JP2008288091A - リチウム二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、耐電圧性、リチウムイオン伝導性、熱安定性に優れたリチウム二次電池を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】本発明は、正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、上記正極層および上記負極層の間に配置されたセパレータと、上記正極層内、上記負極層内、および上記セパレータ内に充填された広電位窓電解液と、を有するリチウム二次電池であって、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータのいずれかの部位に、非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体を含有することを特徴とするリチウム二次電池を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐電圧性、リチウムイオン伝導性、熱安定性に優れたリチウム二次電池に関する。
リチウム二次電池は、通常、正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、正極層および負極層の間に設置されたセパレータと、を少なくとも有する化学電池である。リチウム二次電池は、高いエネルギー密度を有するという利点を有しており、情報関連機器、通信機器、自動車用電源等の分野で期待されている。
特に、自動車の分野においては、環境問題、資源問題から電気自動車の開発が急がれており、電気自動車用電源として用いるリチウム二次電池の研究が盛んに行われている。電気自動車用電源としてリチウム二次電池を用いて実用化を図る場合、現状のリチウム二次電池では出力が低いなど、リチウム二次電池の特性の改善が必要とされている。
例えば、特許文献1においては、ナノサイズの細孔を有するシリカメソ多孔体を正極、負極、およびセパレータのいずれかの部位に添加することで、細孔内に含有された電解質の凝固点降下がおこり、低温特性が向上することが開示されている。しかしながら、非水系電解液を用いた場合、常温から高温においては細孔近傍において、電解液の分解が起こりやすく、耐電圧性、熱安定性等が悪いという問題があった。
また、特許文献2においては、細孔径等を精密に制御したシリカゲルにイオン導電体を担持させ、固体電解質として使用したリチウム二次電池が開示されており、イオン伝導性・耐久性を向上させている。しかしながら、固体電解質と電極(正極、負極)の界面が、固体(固体電解質)と固体(電極活物質)との界面となり、反応面積が小さく、反応抵抗が大きくなって所望のリチウムイオン伝導性が得られず、所望の出力を得ることができないという問題があった。
特開2005−243342公報 特開2004−2114公報 特開平10−188957公報 特開2002−42549公報 特開2005−166325公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐電圧性、リチウムイオン伝導性、熱安定性に優れたリチウム二次電池を提供することを主目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明においては、正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、上記正極層および上記負極層の間に配置されたセパレータと、上記正極層内、上記負極層内、および上記セパレータ内に充填された広電位窓電解液と、を有するリチウム二次電池であって、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータのいずれかの部位に、非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体を含有することを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
本発明によれば、上記正極層内、上記負極層内、および上記セパレータ内に広電位窓電解液を有することにより、電解質と電極活物質との界面が固体と液体との界面となるため、反応抵抗が下がり、さらに耐電圧性を向上させることができる。また、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータのいずれかの部位に、非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体を含有することにより、良好なリチウムイオンの伝導場を形成することができ、さらに耐久性、熱安定性等が向上する。このため、耐電圧性、リチウムイオン伝導性、熱安定性に優れたリチウム二次電池を得ることができるという利点を有する。
また、上記発明においては、上記広電位窓電解液の酸化分解電位が5V以上であることが好ましい。上記酸化分解電位が5V以上であることにより、より確実に、耐電圧性等を向上させることができる。このため、耐電圧性、リチウムイオン伝導性、熱安定性に優れた所望のリチウム二次電池を、より確実に得ることができるからである。
本発明においては、耐電圧性、リチウムイオン伝導性、および熱安定性に優れたリチウム二次電池を得ることができるという効果を奏する。
本発明のリチウム二次電池について、以下詳細に説明する。
本発明のリチウム二次電池は、正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、上記正極層および上記負極層の間に配置されたセパレータと、上記正極層内、上記負極層内、および上記セパレータ内に充填された広電位窓電解液と、を有するリチウム二次電池であって、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータのいずれかの部位に、非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体(以下、単にシリカメソ多孔体と称する場合がある)を含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上記正極層内、上記負極層内、および上記セパレータ内に広電位窓電解液を有することにより、電解質と電極活物質との界面が固体と液体との界面となるため、電解質と電極活物質との間の反応抵抗が下がり、出力を向上させることができる。さらに、本発明においては電解液として、上記広電位窓電解液、すなわち、電位窓の広い電解液を用いる。これにより、酸化されがたく、高電圧まで安定なため、耐電圧性を向上させることができる。
また、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータのいずれかの部位に、非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体を含有することにより、上記電解質が良好なリチウムイオンの伝導場を形成する等して、リチウムイオン伝導性を向上させることができる。さらに、上記電解質は非液状のものであるので、液状電解質よりも分解反応が抑制され、上記シリカメソ多孔体の細孔中に上記非液状の電解質を含侵させることにより、熱安定性等が向上する。また、セラミックスである上記シリカメソ多孔体を上記正極層、上記負極層、および上記セパレータのいずれかの部位に含有することにより、耐久性、熱安定性等が向上する。このため、耐電圧性、リチウムイオン伝導性、熱安定性に優れたリチウム二次電池を得ることができるという利点を有する。
本発明のリチウム二次電池を、図を用いて説明する。図1は、本発明のリチウム二次電池の一例を示す概略断面図である。図1に示されるリチウム二次電池は、正極活物質1および広電位窓電解液2aを含有する正極層3と、正極層3の集電を行う正極集電体4と、負極活物質5および広電位窓電解液2bを含有する負極層6と、負極層6の集電を行う負極集電体7と、正極層3および負極層6の間に配置され、セパレータ基材8およびセパレータ基材8内に含有された、非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体9から構成されるセパレータ10と、を有するものである。また、通常、セパレータ内には、広電位窓電解液(図示せず)が充填されている。
以下、本発明のリチウム二次電池について、構成ごとに説明する。
1.非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体
まず、本発明に用いられる非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体について説明する。本発明に用いられるシリカメソ多孔体は、非液状の電解質がシリカメソ多孔体の細孔内に含侵していることを特徴とするものである。このようなシリカメソ多孔体を用いることにより、表面酸性度が高い上記シリカメソ多孔体に含侵された上記非液状の電解質の中をリチウムイオンがホッピング等して伝導していくことができ、効果的にリチウムイオン伝導性を向上させることができる。また、上記電解質は、セラミックスであるシリカメソ多孔体の細孔内に含侵しているので、耐久性、熱安定性が向上し、安全性を極めて高くすることができる。
上記シリカメソ多孔体の細孔の径としては、後述する非液状の電解質を含侵することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば1nm〜10nmの範囲内、特に1.8nm〜5nmの範囲内であることが好ましい。
また、上記シリカメソ多孔体の比表面積としては、例えば700m/g以上であることが好ましい。なお、このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
上記シリカメソ多孔体の形状としては、特に限定されるものではないが、例えば球状、楕円球等を挙げることができる。上記シリカメソ多孔体の平均粒径としては、例えば0.01μm〜20μmの範囲内、特に0.01μm〜3μmの範囲内であることが好ましい。シリカ系メソ多孔体の平均粒径が上記範囲より小さいと、シリカメソ多孔体粒子が細かくなり過ぎてハンドリング性が極端に低下する傾向にあり、他方、上記範囲より大きいと、電解質イオンの移動距離が長くなるため電池の性能が低下する傾向にあるからである。
本発明においては、このようなシリカメソ多孔体として、例えば、特開2005−243342号公報に記載された、ラジアル型構造を有するシリカメソ多孔体を用いることができる。
本発明において、上記シリカメソ多孔体に含侵される電解質としては、電解質としての役割を有し、非液状のものであれば良く、所望のリチウムイオン伝導性が得られるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、固体状の電解質を挙げることができる。上記固体状の電解質としては、例えば所定のポリマーと支持塩としてLi化合物を混合したもの等を用いることができる。上記ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン等を挙げることができる。中でもポリエチレンオキシド(PEO)が好ましい。上記支持塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO等を挙げることができる。中でもLiPFが好ましい。
また、本発明においては、上記非液状の電解質中に酸性度を向上させるようなリチウムイオン伝導性樹脂を有していても良い。具体的には、スルホン酸基(−SOH)、カルボン酸基(−COOH)および水酸基(−OH)等を有するフッ素系樹脂および炭化水素系樹脂を挙げることができる。上記リチウムイオン伝導性樹脂を電解質中に有することにより、酸性度を向上させることができ、さらにリチウムイオン伝導性を向上させることができる。
また、上記非液状の電解質等をシリカメソ多孔体に含侵させる方法としては、所望の量の上記電解質等をシリカメソ多孔体に含侵することができる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、所定の電解質、支持塩、およびシリカメソ多孔体を所定の量、所定の溶媒を用いて混合した後、減圧含侵して含侵させる方法等を挙げることができる。
本発明において、このような上記非液状の電解質を含侵させたシリカメソ多孔体は、正極層、負極層、およびセパレータのいずれかの部位に含有される。中でも、本発明においては、少なくとも後述するセパレータに含有されていることが好ましい。リチウムイオン伝導性、熱安定性等をより確実に向上させることができるからである。さらに、本発明においては、後述する正極層、負極層にも上記シリカメソ多孔体が含有されていることが好ましい。リチウムイオン伝導性等がより良好となるからである。
2.広電位窓電解液
次に、本発明に用いられる広電位窓電解液について説明する。本発明に用いられる広電位窓電解液は、正極層内、負極層内、およびセパレータ内に充填されることにより、電解質と電極活物質との界面を固体と液体との界面として、電解質と電極活物質との間の反応抵抗を下げ、出力を向上させることができる。さらに、上記広電位窓電解液は、電位窓が広いため、酸化されがたく、高電圧まで安定であり、耐電圧性を向上させることができる。
上記広電位窓電解液は、通常、所定の電位窓の広い溶媒に所定の支持塩等が添加されたものである。上記溶媒としては、上記支持塩を溶解でき、耐酸化性が強く酸化分解電位が高いなど、電位窓が広いものであれば特に限定されるものではないが、上記酸化分解電位が具体的には、5V以上のものが好ましい。このような電位窓の広い溶媒としては、具体的には、エチルメチルスルフォン等を挙げることができる。また、上記支持塩としては、一般的なリチウム二次電池に用いられる支持塩であれば特に限定されるものではないが、例えば、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSOおよびLiClO等を挙げることができる。
3.セパレータ
本発明に用いられるセパレータについて説明する。本発明に用いられるセパレータは、正極層および負極層の間に配置され、少なくとも、セパレータ基材と、上記セパレータ基材内に充填された広電位窓電解液と、を有するものである。
まず、本発明に用いられるセパレータ基材について説明する。本発明に用いられるセパレータ基材は、セパレータとしての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、上述したシリカメソ多孔体を含有することができるものであることが好ましい。例えば、上記セパレータが多孔質構造を有するものを用いることができる。
上記セパレータ基材の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロースおよびポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でもポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましい。また、上記セパレータ基材は、単層構造であっても良く、複層構造であっても良い。複層構造のセパレータ基材としては、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ基材、PP/PE/PPの3層構造のセパレータ基材等を挙げることができる。さらに、本発明においては、上記セパレータ基材が、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等であっても良い。
上記セパレータ基材が多孔質構造を有する場合、上記セパレータ基材の平均細孔径としては、例えば0.02μm〜30μmの範囲内、中でも0.02μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。上記セパレータ基材の厚さとしては、例えば20μm〜200μmの範囲内、中でも20μm〜40μmの範囲内であることが好ましい。なお、非水電解液は水系電解液に比べてイオン伝導性が低いため、上記セパレータ基材の厚さは薄いことが好ましい。
上記セパレータ基材内に充填される上記広電位窓電解液については、上記「2.広電位窓電解液」で記載したものと同様のものであるのでここでの説明は省略する。
本発明においては、上述したように非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体を、上記セパレータ基材内に、含有させることが好ましい。これにより、セパレータ中のリチウムイオン伝導性を向上させることができる。また、セパレータの耐熱性を向上させ、発火等を抑制することができる。このため、リチウムイオンの伝導性、熱安定性等に優れたリチウム二次電池をより確実に得ることができるからである。なお、セパレータ基材内に含有させるシリカメソ多孔体については、上記「1.非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体」で記載したものと同様のものであるのでここでの説明は省略する。
また、上記セパレータに含まれる上記シリカメソ多孔体の含有量としては、例えば、5質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましい。
また、セパレータに上記シリカメソ多孔体を担持させる方法としては、例えばポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の結着剤を用いて固定化する方法等を挙げることができる。
4.正極層
次に、本発明に用いられる正極層について説明する。本発明に用いられる正極層は、少なくとも正極活物質と広電位窓電解液とを含有するものである。
上記正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばLiCoO、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO等を挙げることができ、中でもLiCoOが好ましい。また、上記広電位窓電解液としては、上記「2.広電位窓電解液」で記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明においては、非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体を、上記正極層に含有することが好ましい。リチウムイオン伝導性等がより良好となるからである。上記シリカメソ多孔体としては、上記「1.非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体」で記載したものと同様のものであるのでここでの説明は省略する。
また、正極層に含まれる上記シリカメソ多孔体の含有量としては、例えば、5質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましい。上記シリカメソ多孔体の含有量が多すぎると、リチウム二次電池の体積当たりの容量が低下してしまう可能性があり、上記シリカメソ多孔体の含有量が少なすぎると、リチウムイオン伝導性の向上を十分に図れない可能性があるからである。
また、上記正極層は、必要に応じて、導電化材および結着剤を含有しても良い。上記導電化材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。さらに上記結着剤としては、例えばポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができる。
5.負極層
次に、本発明に用いられる負極層について説明する。本発明に用いられる負極層は、少なくとも負極活物質と広電位窓電解液とを含有するものである。
上記負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、およびグラファイト等の炭素材料等を挙げることができ、中でもグラファイトが好ましい。また、上記負極活物質は、粉末状であっても良く、薄膜状であっても良い。負極層に用いられる広電位窓電解液としては、上記「2.広電位窓電解液」で記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明においては、非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体を、上記負極層に含有することが好ましい。リチウムイオン伝導性等がより良好となるからである。上記シリカメソ多孔体としては、上記正極層と同様のものを用いることができる。
また、負極層に含まれる上記シリカメソ多孔体の含有量としては、上記「4.正極層」で記載したものと同様のものであるのでここでの説明は省略する。
また、上記負極層は、必要に応じて、導電化材および結着剤を含有しても良く、上記正極層と同様のものを用いることができる。
6.その他
本発明においては、上述したセパレータ、正極層、負極層の他、図1に例示するように、正極集電体および負極集電体が、通常、配置される。
このような正極集電体とは、上記正極層の集電を行うものであり、上記負極層と反対側に配置されるものである。上記正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム、SUS、ニッケル、鉄およびチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウムおよびSUSが好ましい。さらに、上記正極集電体は、緻密金属集電体であっても良く、多孔質金属集電体であっても良い。
また、上記負極集電体とは、上記負極層の集電を行うものであり、上記正極層と反対側に配置される。上記負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅、ステンレス、ニッケル等を挙げることができ、中でも銅が好ましい。さらに、上記正極集電体は、緻密金属集電体であっても良く、多孔質金属集電体であっても良い。
また、本発明のリチウム二次電池は、通常、図1で例示されるようなリチウム二次電池を電池ケースに挿入し、その周囲を封口して作製される。上記電池ケースとしては、一般的には、金属製のものが用いられ、例えばステンレス製のもの等が挙げられる。また、本発明に用いられる電池ケースの形状としては、上述したセパレータ、正極層、負極層等を収納できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等を挙げることができる。
本発明のリチウム二次電池の製造方法としては、所望の高出力で熱安定なリチウム二次電池を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、電池ケースとしてコインセルを用いて、負極缶に負極を載せ、上記広電位窓電解液を負極電極上に滴下する。次に、上記セパレータをのせ、更に上記広電位窓電解液を滴下し、正極電極をのせて正極缶を、かしめることによりリチウム二次電池を得る方法等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例]
(ポリマー電解質含侵シリカメソ多孔体作製)
溶媒としてアセトニトリル75gを用い、ポリエチレンオキシド(PEO)10g、支持塩としてのLiPF2g、シリカメソ多孔体(平均粒径0.6μm)10gを混合し、減圧含侵によりシリカメソ多孔体の細孔内にポリマー電解質を含侵させ、ポリマー電解質含侵シリカメソ多孔体を得た。
(セパレータ作製)
得られたポリマー電解質含侵シリカメソ多孔体9.3gと結着剤としてポリビニリデンフロライド(PVDF)0.7g、スラリー粘度調整溶媒としてNメチル2ピロリドン(NMP)11.8gを混合して攪拌して、セパレータ用スラリーを得た。次に、空隙率80%、膜厚30μmのポリプロピレン(PP)不織布に対し、セパレータ用スラリーを滴下し、ドクターブレードを用いて塗布し、60℃で12時間真空乾燥してポリマー電解質含侵シリカメソ多孔体を充填させたセパレータを得た。
(正極作製)
正極活物質としてLiCoO、導電化材としてカーボンブラック、結着剤としてポリビニリデンフロライド(PVDF)を重量比85:10:5で混合して混合物を得た。この混合物100gをNメチル2ピロリドン(NMP)溶媒95gに添加して、混合し正極用スラリーを得た。次に、厚さ15μmのAl集電箔上に片面塗布して、乾燥しプレスした後、Φ16mmとなるように切り出すことで、正極を得た。
(負極作製)
負極活物質としてグラファイト、結着剤としてポリビニリデンフロライド(PVDF)を重量比92.5:7.5で混合して混合物を得た。この混合物100gをNメチル2ピロリドン(NMP)溶媒118gに添加して、混合し負極用スラリーを得た。次に、厚さ10μmのCu集電箔上に片面塗布して、乾燥しプレスした後、Φ19mmとなるように切り出すことで、負極を得た。
(コインセル作製)
負極缶に得られた負極をのせ、電解液として電位窓の広い溶媒エチルメチルスルフォンに、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1.0mol/Lで溶解したものを負極電極上に滴下した。次に、得られたセパレータをのせ、更に上記電解液を滴下し、得られた正極電極をのせて正極間をかしめることによりCR2032型コインセルを得た。
[比較例]
セパレータとして、空隙率80%、膜厚30μmのポリプロピレン(PP)不織布を用い、電解液として、体積比がEC:DMC:EMC=3:3:4で混合した混合溶媒に、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1.0mol/Lで溶解したものを用いたこと以外は、実施例と同様にしてCR2032型コインセルを得た。
[評価]
(電池抵抗測定)
実施例および比較例で得られたコインセルを用いて、電流密度1mA/cmから20mA/cmまで段階的に変えて充放電(上下限電圧4.1V〜3.0V)を実施し、そのときの電圧変化から電池抵抗を算出した。得られた抵抗値を表1に示す。
(高電圧充放電サイクル試験)
実施例および比較例で得られたコインセルを用いて、定電流充放電により高電圧充放電サイクル試験(上下限電圧4.5V〜3.0V)を実施し、50サイクル後の初期容量に対する容量比率を算出した。得られた容量比率を表1に示す。
(破壊試験)
実施例および比較例で得られたコインセルを用いて、充電状態とした後、釘を差し込む破壊試験(釘刺し試験)を実施し、発火するかどうかの熱安定性(安全性)を評価した。破壊試験による評価結果を表1に示す。
Figure 2008288091
表1に示すように、実施例では、抵抗値は19.3Ω、高電圧充放電サイクル試験後の容量比率は83%となり、破壊試験評価の後、発火は起こらなかった。一方、比較例では、抵抗値は18.7Ω、高電圧充放電サイクル試験後の容量比率は61%、破壊試験評価の後、発火が起こった。比較例においては、従来の液系電解液を用いているため、高電圧充放電サイクル試験後の容量比率が低くなったものと推測される。また、熱安定性の低い従来のセパレータを用いているため、破壊試験(釘刺し試験)により、正負極間が短絡され、発火したものと推測される。
以上の結果から、実施例で得られたコインセルは、抵抗はポリマー電解質を用いたことにより、比較例の液系電解液に比べて若干上昇したが、ほぼ同程度となり、リチウムイオン伝導性は良好であった。また、電位窓の広い広電位窓電解液を用いることにより、高電圧充放電サイクル試験後の容量比率は上昇し、耐電圧性、耐久性が向上することが明らかとなった。更に、ポリマー電解質含侵シリカメソ多孔体をセパレータ内に含有させることにより、耐熱性、すなわち熱安定性が向上し、破壊試験(釘刺し試験)で正負極間を短絡させても発火を抑制することができた。このように、実施例では、耐電圧性、リチウムイオン伝導性、熱安定性に優れたリチウム二次電池を得ることができた。
本発明のリチウム二次電池の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 … 正極活物質
2 … 広電位窓電解液
3 … 正極層
4 … 正極集電体
5 … 負極活物質
6 … 負極層
7 … 負極集電体
8 … セパレータ基材
9 … 電解質を含侵させたシリカメソ多孔体
10 … セパレータ

Claims (2)

  1. 正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、前記正極層および前記負極層の間に配置されたセパレータと、前記正極層内、前記負極層内、および前記セパレータ内に充填された広電位窓電解液と、を有するリチウム二次電池であって、前記正極層、前記負極層、および前記セパレータのいずれかの部位に、非液状の電解質を細孔内に含侵させたシリカメソ多孔体を含有することを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 前記広電位窓電解液の酸化分解電位が5V以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
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