JP5129488B2 - ポリエステル系粘着剤組成物 - Google Patents
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Description
これまでの粘着剤には、アクリル系の材料が使用されてきたが、現在のところ、粘着剤に使用可能な植物由来のアクリル系の材料は見つかっていない。
これに対して、ポリエステル系の粘着剤は、ジカルボン酸とジオールとの縮合重合物からなるポリエステルを主剤成分としたものであり、主材料であるジカルボン酸とジオールには植物由来のものがあり、これらの再生可能な循環型材料を使用することにより、地球環境への負荷を低減することも可能である。
しかし、ジカルボン酸とジオールとの配合比が等モルから僅かでもずれると、ポリエステルの分子量が著しく低下し、また架橋時のゲル分率が変化し、粘着剤の特性がばらつく問題があった。これは、前記提案のポリエステル系の粘着剤でも同じであり、これらの提案では上記製造時の安定性について考慮されていなかった。
本発明は、このような事情に照らし、ジカルボン酸とジオールとの配合比に大きく影響されることなく安定した粘着力や保持性などの特性を発揮する、製造安定性に優れたポリエステル系粘着剤組成物を提供することを課題としている。
一般に、ポリエステルの分子末端には水酸基やカルボキシル基が存在しており、多官能のポリイソシアネート化合物により架橋可能である。その際、ポリイソシアネート化合物は主に水酸基と反応するため、架橋の度合いを示すゲル分率はポリエステルの酸価により影響を受け、酸価の低い方がゲル分率は高くなる。
一方、縮合重合では分子量がジカルボン酸とジオールとの配合比の影響を受け、等モル反応で最大分子量になり、それからジカルボン酸とジオールとのどちらかの配合比が増えるにつれて分子量は低下する。酸価が1.6KOHmg/g以下のポリエステルを得るには、上述のとおりジオールの配合比が多くなるため、分子量が著しく低下し、その結果、保持性が低下することになる。
しかし、この低分子量のポリエステルにさらに鎖延長剤としてジイソシアネート化合物を反応させて、重量平均分子量Mwが12万〜25万の鎖延長ポリエステルとすることにより、保持性の低下を防ぐことが可能となることがわかった。
また、カルボン酸とジオールを植物由来の材料にすることにより、再生可能な循環型ポリマーとして地球環境への負荷も低減できることも見出した。
また、本発明は、鎖延長剤としてのジイソシアネート化合物が、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの中から選ばれ、架橋剤としての3官能のポリイソシアネート化合物が、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート付加物の中から選ばれる上記構成のポリエステル系粘着剤に係るものである。
また、ジカルボン酸とジオールとして共に植物由来のものを選択使用することにより、地球環境に優しいポリエステル系粘着剤組成物を提供できる。
縮合重合後の酸価が1.6KOHmg/gを超えると、ジカルボン酸とジオールとの配合比によるゲル分率への影響が大きくなる。また、縮合重合後の酸価が0.7KOHmg/g未満となると、縮合重合後の分子量が小さくなりすぎるため、これを鎖延長させても十分な分子量が得られず、保持性が低下する。
上記のガラス転移温度が−60℃未満では、23℃付近での弾性率が低くなる傾向があり、粘着剤として使用すると保持性が低下する。また、−10℃を超えると、弾性率が高くなり、23℃付近での粘着力が低下する傾向にある。ガラス転移温度は、−50℃〜−30℃の範囲にあるのがより好ましい。
貯蔵弾性率G′が9×104 Pa未満では、凝集力が低くなり、粘着剤として保持性が低下する。また、9×105 Paを超えると、粘着力が低下する傾向にある。貯蔵弾性率G′は、1×105 〜5×105 Paの範囲にあるのがより好ましい。
植物由来のジオールとしては、ヒマシ油から誘導される脂肪酸エステルや、オレイン酸などから誘導されるダイマージオールなどが挙げられる。
このような縮合重合には、一般の縮合反応に用いられる適宜の触媒が用いられる。具体的には、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、三酸化アンチモン、ブチルスズオキシドなどの金属化合物が挙げられる。
触媒の使用量は、適宜選択できるが、ジカルボン酸100モル当量に対して、0.1〜2モル当量、好ましくは0.4〜1.7モル当量、さらに好ましくは0.7〜1.4モル当量である。0.1モル当量未満では反応速度が著しく遅くなり、また2モル当量を超えると反応速度に対する効果がなく、いずれも好ましくない。
本発明においては、このポリエステルに鎖延長剤としてジイソシアネート化合物を反応させて、鎖延長により高分子量化する。この鎖延長ポリエステルの重量平均分子量Mwは12万〜25万、好ましくは17万〜20万の範囲である。
鎖延長剤としてのジイソシアネート化合物には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられ、中でも、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリエステルとの相溶性が良い低級脂肪族ジイソシアネートが好ましい。
鎖延長剤の使用量は、縮合重合後のポリエステルの分子量に応じて、鎖延長反応後の分子量が上記範囲内となる適宜の量が選択される。
なお、架橋剤による架橋処理は、鎖延長反応後に行ってもよいし、鎖延長反応と同時に架橋処理を施してもよい。後者の場合、ジカルボン酸とジオールとのポリエステルに対し鎖延長剤と架橋剤を同時に配合して反応させることができる。
具体的には、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物やヘキサメチレンジイソシアネート付加物などのイソシアネート付加物などが挙げられる。これらの中でも、上記のイソシアネート付加物が特に好ましい。これらの架橋剤は、2種以上を併用してもよい。
このような使用量範囲で適度な架橋結合を形成して適正なゲル分率とすることにより、粘着力と保持性(凝集力)とを両立する、優れた粘着特性が得られる。架橋剤の使用量が0.5重量部未満では凝集力が低くなり、10重量部を超えるとゲル分率の増大による凝集力の向上効果がみられなくなり、粘着力も低下する。
基材には、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのプラスチックフィルムや紙などの各種材質のものが用いられる。剥離性基材には、シリコーンで離形処理を行ったポリエチレンテレフタレートフィルムなどのプラスチックフィルムが用いられる。
また、縮合重合後のポリエスル(またはこれを鎖延長した鎖延長ポリエスル)の重量平均分子量Mwおよび酸価は、それぞれ、以下の方法により、測定したものである。なお、各測定のサンプルは、下記の方法で作製した。
<サンプルの作製>
上記のポリエスルを剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の剥離処理面に乾燥後の厚さが50μmにように塗布し、120℃で2時間乾燥して溶剤を蒸発し、上記PETフィルムを引き剥がした乾燥塗膜をサンプルとした。
サンプル0.01gを秤量し、これをテトラフルオロエチレン(THF)10gに添加し、24時間放置して溶解した。この溶液(溶解しないゲル分がある場合、これを除いた溶液)を、GPC(東ソー社製の「HLC−8220GPC」)により、下記の条件で測定して、ゾル分の重量平均分子量Mwを求めた。
カラム:G6000H6
カラムサイズ:7.5mmID×30.0cmL
溶離液:THF
流量:0.300ml/min
検出器:RI
カラム温度:40℃
注入量:20μl
サンプル0.5gを秤量した。トルエン/イソプロピルアルコール(IPA)/蒸留水の重量比50/49.5/0.5の混合液を溶媒とし、この溶媒50gに上記のサンプルを溶解した。この溶液について、HIRANMA社製の滴定装置B−900を用いて、KOHにて中和満定を行い、以下の式で酸価を求めた。
酸価〔mgKOH/g〕=(サンプル滴定量−ブランク滴定量ml)×5.61×KOH力価/サンプル重量g
三つ口セパラブルフラスコに攪拌機および温度計を付し、これにダイマージオール(ユニケマ社製の「プリポール2033」、分子量537)48.3g、ダイマー酸(ユニケマ社製の「プリポール1009」、分子量567)50.0g、触媒としてジ−n−ブチルスズオキシド(キシダ化学社製、分子量249)0.25g(ダイマー酸10モルに対し0.1モル)を仕込み、減圧雰囲気(0.09MPa)で撹拌しながら180℃まで昇温し、この温度を保持した。しばらくすると反応水の流出分離が認められ、反応が進行しはじめた。約15時間反応を続け、反応終了後、粘度を低下させるため、キシレン100gを加えて撹拌し、ポリエステルaを得た。このポリエステルaの酸価は1.50、重量平均分子量Mwは7万であった。
この配合物を、乾燥後の厚さが50μmになるように、剥離処理したPETフィルムの剥離処理面に塗布した。120℃で3分間乾燥したのち、50℃の雰囲気下に5日間放置して、鎖延長反応と同時に架橋処理することにより、架橋処理した粘着剤層を有するポリエステル系粘着シートを作製した。
これとは別に、上記のポリエステルa100部に、鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成社製の「デュラネートD−201」)5部のみを配合し、50℃で5日間エージングを行って、鎖延長ポリエステル1を得た。この鎖延長ポリエステル1の酸価は1.50、重量平均分子量Mwは23万であった。
ダイマージオールの使用量を49.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、酸価が1.04、重量平均分子量Mwが5万のポリエステルbを得た。このポリエステルbを用いて、実施例1と同様にして、ポリエステル系粘着シートを作製した。
これとは別に、上記のポリエステルb100部に、鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成社製の「デュラネートD−201」)5部のみを配合し、50℃で5日間エージングを行って、鎖延長ポリエステル2を得た。この鎖延長ポリエステル2の酸価は1.04、重量平均分子量Mwは20万であった。
ダイマージオールの使用量を50.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、酸価が1.00、重量平均分子量Mwが4万のポリエステルcを得た。このポリエステルcを用いて、実施例1と同様にして、ポリエステル系粘着シートを作製した。
これとは別に、上記のポリエステルc100部に、鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成社製の「デュラネートD−201」)5部のみを配合し、50℃で5日間エージングを行って、鎖延長ポリエステル3を得た。この鎖延長ポリエステル3の酸価は1.00、重量平均分子量Mwは17万であった。
ダイマージオールの使用量を51.1gに変更した以外は、実施例1と同様にして、酸価が0.80、重量平均分子量Mwが3万のポリエステルdを得た。このポリエステルdを用いて、実施例1と同様にして、ポリエステル系粘着シートを作製した。
これとは別に、上記のポリエステルd100部に、鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成社製の「デュラネートD−201」)5部のみを配合し、50℃で5日間エージングを行って、鎖延長ポリエステル4を得た。この鎖延長ポリエステル4の酸価は0.80、重量平均分子量Mwは14万であった。
ダイマージオールの使用量を46.4gに変更した以外は、実施例1と同様にして、酸価が3.05、重量平均分子量Mwが9万のポリエステルeを得た。
つぎに、上記のポリエステルe100部に、架橋剤としてトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(旭化成ケミカルズ社製の「デュラネートTPA−100」)2部を配合した。
この配合物を、乾燥後の厚さが50μmになるように、剥離処理したPETフィルムの剥離処理面に塗布した。120℃で3分間乾燥したのち、50℃の雰囲気下に5日間放置して、架橋処理することにより、架橋処理した粘着剤層を有するポリエステル系粘着シートを作製した。
ダイマージオールの使用量を47.4gに変更した以外は、実施例1と同様にして、酸価が2.25、重量平均分子量Mwが11万のポリエステルfを得た。このポリエステルfを用いて、比較例1と同様にして、ポリエステル系粘着シートを作製した。
実施例1で得たポリエステルa(酸価1.50、重量平均分子量Mw7万)100部に、架橋剤としてトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(旭化成ケミカルズ社製の「デュラネートTPA−100」)2部のみを配合した。
この配合物を、乾燥後の厚さが50μmになるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に塗布した。120℃で3分間乾燥したのち、50℃の雰囲気下に5日間放置して、架橋処理することにより、架橋処理した粘着剤層を有するポリエステル系粘着シートを作製した。
実施例2で得たポリエステルb(酸価1.04、重量平均分子量Mw5万)100部に、架橋剤としてトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(旭化成ケミカルズ社製の「デュラネートTPA−100」)2部のみを配合した。この配合物を用いて、比較例3と同様にして、ポリエステル系粘着シートを作製した。
実施例3で得たポリエステルc(酸価1.00、重量平均分子量Mw4万)100部に、架橋剤としてトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(旭化成ケミカルズ社製の「デュラネートTPA−100」)2部のみを配合した。この配合物を用いて、比較例3と同様にして、ポリエステル系粘着シートを作製した。
また、実施例1〜4で得られた鎖延長ポリエステル1〜4について、各鎖延長ポリエステルの酸価および重量平均分子量Mwを、表2にまとめて示した。
ポリエステル系粘着シートを5cm×5cm角に切り出した。切り出したサンプルを、重さがわかっているポリテトラフルオロエチレンシートで包み、重量を秤量し、トルエン中に23℃で7日間放置して、サンプル中のゾル分を抽出した。その後、120℃で2時間乾燥し、乾燥後の重量を秤量した。ゲル分率を下記の式にて算出した。
ゲル分率[%〕=(乾燥後の重量−ポリテトラフルオロエチレンシート重量)/(乾燥前の重量−ポリテトラフルオロエチレンシート重量)×100
ポリエステル系粘着シートにコロナ処理した厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせて、測定片とした。この測定片を用いてJIS C 2107の粘着力試験(180度引き剥がし法)に準じて、粘着力を測定した。
たたし、圧着は2kgのローラーを1往復して行い、試験板はステンレス板を使用し、試験片は幅20mmにした。また、引張り速度は300mm/分で測定を行った。その他は、上記の粘着力試験と同様に測定を行った。
ポリエステル系粘着シートに厚さが90μmのアルミテープを貼り合わせて、10mm×100mmに切り出した。切り出したサンプルを、125mm×25mm×2mmのベークライト板に、10mm×20mmラップするように、5kgロールで1往復して、圧着し、貼り合わせ試験片を作製した。
この試験片を,80℃の雰囲気下で30分放置したのち、0.5kgの荷重を加えて、80℃雰囲気下に1時間放置後のサンプルのずれ長さ(mm)を測定し、この測定値を、保持性として評価した。
また、ジカルボン酸とジオールとの縮合重合物からなる酸価が0.7〜1.6KOHmg/gのポリエステルを鎖延長することなくそのまま架橋処理した比較例3〜5のポリエステル系粘着シートでは、保持性が著しく悪化し、粘着力が低下する場合もあり、粘着剤としての性能にやはり劣るものであることがわかる。
Claims (2)
- ダイマー酸からなるジカルボン酸とダイマージオールからなるジオールとの酸価が0.7〜1.6mgKOH/gのポリエステルをジイソシアネート化合物からなる鎖延長剤と3官能のポリイソシアネート化合物からなる架橋剤により鎖延長反応と同時に架橋処理してなり、上記の鎖延長剤の使用量は、この鎖延長剤による鎖延長反応のみを施したときに生成する鎖延長ポリエステルの重量平均分子量Mwが12万〜25万の範囲内となる量であることを特徴とするポリエステル系粘着剤。
- 鎖延長剤としてのジイソシアネート化合物は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの中から選ばれ、架橋剤としての3官能のポリイソシアネート化合物は、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート付加物の中から選ばれる請求項1に記載のポリエステル系粘着剤。
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