本発明は、イオン注入マスク、イオン注入方法および半導体装置の製造方法に関し、特に、イオン注入を利用して製造される半導体装置の特性のばらつきを抑えることができるとともに、歩留まりの低下も抑止することができるイオン注入マスク、イオン注入方法および半導体装置の製造方法に関する。
半導体装置の一種であるSiC(炭化ケイ素)を用いたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;以下、「SiC−MOSFET」と言うこともある。)は、大きく分けて、選択イオン注入、活性化アニール、ゲート酸化膜形成、および電極形成の工程を経て作製されている。
以下、図22〜図31の模式的断面図を参照して、従来のSiC−MOSFETの製造方法の一例について説明する。
まず、図22に示すように、n型のSiC基板202の表面全体にイオン注入マスク203を形成する。
次いで、図23に示すように、イオン注入マスク203上にフォトリソグラフィ技術を利用して所定の開口部205を有するレジスト204を形成する。
続いて、図24に示すように、開口部205の下方に位置する部分のイオン注入マスク203をエッチングにより除去して、SiC基板202の表面の一部を露出させる。
その後、図25に示すように、レジスト204を除去し、露出したSiC基板202の表面にリン等のn型ドーパントのイオンをイオン注入することによって、SiC基板202の表面にn型ドーパント注入領域206を形成する。
次に、図26に示すように、SiC基板202の表面からイオン注入マスク203をすべて除去する。その後、図27に示すように、SiC基板202の表面全体にイオン注入マスク203を再度形成する。
そして、図28に示すように、イオン注入マスク203の表面上にフォトリソグラフィ技術を利用してレジスト204を部分的に形成する。ここで、レジスト204の形成位置は、フォトリソグラフィ装置の精度等によって設定位置からずれることがある。
次に、図29に示すように、レジスト204が形成されていないイオン注入マスク203の部分をエッチングにより除去することによって、SiC基板202の表面の一部を露出させる。
続いて、図30に示すように、露出したSiC基板202の表面にアルミニウムなどのp型ドーパントのイオンをイオン注入することによって、SiC基板202の表面にp型ドーパント注入領域207を形成する。
その後、イオン注入マスク203およびレジスト204を除去し、イオン注入マスク203およびレジスト204の除去後のウエハについて結晶性を回復するための活性化アニールを行なう。
そして、図31に示すように、SiC基板202の表面上にゲート酸化膜208およびソース電極209を形成し、ゲート酸化膜208の表面上にゲート電極210を形成する。そして、SiC基板202の裏面にドレイン電極211を形成し、その後、ウエハをチップ状に分割することによって、SiC−MOSFETが完成する。
松波弘之編著,「半導体SiC技術と応用」,日刊工業新聞社
SiCはドーパントの拡散係数が小さいため、拡散法ではなく、イオン注入法によって、n型ドーパントおよびp型ドーパントをそれぞれ導入する必要がある。
しかしながら、上述したように、n型ドーパントおよびp型ドーパントのイオン注入のイオン注入マスクとなるレジストの形成位置がフォトリソグラフィ装置の精度等によってばらつくため、n型ドーパント注入領域とp型ドーパント注入領域との相対的な位置関係にばらつきが生じ、ひいてはSiC−MOSFETのゲート長にばらつきが生じてSiC−MOSFETの特性にばらつきが生じるという問題があった。
そこで、このような問題を解決するために、以下のような方法が考えられている。まず、図25に示すようにn型ドーパント注入領域206を形成した後に、イオン注入マスク203をすべて除去せずに、ドライエッチングによりイオン注入マスク203の幅を減少させることによってSiC基板202の表面の露出領域を拡大する。その後、SiC基板202の表面の拡大した露出領域にp型ドーパントのイオンをイオン注入することによって、SiC基板202の表面にp型ドーパント注入領域207を形成する。
この方法によれば、レジストの形成位置のばらつきに起因するn型ドーパント注入領域とp型ドーパント注入領域との相対的な位置関係のばらつきを抑制することができるため、SiC−MOSFETのゲート長にばらつきに起因するSiC−MOSFETの特性のばらつきを抑制することができる。
しかしながら、上記の方法において、イオン注入マスク203の幅を減少させる工程はドライエッチングにより行なわれるが、その際に、イオン注入マスク203の表面が荒らされる。そして、イオン注入マスク203の表面が荒らされた場合には、イオン注入マスク203の厚さが局所的に薄くなる箇所が生じ、p型ドーパントのイオン注入時にその薄くなった箇所からイオンがイオン注入マスク203を突き抜けて注入されるおそれがある。
また、イオン注入マスク203の幅を減少させる工程においては、イオン注入マスク203は幅方向だけでなく、厚さ方向にもエッチングされてしまうため、幅方向だけでなく厚さ方向のエッチングについても制御しなくてはならない。これにより、イオン注入マスク203の幅方向の減少量を正確に制御することが困難となり、その減少量にばらつきが生じることも想定される。
したがって、上記の方法においても、イオンの突き抜けおよびイオン注入マスク203の幅方向の減少量のばらつきに起因するSiC−MOSFET等の半導体装置の特性のばらつきを抑えるのは十分でないと考えられ、さらに歩留まりの低下も懸念される。
そこで、本発明の目的は、イオン注入を利用して製造される半導体装置の特性のばらつきを抑えることができるとともに、歩留まりの低下も抑止することができるイオン注入マスク、イオン注入方法および半導体装置の製造方法を提供することにある。
本発明の第1の態様は、半導体へのイオン注入を阻止するために半導体上に設けられるイオン注入マスクであって、第1のイオン注入マスク層と、第1のイオン注入マスク層よりもエッチングされにくい第2のイオン注入マスク層と、第2のイオン注入マスク層よりもエッチングされやすい第3のイオン注入マスク層と、を半導体側からこの順序で含み、第2のイオン注入マスク層がチタンまたはアルミニウムからなるイオン注入マスクである。本発明の第1の態様のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造した場合には、半導体装置の特性のばらつきを抑えることができるとともに、歩留まりの低下も抑止することができる。また、本発明の第1の態様において、第2のイオン注入マスク層は、SF 6 ガス等のフッ素含有ガスによってエッチングされにくくなる。また、本発明の第2の態様は、半導体へのイオン注入を阻止するために半導体上に設けられるイオン注入マスクであって、第1のイオン注入マスク層と、第1のイオン注入マスク層よりもエッチングされにくい第2のイオン注入マスク層と、第2のイオン注入マスク層よりもエッチングされやすい第3のイオン注入マスク層と、を半導体側からこの順序で含み、第1のイオン注入マスク層よりも半導体側に第4のイオン注入マスク層を含み、第4のイオン注入マスク層は第1のイオン注入マスク層よりもエッチングされにくく、第4のイオン注入マスク層がチタンまたはアルミニウムからなるイオン注入マスクである。本発明の第2の態様においては、半導体の表面へのダメージを低減することができる傾向にある。また、本発明の第2の態様においては、第4のイオン注入マスク層は、SF 6 ガス等のフッ素含有ガスによってエッチングされにくくなる。本発明の第2の態様において、第4のイオン注入マスク層の厚さが第2のイオン注入マスク層の厚さよりも厚いことが好ましい。この場合には、第4のイオン注入マスク層が後述する第1回目のエッチング時および後述する第2回目のエッチング時のそれぞれにおいて除去されない傾向にある。また、本発明の第3の態様は、半導体へのイオン注入を阻止するために半導体上に設けられるイオン注入マスクであって、第1のイオン注入マスク層と、第1のイオン注入マスク層よりもエッチングされにくい第2のイオン注入マスク層と、第2のイオン注入マスク層よりもエッチングされやすい第3のイオン注入マスク層と、を半導体側からこの順序で含み、第1のイオン注入マスク層よりも半導体側に第4のイオン注入マスク層を含み、第4のイオン注入マスク層は第1のイオン注入マスク層よりもエッチングされにくく、第4のイオン注入マスク層の厚さが第2のイオン注入マスク層の厚さよりも厚いイオン注入マスクである。本発明の第3の態様においては、半導体の表面へのダメージを低減することができる傾向にある。また、本発明の第3の態様においては、第4のイオン注入マスク層が後述する第1回目のエッチング時および後述する第2回目のエッチング時のそれぞれにおいて除去されない傾向にある。また、本発明の第2および3の態様においては、第4のイオン注入マスク層は、第1のイオン注入マスク層および第3のイオン注入マスク層のそれぞれよりもフッ素含有ガスによってエッチングされにくいことが好ましい。この場合には、半導体の表面へのダメージを低減することができる傾向がさらに大きくなる。また、本発明の第2および3の態様においては、第4のイオン注入マスク層の厚さが30nm以上300nm以下であることが好ましい。この場合には、後述する第1回目のイオン注入時におけるイオンの注入を有効に阻止することができる傾向にある。
ここで、本発明の第1〜第3の態様のイオン注入マスクにおいて、第2のイオン注入マスク層としては、第1のイオン注入マスク層および第3のイオン注入マスク層のそれぞれよりもフッ素含有ガスによってエッチングされにくいものを用いることができる。この場合には、後述する第2回目のエッチング時において、第1のイオン注入マスク層を幅方向に容易にエッチングすることができる傾向にある。
なお、本発明において、フッ素含有ガスとは、フッ素化合物のガスのことを意味する。また、本発明の第1〜第3の態様のイオン注入マスクにおいては、第1のイオン注入マスク層および第3のイオン注入マスク層の少なくとも一方がタングステンまたはケイ素からなっていてもよい。この場合には、第1のイオン注入マスク層および第3のイオン注入マスク層は、SF6(六フッ化イオウ)ガス等のフッ素含有ガスによってエッチングされやすくなる。
また、本発明の第1〜第3の態様のイオン注入マスクにおいては、第2のイオン注入マスク層に対する第3のイオン注入マスク層のエッチング選択比が2以上であることが好ましい。この場合には、後述する第2回目のエッチングにおいて、第3のイオン注入マスク層がエッチングされつくしたとしても、第1のイオン注入マスク層を保護することが可能となる傾向にある。
また、本発明の第1〜第3の態様のイオン注入マスクにおいては、第2のイオン注入マスク層に対する第1のイオン注入マスク層のエッチング選択比が2以上であることが好ましい。この場合には、後述する第2回目のエッチング時において、第1のイオン注入マスク層の幅方向へのエッチングの指向性が向上する傾向にある。
また、本発明の第1〜第3の態様のイオン注入マスクにおいては、第1のイオン注入マスク層の厚さが100nm以上30000nm以下であることが好ましい。この場合には、後述する第2回目のイオン注入時におけるイオンの注入を有効に阻止することができる傾向にある。
また、本発明の第1〜第3の態様のイオン注入マスクにおいては、第2のイオン注入マスク層の厚さが5nm以上100nm以下であることが好ましい。この場合には、後述する第1回目のエッチング時において第2のイオン注入マスク層を容易にエッチングにより除去できる傾向にあるとともに、後述する第2回目のエッチング時において第1のイオン注入マスク層が厚さ方向にエッチングされるのを有効に防止することができる傾向にある。
また、本発明の第1〜第3の態様のイオン注入マスクにおいては、第3のイオン注入マスク層の厚さが50nm以上30000nm以下であることが好ましい。この場合には、後述する第1回目のイオン注入時におけるイオンの注入を有効に阻止することができる傾向にある。
また、本発明の第1〜第3の態様のイオン注入マスクにおいて、半導体は炭化ケイ素であることが好ましい。この場合には、高耐圧、低損失かつ耐熱性に優れた半導体装置を製造することが可能となる傾向にある。
また、本発明の第4の態様は、本発明の第1〜第3の態様のイオン注入マスクを半導体の表面に形成した後に、半導体にイオン注入を行なうイオン注入方法である。本発明の第4の態様のイオン注入方法を用いて半導体装置を製造した場合には、半導体装置の特性のばらつきを抑えることができるとともに、歩留まりの低下も抑止することができる。
さらに、本発明の第5の態様は、イオン注入マスクを用いた半導体装置の製造方法であって、イオン注入マスクは、半導体へのイオン注入を阻止するために半導体上に設けられるイオン注入マスクであって、第1のイオン注入マスク層と、第1のイオン注入マスク層よりもエッチングされにくい第2のイオン注入マスク層と、第2のイオン注入マスク層よりもエッチングされやすい第3のイオン注入マスク層とを半導体側からこの順序で含み、イオン注入マスクを半導体の表面上の一部に形成する第1工程と、イオン注入マスクが形成されている領域以外の領域に対応する半導体の領域の少なくとも一部に第1ドーパントのイオンを注入して第1ドーパント注入領域を形成する第2工程と、第1ドーパント注入領域の形成後にイオン注入マスクの一部を幅方向に除去する第3工程と、イオン注入マスクの幅方向に除去された領域に対応する半導体の領域の少なくとも一部に第2ドーパントのイオンを注入して第2ドーパント注入領域を形成する第4工程と、を含む、半導体装置の製造方法である。本発明の第5の態様の半導体装置の製造方法によれば、半導体装置の特性のばらつきを抑えることができるとともに、歩留まりの低下も抑止することができる。
ここで、本発明の第5の態様の半導体装置の製造方法は、第3工程と第4工程との間に、第2のイオン注入マスク層および第3のイオン注入マスク層を除去する工程を含むことが好ましい。この場合には、後述する第2回目のイオン注入が容易となる傾向にある。
本発明によれば、イオン注入を利用して製造される半導体装置の特性のばらつきを抑えることができるとともに、歩留まりの低下も抑止することができるイオン注入マスク、イオン注入方法および半導体装置の製造方法を提供することができる。
以下、本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
まず、図1の模式的断面図に示すように、n型のSiC基板101の表面上に、チタンからなる第4のイオン注入マスク層102、タングステンからなる第1のイオン注入マスク層103、チタンからなる第2のイオン注入マスク層104およびタングステンからなる第3のイオン注入マスク層105をSiC基板101側からこの順序で積層する。
ここで、第4のイオン注入マスク層102、第1のイオン注入マスク層103、第2のイオン注入マスク層104および第3のイオン注入マスク層105の積層方法としては、たとえば従来から公知のスパッタリング法等を用いることができる。
次に、図2の模式的断面図に示すように、たとえばフォトリソグラフィ技術等を利用して第3のイオン注入マスク層105の表面上に開口部112を有するレジスト106を形成する。
続いて、図3の模式的断面図に示すように、開口部112からSiC基板101側に向かって、第3のイオン注入マスク層105、第2のイオン注入マスク層104および第1のイオン注入マスク層103をエッチングにより除去することによって、第4のイオン注入マスク層102の表面を露出させる(第1回目のエッチング)。
その後、図4の模式的断面図に示すように、レジスト106を除去することによって、SiC基板101の表面上に、第4のイオン注入マスク層102、第1のイオン注入マスク層103、第2のイオン注入マスク層104および第3のイオン注入マスク層105がSiC基板101側からこの順序で積層された本発明のイオン注入マスク107が形成される。
ここで、第1のイオン注入マスク層103の厚さは100nm以上30000nm以下であることが好ましい。第1のイオン注入マスク層103の厚さが100nm以上30000nm以下である場合には、後述する第2回目のイオン注入時におけるイオンの注入を有効に阻止することができる傾向にある。
また、第2のイオン注入マスク層104の厚さは5nm以上100nm以下であることが好ましい。第2のイオン注入マスク層104の厚さが5nm以上100nm以下である場合には、上記の第1回目のエッチング時において第2のイオン注入マスク層104をエッチングにより容易に除去できる傾向にあるとともに、後述する第2回目のエッチング時において、第1のイオン注入マスク層103が厚さ方向にエッチングされるのを有効に防止することができる傾向にある。
また、第3のイオン注入マスク層105の厚さは50nm以上30000nm以下であることが好ましい。第3のイオン注入マスク層105の厚さが50nm以上30000nm以下である場合には、後述する第1回目のイオン注入時におけるイオンの注入を有効に阻止することができる傾向にある。
また、第4のイオン注入マスク層102の厚さは第2のイオン注入マスク層104の厚さよりも厚いことが好ましい。第4のイオン注入マスク層102の厚さが第2のイオン注入マスク層104の厚さよりも厚い場合には、第4のイオン注入マスク層102が上記の第1回目のエッチング時および後述する第2回目のエッチング時のそれぞれにおいて除去されない傾向にある点で好ましい。
また、第4のイオン注入マスク層102の厚さが第2のイオン注入マスク層104の厚さよりも厚い場合には、第4のイオン注入マスク層102の厚さは30nm以上300nm以下であることが好ましい。第4のイオン注入マスク層102の厚さが第2のイオン注入マスク層104の厚さよりも厚く、第4のイオン注入マスク層102の厚さが30nm未満である場合には上記の第1回目のエッチング時および後述する第2回目のエッチング時のそれぞれにおいて除去されやすくなり、300nmよりも厚い場合には後述する第2回目のイオン注入前に第4のイオン注入マスク層102を除去する工程において、第4のイオン注入マスク層102を除去しにくくなるおそれがある。
そして、図5の模式的断面図に示すように、第3のイオン注入マスク層105の上方からリン等のn型ドーパントのイオン108を注入する(第1回目のイオン注入)。これにより、SiC基板101の表面にn型ドーパント注入領域109が形成される。
ここで、n型ドーパント注入領域109は、イオン注入マスク107が形成されている領域以外の領域に対応するSiC基板101の領域(すなわち、イオン注入マスク107が形成されている領域以外の領域の下方に位置するSiC基板101の領域)の少なくとも一部に形成される。
続いて、図6の模式的断面図に示すように、たとえばSF6ガス等のフッ素含有ガスを用いたエッチングにより第1のイオン注入マスク層103を幅方向に除去して、第1のイオン注入マスク層103の幅を減少させる(第2回目のエッチング)。
ここで、本発明においては、SF6ガス等のフッ素含有ガスによりエッチングされやすいタングステンからなる第1のイオン注入マスク層103の上面は、SF6ガス等のフッ素含有ガスによりエッチングされにくいチタンからなる第2のイオン注入マスク層104で覆われている。
したがって、上記の第2回目のエッチング時においては、その上面が第2のイオン注入マスク層104で被覆されている第1のイオン注入マスク層103は幅方向にエッチングされる傾向が大きくなることから、第1のイオン注入マスク層103の幅方向のエッチングによる減少量の制御に集中すればよくなるため、本発明においては、その制御性が向上し、第1のイオン注入マスク層103の幅方向の減少量のばらつきを抑えることができるようになる。
なお、第3のイオン注入マスク層105は、その上面が第2のイオン注入マスク層104で覆われていないため、厚さ方向および幅方向へのエッチングが進行し、第3のイオン注入マスク層105の厚さおよび幅がともに減少することになる。
また、第2のイオン注入マスク層104に対する第1のイオン注入マスク層103のエッチング選択比((第1のイオン注入マスク層103のエッチング速度)/(第2のイオン注入マスク層104のエッチング速度))は2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。第2のイオン注入マスク層104に対する第1のイオン注入マスク層103のエッチング選択比が好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である場合には、第1のイオン注入マスク層の幅方向へのエッチングの指向性が向上する傾向にある。
また、第2のイオン注入マスク層104に対する第3のイオン注入マスク層105のエッチング選択比((第3のイオン注入マスク層105のエッチング速度)/(第2のイオン注入マスク層104のエッチング速度))は2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。第2のイオン注入マスク層104に対する第3のイオン注入マスク層105のエッチング選択比が好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である場合には、第2回目のエッチングにおいて、第3のイオン注入マスク層がエッチングされつくしたとしても、第1のイオン注入マスク層を保護することが可能となる傾向にある。
なお、上記のエッチング選択比の算出に用いられるエッチング速度としては、第1のイオン注入マスク層103、第2のイオン注入マスク層104および第3のイオン注入マスク層105のそれぞれをフッ素含有ガス(たとえば、SF6ガス)を用いて同一の条件でエッチングしたときの厚さ方向のエッチング速度が用いられる。
その後、図7の模式的断面図に示すように、第1のイオン注入マスク層103の上方のチタンからなる第2のイオン注入マスク層104および第4のイオン注入マスク層102の露出部分をエッチングにより除去する(第3回目のエッチング)。ここで、第2のイオン注入マスク層104の除去とともに、第2のイオン注入マスク層104上に積層された第3のイオン注入マスク層105も除去されることになる。
なお、第2のイオン注入マスク層104および第4のイオン注入マスク層102の露出部分のエッチングによる除去は、たとえば、従来から公知のバッファードフッ酸等を用いたウエットエッチングにより行なうことができる。バッファードフッ酸は、たとえばフッ化水素酸とフッ化アンモニウムとを混合することにより作製することができる。
続いて、図8の模式的断面図に示すように、第1のイオン注入マスク層103の上方からボロン等のp型ドーパントのイオン110を注入する(第2回目のイオン注入)。これにより、SiC基板101の表面にp型ドーパント注入領域111が形成される。
ここで、p型ドーパント注入領域111は、イオン注入マスク107の第1のイオン注入マスク層103が幅方向に除去された領域に対応するSiC基板101の領域(すなわち、イオン注入マスク107の第1のイオン注入マスク層103が幅方向に除去された領域の下方に位置するSiC基板101の領域)の少なくとも一部に形成される。
ここで、本発明においては、上記の第2回目のエッチング時において、第1のイオン注入マスク層103の上面は第2のイオン注入マスク層104で覆われていたことから、第2のイオン注入マスク層104の除去後の第1のイオン注入マスク層103の上面はほとんど荒れておらず、第1のイオン注入マスク層103の厚さ方向へのエッチングも行なわれていない。
したがって、本発明においては、p型ドーパントのイオン110のイオン注入マスクとして機能する第1のイオン注入マスク層103の厚さのばらつきが低減され、第1のイオン注入マスク層103の厚さが局所的に薄くなる箇所が発生するのを抑制することができることから、イオンの突き抜けも有効に防止することができる。
これにより、本発明のイオン注入マスクを用いた場合には、イオン注入を利用して作製される半導体装置の特性のばらつきを抑えることができるとともに、半導体装置の特性のばらつきに起因する半導体装置の歩留まりの低下も抑止することができる。
次に、図9の模式的断面図に示すように、SiC基板101の表面上に残っている第4のイオン注入マスク層102をエッチングにより除去する(第4回目のエッチング)。ここで、第4のイオン注入マスク層102の除去とともに、第4のイオン注入マスク層102上に積層された第1のイオン注入マスク層103も除去されることになる。
なお、第4のイオン注入マスク層102の除去は、たとえば、従来から公知のバッファードフッ酸等を用いたウエットエッチングにより行なうことができる。
その後、第4のイオン注入マスク層102の除去後のウエハについて結晶性を回復するための活性化アニールを行なう。そして、図10の模式的断面図に示すように、p型ドーパント注入領域111の表面上にゲート酸化膜113を形成し、ゲート酸化膜113上にゲート電極114を形成する。さらに、n型ドーパント注入領域109の表面上にソース電極115を形成するとともに、SiC基板101の裏面にドレイン電極116を形成する。そして、ウエハをチップ状に分割することによって、半導体装置の一例であるSiC−MOSFETが完成する。
このようにして作製されたSiC−MOSFET等の半導体装置は、上述したように、その特性のばらつきが低減され、特性のばらつきに起因する歩留まりの低下も抑制することができる。
なお、上記においては、本発明のイオン注入マスクが形成される半導体としてはSiCを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。ただし、本発明のイオン注入マスクが形成される半導体としてはSiCを用いることが好ましい。この場合には、高耐圧、低損失かつ耐熱性に優れた半導体装置を製造することが可能となる傾向にある。
また、上記においては、第1のイオン注入マスク層103の材質および第3のイオン注入マスク層105の材質としては、それぞれタングステンを用いたが、本発明はこれに限定されず、たとえば、SF6ガス等のフッ素含有ガスでエッチングされやすいタングステンまたはケイ素等を用いることができる。なお、第1のイオン注入マスク層103の材質と第3のイオン注入マスク層105の材質とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、上記においては、第2のイオン注入マスク層104の材質および第4のイオン注入マスク層102の材質としては、それぞれチタンを用いたが、本発明はこれに限定されず、たとえば、SF6ガス等のフッ素含有ガスでエッチングされにくいチタンまたはアルミニウム等を用いることができる。なお、第2のイオン注入マスク層104の材質と第4のイオン注入マスク層102の材質とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、上記においては、第4のイオン注入マスク層102、第1のイオン注入マスク層103、第2のイオン注入マスク層104および第3のイオン注入マスク層105が順次積層された4層構造のイオン注入マスクを用いたが、本発明においては、第4のイオン注入マスク層102については形成しない3層構造のイオン注入マスクを用いてもよい。また、本発明においては、上記の4層(第4のイオン注入マスク層102、第1のイオン注入マスク層103、第2のイオン注入マスク層104および第3のイオン注入マスク層105)に加えて他の層を1層以上含む5層以上の構造のイオン注入マスクを用いてもよい。
(実施例1)
まず、図1に示すように、SiC基板101の表面上に、チタンからなる厚さ100nmの第4のイオン注入マスク層102、タングステンからなる厚さ1600nmの第1のイオン注入マスク層103、チタンからなる厚さ20nmの第2のイオン注入マスク層104およびタングステンからなる厚さ1600nmの第3のイオン注入マスク層105をスパッタリング法により順次積層する。
次に、第3のイオン注入マスク層105の表面の全面にレジスト106を形成した後に、フォトリソグラフィ技術を利用してそのレジスト106の一部を除去することによって、図2に示すように、開口部112を形成し、開口部112から第3のイオン注入マスク層105の表面を露出させる。
次いで、図3に示すように、開口部112から下方に、第3のイオン注入マスク層105、第2のイオン注入マスク層104および第1のイオン注入マスク層103をドライエッチングにより除去することによって、第4のイオン注入マスク層102の表面を露出させる。
次に、図4に示すように、レジスト106をすべて除去することにより、第4のイオン注入マスク層102、第1のイオン注入マスク層103、第2のイオン注入マスク層104および第3のイオン注入マスク層105がこの順序で積層されてなるイオン注入マスク107が形成される。図11に、この段階でのイオン注入マスク107を斜め上方から見たSEM(Scanning Electron Microscope)写真を示す。
次いで、図5に示すように、第3のイオン注入マスク層105の上方からn型ドーパントであるリンのイオン108を注入することにより、SiC基板101の表面にn型ドーパント注入領域109を形成する。ここで、n型ドーパント注入領域109は、イオン注入マスク107が形成されている領域以外の領域に対応するSiC基板101の領域の少なくとも一部に形成される。
続いて、図6に示すように、SF6ガスを用いたドライエッチングにより、第1のイオン注入マスク層103を幅方向に除去することによって、第1のイオン注入マスク層103の幅を減少させる。図12に、この段階でのイオン注入マスク107を斜め上方から見たSEM写真を示す。
その後、図7に示すように、バッファードフッ酸を用いて第2のイオン注入マスク層104をウエットエッチングにより除去し、第2のイオン注入マスク層104とともに第3のイオン注入マスク層105も除去する。
次に、図8に示すように、第1のイオン注入マスク層103の上方からボロンのイオン110を注入することにより、SiC基板101の表面にp型ドーパント注入領域111を形成する。ここで、p型ドーパント注入領域111は、イオン注入マスク107の第1のイオン注入マスク層103が幅方向に除去された領域に対応するSiC基板101の領域の少なくとも一部に形成される。
次に、図9に示すように、バッファードフッ酸を用いて第4のイオン注入マスク層102をウエットエッチングにより除去し、第4のイオン注入マスク層102とともに第1のイオン注入マスク層103も除去する。
その後、第4のイオン注入マスク層102の除去後のウエハについて結晶性を回復するための活性化アニールを行なう。そして、図10に示すように、p型ドーパント注入領域111の表面上にゲート酸化膜113を形成し、ゲート酸化膜113上にゲート電極114を形成する。さらに、n型ドーパント注入領域109の表面上にソース電極115を形成するとともに、SiC基板101の裏面にドレイン電極116を形成する。そして、ウエハをチップ状に分割することによって、SiC−MOSFETが完成する。
このようにして作製されたSiC−MOSFETは、上述したように、その特性のばらつきが低減され、特性のばらつきに起因する歩留まりの低下も抑制することができる。
(比較例1)
まず、図13の模式的断面図に示すように、SiC基板301の表面上に、厚さ100nmのチタン層302および厚さ3000nmのタングステン層303をスパッタリング法により順次積層する。
次に、タングステン層303の表面の全面にレジスト304を形成した後に、フォトリソグラフィ技術を利用してそのレジスト304の一部を除去することによって、図14の模式的断面図に示すように、開口部309を形成し、開口部309からタングステン層303の表面を露出させる。
次いで、図15の模式的断面図に示すように、開口部309から下方に、タングステン層303をドライエッチングにより除去することによって、チタン層302の表面を露出させる。
次に、図16の模式的断面図に示すように、レジスト304をすべて除去することにより、チタン層302およびタングステン層303からなるイオン注入マスク310が形成される。図17に、この段階でのイオン注入マスク310を斜め上方から見たSEM写真を示す。
次いで、図18の模式的断面図に示すように、タングステン層303の上方からn型ドーパントであるリンのイオン305を注入することにより、SiC基板301の表面にn型ドーパント注入領域306を形成する。
続いて、図19の模式的断面図に示すように、SF6ガスを用いたドライエッチングにより、タングステン層303を幅方向に除去することによって、タングステン層303の幅を減少させる。図20に、この段階でのイオン注入マスク310を斜め上方から見たSEM写真を示す。図20に示すように、イオン注入マスク310の上部のタングステン層303の表面は荒れており、タングステン層303の厚さにばらつきが生じていることがわかる。
次に、図21の模式的断面図に示すように、タングステン層303の上方からボロンのイオン307を注入することにより、SiC基板301の表面にp型ドーパント注入領域308を形成する。
ここで、上述したように、タングステン層303の厚さにばらつきが生じていることから、タングステン層303は局所的に厚さが薄くなっている箇所を有しており、ボロンのイオン307の一部はその箇所からタングステン層303を突き抜けてタングステン層303の下方のSiC基板301の領域に注入される。
したがって、比較例1においては、ボロンのイオン307が注入されるべきではないSiC基板301の領域にボロンのイオン307が注入されることになる。その後は、実施例1と同様にして、SiC−MOSFETが作製される。
比較例1においては、タングステン層303の厚さのばらつきによってSiC基板301の様々な箇所にボロンのイオン307が注入されていることから、1つのウエハから様々な特性のSiC−MOSFETが取り出される。そして、特性の低いSiC−MOSFETについては、不良品として廃棄されるため、SiC−MOSFETの歩留まりも低下することになる。
したがって、実施例1と比較例1とを比較すれば明らかなように、本発明に係るイオン注入マスクを用いてSiC−MOSFETを作製した場合には、SiC−MOSFETの特性のばらつきが低減され、特性のばらつきに起因する歩留まりの低下も抑制することができることがわかる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明のイオン注入マスク、イオン注入方法および半導体装置の製造方法によれば、イオン注入を利用して製造される半導体装置の特性のばらつきを抑えることができるとともに、歩留まりの低下も抑止することができる。
したがって、本発明は、SiC−MOSFET等の半導体装置の製造に好適に利用することができる。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の製造工程の一部を図解するための模式的な断面図である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
本発明のSiC−MOSFETの模式的な断面図である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の第1回目のイオン注入前のイオン注入マスクを斜め上方から見たSEM写真である。
本発明のイオン注入マスクを用いて半導体装置を製造する方法の一例の第2回目のエッチング後のイオン注入マスクを斜め上方から見たSEM写真である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法を改良したSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法を改良したSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法を改良したSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法を改良したSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法を改良したSiC−MOSFETの製造方法における第1回目のイオン注入前のイオン注入マスクを斜め上方から見たSEM写真である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法を改良したSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法を改良したSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法を改良したSiC−MOSFETの製造方法における第2回目のエッチング後のイオン注入マスクを斜め上方から見たSEM写真である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法を改良したSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの製造方法の製造工程の他の一部を図解するための模式的な断面図である。
従来のSiC−MOSFETの模式的な断面図である。
符号の説明
101,202,301 SiC基板、102 第4のイオン注入マスク層、103 第1のイオン注入マスク層、104 第2のイオン注入マスク層、105 第3のイオン注入マスク層、106,204,304 レジスト、107,203,310 イオン注入マスク、108,110,305,307 イオン、109,206,306 n型ドーパント注入領域、111,207,308 p型ドーパント注入領域、112,205,309 開口部、113,208 ゲート酸化膜、114,210 ゲート電極、115,209 ソース電極、116,211 ドレイン電極、302 チタン層、303 タングステン層。