組成物の固化又は粉末化基材として用いられてきた無水結晶α−マルトースよりも、本発明の無水結晶β−マルトースの方が、より少量で速く含水組成物を固化させることができ、固化基材として有用であることを物語っている。
<固形ウィスキー>
市販のウィスキー(アルコール度40%)15質量部を容器に採取し、これを攪拌しつつ、実施例1の方法で調製したエタノール変換無水結晶β−マルトース20質量部を徐々に添加した。添加した無水結晶β−マルトースはウィスキーに完全に溶解し、その後、このウィスキー溶液から含水結晶β−マルトースが速やかに晶出し、全体がブロック状に固化した。本品は、滑らかな食感と上品な甘味を有する固形ウィスキーであり、製菓用途などに有利に利用できる。
<固形メープルシロップ>
市販のメープルシロップ(糖濃度66質量%)を脱イオン水で希釈し、糖濃度50質量%に調整した。得られたメープルシロップ14質量部を容器に採取し、これを攪拌しつつ、実施例1の方法で調製したエタノール変換無水結晶β−マルトース9質量部を徐々に添加した。添加した無水結晶β−マルトースはメープルシロップに完全に溶解し、その後、このメープルシロップから含水結晶β−マルトースが速やかに晶出し、全体がブロック状に固化した。本品は、滑らかな食感を有する固形メープルシロップであり、製菓用途などに有利に利用できる。
<固形生クリーム>
市販の生クリーム(乳脂肪分40質量%、無脂乳固形分4質量%)15質量部を容器に採取し、これを攪拌しつつ、実施例1の方法で調製したエタノール変換無水結晶β−マルトース13.8質量部を徐々に添加した。添加した無水結晶β−マルトースは生クリームに完全に溶解し、その後、この混合物から含水結晶β−マルトースが速やかに晶出し、全体がブロック状に固化した。本品は、滑らかな食感を有する固形生クリームであり、製菓用途などに有利に利用できる。
<水溶液の粉末化基材としてのエタノール変換無水結晶β−マルトース>
含水組成物の粉末化基材としての作用効果を調べる目的で、脱イオン水をモデル含水組成物として用い、エタノール変換無水結晶β−マルトースを用いた粉末化試験を行った。200ml容のガラスビーカーに実施例1の方法で得たエタノール変換無水結晶β−マルトース粉末を10g秤取し、薬匙で混合しつつ脱イオン水を0.25mlずつ添加してゆき、粉末状態を維持しなくなるまでの脱イオン水の添加量で粉末化基材としての有用性を判定した。粉末の状態は、(1)粉末状;(2)ダマ状(ダマを含むものの粉末状態を維持);(3)塊状;(4)ペースト状;の4段階で評価した。実施例2で用いた無水結晶α−マルトースを用いた以外は同様に処理したものを対照とした。なお、試験は温度25℃を保持した室内にて実施した。試験結果を表7に、脱イオン水を1.25ml添加・混合した場合の各試料の状態を図15にそれぞれ示した。
表7の結果から明らかなようにエタノール変換無水結晶β−マルトースは、1.25ml以下の脱イオン水を添加・混合した場合、良好な粉末状態を維持しており(図15における符号a)、1.5〜2.0mlの脱イオン水を加えた場合においても、ダマが生じるものの粉末状態を維持していた。一方、対照の無水結晶α−マルトースは、0.5ml以下の脱イオン水を添加・混合した場合、良好な粉末状態を維持したものの、脱イオン水0.75mlでダマを生じ、1.0mlでは塊状、1.25mlではペースト状(図15における符号b)となり、脱イオン水1.0ml以上の添加・混合で粉末状態を維持できなくなった。この結果は、エタノール変換無水結晶β−マルトースの方が、無水結晶α−マルトースよりも、含水組成物の粉末化基材として有用であることを示すものである。
<アルコールの粉末化基材としてのエタノール変換無水結晶β−マルトース>
脱イオン水に換えて無水エタノールを用い、0.5mlずつ添加・混合した以外は実施例8と同様にして、エタノール変換無水結晶β−マルトースのアルコールの粉末化基材としての有用性を調べた。試験結果を表8に、無水エタノールを6ml添加・混合した場合の試料の状態を図16にそれぞれ示した。
表8の結果から明らかなようにエタノール変換無水結晶β−マルトースは、8.0ml以下の無水エタノールを添加・混合した場合、良好な粉末状態を維持しており、9.0〜10.0mlの無水エタノールを加えた場合においても、ダマが生じるものの粉末状態を維持していた。一方、対照の無水結晶α−マルトースは、3.0ml以下の無水エタノールを添加・混合した場合では、良好な粉末状態を維持したものの、無水エタノール3.5mlでダマを生じ、4.0〜5.0mlでは塊状、5.5ml以上ではペースト状(図16における符号bを参照)となり、無水エタノール4.0ml以上の添加・混合で粉末状態を維持できなくなった。この結果は、エタノール変換無水結晶β−マルトースの方が、無水結晶α−マルトースよりも、含アルコール組成物の粉末化基材として有用であることを示すものである。
<粉末ブランデー>
実施例1の方法で得たエタノール変換無水結晶β−マルトース粉末1,000gをステンレス容器に採取し、攪拌しつつ、これに市販のブランデー(アルコール度40%)300mlを徐々に添加し、粉末ブランデーを調製した。本品はしっとり感のある粉末ブランデーであり、製菓用途などに有利に利用できる。
本発明は、新規な無水結晶β−マルトースを提供するものであり、本発明の無水結晶β−マルトースは、従来の無水結晶β−マルトースに比べて吸湿性が低く、粉末結晶としての取り扱いが容易である。また、本発明の無水結晶β−マルトースは、吸水すると速やかに含水結晶β−マルトースに変換される上、これまで、含水組成物の粉末化基材として汎用されてきた無水結晶α−マルトースよりもさらに優れた作用効果を発揮することから、含水又は含アルコール組成物などの固化又は粉末化基材として有用である。さらに、本発明の無水結晶β−マルトースの多孔性結晶は、従来のマルトースとしての機能、及び、固化又は粉末化基材としての機能のみならず、多数の細孔を有するという物理的特性を利用して、有用物質の安定化、揮発性香料などのマイクロカプセル化、起泡剤などの用途が期待できる。新規な無水結晶β−マルトースとその製造方法並びに用途の確立は、学術的意義のみならず、製糖産業や関連する食品、化粧品、医薬品産業における工業的意義が極めて大きい。

Claims (6)

  1. 154乃至159℃に融点を有し、マルトースのβ−アノマー含量が90%以上であって、且つ、粉末X線回折図において回折角(2θ)7.8°、19.5°、20.7°及び22.6°に特徴的なピークを有する無水結晶β−マルトース。
  2. 窒素ガスを用いたガス吸着法で測定した比表面積が1m/g以上であって、且つ、水銀圧入法で測定した細孔分布において、細孔が0.1ml/g以上の細孔体積を有し、細孔径5μm未満にピークを有する多孔性結晶の形態を有する請求項1記載の無水結晶β−マルトース。
  3. 含水結晶β−マルトースを、有機溶媒中で室温以上の温度に保持し脱水する工程を含んでなる、請求項1又は2記載の無水結晶β−マルトースの製造方法。
  4. 有機溶媒がアルコールである請求項3記載の無水結晶β−マルトースの製造方法。
  5. アルコールがエタノールである請求項4記載の無水結晶β−マルトースの製造方法。
  6. 請求項1又は2記載の無水結晶β−マルトースの含水又は含アルコール組成物の固化又は粉末化基材としての使用。
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