JP5115531B2 - ガス電池およびガス電池の使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガス電池およびガス電池の使用方法に関する。
従来、負極活物質に金属を用い、正極活物質に空気中の酸素を用いる空気電池が知られている。こうした空気電池では、正極活物質である酸素を電池内に内蔵する必要がないため、高容量化が期待されている。このような空気電池として、例えば、空気電池の正極と通常のリチウムイオン二次電池の正極とを組み合わせたような正極を有するものが提案されている(例えば、特許文献1)。この空気電池では、供給される空気量を少なくして負極活物質の劣化を抑制しつつ、もう一つの電池であるリチウムイオン二次電池でも電力を供給するため、高容量化が可能となるとされている。
特開2006−286414号公報
ところで、特許文献1に記載の空気電池などであっても、より高い放電容量を求める場合には酸素濃度が高いガスを供給する必要があり、酸素ガスを用いることがあった。このような状況下、酸素ガスに代わるガスを用いた、従来にない新規なガス電池の開発が望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、酸素ガスに代わるガスを用いた、従来にない新規なガス電池およびガス電池の使用方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明者らは、ガス電池に供給するガスを、二酸化炭素ガスとしたところ、電池として作動することを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のガス電池は、
二酸化炭素ガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給された二酸化炭素ガスを正極活物質とする正極と、
負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
また、本発明のガス電池の使用方法は、
ガスを正極活物質とする正極と、負極活物質を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介在するイオン伝導媒体と、供給ガスを前記正極へ供給する供給部と、を備えたガス電池の使用方法であって、
前記供給ガスとして二酸化炭素ガスを前記正極へ供給するものである。
本発明では、供給ガスとして二酸化炭素ガスを用いてガス電池を作動させることが可能であり、さらに、繰り返し充放電が可能である。このような効果が得られる理由は定かではないが、放電時には、二酸化炭素ガスとイオン伝導媒体中の金属イオンとが反応して炭酸塩を生成し、このときの反応エネルギーを電気エネルギーとして取り出すことができるためと考えられる。また、生成した炭酸塩は充電時に分解されて二酸化炭素を放出し、この二酸化炭素が再び放電反応に用いられるため、繰り返し充放電をすることができると考えられる。
F型電気化学セル20の断面図である。 実施例1の放電試験における放電曲線である。 実施例1のサイクル充放電試験におけるサイクル回数と放電容量との関係を表すグラフである。
次に本発明を具現化した一実施形態について説明する。本発明のガス電池は、二酸化炭素ガスを供給する供給部と、供給部から供給された二酸化炭素ガスを正極活物質とする正極と、負極活物質を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介在するイオン伝導媒体と、を備えたものである。
本発明のガス電池において、供給部は、二酸化炭素ガスを正極へ供給するものである。この二酸化炭素ガスは、電池反応に関与しない不活性ガスなどを含んでいてもよく、1体積%未満であれば酸素を含んでいてもよい。このようなものであっても、二酸化炭素の反応が促進されるからである。このような不活性ガスとしては、例えば窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられる。この二酸化炭素ガスは、式(1)に示すように放電時に正極で還元されて、電池を作動させることができる。このとき二酸化炭素ガスは炭酸イオンを生じ、さらに、イオン伝導媒体中の金属イオンと反応して炭酸塩となって正極上に堆積すると考えられ、本発明のガス電池を一次電池として用いた場合には、地球温暖化物質であると思われる二酸化炭素を電池内に固定できると考えられる。また、この場合、例えば燃焼工程後の高濃度二酸化炭素などを利用して発電を行うことができ、環境汚染の低減とエネルギー供給を同時に達成できる点で好ましい。
Figure 0005115531
本発明のガス電池において、供給部は、例えば、タンクとタンクに設けられた通気孔とを有し、通気孔を介して正極へ二酸化炭素ガスを供給するものとしてもよい。通気孔は、金属板などに設けられた貫通孔としてもよいし、メッシュ状や、パイプ状のものとしてもよい。タンクは、二酸化炭素ガスを貯蔵可能であればよく、例えばガスボンベのように二酸化炭素ガスを圧縮して貯蔵するものであってもよいし、大気圧のガスを貯蔵するものであってもよい。また、タンクは、電極やイオン伝導媒体などからなる発電要素全体を覆うものであってもよいし、正極側に設けられていてもよい。タンクの材質としては、金属製や樹脂製などとすることができる。
本発明のガス電池において、正極は、供給部から供給された二酸化炭素ガスを正極活物質とするものである。このガス電池において、正極は、正極活物質である二酸化炭素ガスの酸化還元を促進する酸化還元触媒を含むものとしてもよい。二酸化炭素の酸化還元触媒としては、電解二酸化マンガン、コバルトフタロシアニン、コバルトポルフィリン、酸化セリウム(CeO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタン(TiO2)、酸化銀(AgO)、タングステン酸リチウム(Li2WO4)、モリブデン酸リチウム(Li2MoO4)、マンガンコバルト酸リチウム(LiMnxCoy4)、ランタンカルシウムコバルト複合酸化物(LaxCayCoO3-z)、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(LaxSryCoO3-z)、ランタンマンガン酸ナトリウム(NaxLayMnO3)、ランタンマンガン酸カリウム(KxLayMnO3-z)、銅マンガン複合酸化物(CuxMny4)、マンガン酸化物(MnO2)などを挙げることができる。酸化還元触媒は、例えばケッチェンブラックなどの炭素物質を触媒担体とし、これに担持させたものとしてもよい。
本発明のガス電池において、正極は、導電材を含んでいてもよい。導電材としては、導電性を有し、電池の使用範囲における電位窓中で安定な材料であれば特に限定されないが、出力増大の観点から、比表面積の大きい多孔性のものであることが好ましい。このようなものとして、例えば、カーボンが挙げられる。カーボンとしては、ケッチェンブラックやアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類でもよいし、鱗片状黒鉛のような天然黒鉛や人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類でもよいし、木炭や石炭などを原料とする活性炭類でもよいし、合成繊維や石油ピッチ系原料などを炭化した炭素繊維類でもよい。また、金属繊維などの導電性繊維類でもよいし、ニッケル、アルミニウムなどの金属粉末類でもよいし、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料でもよい。また、これらを単体で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、正極は、リチウム酸化物などの金属酸化物やリチウム過酸化物などの金属過酸化物を含んでいてもよい。
本発明のガス電池において、正極は、バインダを含んでいてもよい。バインダとしては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘ
キサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などが挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明のガス電池において、正極は、例えば上記導電材やバインダなどを混合してシート状に圧延したものを、集電体にプレスして形成したものであってもよい。混合方法は、エタノールなどの溶媒存在下での湿式混合でもよいし、乳鉢などを使った乾式混合でもよい。なお、集電体としては、導電性材料で形成されたものであれば特に限定されないが、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム、銅などであることが好ましい。また、二酸化炭素ガスの拡散を速やかに行わせるため、網状やメッシュ状など多孔体であることが好ましい。なお、この集電体は、酸化を抑制するためにその表面に耐酸化性の金属又は合金の被膜を被覆したものであってもよい。
本発明のガス電池において、負極は、負極活物質を有するものである。この負極活物質は特に限定されないが、金属及び金属イオンの少なくとも一方を吸蔵放出可能なものであることが好ましい。吸蔵放出される金属や金属イオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛の金属やこれらのイオンなどが挙げられる。このうち、リチウム、マグネシウム、カルシウムの金属やこれらのイオンであることがより好ましい。これらのうち、例えば、リチウム金属やリチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質としては、金属リチウムやリチウム合金のほか、金属酸化物、金属硫化物、リチウムを吸蔵放出する炭素質物質などが挙げられる。リチウム合金としては、例えばアルミニウムやスズ、マグネシウム、インジウム、カルシウムなどとリチウムとの合金が挙げられる。金属酸化物としては、例えばスズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物などが挙げられる。金属硫化物としては、例えばスズ硫化物やチタン硫化物などが挙げられる。リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物質としては、例えば黒鉛、コークス、メソフェーズピッチ系炭素繊維、球状炭素、樹脂焼成炭素などが挙げられる。この負極は、負極活物質と、正極の説明で例示した導電材やバインダなどとを混合してシート状に圧延したものを、集電体にプレスして形成したものであってもよい。
本発明のガス電池において、正極と負極との間に介在するイオン伝導媒体は、金属イオンを伝導可能なものである。この金属イオンは、負極において、金属または金属イオンとして吸蔵放出されるものである。本発明のガス電池において、イオン伝導媒体は、電解質を含んでいてもよい。電解質としては、特に限定されるものではないが、例えば、LiPF6,LiClO4,LiAsF6,LiBF4,Li(CF3SO22N,Li(CF3SO3),LiN(C25SO22などの公知の電解質を用いることができる。これらの電解質は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。また、イオン伝導媒体は、非水系のイオン伝導媒体であることが好ましい。非水系のイオン伝導媒体としては、例えば上述の電解質を含む非水系電解液を用いることができる。非水系電解液中の電解質の濃度としては、0.1〜2.0mol/Lであることが好ましく、0.8〜1.2mol/Lであることがより好ましい。非水系電解液としては、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等がある。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等がある。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等がある。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等がある。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等がある。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、イオン伝導媒体としては、そのほかにアセトニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル系溶媒やイオン液体、ゲル電解質、などを用いてもよい。
本発明のガス電池の使用方法は、ガスを正極活物質とする正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在するイオン伝導媒体と、供給ガスを正極へ供給する供給部と、を備えたガス電池の使用方法であって、供給ガスとして二酸化炭素ガスを正極へ供給するものである。使用するガス電池の構成は、上述した本発明のガス電池と同様の構成とすることができる。供給する二酸化炭素ガスは、電池反応に関与しない不活性ガスなどを含んでいてもよく、1体積%未満であれば酸素を含んでいてもよい。この二酸化炭素ガスは、上述した式(1)に示すように放電時に正極で還元されて、電池を作動させることができる。
供給ガスについては、ガス電池に備え付けられている必要はなく、使用の際にガスボンベなどと接続して供給ガスを供給するものとしてもよい。こうすれば、新しい混合ガスとの取り替えなどを容易に行える点で好ましい。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本発明のガス電池を具体的に作成した例を実施例として説明する。
[実施例1]
正極は以下のように作成した。まず、触媒としての電解二酸化マンガン(三井金属鉱山製)5.2重量部、触媒担体としてのケッチェンブラックECP600(三菱化学製)84.5重量部、バインダとしてのポリテトラフルオロエチレン(ダイキン製)10.3重量部に、溶剤としてエタノールを加えて十分に混合・混練し、圧延してシート状の正極材を得た。これをステンレス(SUS304)製メッシュ(#50、線径0.12mm)の上に圧着し、100℃のオーブン中で120分真空乾燥し、これを正極とした。また、負極には金属リチウムを用いた。そして、これらを用いて北斗電工製のF型電気化学セル20を組み立てた。F型電気化学セル20の断面図を図1に示す。
F型電気化学セル20は次のようにして組み立てた。まず、SUS製のケーシング21に負極25を設置し、ポリエチレン製のセパレータ27を介して正極23を負極25に対向するようセットし、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを1Mとなるようにエチレンカーボネート30重量部とジエチルカーボネート70重量部とからなる溶液(富山薬品製)に溶かした電解液28を正極23と負極25との間に注入した。その後、正極23に発泡ニッケル板22を載せ、その上からガスが正極23側へ流通可能な押さえ部材29で押し付けることにより、セルを固定した。このようにしてF型電気化学セル20を得た。なお、図示しないが、ケーシング21は正極23と接触する上部と負極25と接触する下部とに分離可能であり、上部と下部との間に絶縁樹脂が介在している。これにより、正極23と負極25とは電気的に絶縁されている。
このようにして得られたF型電気化学セル20を、北斗電工製の充放電装置(型名HJ1001SM8A)にセットし、二酸化炭素ガスを含みその内圧をおよそ0.2MPaとしたタンク30を押さえ部材29に接続して供給ガスを供給し、正極材1gあたり50mAの電流で1.0Vまで放電した。図2には、実施例1の放電試験における放電曲線を示した。このときの放電容量は、正極材あたり691mAh/gであった。
この放電に続いて正極材1gあたり20mAの電流で4.5Vまで充電を行い、さらにこのような充放電を繰り返すサイクル充放電試験を行った。図3には実施例1のサイクル充放電試験におけるサイクル回数と放電容量との関係を表すグラフを示す。
これらの結果から、ガス電池の正極に供給するガスを二酸化炭素ガスとしても、高い放電容量が得られることがわかった。また、繰り返し充放電可能であることがわかった。繰り返し充放電可能である理由としては、充電によって正極に堆積した炭酸リチウムが除去されるとともに二酸化炭素が放出され、再び放電反応に用いることができるためと推察された。
20 F型電気化学セル、21 ケーシング、22 発泡ニッケル板、23 正極、25 負極、27 セパレータ、28 電解液、29 押さえ部材、30 タンク。

Claims (2)

  1. 二酸化炭素ガスを供給する供給部と、
    前記供給部から供給された二酸化炭素ガスを正極活物質とする正極と、
    金属及び金属イオンの少なくとも一方を吸蔵放出可能な負極活物質を有する負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在し、前記負極において金属または金属イオンとして吸蔵され炭酸イオンと塩を形成可能な金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えたガス電池。
  2. ガスを正極活物質とする正極と、金属及び金属イオンの少なくとも一方を吸蔵放出可能な負極活物質を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介在し、前記負極において金属または金属イオンとして吸蔵され炭酸イオンと塩を形成可能な金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、供給ガスを前記正極へ供給する供給部と、を備えたガス電池の使用方法であって、
    前記供給ガスとして二酸化炭素ガスを前記正極へ供給する、ガス電池の使用方法。
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