本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のプローブカード用配線基板の一実施形態を示す概略断面図であり、図2はランドに接続されている内部配線層におけるランドに近い領域とランドから遠い領域を示す模式図である。図3は本発明のプローブカードを用いた半導体素子評価装置の説明図である。
図1に示すプローブカード用配線基板1はアルミナ質焼結体からなる複数の絶縁層11a、11b、11cおよび11dが積層された絶縁基体11の内部の層間に内部配線層13および内部配線層13に電気的に接続されたランド15を備えるとともに、上下のランド15を電気的に接続する貫通導体17を備えたものである。この場合、高周波特性に優れるという理由からプローブカード用配線基板1は絶縁基体11の内部の層間にグランド(アース)層を設けることもできる。
絶縁基体11は上述のように複数の絶縁層11a、11b、11cおよび11dからなるもので、それぞれの絶縁層11a、11b、11cおよび11dはアルミナを主結晶とするアルミナ質焼結体で形成されている。アルミナ質焼結体におけるアルミナの割合は85〜95質量%であり粒状または柱状の結晶として存在している。絶縁基体11を構成するアルミナ質焼結体におけるアルミナの割合が85〜95質量%であると、後述する組成をそれぞれ有する内部配線層13、ランド15および貫通導体17との同時焼成において絶縁基体11の緻密化が図れるとともに耐薬品性を高められるからである。
本発明のプローブカード用配線基板1を構成する絶縁基体11を形成するアルミナ質焼結体の相対密度は96%以上であることが重要である。これにより絶縁基体11の耐薬品性を十分に高められる。これに対して絶縁基体11の相対密度が96%より低いと耐薬品性が低下し、高信頼性のプローブカード用配線基板1を得ることができない。
ここで、アルミナ質焼結体で形成された絶縁基体11は、マンガン(Mn)をMn2O3換算で2.5〜7.5質量%、珪素(Si)をSiO2換算で2.5〜7.5質量%含有していることが好ましい。また後述する複合導体との同時焼成において収縮率をより近づけられるという点で、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、硼素(B)およびクロム(Cr)から選ばれる1種以上を酸化物換算(MgO、CaO、SrO、B2O3、Cr2O3)で合計で0.1〜4質量%の割合で含有することが好ましい。さらには絶縁基体11を黒色化するための着色成分としてタングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属を含んでいても良い。
これらアルミナ以外の成分は、アルミナの結晶粒界に非晶質相あるいは結晶相として存在する。ここで、熱伝導性、強度、誘電損失低減、耐薬品性向上の観点から、粒界中に助剤成分を含有する結晶相が多く形成されていることが望ましく、特にMnAl2O4、Mn3Al2Si3O12、MnSiO3、MgAl2O4として存在していることが望ましい。
ここで絶縁基体11の相対密度は以下のようにして求める。まず、プローブカード用配線基板1から内部配線層13、ランド15および貫通導体17の無い部分を切り出し、アルキメデス法により密度を測定する。一方、絶縁基体11を構成する各材料の理論密度から絶縁基体11を構成するアルミナ質焼結体の組成に応じた理論密度D0を求める。次に、これらの値を用いて式(D1/D0)×100(%)から相対密度を求める。この場合、アルキメデス法により測定する試料数は3〜5個とし、これら複数の試料より各々相対密度を求めて平均値より算出する。
耐薬品性については得られたプローブカード用配線基板1を約100℃に加温した水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウムの濃度が35質量%)に数時間浸せきし、その前後の重量変化を測定し、重量変化が0.1質量%以下を耐薬品性が良好なプローブカード用配線基板1とする。
絶縁基体11の内部の層間に設けられた信号伝送用の内部配線層13は、銅を30〜40質量%、タングステンを60〜70質量%の割合で含む複合導体により形成されている。内部配線層13に含まれる銅の含有量が30質量%より少ない場合には内部配線層13の導体抵抗(ここでは測定で得られた導体抵抗をR、測定する内部配線層13の全長をL、当該内部配線層13の幅をWとしたときに、関係式:R×W/Lで表される抵抗値(シート抵抗という。)のことであり単位はmΩ/□。)が3mΩ/□よりも高くなる。一方、銅の含有量を多くした導体ペーストを用いて、焼成後の内部配線層13における銅の含有量が40質量%よりも多くなるような場合には、焼成前の導体ペースト中に含まれる銅粉末の含有量が多いために焼成時に溶融しやすくなり、内部配線層13に部分的に銅の疎満差が生じてしまう。このため内部配線層13のランド15に近い領域とランド15から遠い領域との間で銅の含有率の差が大きくなるために、この場合もシート抵抗が3mΩ/□よりも高くなる。
図2は、ランド15に接続されている内部配線層7におけるランド15に近い領域とランド15から遠い領域を示す模式図である。ここで、円形状をしたランド15と接続されて内部配線層13のうち、ランド15の内部配線層13との接続部位13Cから0.1mm以内の領域を内部配線層13をランドに近い領域13Nと定義し、ランド15と内部配線層13との接続部位13Cから2mm以上離れた部位をランド15から遠い領域13Fと定義する。
絶縁基体11の層間に設けられたランド15は、銅を32〜42質量%、タングステンを58〜68質量%の割合で含む複合導体により形成されており、ランド15における銅の含有率が内部配線層13における銅の含有率よりも多く、かつ内部配線層13のランド15に近い領域13Nとランド15から遠い領域13Fとで銅の含有率がほぼ等しいものである。なお、銅の含有率がほぼ等しいとは、内部配線層13のうちランド15から近い領域13Nにおける銅の含有率と内部配線層13のうちランド15から遠い領域13Fとの間の差が2質量%以下であることをいう。
銅の含有量を少なくした導体ペーストを用いて、焼成後のランド15における銅の含有量が32質量%よりも少なくなるような場合には、焼成前のランド15用の導体ペーストに含まれる銅の含有量が少ないことから内部配線層13のランド15に近い領域の銅が貫通導体17に向けて拡散しやすくなる。このためランド15に近い領域における銅の含有量が低下することから内部配線層13のランド15に近い領域とランド15から遠い領域との間で銅の含有率の差が大きくなるために、この場合もシート抵抗が3mΩ/□よりも高くなる。
一方、銅の含有量を多くした導体ペーストを用いて、焼成後のランド15における銅の含有量が42質量%よりも多くなるような場合には、ランド15用として用いた焼成前の導体ペースト中に含まれる銅粉末の含有量が多いために焼成時にランド15とそのランド15に接した内部配線層13とが部分的に溶融しやすくなる。このためランド15に近い内部配線層13に部分的に銅の疎な部分が形成されやすいことから、この場合もシート抵抗が3mΩ/□よりも高くなる。
本発明のプローブカード用配線基板1では絶縁基体11を構成するアルミナ質焼結体の相対密度が96%以上でありかつ内部配線層13における銅およびタングステンの割合が上述した範囲であるととともに、ランド15における銅の含有率が内部配線層13における銅の含有率よりも多くかつ内部配線層13のランド15に近い領域13Nとランド15から遠い領域13Fとで銅の含有率がほぼ等しいという条件下で、後述する実施例において示されるように内部配線層13のシート抵抗を3mΩ/□以下にすることができる。
これに対して、ランド15の方に内部配線層13よりも銅の含有量の少ない導体ペーストを用いた場合には、絶縁基体11の相対密度が96%以上でありかつ内部配線層13における銅およびタングステンの割合が上述した範囲であるときでも、焼成後のランド15における銅の含有率が内部配線層13における銅の含有率よりも少なくなるか、または内部配線層13のランド15に近い領域13Nとランド15から遠い領域13Fとで銅の含有率に2質量%よりも多くなりやすいことからシート抵抗が3mΩ/□よりも高くなる。
なお、本発明における内部配線層13およびランド15の銅とタングステンとから形成される複合導体中にはタングステンが平均粒径1〜10μmの粒子として銅からなるマトリックス中に分散している。銅とタングステンとから構成される複合導体が銅をマトリクスとした構造であるために、低抵抗を示す方の導体が連続性を有することから銅に多くのタングステンを含ませても低抵抗の導体を得ることができる。
焼成後のプローブカード用配線基板1のランド15および内部配線層13における銅の含有率はプローブカード用配線基板1から切り出した一部の配線基板をその基板に平行に研磨してランド15および内部配線層13を露出させ、露出したランド15および内部配線層13の面に対して波長分散型の分析装置を有する走査型電子顕微鏡を用いて元素マッピング分析を行って求める。分析を行う領域はランド15に近い領域13N、ランド15から遠い領域15F、およびランド15の中央部とする。
また本発明のプローブカード用配線基板1では、ランド15における銅の含有率をA1とし、ランド15から近い領域13Fにおける内部配線層13の銅の含有率をA2とすると、A1/A2の値が1.05〜1.11であることが望ましい。A1/A2の値を1.05〜1.11とすると内部配線層13のシート抵抗を2.8mΩ/□以下にすることができる。
また、本発明のプローブカード用配線基板1は貫通導体17がモリブデンを主成分とする導体材料により形成されている。ここでモリブデンを主成分とするとは不可避不純物を除き金属成分が質量比で90%以上含まれるものをいう。
上記のプローブカード用配線基板1は、例えば図3に示すようなプローブカード2として用いることができる。図3に示すプローブカード2はプローブカード用配線基板1の一方の主面の貫通導体17にそれぞれ接続される表面導体層16を備え、該表面導体層16に半導体素子の電気特性を測定するためのプローブ21が形成され、このプローブ21はプローブカード用配線基板1の内部配線層13、ランド15および貫通導体17を介してプローブ21とは反対の面において半田バンプ3を介して外部回路基板4に接合され外部回路基板4の電気回路と電気的に接続されている。また、外部回路基板4はテスタ5に電気的に接続されている。
そして、ステージ6の上に置かれた半導体ウェハ7の上面にプローブカード2の測定端子21を接触させて半導体素子の電気特性を測定することができる。なお、プローブカード2および外部回路基板4は、昇降装置8によって上下に駆動させることができ、プローブカード2の測定端子21を半導体ウェハ7の上面に接触させたり離したりすることができる。
本発明のプローブカード2は、上述のように、それを構成するプローブカード用配線基板1が緻密で耐薬品性に優れる絶縁基体11とシート抵抗の低い内部配線層13およびランド15との複合導体により構成されている。このためプローブカード2としても導体抵抗が低くかつ耐薬品性の高いプローブカード2を得ることができる。また近年、半導体ウェハの大面積化の進展から大型化が図られているが、本発明のプローブカード用配線基板1は絶縁基体11の主面の面積が300mm×300mm以上であり、厚みが4mm以上であるものにまで適用することができる。
次に、上記のプローブカード用配線基板1の製造方法について説明する。
まず、絶縁基体11を形成するために、アルミナ原料粉末として、純度99%以上、平均粒径が0.5〜2.5μmアルミナの粉末を用いる。これは、平均粒径を0.5μm以上とすることでシート成形性を良好なものとし、2.5μm以下とすることで1500℃以下の温度での焼成によっても緻密化を促進させるためである。
次に、上記のアルミナ原料粉末と、純度99%以上、平均粒径が0.7〜1.7μmのMn2O3粉末と、純度99%以上、平均粒径が1〜3μmのSiO2粉末とを混合する。ここで、混合の割合は、アルミナ原料粉末85〜95質量%、Mn2O3粉末を2.5〜7.5質量%、SiO2粉末を2.5〜7.5質量%とするのが好ましい。これにより、シート成形性を良好なものとし、Mn成分の分散性を向上させ、SiO2とMn化合物との反応性を制御しつつ、MnAl2O4、Mn3Al2Si3O12、MnSiO3などの結晶化および1200℃以上1500℃以下の焼成温度での緻密化を促すことができる。
さらに、アルミナ原料粉末、Mn2O3粉末およびSiO2粉末からなる原料粉末に、Mg、Ca、Sr、BおよびCrの群から選ばれる1種以上の酸化物粉末(MgO粉末、CaO粉末、SrO粉末、B2O3粉末、Cr2O3粉末)または焼成によって酸化物を形成しうる炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩からなる粉末を合計で0.1〜4質量%となる割合で添加してもよい。これにより内部配線層13やランド15を形成する複合導体との同時焼結性を高めることができる。この最適な添加量は合計で0.2〜2.5質量%である。
またさらに、アルミナ質焼結体を黒色化するための着色成分であるW、Moなどの金属を、100質量%の混合粉末に対して2質量%以下の割合で添加しても良い。耐薬品性を向上させることで、この黒色化成分が流出して白色化し認知性が低下してしまうのを防ぐことができる。
そして、この混合粉末に対して有機バインダー、溶媒を添加してセラミックスラリーを調製した後、これをプレス法、ドクターブレード法、圧延法、射出法等の成形方法によって所定の厚みを有するセラミックグリーンシートを作製する。なお、セラミックグリーンシートの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば50〜300μmとすることができる。
そして、適宜、このセラミックグリーンシートに対して、マイクロドリル、レーザー等により直径が50〜250μmの貫通孔を形成する。
このようにして作製されたセラミックグリーンシートに対して、Moを導体成分とし、この導体成分100質量%に対してアルミナ粉末を15質量%以下、特に10質量%以下の割合で添加したものを混合して導体ペーストを作製し、この導体ペーストを各セラミックグリーンシートの貫通孔内に充填を行う。
次に、Cu粉末を30〜40質量%、W粉末を60〜70質量%の比率で混合し、これに有機ビヒクルを添加し混合して導体ペーストを調製し、スクリーン印刷、グラビア印刷などの方法により内部配線層13の印刷を行う。
さらにCu粉末を33〜43質量%、W粉末を57〜67質量%の比率で混合し、これに有機ビヒクルを添加し混合して導体ペーストを調製し、スクリーン印刷、グラビア印刷などの方法により内部配線層13に接続するランド15の印刷を行う。この時、ランド15用の導体ペーストは内部配線層13用の導体ペーストに比較して、銅粉末の比率を多くしたものを用いる。これにより焼成時において内部配線層13からランド15を介して貫通導体17へ銅が拡散しても焼成後にはランド15における銅の含有量が内部配線層13のうちランド15から近い領域13Nにおける銅の含有量よりも多いものとすることができる。そのため内部配線層13のランド15に近い領域13Nおよびランド15から遠い領域13Fにおける銅の含有率がほぼ等しいものとなり、結果的に内部配線層13の導体抵抗の上昇を防ぐことが可能となる。
通常、銅の融点はプローブカード用配線基板1を製造する際の焼成の最高温度と比較してかなり低く、融点以上で銅の流動性が増加しやすい。その結果、ランド15に含まれていた銅が貫通導体17内へ拡散しやすくなり、それに伴い内部配線層13に含まれている銅がランド15側へ拡散してしまう。その結果、内部配線層13の部分的な細りを引き起こしやすく、このため内部配線層13の断面積が著しく減少することになり、十分に低い導体抵抗を得られない。特に、焼成最高温度が1420℃以上になるとこの影響は大きくなる。
このため本発明では、ランド15用の導体ペーストとして内部配線層13用の導体ペーストよりも銅の含有量を多くした導体ペーストを用いることにより、貫通導体17内へ拡散する銅はランド15のみから拡散することとなり、内部配線層13における銅の含有率の低下を防ぎ、内部配線層13の細りを防止することができる。これにより焼成後においても絶縁基体11の内部の層間に設けられた内部配線層13はランド15に近い領域13Nとランド15から遠い領域13Fとで銅の含有率をほぼ等しいものにすることが可能となる。その結果、焼成最高温度が1420℃以上で、室温から40時間以上かけて焼成しても、プローブカード用配線基板1として機能するための十分な低い抵抗値を得ることができる。
この場合、本発明ではランド15用の導体ペーストにおける銅の含有率をa1とし、内部配線層13用の導体ペーストの銅の含有率をa2としたときに、a1−a2の値が3〜7質量%であることが望ましい。ランド15用の導体ペーストと内部配線層13用の導体ペーストとにおける銅の含有率をこのような差にすると、焼成後に得られる内部配線層13のシート抵抗を2.8mΩ/□以下にすることが容易となる。
なお、本発明ではプローブカード用配線基板1の所望の層に高融点導体のみからなるグランド層、または銅とタングステンとの複合導体からなるグランド層を印刷して形成しても良い。
また、これらの導体ペースト中には絶縁層11a、11b、11cおよび11dとの密着性を高めるために、上記の金属粉末以外にアルミナ粉末或いは絶縁基体11と同一組成物の混合粉末を添加しても良く、さらにNi等の活性金属或いはそれらの酸化物を0.05〜2質量%で添加しても良い。
その後、内部配線層13およびランド15となるパターンが印刷されたセラミックグリーンシートの複数枚を位置合わせし積層圧着して積層体を作製する。次いで、この積層体を非酸化性雰囲気中、焼成の最高温度が1410℃以上1480℃以下、特に1420℃以上1460℃以下の温度となる条件下で、最高室温で0.5時間から3時間保持して、室温から40時間以上かけて焼成する。このときの焼成温度が1410℃より低いと、アルミナ質焼結体を相対密度96%以上まで緻密化させることができず、熱伝導性や強度が低いものとなってしまう。一方、焼成温度が1480℃より高いと、銅が流動することから内部配線層13を均一な組織を維持できなくなり、内部配線層13のランド15に近い領域13Nおよびランド15から遠い領域13Fにおける銅の含有率をほぼ等しいものにすることが困難となり、結果的に内部配線層13のシート抵抗を3mΩ/□以下にすることができなくなる。
また、焼成時の非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気或いは窒素と水素との混合雰囲気であることが望ましい。特に、内部配線層13中のCuの拡散を抑制する上では、水素および窒素を含み露点が+30℃以下、特に+25℃以下の非酸化性雰囲気であることが望ましい。なお、この雰囲気には所望によりArガス等の不活性ガスが混入されても良い。
以上述べた方法により作製されたプローブカード用配線基板1は、最高温度を1410℃〜1480℃の温度領域において室温から40時間以上かけて焼成したとしても、銅とタングステンとを主成分として含む内部配線層13およびランドを有し、耐薬品性に優れたものとなる。
純度が99%で平均粒子径が1.8μmのAl2O3粉末を90質量%、純度が99%で平均粒子径が1.5μmのMn2O3粉末を4.5質量%、純度が99%で平均粒子径が1.0μmのSiO2粉末を4.5質量%、純度が99.9%で平均粒子径が0.7μmのMgCO3粉末を1.0質量%の割合で混合した後、さらに、成形用有機樹脂(有機バインダー)としてアクリル系バインダーと、有機溶媒としてトルエンとを混合してセラミックスラリーを調製した後、ドクターブレード法にて410mm×410mm、厚さ250μmのシート状に成形し、セラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートに対して、打抜き加工を施し、直径が150μmの貫通孔を形成した。
次に、純度99.9%、平均粒子径1.2μmのMo粉末95質量%と純度99.9%、平均粒子径1.8μmのアルミナ粉末5質量%とを混合した粉末に対し、アクリル系バインダーと、溶媒としてアセトンとを混合し、Mo導体ペーストを調製し、この導体ペーストをスクリーン印刷法によって上記のセラミックグリーンシートの貫通孔内に充填した。
次に、積層体を作製する際に最上層に配置される、貫通孔内にMo導体ペーストを充填したセラミックグリーンシートに対して、貫通孔内に充填したものと同一のMoを主成分とする導体ペースト(以下、Mo導体ペーストとする。)を用いて、貫通孔を覆うようにスクリーン印刷法にて、直径2mmのパッドを形成した。
次に、純度99%、平均粒子径1.2μmのCu粉末と純度99.9%、平均粒子径1.2μmのW粉末を、表1に示した比率で混合した粉末に対し、アクリル系バインダーと、溶媒としてアセトンとを混合し、CuとWとの複合導体用ペースト(以下、Cu/W導体ペーストとする。)を調製した。
次に、貫通孔内にMo導体ペーストを充填したセラミックグリーンシートとは別のグリーンシートに対して、上記Cu/W導体ペーストを用いてスクリーン印刷法により内部配線パターンを印刷塗布した。なお、内部配線パターンは抵抗測定用として、線幅100μmを有し、長さ20mmからなるものを備えたものである。
さらに、表1に示した比率で調製したCu/W導体ペーストを用いて、スクリーン印刷法により、表1に示した直径を備えたランドパターンを印刷塗布した。ここで、内部配線の端部とランドは電気的に接続されるように位置合わせされたものである。
そして、作製した各セラミックグリーンシートを位置合わせして積層圧着して積層体を作製した。なお、ここで作製された積層体は、全30層のセラミックグリーンシートが積層されたものであり、最上層には抵抗測定用に測定端子を接触させるためのパッドが設けられたセラミックグリーンシートを配置し、2層目には抵抗測定用の内部配線パターンとランドパターンが印刷塗布されたセラミックグリーンシートを配置し、最上層に設けられた貫通孔(Mo導体ペーストが充填されている)と、2層目に印刷塗布されたランドが電気的に接続されるように、位置合わせして作製されたものである。
その後、この積層体を露点25℃で600℃の窒素水素混合雰囲気にて脱脂(脱バインダー)を行った後、表1に示した焼成条件で焼成しプローブカード用配線基板を得た。
得られたプローブカード用配線基板は焼成による収縮により、絶縁基体の主面のサイズが340mm×340mm、厚みが6mmを有するものとなった。
シート抵抗の評価は、2層目の内部配線層に設けられた線幅100μmを有し、長さ20mmからなる導体抵抗評価用パターンを利用し、電気抵抗値をデジタルマルチメーターによる四端子法で測定した。また測定は最上層となる絶縁層の上面に設けられたパッドに測定端子を接触させて、2層目の導体抵抗評価用パターンの両端のランドに電気的に接続された貫通導体を介して行った。このとき、貫通導体の電気抵抗は十分低く無視できるものとし、シート抵抗換算で3.0mΩ/□以下を合格とした。
絶縁基体の相対密度は以下のようにして求めた。まず、作製したプローブカード用配線基板の絶縁基体の部分からダイヤモンドホイールを備えた切断機を用いて、長さ30mm、幅5mmおよび厚み6mmのサイズを有する絶縁片を切り出しアルキメデス法により密度を測定した。一方、絶縁基体を構成する各材料の理論密度から絶縁基体の組成に応じた理論密度D0を求めた。次に、これらの値を用いて式(D1/D0)×100(%)から相対密度を求めた。この場合、アルキメデス法により測定した試料数は3個とし、これら複数の試料より各々相対密度求めて平均値より算出した。焼成後のプローブカード用配線基板のランドおよび内部配線層における銅の含有率はプローブカード用配線基板から切り出した一部の配線基板をその基板に平行に研磨して内部配線層を露出させ、露出したランドおよび内部配線層の面に対して波長分散型の分析装置を有する走査型電子顕微鏡を用いて元素マッピング分析を行って求めた。分析する領域は内部配線層についてはランドとその近傍領域として、円形状をしたランドの内部配線層との接続部位から0.1mm以内の領域と、ランドから遠い領域としてランドと内部配線層との接続部位から2mm離れたところとした。ランドについては当該ランドの中央部を分析した。
耐薬品性については得られたプローブカード用配線基板のうち3枚を100℃に加温した水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウムの濃度が35質量%)に3時間浸せきし、その前後の重量変化を測定した。この場合、重量変化が0.1質量%以下を耐薬品性が良好な試料とした。その結果を表1〜4に示す。
表1〜4から明らかなように、本発明のプローブカード用配線基板を示す試料No.3〜7,12,14,16および17では、いずれも内部配線層の導体抵抗がシート抵抗換算で3.0mΩ/□以下であった。また、絶縁基体を構成するアルミナ質焼結体の相対密度が96%以上であり、耐薬品性も良好であった。この結果、耐薬品性に優れるとともに、低抵抗の内部配線層を有するプローブカード用配線基板を得ることができた。
また、ランドにおける銅の含有率をA1とし、ランドから近い領域における内部配線層の銅の含有率をA2としたときに、A1/A2の値が1.05〜1.11である試料No.4〜7,12,14,16および17では、いずれも内部配線層のシート抵抗が2.8mΩ/□以下であり、より低い導体抵抗を有する内部配線層が配置されたプローブカード用配線基板を得ることができた。
これに対し、本発明範囲外の試料No.1,2,8〜11,13,15,18〜24では、シート抵抗が3mΩ/□よりも高いか、または絶縁基体の相対密度が96%よりも低く、耐薬品性が劣るものであった。
なお、焼成後のプローブカード用配線基板の内部配線層における銅の含有率を、絶縁基体を研磨して内部配線層の断面に対して波長分散型EPMAによる元素マッピング分析を行い求めたところ、シート抵抗が3.0mΩ/□以下である内部配線層のランドに近い領域とランドから遠い領域に含まれる銅の含有率は表2に示すようにほぼ同等であり、導体ペースト調製時の調合比率とも近いものであることを確認した。また、同様に、分析によりランドにおける銅の含有量と内部配線層における銅の含有量とを比較したところ、焼成後においても、ランドと内部配線層とでは、表2,3に示したような銅の含有量の差を有するものであることを確認した。