JP5617454B2 - ガス電池およびガス電池の使用方法 - Google Patents

ガス電池およびガス電池の使用方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガス電池およびガス電池の使用方法に関する。
従来、負極活物質に金属を用い、正極活物質に空気中の酸素を用いる空気電池が知られている。こうした空気電池では、正極活物質である酸素を電池内に内蔵する必要がないため、高容量化が期待されている。このような空気電池としては、例えば、空気電池の正極と通常のリチウムイオン二次電池の正極とを組み合わせたような正極を有するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。この空気電池では、供給される空気量を少なくして負極活物質の劣化を抑制しつつ、もう一つの電池であるリチウムイオン二次電池で電力を供給するため、高容量化が可能となるとされている。
特開2006−286414号公報
ところで、特許文献1に記載の空気電池などでは、放電時に正極で生成する酸素ラジカルなどが金属イオンと結合し、酸化リチウムなどの固体化合物として正極上に堆積することがあった。そして、固体化合物の堆積の進行により、固体化合物の堆積可能な領域がなくなったり、電気抵抗の大きい固体化合物の堆積量が一定量を超えるなどして、比較的早期に放電反応が停止することがあり、更なる高容量化への問題点の一つとなっていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、放電容量を高めることのできるガス電池およびガス電池の使用方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明者らは、ガス電池に供給するガスを、酸素と二酸化炭素とを所定の割合で含むものとし、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13−TFSI)やN−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(P13−TFSI)などのイオン液体を電解液溶媒として用いてガス電池を作製したところ、放電容量をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のガス電池は、
ガスを正極活物質とする正極と、
負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しイオン液体を含むイオン伝導媒体と、
酸素と1体積%以上94体積%以下の二酸化炭素とを含む混合ガスを前記正極へ供給する供給部と、
を備えたものである。
また、本発明のガス電池の使用方法は、
ガスを正極活物質とする正極と、負極活物質を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介在しイオン液体を含むイオン伝導媒体と、供給ガスを前記正極へ供給する供給部と、を備えたガス電池の使用方法であって、
前記供給ガスとして酸素と1体積%以上94体積%以下の二酸化炭素とを含む混合ガスを前記正極へ供給するものである。
ここで、イオン液体とは、100℃以下、より好ましくは60℃以下で液体である溶融塩をいうものとする。
このガス電池およびガス電池の使用方法では、ガス電池の放電容量を高めることができる。このような効果が得られる理由は定かではないが、放電時に正極で生成する酸素ラジカルが、金属イオンと結合して固体化合物を生成する前に優先的に二酸化炭素と反応するためであると考えられる。このときの反応生成物と推測されるパーオキシジカーボネートイオンは、電解液に可溶であるため正極表面に堆積しにくく、結果的に高い放電容量を保つことができるものと考えられる。このとき、パーオキシジカーボネートが還元されて固体の炭酸リチウムに変化(炭酸化)し正極内外に蓄積されることがあるが、イオン液体を含む電解液を用いることにより炭酸化の速度を低減して固体の炭酸リチウムの堆積を抑制することが可能であり、結果的に放電容量をより高めることができるものと考えられる。
F型電気化学セル20の断面図である。 実施例1および比較例1の放電試験における放電曲線である。 二酸化炭素濃度と放電容量との関係を表すグラフである。
次に本発明を具現化した一実施形態について説明する。本発明のガス電池は、ガスを正極活物質とする正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しイオン液体を含むイオン伝導媒体と、酸素と1体積%以上94体積%以下の二酸化炭素とを含む混合ガスを前記正極へ供給する供給部と、を備えたものである。
本発明のガス電池において、正極は、ガスを正極活物質とするものである。正極活物質として用いられるガスとしては、酸素または二酸化炭素が挙げられるが、主として酸素が用いられると考えられる。このガス電池において、正極は、正極活物質であるガスの酸化還元を促進する酸化還元触媒を含むものとしてもよい。酸素や二酸化炭素の酸化還元触媒としては、電解二酸化マンガン、コバルトフタロシアニン、コバルトポルフィリン、酸化セリウム(CeO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタン(TiO2)、酸化銀(AgO)、タングステン酸リチウム(Li2WO4)、モリブデン酸リチウム(Li2MoO4)、マンガンコバルト酸リチウム(LiMnxCoy4)、ランタンカルシウムコバルト複合酸化物(LaxCayCoO3-z)、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(LaxSryCoO3-z)、ランタンマンガン酸ナトリウム(NaxLayMnO3)、ランタンマンガン酸カリウム(KxLayMnO3-z)、銅マンガン複合酸化物(CuxMny4)、マンガン酸化物(MnO2)などを挙げることができる。酸化還元触媒は、例えばケッチェンブラックなどの炭素物質を触媒担体とし、これに担持させたものとしてもよい。
本発明のガス電池において、正極は、導電材を含んでいてもよい。導電材としては、導電性を有し、電池の使用範囲における電位窓中で安定な材料であれば特に限定されないが、出力増大の観点から、比表面積の大きい多孔性のものであることが好ましい。このようなものとして、例えば、カーボンが挙げられる。カーボンとしては、ケッチェンブラックやアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類でもよいし、鱗片状黒鉛のような天然黒鉛や人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類でもよいし、木炭や石炭などを原料とする活性炭類でもよいし、合成繊維や石油ピッチ系原料などを炭化した炭素繊維類でもよい。また、金属繊維などの導電性繊維類でもよいし、ニッケル、アルミニウムなどの金属粉末類でもよいし、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料でもよい。また、これらを単体で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、正極は、リチウム酸化物などの金属酸化物やリチウム過酸化物などの金属過酸化物を含んでいてもよい。
本発明のガス電池において、正極は、バインダを含んでいてもよい。バインダとしては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などが挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明のガス電池において、正極は、例えば上記導電材やバインダなどを混合してシート状に圧延したものを、集電体にプレスして形成したものであってもよい。混合方法は、エタノールなどの溶媒存在下での湿式混合でもよいし、乳鉢などを使った乾式混合でもよい。なお、集電体としては、導電性材料で形成されたものであれば特に限定されないが、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム、銅などであることが好ましい。また、酸素や二酸化炭素などのガスの拡散を速やかに行わせるため、網状やメッシュ状など多孔体であることが好ましい。なお、この集電体は、酸化を抑制するためにその表面に耐酸化性の金属又は合金の被膜を被覆したものであってもよい。
本発明のガス電池において、負極は、負極活物質を有するものである。この負極活物質は特に限定されないが、金属及び金属イオンの少なくとも一方を吸蔵放出可能なものであることが好ましい。吸蔵放出される金属や金属イオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛の金属やこれらのイオンなどが挙げられる。このうち、リチウム、マグネシウム、カルシウムの金属やこれらのイオンであることがより好ましい。これらのうち、例えば、リチウム金属やリチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質としては、金属リチウムやリチウム合金のほか、金属酸化物、金属硫化物、リチウムを吸蔵放出する炭素質物質などが挙げられる。リチウム合金としては、例えばアルミニウムやスズ、マグネシウム、インジウム、カルシウムなどとリチウムとの合金が挙げられる。金属酸化物としては、例えばスズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物などが挙げられる。金属硫化物としては、例えばスズ硫化物やチタン硫化物などが挙げられる。リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物質としては、例えば黒鉛、コークス、メソフェーズピッチ系炭素繊維、球状炭素、樹脂焼成炭素などが挙げられる。この負極は、負極活物質と、正極の説明で例示した導電材やバインダなどとを混合してシート状に圧延したものを、集電体にプレスして形成したものであってもよい。
本発明のガス電池において、イオン伝導媒体は、イオン液体を含んでいる。ここで、イオン液体とは、100℃以下、より好ましくは60℃以下で液体である溶融塩をいう。このようにイオン液体を含むイオン伝導媒体を用いることで、放電容量をより高めることができる。この理由は明らかではないが、以下のように推察される。本発明のガス電池においては、後述するように、放電時に正極で生成する酸素ラジカルが、金属イオンと結合して固体化合物を生成する前に、優先的に二酸化炭素と反応して電解液に可溶なパーオキシジカーボネートイオンが生成するため固体化合物が正極表面に堆積しにくくなるため、放電容量を高めることができると考えられる。しかし、このとき、パーオキシジカーボネートが還元されて固体の炭酸リチウムに変化(炭酸化)し正極内外に蓄積されることがある。イオン液体を含む電解液を用いると、炭酸化の速度を低減して固体の炭酸リチウムの堆積を抑制することが可能であり、結果的に放電容量をより高めることができると考えられる。ここで、イオン液体は、カチオンとアニオンから構成されている。カチオンは、とくに限定されるものではないが、環状構造を有する化合物であることが好ましい。環状構造を有する化合物は、芳香族化合物でも脂環族(脂肪族)化合物でもよいが、脂環族化合物が好ましい。室温(25℃)付近における液体としての性質を保持するために有効と考えられるからである。また、環状構造を有する化合物である場合には、炭素環式化合物でも複素環式化合物でもよいが、複素環式化合物が好ましい。室温(25℃)付近における液体としての性質を保持するために有効と考えられるからである。環状構造を有する化合物が複素環式化合物である場合、環状構造を構成する炭素以外の原子(以下ヘテロ原子と称する)は、窒素でもリンでも硫黄でもよいが、窒素が好ましい。リチウム金属に対する十分な耐還元性を有すると考えられるからである。このヘテロ原子は、環状構造に1つ含まれていても2以上が含まれていてもよいが、1つ含まれていることが好ましい。リチウム金属に対する十分な耐還元性を有すると考えられるからである。また、環状構造に含まれるヘテロ原子のうちの少なくとも1つは、上述した環状構造のほかに1個以上の炭化水素基と結合していることが好ましく、2個の炭化水素基と結合していることがより好ましい。また、2個の炭化水素基と結合している場合には、2個の炭化水素基は異なるものであることが好ましい。ここで、炭化水素基としては、鎖状(直鎖でもよいし分岐鎖を有していてもよい)の炭化水素基や環状の炭化水素基が好ましく、炭素数は1〜20が好ましい。鎖状の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基などの飽和炭化水素基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基などの不飽和炭化水素基などが挙げられる。また、環状の炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
このような、環状構造を有するカチオンとしては、六員環の芳香族化合物であるピリジニウム、六員環の脂環族化合物であるピペリジニウム、五員環の芳香族化合物であるイミダゾリウム、五員環の脂環族化合物であるピロリジニウムなどが挙げられる。ピリジニウムとしては、1−ブチル−3−メチルピリジニウムや1−ブチルピリジニウムなどが挙げられ、ピペリジニウムとしては、N,N−ジメチルプロピルピペリジニウム、N−メチル−N−エチルピペリジニウム、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム(PP13)、N−メチル−Nブチルピペリジニウム(PP14)などが挙げられ、イミダゾリウムとしては、1−(ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムなどが挙げられ、ピロリジニウムとしては、ピロリジニウムとしては、N,N−ジメチルプロピルピロリジニウム、N−メチル−N−エチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム(P13)、N−メチル−N−ブチルピロリジニウム(P14)などが挙げられる。このうち、脂環族化合物であり、ヘテロ原子である窒素が2個の炭化水素基と結合しているピペリジニウムやピリジニウムが好ましく、PP13やP13がより好ましい。リチウム金属に対する十分な耐還元性を有すると同時に、リチウムイオン伝導性に優れると考えられるからである。
また、カチオンは、環状構造を有するものでなくてもよく、鎖状構造のものであってもよい。例えば、窒素に1以上の鎖状の炭化水素基が結合したアンモニウム、リンに1以上の炭化水素基が結合したホスホニウム、硫黄に1以上の炭化水素基が結合したスルホニウムなどが挙げられる。鎖状の炭化水素基としては、上述したものなどが挙げられる。アンモニウムとしては、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム(TMPA)、N,N−ジメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。ホスホニウムとしては、テトラブチルホスホニウムや、トリブチルメチルホスホニウムなどが挙げられる。スルホニウムとしては、トリエチルスルホニウムなどが挙げられる。
イオン液体を構成するアニオンは、特に限定されるものではないが、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI) や、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(BETI)等のイミドアニオンのほか、BF4 -、ClO4 -、PF6 -、Br-、Cl-、F-等の無機アニオンが挙げられる。このうち、アニオンをTFSIやBETIとすれば充放電特性を高めることができ、TFSIがより好ましい。より高いリチウムイオン伝導性を有すると考えられるからである。
アニオンとカチオンの組み合わせとしては特に限定されないが、例えば、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13−TFSI)や、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(P13−TFSI)が好ましい。
本発明のガス電池において、イオン伝導媒体は、イオン液体を含んでいればよいが、イオン液体を主成分とするものであることが好ましい。ここで主成分とは、イオン伝導媒体のうち、70重量%以上を占めるものとしてもよいが、80重量%以上を占めるものとするのが好ましく、90重量%以上を占めるものとするのがより好ましく、95重量%以上を占めるものとするのが更に好ましい。イオン伝導媒体は、主成分以外の成分として、例えば、電解質や非水系溶媒を含むものとしてもよい。また、イオン伝導媒体は、イオン液体のみからなるものとしてもよい。電解質としては、特に限定されるものではないが、例えば、LiPF6,LiClO4,LiAsF6,LiBF4,Li(CF3SO22N,Li(CF3SO3),LiN(C25SO22などの公知の電解質を用いることができる。このとき、電解質のアニオン部位は上述したイオン液体のアニオンと同一であることが好ましく、例えば、イオン液体がPP13−TFSIやP13−TFSIである場合には、上述した電解質のうちLi(CF3SO22Nであることが好ましい。これらの電解質は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。また、非水系電解液としては、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等がある。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等がある。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等がある。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等がある。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等がある。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、イオン伝導媒体としては、そのほかにアセトニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル系溶媒、などを用いてもよい。イオン伝導媒体中の電解質の濃度は、イオン液体及び非水系溶媒(以下両者を合わせて電解液溶媒とも称する)に対して0.1〜2.0mol/Lであることが好ましく、0.2〜1.2mol/Lであることがより好ましく、0.3〜0.6mol/Lであることがさらに好ましい。なお、イオン伝導媒体は、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子類又はアミノ酸誘導体やソルビトール誘導体などの糖類に、上記電解液溶媒などを含ませてゲル化されていてもよい。
本発明のガス電池において、供給部は、供給ガスを正極へ供給するものである。この供給部は、例えば、タンクとタンクに設けられた通気孔とを有し、通気孔を介して正極へガスを供給するものとしてもよい。通気孔は、金属板などに設けられた貫通孔としてもよいし、メッシュ状や、パイプ状のものとしてもよい。タンクは、混合ガスを貯蔵可能であればよく、例えばガスボンベのように混合ガスを圧縮して貯蔵するものであってもよいし、大気圧のガスを貯蔵するものであってもよい。また、タンクは、電極やイオン伝導媒体などからなる発電要素全体を覆うものであってもよいし、正極側に設けられていてもよい。タンクの材質としては、金属製や樹脂製などとすることができる。
本発明のガス電池において、供給部から正極へ供給するガスは、酸素と1体積%以上94体積%以下の二酸化炭素とを含む混合ガスである。この混合ガス中の酸素は、放電時に正極で還元されてスーパーオキサイドアニオンラジカルなどの酸素ラジカルとなる。この際、本発明のガス電池では、所定量の二酸化炭素が酸素と同時に供給されるから、式(1)〜(4)に示すように、二酸化炭素が優先的に酸素ラジカルと反応するため、イオン伝導媒体に含まれる金属イオンが酸素ラジカルと結合して金属酸化物などの固体化合物を生成することを抑制すると考えられる。そして、二酸化炭素と酸素ラジカルとの反応生成物であるパーオキシジカーボネートイオン(C26 2-)は、電解液に可溶であるため、正極表面に固体化合物が堆積することを抑制可能であり、結果として、放電容量を高めることができると考えられる。また、上述したように、イオン伝導媒体としてイオン液体を含むものを用いた本発明のガス電池では、パーオキシジカーボネートイオンの炭酸化速度を低減可能であり、固体化合物の堆積を抑制可能であるため、放電容量をより高めることができると考えられる。
Figure 0005617454
混合ガス中の二酸化炭素濃度は、1体積%以上94体積%以下であればよく、5体積%以上93体積%以下であることが好ましく、10体積%以上92体積%以下であることがより好ましく、20体積%以上90体積%以下であることがさらに好ましく、35体積%以上80体積%以下であることが一層好ましい。二酸化炭素濃度が1体積%以上であれば、二酸化炭素混合の効果が得られ、94体積%以下であれば電気化学的に還元される酸素の量を確保できると考えられるからである。このとき、供給ガス中の酸素濃度は、6体積%以上99体積%以下であることが好ましく、7体積%以上95体積%以下であることがより好ましく、8体積%以上90体積%以下であることがさらに好ましく、10体積%以上80体積%以下であることが一層好ましく、20体積%以上65体積%以下であることがより一層好ましい。酸素濃度が6体積%以上であれば、電気化学的に還元される酸素の量を確保することができ、99体積%以下であれば二酸化炭素混合の効果が得られると考えられるからである。なお、混合ガスは酸素と二酸化炭素以外のガスを含んでいてもよく、例えば、酸素の供給源として空気を用いてもよい。ただし、二酸化炭素については、空気に含まれるものでは足りないため、さらに二酸化炭素を加える必要がある。
本発明のガス電池の使用方法は、ガスを正極活物質とする正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しイオン液体を含むイオン伝導媒体と、供給ガスを正極へ供給する供給部と、を備えたガス電池の使用方法であって、供給ガスとして酸素と1体積%以上94体積%以下の二酸化炭素とを含む混合ガスを正極へ供給するものである。使用するガス電池の構成は、上述した本発明のガス電池と同様の構成とすることができる。また、供給する混合ガスも、上述した本発明のガス電池に用いたものと同様のものとすることができる。供給する混合ガス中の酸素は、放電時に正極で還元されてスーパーオキサイドアニオンラジカルなどの酸素ラジカルとなる。この際、本発明のガス電池の使用方法では、所定量の二酸化炭素を酸素と同時に供給するから、上述した式(1)〜(4)に示すように、二酸化炭素が優先的に酸素ラジカルと反応するため、イオン伝導媒体に含まれる金属イオンが酸素ラジカルと結合して金属酸化物などの固体化合物を生成することを抑制すると考えられる。そして、二酸化炭素と酸素ラジカルとの反応生成物であるパーオキシジカーボネートイオン(C26 2-)は、電解液に可溶であるため、正極表面に固体化合物が堆積することを抑制可能であり、結果として、放電容量を高めることができると考えられる。また、上述したように、イオン伝導媒体としてイオン液体を含むものを用いるため、パーオキシジカーボネートイオンの炭酸化速度を低減可能であり、固体化合物の堆積を抑制可能であるため、放電容量をより高めることができると考えられる。
供給ガスについては、ガス電池に備え付けられている必要はなく、使用の際にガスボンベなどと接続して供給ガスを供給するものとしてもよい。こうすれば、新しい混合ガスとの取り替えや、混合比率の異なる混合ガスとの取り替えなどを容易に行える点で好ましい。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本発明のガス電池を具体的に作成した例を実施例として説明する。
[実施例1]
正極は、以下のように作成した。まず、触媒としての電解二酸化マンガン(三井金属鉱山製)を5.2重量部、触媒担体としてケッチェンブラックECP600JD(三菱化学製)を84.5重量部、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(ダイキン製)を10.3重量部に、溶剤としてエタノールを加えて十分に混合・混練し、圧延してシート状の正極材を得た。これをステンレス(SUS304)製メッシュ(#50,線径0.12mm)の上に圧着し、100℃のオーブンの中で120分真空乾燥し、これを正極とした。負極には金属リチウムを用いた。また、電解液としては、0.4Mのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを溶解したN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、通称PP13−TFSI、式(5))を用いた。そして、これらを用いて北斗電工製のF型電気化学セル20を組み立てた。F型電気化学セル20の断面図を図1に示す。
Figure 0005617454
F型電気化学セル20は次のようにして組み立てた。まず、SUS製のケーシング21に負極25を設置し、ポリエチレン製のセパレータ27を介して正極23を負極25に対向するようにセットし、電解液28を正極23と負極25との間に注入した。その後、正極23に発泡ニッケル板22を載せ、その上からガスが正極23側へ流通可能な押さえ部材29で押しつけることにより、セルを固定した。このようにしてF型電気化学セル20を得た。なお、図示しないが、ケーシング21は正極23と接触する上部と負極25と接触する下部とに分離可能であり、上部と下部との間に絶縁樹脂が介在している。これにより、正極23と負極25とは電気的に絶縁されている。
このようにして得られたF型電気化学セル20を、北斗電工製の充放電装置(型名HJ1001SM8A)にセットして60℃の恒温槽内で以下のように放電試験を行った。酸素と二酸化炭素とを50:50の体積比で含み、その内圧をおよそ0.2MPaとしたタンク30を押さえ部材29に接続してガスを供給し、正極材1gあたり50mAの電流で1.5Vまで放電した。
放電容量は14840mAh/g(正極材あたり)であり、放電容量が非常に大きい非水系ガス電池であることが分かった。また、平均放電電圧も2.81Vと非常に高い値を示した。
[実施例2]
実施例1において、電解液溶媒をN−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、通称P13−TFSI、式(6))とした以外は実施例1と同様の条件で、実験を行った。放電容量は、13985mAh/g(正極材あたり)であり、放電容量が非常に大きい非水系ガス電池であることが分かった。また、平均放電電圧も2.79Vと非常に高い値を示した。
Figure 0005617454
[実施例3]
実施例1において、供給ガスの酸素と二酸化炭素との体積比を90:10とした以外は、実施例1と同様に実施例3の充放電試験を行った。このときの放電容量は9764mAh/g(正極材あたり)であった。また、平均放電電圧は2.80Vであった。
[実施例4]
実施例1において、供給ガスの酸素と二酸化炭素との体積比を10:90とした以外は、実施例1と同様に実施例4の充放電試験を行った。このときの放電容量は7340mAh/gであった。また、平均放電電圧は2.76Vであった。
[比較例1]
実施例1において、供給ガスを純粋な酸素に代えた以外は実施例1と同様に比較例1の充放電試験を行った。このときの放電容量は3587mAh/g(正極材あたり)であった。また、平均放電電圧は2.60Vであった。
[比較例2]
実施例1において、供給ガスの酸素と二酸化炭素との体積比を5:95とした以外は、実施例1と同様に比較例2の充放電試験を行った。このときの放電容量は1254mAh/g(正極材あたり)であった。また、平均放電電圧は2.38Vであった。
[実験結果]
表1には、実施例1〜4及び比較例1,2の放電容量および平均放電電圧を示す。図2には、実施例1及び比較例1の放電試験における放電曲線を示す。また、図3には、二酸化炭素濃度と放電容量との関係を表すグラフを示す。これらの結果からガス電池の正極に供給する混合ガス中の二酸化炭素の割合を1体積%以上94体積%以下とすると放電容量を高めることができ、5体積%以上93体積%以下とすれば放電容量をより高めることができ、10体積%以上92体積%以下とすれば放電容量を更に高めることができ、20体積%以上90体積%以下とすれば放電容量をより一層高めることができ、35体積%以上80体積%以下とすれば放電容量をさらに一層高めることができることが分かった。特に、イオン伝導媒体としてイオン液体を含むものを用いたことにより、想定以上の高い放電容量を得ることができた。この理由は明らかではないが、イオン液体を含むイオン伝導媒体を用いることで、正極で生成したパーオキシジカーボネートイオンの炭酸化の速度が飛躍的に低下し、結果的により多くの炭酸リチウムを電極内に蓄積することができるためと推察された。
Figure 0005617454
なお、本発明のガス電池は、二次電池としても使用することができると考えられるが、空気より高濃度の二酸化炭素を含む混合ガスを用いるため、一次電池として使用した場合には、地球温暖化物質と考えられている二酸化炭素を電池内に固定化できる点で好ましいといえる。
20 F型電気化学セル、21 ケーシング、22 発泡ニッケル板、23 正極、25 負極、27 セパレータ、28 電解液、29 押さえ部材、30 タンク。

Claims (4)

  1. ガスを正極活物質とする正極と、
    負極活物質を有する負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在しイオン液体及び金属イオンを含むイオン伝導媒体と、
    酸素と20体積%以上90体積%以下の二酸化炭素とを含む混合ガスを前記正極へ供給する供給部と、
    を備えたガス電池。
  2. 前記イオン液体は、窒素を含む複素環式化合物である、請求項1に記載のガス電池。
  3. 前記イオン液体は、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びN−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのうち1種以上である、請求項1に記載のガス電池。
  4. ガスを正極活物質とする正極と、負極活物質を有する負極と、前記正極と前記負極との間に介在しイオン液体及び金属イオンを含むイオン伝導媒体と、供給ガスを前記正極へ供給する供給部と、を備えたガス電池の使用方法であって、
    前記供給ガスとして酸素と20体積%以上90体積%以下の二酸化炭素とを含む混合ガスを前記正極へ供給する、ガス電池の使用方法。
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