JP2006219666A - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 Download PDF

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Takeshi Higashihara
武志 東原
Atsushi Ishio
敦 石王
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Abstract

【課題】機械的強度に優れ、ガス発生量の低減されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】特定の処理を経た低含水アルカリ金属硫化物を、有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物と接触させて重合させて得られた(A)PAS100重量部に対し、(B)繊維状および/または非繊維状充填材500重量部以下、および/または(C)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基から選択される一種以上の基を有する化合物0.05〜10重量部を配合する。
【選択図】なし

Description

本発明は、機械的強度に優れ、ガス発生量の低減されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。
近年、有機硫黄化合物、特に脂肪族硫黄化合物、芳香族硫黄化合物(チオール、チオケトン、チオエーテル、チオ酸等)の特異な物性が注目され、医薬、農薬、工業薬品などに多用されている。また、硫黄を結合手とする芳香族高分子化合物(ポリアリーレンスルフィド、以下PASと称す場合もある)も多数製造されている。このような含硫黄芳香族高分子化合物は、通常、ハロゲン化芳香族化合物とアルカリ金属硫化物を接触させて反応させて、ハロゲン化アルカリ金属を脱離することによって製造されており、例えばポリアリーレンスルフィドは、ポリハロゲン化芳香族化合物とアルカリ金属硫化物を有機極性溶媒中で接触させて重合させることによって得ることができる。
このPASの具体的な製造方法として、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す場合もある)などの有機アミド溶媒中で、硫化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物と、p−ジクロロベンゼンなどのポリハロ芳香族化合物とを反応させる方法(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、この方法では、低分子量で溶融粘度が低いPASしか得ることができない。また、通常行われている方法は、多量の結晶水を含む硫化ナトリウムを、硫化ナトリウムのイオウ成分1モルあたり1モル以上の有機アミド溶媒中で加熱して、該含水硫化ナトリウムが含有する水を除去することによりスルフィド化剤を調製し、そこへp−ジクロロベンゼンを加えて加熱重合させる方法であり、該含水硫化ナトリウムからの水分を除くのに長時間を要することのみならず、この方法で得られるスルフィド化剤にはスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1.0モル以上の水が残存してしまうため、PASを得るためにも長時間を要するという問題があった。
上記方法における問題点、すなわち反応系中の水分量を制御する方法としては、純度95重量%以上で不純物として含まれるアルカリ金属水硫化物が2重量%以下であるアルカリ金属硫化物無水物を用い、重合系内に水をアルカリ金属硫化物1モル当たり0.1から0.8モル添加し、有機アミド溶媒に対するアルカリ金属硫化物の仕込みモル濃度を2.5〜5モル/リットルとして、同溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを加熱反応させる方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。この方法は、無水のアルカリ金属硫化物を用いるため、系内水分量等のコントロールが容易であり、系内のイオウ成分当たりの水分量を0.8モル以下にすることができると期待できる。しかしながら、この方法では無水のアルカリ金属硫化物を用いることが必須となっており、これを得る際には多大なエネルギーを要し、また長時間が必要であることから、商業生産上十分なものとは言えなかった。また、この方法で得られるPASの重合度も十分高いといえるものではなかった。これは、無水のアルカリ金属硫化物は潮解性や被酸化性が大きく、安定性に欠けるため、酸化物等の不純物が多く含まれやすく、このような無水のアルカリ金属硫化物をPASの製造に用いた場合には、高重合度化が阻害される結果溶融粘度の低いPASしか得ることができないためであると考えられる。
また、アルカリ金属硫化物およびアルカリ土類金属硫化物から選ばれた1種以上であって、水/硫化物のモル比が1.2以下である金属硫化物を、金属塩化物、金属炭酸塩、および金属カルボン酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合助剤と微量の水とで45〜230℃の温度下に前処理した後、前処理した金属硫化物とジハロゲン芳香族化合物とを反応させる方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。この方法では、反応時にアルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たりの水分量が0.5モルの低含水アルカリ金属硫化物を用いているため、反応系内の水分量の低減が可能であることが期待できるが、アルカリ金属硫化物として硫化ナトリウム0.5水和物が用いられており、この硫化ナトリウム0.5水和物は製法が煩雑であるために高価であり、工業用としての適格性を欠いていた。
さらに、反応系中の水分含有量をイオウ源あたり0.3〜0.95モル残存させた状態でポリフェニレンスルフィド(以下、PASと略する場合もある)の製造を行う方法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。この方法では安価な硫化ナトリウム9水和物を脱水して使用しているため、コスト的には有利である。この方法においては、多量の有機アミド溶媒中で硫化ナトリウム9水和物を蒸留するという方法で脱水を行うが、脱水操作後に反応系内に残存する有機アミド溶媒量がアルカリ金属硫化物の硫黄成分1モル当たり0.05モル以上0.8モル未満になるまで有機アミド溶媒の除去を行っていない。よって、この方法で得られる低含水アルカリ金属硫化物は多量の有機アミド溶媒を含んでおり、得られた混合物中の硫黄成分濃度が極めて低かった。したがって、この方法で得られる低含水アルカリ金属硫化物を用いて、PASなど硫黄を結合手とする化合物を合成した場合は、反応系内の硫黄成分濃度が低いため、単位体積当たりで得られるPASが少なく、効率よくPASを得るという観点で十分ではなかった。
さらにまた、安価な原料を用いて、反応系中の水分含有量を低減する方法として、硫黄源と極性の有機化合物から成る水性の混合物を脱水して混合物を形成し(但し、この場合、該硫黄源に対する該極性の有機化合物のモル比は、0.15/1から約0.9/1までの範囲にあるものとし、)、脱水した混合物とポリハロ‐置換の芳香族化合物を、随意的には更に追加の極性の有機化合物の存在で混合して重合用混合物を製造し、そして該重合用混合物を重合反応を生ずるのに有効な条件の下に重合反応させる方法(例えば、特許文献5参照)が提案されている。この方法では、原料が安価であり、低含水アルカリ金属硫化物を安価に得ることが期待できる。しかしながら、硫黄源1モルに対する水分含量を0.8モル未満に脱水するために同文献に具体的に開示された方法は、脱水前に挿入する有機化合物の使用量が少ないものであり、このような方法では、硫黄源と極性の有機化合物から成る水性の混合物を脱水する際に、金属製反応器の腐蝕が起こるため反応器材質として高価な耐蝕材料が必要となるという問題があった。さらに、この方法では、十分な高分子量PASを得ることも困難であった。
一方、PAS樹脂に各種充填材を配合した組成物については多数提案されているが、従来に比し経済的且つ簡単な方法で得られたPAS樹脂に充填材を配合した組成物は知られておらず、ましてやそれにより機械的強度に優れガス発生量の低減されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が得られることは全く知られていない。
特公昭45−3368号公報(第13頁) 特開平4−145127号公報(第2,3頁) 特開昭64−9229号公報(第3〜5頁) 特開昭59−98133号公報(第2頁) 特開平5−239210号公報(第3頁)
本発明は、前述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。したがって、本発明の目的は、経済的且つ簡単な方法で得られたポリアリーレンスルフィドを用いてなり、しかも機械的強度に優れ、ガス発生量の少ないポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明によれば、少なくともアルカリ金属硫化物、有機アミド溶媒及び水からなり、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり、有機アミド溶媒を0.8〜10モル、水を0.8〜20モル含む混合物から有機アミド溶媒及び水を除去して、混合物中の水分量及び有機アミド溶媒量を、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり、それぞれ0.05モル以上0.8モル未満に調整することにより得られた低含水アルカリ金属硫化物を、有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物と接触させて重合させて得られた(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、(B)繊維状および/または非繊維状充填材500重量部以下、および/または(C)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基から選択される一種以上の基を有する化合物0.05〜10重量部を配合してなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
なお、前記(B)繊維状および/または非繊維状充填材の配合量は、(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、5〜350重量部であることが好ましい。
本発明によれば、経済的且つ簡単な方法で得られたポリアリーレンスルフィドを用いてなり、しかも機械的強度に優れ、ガス発生量の少ないポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明に用いる(A)ポリアリーレンスルフィドの製造方法について、アルカリ金属硫化物、有機アミド溶媒、水、低含水アルカリ金属硫化物製造工程、生成低含水アルカリ金属硫化物、PAS、有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物、触媒化合物、重合助剤、分子量調節剤・分岐・架橋剤、重合安定剤、重合工程、ポリマー回収、その他の後処理及び生成PASの順に以下に詳述する。
(1)アルカリ金属硫化物
本発明では、低含水アルカリ金属硫化物の原料としてアルカリ金属硫化物を用いる。アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。なお、水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことをさす。一般的に入手できる安価なアルカリ金属硫化物は水和物または水性混合物であるので、このような形態のアルカリ金属硫化物を用いることが好ましい。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物及び/またはアルカリ金属水酸化物と硫化水素から調製されるアルカリ金属硫化物も、前述のアルカリ金属硫化物と同じと見なして用いることができる。ここで、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調製する場合は、アルカリ金属水硫化物1モルとアルカリ金属水酸化物1モルからアルカリ金属硫化物1モルと水1モルが生成すると見なす。また、アルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調製する場合は、アルカリ金属水酸化物2モルと硫化水素1モルからアルカリ金属硫化物1モルと水2モルが生成すると見なす。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム及びこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができ、水和物または水性混合物が入手のし易さ、コストの観点から好ましい。また、硫化水素は気体状、液体状、水溶液状のいずれの形態で用いても差し障り無い。
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム及びこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水酸化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができ、水和物または水性混合物が、入手のし易さ、コストの観点から好ましい。アルカリ金属水硫化物を用いる場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、アルカリ金属水硫化物のイオウ成分1モルに対し1.0〜1.20モル、好ましくは1.005〜1.15モル、更に好ましくは1.02〜1.10モルの範囲が例示できる。硫化水素を用いる場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、硫化水素1モルに対し2.0〜2.40モル、好ましくは2.01〜2.30モル、更に好ましくは2.04〜2.20モルの範囲が例示できる。
(2)有機アミド溶媒
本発明では、低含水アルカリ金属硫化物の製造に際し有機アミド溶媒を用いる。有機アミド溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、及びこれらの混合物が好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
低含水アルカリ金属硫化物の製造開始時に用いる有機アミド溶媒の量は、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.8〜10モルである必要があり、下限としては0.85モル以上であることが好ましく、0.9モル以上であることがより好ましく、0.95モル以上であることが更に好ましく、1.1モル以上であることがよりいっそう好ましい。上限としては3.0モル以下であることが好ましく、2.0モル以下であることがより好ましく、1.5モル以下であることがよりいっそう好ましい。少なすぎると、反応に金属製容器を用いた際に容器からの金属溶出が多くなる傾向があり、多すぎると反応に要する時間が長くなり経済的に不利となる。
(3)水
本発明では、低含水アルカリ金属硫化物の製造に際し水を用いる。ここでいう水とは、低含水アルカリ金属硫化物の製造を開始する段階で反応系内に存在する全ての水を意味し、反応系に添加する水、アルカリ金属硫化物の水和物及びまたは水性混合物として反応系内に導入される水、含水有機アミド溶媒として反応系内に導入される水、および他の含水化合物として反応系内に導入される水などを全てを含む。また、アルカリ金属硫化物をアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から調製する場合、及び/またはアルカリ金属水酸化物と硫化水素から調製する場合に、アルカリ金属硫化物生成に伴って生成する水も前記した水に含まれるものとする。また、低含水アルカリ金属硫化物の製造の際に共存させる前記以外の成分の反応により水が副生される場合は、この水も前記水に含まれるものとする。
低含水アルカリ金属硫化物の製造開始時の混合物中の水分量は、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.8〜20モルである必要があり、下限としては1.0モル以上であることが好ましく、2.0モル以上であることが好ましい。上限としては15モル以下であることが好ましく、10モル以下であることがより好ましい。少なすぎると、反応に金属製容器を用いた際に容器からの金属溶出が多くなる傾向があり、多すぎると反応に要する時間が長くなり経済的に不利となる。
(4)低含水アルカリ金属硫化物製造工程
本発明の低含水アルカリ金属硫化物の製造方法では、少なくともアルカリ金属硫化物、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり有機アミド溶媒を0.8〜10モル、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり水を0.8〜20モル含む混合物から有機アミド溶媒及び水を除去して、混合物中の水分量及び有機アミド溶媒量を、それぞれアルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.05モル以上0.8モル未満に調整する。ここで、混合物中の水及び有機アミド溶媒の量とは、仕込んだ量(仕込んだ原料から生成する場合はこれも含む)から、反応系外に除去された水及び有機アミド溶媒の量を差し引いた量のことを示す。
前記混合物から水及び有機アミド溶媒を除去した後の混合物中の水分量は、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.05モル以上0.8モル未満であり、0.1〜0.75モルが好ましく、0.1〜0.7モルがより好ましい。さらに後述するPASの製造において、PASの製造を重合溶媒が少ない条件で行う場合、前記水分量は0.1〜0.7モルが好ましく、0.1〜0.6モルがより好ましく、0.15〜0.5モルがよりいっそう好ましい。また、前記混合物から水及び有機アミド溶媒を除去した後の混合物中の有機アミド溶媒量は、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.05モル以上0.8モル未満であり、0.1〜0.75モルが好ましく、0.1〜0.7モルがより好ましい。さらに後述するPASの製造において、PASの製造を重合溶媒が少ない条件で行う場合、前記水分量は0.1〜0.7モルが好ましく、0.1〜0.6モルがより好ましく、0.15〜0.5モルがよりよりいっそう好ましい。少なすぎると生成した低含水アルカリ金属硫化物の粘度が高くなりすぎて取り扱いがし難くなる傾向にあり、多すぎるとPASを製造する際に反応に長時間が必要となる傾向にある。
混合物中の有機アミド溶媒及び水の量を上記範囲に調整する方法としては、調整が可能である限りにおいて特に制限はないが、例えば次のような脱液工程が好ましく採用される。すなわち、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、少なくともアルカリ金属硫化物、有機アミド溶媒及び水からなる混合物を調製し、常圧または減圧下で150℃以上、好ましくは170℃以上に昇温して、有機アミド溶媒及び水分を留去させる方法が例示できる。なお、上記有機アミド溶媒及び水分を留去させる温度の好ましい上限としては280℃である。また、留去を促進するために、撹拌しながら留去を行っても良く、望ましくは不活性ガスの気流を通じて留去を行っても良く、また、トルエンなどを加えて留去を行ってもよい。
また、上記脱液工程により低含水アルカリ金属硫化物を製造するにあたり、脱液工程が少なくとも以下の2工程を含むことが好ましい。
工程1;前記混合物を有機アミド溶媒の沸点以下で脱液して、水分量を仕込んだアルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.8モル〜2.0モルに調整する工程。
工程2;工程1で調製した混合物を有機アミド溶媒の沸点以上で脱液して、水及び有機アミド溶媒を除去し、混合物中の水分量及び有機アミド溶媒量をアルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たりそれぞれ0.05モル以上0.8モル未満に調整する工程。
ここで、工程1の後に連続して工程2を行うことが好ましく、これら工程以外に前処理工程や後処理工程などの付加的な工程があってもよい。また、工程1と工程2は同一の反応容器で行っても良いし、工程1を行った反応容器から反応混合物を異なる容器に移して工程2を行っても差し障り無い。以下、工程1及び工程2に関して詳述する。
<工程1>本発明の低含水アルカリ金属硫化物の製造においては、少なくともアルカリ金属硫化物、有機アミド溶媒及び水を前記範囲の量で含む混合物を有機アミド溶媒の沸点以下で脱液して、水分量を仕込んだアルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.8〜2.0モル、好ましくは0.9〜1.7モル、より好ましくは0.95〜1.5モルに調整する工程1を行うことが好ましい。これらの量が少なすぎても、多すぎても反応に金属製容器を用いた際に容器からの金属溶出が多くなる傾向がある。この脱液の方法としては特に制限はないが、例えば前記した不活性ガス下で常圧もしくは減圧下に加熱して脱液を行う脱液工程を好ましく採用することができる。なお、工程1における脱液は有機アミド溶媒の沸点以下で行うことが好ましく、この具体的な温度は使用する有機アミド溶媒の種類、脱液を行う混合物の組成、脱液を行う際の圧力などによって異なるので一概に規定することはできないが、230℃以下で行うことがより好ましく、210℃以下で行うことが特に好ましい。これにより反応に金属製容器を用いた際に容器からの金属溶出を低減できる傾向にある。また、下限としては所望の範囲に脱液することが可能であれば特に制限はないが、脱液効率の観点から、150℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましい。また、工程1の脱液の際に水と共に有機アミド溶媒も留出しても差し障り無いが、工程1では反応系内の有機アミド溶媒量がアルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.8モル以上であることが好ましく、0.9モル以上であることがより好ましく、0.95モル以上であることが特に好ましく、1.1モル以上であることがよりいっそう好ましい。これにより金属製容器を用いた際に容器からの金属溶出をよりいっそう抑制できる傾向にある。したがって、工程1の脱液の際に水と共に有機アミド溶媒も留出する場合は、留出した有機アミド溶媒を再度分離して反応系内に戻すことが好ましく、この方法としては精留を挙げることができる。
<工程2>本発明の低含水アルカリ金属硫化物の製造においては、工程1で調製した混合物を有機アミド溶媒の沸点以上で脱液して、水及び有機アミド溶媒を除去して、混合物中の水分量及び有機アミド溶媒量を、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たりそれぞれ0.05モル以上0.8モル未満に調整する工程2を行うことが好ましい。工程2で水及び有機アミド溶媒を除去した後の、混合物中の水分量は、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.05モル以上0.8モル未満であり、0.1〜0.75モルが好ましく、0.1〜0.7モルがより好ましい。さらに、後述するPASの製造において、PASの製造を重合溶媒が少ない条件で行う場合、前記水分量は0.1〜0.7モルが好ましく、0.1〜0.6モルがより好ましく、0.15〜0.5モルがよりいっそう好ましい。有機アミド溶媒量は、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.05モル以上0.8モル未満であり、0.1〜0.75モルが好ましく、0.1〜0.7モルがより好ましい。さらに、後述するPASの製造において、PASの製造を重合溶媒が少ない条件で行う場合、前記水分量は0.1〜0.7モルが好ましく、0.1〜0.6モルがより好ましく、0.15〜0.5モルがよりいっそう好ましい。これらの量が少なすぎると生成した低含水アルカリ金属硫化物の粘度が高くなりすぎて取り扱いがしにくくなる傾向にあり、多すぎるとPASを製造する際に反応に長時間が必要となる傾向にある。このような混合物中の有機アミド溶媒及び水の量を調整する方法としては、特に制限はないが、例えば前記した不活性ガス下で常圧もしくは減圧下に加熱して脱液を行う脱液工程を好ましく採用することができる。なお、工程2における脱液は有機アミド溶媒の沸点以上で行うことが好ましく、この具体的温度は使用する有機アミド溶媒の種類、脱液を行う混合物の組成、脱液を行う際の圧力などによって異なるので一概に規定することはできないが、有機アミド溶媒の沸点を超える温度で行うことがより好ましく、210℃以上で行うことがさらに好ましく、230℃以上で行うことが特に好ましい。これにより水及び有機アミド溶媒の脱液が短時間で行える傾向にある。また、上限としては脱液後のそれぞれの含有量が上記範囲内にある限り特に制限はないが、280℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましい。
なお、本発明による低含水アルカリ金属硫化物の調製においては、反応器を2個以上使用し、反応途中の反応混合物を別の反応器に移送して更に反応を継続する工程を含むことが生産効率向上の観点で好ましい。移送の時期に特に制限は無いが、工程1終了後が好ましい時期として挙げられる。また、移送方法に特に制限はないが、加圧条件下で移送する方法や自重を用いて移送する方法が例示できる。
なお、工程1の反応器から工程2で使用する反応器に工程1の調製物を移送し、工程2が終了した後、後述する重合工程を工程2と同一の反応器で行っても異なる反応器で行っても差し支えない。
工程2で使用した反応器と同一反応器に少なくとも極性有機溶媒とジハロゲン化芳香族化合物を加えて後述の重合を行う場合、低含水アルカリ金属硫化物が反応器中に残留することなく効率よくジハロゲン化芳香族化合物と接触できるため、生産効率が向上する。
工程2の終了後、工程2とは別の、重合で使用する反応器に移送する場合では、本発明の低含水アルカリ金属硫化物に付加的処理することなく移送を行っても差し支えないが、工程2終了後、低含水アルカリ金属硫化物に有機極性溶媒を添加してから移送を行ってもよい。これにより低含水アルカリ金属硫化物の流動性を向上させることができ、移送性が良好となる。有機極性溶媒の添加量は、低含水アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.01〜14.2モルが好ましく、0.05〜3モルがより好ましく、0.1〜2モルがいっそう好ましい。添加する有機極性溶媒量がこの範囲内であると、後の重合工程での有機極性溶媒量が多くなりすぎない。本発明では、少ない重合溶媒の使用量でも射出成形および押出成形などの商業的利用の各種用途に適したPASを製造することが可能であるため、低含水アルカリ金属硫化物に添加する有機極性溶媒量をこの範囲内にすることは経済的に有利である。また、低含水アルカリ金属硫化物に有機極性溶媒を添加する時の系内の温度は180℃以上であることが好ましく、190℃以上がより好ましく、200℃以上がよりいっそう好ましい。温度がこの範囲内であれば、有機極性溶媒を添加する前に低含水アルカリ金属硫化物が固化しにくくなる傾向にある。有機極性溶媒を添加する際の系内温度の上限については特に制限はないが、好ましい温度として280℃以下を例示できる。280℃以上では一般に用いられる有機極性溶媒の沸点を大幅に超えるため、溶媒の添加と同時に著しい沸騰が生じやすくなるので、避けることが安全上望ましい。有機極性溶媒を添加する方法は特に制限はないが、例えば、加圧条件下で添加する方法、ポンプを用いて添加する方法、そして自重を用いて添加する方法が例示できる。その際、添加した有機極性溶媒を均一に分散させ、反応器に付着している低含水アルカリ金属硫化物を除去することが効率よく生産する方法として好ましい。また、有機極性溶媒の添加においては、反応器が開放系、密閉系、いずれの系でもよく、低含水アルカリ金属硫化物に含有する水や有機アミド溶媒、更に添加する有機極性溶媒が系外に漏洩しない状態であることが好ましい。
更に、移送後の工程2で使用した反応器に低含水アルカリ金属硫化物が残留する場合には、移送後の工程2で使用した反応器に有機極性溶媒を添加し、反応器を洗浄する方法を付加的に用いることが好ましい。また、この方法における洗浄後の液は工程2とは別の、重合で使用する反応器に移送することが好ましい。洗浄に使用する有機極性溶媒量に特に制限は無いが、有機極性溶媒量が多すぎると、後の重合工程での有機極性溶媒量も多くなる。本発明では、少ない重合溶媒の使用量でも射出成形および押出成形などの商業的利用の各種用途に適したPASを製造することが可能であるため、有機極性溶媒の添加量を低含水アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり好ましくは0.01〜3.2モル、より好ましくは0.05〜2.5モル、更に好ましくは0.1〜2モルに調整することが経済的に有利である。また、移送後の工程2で使用した反応器の洗浄に使用する有機極性溶媒の添加時は、有機極性溶媒を均一に分散させ、反応器に付着している低含水アルカリ金属硫化物を除去することが効率よく生産する方法として好ましい。
(5)生成低含水アルカリ金属硫化物
このようにして調製した低含水アルカリ金属硫化物は、含水量が定量的に調節されているため、有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物と接触させて重合させて製造する、ポリアリーレンスルフィドの製造には特に好適に用いられる。
(6)PAS
本発明におけるPASとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 2006219666
(ただし、式中のR1,R2は水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 2006219666
また、本発明におけるPASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
更に、各種PASはその分子量に特に制限はないが、通常、溶融粘度が5〜5,000Pa・s(300℃、剪断速度1000/秒)の範囲が好ましい範囲として例示できる。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2006219666
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)の他、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられる。
(7)有機極性溶媒
本発明のPASの製造においては、重合溶媒として有機極性溶媒を用いるが、なかでも有機アミド溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、及びこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドンが好ましく用いられる。なお、本発明の低含水アルカリ金属硫化物の製造において使用される有機アミド溶媒も有機極性溶媒に含まれるので、低含水アルカリ金属硫化物に含まれる有機アミド溶媒も有機極性溶媒の範疇と見なすことができる。
本発明においてPASの重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量に特に制限はないが、低含水アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.2〜15モルの範囲が例示できる。ただし、本発明のPASの製造方法では、従来の技術で挙げたような方法と比べてより少ない重合溶媒の使用量でも射出成形及び押出成形などの樹脂の商業的利用の各種用途に適したPASを製造することが可能であるため、重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量は、好ましくは低含水アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり1.0〜4.0モル、より好ましくは1.0〜3.5モル、更に好ましくは1.5〜3.2モルが好ましい範囲として例示でき、ポリマーの生産性の著しい向上を所望する場合は1.5〜2.7モルが好ましく、1.5〜2.6モルが特に好ましい範囲として例示できる。一般に重合溶媒の使用量が少ない方が、単位体積当たりのポリマー生産量が多くなるため経済的に有利であるが、少なすぎると好ましくない反応が起こりやすくなり、多すぎると重合度が上がりにくくなる傾向にあり、また経済的にも不利となることがある。また、多すぎても少なすぎても反応に要する時間が長くなる傾向にあり、経済的に不利となる場合がある。ここで、反応系の有機極性溶媒量は、反応系内に導入した有機極性溶媒から、反応系外に除去された有機極性溶媒を差し引いた量である。
(8)ジハロゲン化芳香族化合物
本発明のPASの製造において使用されるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、及び1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基をも含むジハロゲン化芳香族化合物などを挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベンゼンを80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。また、PAS共重合体を製造するために異なる2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。
ジハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のポリアリーレンスルフィドを得る点から、低含水アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり0.9〜2.0モルの範囲であることが好ましく、0.95〜1.5モルの範囲がより好ましく、1.005〜1.2モルの範囲が更に好ましい。
(9)触媒化合物
本発明では、低含水アルカリ金属硫化物を有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物と接触させて重合させる少なくとも重合の一部を、有機カルボン酸金属塩、脂肪族環状アミン化合物、N−ヘテロ芳香族化合物、有機スルホキシド化合物などから選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、触媒化合物と称する場合もある)の存在下で行うことが好ましい方法の一つである。これにより、重合時の反応速度を向上でき、また極少量の重合溶媒の使用でも重合反応を進行させやすくなる傾向にある。ここで、反応速度の向上は、重合反応に必要なプロセス時間を短時間化し、少量の重合溶媒使用は反応器の単位体積当たりのポリマー生産量を増大するため、経済的に有利なポリマーを生産するために重要なことである。上記触媒化合物の中でも特に有機カルボン酸金属塩を用いることは、後述する重合助剤をかねることができる点で好ましい。また、触媒化合物による反応速度向上作用は反応系内のイオウ成分1モルあたり0.05〜0.8モルの水の存在下で、より好ましくは0.05モル以上0.8モル未満、さらに好ましくは0.1〜0.6モル、特に好ましくは0.15〜0.5モルの水の存在下で発現し易い傾向にあり、この観点で低含水アルカリ金属硫化物を用いて重合反応を行うことは有利である。ここで、触媒化合物が反応速度を向上させる理由については明瞭ではないが、触媒化合物が反応系内のアルカリ金属硫化物と何らかの相互作用をすることにより、アルカリ金属硫化物の反応系への溶解性を向上し、アルカリ金属硫化物とジハロゲン化芳香族化合物との接触確率が向上することにより反応速度が向上することによるものと推測している。
前記有機カルボン酸金属塩は、一般式R(COOM)n (ただし、式中のRは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アミノアルキル基、炭素数2〜20を有するN−アルキルアミノアルキル基及びN−フェニルアミノアルキル基から選ばれる基であり、これらの中でもアルキル基、アリール基及びN−アルキルアミノアルキル基から選ばれる基が好ましい。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選ばれるアルカリ金属、もしくはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれるアルカリ土類金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物が好ましい例として挙げられる。有機カルボン酸金属塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、4−ヒドロキシ酪酸リチウム、4−ヒドロキシ酪酸ナトリウム、N−メチル−4−アミノ酪酸リチウム、N−メチル−4−アミノ酪酸ナトリウム、N−エチル−4−アミノ酪酸リチウム、N−エチル−4−アミノ酪酸ナトリウム、N−フェニル−4−アミノ酪酸リチウム、N−フェニル−4−アミノ酪酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウムから選ばれる一種の化合物及びそれらの混合物などを挙げることができる。有機カルボン酸金属塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩及び重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記有機カルボン酸金属塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く触媒効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウム、セシウム及びアルカリ土類金属塩は反応系への溶解性に劣ると推定しており、安価で、重合系への適度な溶解性を有するナトリウム塩が好ましく用いられる。
前記脂肪族環状アミン化合物の具体例としては、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,4,0]−5−ノネン、ヘキサメチレンテトラミンから選ばれる一種の化合物及びそれらの混合物などを挙げることができる。
前記N−ヘテロ芳香族化合物の具体例としては、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、sym−トリアジン、sym−テトラジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、1,5−ナフチリジン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントリジンから選ばれる一種の化合物及びそれらの混合物などを挙げることができる。
前記有機スルホキシド化合物の具体例としては、ジメチルスルホキシド及び/またはテトラメチレンスルホキシドを挙げることができる。
以上の触媒化合物の中でも、酢酸ナトリウムが、安価で入手も容易であることから特に好ましい。
有機カルボン酸金属塩、脂肪族環状アミン化合物、N−ヘテロ芳香族化合物、有機スルホキシド化合物から選ばれる少なくとも一種の触媒化合物は、水和物または水溶液としても用いることができる。これら触媒化合物の使用量として、反応系内のイオウ成分1モル当たり0.001〜1.0モル、好ましくは0.01〜0.7モル、より好ましくは0.02〜0.6モル、さらに好ましくは0.05〜0.45モルを反応系内に存在させると、特に大きな反応促進効果が得られる傾向にある。したがって、短時間でPASを得るために触媒化合物使用量は前記範囲内にすることが望ましい。
(10)重合助剤
本発明のPASの製造においては、高重合度のPASをより短時間で得るために重合助剤を用いることも可能である。ここで、重合助剤とは得られるPASの粘度を増大させる作用を有する物質をさす。このような重合助剤の具体例としては、例えば、有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸金属塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を同時に用いても差し障り無い。これらのなかでも有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。
有機カルボン酸金属塩は、一般式R(COOM)n (ただし、式中のRは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基から選ばれる基である。Mは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物を好ましい例として挙げることができる。有機カルボン酸金属塩は、水和物または水溶液としても用いることができる。有機カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、及びそれらの混合物などを挙げることができる。有機カルボン酸金属塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩及び重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記有機カルボン酸金属塩の中で、カリウム、ルビジウム及びセシウム塩は反応系への溶解性に劣ると推定しており、安価でかつ反応系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
なお、前述した触媒化合物として有機カルボン酸金属塩を用いた場合、これは触媒化合物としての効果と重合助剤としての効果の両方の効果を発現する場合もある。
これら有機カルボン酸金属塩の使用量は、反応系内のイオウ成分1モルに対し、0.01〜0.7モルの範囲が好ましく、0.02〜0.6モルの範囲がより好ましく、0.05〜0.45モルの範囲がよりいっそう好ましい。上記の範囲未満では、高重合度化効果が不十分になる傾向にあり、上記の範囲を越えて使用しても、それ以上の高重合度化効果は得にくくなる傾向にある。
重合助剤として水を用いる場合は、重合系内の水分量が、反応系内のイオウ成分1モル当たり0.8〜5.0モルである工程を含むことが好ましい。なお、重合系内の水分量を前記範囲にするのは、後述するようにジハロゲン化芳香族化合物の転化率が60モル%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上になった段階が好ましい。重合系内の水分量のより好ましい範囲は、反応系内のイオウ成分1モル当たり0.8〜2.0モルであり、0.85〜1.8モルが更に好ましい。この場合の水分量が上記の範囲未満であると、十分な高重合度化効果が得られない場合があり、一方上記の範囲を越えると、重合時間が逆に長くなるばかりか、反応器内圧の上昇が大きく、反応器により高い耐圧性能を有した反応器が必要となるため、経済的にも安全性の面でも好ましくない傾向にある。
また、重合助剤として水を用いる場合、有機カルボン酸金属塩を同時に用いることが好ましく、これにより重合助剤としての効果をより高めることができ、より少ない助剤の使用量でも短時間で高重合度PASを得ることができる傾向にある。この場合の水分量の好ましい範囲は、反応系内のイオウ成分1モル当たり0.8〜2.0モルであり、0.85〜1.8モルがより好ましい。また、有機カルボン酸金属塩の好ましい使用量の範囲は、反応系内のイオウ成分1モル当たり0.02〜0.6モルの範囲であり、0.05〜0.45モルの範囲がより好ましい。
(11)分子量調節剤・分岐・架橋剤
本発明のPASの製造においては、生成PASの末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物などの分子量調節剤(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ジハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。また、分岐または架橋重合体を形成させるために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物及びハロゲン化芳香族ニトロ化合物などの分岐・架橋剤を併用することも可能である。ポリハロゲン化合物としては、通常に用いられる化合物を用いることができるが、中でもポリハロゲン化芳香族化合物が好ましく、具体例としては、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、及び1,4,6−トリクロロナフタレン等を挙げることができ、中でも1,3,5−トリクロロベンゼン、及び1,2,4−トリクロロベンゼンが好ましい。前記、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物としては、例えばアミノ基、メルカプト基及びヒドロキシル基などの官能基を有するハロゲン化芳香族化合物を挙げることができる。具体例としては、2,5−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロアニリン、2,3−ジクロロアニリン、2,4,6−トリクロロアニリン、2,2’−ジアミノ−4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、及び2,4’−ジアミノ−2’,4−ジクロロジフェニルエーテルなどを挙げることができる。前記、ハロゲン化芳香族ニトロ化合物としては、例えば2,4−ジニトロクロロベンゼン、2,5−ジクロロニトロベンゼン、2−ニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、2,5−ジクロロ−2−ニトロピリジン、及び2−クロロ−3,5−ジニトロピリジンなどを挙げることができる。
(12)重合安定剤
本発明のPASの製造においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、及びアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。前述した有機カルボン酸金属塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、重合反応開始前の反応系内のアルカリ金属硫化物のイオウ成分1モルに対して、通常0.01〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モルの割合で使用することが望ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分になる場合があり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下したりする傾向にある。なお、反応時にアルカリ金属硫化物の一部が分解して、硫化水素が発生する場合には、その結果生成したアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
(13)重合工程
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法では、前述の方法で得られた低含水アルカリ金属硫化物を、有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物と接触させて重合させてポリアリーレンスルフィドを製造するにあたり、重合反応開始後、200℃から260℃までの反応を、平均昇温速度0.1℃/分以上で行う工程(重合工程A)、次いで、250℃以上で反応を継続する工程(重合工程B)を含むことが望ましい。本発明においては、PASの重合を少なくとも重合工程A(以下、工程Aと略する)と重合工程B(以下、工程Bと略する)を含む方法で行うことで、短い重合時間でも効率よく高重合度で溶融粘度の高いポリアリーレンスルフィドを得ることが可能である。以下に工程A及び工程Bについて詳述する。
<工程A>本発明では、低含水アルカリ金属硫化物を有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物と接触させて重合させるに際して、重合反応開始後、200℃から260℃までの反応を、平均昇温速度0.1℃/分以上で行う工程Aを行うことが望ましい。なお、前記の平均昇温速度とは、ある一定の温度t2(℃)からある一定の温度t1(℃)までの温度区間(但しt2<t1とする)を昇温するのに要した時間m(分)から、下記式
平均昇温速度(℃/分)=[t1(℃)−t2(℃)]/m(分)
で計算される平均速度である。従って、前述した平均昇温速度の範囲内であれば、必ずしも一定速度である必要はなく、定温区間があってもよいし、多段で昇温を行っても差し障り無く、本発明の本質を損なわない限りは一時的に負の昇温速度となる区間があっても良い。
なお、前記平均昇温速度は0.1℃/分以上2.0℃/分以下が好ましく、0.5℃/分以上1.5℃/分以下がより好ましい。平均昇温速度が低すぎると高い強度を得るに有効な高重合度化が困難となる傾向にある。平均昇温速度が高すぎると反応の制御が困難になる場合があり、また昇温するためにより大きなエネルギーが必要になる傾向がある。また、反応初期に激しい反応が起こる場合には、240℃以下である程度反応を行った後に、240℃を越える温度に昇温する方法で反応を行う方が好ましい傾向にある。
また、工程Aは有機カルボン酸金属塩、脂肪族環状アミン化合物、N−ヘテロ芳香族化合物、有機スルホキシド化合物から選ばれる少なくとも一種の触媒化合物の存在下で行うことも好ましい。
本発明の工程Aの反応においては、反応器に有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物、本発明による低含水アルカリ金属硫化物を、また必要に応じ触媒化合物を仕込み、反応器中で充分に攪拌、混合し、それから昇温して重合温度で重合させる方法;反応器に有機極性溶媒、本発明による低含水アルカリ金属硫化物及び必要に応じ触媒化合物を仕込み、反応器中で充分に攪拌、混合し、それから昇温して重合温度まで昇温した後、ジハロゲン化芳香族化合物を加え、重合させる方法;反応器中に有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物及び必要に応じ触媒化合物を仕込み、反応器中で充分に攪拌した後、本発明による低含水アルカリ金属硫化物固体もしくはスラリー(水もしくは溶媒による)で加えて重合温度下で重合させる方法;前工程として本発明による低含水アルカリ金属硫化物を調製した後、ここで用いた反応容器に有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物及び必要に応じ触媒化合物を加え、十分に撹拌して重合温度下で重合させる方法;工程Aで用いる反応器とは別の反応器で合成した本発明による低含水アルカリ金属硫化物を、必要に応じて有機極性溶媒を加えてから工程Aで用いる反応器に移送して、有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物及び好ましくは触媒化合物などを加え十分に撹拌して重合温度下で重合させる方法;工程Aで用いる反応器に有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物及び好ましくは触媒化合物を仕込み、これに工程Aで用いる反応器とは別の反応器で調製した本発明による低含水アルカリ金属硫化物を加え十分に撹拌して重合温度下で重合させる方法;工程Aで用いる反応器と同じ反応器で好ましくは触媒化合物存在下で本発明による低含水アルカリ金属硫化物を調製し、この反応器に有機極性溶媒及びジハロゲン化芳香族化合物等を加え十分に撹拌して重合温度下で重合させる方法;工程Aとは異なる反応器で好ましくは触媒化合物存在下で本発明による低含水アルカリ金属硫化物を調製し、好ましくは触媒化合物を含む本発明による低含水アルカリ金属硫化物を工程Aで用いる反応器に移送した後、有機極性溶媒及びジハロゲン化芳香族化合物等を加え十分に撹拌して重合温度下で重合させる方法などを例示できる。
また、工程Aにおける反応系内の水分量は、反応開始時点、すなわち反応系に仕込んだジハロゲン化芳香族化合物(以下DHAと略することもある)の転化率が0の段階において、反応系内のイオウ成分1モル当たり0.05モル以上0.8モル未満であることが好ましく、0.1〜0.75モルが好ましく、0.1〜0.7モルがより好ましい。さらにPASの製造を重合溶媒が少ない条件で行う場合、前記水分量は0.1〜0.7モルが好ましく、0.1〜0.6モルがより好ましく、0.15〜0.5モルがよりいっそう好ましい。少なすぎると重合反応が進行しにくくなる傾向にあり、多すぎると触媒化合物による反応促進効果が発現しにくくなる傾向となる。したがって、本発明による低含水アルカリ金属硫化物以外の諸成分が水を含む場合は、反応前に諸成分の脱水を行い、反応系内の水分量を調整する事が好ましい。また、反応系内の水分量が少ない場合は、好ましくは上記水分量の範囲内で水を添加しても差し障り無い。なお、DHAの転化率は、以下の式で算出した値である。DHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ジハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕]×100%
(b)上記(a)以外の場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕]×100%
また、工程Aで重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量は、反応系内のイオウ成分1モル当たり0.2〜15モルの範囲が例示できるが、好ましくは反応系内のイオウ成分1モル当たり1.0〜4.0モル、より好ましくは1.0〜3.5モル、更に好ましくは1.5〜3.2モルが好ましい範囲として例示でき、ポリマーの生産性の著しい向上を所望する場合は、1.5〜2.7モルが好ましく、1.5〜2.6モルが特に好ましい範囲として例示できる。一般に重合溶媒の使用量が少ない方が、単位体積当たりのポリマー量が多くなるので経済的に有利であるが、少なすぎると好ましくない反応が起こりやすくなり、多すぎると重合度が上がりにくくなる傾向にあり、また経済的にも不利となることがある。また、多すぎても少なすぎても反応に要する時間が長くなる傾向にあり、経済的に不利となる場合がある。
さらに、工程Aにおける反応は、工程Aの終了時のジハロゲン化芳香族化合物の転化率が60モル%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上になるように行うことが望ましく、これにより高強度化に適した高重合度のPASを得やすくなる傾向がある。
<工程B>本発明では、低含水アルカリ金属硫化物を有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物と接触させて重合させるに際して、工程Aに引き続き250℃以上で反応を継続する工程Bを行うことが望ましい。工程Bは255℃〜280℃で行うことが好ましく、260℃〜280℃がより好ましい。温度が250℃未満では反応速度が比較的遅く、短時間で高粘度PASを得ることが困難である。一方、300℃を超えると生成したポリマー成分の分解や、溶媒の劣化が起こりやすくなる傾向にあり、さらに、反応器内圧の上昇が大きくなる傾向にあり、反応器により高い耐圧性能を有した反応器が必要となる場合があるため、経済的にも安全性の面でも好ましくないことがある。
工程Bでの反応は一定温度で行う1段反応、段階的に温度を上げていく多段階反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。また、工程Bの反応時間は使用した原料の種類や量、あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、0.1時間未満では未反応成分の量が増大したり、生成するポリマーが低分子量になる可能性が高く、また40時間以上では経済的に不利となる。好ましい工程Bの反応時間としては、0.5〜10時間が例示できるが、本発明では反応性の優れる低含水アルカリ金属硫化物を用いるため、従来技術に比べ短時間で高粘度なPASを得られるので、0.5〜5時間、更には0.5〜3時間とすることで、目的とする高粘度PASを得ることができる。
工程Bの好ましい反応時間は上述の通りであるが、工程Aに要した時間ma(分)と工程Bに要した時間mb(分)の比、ma/mbは1.5未満が好ましく、1.0未満がより好ましい。Ta/Tbをこのように設定することにより、工程A及び工程Bの合計時間が短い条件でも高重合度のPASを得やすくなる傾向にある。
また、工程Bでは少なくともその一部を反応系内の水分量が、反応系内のイオウ成分1モル当たり0.8〜5.0モル、好ましくは0.8〜2.0モル、より好ましくは0.85〜1.8モルになるように調整して反応を行うことが望ましく、このことは特に高重合度で高粘度なPASを効率的に得るために特に有効である。水の量が上記範囲以下では、所望の高重合度PASを得るのにより長い反応時間を要する傾向にあり、一方、上記範囲以上では反応器内圧の上昇が大きくなる傾向にあり、反応器により高い耐圧性能を有した反応器が必要となる場合がある。重合系内の水分量を調整する際の方法に特に制限はないが、例えば不足分の水を反応系内に圧入する方法が例示できる。
工程Bは工程Aに引き続き連続で行うことが好ましく、工程Aと工程Bは同一の反応器で行っても良いし、工程Aにおける反応混合液を異なる反応器に移送して工程Bを行っても良い。
また、工程Bで重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量は、反応系内のイオウ成分1モル当たり0.2〜15モルの範囲が例示できるが、好ましくは反応系内のイオウ成分1モル当たり1.0〜4.0モル、より好ましくは1.0〜3.5モル、更に好ましくは1.5〜3.2モルが好ましい範囲として例示でき、ポリマーの生産性の著しい向上を所望する場合はも1.5〜2.7モルが好ましく、1.5〜2.6モルが特に好ましい範囲として例示できる。一般に、重合溶媒の使用量が少ない方が単位体積当たりのポリマー量が多くなるので経済的に有利であるが、少なすぎると好ましくない反応が起こりやすくなり、多すぎると重合度が上がりにくくなる傾向にあり、また経済的にも不利となることがある。また、多すぎても少なすぎても反応に要する時間が長くなる傾向にあり、経済的に不利となる場合がある。
なお、本発明の重合には、バッチ方式、連続方式など公知の各重合方式を採用することができる。また、重合の際における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、特に、経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気下が好ましい。反応圧力については、使用した原料及び溶媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存し一概に規定できないので、特に制限はない。
また、高重合度PASをより短時間で得るために、全重合工程のうちの少なくとも一部を前述した重合助剤の存在下で行うことが好ましい。重合助剤の添加時期には特に制限はないが、低含水アルカリ金属硫化物の調製開始前、工程A開始時、工程Aの途中、工程Bの開始時、工程Bの途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、少なくとも工程Bを重合助剤存在下で行うようにすると、短時間で高重合度PASを得やすくなる。重合助剤は、無水物、水和物、水溶液または有機極性溶媒との混合物などいかなる形態で添加してもかまわないが、添加する重合助剤が水を含む場合で、かつ、工程A開始時または工程Aの途中で添加する場合は、重合助剤を添加し終えた段階における反応系内のイオウ成分1モル当たりの水分量を0.05モル以上0.8モル未満にすることが好ましい。
また、高重合度のPASを得るためには、重合の途中でアルカリ金属水酸化物を加えて更に重合を継続することが好ましい。この効果については定かでないが、特にジハロゲン化芳香族化合物の転化率が高くなった際の重合反応を安定化する傾向があり、これにより高重合度化反応が進行しやすくなるためと推測している。アルカリ金属水酸化物の添加時期は、重合の途中であれば特に制限はないが、好ましい添加時期をジハロゲン化芳香族化合物の転化率で示すと、転化率の下限が60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、且つ上限として98%以下、好ましくは95%以下が、好ましい添加時期として例示できる。添加時期が、転化率が好ましい下限未満の場合は副生物が増える傾向にあり、また、上限を越える場合は効果が得にくくなる傾向にある。アルカリ金属水酸化物の中でも水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。アルカリ金属水酸化物の形態に特に制限は無く、無水物、水和物及び水性混合物のいずれの形態で用いても差し障り無いが、水性混合物が入手のし易さ及び取り扱いのし易さの観点で好ましい。また、水性混合物としてアルカリ金属水酸化物を加える方法としては、反応系に圧入する方法が例示できる。
なお、重合の途中でアルカリ金属水酸化物を加えた後に、既に反応系内に存在するアルカリ金属水酸化物以外の化合物の作用によって加えたアルカリ金属水酸化物が他の化合物に変換される場合は、この変換後の化合物をアルカリ金属水酸化物と同様と見なして用いてもよい。すなわち、この変換後の化合物をアルカリ金属水酸化物として重合途中で加えても差し障り無い。
重合途中で加えるアルカリ金属水酸化物の量は特に制限は無いが、重合反応開始前の反応系内のアルカリ金属硫化物のイオウ成分1モルに対して0.01〜0.2モル、好ましくは0.02〜0.15モルの割合で使用することが望ましい。この割合が少ないと効果が得にくい場合があり、多すぎても更なる効果は得にくいため経済的に不利益になる場合がある。
アルカリ金属水酸化物を水和物及び水性混合物などの水を含む形態で加える場合、この水の量は任意で差し障り無いが、この場合アルカリ金属水酸化物を加えた後に反応系内の水分量が変化するため、アルカリ金属水酸化物が含む水の量は留意すべきである。すなわち、前記したように重合の途中であればアルカリ金属水酸化物の添加時期に制限は無く、工程A及び工程Bの任意の段階で行っても差し障り無いが、アルカリ金属水酸化物を加えた後に反応系内の水分量が変化する場合は、加えた後の反応系内の水分量が工程A及び工程Bにおけるそれぞれの好ましい水分量になるようにすることが望ましい。
(14)ポリマー回収
本発明のPASの製造においては、重合工程終了後に、重合工程で得られた、PAS成分及び溶剤などを含む固形物からPASを回収する。回収方法としては、例えばフラッシュ法、すなわち重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法、重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して回収する方法、重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS成分を析出させ、且つ70℃以上、好ましくは100℃以上の状態で濾別することでPAS成分を含む固体を回収する方法等が挙げられる。なおここで、ポリマー成分が析出した状態とは、生成したポリマー成分の少なくとも60%以上が重合溶媒に溶融解しない状態になっている状態である。さらに詳しくは、ある状態の反応系を100℃以下まで急冷した際に得られる重合物中の固形成分を80meshふるいで回収した際に、仕込んだ低含水アルカリ金属硫化物のすべてがPASに転化したと仮定した重量(理論量)を基準として、収率60%以上で回収できる状態である。また、ここで重合反応開始前に系内に存在するアルカリ金属硫化物のイオウ成分のモル量が、ジハロゲン化芳香族化合物のモル量よりも多い場合は、すべてPASに転化することはあり得ない場合もあるが、この場合でも重合反応開始前に系内に存在するアルカリ金属硫化物の量を基準として考えることとする。また、重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却する際の好ましい様態としては、ポリマー成分の少なくとも60%以上が重合溶媒に溶融解した状態から平均速度約1℃/分で冷却した際にポリマー成分が析出した状態に移行する温度Ts(℃)に対して、少なくともTs±10℃における平均冷却速度が0.01から2℃/分である様態が例示できる。ここで、平均冷却速度とは、ある一定の温度t1(℃)からある一定の温度t2(℃)までの温度区間(但しt1>t2)を冷却するに要した時間m(分)から、下記式
平均冷却速度(℃/分)=[t1(℃)−t2(℃)]/m(分)
で計算される平均速度である。したがって、前述した冷却速度の範囲内であれば、必ずしも一定速度である必要はなく、定温区間があってもよいし、多段で冷却を行っても差し障り無い。なお、前記したTs(℃)としては、例えば前述した有機極性溶媒の好ましい使用量範囲においては約180℃から約250℃が例示できる。
このようにして得られた固体のPASを含む生成物は、有機溶媒及び/または水で洗浄することが好ましい。
固体のPASを含む生成物を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PASを分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、及びベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、及びクロロホルムなどの使用が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン及び/またはアセトンがより好ましい。また、これらの有機溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPASを浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。
有機溶媒でPASを洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。
PASと有機溶媒の割合は、有機溶媒の多いほうが好ましいが、通常、有機溶媒1リットルに対し、PASが300g以下の浴比が選択される。
なお、回収方法として重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して回収する方法を用いて、粒状のPASを含むスラリー状態で固体のPASを含む生成物を得た場合は、有機溶媒による洗浄を行う前に、前記スラリーの濾別を行い、続いて有機溶媒による洗浄を行うことが好ましい。このような手順を踏むことで、同量の有機溶剤を用いた際により高い洗浄効果を得られることが多い。なお、濾別の方法に特に制限はないが篩い等による濾別、遠心分離による濾別、濾布を用いた濾別などを例示できる。
また固体のPASを含む生成物から残留有機溶媒やイオン性不純物を除去するために、水で数回洗浄することが好ましい。
PASを水で洗浄する場合の方法としては、水にPASを浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。
水でPASを洗浄する際の洗浄温度は20℃〜220℃が好ましく、50℃〜200℃が更に好ましい。20℃未満だと副生成物の除去が困難となり、220℃を越えると、高圧になり安全上好ましくない。
水洗浄で使用する水は、蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましいが、必要に応じてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、アクリル酸、クロトン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などの有機酸性化合物及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物及びアンモニウムイオンなどを含む水溶液を用いてもよい。
100℃以上の水で洗浄を行う熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPASを投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PASと水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PAS200g以下の浴比が選択される。
(15)その他の後処理
かくして得られたPASは、常圧下および/または減圧下に乾燥する。かかる乾燥温度としては、120〜280℃の範囲が好ましく、140〜250℃の範囲がより好ましい。乾燥雰囲気は、窒素、ヘリウム、減圧下などの不活性雰囲気でも、酸素、空気などの酸化性雰囲気、空気と窒素の混合雰囲気の何れでも良いが、減圧下で行うことが好ましく、特に常圧下で乾燥を行って水分等を除去した後、減圧下で再度乾燥することが好ましい。乾燥時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜30時間が好ましく、1〜20時間がさらに好ましい。
本発明において得られたPASを、揮発性成分を除去するために、或いは架橋高分子量化するために、酸素含有雰囲気下、130〜260℃の温度で処理することも可能である。
架橋高分子量化は抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行う場合、その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また酸素濃度2体積%未満、更には1体積%未満とすることが望ましい。減圧乾燥することも好ましい方法の一つである。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間が更に好ましい。
架橋高分子量化を目的として乾式熱処理する場合、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また酸素濃度2体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。処理時間は、1〜100時間が好ましく、2〜50時間がより好ましく、3〜25時間が更に好ましい。
加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、上記(A)ポリアリーレンスルフィドに対し、下記(B)および/または(C)成分を配合してなるものであり、(B)成分または(C)成分のいずれか、もしくは(B)成分と(C)成分を併用して配合することが可能である。以下にこれらについて説明する。
(B)繊維状および/または非繊維状充填材を、(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、500重量部以下、
(C)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基から選択される一種以上の基を有する化合物を、(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、0.05〜10重量部。
まず、本発明で用いられる(B)繊維状充填材および/または非繊維状充填材について説明する。本発明における繊維状充填材とは、長さ/直径比が20以上のものと定義する。
本発明で用い得る繊維状充填材としては、ガラス繊維(通常配合前の繊維長1〜5mm、繊維直径1〜25μm)、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、及び鉱物繊維などが挙げられる。一方、非繊維状フィラーとしては、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、ガラス粉などの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、グラファイト、カーボンブラック、フラーレン及びシリカなどが挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、及びエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
かかる(B)繊維状および/または非繊維状充填材を配合する場合の配合量は、(A)
ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、500重量部以下の範囲が選択され、5〜350重量部の範囲がより好ましい。(B)繊維状および/または非繊維状充填材の配合量が500重量部を越えると、溶融流動性が著しく阻害されるため好ましくない。
次に、(C)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基から選択される一種以上の基を有する化合物について説明する。本発明においては、上記(C)成分を配合することにより、より優れた機械的強度、ウェルド強度、低バリ性、及びエポキシ樹脂などとの密着性を付与することができる。(C)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基から選択される一種以上の基を有する化合物を配合する場合の配合量は、(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、0.05〜10重量部が選択され、より好ましくは0.1〜5重量部である。
かかる、(C)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基から選択される一種以上の基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2.2.5.5.−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル、ビスフェノールの替わりにハロゲン化ビスフェノールを用いたもの、ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系化合物等々のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油等の線状エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、及びジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂などが挙げられる。
またその他ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂は、エポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。また、ノボラック型フェノール樹脂はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。原料のフェノール類としては特に制限はないがフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p-ターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびこれらの縮合物が挙げられる。
さらに(C)化合物として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランを添加してもよい。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、及びγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
さらに、本発明のPAS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の樹脂を添加配合しても良い。その具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及び四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、及びその他、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えるとPAS樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
本発明のPAS樹脂組成物は、通常溶融混練によって得られる。溶融混練機は、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に供給して、PAS樹脂の融解ピーク温度+5〜100℃の加工温度の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
また、本発明のPAS樹脂組成物は、配合物を固体状態で錠剤形に圧縮して固め、これを射出成形などの成形に供する方法も採用することができる。
本発明により得られるPAS樹脂組成物は、優れた機械的特性、低ガス性とともに耐熱性、耐薬品性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することができる。また、本発明の低含水アルカリ金属硫化物は、その製造における金属製反応器からの金属溶出量が少ないため、これを用いて得られるPASは、白色度が高く、高い白色度が要求される用途のみならず、カラーリングが必要な用途にも好適に用いることが可能である。なお、ここで白色度とは、例えばカラー測定機を用いて乾燥した粉粒状ポリマーを測定したL値で表すことができる。PASを用いる各種用途へのより広い適用のためには、PASの白色度はL値で55以上が好ましく、60以上がより好ましい。
また、本発明のPAS樹脂組成物の用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、燃料タンク、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー等の自動車・車両関連部品、及びその他各種用途が例示できる。
以下、本発明の方法を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、物性の測定法は以下の通りである。
[ポリマー収率]
PASの収率は、重合開始前の反応器中のイオウ成分が全てPASに転化したと仮定した重量(理論量)に対する、PASの収量の割合とした。イオウ成分がジハロゲン化芳香族化合物よりも過剰に仕込まれた場合は、すべてPASに転化することはあり得ない場合もあるが、その場合でもイオウ成分の量を基準として考えることとする。
[ポリマーの溶融粘度]
ポリマーの溶融粘度は東洋精機社製メルトインデックサF−B01を用いてメルトフローレート(単位g/10分)として測定した。測定は穴径2.096mm、長さ8.00mmのオリフィスを用いて、温度315.5℃、荷重5kgの条件で行った。サンプルのメルトインデックサへの仕込量は約7gとし、装置へサンプルを投入し1分経過後にピストンを挿入し、更に4分経過後ピストンに荷重をのせた際にポリマー約2.5gが流出する時間を測定して行った。[曲げ強度]射出成形片を用い、ASTM−D790に従って曲げ強度を測定した。
[ガス発生量]
配合物を溶融混練/1晩乾燥して得られた樹脂組成物ペレットを、130℃で3時間予備乾燥した後、約10gアルミカップに精秤した。これを320℃で2時間処理した際の加熱減量を測定した。加熱減量が少ないほどガス発生量が少ないと言える。
[参考例1]
SUS316製の攪拌機付き70リットルオートクレーブを用いて、まず低含水硫化ナトリウムの調製を行い、次いでポリフェニレンスルフィドの重合反応を行った。本参考例では、重合時のNMP使用量を硫黄源1モルに対し3.0モル用いて重合を行った。
<低含水硫化ナトリウムの調製>
<工程1>
SUS316製の攪拌機付き70リットルオートクレーブに、濃度48wt%の水硫化ナトリウム水溶液8.18kg(水硫化ナトリウム換算で70.0モル)、純度96%水酸化ナトリウムを水10.50kgに溶解した水酸化ナトリウム水溶液13.53kg(水酸化ナトリウム換算で72.8モル)、NMP8.33kg(84モル)及び無水酢酸ナトリウム1.15kg(14モル)を室温で仕込んだ。仕込んだ水硫化ナトリウムが全て硫化ナトリウムに変換されると仮定した場合の、硫化ナトリウムのイオウ成分1モルに対する水の量は12.7モル、NMPの量は1.2モルであった。
オートクレーブ上部にバルブを介して充填剤入りの精留塔を取り付け、常圧で窒素を通じて撹拌しながら、NMPの沸点である205℃まで約1.5時間かけて徐々に加熱して脱液を行い、留出液14.35kgを得た。
この留出液をガスクロマトグラフ法で分析したところ、留出液の組成は水14.25kg、NMPが0.11kgであり、この段階では反応系内に水が1.77kg(98.4モル)、NMPが8.22kg(82.9モル)残存していることが判った。
<工程2>
引き続き加熱を継続し、約1.5時間かけて約255℃まで徐々に昇温して留出液6.60kgを得た。この留出液をガスクロマトグラフ法で分析したところ、留出液の組成は水1.25kg、NMPが5.35kgであった。したがって、反応系内には水が0.52kg(28.8モル)、NMPが2.87kg(29.0モル)残存しており、イオウ成分1モルあたり0.41モルの水及び0.41モルのNMPを含む低含水硫化ナトリウムを調製できたことがわかる。なお、工程1及び工程2を通して反応系から飛散した硫化水素は0.49モルであった。
ついで、上記で得られた低含水硫化ナトリウムを用いてPPSの合成を下記工程A及び工程Bによって行った。
<PPSの重合>
工程2の終了後オートクレーブ上部のバルブを閉じた後、約200℃まで冷却した後、オートクレーブ上部に耐圧バルブを介してオートクレーブ内部と連結する耐圧容器を取り付け、オートクレーブ内部を窒素ガス下に密封した。耐圧容器を用いて、液状のp−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.47kg(71.2モル)及びNMP17.80kg(179.6モル)を加圧窒素を用いた圧入によりオートクレーブ内に加えた。この段階における、反応系内のイオウ成分1モル当たりの水の量は0.41モル、NMP量は3.0モルであった。
<工程A>
400rpmで撹拌しながら、200℃から260℃まで連続的に60分かけて昇温した。工程Aにおける平均昇温速度は1.0℃/分、工程Aに要した時間maは60分であった。
<工程B>
工程Aに引き続き、260℃から274℃まで連続的に14分かけて昇温した後、274℃で10分保持した。ついで反応系内に水1.36kg(75.4モル)を圧入した。これにより反応系内のイオウ成分1モルに対する反応系内の水の量は1.50モルとなった。更に274℃で136分保持した後、反応を終了し、室温近傍まで急冷して内容物を取り出した。
内容物中にはポリマーの粒子が分散しており、内容物の色は薄い灰色であった。また内容物を取り出した後の反応器内壁は、接液部のみが若干茶色く着色しているものの金属光沢が残っており、低含水硫化ナトリウムの合成及びPPSの重合に際して反応器はほとんど腐食していないことがわかった。
<ポリマー回収>
内容物を約70リットルのイオン交換水で希釈しスラリーとして70℃で30分撹拌、洗浄後、ガラスフィルターで濾別して固形物を得た。得られた固形物を前記同様に、約70リットルのイオン交換水で洗浄、濾別する操作を3回繰り返した。
このようにして得られた固形物を、130℃で熱風乾燥し、乾燥ポリマーを得た。ポリマー収率はほぼ100%、ポリマーのメルトフローレートは213g/10分であった。
[参考例2]
SUS316製の攪拌機付き70リットルオートクレーブを用いて、まず低含水硫化ナトリウムの調製を行い、次いでポリフェニレンスルフィドの重合反応を行った。本参考例では、重合時のNMP使用量を硫黄源1モルに対し2.5モルに減じて重合を行った。重合溶媒の使用量が少ないため1バッチ当たりのPAS生産量を上げられるため経済性に優れた方法である。
PPSの重合工程において加えるNMPを14.35kg(144.8モル)に変更した以外は、参考例1と同様に低含水硫化ナトリウムの調製及びPPSの重合を行った。重合後に得られた内容物及び内容物取り出し後の反応器内壁の状態は参考例1とほぼ同様であった。次いで、参考例1と同様にポリマー回収を行ったところ、ポリマー収率はほぼ100%、ポリマーのメルトフローレートは223g/10分であった
[参考例3]
ここでは、PPSの重合において低含水硫化ナトリウムを用いず、重合時のNMP使用量を硫黄源1モルに対し3.0モルにして重合を行った場合の結果を示す。
<含水硫化ナトリウムの調製>
<工程1>
水酸化ナトリウムを、純度96%水酸化ナトリウムを水10.50kgに溶解した水酸化ナトリウム水溶液13.49kg(水酸化ナトリウム換算で71.8モル)とした以外は、参考例1と同様に原料を仕込んだ。仕込んだ水硫化ナトリウムが全て硫化ナトリウムに変換されると仮定した場合の硫化ナトリウムのイオウ成分1モルに対する水の量は12.7モル、NMPの量は1.2モルであった。
オートクレーブ上部にバルブを介して充填剤入りの精留塔を取り付け、常圧で窒素を通じて撹拌しながら、NMPの沸点である205℃まで約1.5時間かけて徐々に加熱して脱液を行い、留出液14.35kgを得た。
この留出液をガスクロマトグラフ法で分析したところ、留出液の組成は水14.25kg、NMPが0.11kgであり、この段階では反応系内に水が1.77kg(98モル)、NMPが8.22kg(82.9モル)残存していることが判った。
<工程2>
引き続き加熱を継続し、約1.5時間かけて約235℃まで徐々に昇温して留出液0.56kgを得た。この留出液をガスクロマトグラフ法で分析したところ、留出液の組成は水0.42kg、NMPが0.14kgであった。
よって、反応系内には水が1.35kg(75.1モル)、NMPが8.08kg(81.5モル)残存しており、得られた硫化ナトリウムはイオウ成分1モルあたり1.07モルの水および1.17モルのNMPを含む含水硫化ナトリウムであることがわかる。
なお、工程1及び工程2を通して反応系から飛散した硫化水素は0.84モルであった。
<PPSの重合>
工程2の終了後オートクレーブ上部のバルブを閉じた後、約200℃まで冷却した後、オートクレーブ上部に耐圧バルブを介してオートクレーブ内部と連結する耐圧容器を取り付け、オートクレーブ内部を窒素ガス下に密封した。耐圧容器を用いて、液状のp−DCB10.42kg(70.9モル)及びNMP12.49kg(126.0モル)を加圧窒素を用いた圧入によりオートクレーブ内に加えた。この段階における、反応系内のイオウ成分1モル当たりの水の量は1.08モル、NMP量は3.0モルであった。
<工程A>
400rpmで撹拌しながら、200℃から260℃まで連続的に60分かけて昇温した。工程Aにおける平均昇温速度は1.0℃/分、工程Aに要した時間maは60分であった。
<工程B>
工程Aに引き続き、260℃から274℃まで連続的に14分かけて昇温した後、274℃で10分保持した。ついで反応系内に水0.52kg(28.7モル)を圧入した。これにより反応系内のイオウ成分1モルに対する反応系内の水の量は1.50モルとなった。更に274℃で136分保持した後、反応を終了し、室温近傍まで急冷して内容物を取り出した。
<ポリマー回収>
ポリマーの回収を参考例1と同様に行った。重合後に得られた内容物のポリマー収率はほぼ100%、ポリマーのメルトフローレートは243g/10分であった。
[参考例4]
ここでは、PPSの重合において低含水硫化ナトリウムを用いず、重合時のNMP使用量を硫黄源1モルに対し2.5モルに減じて重合を行った場合の結果を示す。
PPSの重合工程において加えるNMPを9.06kg(91.4モル)に変更した以外は、参考例3と同様に低含水硫化ナトリウムの調製及びPPSの重合を行った。重合後に得られた内容物は、参考例1〜2とは異なる不快臭を放つ茶色く着色したものであった。次いで、参考例1と同様にポリマー回収を行ったところ、ポリマー収率は約94%、ポリマーの溶融粘度は低くメルトフローレートの測定は不可能であった。
参考例4より、PPSの重合において低含水硫化ナトリウムを用いず、重合時のNMP使用量を硫黄源1モルに対し2.5モルに減じた場合には溶融粘度の高いPPSを得ることができないことがわかる。
[実施例1〜4]
表1に示す各成分を表1に示す割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機で、シリンダー温度を320℃に設定し、200rpmのスクリュー回転にて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。130℃で1晩乾燥したペレットを用い、射出成形(東芝機械社製IS100FA、シリンダー温度320℃、金型温度150℃により試験片を調製した。各サンプルの強度、加熱減量を測定した結果は表1に示すとおりであった。
[比較例1〜2]
参考例3、4のPPSを使用した以外は、実施例1と同様なペレタイズ、評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。強度、ガス発生量に劣った材料であった。
Figure 2006219666
なお、表1における充填材及び添加剤の内容は次のとおりである。
充填材1 ガラス繊維:長さ3mm、直径10μm、
充填材2 炭酸カルシウム:金平鉱業社製KSS−1000、
添加剤1 3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、優れた機械的特性、低ガス性とともに耐熱性、耐薬品性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することができるため、電気・電子部品、音声機器部品、家庭・事務電気製品部品、機械関連部品、光学機器・精密機械関連部品、水廻り部品、自動車・車両関連部品及びその他各種用途にとって極めて有用である。

Claims (2)

  1. 少なくともアルカリ金属硫化物、有機アミド溶媒及び水からなり、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり、有機アミド溶媒を0.8〜10モル、水を0.8〜20モル含む混合物から有機アミド溶媒及び水を除去して、混合物中の水分量及び有機アミド溶媒量を、アルカリ金属硫化物のイオウ成分1モル当たり、それぞれ0.05モル以上0.8モル未満に調整することにより得られた低含水アルカリ金属硫化物を、有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物と接触させて重合させて得られた(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、(B)繊維状および/または非繊維状充填材500重量部以下、および/または(C)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基から選択される一種以上の基を有する化合物0.05〜10重量部を配合してなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 前記(B)繊維状および/または非繊維状充填材の配合量が、(A)ポリアリーレンスルフィド100重量部に対し、5〜350重量部である請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
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