JP2004099684A - ポリアリーレンスルフィド樹脂及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】オリゴマー量の少ないポリアリーレンスルフィド樹脂を、安価に、高収率で製造できる方法を提供する。
【解決手段】ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分を有機溶剤で洗浄することにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分を有機溶剤で洗浄することにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オリゴマー量の少ないポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PPSと略記する場合もある)を、安価に、高収率で製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PPSは、耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気的特性及び寸法安定性などに優れたエンジニアリングプラスチックであり、射出成形、押出成形及び圧縮成形などの各種成形法により、各種成形品、フィルム、シート及び繊維などに成形可能であるため、電気・電子機器や自動車機器などの広範な分野において幅広く用いられている。
【0003】
このPPSは、通常重合時にNaClが副生するため、特に電気用途などへの適用を考えた場合その除去は重要である。また、オリゴマーなどの有機系の不純物は射出成形時の金型の汚れやガスの発生源ともなるためその除去は重要な課題である。
【0004】
PPSを有機溶媒で洗浄する技術はこれまでにも検討されてきている。例えば、特開平5−43690号公報(特許文献1)には、PPSから重合溶媒を加熱蒸留により除去した後、100℃以上の有機溶剤で処理する方法が開示されている。しかし、この特許文献1では、一旦180℃まで冷却した後、減圧下で溶媒を回収する手段を用いているので、フラッシュ法に比べ冷却過程、溶媒回収過程で長い時間を要し、製造工程として経済的に不利という問題点を有する。
【0005】
一方、重合完了後に、PPSを含む反応生成物からフラッシュ法で溶媒を回収する方法は、例えば特開2000−191785号公報(特許文献2)に記載されている。この特許文献2には、重合時に水添を行い、得られた反応混合物から有機アミド溶媒を蒸発または蒸留回収する方法が開示されている。しかし、重合時に水添を行うと、重合槽内の圧が上昇するため、高圧に耐える重合釜が必要となるので工業的製造工程として好ましくなく、重合時に水添を行わずに効率的に溶媒回収ができる方法が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開平5−43690号公報
【0007】
【特許文献2】特開2000−191785号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、かかる従来技術を鑑み、オリゴマー量の少ないポリアリーレンスルフィド樹脂を、安価に、高収率で得ることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明法は次の事項により特定されるものである。すなわち本発明は、
1.ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分を有機溶剤で洗浄する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
2.ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分に、水での洗浄、及び、有機溶剤での洗浄を行う、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
3.ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分に、酸性水溶液での洗浄、及び、有機溶剤での洗浄を行う、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
4.上記1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造されたポリアリーレンスルフィド樹脂。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリアリーレンスルフィドは、式 −(Ar−S)− の繰り返し単位を主要構成単位とするホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
【0011】
【化1】
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−単位に対して0〜5モル%の範囲であることが好ましく、1モル%以下の範囲がより好ましい。
【0012】
【化2】
また、本発明におけるポリアリーレンスルフィドは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物であってもよい。
【0013】
更に、各種ポリアリーレンスルフィドはその分子量に特に制限はないが、通常、溶融粘度が5〜5,000Pa・s(310℃、剪断速度1,000/秒)の範囲が好ましい範囲として例示できる。
【0014】
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレン単位
【0015】
【化3】
を90モルパーセント以上含有するポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられ、ポリフェニレンスルフィドが特に好ましい。
【0016】
スルフィド化剤:
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水硫化物、及び硫化水素が挙げられる。
【0017】
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0018】
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム及びこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0019】
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0020】
あるいは水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0021】
本発明において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
【0022】
スルフィド化剤とともに、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム及びこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0023】
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95〜1.20モル、好ましくは1.00〜1.15モル、更に好ましくは1.005〜1.100モルの範囲が例示できる。
【0024】
ポリハロゲン化芳香族化合物:
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,4−ジクロロナフタレン、1,5−ジクロロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン,4,4’−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルケトンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼン,4,4’−ジクロロジフェニルスルホン,4,4’−ジクロロジフェニルケトンが、より好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
【0025】
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のポリアリーレンスルフィドを得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9〜2.0モル、好ましくは0.95〜1.5モル、更に好ましくは1.005〜1.2モルの範囲が例示できる。
【0026】
分子量調節剤、分岐・架橋剤:
本発明においては、生成PPSの末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。また、分岐または架橋重合体を形成させるために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物及びハロゲン化芳香族ニトロ化合物などを併用することも可能である。
【0027】
重合溶媒:
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、及びこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
【0028】
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0〜10モル、好ましくは2.25〜6.0モル、より好ましくは2.5〜5.5モルの範囲が選択される。
【0029】
重合助剤:
本発明においては、高重合度のPPSをより短時間で得るために重合助剤を用いることは好ましい方法の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPSの粘度を増大させる作用を有する物質をさす。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩などがあげられる。これらは単独でも、2種以上を同時に用いることができる。なかでも有機カルボン酸塩が好ましく用いられる。
【0030】
アルカリ金属カルボン酸塩は、一般式 R(COOM)n (式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、及びそれらの混合物などを挙げることができる。 アルカリ金属カルボン酸塩は、有機極性溶媒中で、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩及び重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウム及びセシウム塩は反応系への溶解性に劣ると推定しており、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0031】
これら重合助剤を用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01〜0.7モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
【0032】
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加しても良いが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが添加が容易である点からより好ましい。
【0033】
重合安定剤:
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、及びアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
【0034】
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
【0035】
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加しても良いが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが添加が容易である点からより好ましい。
【0036】
前工程:
スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
【0037】
また前述したようにスルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
【0038】
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.5〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は水、水溶液、結晶水など、いずれの形態であってもよい。水分量のより好ましい範囲は、スルフィド化剤1モル当たり0.75〜2.5モルであり、1.0〜1.25モルの範囲がより好ましい。
【0039】
重合反応工程:
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させる。
【0040】
重合反応工程を開始するに際し、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜220℃、好ましくは100〜220℃の温度範囲で、有機極性溶媒にスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
【0041】
かかる混合物を通常200〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
【0042】
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
【0043】
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200〜245℃で一定時間反応させた後、250〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200〜245℃での反応時間としては、通常0.25〜20時間の範囲が、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
【0044】
なお、複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが、より高重合度のポリマーを得る上で有効であり好ましい。
【0045】
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
【0046】
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
回収工程:
重合終了後に、重合体、溶媒等を含む重合反応物から固形物と溶媒とを分離回収する。本発明においてはこの回収方法が重要である。
【0047】
本発明においては回収方法としてフラッシュ法が用いられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法である。ここでフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150〜250℃の範囲が選択される。
【0048】
フラッシュ法は、溶媒回収と同時に、ポリマーを含む固形物が回収でき、また回収時間も比較的短く、高収率でポリマーが得られることから、経済性に優れた回収方法である。反面、固化過程でイオン性不純物やオリゴマーなどの有機系不純物をポリマー中に取り込んでしまうため、その除去が徐冷法に比べ難しい。
【0049】
フラッシュ法と異なる回収方法として、重合反応物を結晶化させながら徐々に冷却した後、固形物を濾過して回収する方法が挙げられる。この除冷法の場合、徐々に冷却するためフラッシュ法に比べ回収に時間がかかり、生産性が悪い。また、NMPと固形分を分離する工程が別途必要となる。但し、恐らく結晶化過程で粒子から排除されるために、回収した固形物から、残存するイオン性不純物や有機系不純物を除去することがフラッシュ法に比べ比較的容易である。
【0050】
本発明者らは、フラッシュ法によって固形物と溶媒とを分離回収した場合でも、クロロホルム抽出量で測定されるオリゴマーなどの有機系不純物のより少ないPPSが得られることを目的に検討を行った。その結果、フラッシュ法によって回収されたポリマーを含む固形分を、有機溶剤で洗浄すること、あるいは更に、水洗すること、あるいは更に、酸性水溶液で洗浄処理することにより、フラッシュ法で分離回収しても、オリゴマー量が極めて少ないPPSが得られることを見出した。特にオリゴマー量低減のためには、有機溶媒洗浄、水洗浄、及び酸性水溶液洗浄を行うことが有効である。
【0051】
本発明における有機溶剤洗浄に用いられる有機溶剤としては、PPSを分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく使用することができる。例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが使用される。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
【0052】
かかる有機溶媒による洗浄の具体的方法としては、有機溶媒中に、PPSを含む固形分を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できるが、安全性、経済性の点で30℃以上100℃未満の範囲がより好ましく、かかる温度条件でも十分な不純物除去効果が得られる。
【0053】
かかる有機溶媒洗浄の浴比は、重量比で、洗浄・乾燥後に得られるPPS樹脂(以下、乾燥ポリマーという)1に対し、1〜100の範囲が好ましく選択され、2〜50の範囲がより好ましく、3〜15の範囲が更に好ましい。
【0054】
本発明における水洗は、好ましくは10℃以上250℃以下、より好ましくは100℃以上220℃以下、更には150℃以上220以下の水温で行うことが好ましい。洗浄温度が低すぎると不純物除去効果が低下し、250℃より高くしてもより一層の不純物除去効果が望めない上、高圧になりすぎるため安全上また経済性の面で好ましくない。かかる水洗浄は、バッチ式でも連続式でもさしつかえない。使用する水に含有される金属イオン量は500ppm以下であることが好ましい。金属イオン含有量が多すぎるとイオン性不純物量が増えてしまい好ましくない。使用する水の種類としてはイオン交換水、蒸留水が好ましく用いられる。
【0055】
かかる水洗浄の浴比は、重量比で乾燥ポリマー1に対し、2〜100の範囲が好ましく選択され、4〜50の範囲がより好ましく、5〜15の範囲が更に好ましい。
【0056】
酸性水溶液で洗浄処理する場合に用いる水の種類もイオン交換水、蒸留水が好ましく用いられる。本発明の酸性水溶液とは、上記水に、有機酸、無機酸等を添加して酸性にしたものである。使用する有機酸、無機酸としては、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸などが例示できるがこれらに限定されるものではない。その温度は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。かかる酸性水溶液の洗浄前のpHは少なくとも7未満であることが必要であり、pH2〜6の範囲がより好ましい。また洗浄後の水溶液のpHも7未満であることが好ましく、pH2〜6の範囲がより好ましい。
【0057】
かかる酸性水溶液処理の浴比は、重量比で乾燥ポリマー1に対し、2〜100の範囲が好ましく選択され、4〜50の範囲がより好ましく、5〜15の範囲が更に好ましい。
【0058】
本発明において、有機溶剤洗浄の他に、水洗浄を行う場合、酸性水溶液による洗浄を行う場合、又は、水洗浄も酸性水溶液洗浄も行う場合、それら洗浄の順序には特に制限はないが、例えば(1)フラッシュ回収物を100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の熱水で洗浄濾過を施し、その後有機溶剤で洗浄し、有機溶剤を濾過/乾燥または蒸留回収する方法、(2)フラッシュ回収物を100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の熱水で洗浄濾過を施し、その後有機溶剤で洗浄し、有機溶剤を水洗除去する方法、(3)フラッシュ回収物を100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の酸性水溶液で洗浄濾過を施し、その後有機溶剤で洗浄し、有機溶剤を濾過/乾燥または蒸留回収する方法、(4)フラッシュ回収物を100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の酸性水溶液で洗浄濾過を施し、その後有機溶剤で洗浄し、有機溶剤を水洗除去する方法、(5)フラッシュ回収物を有機溶剤で洗浄濾過後、100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の熱水で洗浄濾過を施し水洗濾過を施す方法、(6)フラッシュ回収物を有機溶剤で洗浄濾過後、100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の酸性水溶液で洗浄濾過を施し水洗濾過を施す方法、などが挙げられる。なかでも(1)〜(4)の水洗後に有機溶剤で洗浄する方法が特に好ましい。
【0059】
本発明法によって回収され有機溶媒等で洗浄された固形分は、更に揮発性成分を除去するために、或いは架橋高分子量化するために、130〜260℃の温度で熱処理することも、望ましい方法の一つである。
【0060】
架橋高分子量化ではなく揮発分除去を目的として乾式熱処理を行う場合、その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また酸素濃度5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。減圧乾燥することも好ましい方法の一つである。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間が更に好ましい。
【0061】
架橋高分子量化を目的として乾式熱処理する場合、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また酸素濃度5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。処理時間は、1〜100時間が好ましく、2〜50時間がより好ましく、3〜25時間が更に好ましい。
【0062】
加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0063】
かくして得られた、PPS樹脂は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、特にオリゴマーなどの有機系不純物量が少ないという特長を有する優れたものであるため、ゲルおよびガスが少なく成形性に優れ、射出成形のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することができる。
【0064】
また、本発明で得られるPPS樹脂は、単独で用いてもよいし、所望に応じて、下記配合剤を配合して用いることもできる。その具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、グラファイト、カーボンブラックおよびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0065】
更に本発明で得られるPPS樹脂は、所望に応じて他の樹脂とブレンドして用いても良い。かかるブレンド可能な樹脂に特に制限は内がその具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミドなどの樹脂が挙げられる。
【0066】
また本発明で得られるPPS樹脂は、所望に応じて、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物などの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物などの離型剤、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物などの酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0067】
また、本発明で得られるPPS樹脂に対し、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランを添加することは、機械的強度、靱性などの向上に有効である。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0068】
かかるシラン化合物の好適な添加量は、PPS樹脂100重量部に対し、0.05〜5重量部の範囲が選択される。
【0069】
またその用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、ガソリンタンク、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー等の自動車・車両関連部品、その他各種用途が例示できる。
【0070】
【実施例】
以下、本発明の方法を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、物性の測定法は以下の通りである。
【0071】
(1)クロロホルム抽出量
クロロホルム抽出量は、ポリマー10gをクロロホルム100gで3時間ソックスレー抽出し、この抽出液からクロロホルムを留去した後に得られる成分の重量のポリマー重量に対する割合で表す。
【0072】
(2)収率
仕込み硫黄源から飛散硫化水素を除いた実硫黄源量が全てPPSとして得られた場合を100%として、洗浄後得られたPPS量から計算して収率を求めた。
【0073】
[参考例]
撹拌機及び底に弁の付いた1リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム118g(1.00モル)、96%水酸化ナトリウム42.9g(1.03モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)199g(2.01モル)、酢酸ナトリウム27.0g(0.33モル)、及びイオン交換水150gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水210gおよびNMP2gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は1.05モルであった。また、硫化水素の飛散量は0.02モルであった。
【0074】
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)147g(1.00モル)、NMP69g(0.70モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで撹拌しながら、200℃から274℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、274℃で50分保持した後、282℃まで昇温した。次に、オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく攪拌して大半のNMPを除去し、PPSと塩類を含む固形物256gを得た。
【0075】
[実施例1]
参考例で得た固形物50g及びイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケーク51g及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0076】
得られたケークをビーカーに入れ、アセトン200gを加え、65℃のウォーターバス中還流下で30分加熱撹拌した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過しケークを得た。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0077】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.6重量%、収率95%であった。
【0078】
[実施例2]
参考例で得た固形物50g及びイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケーク51g及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0079】
得られたケークをビーカーに入れ、NMP200gを加え、80℃のウォーターバス中で30分加熱撹拌した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過しケークを得た。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0080】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.4重量%、収率95%であった。
【0081】
[実施例3]
参考例で得た固形物50g及びイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケーク51g、イオン交換水277g及び酢酸0.34gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み(pH=3.8)、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、150℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した(pH=4.1)。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0082】
得られたケークをビーカーに入れ、アセトン200gを加え、65℃のウォーターバス中還流下で30分加熱撹拌した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過しケークを得た。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0083】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.3重量%、収率95%であった。
【0084】
[実施例4]
参考例で得た固形物50g及びアセトン200gをビーカーに入れ、65℃のウォーターバス中還流下で30分加熱撹拌した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0085】
得られたケーク及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケークを80℃の温水で3回洗浄/濾過を繰り返した。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0086】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.9重量%、収率95%であった。
【0087】
[比較例1]
参考例で得た固形物50g及びイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケーク51g及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0088】
得られたケークを80℃の温水で3回洗浄/濾過を繰り返した。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0089】
得られたPPSのクロロホルム抽出量2.4重量%、収率96%であった。この場合、有機溶剤洗浄を施さなかったので、クロロホルム抽出量の高いPPSしか得られなかった。
【0090】
[比較例2]
撹拌機の付いた1リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム118g(1.00モル)、96%水酸化ナトリウム42.9g(1.03モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)199g(2.01モル)、酢酸ナトリウム27.0g(0.33モル)、及びイオン交換水150gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水210gおよびNMP2gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は1.05モルであった。また、硫化水素の飛散量は0.02モルであった。
【0091】
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)147g(1.00モル)、NMP69g(0.70モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで撹拌しながら、200℃から274℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、274℃で50分保持した後、282℃まで昇温した。次に、0.4℃/分で200℃まで徐冷し、その後50℃まで急冷した。顆粒状のPPSと塩類を含むスラリー541gを得た。
【0092】
得られたスラリー106g(NMPを50wt%含む)を80メッシュの篩で固液分離し、溶媒NMPを分離した。その後、メッシュオンの固形物とイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0093】
得られたケーク45g及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0094】
得られたケークをビーカーに入れ、アセトン200gを加え、65℃のウォーターバス中還流下で30分加熱撹拌した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過しケークを得た。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS17gを得た。
【0095】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.6重量%、収率84%であった。このようにフラッシュ回収せず徐冷法にて回収する場合、徐冷によって顆粒状のポリマーが生成するので篩分けにて固液分離することが可能であるが、得られたPPSのクロロホルム抽出量は本発明の場合とほとんど変わらないが、ポリマーの収率は低いものであった。また、徐冷に長時間を要し、生産性の点でも劣るものであった。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、オリゴマー量の少ないポリアリーレンスルフィド樹脂を、安価に、高収率で製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、オリゴマー量の少ないポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PPSと略記する場合もある)を、安価に、高収率で製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PPSは、耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気的特性及び寸法安定性などに優れたエンジニアリングプラスチックであり、射出成形、押出成形及び圧縮成形などの各種成形法により、各種成形品、フィルム、シート及び繊維などに成形可能であるため、電気・電子機器や自動車機器などの広範な分野において幅広く用いられている。
【0003】
このPPSは、通常重合時にNaClが副生するため、特に電気用途などへの適用を考えた場合その除去は重要である。また、オリゴマーなどの有機系の不純物は射出成形時の金型の汚れやガスの発生源ともなるためその除去は重要な課題である。
【0004】
PPSを有機溶媒で洗浄する技術はこれまでにも検討されてきている。例えば、特開平5−43690号公報(特許文献1)には、PPSから重合溶媒を加熱蒸留により除去した後、100℃以上の有機溶剤で処理する方法が開示されている。しかし、この特許文献1では、一旦180℃まで冷却した後、減圧下で溶媒を回収する手段を用いているので、フラッシュ法に比べ冷却過程、溶媒回収過程で長い時間を要し、製造工程として経済的に不利という問題点を有する。
【0005】
一方、重合完了後に、PPSを含む反応生成物からフラッシュ法で溶媒を回収する方法は、例えば特開2000−191785号公報(特許文献2)に記載されている。この特許文献2には、重合時に水添を行い、得られた反応混合物から有機アミド溶媒を蒸発または蒸留回収する方法が開示されている。しかし、重合時に水添を行うと、重合槽内の圧が上昇するため、高圧に耐える重合釜が必要となるので工業的製造工程として好ましくなく、重合時に水添を行わずに効率的に溶媒回収ができる方法が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開平5−43690号公報
【0007】
【特許文献2】特開2000−191785号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、かかる従来技術を鑑み、オリゴマー量の少ないポリアリーレンスルフィド樹脂を、安価に、高収率で得ることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明法は次の事項により特定されるものである。すなわち本発明は、
1.ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分を有機溶剤で洗浄する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
2.ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分に、水での洗浄、及び、有機溶剤での洗浄を行う、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
3.ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分に、酸性水溶液での洗浄、及び、有機溶剤での洗浄を行う、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
4.上記1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造されたポリアリーレンスルフィド樹脂。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリアリーレンスルフィドは、式 −(Ar−S)− の繰り返し単位を主要構成単位とするホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
【0011】
【化1】
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−単位に対して0〜5モル%の範囲であることが好ましく、1モル%以下の範囲がより好ましい。
【0012】
【化2】
また、本発明におけるポリアリーレンスルフィドは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物であってもよい。
【0013】
更に、各種ポリアリーレンスルフィドはその分子量に特に制限はないが、通常、溶融粘度が5〜5,000Pa・s(310℃、剪断速度1,000/秒)の範囲が好ましい範囲として例示できる。
【0014】
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレン単位
【0015】
【化3】
を90モルパーセント以上含有するポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられ、ポリフェニレンスルフィドが特に好ましい。
【0016】
スルフィド化剤:
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水硫化物、及び硫化水素が挙げられる。
【0017】
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0018】
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム及びこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0019】
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0020】
あるいは水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0021】
本発明において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
【0022】
スルフィド化剤とともに、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム及びこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0023】
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95〜1.20モル、好ましくは1.00〜1.15モル、更に好ましくは1.005〜1.100モルの範囲が例示できる。
【0024】
ポリハロゲン化芳香族化合物:
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,4−ジクロロナフタレン、1,5−ジクロロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン,4,4’−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルケトンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼン,4,4’−ジクロロジフェニルスルホン,4,4’−ジクロロジフェニルケトンが、より好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
【0025】
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のポリアリーレンスルフィドを得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9〜2.0モル、好ましくは0.95〜1.5モル、更に好ましくは1.005〜1.2モルの範囲が例示できる。
【0026】
分子量調節剤、分岐・架橋剤:
本発明においては、生成PPSの末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。また、分岐または架橋重合体を形成させるために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物及びハロゲン化芳香族ニトロ化合物などを併用することも可能である。
【0027】
重合溶媒:
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、及びこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
【0028】
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0〜10モル、好ましくは2.25〜6.0モル、より好ましくは2.5〜5.5モルの範囲が選択される。
【0029】
重合助剤:
本発明においては、高重合度のPPSをより短時間で得るために重合助剤を用いることは好ましい方法の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPSの粘度を増大させる作用を有する物質をさす。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩などがあげられる。これらは単独でも、2種以上を同時に用いることができる。なかでも有機カルボン酸塩が好ましく用いられる。
【0030】
アルカリ金属カルボン酸塩は、一般式 R(COOM)n (式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、及びそれらの混合物などを挙げることができる。 アルカリ金属カルボン酸塩は、有機極性溶媒中で、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩及び重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウム及びセシウム塩は反応系への溶解性に劣ると推定しており、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0031】
これら重合助剤を用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01〜0.7モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
【0032】
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加しても良いが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが添加が容易である点からより好ましい。
【0033】
重合安定剤:
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、及びアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
【0034】
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
【0035】
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加しても良いが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが添加が容易である点からより好ましい。
【0036】
前工程:
スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
【0037】
また前述したようにスルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
【0038】
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.5〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は水、水溶液、結晶水など、いずれの形態であってもよい。水分量のより好ましい範囲は、スルフィド化剤1モル当たり0.75〜2.5モルであり、1.0〜1.25モルの範囲がより好ましい。
【0039】
重合反応工程:
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させる。
【0040】
重合反応工程を開始するに際し、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜220℃、好ましくは100〜220℃の温度範囲で、有機極性溶媒にスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
【0041】
かかる混合物を通常200〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
【0042】
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
【0043】
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200〜245℃で一定時間反応させた後、250〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200〜245℃での反応時間としては、通常0.25〜20時間の範囲が、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
【0044】
なお、複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが、より高重合度のポリマーを得る上で有効であり好ましい。
【0045】
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
【0046】
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
回収工程:
重合終了後に、重合体、溶媒等を含む重合反応物から固形物と溶媒とを分離回収する。本発明においてはこの回収方法が重要である。
【0047】
本発明においては回収方法としてフラッシュ法が用いられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法である。ここでフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150〜250℃の範囲が選択される。
【0048】
フラッシュ法は、溶媒回収と同時に、ポリマーを含む固形物が回収でき、また回収時間も比較的短く、高収率でポリマーが得られることから、経済性に優れた回収方法である。反面、固化過程でイオン性不純物やオリゴマーなどの有機系不純物をポリマー中に取り込んでしまうため、その除去が徐冷法に比べ難しい。
【0049】
フラッシュ法と異なる回収方法として、重合反応物を結晶化させながら徐々に冷却した後、固形物を濾過して回収する方法が挙げられる。この除冷法の場合、徐々に冷却するためフラッシュ法に比べ回収に時間がかかり、生産性が悪い。また、NMPと固形分を分離する工程が別途必要となる。但し、恐らく結晶化過程で粒子から排除されるために、回収した固形物から、残存するイオン性不純物や有機系不純物を除去することがフラッシュ法に比べ比較的容易である。
【0050】
本発明者らは、フラッシュ法によって固形物と溶媒とを分離回収した場合でも、クロロホルム抽出量で測定されるオリゴマーなどの有機系不純物のより少ないPPSが得られることを目的に検討を行った。その結果、フラッシュ法によって回収されたポリマーを含む固形分を、有機溶剤で洗浄すること、あるいは更に、水洗すること、あるいは更に、酸性水溶液で洗浄処理することにより、フラッシュ法で分離回収しても、オリゴマー量が極めて少ないPPSが得られることを見出した。特にオリゴマー量低減のためには、有機溶媒洗浄、水洗浄、及び酸性水溶液洗浄を行うことが有効である。
【0051】
本発明における有機溶剤洗浄に用いられる有機溶剤としては、PPSを分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく使用することができる。例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが使用される。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
【0052】
かかる有機溶媒による洗浄の具体的方法としては、有機溶媒中に、PPSを含む固形分を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できるが、安全性、経済性の点で30℃以上100℃未満の範囲がより好ましく、かかる温度条件でも十分な不純物除去効果が得られる。
【0053】
かかる有機溶媒洗浄の浴比は、重量比で、洗浄・乾燥後に得られるPPS樹脂(以下、乾燥ポリマーという)1に対し、1〜100の範囲が好ましく選択され、2〜50の範囲がより好ましく、3〜15の範囲が更に好ましい。
【0054】
本発明における水洗は、好ましくは10℃以上250℃以下、より好ましくは100℃以上220℃以下、更には150℃以上220以下の水温で行うことが好ましい。洗浄温度が低すぎると不純物除去効果が低下し、250℃より高くしてもより一層の不純物除去効果が望めない上、高圧になりすぎるため安全上また経済性の面で好ましくない。かかる水洗浄は、バッチ式でも連続式でもさしつかえない。使用する水に含有される金属イオン量は500ppm以下であることが好ましい。金属イオン含有量が多すぎるとイオン性不純物量が増えてしまい好ましくない。使用する水の種類としてはイオン交換水、蒸留水が好ましく用いられる。
【0055】
かかる水洗浄の浴比は、重量比で乾燥ポリマー1に対し、2〜100の範囲が好ましく選択され、4〜50の範囲がより好ましく、5〜15の範囲が更に好ましい。
【0056】
酸性水溶液で洗浄処理する場合に用いる水の種類もイオン交換水、蒸留水が好ましく用いられる。本発明の酸性水溶液とは、上記水に、有機酸、無機酸等を添加して酸性にしたものである。使用する有機酸、無機酸としては、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸などが例示できるがこれらに限定されるものではない。その温度は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。かかる酸性水溶液の洗浄前のpHは少なくとも7未満であることが必要であり、pH2〜6の範囲がより好ましい。また洗浄後の水溶液のpHも7未満であることが好ましく、pH2〜6の範囲がより好ましい。
【0057】
かかる酸性水溶液処理の浴比は、重量比で乾燥ポリマー1に対し、2〜100の範囲が好ましく選択され、4〜50の範囲がより好ましく、5〜15の範囲が更に好ましい。
【0058】
本発明において、有機溶剤洗浄の他に、水洗浄を行う場合、酸性水溶液による洗浄を行う場合、又は、水洗浄も酸性水溶液洗浄も行う場合、それら洗浄の順序には特に制限はないが、例えば(1)フラッシュ回収物を100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の熱水で洗浄濾過を施し、その後有機溶剤で洗浄し、有機溶剤を濾過/乾燥または蒸留回収する方法、(2)フラッシュ回収物を100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の熱水で洗浄濾過を施し、その後有機溶剤で洗浄し、有機溶剤を水洗除去する方法、(3)フラッシュ回収物を100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の酸性水溶液で洗浄濾過を施し、その後有機溶剤で洗浄し、有機溶剤を濾過/乾燥または蒸留回収する方法、(4)フラッシュ回収物を100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の酸性水溶液で洗浄濾過を施し、その後有機溶剤で洗浄し、有機溶剤を水洗除去する方法、(5)フラッシュ回収物を有機溶剤で洗浄濾過後、100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の熱水で洗浄濾過を施し水洗濾過を施す方法、(6)フラッシュ回収物を有機溶剤で洗浄濾過後、100℃未満の温水で洗浄濾過後、100℃以上250℃以下の酸性水溶液で洗浄濾過を施し水洗濾過を施す方法、などが挙げられる。なかでも(1)〜(4)の水洗後に有機溶剤で洗浄する方法が特に好ましい。
【0059】
本発明法によって回収され有機溶媒等で洗浄された固形分は、更に揮発性成分を除去するために、或いは架橋高分子量化するために、130〜260℃の温度で熱処理することも、望ましい方法の一つである。
【0060】
架橋高分子量化ではなく揮発分除去を目的として乾式熱処理を行う場合、その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また酸素濃度5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。減圧乾燥することも好ましい方法の一つである。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間が更に好ましい。
【0061】
架橋高分子量化を目的として乾式熱処理する場合、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また酸素濃度5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。処理時間は、1〜100時間が好ましく、2〜50時間がより好ましく、3〜25時間が更に好ましい。
【0062】
加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0063】
かくして得られた、PPS樹脂は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、特にオリゴマーなどの有機系不純物量が少ないという特長を有する優れたものであるため、ゲルおよびガスが少なく成形性に優れ、射出成形のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することができる。
【0064】
また、本発明で得られるPPS樹脂は、単独で用いてもよいし、所望に応じて、下記配合剤を配合して用いることもできる。その具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、グラファイト、カーボンブラックおよびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0065】
更に本発明で得られるPPS樹脂は、所望に応じて他の樹脂とブレンドして用いても良い。かかるブレンド可能な樹脂に特に制限は内がその具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミドなどの樹脂が挙げられる。
【0066】
また本発明で得られるPPS樹脂は、所望に応じて、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物などの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物などの離型剤、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物などの酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0067】
また、本発明で得られるPPS樹脂に対し、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランを添加することは、機械的強度、靱性などの向上に有効である。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0068】
かかるシラン化合物の好適な添加量は、PPS樹脂100重量部に対し、0.05〜5重量部の範囲が選択される。
【0069】
またその用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、ガソリンタンク、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー等の自動車・車両関連部品、その他各種用途が例示できる。
【0070】
【実施例】
以下、本発明の方法を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、物性の測定法は以下の通りである。
【0071】
(1)クロロホルム抽出量
クロロホルム抽出量は、ポリマー10gをクロロホルム100gで3時間ソックスレー抽出し、この抽出液からクロロホルムを留去した後に得られる成分の重量のポリマー重量に対する割合で表す。
【0072】
(2)収率
仕込み硫黄源から飛散硫化水素を除いた実硫黄源量が全てPPSとして得られた場合を100%として、洗浄後得られたPPS量から計算して収率を求めた。
【0073】
[参考例]
撹拌機及び底に弁の付いた1リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム118g(1.00モル)、96%水酸化ナトリウム42.9g(1.03モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)199g(2.01モル)、酢酸ナトリウム27.0g(0.33モル)、及びイオン交換水150gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水210gおよびNMP2gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は1.05モルであった。また、硫化水素の飛散量は0.02モルであった。
【0074】
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)147g(1.00モル)、NMP69g(0.70モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで撹拌しながら、200℃から274℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、274℃で50分保持した後、282℃まで昇温した。次に、オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく攪拌して大半のNMPを除去し、PPSと塩類を含む固形物256gを得た。
【0075】
[実施例1]
参考例で得た固形物50g及びイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケーク51g及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0076】
得られたケークをビーカーに入れ、アセトン200gを加え、65℃のウォーターバス中還流下で30分加熱撹拌した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過しケークを得た。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0077】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.6重量%、収率95%であった。
【0078】
[実施例2]
参考例で得た固形物50g及びイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケーク51g及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0079】
得られたケークをビーカーに入れ、NMP200gを加え、80℃のウォーターバス中で30分加熱撹拌した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過しケークを得た。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0080】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.4重量%、収率95%であった。
【0081】
[実施例3]
参考例で得た固形物50g及びイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケーク51g、イオン交換水277g及び酢酸0.34gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み(pH=3.8)、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、150℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した(pH=4.1)。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0082】
得られたケークをビーカーに入れ、アセトン200gを加え、65℃のウォーターバス中還流下で30分加熱撹拌した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過しケークを得た。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0083】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.3重量%、収率95%であった。
【0084】
[実施例4]
参考例で得た固形物50g及びアセトン200gをビーカーに入れ、65℃のウォーターバス中還流下で30分加熱撹拌した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0085】
得られたケーク及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケークを80℃の温水で3回洗浄/濾過を繰り返した。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0086】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.9重量%、収率95%であった。
【0087】
[比較例1]
参考例で得た固形物50g及びイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。得られたケーク51g及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0088】
得られたケークを80℃の温水で3回洗浄/濾過を繰り返した。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS20gを得た。
【0089】
得られたPPSのクロロホルム抽出量2.4重量%、収率96%であった。この場合、有機溶剤洗浄を施さなかったので、クロロホルム抽出量の高いPPSしか得られなかった。
【0090】
[比較例2]
撹拌機の付いた1リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム118g(1.00モル)、96%水酸化ナトリウム42.9g(1.03モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)199g(2.01モル)、酢酸ナトリウム27.0g(0.33モル)、及びイオン交換水150gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水210gおよびNMP2gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は1.05モルであった。また、硫化水素の飛散量は0.02モルであった。
【0091】
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)147g(1.00モル)、NMP69g(0.70モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで撹拌しながら、200℃から274℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、274℃で50分保持した後、282℃まで昇温した。次に、0.4℃/分で200℃まで徐冷し、その後50℃まで急冷した。顆粒状のPPSと塩類を含むスラリー541gを得た。
【0092】
得られたスラリー106g(NMPを50wt%含む)を80メッシュの篩で固液分離し、溶媒NMPを分離した。その後、メッシュオンの固形物とイオン交換水145gをビーカーに入れ、80℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0093】
得られたケーク45g及びイオン交換水277gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して、内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過し、ケークを得た。
【0094】
得られたケークをビーカーに入れ、アセトン200gを加え、65℃のウォーターバス中還流下で30分加熱撹拌した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過しケークを得た。得られたケークを120℃で1時間熱風乾燥し、更に80℃で24時間で真空乾燥して、乾燥PPS17gを得た。
【0095】
得られたPPSのクロロホルム抽出量1.6重量%、収率84%であった。このようにフラッシュ回収せず徐冷法にて回収する場合、徐冷によって顆粒状のポリマーが生成するので篩分けにて固液分離することが可能であるが、得られたPPSのクロロホルム抽出量は本発明の場合とほとんど変わらないが、ポリマーの収率は低いものであった。また、徐冷に長時間を要し、生産性の点でも劣るものであった。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、オリゴマー量の少ないポリアリーレンスルフィド樹脂を、安価に、高収率で製造することができる。
Claims (4)
- ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分を有機溶剤で洗浄することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
- ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分に、水での洗浄、及び、有機溶剤での洗浄を、行うことを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
- ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で、かつ反応開始から反応終了前までの間で反応系に水を添加することなく反応させてポリアリーレンスルフィドを生成させ、反応終了後に、極性有機溶媒、生成ポリマー、副性アルカリ金属塩を含む反応混合物から、極性有機溶媒をフラッシュ法で除去回収した後、得られたポリマーを含む固形分に、酸性水溶液での洗浄、及び、有機溶剤での洗浄を、行うことを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造されたポリアリーレンスルフィド樹脂。
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