しかしながら、上記特許文献1のもののように、丸線材からなるコイルばねを用いた除振装置及び防振装置を顕微鏡や半導体露光装置等の精密機器の脚として用いたものでは、以下のような問題がある。
すなわち、数ミクロンの揺れでも、例えば顕微鏡では観察の際に像がぼやけ、例えば半導体露光装置では露光に悪影響を及ぼすことから、これらの精密機器では高い減衰特性が要求されるが、丸線材からなるコイルばねを用いた除振装置では、コイルばねと当該コイルばねのループ内に配置された内部部材とが線接触することになり、コイルばねと内部部材との接触面積が小さくなるため、高い減衰特性が得られないおそれがある。
また、精密機器との寸法バランスを考慮して、これらの脚として用いられる除振装置では小型化が要求されるが、丸線材からなるコイルばねで所定のばね定数を確保するためには、ばね容積(ばね高さ及びばね外径)を一定以上の大きさにする必要があることから、除振装置の小型化が困難であるという問題がある。
さらに、丸線材からなるコイルばねを用いた除振装置では、内部部材が断面円形のコイルばねの外周面に沿うように変形してコイルばねの巻線の間に入り込み易くなる。このように、内部部材がコイルばねの巻線の間に入り込むと、コイルばねの収縮が妨げられ、コイルばねが正常に収縮するのに比べて、見かけ上、コイルばねのばね定数が大きくなり、除振装置の除振性能が不安定になるという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基台に対して被除振体を弾性的に支持する除振装置において、除振装置の小型化及び除振性能の安定化を図りつつ高い減衰特性を得る技術を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明では、弾性体からなるサージング防止部材をコイルバネのループ内に配設するとともに、同じばね特性を有する丸線材からなるコイルばねよりもばね容積の小さい角線材からなるコイルばねを用いることにより、除振装置をコンパクトにするとともにサージング防止部材とコイルばねとを面で接触させて大きな接触面積を確保するようにしている。
第1の発明は、基台に対して被除振体を弾性的に支持する除振装置であって、上記基台上に載置され、上方に開口している第1ケース部材と、上記被除振体側に取り付けられ、上記第1ケース部材の上側に位置し且つ当該第1ケース部材に対し上下方向に相対移動する、下方に開口している第2ケース部材と、上記両ケース部材の間に収容されているコイルばねと、上記第1ケース部材の底壁部又は第2ケース部材の頂壁部に取り付けられ、且つ上記コイルばねに内側から接触するように当該コイルばねのループ内に配設されている、弾性体からなるサージング防止部材と、を備え、上記コイルばねは、断面略矩形状の角線材からなり、上記サージング防止部材は、略円筒状の弾性体をその中心軸線が略水平となるように上記コイルばねのループ内に配置したものであり、当該中心軸線を挟んで略水平方向に対向する両側部の外周面の少なくとも一部が、コイルばねのループ内周面により内方に押圧されることにより、水平方向から見て、略楕円状又は略長円状に変形しており、上記サージング防止部材の両側部は、当該サージング防止部材の円筒内に配設されている、上下方向に延びる円柱部材の外周面と、上記コイルばねのループ内周面とに挟まれることにより、上下方向から見て、当該ループ内周面に沿うように湾曲していることを特徴とするものである。
第1の発明では、コイルばねは断面略矩形状の角線材からなっているので、丸線材からなるコイルばねのようにサージング防止部材と線接触するのではなく、面接触することになる。これにより、コイルばねとサージング防止部材との接触面積が大きくなり、高い減衰特性を得ることができる。
また、同じばね特性を有する丸線材からなるコイルばねよりも、ばね高さ及びばね外径が共に小さい角線材からなるコイルばねを用いることにより、所望のばね特性を維持しつつ除振装置の小型化を図ることができる。
ところで、丸線材からなるコイルばねを用いた場合には、弾性体からなるサージング防止部材が断面円形のコイルばねの外周面に沿うように変形して、コイルばねの巻線の間に入り込み易くなる。これに対し、第1の発明の除振装置では、角線材からなるコイルばねを用いているので、コイルばねのループ内周面とサージング防止部材とがほぼ均等に面接触し、サージング防止部材がコイルばねの巻線の間に入り込み難くなる。これにより、コイルばねを正常に収縮させて、除振装置の除振性能の安定化を図ることができる。
さらに、略円筒状の弾性体(サージング防止部材)の外周面をその弾性反発力によってコイルばねのループ内周面に接触させた状態に維持して、良好なサージング防止性能を安定的に確保することができる。
また、略円筒状の弾性体を、水平方向から見て略楕円状又は略長円状に変形させてコイルばねのループ内に嵌入した構造であるから、サージング防止部材の構造が極めて簡単なものになり、サージング防止部材のコイルばねへの組付作業を容易に行える。
さらに、サージング防止部材の円筒内には、上下方向に延びる円柱部材が配設されており、サージング防止部材の両側部は、当該円柱部材の外周面とコイルばねのループ内周面とに挟まれることにより、上下方向から見て、当該ループ内周面に沿うように湾曲している。サージング防止部材の両側部をこのように湾曲させたことと、コイルばねとして断面略矩形状の角線材を用いたこととが相俟って、弾性体の両側部の外周面とコイルばねのループ内周面とがより一層面接触し易くなる。これにより、コイルばねとサージング防止部材との接触面積が確実に大きくなり、より一層高い減衰特性を得ることができる。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記サージング防止部材は、上記第1ケース部材の底壁部に上記コイルばねの下端よりも下方に凹むように、又は、上記第2ケース部材の頂壁部に上記コイルばねの上端よりも上方に凹むように形成されている座ぐり凹部に取り付けられていることを特徴とするものである。
上述の如く、サージング防止部材として、略円筒状の弾性体をその中心軸線が略水平となるようにコイルばねのループ内に配置し、水平方向から見て、略楕円状又は略長円状に変形させたものでは、弾性体の上下方向における中央部は、コイルばねのループ内周面に沿うように上下方向に略直線状に延びる一方、弾性体の上端部及び下端部には、R部が不可避的に生じ、当該R部では弾性体の外周面とループ内周面とが接触しなくなる。
そこで、第2の発明では、弾性体を、第1ケース部材の底壁部にコイルばねの下端よりも下方に凹むように、又は、第2ケース部材の頂壁部にコイルばねの上端よりも上方に凹むように形成されている座ぐり凹部に取り付けることによって、当該弾性体の下端部又は上端部に生じるR部を座ぐり凹部に収納するようにしている。これにより、上下方向において、コイルばねと弾性体のR部とが重なる部分が短くなるので、第1ケース部材の底壁部と第2ケース部材の頂壁部との間隔が狭く弾性体の大きさ(変形した状態における上下方向の長さ)が制限されていても、弾性体の外周面とループ内周面とが接触しない部分の長さを短くすることができる。したがって、コイルばねとサージング防止部材との接触面積を確実に確保して、より一層高い減衰特性を得ることができる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記サージング防止部材は、その上端が上記第1ケース部材よりも先に上記第2ケース部材と当接するような、又は、その下端が上記第2ケース部材よりも先に上記第1ケース部材と当接するような大きさに設定されていることを特徴とするものである。
上述の如く、第2ケース部材は第1ケース部材の上側に位置し且つ当該第1ケース部材に対し上下方向に相対移動し、且つ、これら両ケースの間にはコイルばねが収容されているので、例えば大振幅時には、第2ケース部材は、当該第2ケース部材の一部と第1ケース部材の一部とが当接するまで下方に移動する。
ここで、第3の発明では、サージング防止部材は、その上端が第1ケース部材よりも先に第2ケース部材と当接するような、又は、その下端が第2ケース部材よりも先に第1ケース部材と当接するような大きさに設定されているので、第2ケース部材の一部と第1ケース部材の一部とが当接する前に、弾性体からなるサージング防止部材の上端又は下端と、第2又は第1ケース部材とが接触する。
このように、サージング防止部材は、ストッパとしても機能するので、第1ケース部材と第2ケース部材との当接による衝撃が被除振体に伝達されるのを抑えることができるとともに、大振幅時における制振効果を高めることができる。
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、上記各ケース部材はいずれも略円筒状であり、上記両ケース部材のうち一方のケース部材の外径は、他方のケース部材の内径よりも小さく形成されており、上記一方のケース部材の側壁部の外周面には、ケース外側に突出する外側突起部が形成されている一方、上記他方のケース部材の側壁部の内周面には、当該外側突起部と上下方向で対向するように、ケース内側に突出する内側突起部が形成されており、上記外側突起部は、無負荷状態で、上記一方のケース部材が上記他方のケース部材から離脱しないように上記内側突起部に係合することを特徴とするものである。
第4の発明では、外側突起部と内側突起部とを係合させることにより、除振装置の組立時や、被除振体を運搬する際など一旦無負荷状態とした後に再び除振装置に負荷をかけるときに、両ケース部材の分離を防げるとともにこれらの軸心を合わせるのが容易になる。これにより、コイルばねの傾きが抑えられるので、サージング防止部材の両側部がコイルばねのループ内周面に確実に押し付けられる。
第5の発明は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、上記一方のケース部材の側壁部の外周面には、上記内側突起部を上記外側突起部に誘導するように、上下方向における当該外側突起部側に行くほどケース外側に傾斜する傾斜部が形成されている一方、上記他方のケース部材の側壁部の内周面には、上記外側突起部を上記内側突起部に誘導するように、上下方向における当該内側突起部側に行くほどケース内側に傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とするものである。
第5の発明では、一方のケース部材の側壁部の外周面には、内側突起部を外側突起部に誘導するように、上下方向における外側突起部側に行くほどケース外側に傾斜する傾斜部が形成されている一方、他方のケース部材の側壁部の内周面には、外側突起部を内側突起部に誘導するように、上下方向における内側突起部側に行くほどケース内側に傾斜する傾斜部が形成されているので、第1ケース部材と第2ケース部材とを組み付ける際、これらのケース部材の軸心がずれていても、これら傾斜部に当接した外側及び内側突起部が互いに引き合うように誘導される。これにより、組立時の両ケース部材の軸心を合わせるのがさらに容易になる。
第6の発明は、基台に対して被除振体を弾性的に支持する除振装置であって、上記基台上に載置され、上方に開口している第1ケース部材と、上記被除振体側に取り付けられ、上記第1ケース部材の上側に位置し且つ当該第1ケース部材に対し上下方向に相対移動する、下方に開口している第2ケース部材と、上記両ケース部材の間に収容されているコイルばねと、上記第1ケース部材の底壁部又は第2ケース部材の頂壁部に取り付けられ、且つ上記コイルばねに内側から接触するように当該コイルばねのループ内に配設されている、弾性体からなるサージング防止部材と、を備え、上記コイルばねは、断面略矩形状の角線材からなり、上記各ケース部材はいずれも略円筒状であり、上記両ケース部材のうち一方のケース部材の外径は、他方のケース部材の内径よりも小さく形成されており、上記一方のケース部材の側壁部の外周面には、ケース外側に突出する外側突起部が形成されている一方、上記他方のケース部材の側壁部の内周面には、当該外側突起部と上下方向で対向するように、ケース内側に突出する内側突起部が形成されており、上記外側突起部は、無負荷状態で、上記一方のケース部材が上記他方のケース部材から離脱しないように上記内側突起部に係合し、上記一方のケース部材の側壁部の外周面には、上記内側突起部を上記外側突起部に誘導するように、上下方向における当該外側突起部側に行くほどケース外側に傾斜する傾斜部が形成されている一方、上記他方のケース部材の側壁部の内周面には、上記外側突起部を上記内側突起部に誘導するように、上下方向における当該内側突起部側に行くほどケース内側に傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とするものである。
第6の発明では、コイルばねは断面略矩形状の角線材からなっているので、丸線材からなるコイルばねのようにサージング防止部材と線接触するのではなく、面接触することになる。これにより、コイルばねとサージング防止部材との接触面積が大きくなり、高い減衰特性を得ることができる。
また、同じばね特性を有する丸線材からなるコイルばねよりも、ばね高さ及びばね外径が共に小さい角線材からなるコイルばねを用いることにより、所望のばね特性を維持しつつ除振装置の小型化を図ることができる。
ところで、丸線材からなるコイルばねを用いた場合には、弾性体からなるサージング防止部材が断面円形のコイルばねの外周面に沿うように変形して、コイルばねの巻線の間に入り込み易くなる。これに対し、第6の発明の除振装置では、角線材からなるコイルばねを用いているので、コイルばねのループ内周面とサージング防止部材とがほぼ均等に面接触し、サージング防止部材がコイルばねの巻線の間に入り込み難くなる。これにより、コイルばねを正常に収縮させて、除振装置の除振性能の安定化を図ることができる。
さらに、外側突起部と内側突起部とを係合させることにより、除振装置の組立時や、被除振体を運搬する際など一旦無負荷状態とした後に再び除振装置に負荷をかけるときに、両ケース部材の分離を防げるとともにこれらの軸心を合わせるのが容易になる。これにより、コイルばねの傾きが抑えられるので、サージング防止部材の両側部がコイルばねのループ内周面に確実に押し付けられる。
また、一方のケース部材の側壁部の外周面には、内側突起部を外側突起部に誘導するように、上下方向における外側突起部側に行くほどケース外側に傾斜する傾斜部が形成されている一方、他方のケース部材の側壁部の内周面には、外側突起部を内側突起部に誘導するように、上下方向における内側突起部側に行くほどケース内側に傾斜する傾斜部が形成されているので、第1ケース部材と第2ケース部材とを組み付ける際、これらのケース部材の軸心がずれていても、これら傾斜部に当接した外側及び内側突起部が互いに引き合うように誘導される。これにより、組立時の両ケース部材の軸心を合わせるのがさらに容易になる。
本発明に係る除振装置によれば、コイルばねが断面略矩形状の角線材からなっているので、当該コイルばねとサージング防止部材との接触面積が大きくなって高い減衰特性を得ることができるとともに、サージング防止部材がコイルばねの巻線の間に入り込み難くなり、除振装置の除振性能の安定化を図ることができる。また、同じばね特性を有する丸線材からなるコイルばねよりも、ばね高さ及びばね外径が共に小さい角線材からなるコイルばねを用いることにより、除振装置の小型化を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る除振装置の組立状態を示す縦断面図であり、図2は、除振装置の荷重付加状態を示す縦断面図であり、図3は、図1のIII−III線の矢視断面図であり、図4は、図1のIV−IV線の矢視断面図である。除振装置1は、顕微鏡(被除振体)15の脚部として用いられるものであり、テーブル(基台)13に対して顕微鏡15を弾性的に支持するようになっている。
図1及び図2に示すように、除振装置1は、円盤状の台座11を介してテーブル13上に載置される下部ばねケース(第1ケース部材)7と、この下部ばねケース7の上側に配置され、顕微鏡15の底部に取り付けられる上部ばねケース(第2ケース部材)9と、これら両ばねケース7,9の間に同心状に配置されて収容され、顕微鏡15の荷重を受けるコイルばね3と、下部ばねケース7の底壁部17に取り付けられ且つこのコイルばね3のループ3a,3a,…内に内側から接触するように嵌入されたサージング防止部材としてのリングゴム(弾性体)5とを備えている。
下部ばねケース7は、底壁部17と下側側壁部27とを有する有底円筒状に形成された鋳造成型品であり、上方に開口した状態でテーブル13上に載置される。
下部ばねケース7の底壁部17の中央部には円形断面を有する円形凹部17aが形成されており、当該円形凹部17aの底面にコイルばね3の下端が当接した状態で、円形凹部17aにコイルばね3の下端部が収められている。このように、コイルばね3の下端部を底壁部17の上面よりも一段低くなった円形凹部17aに収めることにより、コイルばね3が水平方向に移動しようとしてもコイルばね3のループ3a,3a,…の外周面が円形凹部17aを区画する側面に当接するので、下部ばねケース7とコイルばね3との心ずれが発生し難くい。
さらに、下部ばねケース7の底壁部17には、円形凹部17aの中央部に当該円形凹部17aよりもさらに下方に凹む円形断面を有する座ぐり凹部17bが形成されている。この座ぐり凹部17bは、コイルばね3のループ3a,3a,…の内径とほぼ同じ大きさに形成されており、当該座ぐり凹部17bにリングゴム5が取り付けられている。
また、下部ばねケース7の底壁部17(座ぐり凹部17b)の中央部には、当該底壁部17を上下に貫通するねじ挿入孔17cが形成されている。このねじ挿入孔17cは、底壁部17の下端部に形成された、後述する十字穴付皿小ねじ45の頭部と同径の大径孔17dと、座ぐり凹部17bの底面近傍に形成された、十字穴付皿小ねじ45の軸部と同径の小径孔17fとが上窄みのテーパー部17eを介して連通したような形状に形成されている。
さらに、下部ばねケース7の底壁部17には、上下方向に延びる2つのボルト挿通孔17g,17gが、ねじ挿入孔17cを挟んで対称に形成されている。このボルト挿通孔17g,17gに不図示のボルトを螺合させることで、除振装置1の下端に上記台座11が取り付けられる。
下部ばねケース7の下側側壁部27の上端部には、その外周面からケース外側(径方向外側)に突出する外側突条部(外側突起部)27a,27aが形成されている。この外側突条部27a,27aは、図5に示すように、下側側壁部27の外周面の2箇所に間欠的に且つ下部ばねケース7(除振装置1)の中心軸線Z1を挟んで対称に形成されている。各外側突条部27a,27aは、下側側壁部27の外周の略4分の1の範囲に亘って設けられている。
下部ばねケース7の下側側壁部27の外周面には、各外側突条部27a,27aの下側(当該外側突条部27a,27aよりも底壁部17側)に、上方(上下方向における当該外側突条部27a側)に行くほど下側側壁部27の外周面からケース外側に傾斜する下側傾斜部27b,27bが形成されている。より具体的には、各下側傾斜部27b,27bは、縦断面略直角二等辺三角形状に形成されていて、下側側壁部27の外周面と各外側突条部27a,27aの下面における突出方向の中間部とを結ぶように略45度傾斜する傾斜面を有している。
これに対し、上部ばねケース9は、頂壁部19と上側側壁部29とを有する有頂円筒状に形成された鋳造成型品であり、この頂壁部19の上面に突設された取付ボルト9aによって、下方に開口した状態で顕微鏡15の底部に締結されている。この上部ばねケース9は、下部ばねケース7と略同じ高さを有している。また、上部ばねケース9の内径は、下部ばねケース7の外径よりも大きく形成されており、これにより、上部ばねケース9は、下部ばねケース7の上側に被せられた状態で下部ばねケース7に対し上下方向に相対移動可能となっている。
上部ばねケース9の頂壁部19の中央部には円形断面を有する円形凹部19aが形成されており、当該円形凹部19aの天井面にコイルばね3の上端が当接した状態で、円形凹部19aにコイルばね3の上端部が収められている。このように、コイルばね3の上端部を頂壁部19の上面よりも一段高くなった円形凹部19aに収めることにより、コイルばね3が水平方向に移動しようとしてもコイルばね3のループ3a,3a,…の外周面が円形凹部19aを区画する側面に当接するので、上部ばねケース9とコイルばね3との心ずれが発生し難くい。
上部ばねケース9の上側側壁部29の下端部には、外側突条部27a,27aと上下方向で対向するように、その内周面からケース内側(径方向内側)に突出する内側突条部(内側突起部)29a,29aが形成されている。この内側突条部29a,29aは、図6に示すように、上側側壁部29の外周面の2箇所に間欠的に且つ上部ばねケース9(除振装置1)の中心軸線Z2を挟んで対称に形成されている。各外側突条部27a,27aは、上側側壁部29の外周の略4分の1の範囲に亘って設けられている。
上部ばねケース9の上側側壁部29の内周面には、各内側突条部29a,29aの上側(当該内側突条部29a,29aよりも頂壁部19側)に、下方(上下方向における当該内側突条部29a側)に行くほど当該上側側壁部29の内周面からケース内側に傾斜する上側傾斜部29b,29bが形成されている。より具体的には、各上側傾斜部29b,29bは、縦断面略直角二等辺三角形状に形成されていて、上側側壁部29の内周面と各内側突条部29a,29aの上面における突出方向の中間部とを結ぶように略45度傾斜する傾斜面を有している。
また、内側突条部29a及び上側傾斜部29bの両端部には略矩形板状の妻壁部29c,29cが形成されている。この妻壁部29c,29cは、上側側壁部29の下端から上側傾斜部29bの上端まで上下方向に延びているとともに、上側側壁部29の内周面から内側突条部29aの径方向の先端までケース内側に延びている。
上述の如く、下部ばねケース7と上部ばねケース9との間にはコイルばね3が収容されているので、除振装置1に負荷がかかっていない無負荷状態では、下部ばねケース7と上部ばねケース9とが互いに離れようとするが、当該除振装置1では、外側突条部27a,27aの下面と、当該外側突条部27a,27aに対向するように設けられた内側突条部29a,29aの上面とが当接することで、図4に示すように、これら外側突条部27a,27aと内側突条部29a,29aとが互いに係合し、下部ばねケース7が上部ばねケース9から外れ難くなっている。
また、下部ばねケース7と上部ばねケース9とが相対的に回転し、外側突条部27a,27aと内側突条部29a,29aとがずれそうになった場合にも、外側突条部27a,27aの周方向の端部が、内側突条部29a,29aの両端部に設けられた妻壁部29c,29c,…の一方に当接するので、ケース周方向においても、下部ばねケース7が上部ばねケース9から外れ難くなっている。
さらに、下部ばねケース7の中心軸線Z1と上部ばねケース9の中心軸線Z2とがずれた場合にも、内側突条部29aの径方向の先端が下側傾斜部27bに当接し、当該下側傾斜部27bの傾斜面を滑るように外側突条部27aに誘導されるとともに、外側突条部27aの径方向の先端が上側傾斜部29bに当接し、当該上側傾斜部29bの傾斜面を滑るように内側突条部29aに誘導される。このように、下部ばねケース7の中心軸線Z1と上部ばねケース9の中心軸線Z2とのセンタリングが常に行われるので、除振装置1の除振性能が安定する。
上記コイルばね3は、断面略矩形状の角線材からなっていて、上述の如く、その下端部が下部ばねケース7の円形凹部17aに収められるとともに、その上端部が上部ばねケース9の円形凹部19aに収められることで、両ばねケース7,9の間に同心状に配置されて収容されている。このように、断面略矩形状の角線材からなるコイルばね3を用いることにより、コイルばね3とサージング防止部材としてのリングゴム5とが面接触するので、コイルばね3とリングゴム5とが線接触する従来の丸線材からなるコイルばねを用いたものよりも、コイルばね3とリングゴム5との接触面積が大きくなっている。
リングゴム5は、減衰性を有するゴム弾性体を、コイルばね3のループ3a,3a,…の内径よりも大きな外径を有する略円筒状に形成したものであり、その中心軸線が略水平となるようにコイルばね3のループ3a,3a,…内に配置されている。このリングゴム5の下部には挿入孔5aが貫通形成されており、当該挿入孔5aに円筒状のスペーサ25が嵌挿されている。
図1及び図7に示すように、リングゴム5に嵌挿されているスペーサ25には、下方から下部ばねケース7のねじ挿入孔17cに挿入されて座ぐり凹部17bの下面から突出する十字穴付皿小ねじ45の軸部が挿通されている。そして、当該スペーサ25よりも上方に延びる十字穴付皿小ねじ45の軸部の上部には、緩み止めのためのばね座金55と平ワッシャ65を介して、その中央部に軸方向に延びるねじ孔が形成された円柱状のボス部材(円柱部材)35が螺合されている。このように、スペーサ25がボス部材35の下端と座ぐり凹部17bの下面とで挟まれることにより、リングゴム5は、その円筒内に上下方向に延びるボス部材35が組み付けられた状態(配設された状態)で座ぐり凹部17bに取り付けられる。なお、リングゴム5を十字穴付皿小ねじ45とボス部材35とで直接締め付けるのではなく、リングゴム5の挿入孔5aに嵌挿されたスペーサ25を介して座ぐり凹部17bに取り付けるのは、十字穴付皿小ねじ45とボス部材35とで締め付けられることで、リングゴム5が際限なくひしゃげるのを避けるためである。
このように、下部ばねケース7の底壁部17に形成されている、コイルばね3の下端よりも下方に凹む座ぐり凹部17bに、リングゴム5を取り付けることにより、リングゴム5の下端部に不可避的に生じるR部5c,5cとコイルばね3とが重なる部分の長さが短くなる。換言すると、リングゴム5のR部5c,5cが、コイルばね3の下端よりも下方に膨出することにより、下部ばねケース7の底壁部17と上部ばねケース9の頂壁部19との間における上下方向の長さが等しい場合には、コイルばね3の下端と同じ高さに取り付けられたリングゴムと比較して、リングゴム5の外周面とループ3a,3a,…の内周面とが接触しない部分の長さを短くなる。
また、リングゴム5は、その中心軸線を挟んで略水平方向に対向する両側部5b,5bが、外周面をコイルばね3のループ3a,3a,…の内周面により内方に押圧されて、水平方向から見て略長円状(略楕円状でもよい)に変形している。より詳しくは、リングゴム5は、コイルばね3のループ3a,3a,…の内径よりも大きな外径を有しているので、その両側部5b,5bの外周面の幅方向の隅角部がループ3a,3a,…の内周面に接触することで、コイルばね3のループ3a,3a,…により直径方向内方に押圧されて略長円状になっており、両側部5b,5bの外周面と接触するループ3aの数が、円状の状態よりも増大している。
そして、リングゴム5の両側部5b,5bは、その外周面の幅方向の隅角部がループ3a,3a,…の内周面に押圧されることで、外周面の幅方向で湾曲することになる。ここで、リングゴム5の円筒内には、上下方向に延びる円柱状のボス部材35が配設されているので、リングゴム5の両側部5b,5bは、ボス部材35の外周面とコイルばね3のループ3a,3a,…とに挟まれることにより、図3に示すように、上方から見て、当該ループ3a,3a,…の内周面に沿うように湾曲している。このように略長円状に変形したリングゴム5の両側部5b,5bがループ3a,3a,…の内周面に沿うように湾曲することと、コイルばね3が断面略矩形状の角線材からなっていることとが相俟って、従来の丸線材からなるコイルばねを用いた除振装置に比して、リングゴム5とコイルばね3との接触面積が飛躍的に増大する。なお、コイルばね3が断面略矩形状の角線材からなっているので、リングゴム5とコイルばね3との接触面積が大きくなっているにも拘わらず、リングゴム5がコイルばね3の巻線3aの間に入り込み難くなっている。
また、リングゴム5は、その上端が、下部ばねケース7よりも先に上部ばねケース9の頂壁部19と当接するような大きさに設定されている。より詳しくは、リングゴム5の外径寸法は、無負荷状態において、長円形に変形した状態の上端と上部ばねケース9の円形凹部19aの天井面との上下方向の間隔が、下部ばねケース7の下側側壁部27の上端と上部ばねケース9の頂壁部19の下面との上下方向の間隔よりも短くなるように設定されている。これにより、リングゴム5は、サージングを防止するだけではなく、ストッパとしての役割も果たすようになっており、図8に示すように、除振装置1の最大荷重負荷状態においても(リングゴム5が最も変形しても)、下部ばねケース7の下側側壁部27の上端と上部ばねケース9の頂壁部19の下面とが当接しないようになっている。
−除振装置の組立手順−
次いで、除振装置1の組立手順について説明する。
先ず、下部ばねケース7の下方から十字穴付皿小ねじ45をねじ挿入孔17cに挿入し、当該十字穴付皿小ねじ45の軸部を座ぐり凹部17bの下面から突出させる。また、スペーサ25をリングゴム5に貫通形成された挿入孔5aに嵌挿する。
そうして、リングゴム5に嵌挿されたスペーサ25の孔に十字穴付皿小ねじ45の軸部を挿通した後、スペーサ25よりも上方に突出した十字穴付皿小ねじ45の軸部の上部に平ワッシャ65とばね座金55をこの順で嵌める。
次いで、十字穴付皿小ねじ45の軸部の上部にボス部材35を螺合させた後、十字穴付皿小ねじ45を締め付けて、リングゴム5を座ぐり凹部17bに固定する。
そして、軽く窄めたリングゴム5の上端部をコイルばね3のループ3a,3a,…内に嵌入させるように、下部ばねケース7の内部にコイルばね3を押し込み、当該コイルばね3の下端を下部ばねケース7の円形凹部17aの底面に当接させる。このとき、リングゴム5は、略長円状に変形するとともに、その両側部5b,5bが当該ループ3a,3a,…の内周面に沿うように湾曲する。
次いで、下部ばねケース7の外側突条部27a,27aと上部ばねケース9の内側突条部29a,29aとを、水平面内で略90度ずらした状態で、上部ばねケース9を下部ばねケース7に被せるように下部ばねケース7側に押し込む。
そして、下部ばねケース7の外側突条部27a,27aと上部ばねケース9の内側突条部29a,29aとが上下方向にずれた(外側突条部27a,27aが内側突条部29a,29aの上側に位置した)ところで、上部ばねケース9を下部ばねケース7に対して略90度回転させて、上部ばねケース9を押し込む力を弱める。そうすると、外側突条部27a,27aの下面と内側突条部29a,29aの上面とが当接することで、これら外側突条部27a,27aと内側突条部29a,29aとが互いに係合し、除振装置1の組立が完了する。
なお、上部ばねケース9を押し込む力を弱めた際、下部ばねケース7の中心軸線Z1と上部ばねケース9の中心軸線Z2とが多少ずれていても、内側突条部29a,29aの先端が下側傾斜部27b,27bの傾斜面を滑るように外側突条部27a,27aに誘導され、また、外側突条部27a,27aの先端が上側傾斜部29b,29bの傾斜面を滑るように内側突条部29a,29aに誘導されることから、下部ばねケース7の中心軸線Z1と上部ばねケース9の中心軸線Z2とのセンタリングが行われる。
−除振装置の作用−
次いで、除振装置1の作用について説明する。
先ず、顕微鏡15の自重がコイルばね3に作用して上部ばねケース9が下方の正規位置に変位した状態(1G状態)における通常振幅時(人体が感知しない程度の床振動時)には、上部ばねケース9が下部ばねケース7に対し相対的に上下に移動すると、コイルばね3が振動を吸収するとともにリングゴム5が当該コイルばね3の振動を減衰させることにより低動ばねとして機能する。
図9は、本実施形態に係る除振装置1において、コイルばね3とリングゴム5との接触面積を変化させた場合の除振装置1の上下方向の振動伝達率を示すグラフ図である。実施例1(図9の実線)及び実施例2(図9の破線)は、共に弾性ゴムからなるリングゴム5と、断面矩形状の角線材からなるコイルばね3を用いた。なお、実施例1におけるコイルばね3とリングゴム5との接触面積は、実施例2におけるコイルばね3とリングゴム5との接触面積の約1.5倍とした。
図9より、コイルばね3とリングゴム5との接触面積が大きい実施例1の固有振動数f1における共振倍率は、実施例2の固有振動数f2における共振倍率よりも明らかに小さくなることが、すなわち、コイルばね3とリングゴム5との接触面積が大きいほど高い減衰特性が得られることが分かる。
つまり、本実施形態に係る除振装置1では、断面略矩形状の角線材からなるコイルばね3を用いているので、丸線材からなるコイルばねを用いた従来の除振装置よりも、コイルばね3とリングゴム5との接触面積が大きくなり、高い減衰特性を示すことになる。
一方、大振幅時には、上部ばねケース9が下方に大きく移動するが、上述の如く、リングゴム5は、その上端が、下部ばねケース7よりも先に上部ばねケース9と当接するような大きさに設定されているので、両ばねケース7,9は当接し難くなっている。また、リングゴム5の上端が上部ばねケース9の頂壁部19と当接すると、リングゴム5が膨らむことで減衰特性及びコイルばね3のばね定数がさらに向上する。これにより、上部ばねケース9の大きな移動が抑えられる。
−効果−
本実施形態によれば、コイルばね3は断面略矩形状の角線材からなっているので、丸線材からなるコイルばねのようにリングゴム5と線接触するのではなく、面接触することになる。これにより、コイルばね3とリングゴム5との接触面積が大きくなり、高い減衰特性を得ることができる。
また、同じばね特性を有する丸線材からなるコイルばねよりも、ばね高さ及びばね外径が共に小さい角線材からなるコイルばね3を用いることにより、所望のばね特性を維持しつつ除振装置1の小型化を図ることができる。
ところで、丸線材からなるコイルばねを用いた場合には、ゴム弾性体からなるリングゴム5が断面円形のコイルばねの外周面に沿うように変形して、コイルばねの巻線の間に入り込み易くなる。これに対し、本実施形態の除振装置1では、角線材からなるコイルばね3を用いているので、コイルばね3のループ3a,3a,…の内周面とリングゴム5とがほぼ均等に面接触し、リングゴム5がコイルばね3の巻線3aの間に入り込み難くなる。これにより、コイルばね3を正常に収縮させて、除振装置1の除振性能の安定化を図ることができる。
また、略円筒状のリングゴム5の外周面をその弾性反発力によってコイルばね3のループ3a,3a,…の内周面に接触させた状態に維持して、良好なサージング防止性能を安定的に確保することができる。
さらに、略円筒状のリングゴム5を略長円状に変形させてコイルばね3のループ3a,3a,…内に嵌入した構造であるから、リングゴム5の構造が極めて簡単なものになり、リングゴム5のコイルばね3への組付作業を容易に行える。
また、リングゴム5の円筒内には、上下方向に延びるボス部材35が配設されており、リングゴム5の両側部5b,5bは、当該ボス部材35の外周面とコイルばね3のループ3a,3a,…の内周面とに挟まれることにより、上下方向から見て、当該ループ3a,3a,…の内周面に沿うように湾曲している。リングゴム5の両側部5b,5bをこのように湾曲させたことと、コイルばね3として断面略矩形状の角線材を用いたこととが相俟って、リングゴム5の両側部5b,5bの外周面とコイルばね3のループ3a,3a,…の内周面とがより一層面接触し易くなる。これにより、コイルばね3とリングゴム5との接触面積が確実に大きくなり、より一層高い減衰特性を得ることができる。
上述の如く、リングゴム5をその中心軸線が略水平となるようにコイルばね3のループ3a,3a,…内に配置し、水平方向から見て略長円状に変形させているので、リングゴム5の上下方向における中央部は、コイルばね3のループ3a,3a,…の内周面に沿うように上下方向に略直線状に延びる一方、リングゴム5の下端部には、R部5c,5cが不可避的に生じ、当該R部5c,5cでは弾性体の外周面とループ3a,3a,…の内周面とが接触しなくなる。
そこで、本実施形態では、リングゴム5を、下部ばねケース7の底壁部17にコイルばね3の下端よりも下方に凹むように形成されている座ぐり凹部17bに取り付けることによって、リングゴム5の下端部に生じるR部5c,5cを座ぐり凹部17bに収納するようにしている。これにより、上下方向において、コイルばね3とリングゴム5のR部5c,5cとが重なる部分が短くなるので、下部ばねケース7の底壁部17と上部ばねケース9の頂壁部19との間隔が狭くリングゴム5の大きさ(変形した状態における上下方向の長さ)が制限されていても、リングゴム5の外周面とループ3a,3a,…の内周面とが接触しない部分の長さを短くすることができる。したがって、コイルばね3とリングゴム5との接触面積を確実に確保して、より一層高い減衰特性を得ることができる。
上述の如く、上部ばねケース9は下部ばねケース7の上側に位置し且つ当該下部ばねケース7に対し上下方向に相対移動するので、例えば大振幅時には、上部ばねケース9は、当該上部ばねケース9の頂壁部19の底面と下部ばねケース7の下側側壁部27の上端とが当接するまで下方に移動する。
ここで、本実施形態では、リングゴム5は、その上端が下部ばねケース7の下側側壁部27の上端よりも先に上部ばねケース9の頂壁部19の下面と当接するような大きさに設定されているので、上部ばねケース9の頂壁部19の下面と下部ばねケース7の下側側壁部27の上端とが当接する前に、リングゴム5の上端と上部ばねケース9の円形凹部19aの天井面とが接触する。
このように、リングゴム5は、ストッパとしても機能するので、下部ばねケース7と上部ばねケース9との当接による衝撃が顕微鏡15に伝達されるのを抑えることができるとともに、大振幅時における制振効果を高めることができる。
また、外側突条部27a,27aと内側突条部29a,29aとを係合させることにより、除振装置1の組立時や、顕微鏡15を運搬する際など一旦無負荷状態(顕微鏡15による負荷が作用していない状態)とした後に再び除振装置1に負荷をかけるときに、両ばねケース7,9の分離を防げるとともにこれらの軸心を合わせるのが容易になる。これにより、コイルばね3の傾きが抑えられるので、リングゴム5の両側部5b,5bがコイルばね3のループ3a,3a,…の内周面に確実に押し付けられる。
さらに、下部ばねケース7の下側側壁部27の外周面には、内側突条部29a,29aを外側突条部27a,27aに誘導するように、上方に行くほどケース外側に傾斜する傾斜部27b,27bが形成されている一方、上部ばねケース9の上側側壁部29の内周面には、外側突条部27a,27aを内側突条部29a,29aに誘導するように、下方に行くほどケース内側に傾斜する傾斜部29b,29bが形成されているので、下部ばねケース7と上部ばねケース9とを組み付ける際、これらのばねケース7,9の軸心がずれていても、これら傾斜部27b,29b,…に当接した外側及び内側突条部27a,29a,…が互いに引き合うように誘導される。これにより、組立時の両ばねケース7,9の軸心を合わせるのがさらに容易になる。
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
上記実施形態では、除振装置1を顕微鏡15の脚として用いたが、これに限らず、例えば半導体露光装置の脚として用いてもよい。
また、上記実施形態では、リングゴム5を下部ばねケース7の底壁部17に取り付けたが、これに限らず、上部ばねケース9の頂壁部19に座ぐり凹部を設けて、この座ぐり凹部にリングゴム5を取り付けてもよい。
さらに、上記実施形態では、リングゴム5として略円筒状のゴム弾性体をその中心軸線が略水平となるようにコイルばね3のループ3a,3a,…内に配置したが、これに限らず、上下方向に延びる円筒状のゴム弾性体を用いてもよい。
また、上記実施形態では、上部ばねケース9の内径を下部ばねケース7の外径よりも大きく形成したが、これとは逆に、下部ばねケース7の内径を上部ばねケース9の外径よりも大きく形成してもよい。
さらに、上記実施形態では、下部ばねケース7の下側側壁部27の上端部及び上部ばねケース9の上側側壁部29の下端部の外周面の2箇所に間欠的に外側及び内側突条部27a,27a,29a,29aを形成したが、下部及び上部ばねケース7,9の中心軸線Z1,Z2に関して対称に形成される限り、外側及び内側突条部27a,29aを3つ以上形成してもよい。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。