JP4197644B2 - 非水電解質空気電池 - Google Patents

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Description

本発明は、特に酸素を正極活物質として利用する非水電解質空気電池に関する。
近年、携帯電話や電子メール端末などの携帯型情報機器の市場は急速に拡大しつつあり、これらの機器の小型軽量化が進むにつれて、電源にも小型かつ軽量であることが求められるようになってきた。現在、これらの携帯機器には高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池が多用されているが、さらに高容量が得られる電池が求められている。
空気中の酸素を正極活物質に用いる空気電池は、正極活物質を電池に内蔵する必要がないため、高容量化が期待できる。Journal of The Electrochemical Society, 149(9) A1190-A1195(July 29, 2002) (非特許文献1)には、MnO2及びカーボンブラックを含む正極と、カーボンブラック及びアセチレンブラックを含む負極と、正極と負極の間に配置されるセパレータと、正極と負極とセパレータに含浸される非水電解質とを備える空気リチウム有機電解質電池が記載されている。この空気電池の非水電解質には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、テトラヒドロフラン(THF)やテトラヒドロピラン(THP)のような有機溶媒にLiPF6などのリチウム塩を溶解させたものが用いられている。
しかしながら、非水電解質に有機溶媒を使用した空気リチウム有機電解質電池は、大気中では長時間使用できないという問題点があった。非水電解質に用いる前記有機溶媒は蒸気圧が高く、また水に対する親和性が高い。そのため非水電解質に有機溶媒を使用した空気リチウム有機電解質電池は、使用状態、すなわち正極へ酸素を取り入れる空気孔を開放した状態では、空気孔から有機溶媒が揮発して非水電解質が液量不足となってしまい、また空気中の水分が電池内部に侵入して負極活物質であるリチウムを劣化してしまうのである。我々は、前記課題を解決するべく検討を重ね、その結果非水電解質として疎水性常温溶融塩を用いることにより上記課題を解決できることを見出した。ここで、前記疎水性常温溶融塩とは、25℃において同体積の水と混合した場合に均一にならずに2層に分離する常温溶融塩である。常温溶融塩はアニオンとカチオンから構成される、室温で液体のイオン性化合物であり、蒸気圧が極めて低いため揮発することはないまた、適当なアニオンとカチオンを選択することにより水と混合しない疎水性常温溶融塩を得ることができる。この疎水性常温溶融塩を非水電解質に用いることにより、電池の使用状態、すなわち空気孔を開放した状態における溶媒の揮発および空気中の水分の浸入を抑制することが可能となった。我々は、疎水性常温溶融塩を用いた空気リチウム電池の高性能化をするべく検討を進めた結果、新たな問題を見出した。空気孔を開放した状態で長期間大気中に保存した場合、あるいは長期間放電した場合に漏液が発生する場合がある、という問題点である。非水電解質に有機溶媒を用いた場合は、空気孔を開放した状態では徐々に有機溶媒が揮発して枯渇してしまうため、長期間経過しても液漏れが起こることはない。しかしながら、非水電解質に常温溶融塩を用いた場合、空気孔を開放した状態で長期間経過しても電解液が揮発することはなく、電池内部に常に液体が残存する。非水電解質の気液界面と空気孔との間には、正極、拡散層と撥水膜が配置されている。拡散層と撥水膜は放電容量に寄与しないため、空気リチウム電池の高エネルギー密度化のためにはこの両者を薄膜化する必要がある。すると、空気孔を開放した状態で長期間放置した場合に漏液する例が見られるようになったのである。
Journal of The Electrochemical Society, 149(9) A1190-A1195(July 29, 2002)
従来の空気リチウム電池は、電解質の溶媒として常温溶融塩を使用することで電解液の揮発を防止することができたが、電池内部に残存する常温溶融塩を中心とした非水電解質が漏洩する問題があった。
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたもので、揮発しにくい電解質を使用でき且つ漏液も抑制した非水電解質空気電池の提供を課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の非水電解質空気電池は、正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極と、前記正極と前記負極の間に配置される非水電解質と、前記正極、前記負極、及び前記非水電解質が収納されかつ前記正極に酸素を供給するための空気孔を備える容器とを具備した非水電解質空気電池において、前記非水電解質が、リチウム塩を溶解した疎水性常温溶融塩であり、かつ下記化学式1に示す化合物が0.1〜20体積%添加されることを特徴とする。
Figure 0004197644
但し、前記疎水性常温溶融塩とは、25℃において同体積の水と混合した場合に均一にならずに2層に分離するものであり、また化学式1の式中Rは互いに同じでも異なっていても良く、水素、フェニル基、ベンジル基、及び前記官能基の水素の一部をフッ素、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基で置換した構造の置換基から選ばれる。
請求項2の非水電解質空気電池は、請求項1において、前記疎水性常温溶融塩に、下記化学式2に示す化合物が含有されていることを特徴とする。
[(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)N]- ・・・(化学式2)
但し、前記xおよびyはそれぞれ1以上、4以下の範囲内で、かつ互いに同じ値でも異なっていても良い。
以上詳述したように本発明によれば、揮発しにくい電解質を使用でき且つ漏液も抑制した非水電解質空気電池を提供することができる。
本発明を実施するための最良の形態を非水電解質空気電池の各部分である非水電解質、正極、負極、収納容器に関する説明を順次行う。
1)非水電解質
リチウム塩との組み合わせにより常温で液体となる組み合わせのものであれば、用いることができる。
前述したアニオンとしては、具体的にはPF6-、BF4-、CF3SO3-、C4F9SO3-、[B(OOC−COO)2]-、[(CN)2N]-、[(CF3SO2)2N]-、[(C2F5SO2)2N]-などを挙げることができる。特に望ましいのは[(CF3SO2)2N]-であるが、これらに限定されるものではなく、後述するカチオンおよびリチウム塩との組み合わせにより常温と液体となる組み合わせのものであれば、用いることができる。
次に、カチオンについて説明する。本発明に係る非水電解質のカチオンは、化学式3〜化学式7で表されるものである。
Figure 0004197644
Figure 0004197644
Figure 0004197644
Figure 0004197644
Figure 0004197644
前述した化学式3〜化学式7のカチオンを構成するR1、R3、R5、R6、R7、R8、R
9、R10、R11、R12、R13およびR14については、炭素数12以下のアルキル基あるいは置換基を有するアルキル基であるものを用いることができる。R2およびR4については、水素、メチル基、エチル基であるものを用いることができる。
前述した化学式3に示すカチオンとしては、具体的には、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオンなどを挙げることができる。
前述した化学式4に示すカチオンとしては、具体的には、N,N−ジメチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピロリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピロリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−プロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−イソプロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオンなどを挙げることができる。
前述した化学式5に示すカチオンとしては、具体的には、N,N−ジメチルピペリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピペリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピペリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)ーN−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−エチルピペリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)ーN−メチルピペリジニウムイオン、N−メチルーN−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−メチルーN−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチルーN−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチルーN−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオンなどを挙げることができる。
前述した化学式6に示すカチオンとしては、具体的には、N,N−ジメチルモルホリニウムイオン、N−エチル−N−メチルモルホリニウムイオン、N−メチル−N−プロピルモルホリニウムイオン、N−ブチル−N−メチルモルホリニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルモルホリニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルモルホリニウムイオン、N−メチル−N−オクチルモルホリニウムイオン、N−デシル−N−メチルモルホリニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルモルホリニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)ーN−メチルモルホリニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−エチルモルホリニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)ーN−メチルモルホリニウムイオン、N−メチルーN−(2−メトキシフェニル)モルホリニウムイオン、N−メチルーN−(4−メ
トキシフェニル)モルホリニウムイオン、N−エチルーN−(2−メトキシフェニル)モルホリニウムイオン、N−エチルーN−(4−メトキシフェニル)モルホリニウムイオンなどを挙げることができる。
前述した化学式7に示すカチオンとしては、具体的には、N,N,N,N−テトラメチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルプロピルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルブチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルペンチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘプチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルオクチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルデシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルドデシルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルヘキシルアンモニウムイオン、2−メトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−エトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−プロポキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオンなどを挙げることができる。
化学式3〜化学式7のいずれの場合も前述した構造に限定されるものではなく、後述するアニオンおよびリチウム塩との組み合わせにより常温で疎水性の液体となる組み合わせのものであれば、用いることができる。
前述したアニオンとしては、具体的にはPF6-、BF4-、CF3SO3-、C4F9SO3-、[B(OOC−COO)2]-、[(CN)2N]-、[(CF3SO2)2N]-、[(C2F5SO2)2N]-などを挙げることができる。前記常温溶融塩において特に望ましいのは疎水性常温溶融塩である。但し、前記疎水性常温溶融塩とは、25℃において同体積の水と混合した場合に均一にならずに2層に分離するものである。疎水性常温溶融塩のなかでも特に望ましいのは、アニオンに[(CF3SO2)2N]-を用いたものであるが、これらに限定されるものではなく、前述したカチオンおよび後述するリチウム塩との組み合わせにより常温で疎水性の液体となる組み合わせのものであれば、用いることができる。
前述したリチウムイオンが提供されるリチウム塩としては、前述したアニオンのリチウム塩である、LiPF6、LiBF4、Li[C4F9SO3]、Li[(CF3SO2)2N]、Li[(C2F5SO2)2N]の他、Li[CF3SO3]、LiClO4などのリチウム塩が上げられる。特に望ましいのはLi[(CF3SO2)2N]であるが、これらに限定されるものではなく、前述したカチオン、アニオンとの組み合わせにより常温で疎水性の液体となる組み合わせのものであれば、用いることができる。非水電解質中のリチウム塩の濃度は、0.1〜4モル/Lとすることが望ましい。
前述した化学式1に示す化合物としては、例えばRがメチル基であるポリジメチルシロキサンが挙げられる。Rの一部は水素、フェニル基、ベンジル基、炭素数4以下のアルキル基、及び前記官能基の水素の一部をフッ素、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基で置換した構造の置換基で置換されていてもよい。構造は、直鎖状であってもよいし、一部が分岐していてもよいし、一部が環状となっていても良い。前述した化学式1に示す化合物の添加量は、0.1〜20体積%であることが望ましい。添加量が0.1体積%を下回ると、十分な漏液抑止効果を得ることができない。添加量が20体積%を上回ると、リチウムイオンの伝導度が低下してしまい、十分な放電特性を得ることができない。より望ましい添加量は、0.5〜5体積%である。添加量が0.5体積%以上であれば、より効果的に漏液抑制効果を得ることができる。また、添加量が5重量%以下であれば、非水電解質
の粘度上昇がほとんどないためである。化学式1で表される化合物を添加した非水電解質は、必ずしも均一である必要はない。非水電解質と均一に混合しないシロキサンは正極あるいは拡散層へ吸収され、電池の放電の障害となることはない。
また、前記非水電解質には、非イオン性の有機溶媒を添加してもよい。有機溶媒を添加することにより粘度が低下し、導電性を向上させることができる。この有機溶媒はリチウム二次電池に用いられる有機溶媒を用いることができ、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルプロピルカーボネートなどの炭酸エステル類や、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンなどのエステル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチルなどのリン酸エステル類、および前記化合物にフッ素などの置換基を導入した各種溶媒からなる群より選択される溶媒を用いることができる。有機溶媒の添加は、非水電解質の粘度を低下させるが、同時に非水電解質の吸湿性が増大するために、非水電解質への水分の溶解を促進してしまう。そのため、有機溶媒の添加量としては、20体積%以下とすることが望ましい。
2)正極
正極は、正極集電体と、この正極集電体に担持された正極層とを含む。
前記集電体としては、酸素の拡散を速やかに行わせるために多孔質の導電性基板(メッシュ、パンチドメタル、エクスパンディドメタル等)を用いることが好ましい。前記導電性基板の材質としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタンなどを挙げることができる。なお、前記集電体は、酸化を抑制するために表面に耐酸化性の金属または合金を被覆しても良い。
前記正極層は、例えば、炭素質物と結着剤とを混合し、この混合物をフィルム状に圧延して製膜し、乾燥することで形成することができる。あるいは、例えば炭素質物と結着剤とを溶媒中で混合し、これを集電体に塗布し、乾燥・圧延して形成することができる。
前記炭素質物としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、ファーネスブラック、活性炭、活性炭素繊維、木炭類等を挙げることができる。この炭素質物の表面にコバルトフタロシアニンなどの酸素発生過電圧を低下させる機能を有する微粒子を担持させ、酸素の還元反応の効率を高めることも可能である。また、炭素質物にアセチレンブラックなどの高導電性炭素質物を添加し、正極層の導電性を高めることも可能である。
結着剤は、正極層の形状を保ち、かつ正極層を集電体に接着させる機能を有する。かかる結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などを用いることができる。
3)負極
この負極は、負極集電体と、前記負極集電体に担持される負極活物質含有層とを含む。
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵放出する材料を用いることができる。
リチウムイオンを吸蔵放出する材料としては、従来よりリチウムイオン電池またはリチウム電池に使用されている材料を使用することができる。中でも、金属酸化物、金属硫化
物、金属窒化物、リチウム金属、リチウム合金、リチウム複合酸化物、またはリチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物よりなる群から選択される少なくとも1種類の材料を、負極活物質として使用することが好ましい。
リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物としては、例えば黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料、熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体などに500〜3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料または炭素質材料を挙げることができる。
前記金属酸化物としては、例えば、スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物などを挙げることができる。
前記金属硫化物としては、例えば、スズ硫化物、チタン硫化物などを挙げることができる。
前記金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物などを挙げることができる。
前記リチウム合金としては、例えば、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金などを挙げることができる。
負極集電体としては、例えば、多孔質構造の導電性基板、無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、銅、ステンレス、またはニッケルから形成することができる。多孔質構造の導電性基板としては、メッシュ、パンチドメタル、エクスパンディドメタル等を用いたり、あるいは金属箔に負極活物質含有層を担持させた後、前記金属箔に孔を開けたものを多孔質構造の導電性基板として用いることができる。
炭素質物のような負極活物質を含む負極は、例えば、負極活物質と結着剤とを溶媒の存在下で混練し、得られた懸濁物を集電体に塗布し、乾燥した後、所望の圧力で1回プレスもしくは2〜5回多段階プレスすることにより作製することができる。
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレンープロピレンーブタジエンゴム(EPBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。
前記炭素質物および前記結着剤の配合割合は、炭素質物80〜98重量%、結着剤2〜20重量%の範囲であることが好ましい。
また、負極活物資として、リチウムイオンやリチウム合金などの金属材料を使用すれば、これらの金属材料は単独でもシート形状に加工することが可能なため、結着剤を使用せずに負極活物質層を形成することができる。また、これらの金属材料で形成された負極活物質層は直接負極端子に接続することもできる。
なお、本発明の非水電解質電池を一次電池として使用する際には、負極活物質としては、金属イオンの放出能のみ有していれば良い。
4)容器(収納容器)
この容器は、例えば、金属板、樹脂層を有するシート等から形成することができる。
前記金属板は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムから形成することができる。
前記シートとしては、金属層と、前記金属層を被覆する樹脂層とから構成されることが好ましい。前記金属層は、アルミニウム箔から形成することが好ましい。一方、前記樹脂層は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂から形成することができる。前記樹脂層は、単層もしくは多層構造にすることができる。
本発明に係る非水電解質空気電池の一例を図1に示す。
図1で、例えばラミネートフィルムなどの収納容器1内には、電極群2が収納されている。
電極群2は、例えば多孔性導電性基板からなる正極集電体3に正極層4が担持された構造を有する正極5と、例えば多孔性導電性基板からなる負極集電体6に負極活物質層7が担持された構造を有する負極8と、正極5及び負極8の間に介在する非水電解質含有層9とから構成される。なお、非水電解液は、正極5と非水電解質含有層9と負極8に保持されている。
正極集電体3および負極集電体6には、それぞれ正極端子11および負極端子12の一端が接続されており、正極端子11および負極端子12の他端は、それぞれ収納容器1外部へ延出されている。
また、正極に形成される収納容器1面には、空気孔13が形成されており、空気孔13から供給された空気(空気中に含有される酸素)は空気拡散層10によって拡散し、正極層4に供給される。空気拡散層10としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、あるいはPTFEなどのフッ素樹脂を含む多孔質フィルムや、ポリプロピレンやPTFEなどの合成樹脂製不織布、ガラス繊維不織布等を挙げることができる。
さらに、収納容器1の外表面には、空気孔13を閉塞するシールテープ14が着脱可能に配置されており、電池使用時にはこのシールテープ14を外すことで正極層4に空気を供給できるようになっている。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
以下の実施例では、上述した図1で説明した非水電解質空気電池を作成してその性能を評価した。
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドに、ポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLi[(CF3SO22N]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。
ケッチェンブラック(EC600JDTM )90重量%と、ポリテトラフルオロエチレン10重量%を乾式混合し、圧延することにより縦横20mm、厚さ200μmのフィルム状の正極層4を得た。この正極層4を正極集電体3であるステンレス製メッシュに圧着し、正極5を作製した。さらに得られた正極5の正極集電体3が露出した部分に正極端子11の一端を接続した。
次に、負極端子12の一端が接続され、金属リチウム箔をニッケル製メッシュに圧着した負極8、グラスフィルターからなるセパレータ9、ポリプロピレン製不織布およびPTFE製多孔質膜からなる空気拡散層10を準備した。
前記非水電解質を前記セパレータ9に含浸させた後、負極8、セパレータ9、正極5および空気拡散層10を順次積層した。この積層物を収納容器用のラミネートフィルム1内に収納した。なお、このラミネートフィルム1には空気孔13が設けられており、この空気孔13が空気拡散層10上に配置されるように収納した。さらに、この空気孔13にシールテープ14を貼付して閉塞した。また、正極端子11および負極端子12の他端はラミネートフィルム1の開口部から延出させることにより非水電解質空気電池を作製した。
(実施例2)
以下の実施例では、実施例1と同一部分に関しては、同一番号を付し、その詳細な説明を省略した。
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルアミドにポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLi[(CF3SO22N]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例3)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドと1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドの体積比1:1の混合溶媒に、ポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLi[(CF3SO22N]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例4)
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムナノフルオロブチルスルホネートにポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLi[C4F9SO3]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。
前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例5)
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートにポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLiPF6を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例6)
N,N,N−トリメチルブチルアンモニウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドにポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLi[N(CF3SO22]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し
、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例7)
N−エチル−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドにポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLi[N(CF3SO22]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例8)
N−ブチル−N−メチルピロリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドにポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLi[N(CF3SO22]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例9)
N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドにポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLi[N(CF3SO22]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例10)
非水電解質として1−メチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドに置換基の10%をヒドロキシル基に置換したポリジメチルシロキサン1体積%と、0.5モル/LのLi[N(CF3SO22]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例11)
非水電解質として1−メチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドに置換基の10%をヒドロキシル基に置換したポリジメチルシロキサン1体積%と、0.5モル/LのLi[N(CF3SO22]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例12)
非水電解質として1−メチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルアミドにポリジメチルシロキサン20体積%と、0.5モル/LのLi[N(CF3SO22]を混合することにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質は均一とならず、2層に分離した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに3層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用い
たこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(比較例1)
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルアミドに0.5モル/LのLi[N(CF3SO22]を溶解させることにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(比較例2)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートに0.5モル/LのLiBF4を溶解させることにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合して均一な溶液となり、親水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(比較例3)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートにポリジメチルシロキサン0.1体積%と、0.5モル/LのLiBF4を溶解させることにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、ポリジメチルシロキサンは分離したが、溶融塩と水は混合して均一な溶液となり、親水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(比較例4)
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルアミドにポリジメチルシロキサン30体積%と、0.5モル/LのLi[N(CF3SO22]を溶解させることにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、混合せずに2層に分離し、疎水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(比較例5)
エチレンカーボネート50体積%とプロピレンカーボネート50体積%を混合した有機溶媒にポリジメチルシロキサン0.1体積%と、1.0モル/Lの割合で過塩素酸リチウムからなる電解質を溶解させることにより非水電解質を調製した。作成した非水電解質を同体積の水と混合し、激しく攪拌したところ、ポリジメチルシロキサンは分離したが、非水電解質と水は混合して均一な溶液となり、親水性であることを確認した。前述した非水電解質を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。実施例1〜11および比較例1〜5で得られた各非水電解質空気電池は、シールテープを除去した後、温度20℃、湿度60%の条件で、放電電流を0.04mAで2.0Vまで放電し、放電容量を測定した。実施例1の非水電解液空気電池の放電容量を100としたときの実施例2〜11および比較例1〜5の非水電解液空気電池の放電容量を表1に示す。
また、放電試験で使用した電池をそのまま温度20℃、湿度60%の条件に保持し、3ヶ月後に観察された電池10個当たりの漏液発生数を表1に示す。
Figure 0004197644
表1に示す通り、本発明による実施例1〜11の非水電解質電池は、漏液することなく良好な放電特性を示した。
疎水性溶融塩を用いた比較例1の非水電解質電池は、放電容量は優れており放電中は漏液することがなかった。しかしながら、3ヶ月後には漏液してしまった。
親水性溶融塩を用いた比較例2および比較例3の非水電解質電池は、放電途中に漏液が発生した。溶融塩に空気中の水分が大量に溶け込んだために体積が膨張し、漏液に至ったものと思われる。また、親水性溶融塩の場合、ジメチルシロキサンの添加により放電容量の若干の増加は認められたが、漏液を抑制することはできなかった。
疎水性溶融塩に大量のジメチルシロキサンを添加した比較例4の非水電解質空気電池は、漏液を抑制することができたものの伝導度の低下により放電容量が低下してしまった。
有機電解液を用いた比較例5の非水電解質空気電池は、漏液することはなかったが、放電容量は小さくなってしまった。放電終了直後の電池を分解すると、電解液が揮発して枯渇していた。有機電解液を用いた非水電解質空気電池が漏液しないのは、蒸気圧の低い有機溶媒が揮発したためと考えられる。
本発明に係る非水電解質空気電池の一例を示す断面図。
符号の説明
1…収納容器、
2…電極群、
3…正極集電体、
4…正極層、
5…正極、
6…負極集電体、
7…負極層、
8…負極、
9…非水電解質含有層、
10…空気拡散層、
11…正極端子、
12…負極端子、
13…空気孔、
14…シールテープ。

Claims (2)

  1. 正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極と、前記正極と前記負極の間に配置される非水電解質と、前記正極、前記負極、及び前記非水電解質が収納されかつ前記正極に酸素を供給するための空気孔を備える容器とを具備した非水電解質空気電池において、前記非水電解質が、リチウム塩を溶解した疎水性常温溶融塩であり、かつ下記化学式1に示す化合物が0.1〜20体積%添加されることを特徴とする非水電解質空気電池。
    Figure 0004197644
    但し、前記化1式で表される化合物のRは互いに同じでも異なっていても良く、水素、フェニル基、ベンジル基、炭素数4以下のアルキル基、及び前記官能基の水素の一部をフッ素、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基で置換した構造の置換基から選ばれる。
  2. 前記疎水性常温溶融塩に、下記化学式2に示す化合物が含有されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解質空気電池。
    [(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)N]- ・・・(化学式2)
    但し、前記xおよびyはそれぞれ1以上、4以下の範囲内で、かつ互いに同じ値でも異なっていても良い。
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