JP5125461B2 - リチウム空気電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム空気電池に関する。
従来、リチウム空気電池としては、リチウム酸化物又はリチウム過酸化物を含み酸素を酸化還元する正極とリチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物質を含む負極と正極と負極との間に介在する電解質とを備え充放電する二次電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された二次電池は、炭素質物質により負極表面に金属リチウムが析出するのを防止するため、充放電サイクルの寿命がより向上している。
特開2005−166685号公報
しかしながら、この特許文献1に記載された電池では、正極側については具体的に検討されておらず、放電時に正極で酸素の還元反応が十分に進まないことがあり、そのようなときには、高い電圧で放電することができなかったり、放電容量が小さくなってしまっていた。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、より高い電圧で放電することができるリチウム空気電池を提供することを目的の一つとする。また、より大きな放電容量を有するリチウム空気電池を提供することを目的の一つとする。
上述した目的を達成するために、鋭意研究したところ、本発明者らは、正極活物質として酸素を利用するリチウム空気電池において、リチウム負極と、金を含む触媒を備えた正極と、正極とリチウム負極との間に介在する非水電解質とを備えたリチウム空気電池を作製したところ、より高い電圧で放電し、より大きな放電容量を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のリチウム空気電池は、リチウム負極と、金を含む触媒を備えている正極と、前記正極と前記リチウム負極との間に介在する非水電解質と、を備えたものである。
本発明のリチウム空気電池によれば、より高い電圧で放電することができる。また、より大きな放電容量を有するものとすることができる。
本発明のリチウム空気電池において、リチウム負極は、例えば金属リチウムであってもよいし、リチウム合金であってもよいが、金属リチウムであることが好ましい。リチウム合金は、例えばアルミニウムやスズ、マグネシウム、インジウム、カルシウムなどとリチウムとの合金であってもよい。
本発明のリチウム空気電池において、正極は、金を含む触媒を備えている。この触媒は、触媒成分としての金を担体に担持したものとしてもよい。担体としては、酸化物、ゼオライト、粘土系鉱物、カーボンなどが挙げられ、このうち酸化物やカーボンが好ましい。酸化物としては、特に限定されるものではないが、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、チタニアなどの酸化物のほか、これらのうち複数を組み合わせた酸化物としてもよい。また、Ce,Pr,Sm,Eu,Tb,Tm,Yb,Sb,Te,Bi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Nb,Mo及びWから選ばれる金属を少なくとも一種以上含有する酸化物としてもよい。このうち、酸素のバッファとして機能することから、セリウムを含む酸化物が好ましく、例えばセリウム−ジルコニウム複合酸化物やセリウム−アルミニウム複合酸化物がより好ましい。カーボンとしては、ケッチェンブラックやアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類でもよいし、鱗片状黒鉛のような天然黒鉛や人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類でもよいし、木炭や石炭などを原料とする活性炭類でもよいし、合成繊維や石油ピッチ系原料などを炭化した炭素繊維類でもよい。また、正極は、上述した触媒が正極の総重量に対して0.01〜50重量%を占めていることが好ましい。0.01重量%以上では触媒の効果が十分に得られるし、50重量%以下では正極に含まれる他の成分(導電材やバインダなど)が相対的に低くなりすぎることがないため導電性や機械的強度の低下などを抑えることができる。また、正極に含まれる金の量としては、正極の総重量に対して0.001〜15重量%であることが好ましい。
本発明のリチウム空気電池において、正極は、導電材を含んでいてもよい。導電材としては、導電性を有する材料であれば特に限定されない。例えば、上述したカーボンブラック類でもよいし、グラファイト類でもよいし、活性炭類でもよいし、炭素繊維類でもよい。また、金属繊維などの導電性繊維類でもよいし、銅や銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属粉末類でもよいし、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料でもよい。また、これらを単体で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明のリチウム空気電池において、正極は、バインダを含んでいてもよい。バインダとしては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などが挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明のリチウム空気電池において、正極は、例えば上記触媒と導電材とバインダとを混合したあと、集電体にプレス成形して形成してもよい。集電体としては、酸素の拡散を速やかに行わせるため、網状やメッシュ状など多孔体を用いることが好ましく、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム、銅などの多孔体の金属板を用いることができる。なお、この集電体は、酸化を抑制するためにその表面に耐酸化性の金属または合金の被膜を被覆してもよい。
本発明のリチウム空気電池において、正極活物質として、空気を用いてもよいし、酸素を用いてもよい。
本発明のリチウム空気電池において、電解質については、支持塩を含む非水系電解液などを用いることができる。支持塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、LiPF6,LiClO4,LiAsF6,LiBF4,Li(CF3SO22N,Li(CF3SO3),LiN(C25SO2)などの公知の支持塩を用いることができる。これらの支持塩は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。支持塩の濃度としては、0.1〜2.0Mであることが好ましく、0.8〜1.2Mであることがより好ましい。電解液としては、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニルカーボネート等がある。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等がある。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等がある。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等がある。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等がある。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明のリチウム空気電池は、リチウム負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム空気電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
本発明のリチウム空気電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。本発明のリチウム空気電池の一例を図1に模式的に示す。このリチウム空気電池10は、集電体12に形成された正極13と、集電体14に隣接するリチウム負極15との間に電解液18を備えたものである。正極13には電解液18側にセパレータ17が設けられている。この正極13は、担体16aに担持された触媒成分16bを含む触媒16と、導電材13aとがバインダ13bによりプレス成形されて作製されている。
[実施例1]
正極に用いる触媒は、次のようにして作製した。最終生成物であるセリア:ジルコニアの重量比が5:1となるように硝酸セリウムと硝酸ジルコニルとを混合した水溶液を調製し、ビーカ中で撹拌しながらアンモニア水を滴下して中和し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を大気中で400℃まで加熱し、5時間保持して、沈殿に含まれる硝酸アンモニウムを蒸発・分解したあと、更に大気中で600℃、5時間焼成し、セリア−ジルコニア固溶体粉末(セリウム−ジルコニウム複合酸化物)を得た。なお、この固溶体粉末の比表面積を、マイクロデータ製MICROSORP 4223IIにより窒素吸着の1点BET法で測定したところ、65m2/gであった。この得られた固溶体粉末を担体とし、金を蒸着することによりその表面に担持し触媒を得た。金の担持量は、担体の粉末100重量部あたり0.6重量部であった。
正極は次のようにして作製した。上記得られた触媒を14.6重量部、カーボン(デグサ製Printex)を83重量部、ポリテトラフルオロエチレン(クレハ製)2.4重量部の比率で混合し、薄膜状に成形したものを5mgのカーボンが含まれるよう秤量し、ニッケル製のメッシュに圧着し真空乾燥を行い、リチウム空気電池の正極とした。負極には、直径10mm、厚さ0.5mmの金属リチウム(田中貴金属製)を用いた。そして、これらを用いて北斗電工製のF型電気化学セル20を組み立てた。F型電気化学セル20を図2に示す。まず、SUS製のケーシング21に負極25を設置し、負極25に対向する側にセパレータ27(タピルス製E25MMS)を設けた正極23を負極25に対向するようにセットし、非水電解液として、1Mの6フッ化リン酸リチウムを支持塩としエチレンカーボネート30重量部とジエチルカーボネート70重量部からなる溶液(富山薬品製)を電解液28として正極23と負極25との間に注入した。その後、正極23に発泡ニッケル板22を載せ、その上から空気が正極23側へ流通可能な押さえ部材29で押し付けることにより、セルを固定した。このようにして実施例1のリチウム空気電池を得た。なお、図示しないが、ケーシング21は正極23と接触する上部と負極25と接触する下部とに分離可能であり、上部と下部との間に絶縁樹脂が介在している。これにより、正極23と負極25とは電気的に絶縁されている。
[実施例2]
正極に用いる触媒は、次のようにして作製した。最終生成物であるセリア:アルミナの重量比が89:11となるよう硝酸セリウムと硝酸アルミニウムとを混合した水溶液を調製し、ビーカ中で撹拌しながらアンモニア水を滴下して中和し、沈殿を生成させた。得られた沈殿を大気圧中で400℃まで加熱し、5時間保持して、沈殿に含まれる硝酸アンモニウムを蒸発・分解したあと、更に大気中600℃で5時間焼成し、セリア−アルミナ固溶体粉末(セリウム−アルミニウム複合酸化物)を得た。なお、この固溶体粉末の比表面積を実施例1と同様に測定したところ、90.1m2/gであった。この得られた固溶体粉末を担体とし、金を蒸着することによりその表面に担持し触媒を得た。金の担持量は、担体の粉末100重量部あたり0.7重量部であった。得られた触媒を用い、上述した実施例1と同様の手法で正極を作製すると共に、F型電気化学セル20を組み立て、これを実施例2とした。
[比較例1]
触媒として二酸化マンガン(三井金属鉱山製)を2.5重量部、カーボン(デグサ製Printex)95重量部、ポリテトラフルオロエチレン(クレハ製)2.4重量部の比率で混合し、薄膜状に成形したものを5mgのカーボンが含まれるよう秤量し、ニッケル製のメッシュに圧着し真空乾燥を行い、リチウム空気電池の正極とした以外は、実施例1と同様にして比較例1のリチウム空気電池を得た。
[放電試験]
このようにして得られたF型電気化学セル20を、北斗電工製の充放電装置(型名HJ1001SM8A)にセットし、正極23と負極25との間で50.5mAの電流を流して開放端電圧が2.0Vになるまで放電した。この放電試験は、25℃で行った。図3は、放電試験における電圧と放電容量の変化を表すグラフである。また、表1に放電容量が2500mAh/gまでの平均電圧及び放電容量を示す。この結果より、実施例1及び実施例2の金を担持したセリウム−ジルコニウム複合酸化物及びセリウム−アルミニウム複合酸化物を触媒とする正極を備えたリチウム空気電池では、比較例1に比べ、より高い平均電圧を示した。また、触媒活性の低下が起きにくいため、より高い放電容量を示した。なお、白金を触媒成分として正極を作成して同様の実験を行ったが、比較例1と同様の結果であった。
Figure 0005125461
本発明のリチウム空気電池は、主に電気化学産業に利用可能である。
本発明のリチウム空気電池の模式図である。 F型電気化学セル20の断面図である。 放電試験における電圧と放電容量の変化を表すグラフである。
符号の説明
10 リチウム空気電池、12,14 集電体、13 正極、13a 導電材、13b バインダ、15 リチウム負極、16 触媒、16a 担体、16b 触媒成分、17 セパレータ、18 電解液、20 F型電気化学セル、21 ケーシング、22 発泡ニッケル板、23 正極、25 負極、27 セパレータ、28 電解液、29 押さえ部材。

Claims (5)

  1. リチウム負極と、
    金を含む触媒を備えている正極と、
    前記正極と前記リチウム負極との間に介在する非水電解質と、を備え
    前記正極は、セリウムを含む複合酸化物上に前記金を担持した触媒を備えている、リチウム空気電池。
  2. 前記酸化物は、セリウム−ジルコニウム複合酸化物である、請求項に記載のリチウム空気電池。
  3. 前記酸化物は、セリウム−アルミニウム複合酸化物である、請求項に記載のリチウム空気電池。
  4. 前記正極は、前記触媒が該正極の総重量に対して0.01〜50重量%を占めている、請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウム空気電池。
  5. 前記負極は、金属リチウムにより形成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウム空気電池。
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