JP5164949B2 - 食品の風味改善方法 - Google Patents

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本発明は、各種食品にほのかな燻臭を付与し、食品のいやな臭いや味をマスキングして風味改善を図る食品の風味改善方法に関する。
燻液や、該燻液に澱粉等を加えて粉末化したものを食品に添加し、食品に燻煙臭を付与して風味を改善する試みが従来よりなされている。
また、下記特許文献1には、澱粉に燻煙処理を施した後、該澱粉を溶液中でpH4ないしpH7に調整して製造した燻煙澱粉を、澱粉含有食品中の澱粉の全量と置換して、澱粉含有食品の風味を改善することが開示されている。
特開昭62−29441号公報
しかしながら、燻液には、有機酸等の酸性成分が比較的多量に含まれており、酸味が比較的強いものであった。このため、食品に強い酸味を与えてしまうことがあり、食品本来の風味を損なうことがあった。
また、上記特許文献1では、燻煙澱粉を製造するに際し、ステンレス皿等に澱粉を広げて燻煙処理しているが、表面に露出している澱粉は十分に燻煙処理されるものの、内部に位置する澱粉は燻煙処理されにくく、燻煙処理ムラが生じ易く、均一に燻煙処理することが困難であった。更には、燻煙処理したのち、アルカリ溶液中に添加するなどしてpH4ないしpH7にしているので、アルカリ溶液に添加する際に、澱粉が吸着した燻煙成分がアルカリ溶液中に流出してしまう問題があった。このため、風味改善効果を得るには、食品中における燻煙澱粉の含有量を高める必要があり、コストが嵩む問題があった。
したがって、本発明の目的は、各種食品にほのかな燻臭を付与し、食品のいやな臭いや味をマスキングして風味改善を図ることのできる食品の風味改善方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の食品の風味改善方法は、食品粉末を、内周に攪拌羽根を有し回転支持台上にほぼ水平に設置された回転ドラムに充填し、この回転ドラムを回転させつつ、該回転ドラム内に燻煙を通過させることにより燻煙処理して得られた燻煙処理食品粉末を、食品中に0.1〜3.0質量%含有させることを特徴とする。
本発明の食品の風味改善方法は、前記食品粉末が、澱粉、小麦粉、乳糖、デキストリン、粉末状蛋白、米粉、粉末油脂、香辛料、砂糖、塩、かつおや煮干の乾燥粉末、乾燥卵白、乾燥卵黄及び乾燥全卵から選ばれる1種以上であることが好ましい。これらの食品粉末は、燻煙処理によって劣化や着色等が少なく、更には燻煙成分を効率よく吸着するので、食品の風味改善効果に優れる。
本発明の食品の風味改善方法は、前記燻煙処理食品粉末が、食品粉末を攪拌しつつ、10〜80℃の燻煙を20分〜3時間接触させて燻煙処理したものであることが好ましい。
本発明の食品の風味改善方法は、前記燻製処理食品粉末が、食品粉末を内周に攪拌羽根を有する回転ドラムに充填し、この回転ドラムを回転させつつ、該回転ドラム内に燻煙を通過させることにより燻煙処理したものであることが好ましい。
本発明の食品の風味改善方法は、前記食品が、魚肉練製品、畜肉練製品、菓子類、コーヒー飲料、ココア飲料から選ばれた1種以上であることが好ましい。
本発明の食品の風味改善方法において、食品に添加する燻煙処理食品粉末は、食品粉末を、内周に攪拌羽根を有し回転支持台上にほぼ水平に設置された回転ドラムに充填し、この回転ドラムを回転させつつ、該回転ドラム内に燻煙を通過させることにより燻煙処理したものであるので、食品粉末のほぼ全体にわたり、ムラなく燻煙処理されている。このためこの燻煙処理食品粉末は、燻煙が十分に全体にわたってほぼ満遍無く吸着されており、また、その品質にばらつきが少ない。そして、この燻煙処理食品粉末を、食品中に0.1〜3.0質量%含有させることにより、各種食品にほのかな燻臭を付与して、例えば魚肉等に付着している魚臭、豚肉、鶏肉等に付着している肉臭、コラーゲン等に付着している獣臭、ケーシング等のフィルム臭、大豆蛋白、乳蛋白等の蛋白臭、コーンスターチ、小麦粉等の粉臭、レトルトパック等のレトルト臭、油脂含量が高い食品の油臭などの食品のいやな臭いや味をマスキングでき、食品の風味改善を図ることができる。
燻煙処理食品粉末製造装置の概略図である。 同装置に食品粉末を充填する際の状態図である。
本発明の食品の風味改善方法において、食品に添加する燻煙処理食品粉末は、食品粉末を攪拌しつつ、燻煙と接触させることにより燻煙処理されたものである。
食品粉末としては、粉末状の形状をなし、食品衛生法上許容されているものであれば特に限定はない。好ましくは、澱粉、小麦粉、乳糖、デキストリン、粉末状蛋白、米粉、粉末油脂、香辛料、砂糖、塩、かつおや煮干の乾燥粉末、乾燥卵白、乾燥卵黄、乾燥全卵が挙げられる。これらは、燻煙の吸着効率が高く、更には、食品に添加した際に着色等をもたらす恐れが少ない。なかでも、比較的安価で、燻煙の吸着効率が高く、食品に添加しても色調、風味、食感に影響を与えることが少ないという理由から、澱粉が好ましく使用され、特にコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、香辛料、デキストリンが好ましく使用される。
食品粉末の粒径は、特に限定されないが、10〜120メッシュが好ましく、40〜60メッシュがより好ましい。粒径が10メッシュ未満であると、燻製味の偏りが出やすく、120メッシュを超えると、粉末の飛散が非常に大きく現実的な作業に適さない。なお、上記メッシュサイズは、日本工業規格(JIS Z8801)による。
燻煙処理に用いる燻材としては、ヒッコリー、リンゴ、ホワイトオーク、ナラ、ブナ、サクラ等が好ましい。これらは、通常の燻製食品に常日頃利用されており、入手が容易で、馴染みのある燻製味を燻製処理粉末に施す事が出来る。
このような燻煙処理食品粉末は、例えば、図1〜2に示す装置を用いて製造することができる。図1は、燻煙処理食品粉末製造装置の概略図であり、図2は、同装置に食品粉末を充填する際の状態図である。
この製造装置は、回転ドラム1を回転可能に支持する回転支持台2が、基台3に対して前後に傾斜可能に支持されている。すなわち、回転支持台2は、回転ドラム1の回転時には、回転ドラム1をほぼ水平に支持し、食品粉末の導入、取出し時には、基台3に対して前後いずれかの方向に回動して、傾斜できるように構成されている。
回転ドラム1は、円筒状をなし、その両端はそれぞれ縮径して、開口部4,5を有している。また、回転ドラム1の中央部外周には、ガイドローラ溝6が形成されており、回転支持台2から延出したガイドローラ7を嵌合させて、回転ドラム1の回転操作中における回転ドラム1の横ブレ等を防止するように構成されている。また、回転ドラム1の内周壁には、攪拌羽根8が複数取付けられている。
この回転ドラム1の一端の開口部4には、燻煙発生部10から伸びた燻煙導入筒L1が、パッキン9aを介して開閉可能に接続している。
燻煙発生部10は、下方に吸気口11が形成され、上方に燻煙導入筒L1が延出したハウジング12内に加熱装置13が配置されており、ハウジング12内に配置した燻材を、加熱装置13で加熱して燻煙を発生させ、発生した燻煙を、燻煙導入筒L1を通して回転ドラム1内に導入出来るように構成されている。加熱装置としては、ヒータ、炭、ガス、自動式スモークジェネレータ等が挙げられる。
また、この回転ドラム1の他端の開口部5には、支持枠20により支持された燻煙排気筒L2が、パッキン9bを介して開閉可能に接続している。
この製造装置において、回転ドラム1内に食品粉末を充填したり、取り出したりする際には、図2に示すように、回転ドラム1の両端から燻煙導入筒L1及び燻煙排気筒L2を取外し、回転支持台2を一方向に傾斜させて作業を行うようになっている。
回転ドラム1を傾斜させて、回転ドラム1内に食品粉末を充填した後、回転支持台2を水平に戻し、回転ドラム1の両端の開口部4,5に燻煙導入筒L1及び燻煙排気筒L2をそれぞれ取付ける。そして、回転ドラム1を回転させるとともに、燻煙発生部10のハウジング12内に燻材を所定量設置し、燻材を加熱装置13で加熱して燻煙を発生させ回転ドラム1内に導入し、燻煙処理を行う。
回転ドラムの回転速度は、10〜30回転/分が好ましく、15〜25回転/分がより好ましい。回転速度が10回転/分未満であると、攪拌不足による燻製ムラを生じやすく25回転/分を超えると粉末の飛散により燻製ムラを生じやすい。
燻煙の流量は、食品粉末の種類、回転ドラム1の容積や全長により異なるが、例えば、食品粉末として澱粉を用い、回転ドラムの容積200〜300L、全長1.1〜1.4mの場合、2〜5分程度、回転ドラム内に燻煙が滞留する事がより好ましい。
燻煙処理は、10〜120℃の燻煙で食品粉末を20分〜3時間燻すことが好ましく、60〜80℃の燻煙で食品粉末を60〜120分間燻すことがより好ましい。燻煙温度が10℃未満であると、煙が液化(木酢液)して、粉末がペースト状になる事があり、120℃を超えると、食品粉末にコゲが生じたり、食品粉末が熱劣化して、風味改善効果が損なわれることがある。また、燻煙時間が20分未満であると、食品粉末に燻煙成分が十分吸着されず、ムラが生じることがあり、3時間を超えると燻煙の付着が悪くなり時間対効果を感じられなくなる。燻煙の温度を調整するには、室温のコントロールと共に、吸気口の開口面積を調整すればよい。
このようにして、所定時間燻煙処理を行った後、図2に示すように、回転ドラム1の両端から燻煙導入筒L1及び燻煙排気筒L2を取外し、回転支持台2を一方向に傾斜させ、燻煙処理食品粉末を取り出す。
次に、本発明の食品の風味改善方法について説明する。
本発明の風味改善方法の対象となる食品としては、魚臭、肉臭、獣臭、蛋白臭、粉臭、フィルム臭、レトルトパック等のレトルト臭、油臭などの臭気を有する食品であれば特に限定はない。例えば、1)魚肉ソーセージ、魚肉ハム、竹輪、蒲鉾、はんぺん、さつま揚げなどの魚肉練製品、2)畜肉ハム、畜肉ソーセージ、ハンバーグ、焼き豚などの畜肉練製品、3)ポテトチップス、揚げ菓子などの菓子類、4)コーヒー飲料、5)ココア飲料等が挙げられる。
本発明の食品の風味改善方法は、上記した燻煙処理食品粉末を、食品中に0.1〜5質量%含有させることを特徴とする。燻煙処理食品粉末の含有量は、0.1〜3.0質量%が好ましく、0.2〜2.0質量%がより好ましい。燻煙処理食品粉末の含有量が0.1質量%未満であると、十分な効果が得られず、5質量%を超えると、食品によっては、燻煙臭が強くついてしまい、食品の風味を損なうことがある。
食品中に燻煙処理食品粉末を含有させるには、特に限定はなく、他の原料とともに練り込んだりして行うことができる。例えば、魚肉練製品の場合においては、原料となる、すけとう鱈、ほっけ、たちうお、えそ、鮭等の魚肉すり身中に、調味料、香辛料、澱粉等とともに燻煙処理食品粉末を添加混合して、必要に応じてケーシング等に充填して成形し、これを、蒸煮、油ちょう、茹で、焼成等の加熱処理を行って得ることができる。
また、畜肉練製品の場合には、豚肉、牛肉、鶏肉、マトンなどの畜肉のひき肉に、調味料、香辛料、澱粉等とともに燻煙処理食品粉末を添加混合して、必要に応じてケーシング等に充填して成形し、これを、燻煙処理、蒸煮、油ちょう、茹で、焼成等の加熱処理を行って得ることができる。
本発明の食品の風味改善方法によれば、食品に含有させる燻煙処理食品粉末が、食品粉末を攪拌しつつ、燻煙と接触させることにより燻煙処理したものであるので、食品粉末のほぼ全体にわたり、ムラなく燻煙処理されて燻煙が十分に全体にわたってほぼ満遍無く吸着されており、その品質にばらつきが少ない。そして、この燻煙処理食品粉末を、食品中に0.1〜5質量%含有させることにより、各種食品にほのかな燻臭を付与して、食品のいやな臭いや味をマスキングでき、食品の風味改善を図ることができる。
このように、極めて少ない添加量であっても、食品の風味を効果的に改善できるので、燻煙処理食品粉末の使用量を抑えることができ、コスト削減を図ることができる。
(燻煙処理食品粉末の製造)
図1に示す製造装置を用いて燻煙処理食品粉末を製造した。
回転ドラム1内にコーンスターチを25kg充填した。そして、ヒッコリーのスモークチップ1kgを、ヒータ13上に配置し、450℃に加熱して燻煙を発生させた。そして、コーンスターチを充填した回転ドラム1を20回転/分で回転させて攪拌しつつ、上記で発生した60℃の燻煙を回転ドラム1内に通過させて、2時間燻煙処理し、燻煙処理食品粉末を得た。
(試験例1)
下記表1に示す配合で原料を混合し、120℃で4分間レトルト殺菌処理して例1〜6の魚肉ソーセージを製造した。得られた魚肉ソーセージの風味を、5人のパネラーによる官能評価により評価した。
(試験例2)
下記表2に示す配合で原料を混合し、該混合物を55〜60℃で20分間ドライリングし、次いで、65〜72℃で10分間スモークし、次いで、75℃で15分間スチーミングし、次いで、45℃の水で2分間シャワーリングし、次いで、45℃で5分間ドライリングして例7〜12のウインナーソーセージを製造した。得られたウインナーソーセージの風味を、5人のパネラーによる官能評価により評価した。
1:回転ドラム
2:回転支持台
3:基台
4:開口部
5:開口部
6:ガイドローラ溝
7:ガイドローラ
8:攪拌羽根
9a,9b:パッキン
10:燻煙発生部
11:吸気口
12:ハウジング
13:加熱装置
20:支持枠
L1:燻煙導入筒
L2:燻煙排気筒

Claims (5)

  1. 食品粉末を、内周に攪拌羽根を有し回転支持台上にほぼ水平に設置された回転ドラムに充填し、この回転ドラムを回転させつつ、該回転ドラム内に燻煙を通過させることにより燻煙処理して得られた燻煙処理食品粉末を、食品中に0.1〜3.0質量%含有させることを特徴とする食品の風味改善方法。
  2. 前記食品粉末が、澱粉、小麦粉、乳糖、デキストリン、粉末状蛋白、米粉、粉末油脂、香辛料、砂糖、塩、かつおや煮干の乾燥粉末、乾燥卵白、乾燥卵黄及び乾燥全卵から選ばれる1種以上である、請求項1記載の食品の風味改善方法。
  3. 前記食品粉末が、澱粉、デキストリン、塩、及び、かつおや煮干の乾燥粉末から選ばれる1種以上である、請求項1記載の食品の風味改善方法。
  4. 前記燻煙処理食品粉末が、食品粉末を攪拌しつつ、10〜80℃の燻煙を20分〜3時間接触させて燻煙処理したものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品の風味改善方法。
  5. 前記食品が、魚肉練製品、畜肉練製品、菓子類、コーヒー飲料、ココア飲料から選ばれた1種以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品の風味改善方法。
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