JP4335556B2 - 露光方法及び露光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、露光方法及び露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラーフィルター等の基板に対して露光する際に、基板表面に窒素を噴出して、当該表面を窒素でパージする技術が知られている。窒素でパージすることにより、酸素によるレジスト表面の反応阻害が防止され、露光時間が短縮される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の技術では、さほど生産効率の向上が得られなかった。例えば、フォトマスクのずれ防止等の観点から窒素を噴出する圧力には制限があり、低圧で少しずつ酸素を窒素で置換する必要があった。このため、窒素パージには長い時間を要していた。従って、窒素パージを行うことにより露光時間が短縮されても、窒素パージに要する時間が付加されるため、基板に対する露光処理全体としの時間はさほど短縮されなかった。また、露光装置のチャンバー内全体を窒素置換する方法も考えられるが大量の窒素ガスが必要で現実的でなかった。
【0004】
そこで、本発明は、基板表面を不活性ガスでパージして生産効率を向上させることができる露光方法及び露光装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0006】
請求項1の発明は、基板(100)とフォトマスク(4)とを所定のプロキシミティギャップを介して対向させて露光を行なう露光方法において、前記基板と前記フォトマスクとを前記基板に沿って相対移動させる移動工程と、前記相対移動させる際に、前記フォトマスク下に前記基板が進入する位置から前記基板上に不活性ガスを噴出する噴出工程とを備えることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
請求項1の発明によれば、基板上に噴出された不活性ガスには基板から摩擦抵抗が働くため、不活性ガスは基板によりフォトマスク下に引き込まれる。このため、高圧力で不活性ガスを噴出しなくとも、速やかに不活性ガスによるパージが行われる。さらに、フォトマスクと基板とを位置合わせする際の相対移動において不活性ガスを噴出し続ければ、位置合せの進行と同時に不活性ガスによるパージが進行するため、パージのみに要する時間が省略又は短縮される。そして、パージによりレジストの感度低下が防止されて露光時間が短縮されるから、露光装置の生産効率が向上する。
【0008】
なお、フォトマスク下に基板が進入する位置は、相対移動の際に基板のフォトマスク外側に位置する部分がフォトマスク下に進入する位置である。例えば、基板全体がフォトマスクの外側にある状態から基板をフォトマスク下に移動させる場合には、基板の先頭が進入する位置であり、基板上の複数の露光領域に対して順次露光する場合には、フォトマスクの外側に位置する次の露光領域がフォトマスク下に進入する位置である。不活性ガスとしては、例えば窒素を利用してよい。
【0009】
請求項1の発明において、前記移動工程では、前記フォトマスクと前記基板との間の間隙量が前記プロキシミティギャップの適正範囲に維持されるように、前記フォトマスクと前記基板とを相対的に上下動させつつ、前記フォトマスクと前記基板とを前記基板に沿って相対移動させてもよい。この場合、相対移動の際の基板とフォトマスクとの間の間隙が小さいことから、少量の不活性ガスが間隙に流れるだけで、間隙の酸素が窒素に置換される。このため、不活性ガスによるパージが短時間で充分に行われる。さらに、プロキシミティギャップを維持したまま基板とフォトマスクとを相対移動させるから、従来行われていたフォトマスクと基板とを近接又は離間させる動作が省略され、露光装置の生産効率が一層向上する。なお、プロキシミティギャップの適正範囲は、露光を行う際の種々の事情に応じて適宜に設定してよい。例えば、フォトマスクの撓み量に余裕を見込んだ量をプロキシミティギャップの適正範囲としてもよい。
【0010】
請求項1又は2の露光方法において、前記噴出工程では、前記フォトマスクの周囲から前記フォトマスクと前記基板との間に前記不活性ガスを噴出してもよい。この場合、フォトマスクの全周から不活性ガスが噴出されることにより、不活性ガスによるパージが確実に又は速やかに行われる。例えば請求項3の露光方法においては、フォトマスクの周囲から噴出される不活性ガスによりフォトマスク周囲の酸素が遮断され、不活性ガスによるパージが確実に行われる。
【0011】
請求項1〜3の露光方法において、前記基板の周囲から前記不活性ガスを噴出させる工程を更に備えていてもよい。この場合、基板表面の不活性ガスによるパージを迅速かつ確実に行うことができる。例えば、基板の複数の露光領域に順次フォトマスクを位置合せして露光する場合、基板の周囲から噴出された不活性ガスがフォトマスクの周囲に滞留することになるから、相対移動の際又は露光中にフォトマスクの周囲からフォトマスクと基板との間の間隙に酸素が流れ込むおそれがない。また、フォトマスクと基板とを相対移動させる前から、基板の周囲から噴出した不活性ガスにより相対移動の際に排除しなければならない酸素が遮断され、速やかにパージが行われる。
【0012】
請求項5の発明は、基板(100)とフォトマスク(4)とを所定のプロキシミティギャップを介して対向させて露光を行う露光装置(1)において、前記基板と前記フォトマスクとを前記基板に沿って相対移動させる駆動手段(3)と、前記相対移動において前記フォトマスク下に前記基板が進入する位置に設けられたノズル(13、16)と、前記ノズルを介して不活性ガスを供給するガス供給手段(7、8)とを備えることにより、上述した課題を解決する。
【0013】
請求項5の露光装置によれば、駆動手段により基板と露光光学系とを相対移動させる際に、ノズル及びガス供給手段により、フォトマスク下に基板が進入する位置から基板上に不活性ガスを噴出することができるから、請求項1の露光方法を実現できる。
【0014】
請求項5の発明において、前記基板の表面の高さを特定する特定手段(9)と、前記フォトマスクと前記基板とを相対的に上下動させる駆動手段(6)と、前記相対移動させる駆動手段が前記基板と前記フォトマスクとを前記基板に沿って相対移動させる際に、前記特定手段の特定した前記基板の表面の高さに基づいて、前記上下動させる駆動手段を制御する制御手段(10)とを備えていてもよい。この場合、特定手段の特定した基板表面の高さに基づいて基板を上下動させることにより、基板とフォトマスクとの間の間隙量をプロキシミティギャップの適正範囲等の適宜な範囲に維持することができる。従って、請求項2の露光方法を実現することができる。なお、基板表面の高さは、適宜な基準位置から基板表面までの高さを利用できる。基準位置は、フォトマスクとの相対位置が特定できる位置であればよい。フォトマスクの位置を基準として基板表面の高さを特定してもよい。
【0015】
請求項7の発明は、基板(100)とフォトマスク(4)とを所定のプロキシミティギャップ(P)を介して対向させて露光を行う露光装置(1)において、前記基板と前記フォトマスクとを前記基板に沿って相対移動させる駆動手段(3)と、前記基板の縁部のうち前記相対移動において前記フォトマスク下に進入する部分に沿うように設けられたスリット状のノズル(30)と、前記ノズルを介して不活性ガスを供給するガス供給手段(8)と、を備えることにより上述した課題を解決する。
【0016】
請求項7の発明によれば、駆動手段により基板をフォトマスク下に進入させる際に、基板の外周の雰囲気に含まれる酸素がフォトマスクとの摩擦抵抗で基板とフォトマスクとの間の間隙に引き込まれることが防止され、速やかに不活性ガスによるパージが行われる。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る露光装置1の構成を示す側面図である。露光装置1は、カラーフィルタ用の基板100に対してプロキシミティー方式の露光を行う装置として構成されている。
【0018】
基板100は、例えばガラス基板で構成され、ガラス基板の表面には顔料を分散した感光性樹脂やレジスト(ネガタイプのもの)が薄膜状に成膜されている。基板100は、例えば厚さ1mm、面積4m2に形成されている。1枚の基板100からは、6枚のカラーフィルターが取り出される。このため、図2(a)にも示すように、基板100上の6つの露光領域100a…100aに対して露光装置1により露光が行われる。
【0019】
図1の露光装置1は、基板100を載置するステージ2と、ステージ2を水平方向に駆動する駆動装置3と、フォトマスク4を含む露光光学系50と、フォトマスク4を保持するマスクホルダー5と、マスクホルダー5を上下方向に駆動する駆動装置6と、マスクホルダー5に給気を行うとともに、マスクホルダー5から排気を行う給排気装置7(ガス供給手段)と、マスクホルダー5に窒素を供給する窒素供給装置8(ガス供給手段)と、基板100の表面の高さを計測するための計測装置9…9(特定手段)と、制御装置10とを備えている。なお、露光装置1はこの他、フォトマスク4の上方から基板100に向けて光束を照射する照明装置、ステージ2の水平方向の位置を測定するレーザー測長器等の種々の装置を備えているが、本発明の要旨ではないので説明は省略する。
【0020】
駆動装置3及び駆動装置6は例えば電動モータとして構成されている。給排気装置7は加圧、減圧ラインと圧力調整弁などで構成され、不図示の窒素タンクから所望の圧力で窒素を送り出すことが可能である。窒素供給装置8は例えば圧力調整弁を含んで構成され、不図示の加圧窒素タンクから所望の圧力で窒素を送り出すことが可能である。制御装置10は、例えばCPU、ROM、RAM、外部記憶装置を含んだコンピュータとして構成され、外部記憶装置に記録されているプログラム等に従って、駆動装置3、駆動装置6、給排気装置7、窒素供給装置8等の動作を制御する。
【0021】
ステージ2の外周には、図2(a)にも示すように、基板100の4辺(縁部)のうち、フォトマスク4下に移動する際に先頭となる1辺に亘って延びるとともに、ステージ2上に開口するスリット状のノズル30が設けられている。また、図7(a)に示すように、ステージ2には、ノズル30に沿って設けられ、ノズル30に開口する気体流路31が設けられている。気体流路31は窒素供給措置8と接続されている。これによれば基板100をフォトマスク4下に移動させる際に、基板100の外周の雰囲気に含まれる酸素がフォトマスク4との摩擦抵抗でギャップ内に引き込まれるのを防止できる。
【0022】
図2(a)に示すように、フォトマスク4は一つの露光領域100aを覆う大きさを有している。フォトマスク4の光学像は露光領域100aに投影される。図2(b)に示すように、マスクホルダー5は枠状に形成され、フォトマスク4の外周側を保持している。マスクホルダー5は、内枠部5aと、外枠部5bとを備えている。
【0023】
図3(a)は内枠部5aを示す断面図、図3(b)は内枠部5aを下方からみた平面図である。内枠部5aは、下段部11と、上段部12とを備えている。
【0024】
下段部11は断面形状を逆L字型に形成され、フォトマスク4を囲むように設けられている。下段部11は、フォトマスク4を保持するために吸着溝18を備えている。吸着溝18は下段部11の水平部11aの下面内側に設けられている。吸着溝18を介して不図示の真空ポンプによりフォトマスク4と水平部11aの下面との間のエア抜きを行うことにより、フォトマスク4は下段部11に吸着固定される。
【0025】
下段部11は、下方に開口するノズル13と、ノズル13に開口する気体流路14とを備えている。ノズル13は、下段部11の内壁11cとフォトマスク4の側壁4bとの間に間隙が設けられることにより形成され、フォトマスク4を囲むスリット状のノズルとなっている。気体流路14はノズル13の外周に沿って設けられている。気体流路14は全周に亘って連続してノズル13に開口していてもよいし、間欠的にノズル13に開口していてもよい。気体流路14は給排気装置7と接続されている。また、ノズル13の外周側(内壁11c)には下方に突出するエアダム15が設けられている。エアダム15はフォトマスク4の下面4dに比較して数十μm下方まで突出している。
【0026】
上段部12は断面形状を逆L字型に形成され、下段部11を囲むように設けられている。上段部12は、下方に開口するノズル16と、ノズル16に開口する気体流路17とを備えている。ノズル16は、上段部12の内壁12aと下段部11の外壁11dとの間に間隙が設けられることにより形成され、下段部11を囲むスリット状のノズルとなっている。ノズル16の外周側(内壁12a)の下端は、内周側(外壁11d)の下端よりも高くなっている。気体流路17はノズル16の外周に沿って設けられている。気体流路17は全周に亘って連続してノズル16に開口していてもよいし、間欠的にノズル16に開口していてもよい。気体流路17は窒素供給装置8と接続されている。
【0027】
外枠部5bは、図2(b)に示すように、保持具6a…6aにより3点で保持されている。駆動装置6は保持具6a…6aをそれぞれ独立して上下に駆動可能であり、マスクホルダー5の上下位置及び傾きを調整可能である。また、外枠部5bには計測装置9…9が設けられている。計測装置9…9の個数や取付位置は適宜に設定してよい。
【0028】
図4に示すように、計測装置9は、発光部21と、センサ22とを備えている。発光部21は、例えば発光ダイオードを含んで構成され、所定の角度で基板100に向けて光を照射するように設定されている。センサ22は、例えば半導体素子を含んで構成され、検出面22aにて光を受光すると、その受光位置に応じた信号を制御装置10に出力する。発光部21及びセンサ22の位置は、例えば基板100とフォトマスク4とをプロキシミティギャップを介して対向させたときに、基板100に反射された発光部21の光が検出面22aの中央に到達するように設定されている。従って、制御装置10は、三角測量の原理により、センサ22からの信号に基づいて基板100の高さを特定可能である。
【0029】
上記の構成を有する露光装置1の動作を以下に説明する。
【0030】
図5は、制御装置10の実行する露光処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えば基板100がステージ2に載置されたときに開始される。なお、基板100は、ステージ2がフォトマスク4の外側にて待機しているときに、ステージ2に載置される。
【0031】
制御装置10は、基板100がステージ2に載置されると、駆動装置3の動作を制御して、基板100の先頭がフォトマスク4の下方に進入する直前までステージ2を移動させる(ステップS1)。図7(a)に示すように、基板100の先頭がフォトマスク4の下方に進入する直前の位置になると、制御装置10は給排気装置7及び窒素供給装置8を駆動して、ノズル13、ノズル16及びノズル30からの窒素の噴出を開始する(ステップS2)。また、制御装置10は、計測装置9…9からの信号に基づいて基板100の表面の高さを特定する(ステップS3)。次に、その特定した高さに基づいて、フォトマスク4と基板100との高さの差がプロキシミティギャップ(図1の符号Pを参照、例えば100μm)になるように、駆動装置6の動作を制御してフォトマスク4を上下動させる(ステップS4)。
【0032】
フォトマスク4と基板100との高さの差がプロキシミティギャップに設定されると、制御装置10は、ステージ2を最初の露光位置に移動させる(ステップS5)。この際、図7(b)に示すように、基板100が進入する位置(図においてフォトマスク4の右側)のノズル13及び16と、ノズル30とから噴出されている窒素はフォトマスク4と基板100との間の間隙を外部から遮断しつつ、圧力の低い方向へ流れる。噴出された圧力がいずれの方向に流れるかは、各ノズルからの噴出圧力、各ノズル間の距離、基板100とフォトマスク4との間隙量等により定まるが、例えば、ノズル13の圧力を他のノズルの圧力に比較して大きく設定したような場合には、図7(b)に示すように、ノズル13から噴出されている窒素は、矢印y1で示すステージ2の移動に伴って、主としてフォトマスク4の下方に流れてフォトマスク4と基板100との間の間隙を窒素で満たし、ノズル16及びノズル30から噴出されている窒素は、主として基板100とフォトマスク4との間隙の外部へ向かって流れてフォトマスク4の周囲の酸素を排除する。そして、フォトマスク4の下方に露光領域100aが位置したときには、図7(c)に示すように、フォトマスク4と基板100との間の間隙は窒素で満たされる。
【0033】
ステップS6では、制御装置10は光源(不図示)を駆動してフォトマスク4と位置合せした露光領域100aに対して露光を行う。なお、制御装置10は、露光の間にもノズル13、ノズル16及びノズル30から適宜な圧力で窒素を噴出させている。ステップS7では、全ての露光領域100a…100aに対して露光が終了したか否かを判定し、終了していないと判定した場合は、ステップS5及びS6を繰り返し、残りの露光領域100a…100aに対して順次露光を行う。なお、フォトマスク4と残りの露光領域100a…100aとを位置合わせするようにステージ2を移動させる際にも、図7(b)と同様に、次の露光領域100aが進入する位置のノズル13から噴出された窒素がステージ2の移動に伴いフォトマスク4の下方に流れる。ステップS7にて全ての露光領域100a…100aに対して露光が終了したと判定した場合は、ノズル13、ノズル16及びノズル30からの窒素の噴出を酸素が逆流してノズルに侵入しない程度の流量にして、処理を終了する。
【0034】
図6は、制御装置10が実行するギャップ調整処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、ステージ2をフォトマスク4下で移動させている間(図5のステップS5)、所定の周期(例えば0.1秒)で繰り返し実行される。
【0035】
ステップS11では、制御装置10は、計測装置9…9からの信号に基づいて基板100の表面の高さを特定する。次に、特定した高さに基づいて、フォトマスク4と基板100との間の隙間量がプロキシミティギャップに維持されるように、駆動装置6の動作を制御してフォトマスク4を上下動させる(ステップS12)。ステップS11及びステップS12は繰り返し実行され、クローズドループ制御が実行される。
【0036】
ステップS5及びS6において、制御装置10は、フォトマスク4と基板100との間の間隙の圧力がフォトマスク4の撓み変形を矯正可能な静圧になるように、給排気装置7を制御してノズル13から窒素を噴出し、また、必要に応じてノズル13を介して間隙の排気を行う。例えば、制御装置10は、フォトマスク4と基板100との間の間隙の圧力が以下の式に示す圧力になるように給排気装置7を制御する。
【数1】
上式では、フォトマスク4の材質比重(比重量)ρにフォトマスク4の厚さtを乗算してフォトマスク4の単位面積あたりの重さを求め、そのフォトマスク4の単位面積あたりの重さと大気圧とを足し合わせた圧力を間隙の圧力の適正値としている。適正値において、間隙の気体がフォトマスク4を押し上げる力は、大気圧とフォトマスク4の重さによりフォトマスク4に対して下方へ働く力と同じになる。従って、フォトマスク4に働く力がキャンセルされて、自重による撓み変形が適切に矯正される。間隙の圧力が上式の適正値以下であると、フォトマスク4の変形を十分に矯正することができず、以上となると、間隙の圧力が増大しすぎてマスクが凸状に変形する。なお、フォトマスク4の平坦度が重力ベンドを矯正しても凸又は凹である事が判れば間隙の圧力を更に補正して精度を向上できる。
【0037】
基板100とフォトマスク4との間隙の圧力を上式の圧力に保つには、制御装置10は種々の制御を給排気装置7に対して行ってよい。例えば上式の圧力でノズル13から窒素を送り込むように給排気装置7の動作を制御してもよい。間隙の圧力をモニタするとともに、そのモニタ結果に基づいて給排気装置7に対してフィードバック制御を行うことにより、間隙の圧力を上式の圧力に保ってもよい。間隙の圧力が上式の圧力に迅速に収束する給排気装置7の動作のパターンを実験等により予め求めておき、その動作を行うように給排気装置7を制御してもよい。なお、フォトマスク4と基板100との間隙の上部はエアダム15に囲まれているから、間隙に気体が保持されやすい。従って、間隙の圧力を一定に保つことが容易である。
【0038】
ノズル16及びノズル30からの噴出圧力は適宜に設定してよい。ただし、ノズル13を介した給排気によるフォトマスク4の撓みの矯正に影響を及ぼさない圧力でしかも表面の酸素を窒素で置換できる流量にすることが望ましい。なお、ノズル16の外周側(内壁12a)の下端は、内周側(外壁11d)の下端よりも高くなっているから、比較的高い圧力で窒素を噴出しても窒素は外周側に流れ、撓み矯正に及ぼす影響は小さくなる。
【0039】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る露光装置60を示す図である。露光装置60は、カラーフィルター用の基板200に対して弧状の投影像を走査して露光する投影露光装置として構成されている。
【0040】
基板200は、基板100と同様に、例えばガラス基板で構成され、ガラス基板の表面には顔料を分散した感光性樹脂やレジスト(ネガタイプのもの)が薄膜状に成膜されている。
【0041】
露光装置60は、基板200を載置するステージ61と、ステージ61を水平方向に駆動する駆動装置62と、基板200上に配置された窒素噴出部63と、窒素噴出部63に窒素を供給する窒素供給装置64と、フォトマスク65及び投影光学系66を含む露光光学系67と、フォトマスク65を水平方向に駆動する駆動装置68と、制御装置69とを備えている。なお、露光装置60はこの他、フォトマスク65の上方からスリットの透過光を照射する照明装置、ステージ61の水平方向の位置を測定するレーザー測長器等の種々の装置を備えているが、本発明の要旨ではないので説明は省略する。
【0042】
駆動装置62及び駆動装置68は、例えば電動モータを含んで構成され、光束Lの弧状の投影像が基板200又はフォトマスク65全体に走査されるように、ステージ61又はフォトマスク65を図8の左右方向に駆動可能である。窒素供給装置64、制御装置69の構成は、第1の実施形態の窒素供給装置8、制御装置10と略同様の構成である。投影光学系66は、例えば、台形の反射鏡、凸面鏡、凹面鏡を組み合わせたミラープロジェクション方式の光学系でもよいし、複数のレンズ群を含んだレンズプロジェクション方式の光学系でもよい。
【0043】
窒素噴出部63は、弧状の孔部を有する板材70と、板材70の上面に張られたペリクル73とを備えている。板材70は、外形が弧状に形成され、弧状に延びる枠部71、72と、その両端を塞ぐ端部74、74とを有している。図9にも示すように、枠部72は、枠部72に沿って延びる気体流路75を備えている。気体流路75は、枠部72の側壁72aに開口するとともに、窒素供給装置64と接続されている。枠部71及び枠部72の互いに対向する側壁71a及び72aは、基板200上に開口するスリット状のノズル76を形成している。ペリクル73は透過性を有するフィルムであり、例えばセルロースを用いて形成してもよい。窒素噴出部63は、投影光学系66からの光束Lがノズル76を通過するように配置されている。
【0044】
上記の構成を有する露光装置60の動作を説明する。
【0045】
基板200がステージ61上に載置されると、制御装置69は、窒素噴出部63を介して基板200上に窒素を噴出するように、窒素供給装置64を駆動する。次に、不図示の光源を駆動してフォトマスク65に光束Lを照射するとともに、フォトマスク65と基板200とを投影光学系66に対して同期走査させるように、駆動装置62及び68の動作を制御する。これにより、図9に示すように、線状の投影像iにより基板200に対して逐次露光が行なわれつつ、基板200の投影像iには常に窒素が噴出されてレジストの反応阻害が防止される。
【0046】
本発明は以上の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想と実質的に同一である限り、種々の形態で実施してよい。
【0047】
第1の実施形態において、ノズル13をフォトマスク4の撓みの矯正にのみ用い、基板100とフォトマスク4との相対移動中の窒素パージはノズル16のみによって行ってもよい。逆に、ノズル16を省略し、撓み矯正と相対移動中の窒素パージの双方をノズル13のみによって行ってもよい。
【0048】
第1の実施形態において、基板100とフォトマスク4とを相対移動させる際の基板100とフォトマスク4との間の間隙量は、プロキシミティギャップの適正範囲より大きくしてもよい。当該間隙量は窒素パージが可能な範囲であればよく、例えば、ギャップを10mm以下に維持しつつ、基板100とフォトマスク4とを相対移動させてもよい。
【0049】
第1の実施形態において、基板100とフォトマスク4との間隙の圧力の調整は、数式1に示した圧力のように予め実験等により求められた適正圧力まで調整するものに限定されない。例えば、フォトマスク4の撓み変形をモニタし、その撓み変形を矯正するようにフィードバック制御等により間隙の圧力を調整してもよい。
【0050】
第1の実施形態において、マスクホルダーの下端部に突起部(エアダム15)を設けなくともよい。また、マスクホルダーの下端部はフォトマスク4の下面4dよりも下方に突出していなくともよい。マスクホルダーの下端部と基板とのギャップがフォトマスクと基板とのギャップの5倍以下であれば、フォトマスクと基板との間隙の圧力を正圧に保つことが可能である。例えば、プロキシミティギャップが100μmである場合、マスクホルダーの下端部と基板とのギャップは500μm以下であればよい。ノズル16から噴出される窒素の圧力を比較的低く設定するように、ノズル16のスリット幅をノズル13のスリット幅より広くしたり、気体流路17の幅を気体流路14の幅より広くしてもよい。
【0051】
第1の実施形態において、ノズル30は、基板100の外周4辺に亘って延びるようにしてもよいし、基板100の1辺のうちフォトマスク4がよぎる部分のみに亘って延びるようにしてもよい。
【0052】
第1の実施形態において、基板100の表面の高さの計測には、種々の方法を利用してよい。いわゆるエアマイクロメータをフォトマスクに取り付け、基板100の高さを計測してもよいし、レーザー共焦点法を利用して計測してもよい。また、ステージ2の高さ分布や基板100の厚さ分布を予め制御装置10に記憶させておき、基板100の高さ分布を特定してもよい。
【0053】
第2の実施形態において、露光装置はステップアンドリピート式の露光装置であってもよい。この場合、枠部材71、72の間隔を1ショットの露光領域の大きさに合わせて適宜設定すればよい。また、ステップ中に窒素を噴出してもよいし、ステップ終了後窒素を噴出し、その後露光を行なうようにしてもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の露光方法によれば、基板上に噴出された不活性ガスには基板から摩擦抵抗が働くため、不活性ガスは基板によりフォトマスク下に引き込まれる。このため、高圧力で不活性ガスを噴出しなくとも、速やかに不活性ガスによるパージが行われる。さらに、フォトマスクと基板とを位置合わせする際の相対移動において不活性ガスを噴出し続ければ、位置合せの進行と同時に不活性ガスによるパージが進行するため、パージのみに要する時間が省略又は短縮される。そして、パージによりレジストの感度低下が防止されて露光時間が短縮されるから、露光装置の生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る露光装置の構成を示す側面図。
【図2】図1の露光装置のステージ及びマスクホルダーを示す平面図。
【図3】図1の露光装置のマスクホルダーの一部を示す断面図及び平面図。
【図4】図1の露光装置の計測装置を示す側面図。
【図5】図1の露光装置の制御装置が実行する露光処理の手順を示すフローチャート。
【図6】図1の露光装置の制御装置が実行するギャップ調整処理の手順を示すフローチャート。
【図7】図5の露光処理が実行されているときのステージ上の状態を示す側面図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る露光装置の構成を示す側面図。
【図9】図8の露光装置の窒素噴出部を示す断面図。
【符号の説明】
1、60 露光装置
3、6、62、68 駆動装置
4、65 フォトマスク
7 給排気装置
8、64 窒素供給装置
9 計測装置
10、69 制御装置
13、16、30、76 ノズル
66 投影光学系
100、200 基板
Claims (7)
- 基板とフォトマスクとを所定のプロキシミティギャップを介して対向させて露光を行なう露光方法において、
前記基板と前記フォトマスクとを前記基板に沿って相対移動させる移動工程と、
前記相対移動させる際に、前記フォトマスク下に前記基板が進入する位置から前記基板上に不活性ガスを噴出する噴出工程と、を備えることを特徴とする露光方法。 - 前記移動工程では、前記フォトマスクと前記基板との間の間隙量が前記プロキシミティギャップの適正範囲に維持されるように、前記フォトマスクと前記基板とを相対的に上下動させつつ、前記フォトマスクと前記基板とを前記基板に沿って相対移動させることを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
- 前記噴出工程では、前記フォトマスクの周囲から前記フォトマスクと前記基板との間に前記不活性ガスを噴出することを特徴とする請求項1又は2に記載の露光方法。
- 前記基板の周囲から前記不活性ガスを噴出させる工程を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の露光方法。
- 基板とフォトマスクとを所定のプロキシミティギャップを介して対向させて露光を行う露光装置において、
前記基板と前記フォトマスクとを前記基板に沿って相対移動させる駆動手段と、
前記相対移動において前記フォトマスク下に前記基板が進入する位置に設けられたノズルと、
前記ノズルを介して不活性ガスを供給するガス供給手段と、を備えることを特徴とする露光装置。 - 前記基板の表面の高さを特定する特定手段と、
前記フォトマスクと前記基板とを相対的に上下動させる駆動手段と、
前記相対移動させる駆動手段が前記基板と前記フォトマスクとを前記基板に沿って相対移動させる際に、前記特定手段の特定した前記基板の表面の高さに基づいて、前記上下動させる駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の露光装置。 - 基板とフォトマスクとを所定のプロキシミティギャップを介して対向させて露光を行う露光装置において、
前記基板と前記フォトマスクとを前記基板に沿って相対移動させる駆動手段と、
前記基板の縁部のうち前記相対移動において前記フォトマスク下に進入する部分に沿うように設けられたスリット状のノズルと、
前記ノズルを介して不活性ガスを供給するガス供給手段と、を備えることを特徴とする露光装置。
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