JP5198502B2 - 電池寿命判定装置及び電池寿命判定方法 - Google Patents

電池寿命判定装置及び電池寿命判定方法 Download PDF

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Description

本発明は、無停電電源装置などに用いる蓄電池の寿命を判定する電池寿命判定装置及び電池寿命判定方法に関するものであり、より詳しくは、ニッケル・水素蓄電池独自の挙動に基づいて高精度に寿命を判定する電池寿命判定装置及び電池寿命判定方法に関するものである。
無停電電源装置(UPS)などのように、バックアップ用の蓄電池を内蔵した装置においては、蓄電池の寿命を検知することが保守点検の上から重要である。ニッケル・水素蓄電池の寿命の劣化は、一般的に負極の水素吸蔵合金の腐食が主要因となるが、使用温度、放電回数、経過時間、及び放電時の負荷電力の大きさなどの要因により影響されることも多い。このように寿命を判定する要素は多様であり、使用中の蓄電池の寿命を正確に判定することは容易ではない。
従来、ニッケル・水素蓄電池の容量や寿命を判定するため、寿命末期の内部抵抗増加や、放電時の電圧変化を、寿命を判定するパラメータとして用いることが提案されている。例えば、特許文献1の装置は、複数の放電電流値に対応する放電電圧値の分布に基づいてその勾配を演算して劣化判定を行っている。また、特許文献2の装置は、放電中に測定する内部抵抗や電池電圧を初期と相対比較して劣化判定を行っている。このような寿命判定方法は、蓄電池の内部抵抗と、これによりもたらされる電圧変化及び蓄電池の寿命との相関関係に着目したもので、短期間にある程度の寿命を予測することができるという点では効果がある。
一方、放電負荷電力値から期待寿命値を算出し、この期待寿命値と、放電回数を変数とする一次関数として算出した寿命低下量との差を残存寿命値として算出し、蓄電池の寿命を判定する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法は、蓄電池を強制的に放電させることなく、精度の高い期待寿命値を適切に補正しつつ活用できるので、鉛蓄電池などでは効果がある。
特開平8−138759号公報 特開2000−215923号公報 特開2000−243459号公報
しかしながら、特許文献1及び2の方法では、内部抵抗がある程度上昇しないと寿命の判定ができない上に、寿命劣化の要因となる放電頻度及び蓄電池温度などが考慮されていない。さらに、特許文献3の方法では、ニッケル・水素蓄電池独自の劣化挙動(負極の水素吸蔵合金の腐食)のため、寿命判定に用いる式は放電回数を変数とする一次関数にはならない。このため、いずれの場合も残存寿命値が実績値から大きく乖離するという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、蓄電池の寿命を正確に判定することができる電池寿命判定装置及び電池寿命判定方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る電池寿命判定装置は、放電時に蓄電池に印加される負荷電力及び前記蓄電池が設置された場所の環境温度と、前記蓄電池の寿命との関係を示す寿命データを記憶する寿命データ記憶部と、前記蓄電池に印加される負荷電力を測定する負荷電力測定部と、前記環境温度を測定する環境温度測定部と、前記寿命データ記憶部に記憶されている前記寿命データを参照し、前記負荷電力測定部によって測定された負荷電力及び前記環境温度測定部によって測定された環境温度に対応する寿命を期待寿命値として選択する期待寿命値選択部と、前記蓄電池の放電回数を計数する放電回数計数部と、前記放電回数計数部によって計数された放電回数を時間に変換した値を変数とする自然対数関数に基づいて、前記期待寿命値を低下させるための第1寿命低下量を算出する第1寿命低下量算出部と、充放電時又は休止時における前記蓄電池の温度の平均値を算出する平均値算出部と、前記蓄電池を設置してからの経過時間を計数する経過時間計数部と、前記平均値算出部によって算出された蓄電池温度の平均値と、前記環境温度測定部によって測定された環境温度と、前記経過時間計数部によって計数された経過時間とに基づいて、前記期待寿命値を低下させるための第2寿命低下量を算出する第2寿命低下量算出部と、前記期待寿命値選択部によって選択された期待寿命値から前記第1寿命低下量算出部によって算出された第1寿命低下量及び前記第2寿命低下量算出部によって算出された第2寿命低下量を減算して残存寿命値を算出する残存寿命値算出部とを備える。
本発明に係る電池寿命判定方法は、放電時に蓄電池に印加される負荷電力を測定する負荷電力測定ステップと、前記蓄電池が設置された場所の環境温度を測定する環境温度測定ステップと、放電時に前記蓄電池に印加される負荷電力及び前記蓄電池の環境温度と、前記蓄電池の寿命との関係を示す寿命データを参照し、前記負荷電力測定ステップにおいて測定された負荷電力及び前記環境温度測定ステップにおいて測定された環境温度に対応する寿命を期待寿命値として選択する期待寿命値選択ステップと、前記蓄電池の放電回数を計数する放電回数計数ステップと、前記放電回数計数ステップによって計数された放電回数を時間に変換した値を変数とする自然対数関数に基づいて、前記期待寿命値を低下させるための第1寿命低下量を算出する第1寿命低下量算出ステップと、充放電時又は休止時における前記蓄電池の温度の平均値を算出する平均値算出ステップと、前記蓄電池を設置してからの経過時間を計数する経過時間計数ステップと、前記平均値算出ステップにおいて算出された蓄電池温度の平均値と、前記環境温度測定ステップにおいて測定された環境温度と、前記経過時間計数ステップにおいて計数された経過時間とに基づいて、前記期待寿命値を低下させるための第2寿命低下量を算出する第2寿命低下量算出ステップと、前記期待寿命値選択ステップにおいて選択された期待寿命値から前記第1寿命低下量算出ステップにおいて算出された第1寿命低下量及び前記第2寿命低下量算出ステップにおいて算出された第2寿命低下量を減算して残存寿命値を算出する残存寿命値算出ステップとを含む。
これらの構成によれば、放電時に蓄電池に印加される負荷電力及び蓄電池が設置された場所の環境温度と、蓄電池の寿命との関係を示す寿命データが寿命データ記憶部に記憶されている。そして、蓄電池に印加される負荷電力と、環境温度とが測定され、寿命データ記憶部に記憶されている寿命データが参照され、測定された負荷電力及び環境温度に対応する寿命が期待寿命値として選択される。蓄電池の放電回数が計数され、計数された放電回数を時間に変換した値を変数とする自然対数関数に基づいて、期待寿命値を低下させるための第1寿命低下量が算出される。続いて、充放電時又は休止時における蓄電池の温度の平均値が算出される。蓄電池を設置してからの経過時間が計数され、算出された蓄電池温度の平均値と、測定された環境温度と、計数された経過時間とに基づいて、期待寿命値を低下させるための第2寿命低下量が算出される。その後、期待寿命値から第1寿命低下量及び第2寿命低下量が減算されて残存寿命値が算出される。
したがって、負荷電力及び環境温度に対応する寿命が期待寿命値として選択され、放電回数を時間に変換した値を変数とする自然対数関数に基づいて算出された第1寿命低下量と、蓄電池温度の平均値と環境温度と経過時間とに基づいて算出された第2寿命低下量とが期待寿命値から減算されるので、停電時のバックアップ放電と、蓄電池を設置してからの環境温度や経過時間などの放電回数とは直接係わらない因子とが蓄電池の寿命に及ぼす影響を蓄電池の寿命の判定に反映させることができ、蓄電池の寿命を正確に判定することができる。
また、上記の電池寿命判定装置において、前記第2寿命低下量算出部は、前記平均値算出部によって算出された蓄電池温度の平均値と前記環境温度測定部によって測定された環境温度との差を変数とする指数関数の値と、前記経過時間計数部によって計数された経過時間とを乗算して第2寿命低下量を算出することが好ましい。
この構成によれば、算出された蓄電池温度の平均値と測定された環境温度との差を変数とする指数関数の値と、計数された経過時間とが乗算されて第2寿命低下量が算出されるので、第2寿命低下量を正確に算出することができる。
また、上記の電池寿命判定装置において、前記環境温度測定部によって測定された環境温度と前記平均値算出部によって算出された蓄電池温度の平均値との差を変数とする指数関数の値と、前記期待寿命値選択部によって選択された期待寿命値とを乗算して随時期待寿命値を算出する随時期待寿命値算出部をさらに備え、前記残存寿命値算出部は、前記随時期待寿命値算出部によって算出された前記随時期待寿命値から前記第1寿命低下量算出部によって算出された第1寿命低下量及び前記第2寿命低下量算出部によって算出された第2寿命低下量を減算して残存寿命値を算出することが好ましい。
この構成によれば、測定された環境温度と算出された蓄電池温度の平均値との差を変数とする指数関数の値と、選択された期待寿命値とが乗算されて随時期待寿命値が算出される。そして、算出された随時期待寿命値から第1寿命低下量及び第2寿命低下量が減算されて残存寿命値が算出される。したがって、期待寿命値が随時適正な値に修正され、適正な値に修正された期待寿命値(随時期待寿命値)を用いて残存寿命値が算出されるので、残存寿命値の精度をさらに向上させることができる。
また、上記の電池寿命判定装置において、前記残存寿命値算出部によって算出された前記残存寿命値を記憶する寿命値記憶部をさらに備え、前記残存寿命値算出部は、前記寿命値記憶部に記憶されている前回算出した前記残存寿命値を読み出し、読み出した前記残存寿命値から前記第1寿命低下量及び前記第2寿命低下量を減算して最新の残存寿命値を算出することが好ましい。
この構成によれば、算出された残存寿命値が寿命値記憶部に記憶される。そして、寿命値記憶部に記憶されている前回算出した残存寿命値が読み出され、読み出された残存寿命値から第1寿命低下量及び第2寿命低下量が減算されて最新の残存寿命値が算出される。したがって、前回算出した残存寿命値から第1寿命低下量及び第2寿命低下量が減算されて最新の残存寿命値が算出されるので、残存寿命値の算出精度を向上させることができ、蓄電池の寿命をさらに正確に判定することができる。
また、上記の電池寿命判定装置において、前記蓄電池は、ニッケル・水素蓄電池を含むことが好ましい。上述したように、ニッケル・水素蓄電池の寿命は、負極の水素吸蔵合金の腐食が主要因となる。水素吸蔵合金は初期の充放電時に水素の吸蔵・放出に伴う体積変化に起因して、急激に自己粉砕される。この際、水素吸蔵合金の腐食は加速されるが、ある程度放電回数が重なると、自己粉砕の沈静によって腐食は抑制される。これに加えて、放電回数とは係わりなくニッケル・水素蓄電池を設置してからの経過時間に伴って、水素吸蔵合金の表面から金属イオンが溶出する腐食反応が進行する。この腐食反応は環境温度が高いほど加速される傾向がある。そのため、活物質が溶解析出することによって充放電が繰り返される鉛蓄電池などとは異なり、ニッケル・水素蓄電池特有の寿命劣化は、放電回数に基づいて算出される寿命低下量を、蓄電池を設置してからの環境温度や経過時間などの放電回数とは直接係わらない因子によって補正することにより表される。したがって、ニッケル・水素蓄電池の特性に応じて寿命を正確に算出することができる。
また、上記の電池寿命判定装置において、前記蓄電池は、前記電池寿命判定装置の各部と一体に設けられていることが好ましい。この構成によれば、蓄電池が、電池寿命判定装置の各部と一体に設けられているので、取り扱いが容易となる。また、蓄電池と電池寿命判定装置の計数部及び測定部とを接続する距離が短くなり、配線を短くすることができる。
また、上記の電池寿命判定装置において、前記残存寿命値算出部によって算出された前記残存寿命値をユーザに報知する報知部をさらに備えることが好ましい。この構成によれば、算出された残存寿命値がユーザに報知されるので、ユーザは蓄電池の残存寿命を知ることができ、残存寿命が少なくなった蓄電池に対して適切に対応することができる。
また、上記の電池寿命判定装置において、前記残存寿命値算出部によって算出された前記残存寿命値を送信する送信部をさらに備えることが好ましい。この構成によれば、算出された残存寿命値が送信されるので、残存寿命値を受信した機器は、残存寿命値に応じた動作を行うことができる。
また、上記の電池寿命判定装置において、前記残存寿命値算出部によって算出された前記残存寿命値に基づいて前記蓄電池の充電を制御する充電制御部をさらに備えることが好ましい。この構成によれば、算出された残存寿命値に基づいて蓄電池の充電が制御されるので、残存寿命値に応じて蓄電池の充電を制御することができる。
本発明によれば、負荷電力及び環境温度に対応する寿命が期待寿命値として選択され、放電回数を時間に変換した値を変数とする自然対数関数に基づいて算出された第1寿命低下量と、蓄電池温度の平均値と環境温度と経過時間とに基づいて算出された第2寿命低下量とが期待寿命値から減算されるので、停電時のバックアップ放電と、蓄電池を設置してからの環境温度や経過時間などの放電回数とは直接係わらない因子とが蓄電池の寿命に及ぼす影響を蓄電池の寿命の判定に反映させることができ、蓄電池の寿命を正確に判定することができる。
実施の形態1における電池寿命判定装置の構成を示すブロック図である。 実施の形態1に係る電池寿命判定装置の動作を説明するためのフローチャートである。 実施の形態2における電池寿命判定装置の構成を示すブロック図である。 実施の形態2に係る電池寿命判定装置の動作を説明するためのフローチャートである。 実施の形態3における電池寿命判定装置の構成を示すブロック図である。 実施の形態3に係る電池寿命判定装置の動作を説明するためのフローチャートである。 実施例6、実施例1及び参考例において、経過時間に対する残存寿命値の推移を示す図である。
以下、本実施の形態に係る電池寿命判定装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明はその要点を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における電池寿命判定装置の構成を示すブロック図である。図1において、電池寿命判定装置1は、寿命判定部2と無停電電源装置に内蔵している蓄電池3とを備える。なお、蓄電池3は、具体的にはニッケル・水素蓄電池により構成される。
寿命判定部2は、負荷電力測定部4、寿命データ記憶部5、環境温度測定部6、期待寿命値選択部7、放電回数計数部8a、経過時間計数部8b、蓄電池温度測定部9、平均値算出部10、残存寿命表示部11、制御部12、充電制御部13及び通信部14を備える。
負荷電力測定部4は、負荷電力の値を測定する。寿命データ記憶部5は、一定間隔の環境温度毎に負荷電力と蓄電池寿命との関係を予め求めた寿命データを負荷電力−蓄電池寿命テーブルの形で記憶する。環境温度測定部6は、蓄電池3が設置された場所の環境温度を測定する。期待寿命値選択部7は、負荷電力測定部4で測定された負荷電力及び環境温度測定部6で測定された環境温度を基に、寿命データ記憶部5に記憶された寿命データから期待寿命値を選択する。
放電回数計数部8aは、蓄電池3の放電回数を計数する。経過時間計数部8bは、蓄電池3を設置してからの経過時間を計数する。蓄電池温度測定部9は、一定の時間間隔で蓄電池温度を測定する。平均値算出部10は、蓄電池温度測定部9で測定された蓄電池温度の和を測定回数で割って平均値を算出する。
制御部12は、第1寿命低下量算出部12a、第2寿命低下量算出部12b及び残存寿命値算出部12cを備える。第1寿命低下量算出部12aは、放電回数計数部8aによって計数された放電回数を時間に変換して寿命低下量に換算する。第2寿命低下量算出部12bは、平均値算出部10によって算出された蓄電池温度の平均値と、経過時間計数部8bによって計数された経過時間とを寿命低下量に換算する。残存寿命値算出部12cは、期待寿命値選択部7によって選択された期待寿命値から第1寿命低下量算出部12aによって算出された第1寿命低下量及び第2寿命低下量算出部12bによって算出された第2寿命低下量を減算して残存寿命値を算出する。
具体的には、期待寿命値をL、放電回数をN、第1寿命低下量をL、蓄電池を設置してからの経過時間をD、一定の時間間隔で測定した充放電時又は休止時の蓄電池温度の平均値をT、期待寿命値算出時の環境温度をT、第2寿命低下量をL、残存寿命値をLとした場合、以下に示すように、第1寿命低下量Lは下記の(1)式で、第2寿命低下量Lは下記の(2)式で、残存寿命値Lは下記の(3)式でそれぞれ表される。
=a×ln(b×N)+c・・・(1)
=d×D×2〔Tm−T0/10〕・・・(2)
L=L−(L+L)・・・(3)
ここで、a、b、c及びdは定数である。またlnは自然対数の関数であることを示す。
第1寿命低下量Lは、負極の水素吸蔵合金の腐食の程度に応じて増加する。そのため、電池構成条件を変更して腐食を抑制したり、腐食の影響を受けにくくしたりした場合、値が小さくなる。なお、定数a,bの値はニッケル・水素蓄電池の構造、例えばセパレータの厚みによって変わるが、定数cの値はニッケル・水素蓄電池においてはほぼ一定である。ここで定数bの値は、放電回数Nを時間に変換する次元を有する。第1寿命低下量算出部12aは、放電回数計数部8aによって計数された放電回数Nを時間に変換した値を変数とする自然対数関数から第1寿命低下量Lを算出する。
さらに、平均値算出部10は、一定の時間間隔で測定された充放電時又は休止時の蓄電池温度の平均値Tを算出し、第2寿命低下量算出部12bは、この蓄電池温度の平均値Tと環境温度の測定値Tとの差を変数とする指数関数の値と、蓄電池を設置してからの経過時間Dとを乗算して第2寿命低下量Lを算出する。残存寿命値算出部12cは、期待寿命値Lから第1寿命低下量L及び第2寿命低下量Lを減算した値を残存寿命値Lとして算出し、寿命を判定する。ニッケル・水素蓄電池の寿命は、電池自身の温度上昇に伴い指数関数的に低下する。これは高温下において、水素吸蔵合金の腐食が常温下よりも加速されるためである。この要素を第1寿命低下量Lに加えることにより、ニッケル・水素蓄電池の寿命を正確に判定することができる。
第2寿命低下量Lは、蓄電池温度の平均値Tに応じて変動する。そのため、電池の構成条件を変更して発熱を抑制したり放熱性を向上したりした場合、第2寿命低下量Lは小さくなる。なお、定数dは蓄電池の種類に応じてほぼ一定の値となる。
充電制御部13は、残存寿命値算出部12cによって算出された残存寿命値に基づいて蓄電池3の充電を制御する。通信部14は、無停電電源装置本体15と通信する。通信部14は、残存寿命値算出部12cによって算出された残存寿命値を無停電電源装置本体15へ送信する。残存寿命表示部11は、残存寿命値算出部12cによって算出された残存寿命値を表示する。
なお、蓄電池3は、電池寿命判定装置1の各部と一体に設けられている。これにより、蓄電池3が、電池寿命判定装置1の各部と一体に設けられているので、取り扱いが容易となる。また、蓄電池3と電池寿命判定装置1の計数部及び測定部とを接続する距離が短くなり、配線を短くすることができる。
なお、本実施の形態において、蓄電池3は、電池寿命判定装置1の各部と一体に設けられているが、本発明は特にこれに限定されず、蓄電池を入れ替え(着脱)可能に構成してもよい。すなわち、電池寿命判定装置1は、蓄電池3が入れ替えられたことを検知する検知部と、検知部によって蓄電池3が入れ替えられたことが検知された場合、放電回数及び経過時間をリセットするリセット部とをさらに備えてもよい。この場合、新たな蓄電池3が挿入されたことが検知され、放電回数及び経過時間がリセットされるので、蓄電池の残存寿命値が規定値に達し、寿命と判定されたとしても、蓄電池を入れ替えることができ、新たな蓄電池の寿命判定を行うことができる。
次に、図1に示す電池寿命判定装置を用いた電池寿命判定方法について、フローチャートに基づいて具体的に説明する。図2は、実施の形態1に係る電池寿命判定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
無停電電源装置に内蔵しているニッケル・水素蓄電池3が放電を始めると、電池寿命判定装置1が作動を開始し、期待寿命値Lを求める動作(ステップS2〜S5)、第1寿命低下量Lを求める動作(ステップS6,S7)及び第2寿命低下量Lを求める動作(ステップS8〜S11)が行われる。なお、本実施の形態では、期待寿命値Lを求める動作、第1寿命低下量Lを求める動作及び第2寿命低下量Lを求める動作を時系列的に行っているが、本発明は特にこれに限定されず、各動作の順番を入れ替えてもよく、また、各動作を並列的に行ってもよい。
まず、制御部12は、無停電電源装置に内蔵しているニッケル・水素蓄電池3が放電を開始したか否かを判断する(ステップS1)。ここで、放電を開始していないと判断された場合(ステップS1でNO)、蓄電池3が放電を開始するまで待機状態となる。
一方、放電を開始したと判断された場合(ステップS1でYES)、環境温度測定部6は、蓄電池3が設置されている場所の環境温度Tを測定する(ステップS2)。次に、負荷電力測定部4は、放電時に蓄電池3に印加される負荷電力の値を測定する(ステップS3)。通常、負荷電力の値は、放電レートを表す放電電流の時間率で示される。
次に、期待寿命値選択部7は、負荷電力測定部4によって測定された負荷電力の測定値を、環境温度測定部6によって測定された環境温度に最も近い負荷電力−蓄電池寿命テーブルの値と照合する(ステップS4)。予め、一定間隔の環境温度毎に、放電時に蓄電池に印加される負荷電力と蓄電池寿命との関係を求め、このデータをメモリなどの寿命データ記憶部5に負荷電力−蓄電池寿命テーブルとして記憶しておく。つまり、寿命データ記憶部5は、環境温度毎に負荷電力−蓄電池寿命テーブルを記憶している。次に、期待寿命値選択部7は、負荷電力−蓄電池寿命テーブルから負荷電力値に応じた期待寿命値Lを選択し、制御部12へ出力する(ステップS5)。
次に、放電回数計数部8aは、蓄電池3の放電回数Nを計数し、制御部12へ出力する(ステップS6)。次に、第1寿命低下量算出部12aは、(1)式に基づいて放電回数Nを時間に変換したものを変数とする自然対数関数として第1寿命低下量Lを算出する(ステップS7)。
次に、平均値算出部10は、一定の時間間隔毎に測定された蓄電池3の温度(蓄電池温度)を蓄電池温度測定部9から取得する(ステップS8)。蓄電池温度測定部9は、一定の時間間隔毎に蓄電池3の温度を測定している。
次に、平均値算出部10は、蓄電池温度測定部9によって測定された蓄電池温度と測定回数とに基づいて平均値Tを算出する(ステップS9)。次に、経過時間計数部8bは、蓄電池3を設置してからの経過時間Dを計数する(ステップS10)。
次に、第2寿命低下量算出部12bは、経過時間計数部8bによって計数された経過時間Dと、平均値算出部10によって算出された蓄電池温度の平均値Tと、環境温度測定部6によって測定された環境温度Tとを(2)式に代入することにより第2寿命低下量Lを算出する(ステップS11)。
次に、残存寿命値算出部12cは、(3)式に基づいて残存寿命値Lを算出する。すなわち、残存寿命値算出部12cは、期待寿命値選択部7によって選択された期待寿命値Lから、第1寿命低下量算出部12aによって算出された第1寿命低下量L及び第2寿命低下量算出部12bによって算出された第2寿命低下量Lを減算し、残存寿命値Lを算出する(ステップS12)。
このようにして求めた残存寿命値Lは、制御部12から残存寿命表示部11に出力される。残存寿命表示部11は、例えば液晶ディスプレイなどで構成され、残存寿命値算出部12cによって算出された残存寿命値Lを画面上に表示する。なお、本実施の形態では、残存寿命値を表示することにより、ユーザに残存寿命値を報知しているが、本発明は特にこれに限定されず、LEDなどの点灯あるいは音などにより使用者に寿命を告知してもよい。
例えば、LEDを用いて残存寿命値をユーザに報知する場合、制御部12は、残存寿命値に応じた色でLEDを発光させたり、残存寿命値が規定値に達したか否かを判断し、規定値に達した場合にLEDを点灯させたりする。例えば、制御部12は、残存寿命値が0に達した場合にLEDを点灯させる。また、例えば、音声などにより残存寿命値をユーザに報知する場合、制御部12は、残存寿命値算出部12cによって算出された残存寿命値に応じた音声をスピーカから出力したり、残存寿命値が規定値に達したか否かを判断し、規定値に達した場合に予め決められている音声をスピーカから出力させたりする。例えば、制御部12は、残存寿命値が0に達した場合に予め決められている音声をスピーカから出力させる。
また、残存寿命値Lは、通信部14を介して無停電電源装置本体15に送信される。無停電電源装置本体15は、通信部14によって送信された残存寿命値Lを受信する。無停電電源装置本体15は、残存寿命表示部を備えており、受信した残存寿命値Lを残存寿命表示部に表示する。本実施の形態では、電池寿命判定装置1が残存寿命表示部11を備えている。しかしながら、電池寿命判定装置1が残存寿命表示部を備えておらず、無停電電源装置本体15が残存寿命表示部を備えていてもよい。この場合、無停電電源装置本体15の残存寿命表示部は、通信部14によって送信された残存寿命値Lを表示する。
さらに、充電制御部13は、残存寿命値Lに基づいて、放電しているニッケル・水素蓄電池3の充電を制御する。例えば、充電制御部13は、残存寿命値Lが規定値以下になった場合に充電を行わないよう制御する。
なお、一般にニッケル・水素蓄電池は使用者の目に触れ難い場所に設置されているので、無停電電源装置本体の制御部のように、使用者の目に触れ易い部分に残存寿命表示部11を設けるのが効果的である。
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2に係る電池寿命判定装置について説明する。実施の形態2に係る電池寿命判定方法は、ニッケル・水素蓄電池の寿命をさらに正確に判定することができる。実施の形態2に係る電池寿命判定方法は、環境温度の測定値と蓄電池温度の平均値との差を変数とする指数関数の値と、初期の期待寿命値とを乗算して随時期待寿命値を算出し、随時期待寿命値から第1寿命低下量及び第2寿命低下量を減算した値を残存寿命値として算出し、寿命を判定する。
上述した実施の形態1の電池寿命判定方法における期待寿命値L(初期期待寿命値と同義)は、厳密には蓄電池の温度履歴により指数関数的に変化する。この要素を実施の形態1の電池寿命判定方法に加えることにより、ニッケル・水素蓄電池の寿命をさらに正確に判定することができる。
図3は、実施の形態2における電池寿命判定装置の構成を示すブロック図である。なお、図3において、実施の形態1と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図3に示す寿命判定部2は、負荷電力測定部4、寿命データ記憶部5、環境温度測定部6、期待寿命値選択部7、放電回数計数部8a、経過時間計数部8b、蓄電池温度測定部9、平均値算出部10、残存寿命表示部11、制御部12、充電制御部13及び通信部14を備える。
制御部12は、第1寿命低下量算出部12a、第2寿命低下量算出部12b、残存寿命値算出部12c及び随時期待寿命値算出部12dを備える。随時期待寿命値算出部12dは、寿命データ記憶部5から読み出された期待寿命値に平均値算出部10からの情報を加味して随時期待寿命値を算出する。すなわち、随時期待寿命値算出部12dは、環境温度測定部6によって測定された環境温度と平均値算出部10によって算出された蓄電池温度の平均値との差を変数とする指数関数の値と、期待寿命値選択部7によって選択された期待寿命値とを乗算して随時期待寿命値を算出する。
残存寿命値算出部12cは、随時期待寿命値算出部12dによって算出された随時期待寿命値から第1寿命低下量算出部12aによって算出された第1寿命低下量及び第2寿命低下量算出部12bによって算出された第2寿命低下量を減算して残存寿命値を算出する。
具体的には、期待寿命値をL、随時期待寿命値をL、第1寿命低下量をL、期待寿命値Lの算出時の環境温度をT、充放電時又は休止時の蓄電池温度の平均値をT、第2寿命低下量をL、残存寿命値をLとした場合、以下に示すように、随時期待寿命値Lは下記の(4)式で、残存寿命値Lは下記の(5)式でそれぞれ表される。
=L×2〔T0−Tm/10〕・・・(4)
L=L−(L+L)・・・(5)
次に、図3に示す電池寿命判定装置を用いた電池寿命判定方法について、フローチャートに基づいて具体的に説明する。図4は、実施の形態2に係る電池寿命判定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図4のステップS21〜S25の処理は、図2のステップS1〜S5の処理と同じであるので説明を省略する。実施の形態2の電池寿命判定方法では、初期の期待寿命値Lを求める処理(ステップS5)までは、実施の形態1の電池寿命判定方法と同じであるが、それ以降の動作が異なっている。
平均値算出部10は、一定の時間間隔毎に測定された蓄電池3の温度(蓄電池温度)を蓄電池温度測定部9から取得する(ステップS26)。蓄電池温度測定部9は、一定の時間間隔毎に蓄電池3の温度を測定する。次に、平均値算出部10は、蓄電池温度測定部9によって測定された蓄電池温度と測定回数とに基づいて平均値Tを算出する(ステップS27)。
次に、随時期待寿命値算出部12dは、環境温度測定部6によって測定された環境温度Tと平均値算出部10によって算出された蓄電池温度の平均値Tとを(4)式に代入することにより随時期待寿命値Lを算出する(ステップS28)。
なお、図4のステップS29〜S32の処理は、図2のステップS6,S7,S10,S11の処理と同じであるので説明を省略する。
ついで、残存寿命値算出部12cは、随時期待寿命値算出部12dによって算出された随時期待寿命値Lから第1寿命低下量Lと第2寿命低下量Lとを減ずることにより、残存寿命値Lを算出し、ニッケル・水素蓄電池3の寿命を判定する(ステップS33)。ステップS34の処理は、図2のステップS13の処理と同じである。
実施の形態2の電池寿命判定方法によれば、放電時にニッケル・水素蓄電池3に印加される負荷電力値から寿命値を算出するのに、予め負荷電力及び環境温度と寿命との関係を示す寿命データを用意し、この寿命データから負荷電力と環境温度の測定値に対応する寿命を選択して期待寿命値とするので、寿命を正確に予測することができる。しかも、実際の停電によって蓄電池3が本来のバックアップ機能を発揮して放電している場合には、その放電により劣化する蓄電池3の寿命が補正されるので、ニッケル・水素蓄電池の寿命を正確に精度よく判定することができる。
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3に係る電池寿命判定装置について説明する。実施の形態3に係る電池寿命判定方法は、ニッケル・水素蓄電池の寿命をさらに正確に判定することができる。実施の形態3に係る電池寿命判定方法は、期待寿命値から第1寿命低下量及び第2寿命低下量を減算して残存寿命値を算出した後、残存寿命値を記憶する。そして、第1寿命低下量及び第2寿命低下量を減算する毎に残存寿命値を更新して寿命を判定する。
上述した実施の形態1の電池寿命判定方法において、第1寿命低下量及び第2寿命低下量を算出し、残存寿命値から第2寿命低下量を減算する間隔が短い程、残存寿命値の精度は向上する。この要素を実施の形態1の電池寿命判定方法に加えることにより、ニッケル・水素蓄電池の寿命をさらに正確に判定することができる。
図5は、実施の形態3における電池寿命判定装置の構成を示すブロック図である。なお、図5において、実施の形態1と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図5に示す寿命判定部2は、負荷電力測定部4、寿命データ記憶部5、環境温度測定部6、期待寿命値選択部7、放電回数計数部8a、経過時間計数部8b、蓄電池温度測定部9、平均値算出部10、残存寿命表示部11、制御部12、充電制御部13、通信部14及び寿命値記憶部16を備える。制御部12は、第1寿命低下量算出部12a、第2寿命低下量算出部12b及び残存寿命値算出部12cを備える。
寿命値記憶部16は、残存寿命値算出部12cによって算出された残存寿命値を記憶する。残存寿命値算出部12cは、寿命値記憶部16に記憶されている前回算出した残存寿命値を読み出し、読み出した残存寿命値から第1寿命低下量及び第2寿命低下量を減算して最新の残存寿命値を算出する。そして、残存寿命値算出部12cは、算出した最新の残存寿命値を寿命値記憶部16に記憶し、寿命値記憶部16の内容を更新する。
具体的には、初期の期待寿命値をL、第1寿命低下量をL、初期期待寿命値Lの算出時の環境温度をT、充放電時又は休止時の蓄電池温度の平均値をT、第2寿命低下量をL、最新の残存寿命値をL、前回の残存寿命値をLX−1、残存寿命値から第2寿命低下量Lを減算する間隔をDとした場合、以下に示すように、第2寿命低下量Lは下記の(6)式で、残存寿命値Lは下記の(7)式でそれぞれ表される。
=d×D×2〔Tm−T0/10〕・・・(6)
=LX−1−(L+L) {X≧1}・・・(7)
次に、図5に示す電池寿命判定装置を用いた電池寿命判定方法について、フローチャートに基づいて具体的に説明する。図6は、実施の形態3に係る電池寿命判定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図6のステップS41の処理は、図2のステップS1の処理と同じであるので説明を省略する。ステップS42において、制御部12は、残存寿命値の算出回数Xが1であるか否かを判断する。制御部12は、残存寿命値の算出回数を記憶している。ここで、算出回数Xが1であると判断された場合、すなわち、残存寿命値を初めて算出する場合(ステップS42でYES)、ステップS43の処理に移行する。ステップS43〜S46の処理は、図2のステップS2〜S5の処理と同じであるので説明を省略する。
一方、算出回数Xが1でないと判断された場合(ステップS42でNO)、残存寿命値算出部12cは、寿命値記憶部16に記憶されている前回の残存寿命値を読み出す(ステップS47)。次に、環境温度測定部6は、蓄電池3が設置されている場所の環境温度Tを測定する(ステップS48)。ステップS49〜S52までの処理は、図2のステップS6〜S9の処理と同じであるので説明を省略する。
次に、経過時間計数部8bは、残存寿命値の算出回数Xが1である場合、蓄電池3を設置してからの経過時間Dを計数し、残存寿命値の算出回数Xが1でない場合、前回の残存寿命値が算出されてからの経過時間Dを計数する(ステップS53)。経過時間計数部8bは、前回の残存寿命値が算出された時刻を記憶しており、この時刻を基に前回の残存寿命値が算出されてからの経過時間Dを計数する。
次に、第2寿命低下量算出部12bは、経過時間計数部8bによって計数された経過時間Dと、平均値算出部10によって算出された蓄電池温度の平均値Tと、環境温度測定部6によって測定された環境温度Tとを(6)式に代入することにより第2寿命低下量Lを算出する(ステップS54)。
次に、残存寿命値算出部12cは、(7)式に基づいて最新の残存寿命値Lを算出する。すなわち、残存寿命値算出部12cは、残存寿命値の算出回数Xが1である場合、期待寿命値選択部7によって選択された期待寿命値Lから、第1寿命低下量算出部12aによって算出された第1寿命低下量L及び第2寿命低下量算出部12bによって算出された第2寿命低下量Lを減算し、残存寿命値Lを算出する。また、残存寿命値算出部12cは、残存寿命値の算出回数Xが1でない場合、寿命値記憶部16から読み出した前回の残存寿命値LX−1から、第1寿命低下量算出部12aによって算出された第1寿命低下量L及び第2寿命低下量算出部12bによって算出された第2寿命低下量Lを減算し、最新の残存寿命値Lを算出する(ステップS55)。
次に、残存寿命値算出部12cは、算出した最新の残存寿命値Lを寿命値記憶部16に記憶し、寿命値記憶部16の記憶内容を更新する(ステップS56)。次に、制御部12は、残存寿命値の算出回数Xをインクリメントする(ステップS57)。ステップS34の処理は、図2のステップS13の処理と同じである。
実施の形態3の電池寿命判定方法によれば、放電時にニッケル・水素蓄電池3に印加される負荷電力値から寿命値を算出するのに、予め負荷電力及び環境温度と寿命との関係を示す寿命データを用意し、この寿命データから負荷電力と環境温度の測定値に対応する寿命を選択して期待寿命値とするので、寿命を正確に予測することができる。しかも、実際の停電によって蓄電池が本来のバックアップ機能を発揮して放電している場合には、その放電により劣化する蓄電池の寿命を補正するので、ニッケル・水素蓄電池の寿命を正確に精度よく判定することができる。
次に、各実施の形態の電池寿命判定方法において、上述した各式に基づき、様々な条件下で残存寿命値を算出した実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、球状水酸化ニッケル粉末を3次元多孔体ニッケルに充填した正極と、水素吸蔵合金粉末をニッケルメッキしたパンチングメタルに塗布した負極とを、それらの理論容量比が1/2(正極に対して負極が2倍)となるように組み合わせ、スルホン化ポリプロピレン不織布からなるセパレータを介して捲回し、電極群を構成した。この電極群を鉄製でニッケルめっきされた円筒缶に挿入し、KOHとNaOHの水溶液からなる電解液を注入した後、封口板及びガスケットにより缶の開口部を密封した。こうして直径17mm、高さ50mm、セパレータの厚み0.18mm、及び公称容量1800mAhの円筒型ニッケル・水素蓄電池Aを作製した。
この蓄電池Aを図1の電池寿命判定装置に組み込み、電池寿命判定装置と一体化させた。そして、このニッケル・水素蓄電池に対して、十分に初期活性化サイクルを経させた後に、40℃雰囲気下で下記の充放電試験を行った。期待寿命値(初期期待寿命値)Lは、環境温度と、放電電流値の関係から予め抽出した蓄電池の寿命情報とを比較して算出した。
充電:900mA、最高到達電圧から5mV電圧低下時に充電停止(いわゆる−△V制御方式)
休止:69時間
以上の充電及び休止の後、放電電流1800mAにて1.0Vまで放電を行なった。この放電を300日、900日及び1500日繰り返した時点で、図2のフローチャートに基づいて残存寿命値Lを算出した。この電池寿命判定装置は、ニッケル・水素蓄電池の残存容量が1080mAh(公称容量の60%)に達した時点をもって寿命と判断した。
期待寿命値L、それを算出する際の環境温度、放電レート(時間率で表示)、及び寿命判定に用いた(1)式及び(2)式の定数a,b,c,dの値を下記の表1のNo.1に示し、残存寿命値Lの算出結果を下記の表2のNo.1に示す。
(実施例2)
実施例2では、実施例1の電池寿命判定装置及び蓄電池Aを用い、放電レートを時間率×5及び時間率×0.5に代え、図2のフローチャートに基づいて残存寿命値Lを算出した。期待寿命値L、算出の条件、及び定数a,b,c,dの値を下記の表1のNo.2,3にそれぞれ示し、残存寿命値Lの算出結果を下記の表2のNo.2,3にそれぞれ示す。なお、下記の表1のNo.2は、時間率を5倍したときの期待寿命値Lを表し、下記の表1のNo.3は、時間率を0.5倍したときの期待寿命値Lを表している。
(比較例1)
比較例1は、実施例1〜3に対する比較例である。比較例1では、実施例1の電池寿命判定装置及び蓄電池Aを用い、実施例1,2と同様の条件下で、(1)式〜(3)式の代わりに一次関数L=L−eNを用いて残存寿命値Lを算出した。ここで、定数eは、セパレータの厚みなどニッケル・水素蓄電池の構造によって変化するとともに、放電回数Nを時間に変換する次元を有する。期待寿命値L、算出の条件及び定数eの値を下記の表1のNo.9〜11に示し、残存寿命値Lの算出結果を下記の表2のNo.9〜11に示す。なお、下記の表1のNo.9は、時間率を1倍したときの期待寿命値Lを表し、下記の表1のNo.10は、時間率を5倍したときの期待寿命値Lを表し、下記の表1のNo.11は、時間率を0.5倍したときの期待寿命値Lを表している。
(実施例3)
実施例3では、実施例1の電池寿命判定装置及び蓄電池Aを用い、図4のフローチャートに基づいて残存寿命値Lを算出した。この際、電池寿命判定装置は、(4)式及び(5)式を用いて残存寿命値Lを算出する。期待寿命値L、算出の条件、及び定数a,b,c,dの値を下記の表1のNo.4に示し、残存寿命値Lの算出結果を下記の表2のNo.4に示す。なお、蓄電池温度の平均値Tは、下記の表2に示すとおりである。
(実施例4)
実施例4では、実施例1の電池寿命判定装置及び蓄電池Aを用い、環境温度を35℃に変えた以外は実施例1と同様の条件で残存寿命値Lを算出した。期待寿命値L、算出の条件、及び定数a,b,c,dの値を下記の表1のNo.5に示し、残存寿命値Lの算出結果を下記の表2のNo.5に示す。なお、下記の表1のNo.5は、環境温度を35℃にしたときの期待寿命値Lを表している。
(比較例2)
比較例2は、実施例4に対する比較例である。比較例2では、実施例1の電池寿命判定装置及び蓄電池Aを用い、実施例4と同様の条件で、一次関数L=L−eNを用いて残存寿命値Lを算出した。なお、定数eは、比較例1と同じである。期待寿命値L、算出の条件及び定数eの値を下記の表1のNo.12に示し、残存寿命値Lの算出結果を下記の表2のNo.12に示す。なお、下記の表1のNo.12は、環境温度を35℃にしたときの期待寿命値Lを表している。
(実施例5)
実施例5では、セパレータの厚みが0.18mmであり、公称容量が1600mAhである点以外は実施例1と同様の構造の円筒型ニッケル・水素蓄電池Bを作製するとともに、セパレータの厚みが0.26mmであり、公称容量が1400mAhである点以外は実施例1と同様の円筒型ニッケル・水素蓄電池Cを作製した。これらの蓄電池B,Cについて、実施例1と同様の条件で残存寿命値Lを算出した。期待寿命値L、算出の条件、及び定数a,b,c,dの値を下記の表1のNo.6,7に示し、残存寿命値Lの算出結果を下記の表2のNo.6,7に示す。なお、下記の表1のNo.6は、蓄電池Bを用いたときの期待寿命値Lを表し、下記の表1のNo.7は、蓄電池Cを用いたときの期待寿命値Lを表している。
(比較例3)
比較例3は、実施例5に対する比較例である。比較例3では、実施例5の電池寿命判定装置及び蓄電池B,Cを用い、実施例5と同様の条件で、一次関数L=L−eNを用いて残存寿命値Lを算出した。なお、定数eは、比較例1と同様に放電回数Nを時間に変換する次元を有している。期待寿命値L、算出の条件及び定数eの値を下記の表1のNo.13,14に示し、残存寿命値Lの算出結果を下記の表2のNo.13,14に示す。なお、下記の表1のNo.13は、蓄電池Bを用いたときの期待寿命値Lを表し、下記の表1のNo.14は、蓄電池Cを用いたときの期待寿命値Lを表している。
(参考例)
参考例では、実施例1において第1寿命低下量Lを算出するための(1)式に代えて、下記の(8)式に基づいて第1寿命低下量Lを算出した。(8)式における定数fは、定数bと同様の意味を有しつつも放電回数Nを時間に変換する次元を有さない。さらに、参考例では、実施例1において第2寿命低下量Lを算出するための(2)式に代えて、下記の(9)式に基づいて第2寿命低下量を算出した。なお、(9)式におけるgは定数である。すなわち残存寿命値Lを、一旦は放電回数の次元で算出した。その後1回の充放電に掛かる時間を72時間(3日)として時間の次元で寿命を予測するようにした。期待寿命値L、算出の条件、及び定数a,c,f,gの値を下記の表1のNo.8に示し、残存寿命値Lの算出結果を下記の表2のNo.8に示す。
=a×ln(f×N)+c・・・(8)
=g×N×2〔Tm−T0/10〕・・・(9)
(実施例6)
実施例6では、実施例1の電池寿命判定装置及び蓄電池Aを用い、図6のフローチャートに基づいて残存寿命値L(L)を算出した。この際、電池寿命判定装置は、(6)式を用いて第2寿命低下量Lを算出し、(7)式を用いて残存寿命値L(L)を算出した。期待寿命値L、算出の条件、及び定数a,b,c,dの値を下記の表1のNo.15に示し、残存寿命値L(L)の算出結果を下記の表2のNo.15に示す。
なお、実施例6では、第2寿命低下量Lを300日毎に算出し、残存寿命値から減算を行った。この際算出した第2寿命低下量Lは下記の表3に示すとおりである。表3は、300日毎に算出した蓄電池温度の平均値T及び第2寿命低下量Lを示している。図7は、実施例6、実施例1及び参考例において、経過時間に対する残存寿命値の推移を示す図である。図7において、四角点71は、実施例1で算出される残存寿命値の推移を表し、三角点72は、参考例で算出される残存寿命値の推移を表し、菱形点73は、実施例6で算出される残存寿命値の推移を表している。
表2は、上記各実施例1〜6、比較例1〜3及び参考例で求めた残存寿命値Lの値と実測値との乖離を経過時間(日数)毎に示している。乖離日数は、残存寿命値Lに経過日数を加算した値から実測値を減算することにより算出される。例えば、No.1において、300日後の残存寿命値Lは1061日であり、実測値は1530日であるので、残存寿命値Lに300日を加算した日数から実測値を減算し、乖離日数は−169日となる。
Figure 0005198502
Figure 0005198502
Figure 0005198502
表2より、NO.9〜14に示した比較例1〜3は実測値との乖離が顕著であるのに対し、No.1〜7に示した実施例1〜6は実測値との乖離が僅かであることが分かる。この傾向は経過時間が増える程強くなる。この理由として、水素吸蔵合金の腐食はサイクルの繰返しにより沈静化する一方、放電回数とは係わりなくニッケル・水素蓄電池を設置してからの経過時間に依存するため、本実施の形態の関係式に近似できるためであると考えられる。
その反面、経過時間という放電回数とは係わりのない因子を考慮しなかった参考例(No.8)は、比較例1〜3ほどではないものの実測値との乖離が顕著であった。特に本実施例の場合、負極理論容量が正極理論容量の2倍となるよう電池を構成していることから、電池の寿命劣化速度が一次関数から大きく乖離し、より本実施の形態の関係式に近づいたことが影響したと考えられる。
また、No.1〜3に示す実施例1,2の判定結果よりもNo.4に示す実施例3の判定結果の方が、経過時間が長くなるほど高精度になっている。この理由としては、実施例3が、実施例1,2よりも充放電に伴う電池の発熱や環境温度の変化を考慮しやすくなったためと考えられる。
さらに、No.4に示す実施例3の判定結果よりもNo.15に示す実施例6の判定結果の方が、経過時間が長くなるほど高精度になっている。この理由としては、第2寿命低下量Lを算出する精度が上昇したためと考えられる。つまり、1200日後の寿命低下量を算出する際、No.4では、1200日の間の蓄電池温度の平均値Tを算出して第2寿命低下量Lを算出しているのに対し、No.15では、300日毎に蓄電池温度の平均値Tを算出し300日毎に第2寿命低下量Lを算出している。そして、その第2寿命低下量Lを都度、残存寿命値Lから減算しているため、残存寿命値Lの精度が向上したと考えられる。そのため、1200日後に測定した蓄電池温度の平均値Tが51℃であったことに対し、No.4よりNo.15の方が、第2寿命低下量Lを、より精度良く算出できたと考えられる。同様に1500日後に測定した蓄電池の平均温度が34℃であったことに対し、No.4よりNo.15の方が、第2寿命低下量Lを、より精度良く算出できたと考えられる。
なお、本実施例1〜6では比較的放熱性の高い金属製の電池缶を用いたが、放熱性の低い樹脂製の電槽を用いた場合、(4)式及び(5)式による判定の効果がより顕著になるものと考えられる。
さらに、本実施例1〜6では、電池の充電方法として−ΔV制御方式の間欠充電を選択したが、温度制御方式であるdT/dt制御方式やタイマー制御方式などの間欠充電、もしくはトリクル充電を行う場合でもほぼ同様な結果が得られる。
本発明に係る電池寿命判定装置及び電池寿命判定方法は、蓄電池の寿命を正確に判定することができ、無停電電源装置などに用いる蓄電池の寿命を判定する電池寿命判定装置及び電池寿命判定方法として有用である。
1 電池寿命判定装置
2 寿命判定部
3 蓄電池
4 負荷電力測定部
5 寿命データ記憶部
6 環境温度測定部
7 期待寿命値選択部
8a 放電回数計数部
8b 経過時間計数部
9 蓄電池温度測定部
10 平均値算出部
11 残存寿命表示部
12 制御部
12a 第1寿命低下量算出部
12b 第2寿命低下量算出部
12c 残存寿命値算出部
12d 随時期待寿命値算出部
13 充電制御部
14 通信部

Claims (1)

  1. 放電時に蓄電池に印加される負荷電力を測定する負荷電力測定ステップと、
    前記蓄電池が設置された場所の環境温度を測定する環境温度測定ステップと、
    放電時に前記蓄電池に印加される負荷電力及び前記蓄電池の環境温度と、前記蓄電池の寿命との関係を示す寿命データを参照し、前記負荷電力測定ステップにおいて測定された負荷電力及び前記環境温度測定ステップにおいて測定された環境温度に対応する寿命を期待寿命値として選択する期待寿命値選択ステップと、
    前記蓄電池の放電回数を計数する放電回数計数ステップと、
    前記放電回数計数ステップにおいて計数された放電回数を時間に変換した値を変数とする自然対数関数に基づいて、前記期待寿命値を低下させるための第1寿命低下量を算出する第1寿命低下量算出ステップと、
    充放電時又は休止時における前記蓄電池の温度の平均値を算出する平均値算出ステップと、
    前記蓄電池を設置してからの経過時間を計数する経過時間計数ステップと、
    前記平均値算出ステップにおいて算出された蓄電池温度の平均値と前記環境温度測定ステップにおいて測定された環境温度との差を変数とする指数関数の値と、前記経過時間計数ステップにおいて計数された前記蓄電池を設置してからの経過時間とを乗算することにより、前記期待寿命値を低下させるための第2寿命低下量を算出する第2寿命低下量算出ステップと、
    前記期待寿命値選択ステップにおいて選択された期待寿命値から前記第1寿命低下量算出ステップにおいて算出された第1寿命低下量及び前記第2寿命低下量算出ステップにおいて算出された第2寿命低下量を減算して残存寿命値を算出する残存寿命値算出ステップと
    前記残存寿命値算出ステップにおいて算出された前記残存寿命値を寿命値記憶部に記憶する寿命値記憶ステップとを含み、
    前記経過時間計数ステップは、前回の前記残存寿命値が算出されてからの経過時間をさらに計数し、
    前記第2寿命低下量算出ステップは、前記残存寿命値の算出回数が2以上である場合、前記平均値算出ステップにおいて算出された蓄電池温度の平均値と前記環境温度測定ステップにおいて測定された環境温度との差を変数とする指数関数の値と、前記経過時間計数ステップにおいて計数された前回の前記残存寿命値が算出されてからの経過時間とを乗算することにより第2寿命低下量を算出し、
    前記残存寿命値算出ステップは、前記寿命値記憶部に記憶されている前回算出した前記残存寿命値を読み出し、読み出した前記残存寿命値から前記第1寿命低下量及び前記第2寿命低下量を減算して最新の残存寿命値を算出することを特徴とする電池寿命判定方法。
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