JP2015138581A - 非水電解液空気二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】カルシウムやマグネシウム、亜鉛を電荷のキャリアとする非水電解液空気電池を二次電池化する。【解決手段】本発明の非水電解液空気二次電池は、酸素を正極活物質とする正極と、負極と、イオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオン及びMg、Ca、Znからなる群より選ばれる1以上の2価金属カチオンを含む支持塩とを含む非水電解液と、を備え、正極及び非水電解液のうちの少なくとも一方は、ラジカル骨格を有するラジカル化合物を含んでいる。【選択図】なし
Description
本発明は、非水電解液空気二次電池に関する。
従来、カルシウムやマグネシウムを電荷のキャリアとする電池が提案されている。例えば、特許文献1では、金属カルシウムまたはカルシウムを含む合金を負極活物質として用い、有機電解液を用い、カーボンを構成要素とするガス拡散型電極を正極として用い、空気中の酸素を正極活物質として用いることを特徴とするカルシウム空気電池が提案されている。この電池では、亜鉛空気電池よりもエネルギー密度・電圧の面でより優れ、リチウム空気電池よりも安全性に優れかつ材料コスト的に安価な電池とすることができるとしている。また、特許文献2では、硫黄Sを活物質として含む正極と、マグネシウムを活物質とする負極と、マグネシウム塩を含む非水電解質とを具備した非水電解質電池が提案されている。こうしたものでは、高容量で、安全性の高い非水電解質電池を提供できるとしている。
しかしながら、特許文献1,2の電池では、放電容量を高めることができるなどの効果が得られるものの、充放電可能な二次電池とすることについては検討されていなかった。また、このうち特許文献2の電池は硫黄Sを正極活物質とするものであり、空気を正極活物質とするものについては検討されていなかった。そこで、本発明者らは、特許文献1のカルシウム空気電池や、特許文献2に準じたマグネシウム空気電池などについて、繰り返し充放電が可能か否かを確認した。そうしたところ、これらの空気電池では、繰り返し充放電ができない、すなわち、二次電池として利用できないことがわかった。また、亜鉛空気電池も同様に二次電池として利用できないことがわかった。このため、カルシウムやマグネシウム、亜鉛を電荷のキャリアとする非水電解液空気電池を二次電池化することが望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、カルシウムやマグネシウム、亜鉛を電荷のキャリアとする非水電解液空気電池を二次電池化することを主目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明者らは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛のうちの1以上を電荷のキャリアとする非水電解液空気電池について鋭意検討した。そうしたところ、上述した空気電池では、正極上に生成した放電生成物(正極活物質である酸素と上述したカルシウムやマグネシウム、亜鉛などが反応して形成された酸化物)が分解できず、充電反応が進行しないことがわかった。また、負極では、カルシウムやマグネシウムが電析しにくく、充電反応が進行しないことがわかった。そこで、イオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオン及びMg、Ca、Znからなる群より選ばれる1以上の2価金属カチオンを含む支持塩とを含む非水電解液を用い、正極及び非水電解液のうちの少なくとも一方を、ラジカル骨格を有するラジカル化合物を含むものとしたところ、充放電可能な二次電池になることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の非水電解液空気二次電池は、
酸素を正極活物質とする正極と、
負極と、
イオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオン及びMg、Ca、Znからなる群より選ばれる1以上の2価金属カチオンを含む支持塩とを含む非水電解液と、
を備え、
前記正極及び前記非水電解液のうちの少なくとも一方は、ラジカル骨格を有するラジカル化合物を含むものである。
酸素を正極活物質とする正極と、
負極と、
イオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオン及びMg、Ca、Znからなる群より選ばれる1以上の2価金属カチオンを含む支持塩とを含む非水電解液と、
を備え、
前記正極及び前記非水電解液のうちの少なくとも一方は、ラジカル骨格を有するラジカル化合物を含むものである。
この非水電解液空気二次電池では、カルシウム、マグネシウム、亜鉛のうちの1以上を電荷のキャリアとする非水電解液空気電池を二次電池化することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。すなわち、正極及び非水電解液の少なくとも一方がラジカル化合物を含んでおり、このラジカル化合物が放電生成物を化学的に分解するのに好適な塩を形成すると考えられる。この塩により、放電生成物を充電時に化学的に分解することができるため、正極側での充電反応が進行すると推察される。また、非水電解液にイオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオンを含む支持塩とが含まれていることにより、負極表面にはトリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されると考えられる。この被膜が負極活物質として機能し、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが負極側での電荷のキャリアとして機能するため、カルシウムやマグネシウム、亜鉛などが電析しなくても、負極側での充電反応が進行すると推察される。このように、正極側、負極側の両方において充電反応を進行させることができるため、カルシウム、マグネシウム、亜鉛のうちの1以上を電荷のキャリアとする非水電解液空気電池を二次電池化することができると考えられる。
本発明の非水電解液空気二次電池は、酸素を正極活物質とする正極と、負極と、正極と負極との間に介在しイオン液体と所定の支持塩を含む非水電解液とを備えている。
本発明の非水電解液空気二次電池において、正極は、気体からの酸素を正極活物質とするものである。気体としては、空気や酸素ガスなどが挙げられる。この正極は、導電材を含んでいてもよい。導電材としては、導電性を有する材料であれば特に限定されない。導電材としては、例えばカーボンが挙げられる。このカーボンとしては、ケッチェンブラックやアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類でもよいし、鱗片状黒鉛のような天然黒鉛や人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類でもよいし、木炭や石炭などを原料とする活性炭類でもよいし、合成繊維や石油ピッチ系原料などを炭化した炭素繊維類でもよい。また、金属繊維などの導電性繊維類でもよいし、ニッケル、アルミニウムなどの金属粉末類でもよいし、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料でもよい。また、これらを単体で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明の非水電解液空気二次電池において、正極は、結着材を含んでいてもよい。結着材としては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などが挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明の非水電解液空気二次電池において、正極は、例えば上記導電材や結着材などを混合した正極合材を、集電体にプレス成形して形成してもよい。正極合材は、例えば、100質量部の導電材に対して3〜25質量部の結着材を混合するものとしてもよい。正極合材の混合方法は、例えば、溶媒を混合して湿式混合してもよいし、乳鉢などで乾式混合するものとしてもよい。溶媒としては、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。集電体としては、酸素の拡散を速やかに行わせるため、網状やメッシュ状など多孔体を用いることが好ましく、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム、銅などの多孔体の金属板を用いることができる。なお、この集電体は、酸化を抑制するためにその表面に耐酸化性の金属または合金の被膜を被覆してもよい。
本発明の非水電解液空気二次電池において、正極は、酸素の酸化還元触媒を含んでいるものとしてもよい。こうすれば、正極での酸化還元反応をより効率よく行うことができるからである。酸素の酸化還元触媒としては、二酸化マンガン、四酸化三コバルトなどの金属酸化物であってもよいし、Pt、Pd、Ni、Coなどの金属であってもよいし、金属ポルフィリン、金属フタロシアニン、イオン化フラーレン、カーボンナノチューブなどの有機及び無機化合物であってもよい。このうち、電解二酸化マンガンであれば、容易に入手することができる点で好ましい。
本発明の非水電解液空気二次電池において、負極は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料であることが好ましい。こうした負極では、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる非水電解液空気二次電池を容易に提供することができる。アニオンがキャリアとして電気化学反応に関わるとは、例えば、アニオンが負極側で酸化還元反応をすることによって充放電が進行したり、アニオンが負極表面などで吸蔵、放出されることによって充放電が進行したりすることなどを含む。ここで、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料は、これらを金属の状態で吸蔵したり放出したりすることが可能なものとしてもよいし、イオンの状態で吸蔵したり放出したりすることが可能なものとしてもよい。アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれかの金属や、これらの金属のうちの1以上を有する合金などが挙げられる。合金は、上述した金属の他に、ビスマスや、シリコンなどを含むものとしてもよい。合金は、例えば、マグネシウムアルミニウム、マグネシウムアルミニウム亜鉛、マグネシウムビスマス、マグネシウムシリコンなどとしてもよい。なお、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料は、必ずしも、充放電時に、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出する必要はない。本発明の負極は、上述したアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料の微粉末を導電材のカーボン、結着材などを含む負極合材を用いることもできる。
本発明の非水電解液空気二次電池の負極は、負極表面に、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)と電気化学反応する被膜が形成されたものとしてもよい。トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜は、例えば、充放電時に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンを酸化還元するものとしてもよい。また、この被膜は、例えば、充放電時にトリフルオロメタンスルホネートアニオンを吸蔵、放出するものとしてもよい。このとき、負極は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料であることが好ましい。こうした負極では、負極表面に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されやすい。なお、負極は、負極表面に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されたものであれば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウムのいずれか1以上を吸蔵、放出可能な材料でなくてもよい。
本発明の非水電解液空気二次電池において、非水電解液は、イオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオン及びMg、Ca、Znからなる群より選ばれる1以上の2価金属カチオンを含む支持塩とを含んでいる。支持塩に含まれる2価金属カチオンであるMg2+、Ca2+、Zn2+は、非水電解液中を移動して、電荷のキャリアとして機能すると考えられる。
この非水電解液に含まれるイオン液体は、特に限定されるものではないが、アニオンとして、トリフルオロメタンスルホネートアニオンまたはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO2)2N-)を含むものが好ましい。カチオンの種類は特に限定されないが、例えば、イミダゾリウムカチオン、アルキルピペリジウムカチオン、アルキルピロジリウムカチオンなどを用いることができる。具体的なイオン液体としては、N−メチル−N−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(式(1))や、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(式(2))、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(式(3))、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネートなどを挙げることができる。
この非水電解液は、トリフルオロメタンスルホネートアニオン及びMg、Ca、Znからなる群より選ばれる1以上の2価金属カチオンを含む支持塩とを含んでいる。非水電解液は、さらに、上述した支持塩以外の支持塩を含んでいてもよい。例えば、(CF3SO2)2N-アニオンを含む支持塩、CF3SO3 -アニオンを含む支持塩、PF6 -アニオンを含む支持塩、ClO4 -アニオンを含む支持塩、BF4 -アニオンを含む支持塩などが挙げられる。このうち、(CF3SO2)2N-アニオンを含む支持塩やCF3SO3 -アニオンを含む支持塩が好適であり、CF3SO3 -アニオンを含む支持塩がより好適である。この支持塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、セリウム塩などとすることができる。このうち、アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、セリウム塩、カルシウム塩などが好ましい。これらの支持塩は、微量の水和物であってもよい。
この非水電解液は、支持塩のアニオンとイオン液体を構成するアニオンとの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で4%以上含まれたものであることが好ましい。このモル比が4%以上では、負極の表面に好適なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜が形成され、SEI被膜の抵抗をより低下させ、放電容量を高めたり、放電と充電の電圧差を十分に小さくすることができ、好ましい。また、非水電解液は、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンとを含み、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で4%以上含まれていることがより好ましい。このモル比は、4.5%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましい。また、このモル比は、50%以下としてもよい。
この非水電解液は、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子、アミノ酸誘導体、ソルビトール誘導体などの糖類に、上記の非水電解液を含ませてなるゲル電解質としてもよい。
本発明の非水電解液空気二次電池において、正極及び非水電解液のうちの少なくとも一方は、ラジカル骨格を有するラジカル化合物を含んでいる。ラジカル化合物は、酸化マグネシウムや酸化カルシウム、酸化亜鉛の還元触媒として機能すると考えられる。このラジカル化合物は、安定なラジカル骨格を有することが好ましい。ここで、安定なラジカル骨格とは、ラジカルとして存在している時間の長いものをいい、例えば電子スピン共鳴分析で測定されたスピン密度が1019spins/g以上、好ましくは1021spins/g以上としてもよい。こうしたラジカル骨格としては、例えば、ニトロキシルラジカルを有する骨格、オキシラジカルを有する骨格、窒素ラジカルを有する骨格、硫黄ラジカルを有する骨格、炭素ラジカルを有する骨格及びホウ素ラジカルを有する骨格からなる群より選ばれたものが好ましい。具体的には、式(4)〜(12)に示すようなニトロキシルラジカルを有する骨格、式(13)に示すようなフェノキシラジカル(オキシラジカル)を有する骨格、式(14)〜(16)に示すようなヒドラジルラジカル(窒素ラジカル)を有する骨格、式(17),(18)に示すような炭素ラジカルを有する骨格などが挙げられる。このうち、特にニトロキシルラジカルを有する骨格が好ましく、例えば、2,2,6,6−テトラアルキル−1−オキシルピペリジニル骨格(式(4)参照)、2,2,5,5−テトラアルキル−1−オキシルピロリニル骨格(式(5)参照)及び2,2,5,5−テトラアルキル−1−オキシルピロリジニル骨格(式(6)参照)からなる群より選ばれたものが好ましい。
ラジカル化合物は、正極に含まれる場合、ポリマーがラジカル骨格に連結した構造を有するポリマー化合物(ラジカルポリマー)であってもよいし、多環式芳香環やその他の置換基がラジカル骨格に連結した構造を有するかラジカル骨格そのものである単分子化合物であってもよい。ポリマー化合物の場合、正極から流出しにくいため長期にわたって機能を発揮することができる。単分子化合物の場合、正極中で個々に分散して存在しやすいため機能をより発揮しやすい。ポリマーとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどが挙げられる。多環式芳香環としては、例えばナフタレンやフェナレン、トリフェニレン、アントラセン、ペリレン、フェナントレン、ピレンなどが挙げられる。その他の置換基としては、アルキル基やアルコキシ基などが挙げられる。ポリマーや多環式芳香環、その他の置換基は、ラジカル骨格に直接連結していてもよいし、エステル結合、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合、カルバミド結合、エーテル結合及びスルフィド結合からなる群より選ばれたものをスペーサとし該スペーサを介してラジカル骨格に連結していてもよい。式(19)はポリマー(ポリプロピレン)がスペーサ(エステル結合)を介してラジカル骨格に連結した構造を有する化合物の一例である。式(20)は多環式芳香環(ピレン)がスペーサ(アミド結合)を介してラジカル骨格に連結した構造を有する化合物の一例である。式(21)はその他の置換基(メトキシ基)が直接ラジカル骨格に連結した構造を有する化合物の一例である。ラジカル化合物は、式(19)〜(21)のように、2,2,6,6−テトラアルキル−1−オキシルピペリジニル骨格、特に2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシルピペリジニル骨格(式(4)参照)を有するものが好ましく、第4位に上述したポリマーや多環式芳香環、その他の置換基などが結合していることがより好ましい。ラジカル化合物の使用量は、正極(集電体)の総質量に対して30質量%以上70質量%以下の範囲で含まれていることが好ましい。30質量%以上では、酸化マグネシウムや酸化カルシウム、酸化亜鉛といった放電生成物を分解(還元)する効果が十分に得られると考えられる。また、70質量%以下では、導電材や結着剤が少なくなりすぎず、電気伝導性や強度を十分に確保することができると考えられる。
ラジカル化合物は、非水電解液に含まれる場合、上述したポリマー化合物でもよいし、単分子化合物でもよいが、非水電解液への溶解性の観点から、単分子化合物が好ましい。単分子化合物の中でも、多環式芳香環以外の置換基がラジカル骨格に連結した構造を有するかラジカル骨格そのものである単分子化合物がより好ましい。ラジカル化合物の使用量は、非水電解液中に0.05M以上0.3M以下含まれていることが好ましい。0.05M以上では、酸化マグネシウムや酸化カルシウム、酸化亜鉛といった放電生成物を分解(還元)する効果が十分に得られると考えられる。また、0.3M以下では、その他の成分が少なくなりすぎない。
本発明の非水電解液空気二次電池は、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、非水電解液空気二次電池の使用に耐え得る組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
本発明の非水電解液空気二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
本発明の非水電解液空気二次電池は、50℃以上70℃以下の温度範囲で充放電を行い、非水電解液中に含まれる支持塩及びイオン液体の分解物が負極上に形成されているものとしてもよい。この分解物(SEI被膜)は、イオン伝導性が高く、これにより、充放電のエネルギー効率をより高めることができる。この分解物(SEI被膜)は、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する負極活物質としての機能を有するものとしてもよい。分解物を形成する際の充放電を行う温度は、55℃以上65℃以下の範囲がより好ましく、60℃が更に好ましい。また、分解物を形成したあとの充放電は、50℃以上70℃以下の温度範囲で行うことが好ましく、55℃以上65℃以下の範囲がより好ましく、60℃が更に好ましい。充放電温度は、高い方がエネルギー効率を高めやすい。
以上詳述した本発明の非水電解液空気二次電池では、カルシウム、マグネシウム、亜鉛のうちの1以上を電荷のキャリアとする非水電解液空気電池を二次電池化することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。すなわち、正極及び非水電解液の少なくとも一方がラジカル化合物を含んでおり、このラジカル化合物が放電生成物を化学的に分解するのに好適な塩を形成すると考えられる。この塩が、放電生成物を充電時に化学的に分解することができため、正極側での充電反応が進行すると推察される。また、非水電解液にイオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオンを含む支持塩とが含まれていることにより、負極表面にはトリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されると考えられる。この被膜が負極活物質として機能し、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが負極側での電荷のキャリアとして機能するため、カルシウムやマグネシウムなどが電析しなくても、負極側での充電反応が進行すると推察される。このように、正極側、負極側の両方において充電反応を進行させることができるため、カルシウム、マグネシウム、亜鉛のうちの1以上を電荷のキャリアとする非水電解液空気電池を二次電池化することができると考えられる。この非水電解液空気二次電池は、正極ではMg2+、Ca2+、Zn2+といった二価金属カチオンがキャリアとして電気化学反応に関わり、負極ではトリフルオロメタンスルホネートアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わる、双方向型の電池であると考えられる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本発明の非水電解液空気二次電池を具体的に作製した例を実施例として説明する。
[実施例1]
(F型セルの作製)
正極は次のようにして作製した。式(19)で表されるラジカルポリマー(住友精化製、分子量46800)を50質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600)を35質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を15質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約5mg(直径10mm、厚さ150μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて6時間真空乾燥を行い、非水電解液空気電池の正極とした。負極としては、直径16mm、厚さ0.20mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液としては、支持塩としてマグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)を、イオン液体としてN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、式(2))を用い、支持塩濃度0.08mol/Lに調製して用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.5%含まれる。セパレータとしては、ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚を用いた。
(F型セルの作製)
正極は次のようにして作製した。式(19)で表されるラジカルポリマー(住友精化製、分子量46800)を50質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600)を35質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を15質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約5mg(直径10mm、厚さ150μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて6時間真空乾燥を行い、非水電解液空気電池の正極とした。負極としては、直径16mm、厚さ0.20mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液としては、支持塩としてマグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)を、イオン液体としてN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、式(2))を用い、支持塩濃度0.08mol/Lに調製して用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.5%含まれる。セパレータとしては、ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚を用いた。
上述した正極、負極、電解液、セパレータを用いて、図1に示すF型セル(F型電気化学セル)20を作製した。図1は充放電試験に使用したF型セル20(北斗電工製)の断面図である。F型セル20はアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で次のようにして組み立てた。まず、SUS製のケーシング22に負極24を設置し、正極26と負極24とをセパレータ25を挟んで対向するようにセットし、電解液28を0.6mL注入した。その後、正極26に発泡ニッケル板32を載せ、その上に、酸素が正極26側へ流通可能なガスボンベ34を配置し、セルを固定して電気化学セルを得た。なお、F型セル20のガスボンベ34には2気圧の純酸素を充填した。また、F型セルの作製にあたり、マグネシウム負極は、表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。組み立てたF型セルを60℃の恒温槽に20時間放置した。
(充放電試験)
作製したF型セルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、60℃において正極と負極との間で0.015mAの電流を流して0.5Vまで放電し、その後0.010mAで2.35Vまで充電した。この放電と充電を3サイクル繰り返した。これを実施例1とした。図2は、実施例1の充放電曲線である。実施例1では、繰り返し充放電が可能であった。
作製したF型セルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、60℃において正極と負極との間で0.015mAの電流を流して0.5Vまで放電し、その後0.010mAで2.35Vまで充電した。この放電と充電を3サイクル繰り返した。これを実施例1とした。図2は、実施例1の充放電曲線である。実施例1では、繰り返し充放電が可能であった。
[比較例1]
正極合材として、ラジカルポリマーを含まず、導電材を83質量部、結着材を17質量部としたもの用いた以外は、実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、放電を0.6Vまで行い、充電を3.0Vまで行った以外は、実施例1と同様に充放電試験を行った。これを比較例1とした。図3は、比較例1の充放電曲線である。比較例1では、充電がほとんど行われなかった。
正極合材として、ラジカルポリマーを含まず、導電材を83質量部、結着材を17質量部としたもの用いた以外は、実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、放電を0.6Vまで行い、充電を3.0Vまで行った以外は、実施例1と同様に充放電試験を行った。これを比較例1とした。図3は、比較例1の充放電曲線である。比較例1では、充電がほとんど行われなかった。
[実施例2]
電解液の支持塩として、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネートに代えてカルシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)を用い、支持塩濃度を0.05mol/Lとし、イオン液体として、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに代えてPP13TFSA(式(1))を用いた以外は、実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、放電を0.7Vまで行った以外は、実施例1と同様に充放電試験を行った。これを実施例2とした。図4は、実施例2の充放電曲線である。実施例2では、繰り返し充放電が可能であった。
電解液の支持塩として、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネートに代えてカルシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)を用い、支持塩濃度を0.05mol/Lとし、イオン液体として、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに代えてPP13TFSA(式(1))を用いた以外は、実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、放電を0.7Vまで行った以外は、実施例1と同様に充放電試験を行った。これを実施例2とした。図4は、実施例2の充放電曲線である。実施例2では、繰り返し充放電が可能であった。
[実施例3]
電解液の支持塩として、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネートに代えて亜鉛トリフルオロメタンスルホネートを用い、支持塩濃度を0.03mol/Lとした以外は実施例1と同様にF型セルを作製し、充放電試験を行った。これを実施例3とした。図5は、実施例3の充放電曲線である。実施例3では、繰り返し充放電が可能であった。
電解液の支持塩として、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネートに代えて亜鉛トリフルオロメタンスルホネートを用い、支持塩濃度を0.03mol/Lとした以外は実施例1と同様にF型セルを作製し、充放電試験を行った。これを実施例3とした。図5は、実施例3の充放電曲線である。実施例3では、繰り返し充放電が可能であった。
[実施例4]
電解液の支持塩として、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネートに代えて亜鉛トリフルオロメタンスルホネートを用い、支持塩濃度を0.03mol/Lとし、負極として、金属マグネシウムに代えて金属亜鉛(ニラコ製)を用いた以外は実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、放電を0.05Vまで行い、充電を1.1Vまで行った以外は、実施例1と同様に充放電試験を行った。これを実施例4とした。図6は、実施例4の充放電曲線である。実施例4では繰り返し充放電が可能であった。
電解液の支持塩として、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネートに代えて亜鉛トリフルオロメタンスルホネートを用い、支持塩濃度を0.03mol/Lとし、負極として、金属マグネシウムに代えて金属亜鉛(ニラコ製)を用いた以外は実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、放電を0.05Vまで行い、充電を1.1Vまで行った以外は、実施例1と同様に充放電試験を行った。これを実施例4とした。図6は、実施例4の充放電曲線である。実施例4では繰り返し充放電が可能であった。
[実施例5]
負極として、金属マグネシウムに代えて金属アルミニウム(ニラコ製)を用いた以外は実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、放電を0.05Vまで行い、充電を1.1Vまで行った以外は実施例1と同様に充放電試験を行った。これを実施例5とした。図7は、実施例5の充放電曲線である。実施例5では、繰り返し充放電が可能であった。
負極として、金属マグネシウムに代えて金属アルミニウム(ニラコ製)を用いた以外は実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、放電を0.05Vまで行い、充電を1.1Vまで行った以外は実施例1と同様に充放電試験を行った。これを実施例5とした。図7は、実施例5の充放電曲線である。実施例5では、繰り返し充放電が可能であった。
[実施例6]
正極合材として、ラジカルポリマーを含まず、導電材を83質量部、結着材を17質量部としたもの用い、負極として、金属マグネシウムに代えて金属セリウム(ジョンション・マッセイ製)を用い、電解液に、電解液全体に対して0.1mol/Lとなるように4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチレンピペリジン−1−オキシル(東京化成製、式(21))を溶解させた以外は、実施例1と同様にF型セルを作製し、充放電試験を行った。これを実施例6とした。図8は、実施例6の充放電曲線である。実施例6では、繰り返し充放電が可能であった。
正極合材として、ラジカルポリマーを含まず、導電材を83質量部、結着材を17質量部としたもの用い、負極として、金属マグネシウムに代えて金属セリウム(ジョンション・マッセイ製)を用い、電解液に、電解液全体に対して0.1mol/Lとなるように4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチレンピペリジン−1−オキシル(東京化成製、式(21))を溶解させた以外は、実施例1と同様にF型セルを作製し、充放電試験を行った。これを実施例6とした。図8は、実施例6の充放電曲線である。実施例6では、繰り返し充放電が可能であった。
[実施例7]
マグネシウム系支持塩としてマグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)を、イオン液体としてN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、式(2))を用い、支持塩濃度0.05mol/Lのマグネシウム系電解液を調製した。また、ナトリウム系支持塩としてナトリウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)を、イオン液体としてN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、式(2))を用い、支持塩濃度0.05mol/Lのナトリウム系電解液を調製した。そして、マグネシウム系電解液とナトリウム系電解液とを体積比2:1で混合し、混合電解液とした。そして、電解液として、この混合電解液を用いた以外は、実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、充電を2.0Vまで行った以外は実施例1と同様に充放電試験を行った。これを実施例7とした。図9は、実施例7の充放電曲線である。実施例7では繰り返し充放電が可能であった。
マグネシウム系支持塩としてマグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)を、イオン液体としてN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、式(2))を用い、支持塩濃度0.05mol/Lのマグネシウム系電解液を調製した。また、ナトリウム系支持塩としてナトリウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)を、イオン液体としてN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、式(2))を用い、支持塩濃度0.05mol/Lのナトリウム系電解液を調製した。そして、マグネシウム系電解液とナトリウム系電解液とを体積比2:1で混合し、混合電解液とした。そして、電解液として、この混合電解液を用いた以外は、実施例1と同様にF型セルを作製した。そして、充電を2.0Vまで行った以外は実施例1と同様に充放電試験を行った。これを実施例7とした。図9は、実施例7の充放電曲線である。実施例7では繰り返し充放電が可能であった。
[実験結果]
以上説明したように、ラジカル化合物を添加しなかった比較例1では繰り返し充放電ができないのに対し、ラジカル化合物を正極に添加した実施例1〜5、7や、ラジカル化合物を非水電解液に添加した実施例6では、繰り返し充放電が可能であった。表1に、実施例1〜7及び比較例1の充放電電圧、サイクル毎の充放電容量をまとめた。表1より、実施例1,2,7では、充放電サイクル特性が優れており、より好適であることがわかった。
以上説明したように、ラジカル化合物を添加しなかった比較例1では繰り返し充放電ができないのに対し、ラジカル化合物を正極に添加した実施例1〜5、7や、ラジカル化合物を非水電解液に添加した実施例6では、繰り返し充放電が可能であった。表1に、実施例1〜7及び比較例1の充放電電圧、サイクル毎の充放電容量をまとめた。表1より、実施例1,2,7では、充放電サイクル特性が優れており、より好適であることがわかった。
正極及び非水電解液の少なくとも一方をラジカル化合物を含むものとすれば充放電が可能となる理由は、例えば、以下のように推察された。すなわち、ラジカル化合物が放電生成物を化学的に分解するのに好適な塩を形成し、この塩により、放電生成物を充電時に化学的に分解することができるため、正極側での充電反応が進行すると推察された。ここで、実施例1〜7で添加したラジカル化合物は、オキソアンモニウム塩を生成するものであり、このオキソアンモニウム塩によって放電生成物が分解されるものと推察された。そこで、この点を確認するため、参考例1,2の実験を行った。
また、実施例1〜7では、非水電解液にイオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオンを含む支持塩とが含まれており、繰り返し充放電が可能であった。この理由は、以下のように推察された。非水電解液にイオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオンを含む支持塩とが含まれていることにより、負極表面にはトリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されると考えられる。この被膜が負極活物質として機能し、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが負極側での電荷のキャリアとして機能するため、カルシウムやマグネシウムなどが電析しなくても、負極側での充電反応が進行すると推察された。そこで、この点を確認するため、参考例3の実験を行った。また、非水電解液の好適な組成を検討するため、非水電解液二次電池を用いて、参考例4〜25の実験を行った。表2には、参考例4〜25の構成をまとめた。
(参考例1,2)
まず、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(東京化成製、式(4))を過塩素酸塩と反応させてオキソアンモニウム過塩素酸塩とした。これを0.1mol/Lの濃度となるように溶解させたアセトニトリル3mLに酸化マグネシウム(MgO)を350μmol懸濁させて懸濁液を調整した。この懸濁液を、4日間60℃に保持し、懸濁液中のマグネシウム量をICP発光分光分析により定量した。これを参考例1とした。参考例1ではマグネシウムが23.6ppm検出された。また、アセトニトリルにオキソアンモニウム過塩素酸塩を溶解させなかった以外は、参考例1と同様に懸濁液を調整し、定量した。これを参考例2とした。参考例2ではマグネシウムが検出限界(0.2ppm以下)であった。上述したように、オキソアンモニウム塩を添加した参考例1では、オキソアンモニウム塩を添加しなかった参考例2に比して、懸濁液中のマグネシウム量が多かった。このことから、ラジカル化合物によって形成された塩が、MgOなどの放電生成物の分解を促進し、正極側での充電反応の進行を可能にするものと推察された。
まず、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(東京化成製、式(4))を過塩素酸塩と反応させてオキソアンモニウム過塩素酸塩とした。これを0.1mol/Lの濃度となるように溶解させたアセトニトリル3mLに酸化マグネシウム(MgO)を350μmol懸濁させて懸濁液を調整した。この懸濁液を、4日間60℃に保持し、懸濁液中のマグネシウム量をICP発光分光分析により定量した。これを参考例1とした。参考例1ではマグネシウムが23.6ppm検出された。また、アセトニトリルにオキソアンモニウム過塩素酸塩を溶解させなかった以外は、参考例1と同様に懸濁液を調整し、定量した。これを参考例2とした。参考例2ではマグネシウムが検出限界(0.2ppm以下)であった。上述したように、オキソアンモニウム塩を添加した参考例1では、オキソアンモニウム塩を添加しなかった参考例2に比して、懸濁液中のマグネシウム量が多かった。このことから、ラジカル化合物によって形成された塩が、MgOなどの放電生成物の分解を促進し、正極側での充電反応の進行を可能にするものと推察された。
(参考例3)
参考例3では、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)が負極側での電荷のキャリアであることの検証を行った。図10は、参考例3の充放電結果である。まず、Mg(CF3SO3)2−PP13TFSA系電解液と加圧型のコインセル(Mg板とPt板、およびポリエチレンセパレータ)を用いて、60℃の恒温槽に10時間放置した後(図10、点A)、10μAの電流で1時間Pt方向に電流を流し(点B)、続いて逆電流を印加した(点C)。図10から分かるように、A→Bへ電流を流したときには電圧が+0.5Vである。通常、Mgの電析が起こるためには電圧が−側に振れないといけないため、電位的にみてMgのPt上への電析は起こっていないと思われた。そこで、次に、各点において、Mg電極とPt電極の二次イオン質量分析(SIMS分析)を実施した。図11に、各点におけるMg電極からの負イオンに関するSIMSデータを示すが、CF3SO3 -の存在を示す質量数(横軸)M/Z=149のシグナルはAよりもBで増加し、Cで減少した。このことから、CF3SO3 -がMg板上で挿入と脱離していると推察された。
参考例3では、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)が負極側での電荷のキャリアであることの検証を行った。図10は、参考例3の充放電結果である。まず、Mg(CF3SO3)2−PP13TFSA系電解液と加圧型のコインセル(Mg板とPt板、およびポリエチレンセパレータ)を用いて、60℃の恒温槽に10時間放置した後(図10、点A)、10μAの電流で1時間Pt方向に電流を流し(点B)、続いて逆電流を印加した(点C)。図10から分かるように、A→Bへ電流を流したときには電圧が+0.5Vである。通常、Mgの電析が起こるためには電圧が−側に振れないといけないため、電位的にみてMgのPt上への電析は起こっていないと思われた。そこで、次に、各点において、Mg電極とPt電極の二次イオン質量分析(SIMS分析)を実施した。図11に、各点におけるMg電極からの負イオンに関するSIMSデータを示すが、CF3SO3 -の存在を示す質量数(横軸)M/Z=149のシグナルはAよりもBで増加し、Cで減少した。このことから、CF3SO3 -がMg板上で挿入と脱離していると推察された。
(参考例4)
正極は次のようにして作製した。五酸化二バナジウム(アルドリッチ製)を57質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を30質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を13質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間真空乾燥を行い、非水電解液二次電池の正極とした。負極には、直径26mm、厚さ0.4mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、式(1))を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、コインセル(図12)をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.3mLをコインセルに注入した。図12に示すように、コインセル120は、カップ形状の電池ケース121と、正極活物質を有しこの電池ケース121の下部に設けられた正極122と、負極活物質を有し正極122に対してセパレータ124を介して対向する位置に設けられた負極123と、絶縁材により形成されたガスケット125と、電池ケース121の開口部に配設されガスケット125を介して電池ケース121を密封する封口板126と、を備えている。このコインセル120は、正極122と負極123との間の空間に非水電解液127を備えている。なお、コインセル作製にあたり、Mg負極の表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。
正極は次のようにして作製した。五酸化二バナジウム(アルドリッチ製)を57質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を30質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を13質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間真空乾燥を行い、非水電解液二次電池の正極とした。負極には、直径26mm、厚さ0.4mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、式(1))を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、コインセル(図12)をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.3mLをコインセルに注入した。図12に示すように、コインセル120は、カップ形状の電池ケース121と、正極活物質を有しこの電池ケース121の下部に設けられた正極122と、負極活物質を有し正極122に対してセパレータ124を介して対向する位置に設けられた負極123と、絶縁材により形成されたガスケット125と、電池ケース121の開口部に配設されガスケット125を介して電池ケース121を密封する封口板126と、を備えている。このコインセル120は、正極122と負極123との間の空間に非水電解液127を備えている。なお、コインセル作製にあたり、Mg負極の表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。
作製したコインセルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極と負極との間で正極材料あたり0.010mAの電流を流して0.4Vまで放電し、その後0.010mAで2.35Vまで充電した。図13に、参考例4の充放電測定結果を示す。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.27V、充電電圧は1.89Vであって、両者の差は0.62Vであった。なお、充放電は60℃で行った。
(参考例5)
参考例4のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)を支持塩に用い、3Vまで充電した以外は参考例4と同様に作製したコインセルを参考例5とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが含まれていない。図13に、参考例5の充放電測定結果を示す。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.02V、充電電圧は2.64Vであって、両者の差は1.62Vであった。
参考例4のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)を支持塩に用い、3Vまで充電した以外は参考例4と同様に作製したコインセルを参考例5とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが含まれていない。図13に、参考例5の充放電測定結果を示す。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.02V、充電電圧は2.64Vであって、両者の差は1.62Vであった。
(参考例6)
参考例4のN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドの代わりに、ブチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(関東化学、式(22))をイオン液体として用いた以外は参考例2と同様に作製したコインセルを参考例6とした。図13に、参考例6の充放電測定結果を示す。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.16V、充電電圧は1.37Vであって、両者の差は0.21Vと低かったが、1.7Vのところでテトラフルオロボレートアニオンの酸化分解が生じたため、充電が完了しなかった。
参考例4のN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドの代わりに、ブチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(関東化学、式(22))をイオン液体として用いた以外は参考例2と同様に作製したコインセルを参考例6とした。図13に、参考例6の充放電測定結果を示す。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は、1.16V、充電電圧は1.37Vであって、両者の差は0.21Vと低かったが、1.7Vのところでテトラフルオロボレートアニオンの酸化分解が生じたため、充電が完了しなかった。
(参考例7)
以下に説明する電解液を用いた以外は参考例4と同様に作製したコインセルを参考例7とした。まず、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、式(1))を用い、支持塩濃度0.20mol/Lの電解液を調製した。この電解液1mLに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学製、式(3))1mLを混合して、参考例7の電解液として用いた。アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンはモル比で47%であった。図13に、参考例7の充放電測定結果を示す。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は0.91V、充電電圧は1.71Vであって、両者の差は0.80Vであった。
以下に説明する電解液を用いた以外は参考例4と同様に作製したコインセルを参考例7とした。まず、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、式(1))を用い、支持塩濃度0.20mol/Lの電解液を調製した。この電解液1mLに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学製、式(3))1mLを混合して、参考例7の電解液として用いた。アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンはモル比で47%であった。図13に、参考例7の充放電測定結果を示す。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は0.91V、充電電圧は1.71Vであって、両者の差は0.80Vであった。
(参考例8)
参考例4の電解液にマグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)と1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学製、式(3))を用いて、支持塩濃度0.08mol/Lに調製した電解液を用いた以外は参考例2と同様に作製したコインセルを参考例8とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが全アニオンである。図13に、参考例8の充放電測定結果を示す。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は0.95V、充電電圧は2.15Vであって、両者の差は1.20Vであった。
参考例4の電解液にマグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)と1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学製、式(3))を用いて、支持塩濃度0.08mol/Lに調製した電解液を用いた以外は参考例2と同様に作製したコインセルを参考例8とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが全アニオンである。図13に、参考例8の充放電測定結果を示す。五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gでの放電電圧は0.95V、充電電圧は2.15Vであって、両者の差は1.20Vであった。
(参考例9)
参考例4の五酸化二バナジウム合材の代わりに、有機ラジカルポリマー合材を用いた以外は参考例4と同様に作製したコインセルを参考例9とした。有機ラジカルポリマーとしてポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)(式(19))を用いた。なお、同ラジカルポリマーは既報に従って合成した。例えば、Chem.Phys.Lett.Vol.359,p351(2002)に従い、2、2’−アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンメタクリレートモノマーの重合を行い、続いて、3−クロロパーベンゾイックアシッドで酸化することにより得られた。このラジカルポリマーは数平均分子量9.2万、重量平均分子量22.9万であった。このラジカルポリマーは、ラジカル骨格として2,2,6,6−テトラメチルピペリドキシルラジカル(TEMPOラジカル)を有しているが、TEMPOラジカルは安定なラジカル骨格として知られている(例えば特開2002−151084参照)。有機ラジカルポリマーの正極は、次のようにして作製した。上記ラジカルポリマーを44質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を35質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を21質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、薄膜状に成形した。この正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、真空乾燥を行い、非水電解液マグネシウム二次電池の正極とした。また、イオン液体には、N,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、化合物式2)を用いた。アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で5.8%含まれる。コインセルを参考例4と同様に作製し、60℃にて正極と負極の間で0.020mAの電流を流して2.30Vまで充電し、その後0.020mAで1.0Vまで充電した。図14は、参考例9の充放電測定結果を示す。ラジカルポリマー質量あたり40mAh/gでの充電電圧は2.05V、放電電圧は1.82Vであって、両者の差は0.23Vであった。
参考例4の五酸化二バナジウム合材の代わりに、有機ラジカルポリマー合材を用いた以外は参考例4と同様に作製したコインセルを参考例9とした。有機ラジカルポリマーとしてポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)(式(19))を用いた。なお、同ラジカルポリマーは既報に従って合成した。例えば、Chem.Phys.Lett.Vol.359,p351(2002)に従い、2、2’−アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンメタクリレートモノマーの重合を行い、続いて、3−クロロパーベンゾイックアシッドで酸化することにより得られた。このラジカルポリマーは数平均分子量9.2万、重量平均分子量22.9万であった。このラジカルポリマーは、ラジカル骨格として2,2,6,6−テトラメチルピペリドキシルラジカル(TEMPOラジカル)を有しているが、TEMPOラジカルは安定なラジカル骨格として知られている(例えば特開2002−151084参照)。有機ラジカルポリマーの正極は、次のようにして作製した。上記ラジカルポリマーを44質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を35質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製T−104)を21質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、薄膜状に成形した。この正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、真空乾燥を行い、非水電解液マグネシウム二次電池の正極とした。また、イオン液体には、N,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(関東化学製、化合物式2)を用いた。アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で5.8%含まれる。コインセルを参考例4と同様に作製し、60℃にて正極と負極の間で0.020mAの電流を流して2.30Vまで充電し、その後0.020mAで1.0Vまで充電した。図14は、参考例9の充放電測定結果を示す。ラジカルポリマー質量あたり40mAh/gでの充電電圧は2.05V、放電電圧は1.82Vであって、両者の差は0.23Vであった。
(参考例10)
参考例9のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)を支持塩に用い、3.2Vまで充電した以外は参考例9と同様に作製したコインセルを参考例10とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが含まれていない。図14に、参考例10の充放電測定結果を示す。ラジカルポリマー質量あたり40mAh/gでの充電電圧は2.59V、放電電圧は1.48Vであって、両者の差は1.11Vであった。
参考例9のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(キシダ化学)を支持塩に用い、3.2Vまで充電した以外は参考例9と同様に作製したコインセルを参考例10とした。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが含まれていない。図14に、参考例10の充放電測定結果を示す。ラジカルポリマー質量あたり40mAh/gでの充電電圧は2.59V、放電電圧は1.48Vであって、両者の差は1.11Vであった。
参考例4〜10の測定結果より、少なくともトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3-)を含み、好ましくは更にビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO2)2N-)を含み、テトラフルオロボレートを含まないものとすることが好ましいことがわかった。また、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で4%以上含まれている非水電解液を用いたコインセルは、充電時と放電時の電圧の差がより小さく、エネルギー効率が高いことがわかった。また、60℃のような比較的高温で充放電することがより好ましいことがわかった。
(参考例11)
正極は次のようにして作製した。五酸化二バナジウム(アルドリッチ製)を57質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を30質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製F−104)を13質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間真空乾燥を行い、非水電解液二次電池の正極とした。負極には、直径26mm、厚さ0.25mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)と、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、式(2))を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、コインセル(図12参照)をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.6mLをコインセルに注入した。なお、コインセル作製にあたり、Mg負極の表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。
正極は次のようにして作製した。五酸化二バナジウム(アルドリッチ製)を57質量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を30質量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製F−104)を13質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間真空乾燥を行い、非水電解液二次電池の正極とした。負極には、直径26mm、厚さ0.25mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)と、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、式(2))を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、コインセル(図12参照)をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.6mLをコインセルに注入した。なお、コインセル作製にあたり、Mg負極の表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。
作製したコインセルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極と負極との間で正極材料あたり0.015mAの電流を流して0.6Vまで放電し、その後0.015mAで2.35Vまで充電した。またこの放電と充電を1サイクルとして繰り返し、サイクル測定を行った。
(参考例12,13)
参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(キシダ化学)を支持塩に用い、支持塩濃度0.3mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例12とした。また、参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、アルミニウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例13とした。図15に、参考例11〜13の充放電測定結果を示す。参考例11では、五酸化二バナジウム質量あたり141mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.29V、充電電圧は1.97Vであって、両者の差は0.68Vであった。参考例12では、五酸化二バナジウム質量あたり160mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.22V、充電電圧は1.61Vであって、両者の差は0.39Vであった。参考例13では、五酸化二バナジウム質量あたり124mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.23V、充電電圧は2.10Vであって、両者の差は0.87Vであった。図16に、参考例11〜13のサイクル測定結果を示す。参考例11では、5サイクル目の放電容量が159mAh/gであった。参考例12では、5サイクル目の放電容量が87mAh/gであった。参考例13では、5サイクル目の放電容量が125mAh/gであった。
参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(キシダ化学)を支持塩に用い、支持塩濃度0.3mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例12とした。また、参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、アルミニウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例13とした。図15に、参考例11〜13の充放電測定結果を示す。参考例11では、五酸化二バナジウム質量あたり141mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.29V、充電電圧は1.97Vであって、両者の差は0.68Vであった。参考例12では、五酸化二バナジウム質量あたり160mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.22V、充電電圧は1.61Vであって、両者の差は0.39Vであった。参考例13では、五酸化二バナジウム質量あたり124mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.23V、充電電圧は2.10Vであって、両者の差は0.87Vであった。図16に、参考例11〜13のサイクル測定結果を示す。参考例11では、5サイクル目の放電容量が159mAh/gであった。参考例12では、5サイクル目の放電容量が87mAh/gであった。参考例13では、5サイクル目の放電容量が125mAh/gであった。
(参考例14,15)
参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、カルシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例14とした。また、参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、セリウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例15とした。図17に、参考例14,15の充放電測定結果を示す。参考例14では、五酸化二バナジウム質量あたり27.2mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり10mAh/gでの放電電圧は0.97V、充電電圧は1.68Vであって、両者の差は0.71Vであった。参考例15では、五酸化二バナジウム質量あたり59mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり20mAh/gでの放電電圧は1.05V、充電電圧は1.92Vであって、両者の差は0.87Vであった。図18に、参考例14,15のサイクル測定結果を示す。参考例14では、5サイクル目の放電容量が19.7mAh/gであった。参考例15では、5サイクル目の放電容量が87mAh/gであった。
参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、カルシウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例14とした。また、参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、セリウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ)を支持塩に用い、支持塩濃度0.1mol/Lの電解液を調製し、用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例15とした。図17に、参考例14,15の充放電測定結果を示す。参考例14では、五酸化二バナジウム質量あたり27.2mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり10mAh/gでの放電電圧は0.97V、充電電圧は1.68Vであって、両者の差は0.71Vであった。参考例15では、五酸化二バナジウム質量あたり59mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり20mAh/gでの放電電圧は1.05V、充電電圧は1.92Vであって、両者の差は0.87Vであった。図18に、参考例14,15のサイクル測定結果を示す。参考例14では、5サイクル目の放電容量が19.7mAh/gであった。参考例15では、5サイクル目の放電容量が87mAh/gであった。
(参考例16)
参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、LiPF6を用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例16とした。図19に、参考例16の充放電測定結果を示す。参考例16では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が9.1mAh/gと、極めて小さい値であった。
参考例11のマグネシウムトリフルオロメタンスルホネートの代わりに、LiPF6を用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例16とした。図19に、参考例16の充放電測定結果を示す。参考例16では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が9.1mAh/gと、極めて小さい値であった。
(参考例17)
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、亜鉛を用いた以外は参考例11と同様に参考例17のコインセルを作製し、0.3Vまで放電し、1.05Vまで充電した。図20に、参考例17の充放電測定結果を示す。参考例17では、五酸化二バナジウム質量あたり124mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は0.71V、充電電圧は0.93Vであって、両者の差は0.22Vであった。図21に、参考例17のサイクル測定結果を示す。参考例17では、5サイクル目の放電容量が70mAh/gであった。
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、亜鉛を用いた以外は参考例11と同様に参考例17のコインセルを作製し、0.3Vまで放電し、1.05Vまで充電した。図20に、参考例17の充放電測定結果を示す。参考例17では、五酸化二バナジウム質量あたり124mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は0.71V、充電電圧は0.93Vであって、両者の差は0.22Vであった。図21に、参考例17のサイクル測定結果を示す。参考例17では、5サイクル目の放電容量が70mAh/gであった。
(参考例18)
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、銀を用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例18とした。図22に、参考例18の充放電測定結果を示す。セルの開放電圧は、0.47Vであった。参考例18では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が0.07mAh/gと、極めて小さい値であった。
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、銀を用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例18とした。図22に、参考例18の充放電測定結果を示す。セルの開放電圧は、0.47Vであった。参考例18では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が0.07mAh/gと、極めて小さい値であった。
(参考例19)
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、銅を用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例19とした。図23に、参考例19の充放電測定結果を示す。セルの開放電圧は、0.52Vであった。参考例19では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が1.8mAh/gと、極めて小さい値であった。
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、銅を用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例19とした。図23に、参考例19の充放電測定結果を示す。セルの開放電圧は、0.52Vであった。参考例19では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が1.8mAh/gと、極めて小さい値であった。
(参考例20)
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、ニッケルを用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例20とした。図24に、参考例20の充放電測定結果を示す。セルの開放電圧は1.03Vであった。放電をスタートすると電圧が0.6V程度上昇し、その後一定となった。セルを解体して調べたところ、Ni表面での分解反応が生じていた。
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、ニッケルを用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例20とした。図24に、参考例20の充放電測定結果を示す。セルの開放電圧は1.03Vであった。放電をスタートすると電圧が0.6V程度上昇し、その後一定となった。セルを解体して調べたところ、Ni表面での分解反応が生じていた。
(参考例21)
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、錫を用いた以外は参考例11と同様に参考例21のコインセル作製し、0.2Vまで放電し、1.05Vまで充電した。図25に、参考例21の1〜3サイクル目の充放電測定結果を示す。セルの開放電圧は、0.57Vであった。参考例21では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が9.9mAh/gと、極めて小さい値であった。
参考例11の負極のマグネシウムの代わりに、錫を用いた以外は参考例11と同様に参考例21のコインセル作製し、0.2Vまで放電し、1.05Vまで充電した。図25に、参考例21の1〜3サイクル目の充放電測定結果を示す。セルの開放電圧は、0.57Vであった。参考例21では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が9.9mAh/gと、極めて小さい値であった。
(参考例22)
参考例13の負極のマグネシウムの代わりに、アルミニウムを用いた以外は参考例13と同様に参考例22のコインセルを作製し、0.2Vまで放電し、1.05Vまで充電した。図26に、参考例22の充放電測定結果を示す。参考例22では、五酸化二バナジウム質量あたり79mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり40mAh/gでの放電電圧は0.36V、充電電圧は0.80Vであって、両者の差は0.44Vであった。図27に、参考例22のサイクル測定結果を示す。参考例22では、5サイクル目の放電容量が42mAh/gであった。
参考例13の負極のマグネシウムの代わりに、アルミニウムを用いた以外は参考例13と同様に参考例22のコインセルを作製し、0.2Vまで放電し、1.05Vまで充電した。図26に、参考例22の充放電測定結果を示す。参考例22では、五酸化二バナジウム質量あたり79mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり40mAh/gでの放電電圧は0.36V、充電電圧は0.80Vであって、両者の差は0.44Vであった。図27に、参考例22のサイクル測定結果を示す。参考例22では、5サイクル目の放電容量が42mAh/gであった。
(参考例23)
参考例11のN,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの代わりに、N−メチル−N−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製,式(1))を用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例23とした。図28に、参考例23の1〜4サイクル目の充放電測定結果を示す。参考例23では、五酸化二バナジウム質量あたり52mAh/gの放電容量が1サイクル目で得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり30mAh/gでの放電電圧は1.35V、充電電圧は1.86Vであって、両者の差は0.51Vであった。
参考例11のN,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの代わりに、N−メチル−N−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製,式(1))を用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例23とした。図28に、参考例23の1〜4サイクル目の充放電測定結果を示す。参考例23では、五酸化二バナジウム質量あたり52mAh/gの放電容量が1サイクル目で得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり30mAh/gでの放電電圧は1.35V、充電電圧は1.86Vであって、両者の差は0.51Vであった。
(参考例24)
参考例23の負極のマグネシウムの代わりに、マグネシウム・アルミニウム・亜鉛合金(AZ31)を用いた以外は参考例23と同様に作製したコインセルを参考例24とした。図29に、参考例24の1〜3サイクル目の充放電測定結果を示す。参考例24では、五酸化二バナジウム質量あたり86mAh/gの放電容量が1サイクル目で得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり30mAh/gでの放電電圧は1.36V、充電電圧は1.85Vであって、両者の差は0.49Vであった。
参考例23の負極のマグネシウムの代わりに、マグネシウム・アルミニウム・亜鉛合金(AZ31)を用いた以外は参考例23と同様に作製したコインセルを参考例24とした。図29に、参考例24の1〜3サイクル目の充放電測定結果を示す。参考例24では、五酸化二バナジウム質量あたり86mAh/gの放電容量が1サイクル目で得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり30mAh/gでの放電電圧は1.36V、充電電圧は1.85Vであって、両者の差は0.49Vであった。
(参考例25)
参考例11において、電解液溶媒としてイオン液体にプロピレンカーボネートを体積比で80:20の割合で混合して用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例25とした。図30に、参考例25の充放電測定結果を示す。参考例25では、五酸化二バナジウム質量あたり118mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.14V、充電電圧は1.87Vであって、両者の差は0.73Vであった。
参考例11において、電解液溶媒としてイオン液体にプロピレンカーボネートを体積比で80:20の割合で混合して用いた以外は参考例11と同様に作製したコインセルを参考例25とした。図30に、参考例25の充放電測定結果を示す。参考例25では、五酸化二バナジウム質量あたり118mAh/gの放電容量が得られた。また、五酸化二バナジウム質量当たり50mAh/gでの放電電圧は1.14V、充電電圧は1.87Vであって、両者の差は0.73Vであった。
参考例11〜25の測定結果より、少なくともトリフルオロメタンスルホネートアニオンを含み、負極がMg,Zn,Alやこれらの合金など、所定の金属であれば、五酸化二バナジウム質量あたり50mAh/gなどの放電容量が得られ、充放電可能であることがわかった。ここで、参考例3の結果を考慮すると、こうしたものでは、負極の表面において、アニオンが電気化学反応をすることにより、充放電反応が進行すると推察された。このことから、負極は、Mg,Zn,Alやこれらの合金など、所定の金属であればよいことがわかった。一方で、負極が銀や銅、錫などでは、容量が小さく好ましくないことがわかった。また、負極がニッケルの場合、ニッケルが激しく反応してしまい、好ましくないことがわかった。また、支持塩がマグネシウム塩やリチウム塩、アルミニウム塩のものでは、120mAh/gなどのより高い放電容量が得られ、好ましいことがわかった。また、支持塩は、サイクル劣化を抑制する観点からは、リチウム支持塩以外が好ましいことがわかった。また、非水電解液は、プロピレンカーボネートなどの非水溶媒を含んでもよいことがわかった。
本発明は、電池産業の分野に利用可能である。
20 F型セル、22 ケーシング、24 負極、25 セパレータ、26 正極、28 電解液、32 発泡ニッケル板、34 ガスボンベ、120 コインセル、121 電池ケース、122 正極、123 負極、124 セパレータ、125 ガスケット、126 封口板、127 非水電解液。
Claims (12)
- 酸素を正極活物質とする正極と、
負極と、
イオン液体とトリフルオロメタンスルホネートアニオン及びMg、Ca、Znからなる群より選ばれる1以上の2価金属カチオンを含む支持塩とを含む非水電解液と、
を備え、
前記正極及び前記非水電解液のうちの少なくとも一方は、ラジカル骨格を有するラジカル化合物を含む、
非水電解液空気二次電池。 - 前記ラジカル骨格は、ニトロキシルラジカルを有する骨格である、請求項1に記載の非水電解液空気二次電池。
- 前記ラジカル化合物は、2,2,6,6−テトラアルキル−1−オキシルピペリジニル骨格を有するものである、請求項1又は2に記載の非水電解液空気電池。
- 前記正極は、前記ラジカル化合物として、ラジカル骨格を有するポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解液空気二次電池。
- 前記非水電解液は、前記ラジカル化合物として、ラジカル骨格を有する単分子化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解液空気二次電池。
- 前記負極は、Al、Mg、Ce、Znからなる群より選ばれる1以上を含む金属又は合金を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解液空気二次電池。
- 前記負極表面には、前記トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解液空気二次電池。
- 前記被膜は、前記トリフルオロメタンスルホネートアニオンを吸蔵、放出する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解液空気二次電池。
- 前記非水電解液は、前記イオン液体のアニオンと前記支持塩のアニオンとの総量に対して前記トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)をモル比で4%以上含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の非水電解液空気二次電池。
- 前記非水電解液は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO2)2N-)を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の非水電解液空気二次電池。
- 50℃以上70℃以下の温度範囲で充放電を行い、前記支持塩及び前記イオン液体の分解物が前記負極上に形成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載に非水電解液空気二次電池。
- 前記正極では金属カチオンがキャリアとして電気化学反応に関わり、前記負極では前記トリフルオロメタンスルホネートアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わる、双方向型の電池である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の非水電解液空気二次電池。
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