JP5151073B2 - 光度計 - Google Patents

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Description

本発明は、分光光度計等の光度計に関し、特に紫外光源を備えた光度計に関する。
重水素ランプ等の紫外光源を有し、該光源から射出される光を波長分散素子により分光し、各波長の光を試料と相互作用させて検出することによって波長別の強度分布を得て試料の定量・定性分析を行う分光光度計において、深紫外領域に吸収を持つ酸素を光路上から排除することにより、より短い波長域において正確な測定を行うことを可能としたものが知られている。このような分光光度計には、窒素ガスや不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン等)等を供給することで装置内をガス置換する機構や、真空ポンプ等によって装置内を真空化する機構が設けられており、深紫外測定を行う際には、これらの機構を稼働させて雰囲気中の酸素を除去している(例えば、特許文献1を参照)。
特開平11-211566号公報([0022], [0023])
一般に紫外線は大気中の酸素と反応してオゾンを生成し、このオゾンはゴム類を始め多種の材料に対し、中長期的に悪影響を及ぼすことが知られている。紫外光源を備えた光度計においても光源の周辺部においてオゾンが発生するが、光度計内の光学素子駆動機構等に用いられている各種部品の中にはその影響を受ける可能性のあるものがあり、オゾンによる浸食が装置の寿命や信頼性を損なう一因となる。
特に、上記のような深紫外測定を行う装置の場合は、装置内を効率よくガス置換又は真空化するために光路を含む空間が外部に対して気密状態となっていることから、光源周辺で発生したオゾンガスが装置全体に充満し、部品の浸食が助長されるおそれがある。但し、このような装置であっても、深紫外測定を実行している間は、上述の真空化又はガス置換等によりオゾン発生の原因となる酸素が除去されるため、このような問題は回避される。しかし、それ以外の波長域による測定を行う場合にも、常に真空状態若しくは窒素ガス等によるガス置換を継続する構成とすると、オゾンによる部品の浸食を防止することはできるものの、多大なコストが掛かってしまう。このため、深紫外測定が不要な場合にも、オゾンを希釈排出するためだけに真空ポンプの稼働や置換ガスの供給を持続させることは経済性の点で望ましくない。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、紫外光源由来のオゾンガスによる内部部品の浸食を有効に防止することができると同時に、置換ガスの導入又は真空ポンプの稼働などを必要最小限に抑えてランニングコストを低減することのできる光度計を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る光度計は、紫外領域の測定光を発生する光源と、試料と相互作用した後の測定光を検出する光検出器を有し、前記光源から前記光検出器に至る光路全体を密閉する構造体と、前記構造体内部から空気を排除する空気排除手段とを備えた光度計において、前記空気排除手段を稼働させずに測定を行う場合に光源を格納する空間とそれ以外の空間の間の気体の流通を遮断すると共に、前記空気排除手段を稼働させた状態で測定を行う場合に前記気体の流通の遮断を解除するための着脱式又は可動式の空間隔離部材を有し、前記空間隔離部材が、測定光を透過させることができ、且つオペレータが工具を用いることなく着脱又は移動させることのできるものであることを特徴としている。
上記構成を有する本発明の光度計によれば、上記空間隔離部材によって光源を格納する空間とそれ以外の空間の間の気体の流通を遮断することができるため、紫外光源の周辺で発生したオゾンガスが分光器等に侵入して内部部品を浸食するのを防止することができる。
また、上記空間隔離部材は着脱式又は可動式であり、オペレータが工具等を用いることなく短時間で着脱又は移動させることができるため、必要に応じて光路上に配置したり、光路上から取り除いたりすることが可能である。従って、例えば、深紫外測定を行う際には、光路上にレンズや窓板等の透過部材を配置することは好ましくないため、上記空間隔離部材を光路上に配置せずに、真空ポンプや置換ガス供給手段といった空気排除手段を稼働させた状態で測定を行い、それ以外の測定を行う際には、光路上に上記空間隔離部材を取り付け、空気排除手段を稼働させずに測定を行うといったことが可能となる。このようにすることで、真空ポンプや置換ガス供給手段等の空気排除手段の稼働を深紫外領域の測定時のみに限定することができ、ランニングコストの低減に寄与することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の実施例に係る分光光度計の概略構成図である。
本実施例の分光光度計10は、重水素ランプから成る紫外光源21を収容した光源室20と、回折格子33等を備えた分光器30と、試料41をセットするための試料室40と、光検出器52を収容した検出器室50とで構成されている。これらの光源室20、分光器30、試料室40、及び検出器室50から成る光路全体には、ガス置換を有効に行えるように外界に対して気密になるようカバー11が設けられると共に、置換用の窒素ガスを導入するためのガス導入口11a、11b、11c、11dと室内のガスを排出するためのガス排出口11e、11fが設けられている。なお、光源室20と分光器30、分光器30と試料室40、及び試料室40と検出器室50とを隔てる隔壁には測定光を通過させるための開口が設けられており、自由に気体が流通できるようになっている。
紫外光源21から射出された光は分光器30に導入され、ミラー31及びスリット32を経て回折格子33に入射する。なお、回折格子33は波長選択を可能とするため、紙面と垂直な軸を中心として回動可能な構成となっている。回折格子33による波長分散によって得られた単色光は、スリット34及びミラー35、36を経て、試料室40へと導かれ、試料41に照射される。試料41を透過した測定光は検出器室50へ導かれ、ミラー51を経て光検出器52に入射し、その強度に応じた電気信号に変換される。なお、光源及び検出器は、測定波長に応じて適宜交換することのできる構成としてもよい。光検出器52から出力された電気信号は、A/D変換部60によってデジタルデータに変換された後、パーソナルコンピュータ70等の制御コンピュータに分光強度データとして記録され、該分光強度データに基づいて試料の定性分析若しくは定量分析が行われる。
本実施例の分光光度計10において深紫外波長域を測定する場合は、ガス導入口11a、11b、11c、11dから窒素ガスを装置内に導入することで光路上の空気を排除置換し、深紫外光を吸収する酸素を除去した状態で測定が行われる。なお、深紫外測定時には、より短波長域まで安定した測定結果が得られるよう、光路上にレンズや窓板といった透過部材は一切配置されない構成となっている。従って、光源室20とそれ以降の部屋との間では気体が自由に流通できるが、上記のように、深紫外測定中は窒素ガスの導入によってオゾンの元となる酸素が装置外に排出され(図2(a))、更に、光源室20に残存する酸素からオゾンが発生したとしてもこれが高濃度に達する前に窒素ガスによって希釈排出されるため内部の部品に悪影響を及ぼす余地はない。
一方、深紫外域のデータが必要でない測定を行う場合には、上記のような窒素ガスの導入を行う必要はなく、装置内に空気が存在する状態で通常の分光光度計と同様の手順にて測定が行われる。この場合には、光源室20と分光器30との間の気体の流通を遮断するため、図3に示すような着脱式の窓板ユニット80が隔壁22の開口に装着される。
窓板ユニット80は、測定光を透過させるための窓板81とこれを保持するための窓板ホルダ82で構成される。なお、窓板ユニット80は深紫外測定時には取り外されるため、窓板81の材料としては深紫外領域の吸収を考慮する必要はないが、それ以外の測定波長域において吸収を持たないものを用いることが望ましく、例えば石英等を好適に用いることができる。更に窓板ホルダ82の裏面(取り付け時に隔壁22と対向する面)には、窓板81の周囲を取り囲むようにOリング84が設けられており、取り付け時には該Oリング84によって光源室20と分光器30の間が密閉される。
光源室20と分光器30の間の隔壁22には、測定光通過用の開口の付近に窓板ユニット取り付け用のピン23が設けられており、窓板ホルダ82にはピン23と対応する位置にガイド穴83が設けられている。ピン23はその頭部23aの径が基部23bの径よりも大きくなっており、ガイド穴83はピンの頭部23aよりも大きな径を有する大径部83aと、大径部83aから上方に延伸し、ピンの頭部23aの径よりも小さく基部23bの径よりもやや大きな幅を有するスリット状の長孔部83bを備えている。なお、ここでは着脱式窓板ユニット80を隔壁22に取り付けた状態を基準として上下方向を定義する。
窓板ユニット80を隔壁22に取り付る際には、まず、大径部83aにピン23を通し(図4)、その後ホルダを下方に押し下げることによってピンの基部23bを長孔部83bの上端まで進入させる(図5)。ここで、図4(b)及び図5(b)に示すように、窓板ホルダ82の厚さは、大径部83aの周辺では小さく、長孔部83bの上端に向かって大きくなるよう形成されているため、このようにガイド穴83にピン23を挿通させた状態で窓板ホルダ82を押し下げることによって、窓板ユニット80が隔壁22に押しつけられる。このとき、窓板ホルダ82裏面のOリング84が隔壁22の開口部の周縁と密着して窓板ホルダ82と隔壁22との隙間を塞ぐため、光源室20と分光器30の間の気体の流通が防止される(図2(b))。これにより、紫外光源21付近から発生するオゾンガスがそれ以降の部屋に充満して各種部品の劣化を促進するのを防ぐことができる。
なお、窓板ユニット80を隔壁22に取り付けた状態であっても、紫外線自体は窓板81を通過して分光器30以降の部屋にも到達するため、これらの領域においても多少はオゾンが発生する。しかし、通常、光源21から射出される全紫外光のうち分光器30以降に到達する量は光学配置的に僅かであり、更に、窓板81を透過した後の紫外光は短い領域の波長成分がカットされていてオゾン生成能力が低いことから、分光器30以降の部屋におけるオゾンの発生量は光源室20内と比較すると有意に低くなる。従って、光源室20とそれ以降の部屋とのガス交換を規制しさえすれば、窒素ガスによるガス置換を行わなくても分光器30以降の光路全域においてオゾン濃度を十分に低く抑えることができる。なお、光源室20内にはオゾンによる影響を受けやすい部品は配置しないようにし、例えば、窓板ユニット80のOリング84にはシリコンゴム等の耐オゾン性を有する材料から成るものを使用する。
このように、本実施例の分光光度計によれば、深紫外領域のデータを必要としない測定を行う場合には窓板ユニットを装着することで光源室で発生したオゾンがそれ以降の部屋に侵入するのを防止することができるため、窒素ガスの導入を深紫外測定時のみに限定してランニングコストの軽減を図ることが可能となる。また、窓板ユニットは容易に着脱可能な構成となっているため、深紫外測定を行う際には容易に取り外すことができ、窓板を通過することによる測定光の減衰を防止して正確な測定を行うことができる。
以上、実施例を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲において適宜変更が許容されるものである。例えば、本発明に係る空間隔離部材は、オペレータが容易に着脱又は移動させることができるものであればいかなる構成を有するものとしてもよく、上記実施例に示すものの他に、例えば、窓板ホルダの一辺を蝶番等によって隔壁に固定してハッチのように開閉することのできる構成としたり、隔壁にガイドレール等を設け、窓板ユニットを上下又は左右にスライド可能な構成としたりすることによって、窓板を光路上及び光路外に移動できるようにしてもよい。
本発明の一実施例に係る分光光度計の概略構成を示す図。 同実施例の分光光度計における光源室周辺のガス流通を説明する図であり、(a)は深紫外測定時における状態を、(b)はその他の測定時における状態を示す。 同実施例の分光光度計における窓板ユニットの構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は該窓板ユニットを隔壁に取り付けた状態を示す断面図である。 上記窓板ユニットの取り付け方法を説明する図であって、(a)はガイド穴にピン頭を通した状態を示す拡大正面図であり、(b)はその断面図である。 上記窓板ユニットの取り付け方法を説明する図であって、(a)はホルダを押し下げた状態を示す拡大正面図であり、(b)はその断面図である。
符号の説明
10…分光光度計
11…カバー
11a、11b、11c、11d…ガス導入口
11e、11f…ガス排出口
20…光源室
21…紫外光源
22…隔壁
23…ピン
30…分光器
31、35、36、51…ミラー
32、34…スリット
33…回折格子
40…試料室
41…試料
50…検出器室
52…光検出器
60…A/D変換部
70…パーソナルコンピュータ
80…窓板ユニット
81…窓板
82…窓板ホルダ
83…ガイド穴
84…Oリング

Claims (1)

  1. 紫外領域の測定光を発生する光源と、試料と相互作用した後の測定光を検出する光検出器を有し、前記光源から前記光検出器に至る光路全体を密閉する構造体と、前記構造体内部から空気を排除する空気排除手段とを備えた光度計において、
    前記空気排除手段を稼働させずに測定を行う場合に光源を格納する空間とそれ以外の空間の間の気体の流通を遮断すると共に、前記空気排除手段を稼働させた状態で測定を行う場合に前記気体の流通の遮断を解除するための着脱式又は可動式の空間隔離部材を有し、
    前記空間隔離部材が、測定光を透過させることができ、且つオペレータが工具を用いることなく着脱又は移動させることのできるものであることを特徴とする光度計。
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