近接露光を行なう露光装置の概略図を図7に示す。本装置では、露光用ステージが2つあり、それぞれのステージ上に載せられた基板が交互に露光される構成を有する。本装置を用いて露光する際の露光用基板の装置内での動きや、露光の手順について説明する。なお、符号215は近接露光装置と搬送ラインとの間の露光用基板の出し入れを示す。
図8は、露光用基板が露光装置内で移動する手順を示すフロー図である。まず、露光用の基板220が搬送ライン210で運ばれてくると、L搬送用ロボット204−1により搬送ライン210から温度調節プレート(温調プレート)206へ搬送される(S801)。次に、前の露光用基板がLステージ203−1から搬送ライン210に払いだされた後、露光用基板220は温調プレート206からLステージ203−1へと搬送される(S802)。
次に、Rステージ203−2に載っていた前の露光用基板の露光が終了してRステージ203−2がマスク設置部207の下から移動した後、露光用基板220が載ったLステージ203−1がマスク設置部207の下へ移動する(S803)。符号204−2はR搬送用ロボットである。引き続き、ランプハウス205から導かれた紫外光により基板220を露光する(S804)。次に、Lステージ203−1をマスク設置部207の下から移動する(S805)。その後、基板220を搬送ライン210へ搬送し、露光処理が終了する。
次に、露光用基板220がマスク設置部207下部へ搬送されてから露光されるまでの手順を、図9を用いて説明する。基板220がマスク設置部207の下へ移動すると、間隔調整用カメラやアライメント用カメラがセットされる(S901)。次に、間隔調整用カメラを用いてマスクと基板220との間の間隔が150〜300μmとなるようにマスク側の高さ方向(z方向)駆動機構を用いて調整する(S902)。
次に、基板220とマスクとのアライメントをとる(S903)。このアライメントの様子を図5A、図5Bを用いて説明する。図5Aはマスクの概略平面図であり、図5Bはマスクと基板のアライメントの様子を説明するためのマスク取付部の概略断面図である。マスク100の露光エリア140の四隅に設けられたアライメントマーク141と、基板220に設けられたアライメントマーク142とが、基準位置に移動しセットされているアライメント用カメラ150の視野内となるようにLステージ203−1の位置(x方向、y方向、θ方向)を調整する。符号145はパターンエリアである。なお、マスク100はマスクホルダ104に設けられたマスク専用吸着穴103−2によりマスクホルダ104に吸着されている。
その後、間隔調整用カメラやアライメント用カメラを露光領域から退避させ(S904)、露光を行なう(S905)。露光は、ランプハウス205から導かれ、照度が50mW/cm2(平方センチメートル)程度の紫外線(UV)を用いて数秒間行なう。基板220が、例えば4つの露光領域を有している場合には、更に、基板220の他の3つの所定領域を露光するために、Lステージ203−1を移動して残り3回の露光を行ない、露光処理が終了する。なお、露光回数は基板の大きさ(露光領域の数)により変わることはいうまでもない。
以上のように、基板220を、露光装置200を用いて露光した結果、基板表面に所定のパターン以外の微細な不定形のドットパターンが焼き付けられることが見出された。現状のパターンでは問題ないものの、パターン寸法が微細化した場合には問題になると考えられる。
特許文献1には、大型サイズの基板を使用してもマスク保持機構が大型にならず、小型化を図ることのできる近接露光装置のマスク搬送装置が開示されている。しかしながら、上記微細ドットパターンに関する教示や示唆はない。特許文献2には、マスクをマスクホルダの上方に配置し、下方からマスクを保持する技術により、マスクに損傷を与えず、パーティクルの発生を防止し、簡単な構成でマスクの位置合わせを行なえると記載されている。しかしながら、特許文献2では、基板がマスクよりも大きい場合には基板とマスクとの距離をマスク指示部材の厚さ以上に近づけることができないため、近接露光を行なうことが困難である。
本発明の目的は、大型化の方向にあるマスクよりも更に大きな基板への露光であっても、微細なドットパターンが転写されることのない近接露光を行なう露光装置を提供することにある。
上記目的を達成するための一形態として、マスク吸着穴を備えたマスクホルダと、マスクを下方から前記マスクホルダへ押し付けるマスクリフタと、前記マスクの位置の調整を行なうためのマスクプッシャと、前記マスクに形成されたパターンが転写される基板を載せるためのステージとを有する近接露光を行なう露光装置において、前記マスクの位置の調整の際に、前記マスクホルダに設けられ、前記マスクと前記マスクホルダとの間の摩擦抵抗を低減するためのガスを供給する開口部を更に有することを特徴とする露光装置とする。
また、温調プレートと、露光用基板を載せる露光用ステージと、前記露光用基板を搬送ラインから前記温調プレートへ、また、前記温調プレートから前記露光用ステージへ、また、前記露光用ステージから前記搬送ラインへ前記基板を搬送する搬送ロボットと、前記露光用ステージに載せられた前記基板へ転写するパターンが形成されたマスクがセットされるマスク設置部と、前記マスクを露光するためのランプハウスとを備えた近接露光を行なう露光装置において、前記マスク設置部は、マスクを下方から前記マスクホルダへ押し付けるマスクリフタと、前記マスクの位置の調整を行なうためのマスクプッシャと、前記マスクを吸着するマスク吸着穴及び前記マスクの位置の調整の際に前記マスクと前記マスクホルダとの間の摩擦抵抗を低減するためのガスを供給する開口部を備えたマスクホルダと、を有することを特徴とする露光装置とする。
マスクよりも更に大きな基板への露光であっても、微細なドットパターンが転写されることのない近接露光を行なう露光装置を提供することができる。
発明者等は、所定のパターン以外の微細な不定形のドットパターンの発生原因について検討を行なった。その結果、マスク100の裏面側(パターン形成面と反対側)に微細な異物の付着が認められた。そこで、マスク100をマスクホルダ104に取付けるまでの手順を見直した。図4、図6A〜図6D、図7を用いて取付け手順を説明する。
まず、マスクストッカ201に保管されているマスク100が搬送ロボット202により、マスク設置部207へ搬送される(図7)。マスク設置部において、マスク100はマスクホルダ104の下部へ搬送され、停止する(図6A)。次に、樹脂を主成分とするパッド101−1が先端に取り付けられたマスクリフタ101を、シリンダを用いて回転させ、下方へ下ろす(図6B)。
次に、先端を下ろしたままマスク100の下部までマスクリフタ101を平行に移動する(図6C)。次に、マスクリフタ101を逆方向に回転させ、上方へ押し上げ、マスク100をマスクホルダ104へ押し上げる(図6D)。マスクリフタ101一本当たりに掛かる荷重は現状は3〜4kg程度だが、将来は8〜10kgになると予想される。符号110はマスクリフタ101の動きを示す。
その後、図4に示したように、マスク100のアライメントを行なうためにマスクプッシャにより、マスク100の位置を調整120していた。このアライメントは、図5Aに示すようにマスク100の露光エリア140の四隅に設けられたアライメントマーク141が、基準位置に移動しセットされているアライメント用カメラ150を用いて視野内で位置誤差が約30μm以内となるようにマスク100をプッシャで押して位置の調整120を行なう。なお、マスク100はマスクリフタ101によりマスクホルダ104に押し付けられて、保持されている。
これらの手順を詳細に検討した結果、マスク重量増加に伴う摩擦抵抗増加により、異物発生の可能性が高まることを見出した。即ち、マスク100が大型化することにより、その重量が重くなり、それを押し上げるためにマスクリフタ101に掛けるシリンダ圧が高くなり、マスクがマスクホルダに強力に押し付けられアライメントのための位置調整での移動で異物が飛散し易くなることが分かった。ここで用いた基板の寸法は、1850mm×1500mmで厚さが0.5〜0.7mmである。また、マスクの寸法は800mm×920mmで厚さが8mm、重量は10〜15kgであるが、今後は、基板寸法が2200×2500mm、マスク寸法が1220×1400mmで厚さが13mm、重量は50kg程度になると予想され、異物の飛散量の増加が懸念される。
本願発明は、上記知見により生まれたものであり、マスクホルダからマスクへ向けてエアーを供給し、マスクとマスクホルダとの間の摩擦抵抗を低減することにより、異物の発生を低減、防止するものである。
以下、実施例で詳細に説明する。
第1の実施例について、図1A〜図3を用いて説明する。なお、発明が解決しようとする課題の欄に記載され、本実施例に未記載の事項は、本実施例においても同様である。
図1Aは、本実施例に係る露光装置のマスク取付部の概略平面図である。本実施例において、マスク100を保持するマスクホルダ104(未記載)には先端部が幅広となっている溝103−11、103−22を有するマスク吸着兼エアーブロー穴103−1(未記載)とマスク吸着専用穴103−2(未記載)とが設けられている。本実施例では穴の直径や溝の幅は8mmとした。また、溝の長さは10cmとした。特に、マスクリフタ101がマスク100を保持した場合、マスクリフタ101の位置とマスク吸着兼エアーブロー穴103−1の先端のエアーブロー兼吸着溝103−11の位置が鉛直上方から見て重さなるように配置した。なお、符号102はマスクプッシャ、符号103−22はマスク吸着専用穴103−2先端の吸着専用溝を示す。
図1Bは、図1AのYY断面を示す。マスク100はマスクホルダ104に設けられたマスク吸着兼エアーブロー穴103−1と、マスク吸着専用穴103−2によりマスクホルダ104の下部に吸着保持されている。
次に、本マスクホルダを用いてマスクを保持する手順について図2A〜図2Cを用いて説明する。マスク搬送ロボットによりマスクホルダ下部へ搬送されたマスクを、マスクリフタで保持するまでは、図6A〜図6Dに示した手順と同様である。
マスク100をマスクリフタ101で保持した状態を図2Aに示す。その後、マスク吸着兼エアーブロー穴103−1へエアーを供給し、マスク100表面をエアーブロー130−1する(図2B)。本実施例ではエアー供給圧力を0.6Mパスカル(6kg/cm2)とした。
このときの、マスクホルダとマスクとの位置関係の概略を図3に示す。マスク吸着兼エアーブロー穴103−1を通ったエアーがマスク100へエアーブロー130−1される。このエアーブロー130−1により、マスク100とマスクホルダ104との間に加圧空気の層135が形成され、互いに非接触状態になる。なお、マスク吸着専用穴103−2の下部にはマスクリフタ101がないため、この部分でマスク100は多少下方へ変形する。
この状態でマスク100の位置調整120を、マスクプッシャ102を用いて行なう(図2B)。調整の手順は図4で説明したとおりである。その後、マスク吸着兼エアーブロー穴103−1及びマスク吸着専用穴103−2を用いてマスク100を吸着した(図2C)。これにより、マスク100とマスクホルダ104との間には加圧空気の層135が形成され、非接触であるため、マスク100を移動してもマスク100とマスクホルダ104との間での摩擦による発塵はなく、マスク100への異物付着は無くなると考えられる。
マスクの位置調整時にマスクとパッドとの間で摩擦が生じるが、万一塵埃が発生しても下方へ落下するため(この時点では基板はセットされていないこともあり)、問題とはならない。
なお、本実施例では、マスクリフタ101の幅を5cm、厚さ8mmとした。但し、エアーブロー兼吸着溝103−11の長さをW1、マスクリフタの幅をW2とした場合、W1<W2とすることにより、供給されたエアーが漏れにくくなるため、より厚い加圧空気の層を形成でき、エアーブローの効果を高めることができる。同じ厚さの加圧空気の層を形成する場合にはエアー量を低減することができる。
また、マスク吸着兼エアーブロー穴103−1におけるエアーブローと吸着との切り替えは、エアーラインと、真空ラインとにそれぞれ電磁弁等の開閉手段を設けた上でこれらを並列にマスク吸着兼エアーブロー穴103−1に接続することにより行なうことができる。
また、本実施例では、エアーブローの機能を吸着穴と兼用にしたが、それぞれ専用とすることもできる。兼用の場合には、狭い吸着領域を吸着領域として有効に使うことができる。専用の場合には吸着とエアーブローを独立に制御することができる。
また、本実施例ではエアーを用いたが、他のガスを用いることもできる。但し、エアーを用いることにより、生産コストを押さえることができる。
また、本実施例では、エアーブロー用の穴をマスクリフタに対向する位置に配置したが、マスクは剛性があるため、エアーブロー用穴とマスクリフタとを異なる位置とすることもできる。但し、同じ厚さの加圧空気の層を形成するためにはエアー量を増加する必要がある。
本実施例によれば、マスクとマスクホルダとの間に加圧空気の層を形成した状態で位置調整を行なうことができるため、大型化の方向にあるマスクよりも更に大きな基板への露光であっても、微細なドットパターンが転写されることのない近接露光装置を提供することができる。また、マスクとマスクホルダとの間の摩擦がないことから、摩擦による引っかかりがなく、微細な距離の移動が可能となり、位置調整を高精度に行なうことのできる近接露光を行なう露光装置を提供することができる。
第2の実施例について、図2A〜図2Cを用いて説明する。なお、発明が解決しようとする課題の欄や実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項はそれらと同様である。
マスクを保持する手順について図2A〜図2Cを用いて説明する。マスク搬送ロボットにマスクホルダ下部へ搬送されたマスクを、マスクリフタで保持するまでは、図6A〜図6Dに示した手順と同様である。
マスク100をマスクリフタ101で保持した状態を図2Aに示す。その後、マスク吸着兼エアーブロー穴103−1へエアーを供給し、マスク100表面をエアーブロー130−1する(図2B)。本実施例では実施例1とは異なり、エアー供給圧力を0.2Mパスカル(2kg/cm2)とした。この圧力では、実施例1とは異なり、加圧空気の層135は形成されないが、マスク100とマスクホルダ104との間の摩擦を低減することができる。
この状態でマスク100の位置調整120を、マスクプッシャ102を用いて行なう(図2B)。調整の手順は図4で説明したとおりである。その後、マスク吸着兼エアーブロー穴103−1及びマスク吸着専用穴103−2を用いてマスク100を吸着130−2した(図2C)。その結果、このマスク100を用いて露光を行なった基板には、ほとんど微細なドットパターンは見られなかった。また、マスク100への塵埃の付着もほとんど見られなかった。
これは、マスク100とマスクホルダ104との間の摩擦抵抗を低減することできたため、マスク100を移動してもマスク100とマスクホルダ104との間での摩擦による発塵が少なく、マスク100への異物付着を低減することができたためと考えられる。
本実施例によれば、マスクとマスクホルダとの間の摩擦抵抗を低減した状態で位置調整を行なうことができるため、大型化の方向にあるマスクよりも更に大きな基板への露光であっても、微細なドットパターンがほとんど転写されることのない近接露光装置を提供することができる。また、エアーブローをさせず、エアーの圧力のみを利用するため、エアーが消費されず、生産コスト低減が図れる近接露光を行なう露光装置を提供することができる。