JP5140149B2 - バンパー構造 - Google Patents

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Description

本発明は、バンパーリインフォースメントとバンパーステイとにより構成されるバンパー構造に関する。
屈曲部分を有するバンパーリインフォースメントと、これを支持するバンパーステイとにより構成されるバンパー構造であって、バンパーリインフォースメントの屈曲部分が直線状に伸ばされた後に、バンパーリインフォースメントの前後方向への圧潰が進行するバンパー構造が知られている(特許文献1参照。)。このバンパー構造によれば、圧潰荷重のピークを低く抑えつつ衝突エネルギーの吸収量を大きくすることができるので、軽衝突時におけるエアーバック等の安全装置の誤作動を防ぎつつ車体に与えるダメージを緩和することが可能となる。
また、末広がり形状(サイドメンバからバンパーリインフォースメントに向かうにしたがって幅寸法が漸増する形状)の中空形材からなるバンパーステイを具備したバンパー構造が知られている(特許文献2,3参照)。末広がり形状のバンパーステイを使用すれば、バンパーリインフォースメントが圧潰する範囲を増大させることができるので、衝突エネルギーの吸収量を増大さることが可能となる。
なお、本明細書では、バンパーリインフォースメントの屈曲部分または湾曲部分が直線状に伸びる過程を「伸長過程」と称し、バンパーリインフォースメントが前後方向へ圧潰する過程を「断面圧潰過程」と称し、バンパーステイが前後方向へ圧潰する過程を「ステイ圧潰過程」と称することとする。
国際公開第2007/110938号パンフレット 特開2003−312399号公報 特開2004−182139号公報
特許文献1のバンパーリインフォースメントは、中空形材にて構成されているが、このような形態のバンパーリインフォースメントの軽量化を図るためには、中空形材の肉厚を減少させるのが効果的である。ところが、バンパーリインフォースメントの肉厚を減少させると、その断面2次モーメントが小さくなるので、バンパーリインフォースメントの屈曲部分を直線状に伸ばす際の変形抵抗が小さくなってしまい、その結果、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの量も小さくなってしまう。つまり、バンパーリインフォースメントの軽量化を図るべく肉厚を減少させると、衝突エネルギーの吸収量を大きくしたいというニーズに応えられなくなってしまう。
左右のバンパーステイの離隔距離(すなわち、バンパーリインフォースメントの支点間距離)を狭めることができれば、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの量を減少させずに、バンパーリインフォースメントの薄肉化(軽量化)を図ることができるが、サイドメンバに固定されるバンパーステイの取付位置を変更するのは、極めて困難であり、現実的ではない。
なお、特許文献2,3のバンパー構造は、末広がり形状を呈するバンパーステイの存在によって、バンパーリインフォースメントの支点間距離が狭まっているように見えるが、特許文献2,3のバンパーステイにおいて末広がり形状を形作っている車幅方向内側の側壁は、衝突の初期において早々に座屈するものであるから、バンパーリインフォースメントの変形抵抗を高める役割を担っていると言うことはできない。つまり、特許文献2,3のバンパー構造においても、バンパーリインフォースメントの軽量化を図るべく肉厚を減少させると、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの量が小さくなってしまう。
このような観点から、本発明は、衝突エネルギーの吸収量を減少させることなく軽量化を図ることが可能なバンパー構造を提供することを課題とする。
このような課題を解決する本発明は、車体に固定される左右一対のバンパーステイと、前記両バンパーステイに支持されるバンパーリインフォースメントとを備えるバンパー構造であって、前記バンパーステイは、前記車体から前記バンパーリインフォースメントに向かうにしたがって幅寸法が漸増する形状を具備しており、前記バンパーリインフォースメントは、前記両バンパーステイの間において屈曲または湾曲しており、前記バンパーリインフォースメントの屈曲部分または湾曲部分が直線状に伸ばされた後に前記バンパーステイが前後方向に圧潰するように、前記バンパーリインフォースメントおよび前記バンパーステイの剛性が設定されていることを特徴とする。
本発明は、末広がり形状を呈するバンパーステイによって、バンパーリインフォースメントを支持するものであるが、伸長過程(バンパーリインフォースメントの屈曲部分または湾曲部分が直線状に伸ばされる過程)中にバンパーステイが圧潰するようなことがないので、バンパーリインフォースメントの支点間距離が、見た目だけでなく実質的にも狭まることになる。つまり、本発明によれば、バンパーステイ間におけるバンパーリインフォースメントの変形抵抗を低下させることなくバンパーリインフォースメントの肉厚を小さくすることが可能となり、したがって、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量を減少させることなく軽量化を図ることが可能となる。
ちなみに、本発明において、バンパーリインフォースメントの肉厚を、幅寸法が一定のバンパーステイで支持する場合と同等にすると、バンパーステイ間におけるバンパーリインフォースメントの変形抵抗が、幅寸法が一定のバンパーステイで支持する場合よりも高まることになるので、伸長過程において吸収される衝突エネルギー量が増大することになる。
本発明においては、バンパーステイが車幅方向に間隔をあけて対向する一対の側壁を具備していて、かつ、前記両側壁の離隔距離が前記車体からバンパーリインフォースメントに向かうにしたがって漸増しており、前記バンパーリインフォースメントの屈曲部分または湾曲部分が直線状に伸ばされた後に車幅方向内側に位置する前記側壁が座屈するように、前記バンパーリインフォースメントおよび前記バンパーステイの剛性を設定している。このようにすると、バンパーステイの車幅方向内側の側壁が伸長過程中に座屈するようなことがないので、バンパーリインフォースメントの支点間距離が、見た目だけでなく実質的にも狭まることになる。つまり、バンパーステイ間におけるバンパーリインフォースメントの変形抵抗を低下させることなくバンパーリインフォースメントの肉厚を小さくすることが可能となり、したがって、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量を減少させることなく軽量化を図ることが可能となる。
また、前記固定部と前記補強壁とのなす角度θ 1 、車幅方向内側の前記側壁と前記補強壁とのなす角度θ 2 および車幅方向内側の前記側壁と前記固定部とのなす角度θ 3 は、θ 1 >θ 2 >θ 3 の関係を満たす場合には、引裂き現象の発生を防ぎつつ、バンパーリインフォースメントを安定的に支持することが可能となる。
車幅方向内側に位置する前記側壁に、前記バンパーステイの内空側に湾曲した部位を形成してもよい。このようにすると、車幅方向内側の側壁の座屈モードを、バンパーステイ3の内空側に入り込むような座屈モードに誘導することが可能となるので、バンパーステイが圧潰する際に吸収される衝突エネルギー量にばらつきが生じ難くなる。
また、本発明においては、前記バンパーステイに、前記バンパーリインフォースメントに当接する固定部と、車幅方向内側に位置する前記側壁から前記固定部に至る補強壁とを具備させ、車幅方向内側の前記側壁と前記固定部と前記補強壁とにより、平面視三角形状を呈する中空空間を形成している。このようにすると、車幅方向内側の側壁が変形し難くなるので、伸長過程中のバンパーリインフォースメントをより安定して支持することが可能になる。
本発明においては、前記バンパーリインフォースメントの屈曲部分または湾曲部分が直線状に伸ばされた後に前記バンパーステイが前記バンパーリインフォースメントに減り込むように、前記バンパーリインフォースメントおよび前記バンパーステイの剛性を設定してもよい。このようにすると、伸長過程中に車体に伝わる衝突荷重のピークと断面圧潰過程(バンパーリインフォースメントが前後方向へ圧潰する過程)中に車体に伝わる衝突荷重(圧潰荷重)のピークとが時間差をもって順次現れるようになるので、車体に伝達する衝突荷重が増大した後に衝突荷重が大きく減少することを防いで荷重値を維持することが可能となる。また、末広がり形状のバンパーステイをバンパーリインフォースメントに減り込ませると、バンパーリインフォースメントの圧潰範囲が増大するので、衝突エネルギーの吸収量が増大することになる。
また、本発明においては、前記バンパーステイが前記バンパーリインフォースメントに減り込んだ後に前記バンパーステイが圧潰するように、前記バンパーリインフォースメントおよび前記バンパーステイの剛性を設定してもよい。このようにすると、伸長過程、断面圧潰過程およびステイ圧潰過程(バンパーステイ自体が圧潰する過程)の各過程において車体に伝わる衝突荷重のピークが時間差をもって順次現れるようになるので、衝突荷重が増大した後に衝突荷重が大きく減少することを防いで荷重値を維持することが可能となる。
なお、前記バンパーリインフォースメントおよび前記バンパーステイの少なくとも一方をアルミニウム合金製の押出形材で形成すると、バンパー構造の軽量化・低コスト化を図ることが可能となり、さらには、製造が容易になるとともに、品質が安定する。
本発明によると、衝突エネルギーの吸収量を減少させることなく軽量化を図ることが可能となる。
本発明の第一の実施形態に係るバンパー構造を示す斜視図である。 (a)は本発明の第一の実施形態に係るバンパー構造を示す拡大平面図、(b)は(a)のX−X線断面図である。 (a)は衝突荷重が作用する前のバンパー構造を示す平面図、(b)は伸長過程を示す平面図、(c)は断面圧潰過程を示す平面図、(d)はステイ圧潰過程を示す平面図である。 (a)および(b)は、バンパーステイの変形例を示す平面図である。 バンパーリインフォースメントの変形例を示す平面図である。 (a)は本発明の第二の実施形態に係るバンパー構造を示す拡大平面図、(b)は車幅方向内側の側壁の構成を説明するための拡大平面図である。 本発明の第二の実施形態に係るバンパー構造を示す拡大斜視図である。 (a)は衝突荷重が作用する前のバンパー構造を示す平面図、(b)は伸長過程を示す平面図、(c)は断面圧潰過程を示す平面図、(d)はステイ圧潰過程を示す平面図である。 (a)は本発明の第三の実施形態に係るバンパー構造を示す平面図、(b)は同じく背面図である。 本発明の第三の実施形態に係るバンパー構造を示す拡大平面図である。
符号の説明
B1 バンパー構造
1 バンパーステイ
12,13 側壁
14 固定部
2 バンパーリインフォースメント
B2 バンパー構造
3 バンパーステイ
32,33 側壁
34B 内側固定部(固定部)
36 補強壁
4 バンパーリインフォースメント
B3 バンパー構造
5 バンパーステイ
52,53 側壁
54B 内側固定部(固定部)
56 補強壁
6 バンパーリインフォースメント
(第一の実施形態)
図1に示すように、第一の実施形態に係るバンパー構造B1は、サイドメンバ(車体)Sに固定される左右一対のバンパーステイ1,1と、両バンパーステイ1,1に支持されるバンパーリインフォースメント2と、を備えている。なお、本実施形態では、バンパー構造B1がフロントバンパーを構成する場合を例示し、「前後」、「右左」、「上下」は車体に取り付けた状態を基準にする。また、「車幅方向」とは「左右方向」と同義である。
バンパーステイ1は、サイドメンバSからバンパーリインフォースメント2に向かうにしたがって幅寸法が漸増する形状(末広がり形状)を具備している。本実施形態のバンパーステイ1は、三つの中空空間a,b,cを有するアルミニウム合金製の中空押出形材からなり、その押出方向が上下方向となるように配置されている。
図2の(a)に示すように、バンパーステイ1は、ベース部11と、一対の側壁12,13と、固定部14と、仕切壁15と、補強壁16と、外側張出部17と、内側張出部18と、を備えて構成されている。
ベース部11は、サイドメンバSの前端面に固定される平板状の部位である。ベース部11の適所には、ボルト挿通孔が形成されている。このボルト挿通孔には、ベース部11をサイドメンバSの前端面に締着するためのボルトが挿通される。
車幅方向外側の側壁12は、ベース部11の車幅方向外側の端縁から固定部14の車幅方向外側の端縁に至る部位である。車幅方向内側の側壁13は、ベース部11の車幅方向内側の端縁から固定部14の車幅方向内側の端縁に至る平板状の部位である。両側壁12,13は、仕切壁15を挟むように配置されており、車幅方向(左右方向)に間隔をあけて対向している。両側壁12,13の離隔距離は、サイドメンバSからバンパーリインフォースメント2に向かうにしたがって漸増している。
なお、以下の説明において、両側壁12,13を区別する場合には、車幅方向外側(バンパーリインフォースメント2の長手方向の端部寄り)の側壁12を「外壁12」と称し、車幅方向内側(バンパーリインフォースメント2の長手方向の中央部寄り)の側壁13を「内壁13」と称することがある。
外壁12は、ベース部11の車幅方向外側の端縁を通り且つベース部11と直交する平面s1よりも車幅方向外側に位置していて、本実施形態では、折れ曲がりのない平板状を呈している。すなわち、ベース部11と外壁12とで形成される内角αは鈍角になっている。なお、外壁12の肉厚、長さ、内角αの大きさなどを調整することで、主として中空空間aの潰れ易さを調整することができる。例えば、外壁12の肉厚を大きくするか、外壁12の長さを小さくすると、外壁12の座屈荷重が大きくなるので、中空空間aが潰れ難くなり、外壁12の肉厚を小さくするか、外壁12の長さを大きくすると、外壁12の座屈荷重が小さくなるので、中空空間aが潰れ易くなる。
内壁13は、ベース部11の車幅方向内側の端縁を通り且つベース部11と直交する平面s2よりも車幅方向内側に位置している。すなわち、ベース部11と内壁13とで形成される内角βは鈍角になっている。本実施形態の内壁13は、前後方向の中央部の一箇所(折れ線q)において屈曲している。内壁13のうち、折れ線qよりもベース部11側に位置する第一平板部13Aと折れ線qよりもバンパーリインフォースメント2側に位置する第二平板部13Bとで形成される内角γは180度よりも大きくなっている。なお、内壁13の肉厚、長さ、内角β,γの大きさなどを調整することで、中空空間b,cの潰れ易さを調整することができる。例えば、内壁13の肉厚を大きくするか、内壁13の長さを小さくすると、内壁13の座屈荷重が大きくなるので、中空空間b,cが潰れ難くなり、内壁13の肉厚を小さくするか、内壁13の長さを大きくすると、内壁13の座屈荷重が小さくなるので、中空空間b,cが潰れ易くなる。
固定部14は、バンパーリインフォースメント2の車体側の側面2aに固定される部位である。固定部14の当接面14aは、バンパーリインフォースメント2の側面2aと同じ曲率の曲面(円弧面)に成形されており、バンパーリインフォースメント2の側面2aに面接触可能である。
仕切壁15は、ベース部11と固定部14とを繋ぐ部位である。仕切壁15は、中空空間a,bの潰れ易さを調整する役割を主に担っていて、例えば、仕切壁15の肉厚を大きくするか、仕切壁15の長さを小さくすると、仕切壁15の座屈荷重が大きくなるので、中空空間a,bが潰れ難くなり、仕切壁15の肉厚を小さくするか、仕切壁15の長さを大きくすると、仕切壁15の座屈荷重が小さくなるので、中空空間a,bが潰れ易くなる。なお、本実施形態の仕切壁15は、ベース部11の中央部に垂設されているが、仕切壁15の位置や傾き等を限定する趣旨ではない。
補強壁16は、内壁13と固定部14とを繋ぐ部位である。補強壁16は、内壁13の座屈強度を高める役割を担うとともに、中空空間b、cの潰れ易さを調整する役割を担っている。例えば、補強壁16の肉厚を大きくするか、補強壁16の長さを小さくすると、補強壁16の座屈荷重が大きくなるので、内壁13が座屈し難くなるとともに、中空空間b,cが潰れ難くなる。また、補強壁16の肉厚を小さくするか、補強壁16の長さを大きくすると、補強壁16の座屈荷重が小さくなるので、内壁13が座屈し易くなるとともに、中空空間b,cが潰れ易くなる。なお、本実施形態の補強壁16は、平面s2と固定部14との交線pと、内壁13の折れ線qとを結ぶように設けられていて、内壁13の第二平板部13Bと固定部14とともにトラス構造を形成しているが、補強壁16の位置等を限定する趣旨ではない。
外側張出部17は、外壁12と固定部14との接続部から車幅方向外側(図2の(a)において左側)に向って張り出す部位である。外側張出部17の当接面17aは、バンパーリインフォースメント2の側面2aと同じ曲率の曲面(円弧面)に成形されており、バンパーリインフォースメント2の側面2aに面接触可能である。
内側張出部18は、内壁13と固定部14との接続部から車幅方向内側(図2の(a)において右側)に向って張り出す部位である。内側張出部18の当接面18aは、バンパーリインフォースメント2の側面2aと同じ曲率の曲面(円弧面)に成形されており、バンパーリインフォースメント2の側面2aに面接触可能である。
なお、本実施形態のバンパーステイ1においては、内壁13および補強壁16に座屈や塑性曲げ変形が発生した後に外壁12および仕切壁15に座屈や塑性曲げ変形が発生するように各部の剛性(肉厚や断面寸法など)が設定されている。
バンパーリインフォースメント2は、バンパーステイ1,1に架設されるものであり、溶接等の手段によりバンパーステイ1の当接面14a,17a,18aに固着されている。図示のバンパーリインフォースメント2は、その全体が円弧状に湾曲しており(図3の(a)参照)、両端部が車体側(後方)に傾斜している。ちなみに、このようなバンパーリインフォースメント2は、アルミニウム合金製の中空押出形材に曲げ加工を施すことにより得ることができる。
バンパーリインフォースメント2は、図2の(b)に示すように、その外殻となる角筒状の本体部21と、この本体部21の内部に配置された中壁22とを備えている。中壁22は、バンパーリインフォースメント2の断面剛性を向上させる目的で配置されたものであり、本実施形態では、本体部21の内部空間を上下二つに分割するように配置されている。
なお、バンパーリインフォースメント2は、バンパーステイ1,1間において湾曲部分が直線状に伸ばされる過程(伸長過程)で衝突エネルギーを吸収するとともに、バンパーステイ1に隣接した領域において上壁21a、下壁21bおよび中壁22に座屈や塑性曲げ変形が発生する過程(断面圧潰過程)で衝突エネルギーを吸収する。本実施形態では、伸長過程が進行した後に断面圧潰過程が進行するように、バンパーリインフォースメント2全体の曲げ剛性が設定されている。
ちなみに、伸長過程の開始・終了のタイミングに影響を及ぼすのは、主としてバンパーリインフォースメント2全体の曲げ剛性である。当該曲げ剛性は、断面2次モーメントを増減させることで調整される。バンパーリインフォースメント2の断面2次モーメントの大小に影響を及ぼすのは、主に、前壁21cおよび後壁21dの肉厚の大きさと、前壁21cと後壁21dとの離間距離の大きさであるから、これらを増減させることで、伸長過程の開始・終了のタイミングを調整することができる。一方、断面圧潰過程の開始・終了のタイミングに影響を及ぼすのは、主に、上壁21a、下壁21bおよび中壁22の肉厚と、前壁21cと後壁21dとの離間距離の大きさであるから、これらを増減させることで、断面圧潰過程の開始・終了の時期を調整することができる。
また、本実施形態では、バンパーリインフォースメント2の伸長過程および断面圧潰過程が進行した後に、ステイ圧潰過程が進行するようにバンパーステイ1およびバンパーリインフォースメント2の剛性(各部の肉厚や断面寸法など)が設定されている。
次に、図3を参照して、バンパー構造B1が衝突エネルギーを吸収する過程を説明する。
車体前後方向の衝突荷重がバンパー構造B1に作用すると、図3の(b)に示すように、まず、バンパーステイ1,1間においてバンパーリインフォースメント2の湾曲部分が直線状に伸ばされることで、衝突エネルギーが吸収される(伸長過程)。
伸長過程だけで衝突エネルギーを吸収できない場合には、図3の(c)に示すように、バンパーステイ1がバンパーリインフォースメント2に減り込むことで、衝突エネルギーが吸収される(断面圧潰過程)。バンパーリインフォースメント2の湾曲部分を直線状に伸ばした後に、バンパーステイ1をバンパーリインフォースメント2に減り込ませれば、伸長過程中にサイドメンバSに伝わる衝突荷重のピークと断面圧潰過程(バンパーリインフォースメントが前後方向へ圧潰する過程)中にサイドメンバSに伝わる衝突荷重のピークとが時間差をもって現れるようになる。なお、断面圧潰過程では、バンパーステイ1に隣接した領域において、図2の(b)に示すバンパーリインフォースメント2の本体部21のうち、主として上壁21a、下壁21bおよび中壁22に座屈や塑性曲げ変形が発生し、本体部21の内部空間が潰れる。
断面圧潰過程が進行してもなお衝突エネルギーを吸収しきれない場合には、バンパーステイ1自体が前後方向に圧潰することで衝突エネルギーが吸収される(ステイ圧潰過程)。バンパーステイ1をバンパーリインフォースメント2に減り込ませた後に、バンパーステイ1を圧潰させると、断面圧潰過程中にサイドメンバSに伝わる衝突荷重のピークとステイ圧潰過程中にサイドメンバSに伝わる衝突荷重のピークとが時間差をもって現れるようになる。なお、ステイ圧潰過程では、バンパーステイ1の主として外壁12、内壁13、仕切壁15および補強壁16に座屈や塑性曲げ変形等が発生し、中空空間a,b,c(図2の(a)参照)が潰れる。ちなみに、本実施形態のステイ圧潰過程においては、まず、バンパーステイ1の内壁13および補強壁16に座屈や塑性曲げ変形が発生して中空空間b,cが潰れ、次いで、仕切壁15に座屈や塑性曲げ変形が発生して中空空間bがより一層潰れるとともに、外壁12に座屈や塑性曲げ変形が発生して中空空間aが潰れる。
以上説明したバンパー構造B1によれば、バンパーステイ1,1間においてバンパーリインフォースメント2の湾曲部分が直線状に伸ばされる過程(伸長過程)中に、バンパーステイ1,1が前後方向に圧潰するようなことがない(すなわち、伸長過程中に内壁13が座屈するようなことがない)ので、バンパーリインフォースメント2の支点間距離が、見た目だけでなく実質的にも狭まることになる。
なお、何らの対策を施すことなく、バンパーリインフォースメント2の前壁21cおよび後壁21dの肉厚を小さくすると、バンパーリインフォースメント2の軽量化が図られる一方で、バンパーリインフォースメント2の曲げ剛性が小さくなってしまい、バンパーリインフォースメント2の変形抵抗が低下するとともに、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量が減少してしまう。これに対し、本実施形態のバンパー構造B1によれば、末広がり形状のバンパーステイ1によってバンパーリインフォースメント2の支点間距離を狭めているので、バンパーリインフォースメント2の前壁21cおよび後壁21dの肉厚を小さくして軽量化を図ったとしても、バンパーリインフォースメント2の変形抵抗が大きく低下するようなことはなく、したがって、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量が大きく減少するようなこともない。つまり、バンパー構造B1によれば、バンパーステイ1,1間におけるバンパーリインフォースメント2の変形抵抗を低下させることなくバンパーリインフォースメント2の肉厚(特に、前壁21c、後壁21dの肉厚)を小さくすることが可能となり、したがって、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量を減少させることなく軽量化を図ることが可能となる。
ちなみに、バンパー構造B1において、バンパーリインフォースメント2の肉厚を、幅寸法が一定のバンパーステイで支持する場合と同等にすると、バンパーステイ1,1間におけるバンパーリインフォースメント2の変形抵抗が、幅寸法が一定のバンパーステイで支持する場合よりも高まることになるので、伸長過程において吸収される衝突エネルギー量が増大することになる。
また、バンパー構造B1によれば、伸長過程、断面圧潰過程およびステイ圧潰過程の各過程中にサイドメンバSに伝わる衝突荷重のピークが時間差をもって順次現れることになるので、衝突荷重が増大した後に衝突荷重が大きく減少することを防いで荷重値を維持することが可能となる。
さらに、バンパー構造B1によれば、末広がり形状のバンパーステイ1を使用しているので、末広がり形状ではないバンパーステイを使用した場合に比べて、バンパーリインフォースメント2の圧潰範囲を増大させることが可能となり、ひいては、衝突エネルギーの吸収量を増大さることが可能となる。
加えて、バンパー構造B1によれば、バンパーステイ1およびバンパーリインフォースメント2の両方をアルミニウム合金製の押出形材で形成しているので、バンパー構造B1の軽量化・低コスト化を図ることが可能となり、さらには、製造が容易になるとともに、品質が安定する。
なお、バンパーステイ1およびバンパーリインフォースメント2の構成は、適宜変更しても差し支えない。
例えば、前記した実施形態においては、バンパーステイ1の仕切壁15を一つとした場合を例示したが、図4の(a)に示すように、二つ以上の仕切壁15を配置してもよい。
また、前記した実施形態においては、補強壁16を配置することで、伸長過程中に内壁13が座屈するのを防止したが、図4の(b)に示すように、内壁13の肉厚を他の部分の肉厚よりも増大させることで、伸長過程中の座屈を防止してもよい。この場合、補強壁16は省略することができる。
また、前記した実施形態においては、全体が円弧状に湾曲したバンパーリインフォースメント2を例示したが、図5に示すように、バンパーステイ1,1の間に二箇所の屈曲部分2a,2aを備えるバンパーリインフォースメント2であっても差し支えない。この場合には、バンパーリインフォースメント2の屈曲部分2a,2aが直線状に伸ばされることで、衝突初期における衝突エネルギーが吸収されることになる。
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、外側張出部17と内側張出部18とを具備したバンパーステイ1を例示したが、外側張出部17と内側張出部18とを省略してもよい。
図6の(a)に示すように、第二の実施形態に係るバンパー構造B2は、張出部を具備しないバンパーステイ3と、バンパーリインフォースメント4とを備えている。なお、バンパー構造B2は、フロントバンパーを構成している。
バンパーステイ3は、サイドメンバSからバンパーリインフォースメント4に向かうにしたがって幅寸法が漸増する形状(末広がり形状)を具備している。本実施形態のバンパーステイ3は、閉断面形状の中空空間a,b,cを有するアルミニウム合金製の中空押出形材(ホロー形材)からなり、その押出方向が上下方向となるように配置されている。三つの中空空間a,b,cのうち、車幅方向外側の中空空間aおよび車幅方向内側の中空空間cは、平面視三角形状を呈しており、中空空間a,cの間に位置する中空空間bは、平面視五角形状を呈している。
バンパーステイ3の構成をより詳細に説明する。
バンパーステイ3は、ベース部31と、一対の側壁32,33と、外側固定部34Aと、内側固定部34Bと、連結部34Cと、仕切壁35と、補強壁36とを備えて構成されている。
ベース部31は、サイドメンバSの前端面に固定される平板状の部位であり、中央の中空空間bの外殻の一部を構成している。ベース部31の適所には、ボルト挿通孔が形成されている。このボルト挿通孔には、ベース部31をサイドメンバSの前端面に締着するためのボルトが挿通される。
車幅方向外側の側壁32は、ベース部31の車幅方向外側の端縁から外側固定部34Aの車幅方向外側の端縁に至る部位であり、外側固定部34Aを車体側から支持している。車幅方向内側の側壁33は、ベース部31の車幅方向内側の端縁から内側固定部34Bの車幅方向内側の端縁に至る部位であり、内側固定部34Bを車体側から支持している。両側壁32,33は、仕切壁35を挟むように配置されており、車幅方向に間隔をあけて対向している。両側壁32,33の離隔距離は、サイドメンバSからバンパーリインフォースメント4に向かうにしたがって漸増している。
なお、両側壁32,33を区別する場合には、車幅方向外側の側壁32を「外壁32」と称し、車幅方向内側の側壁33を「内壁33」と称する。
外壁32は、中空空間aの外殻の一部を構成する部位であって、ベース部31に斜交している。ベース部31と外壁32とで形成される内角は、鈍角になっている。また、外壁32は、その全体が平面視円弧状を呈していて、バンパーステイ3の内空側(中空空間a側)に湾曲している。すなわち、外壁32は、ベース部31の車幅方向外側の端縁と外側固定部34Aの車幅方向外側の端縁とを通る平面s3よりも中空空間a側に位置している。なお、本実施形態では、平面視円弧状を呈する外壁32を例示したが、外壁32の構成を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、複数の円弧状部を連ねた形態の外壁に変更してもよいし、平板状を呈する外壁に変更してもよい。
内壁33は、ベース部31に斜交している。ベース部31と内壁33とで形成される内角は、鈍角になっている。内壁33は、バンパーステイ3の内空側(中空空間b,c側)に湾曲している。すなわち、内壁33の全体が、ベース部31の車幅方向内側の端縁と内側固定部34Bの車幅方向内側の端縁とを通る平面s4よりも中空空間b,c側に位置している。
図6の(b)に示すように、内壁33は、複数の円弧状部33A,33B,33Cを有する。以下の説明においては、ベース部31に繋がる円弧状部33Aを「第一円弧状部33A」と称し、内側固定部34Bに繋がる円弧状部33Cを「第三円弧状部33C」と称し、第一円弧状部33Aと第三円弧状部33Cとを繋ぐ円弧状部33Bを「第二円弧状部33B」と称する。なお、図6の(b)の図面に付したハッチングは、第一円弧状部33Aと第三円弧状部33Cの範囲を明瞭にするために付したものである。
第一円弧状部33Aは、ベース部31の車幅方向内側の端縁から補強壁36との接続部に至る部位であり、中空空間bの外殻の一部を構成している。第一円弧状部33Aは、平面視円弧状を呈していて、中空空間b側に湾曲している。
第二円弧状部33Bは、第一円弧状部33Aの前端部から第三円弧状部33Cの後端部に至る部位であり、中空空間cの外殻の一部を構成している。第二円弧状部33Bは、平面視円弧状を呈していて、中空空間c側に湾曲している。なお、第二円弧状部33Bと第三円弧状部33Cとは滑らかに連続しているが、第一円弧状部33Aと第二円弧状部33Bとは屈折した状態(接線が共通しない状態)で連続している。
第三円弧状部33Cは、第二円弧状部33Bの前端部から内側固定部34Bの車幅方向内側の端縁に至る部位であり、中空空間cの外殻の一部を構成している。第三円弧状部33Cは、平面視円弧状を呈していて、中空空間c側に湾曲している。
なお、第一円弧状部33Aの半径Ra、第二円弧状部33Bの半径Rb、第三円弧状部33Cの半径Rcは、Rb>Ra>Rcという大小関係になっているが、適宜変更しても差し支えない。また、本実施形態では、三つの円弧状部33A,33B,33Cを連ねた形態の内壁33を例示したが、内壁33の構成を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、一の円弧状部を有する内壁に変更してもよいし、平板状を呈する内壁に変更してもよい。
図6の(a)に示すように、外側固定部34Aおよび内側固定部34Bは、バンパーリインフォースメント4の車体側の側面4aに固定される部位である。外側固定部34Aおよび内側固定部34Bは、車幅方向に間隔をあけて並設されている。外側固定部34Aの当接面34aおよび内側固定部34Bの当接面34bは、バンパーリインフォースメント4の側面4aと同じ曲率の曲面(円弧面)に成形されており、バンパーリインフォースメント4の側面4aに面接触可能である。
連結部34Cは、外側固定部34Aと内側固定部34Bとを繋ぐ部位である。連結部34Cは、バンパーリインフォースメント4の側面4aと隙間をあけて対向している。すなわち、連結部34Cの前面は、両固定部34A,34Bの当接面34a,34bよりも一段下がったところに位置しており、バンパーリインフォースメント4の側面4aに接触しない。
仕切壁35は、ベース部31と外側固定部34Aとを繋ぐ部位である。仕切壁35は、ベース部31の車幅方向外側の端部から外側固定部34Aの車幅方向内側の端部に向って立ち上がり、外側固定部34Aの車幅方向内側の端部に達している。また、仕切壁35は、平板状を呈していて、ベース部31と直交している。
補強壁36は、内壁33と内側固定部34Bとを繋ぐ部位である。補強壁36は、平板状を呈していて、図6の(b)に示すように、第一円弧状部33Aと第二円弧状部33Bとの境界部分から内側固定部34Bに向って立ち上がり、内側固定部34Bの車幅方向外側の端部に達している。
図6の(a)に示す中空空間aの潰れ易さは、中空空間aを取り囲む外壁32、外側固定部34Aおよび仕切壁35の肉厚、長さなどのほか、外壁32の曲率(半径)の大小にも依存している。例えば、外壁32の曲率を小さく(半径を大きく)すると、外壁32の座屈荷重が大きくなるので、中空空間aが潰れ難くなり、外壁32の曲率を大きく(半径を小さく)すると、外壁32の座屈荷重が小さくなるので、中空空間aが潰れ易くなる。
中空空間bの潰れ易さは、中空空間bを取り囲むベース部31、第一円弧状部33A(図6の(b)参照)、連結部34C、仕切壁35および補強壁36の肉厚や長さなどのほか、第一円弧状部33Aの半径の大小にも依存している。例えば、第一円弧状部33Aの半径を大きくすると、第一円弧状部33Aの座屈荷重が大きくなるので、中空空間bが潰れ難くなり、第一円弧状部33Aの半径を小さくすると、第一円弧状部33Aの座屈荷重が小さくなるので、中空空間bが潰れ易くなる。
図6の(b)に示す中空空間cの潰れ易さは、中空空間cを取り囲む第二円弧状部33B、第三円弧状部33C、内側固定部34Bおよび補強壁36の肉厚や長さなどのほか、第二円弧状部33Bおよび第三円弧状部33Cの半径の大小にも依存している。例えば、第二円弧状部33Bまたは第三円弧状部33Cの半径を大きくすると、中空空間cが潰れ難くなり、第二円弧状部33Bまたは第三円弧状部33Cの半径を小さくすると、中空空間cが潰れ易くなる。
バンパーステイ3は、図7に示すように、外側固定部34Aの上縁、下縁および車幅方向外側の側縁に沿って溶接w1を施すとともに、内側固定部34Bの上縁、下縁および車幅方向内側の側縁に沿って溶接w2を施すことで、バンパーリインフォースメント4に固定する。すなわち、バンパーステイ3は、中空空間aの外殻と中空空間cの外殻とにおいてバンパーリインフォースメント4に固着される。
バンパーリインフォースメント4の構成は、第一の実施形態のバンパーリインフォースメント2と同様であるので、詳細な説明は省略するが、本実施形態においても、伸長過程が進行した後に断面圧潰過程が進行するように、バンパーリインフォースメント4全体の曲げ剛性が設定されている。また、本実施形態においても、バンパーリインフォースメント4の伸長過程および断面圧潰過程が進行した後に、ステイ圧潰過程が進行するようにバンパーステイ3およびバンパーリインフォースメント4の剛性(各部の肉厚や断面寸法など)が設定されている。
次に、図8を参照して、正面衝突時における衝突エネルギーの吸収過程を説明する。
図8の(a)に示すバンパー構造B2に対して、正面側(車体前方)から車体前後方向の衝突荷重が作用すると、図8の(b)に示すように、まず、バンパーステイ3,3間においてバンパーリインフォースメント4の湾曲部分が直線状に伸ばされることで、衝突エネルギーが吸収される(伸長過程)。
バンパーリインフォースメント4の湾曲部分が直線状に伸ばされる際には、中空空間cの外殻(図6の(b)に示す内側固定部34B、第二円弧状部33B、第三円弧状部33Cおよび補強壁36)を車体側に押圧するような力Fがバンパーステイ3に作用するが、中空空間cの外殻が力学的に安定した平面視三角形状を呈しているので、バンパーステイ3は、伸長過程中のバンパーリインフォースメント4を安定して支持する。なお、伸長過程中に、内壁33や内側固定部34Bには曲げ変形が発生するので、中空空間cの外殻の初期形状が堅固に維持される訳ではないが、伸長過程中における中空空間cの外殻は、概ね平面視三角形の状態に維持される。すなわち、中空空間cの外殻は、伸長過程中のバンパーリインフォースメント4を安定して支持しつつも、バンパーリインフォースメント4の曲げ伸ばしを阻害することがないように適度に変形する。
伸長過程が終盤に差し掛かるか、もしくは伸長過程が終了すると、図8の(c)に示すように、断面圧潰過程が進行し始める。断面圧潰過程では、バンパーステイ3がバンパーリインフォースメント4に減り込み、バンパーステイ3に隣接した領域においてバンパーリインフォースメント4の断面変形が進行する(すなわち、バンパーリインフォースメント4の内部空間が潰れる)ことで、衝突エネルギーが吸収される。バンパーリインフォースメント4の湾曲部分を直線状に伸ばした後に、バンパーステイ3をバンパーリインフォースメント4に減り込ませれば、伸長過程中にサイドメンバSに伝わる衝突荷重のピークと断面圧潰過程(バンパーリインフォースメント4が前後方向へ圧潰する過程)中にサイドメンバSに伝わる衝突荷重のピークとが時間差をもって現れるようになる。
なお、バンパーステイ3がバンパーリインフォースメント4に減り込む際に、バンパーステイ3のエッジ部分でバンパーリインフォースメント4が引き裂かれてしまうと、断面圧潰過程におけるエネルギー吸収量が小さくなってしまうが、バンパー構造B2によれば、中空空間cの外殻が適度に変形するので、バンパーリインフォースメント4が引き裂かれ難くなる。すなわち、中空空間cの外殻は、概ね平面視三角形の状態を維持しつつバンパーリインフォースメント4に減り込むが、内壁33や内側固定部34Bには適度な曲げ変形が発生するので、内側固定部34Bの車幅方向内側の端縁での「引裂き」が発生し難くなり、バンパーリインフォースメント4が広範囲に亘って潰れるようになる。
なお、内壁33と補強壁36とのなす角度θ2(図6の(b)参照)を小さくすると、バンパーリインフォースメント4を安定的に支持できるようになる一方で、中空空間cの外殻が堅固になり過ぎる虞があるので、θ2の大きさは、内側固定部34Bの車幅方向内側の端縁での「引裂き」が懸念されない程度に設定することが望ましい。図6の(b)に示すように、本実施形態では、内側固定部34Bと補強壁36とのなす角度θ1、内壁33と補強壁36とのなす角度θ2、内壁33と内側固定部34Bとのなす角度θ3が、θ1>θ2>θ3という関係になっているが、このような大小関係にしておけば、引裂き現象の発生を防ぎつつ、バンパーリインフォースメント4を安定的に支持することが可能になる。
断面圧潰過程が終盤に差し掛かるか、もしくは断面圧潰過程が終了すると、図8の(d)に示すように、ステイ圧潰過程が進行し始める。ステイ圧潰過程では、バンパーステイ3自体が前後方向に圧潰することで衝突エネルギーが吸収される。バンパーステイ3をバンパーリインフォースメント4に減り込ませた後に、バンパーステイ3を圧潰させると、断面圧潰過程中にサイドメンバSに伝わる衝突荷重のピークとステイ圧潰過程中にサイドメンバSに伝わる衝突荷重のピークとが時間差をもって現れるようになる。なお、ステイ圧潰過程では、バンパーステイ3のうち、図6の(a)に示す外壁32、内壁33、仕切壁35、補強壁36などに座屈や塑性曲げ変形等が発生することで、中空空間a,b,cが潰れる。
ちなみに、バンパーステイ3の外壁32および内壁33は、バンパーステイ3の内空側に湾曲しているので、外壁32および内壁33の座屈モードは、多くの場合、バンパーステイ3の内空側に入り込むような座屈モードとなる。つまり、バンパーステイ3によれば、その圧潰過程や圧潰後の形態にばらつきが生じ難くなるので、ステイ圧潰過程において吸収される衝突エネルギー量にばらつきが生じ難くなる。
以上説明したバンパー構造B2によれば、少なくとも正面衝突の場合においては、伸長過程中にバンパーステイ3,3が前後方向に圧潰するようなことがない。つまり、バンパー構造B2では、バンパーリインフォースメント4の支点間距離が、見た目だけでなく実質的にも狭まることになる。
また、バンパー構造B2によれば、バンパーステイ3,3間におけるバンパーリインフォースメント4の変形抵抗を低下させることなくバンパーリインフォースメント4の肉厚を小さくすることが可能となり、したがって、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量を減少させることなく軽量化を図ることが可能となる。
また、バンパー構造B2によれば、少なくとも正面衝突の場合においては、伸長過程、断面圧潰過程およびステイ圧潰過程が順次進行するようになるので、衝突荷重のピークも時間差をもって順次現れるようになる。したがって、バンパー構造B2によれば、衝突荷重が増大した後に衝突荷重が大きく減少することを防いで荷重値を維持することが可能となる。
さらに、バンパー構造B2によれば、末広がり形状のバンパーステイ3を使用しているので、末広がり形状ではないバンパーステイを使用した場合に比べて、バンパーリインフォースメント4の圧潰範囲を増大させることが可能となり、ひいては、衝突エネルギーの吸収量を増大さることが可能となる。
加えて、バンパー構造B2によれば、バンパーステイ3およびバンパーリインフォースメント4の両方をアルミニウム合金製の押出形材で形成しているので、バンパー構造B2の軽量化・低コスト化を図ることが可能となり、さらには、製造が容易になるとともに、品質が安定する。
(第三の実施形態)
図9の(a)に示すように、第三の実施形態に係るバンパー構造B3は、張出部を具備しないバンパーステイ5,5と、バンパーリインフォースメント6とを備えている。バンパー構造B3は、リアバンパーを構成している。
バンパーステイ5は、サイドメンバSからバンパーリインフォースメント6に向かうにしたがって幅寸法が漸増する形状(末広がり形状)を具備している。バンパーステイ5は、閉断面空間である中空空間cと、開断面空間である溝状空間d,e,fとを有するアルミニウム合金製の押出形材からなり、その押出方向が上下方向となるように配置されている。中空空間cは、平面視三角形状を呈している。なお、バンパーステイ5の上面は、図9の(b)に示すように、斜めに切断されていて、バンパーステイ5の高さ寸法は、サイドメンバSからバンパーリインフォースメント6に向うに従って漸減している。
バンパーステイ5の構成をより詳細に説明する。
図10に示すように、バンパーステイ5は、ベース部51と、一対の側壁52,53と、外側固定部54Aと、内側固定部54Bと、中間固定部54C,54Dと、仕切壁55C,55Dと、補強壁56と、を備えて構成されている。
ベース部51は、サイドメンバSの後端面に固定される平板状の部位である。ベース部51の適所には、ボルト挿通孔が形成されている。
車幅方向外側の側壁52は、ベース部51の車幅方向外側の端縁から外側固定部54Aの車幅方向外側の端縁に至る部位であり、外側固定部54Aを車体側から支持している。車幅方向内側の側壁53は、ベース部51の車幅方向内側の端縁から内側固定部54Bの車幅方向内側の端縁に至る部位であり、内側固定部54Bを車体側から支持している。両側壁52,53は、仕切壁55C,55Dを挟むように配置されており、車幅方向に間隔をあけて対向している。両側壁52,53の離隔距離は、サイドメンバSからバンパーリインフォースメント6に向かうにしたがって漸増している。
なお、両側壁52,53を区別する場合には、車幅方向外側の側壁52を「外壁52」と称し、車幅方向内側の側壁53を「内壁53」と称する。
外壁52は、ベース部51に斜交している。ベース部51と外壁52とで形成される内角は、鈍角になっている。
内壁53は、ベース部51に斜交している。ベース部51と内壁53とで形成される内角は鈍角になっている。内壁53は、その全体が平面視円弧状を呈していて、バンパーステイ5の内空側(中空空間c側)に湾曲している。
外側固定部54A、内側固定部54Bおよび中間固定部54C,54Dは、バンパーリインフォースメント6の車体側の側面6aに固定される部位であり、車幅方向に間隔をあけて並設されている。外側固定部54A、内側固定部54Bおよび中間固定部54C,54Dは、いずれもバンパーリインフォースメント6の側面6aに面接触可能である。
仕切壁55C,55Dは、ベース部51の車幅方向中央部から中間固定部54C,54Dに向って垂直に立ち上がり、中間固定部54C,54Dを支持している。
補強壁56は、内壁53と内側固定部54Bとを繋ぐ部位である。本実施形態の補強壁56は、平板状を呈していて、ベース部51と内壁53との境界部分から内側固定部54Bに向って立ち上がり、内側固定部54Bの車幅方向外側の端部に達している。
本実施形態においても、バンパーリインフォースメント6の伸長過程および断面圧潰過程が進行した後に、ステイ圧潰過程が進行するようにバンパーステイ5およびバンパーリインフォースメント6の剛性(各部の肉厚や断面寸法など)が設定されている。
バンパー構造B3に対して、正面(車両後方)から車体前後方向の衝突荷重が作用すると、図示は省略するが、まず、バンパーステイ5,5間においてバンパーリインフォースメント6の湾曲部分が直線状に伸ばされることで、衝突エネルギーが吸収される(伸長過程)。
なお、伸長過程中に、中空空間cの外殻の平面形状が堅固に維持される訳ではないが、伸長過程中における中空空間cの外殻は、概ね平面視三角形の状態に維持される。すなわち、中空空間cの外殻は、伸長過程中のバンパーリインフォースメント6を安定して支持しつつも、バンパーリインフォースメント6の曲げ伸ばしを阻害することがないように適度に変形する。
そして、伸長過程だけで衝突エネルギーを吸収できない場合には、バンパーステイ5がバンパーリインフォースメント6に減り込み、バンパーリインフォースメント6の断面変形が進行する(すなわち、バンパーリインフォースメント6の内部空間が潰れる)ことで、衝突エネルギーが吸収され(断面圧潰過程)、断面圧潰過程が進行してもなお衝突エネルギーを吸収しきれない場合には、バンパーステイ5自体が前後方向に圧潰することで衝突エネルギーが吸収される(ステイ圧潰過程)。
以上説明したバンパー構造B3によれば、少なくとも後方正面からの衝突(以下、単に「正面衝突」という。)の場合においては、伸長過程中にバンパーステイ5,5が前後方向に圧潰するようなことがない。つまり、バンパー構造B3では、バンパーリインフォースメント6の支点間距離が、見た目だけでなく実質的にも狭まることになる。
また、バンパー構造B3によれば、バンパーステイ5,5間におけるバンパーリインフォースメント6の変形抵抗を低下させることなくバンパーリインフォースメント6の肉厚を小さくすることが可能となり、したがって、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量を減少させることなく軽量化を図ることが可能となる。
また、バンパー構造B3によれば、少なくとも正面衝突の場合において、伸長過程、断面圧潰過程およびステイ圧潰過程が順次進行するようになるので、衝突荷重のピークも時間差をもって順次現れるようになる。したがって、バンパー構造B3によれば、衝突荷重が増大した後に衝突荷重が大きく減少することを防いで荷重値を維持することが可能となる。
さらに、バンパー構造B3によれば、末広がり形状のバンパーステイ5を使用しているので、末広がり形状ではないバンパーステイを使用した場合に比べて、バンパーリインフォースメント6の圧潰範囲を増大させることが可能となり、ひいては、衝突エネルギーの吸収量を増大さることが可能となる。
加えて、バンパー構造B3によれば、バンパーステイ5およびバンパーリインフォースメント6の両方をアルミニウム合金製の押出形材で形成しているので、バンパー構造B3の軽量化・低コスト化を図ることが可能となり、さらには、製造が容易になるとともに、品質が安定する。

Claims (6)

  1. 車体に固定される左右一対のバンパーステイと、
    前記両バンパーステイに支持されるバンパーリインフォースメントとを備えるバンパー構造であって、
    前記バンパーステイは、車幅方向に間隔をあけて対向する一対の側壁を具備しており、
    前記両側壁の離隔距離は、前記車体から前記バンパーリインフォースメントに向かうにしたがって漸増しており、
    前記バンパーリインフォースメントは、前記両バンパーステイの間において屈曲または湾曲しており、
    前記バンパーリインフォースメントの屈曲部分または湾曲部分が直線状に伸ばされた後に車幅方向内側に位置する前記側壁が座屈するように、前記バンパーリインフォースメントおよび前記バンパーステイの剛性が設定されており、
    前記バンパーステイは、前記バンパーリインフォースメントに当接する固定部と、車幅方向内側に位置する前記側壁から前記固定部に至る補強壁とを具備しており、
    車幅方向内側の前記側壁と前記固定部と前記補強壁とにより、平面視三角形状を呈する中空空間が形成されていることを特徴とするバンパー構造。
  2. 前記固定部と前記補強壁とのなす角度θ 1 、車幅方向内側の前記側壁と前記補強壁とのなす角度θ 2 および車幅方向内側の前記側壁と前記固定部とのなす角度θ 3 は、θ 1 >θ 2 >θ 3 の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のバンパー構造。
  3. 車幅方向内側に位置する前記側壁が、前記バンパーステイの内空側に湾曲した部位を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバンパー構造。
  4. 前記バンパーリインフォースメントの屈曲部分または湾曲部分が直線状に伸ばされた後に前記バンパーステイが前記バンパーリインフォースメントに減り込むように、前記バンパーリインフォースメントおよび前記バンパーステイの剛性が設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のバンパー構造。
  5. 前記バンパーステイが前記バンパーリインフォースメントに減り込んだ後に前記バンパーステイが圧潰するように、前記バンパーリインフォースメントおよび前記バンパーステイの剛性が設定されていることを特徴とする請求項4に記載のバンパー構造。
  6. 前記バンパーリインフォースメントおよび前記バンパーステイの少なくとも一方が、アルミニウム合金製の押出形材からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のバンパー構造。
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