JP5125993B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 - Google Patents
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(1)有機極性溶媒中で、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水硫化物から選ばれる少なくとも1種の硫黄源とジハロゲン化芳香族化合物とを反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する際に、重合系内に水を除く重合助剤が前記硫黄源1モル当たり0.01〜0.3モル存在し、重合反応終了後に水を前記硫黄源1モル当たり0.5モル以上添加することで溶融粘度が40Pa・s以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(2)(1)に記載の製造方法で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を120℃〜270℃で熱処理するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(3)重合系内に存在する水を除く重合助剤が前記硫黄源1モル当たり0.01〜0.05モルであり、溶融粘度10Pa・s以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(4)重合助剤が有機カルボン酸塩、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(5)水を添加した後、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む内容液をフラッシュさせてポリアリーレンスルフィド樹脂を回収することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
本発明で用いるアルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化リチウム、硫化ルビジウムおよび硫化セシウムなどが挙げられ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物の具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,4−ジクロロナフタレン、1,5−ジクロロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、および4,4’−ジクロロジフェニルケトンなどが挙げられ、これらのなかでもp−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、および4,4’−ジクロロジフェニルケトンなどが好ましく用いられ、特にp−ジクロロベンゼンが更に好ましく用いられる。なお、異なる2種類以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることももちろん可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ジハロゲン化芳香族化合物の添加時期には特に制限はないが、重合工程の前までに系内に導入することが好ましい。
本発明において用いられる有機極性溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホンおよびテトラメチレンスルホキシドなどが挙げられ、なかでもN−メチル−2−ピロリドンが好ましく用いられる。
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制することができる。重合安定剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、及びアルカリ土類金属炭酸塩から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属塩を併用することも可能である。なかでも、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物が好ましい。
本発明では重合助剤を硫黄成分1モルに対して0.01〜0.3モル存在させることが重要である。
本発明では重合終了後に水を硫黄成分1モルに対して0.5モル以上添加することが重要である。
重合工程の前に、完全混合型反応器に硫黄源、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒、必要に応じて重合安定剤および重合助剤を加え、好ましくは不活性ガス雰囲気下で、常温から220℃の範囲で脱水反応を行い、反応系内の水分量の調節を行ってもよい。ここでの完全混合型反応器とは、オートクレーブが挙げられる。
重合温度は、特に規定はないが、好ましくは210℃〜300℃であり、より好ましくは220℃から290℃であり、更に好ましくは225℃から285℃である。210℃よりも重合温度が低いと重合が不十分となり、目的のポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることができず、300℃よりも重合温度が高いと分解が発生し、好ましくない。
重合時間は、他の反応条件によって広く変化するため特に規定はないが、一般には、0.01〜10時間、好ましくは0.2〜7時間、さらに好ましくは0.5〜5時間の範囲内である。重合時間が0.01よりも短いと重合度が上がらず、10時間よりも長いと生産性が悪くなり好ましくない。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法には大きく分けて、後述するフラッシュ法とクウェンチ法の2種類がある。
一方、クウェンチ法は、重合反応物を、除冷して粒子状のポリアリーレンスルフィド樹脂を回収する方法である。
重合反応終了後のポリマーを含むスラリーを固液分離し、熱水洗浄を行うことが出来る。
熱水洗浄のあと、酸洗浄工程を行うと金属含有量が低減し、熱処理時に揮発性成分が低減しやすくなるため好ましい。
乾燥処理の温度としては110〜150℃が好ましく、110〜140℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。
ポリアリーレンスルフィドの発生ガスをより低下させるために熱処理を行うことができる。
上記の発生ガス量の測定には、以下に示す方法で算出した。
東洋精機社製キャピログラフ1Cを用い、孔長10.00mm、孔直径0.50mmのダイスを用い、316℃、せん断速度1000/秒で溶融粘度の測定を行った。
本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂は、単独で用いてもよいし、所望に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維などの無機繊維やチタン酸カリウムウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、ワラステナイト、セリサイト、カオリンなどのウィスカを添加することができ、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケート、などのケイ酸塩、アルミナ、塩化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの金属化合物、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸カリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素及びシリカなどの無機充填剤、着色防止剤、可塑剤、防食剤、酸化防止剤、熱安定剤、渇剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、離型剤、結晶核剤等の添加剤および着色剤などの添加剤を添加することもでき、さらには、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、酸無水物基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミドアセタールおよびポリイミドなどの樹脂を配合して用いることもできる。
上記の発生ガス量の測定には、以下に示す方法で算出した。
東洋精機社製キャピログラフ1Cを用い、孔長10.00mm、孔直径0.50mmのダイスを用い、316℃、せん断速度1000/秒で溶融粘度の測定を行った。
攪拌機付きの1リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム1.00モル、48%水酸化ナトリウム1.03モル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1.65モル、酢酸ナトリウム0.05モル、及びイオン交換水5.55モルを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで2時間かけて徐々に加熱し、水11.70モルおよびNMP0.02モルを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。また、硫化水素の飛散量は0.01モルであった。
酢酸ナトリウムを0.01モル添加する事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
重合反応終了後に水を0.50モル添加する事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
重合反応終了後に水を2.00モル添加する事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
酢酸ナトリウムを0.30モル添加する事以外は実施例4と同様に反応、回収操作を行った。
実施例1で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂10gを、攪拌機付き乾燥機に入れ、酸素濃度5体積%の窒素混合ガスを80ml/分乾燥機に導入し、240℃で30分熱処理(回転数:10rpm)を行った。
実施例5で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂10gを、実施例6と同様に熱処理を行い、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度29Pa・sec、発生ガス量0.20重量%であった。
酢酸ナトリウムを添加しない事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
重合反応終了後に水を添加しない事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
酢酸ナトリウムを0.35モル添加する事以外は実施例5と同様に反応、回収操作を行った。
比較例1で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂10gを、実施例6と同様に熱処理を行い、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度6.3Pa・sec、発生ガス量0.50重量%であった。
比較例3で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂10gを、実施例6と同様に熱処理を行い、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度87.5Pa・sec、発生ガス量0.20重量%であった。
これらの実施例から本発明でポリアリーレンスルフィド樹脂を製造した場合、発生ガスが少なく、かつ流動性に優れるポリマーを得られることが分かる。
Claims (5)
- 有機極性溶媒中で、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水硫化物から選ばれる少なくとも1種の硫黄源とジハロゲン化芳香族化合物とを反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する際に、重合系内に水を除く重合助剤が前記硫黄源1モル当たり0.01〜0.3モル存在し、重合反応終了後に水を前記硫黄源1モル当たり0.5モル以上添加することで溶融粘度が40Pa・s以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を120℃〜270℃で熱処理するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
- 重合系内に存在する水を除く重合助剤が前記硫黄源1モル当たり0.01〜0.05モルであり、溶融粘度10Pa・s以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
- 重合助剤が有機カルボン酸塩、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
- 水を添加した後、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む内容液をフラッシュさせてポリアリーレンスルフィド樹脂を回収することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
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