以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。また、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。なお、各図面において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。従って、必ずしもそのスケールに限定されない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である蓄電装置に用いられ、本発明の一態様に係る非水溶媒について説明する。
本発明の一態様に係る蓄電装置に用いられる非水溶媒は、イオン液体と、環状炭酸エステルと、を有し、該イオン液体は、置換基を有する脂環式4級アンモニウムカチオンと、置換基を有する脂環式4級アンモニウムカチオンに対するアニオンと、を有する。
上記イオン液体の脂環式4級アンモニウムカチオンにおいて、脂環式骨格の炭素数は、化合物の安定性、粘度及びイオン伝導度、並びに合成の簡易さから、5以下であることが好ましい。つまり、環の大きさが六員環より小さい4級アンモニウムカチオンであることが好ましい。
また、上記イオン液体におけるアニオンは、脂環式4級アンモニウムカチオンとイオン液体を構成する一価のアニオンである。当該アニオンとして、例えば、1価のイミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート(BF4 −)又はヘキサフルオロホスフェート(PF6 −)などがある。そして、1価のイミド系アニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(n=0〜3)、又はCF2(CF2SO2)2N−などがあり、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(m=0〜4)などがある。なお、当該アニオンは、これらに限るものではなく、当該脂環式4級アンモニウムカチオンとイオン液体を構成できるアニオンであればよい。
本発明の一態様の非水溶媒に用いることのできるイオン液体は、例えば、一般式(G1)で表すことができる。
一般式(G1)中において、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1〜20のアルキル基を表す。ただし、R1〜R5の少なくとも1つは、炭素数が1〜20のアルキル基である。また、一般式(G1)中において、A−は、1価のイミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート、又はヘキサフルオロホスフェートのいずれかを表す。
また、本発明の一態様の非水溶媒に用いることのできるイオン液体は、例えば、一般式(G2)で表すことができる。
一般式(G2)中において、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1〜20のアルキル基を表す。ただし、R1〜R4の少なくとも1つは、炭素数が1〜20のアルキル基である。また、一般式(G2)中において、A−は、1価のイミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート、又はヘキサフルオロホスフェートのいずれかを表す。
なお、一般式(G1)で表されるイオン液体のR1〜R5の少なくとも1つ、及び一般式(G2)で表されるイオン液体のR1〜R4の少なくとも1つは、炭素数1〜20のアルキル基などの電子供与性の置換基である。そして、当該アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のどちらであってもよい。なお、一般式(G1)で表されるR1〜R5、及び一般式(G2)で表されるR1〜R4は、電子供与性であればこれらに限るものではなく、さらには電子供与性の置換基でなくてもよい。例えば、メトキシ基、メトキシメチル基、又はメトキシエチル基である。
また、本発明の一態様の非水溶媒に用いることのできるイオン液体は、例えば、複数のイオン液体を用いる構成としてもよい。複数のイオン液体を用いる構成としては、例えば、上記一般式(G1)で表されるイオン液体と、一般式(G2)で表されるイオン液体と、を双方用いる構成などが挙げられる。イオン液体を複数用いることで、単数のイオン液体を用いた構成よりも、非水溶媒の凝固点が降下する場合がある。したがって、複数のイオン液体を有する非水溶媒を用いることで、低温環境下でも動作可能となり、幅広い温度範囲で動作可能な蓄電装置を作製することができる。
ここで、蓄電装置に含まれ、イオン液体を含む非水溶媒(詳細には当該非水溶媒を有する非水電解質)の耐還元性及び耐酸化性について記載する。蓄電装置に含まれる非水溶媒は、耐還元性及び耐酸化性に優れていることが好ましい。耐還元性が低い場合、負極から電子を受け取り、非水溶媒に含まれるイオン液体は還元されて分解に至る。その結果、蓄電装置の特性劣化に繋がる。また、イオン液体の還元は、イオン液体が負極から電子を受容することである。それゆえ、イオン液体のうち、特に正電荷を有するカチオンが電子を受容し難くすることで、イオン液体の還元電位を低電位化させることができる。そこで、一般式(G1)及び一般式(G2)で表されるイオン液体の脂環式4級アンモニウムカチオンは、電子供与性の置換基を有することが好ましい。なお、還元電位が低電位化することは、耐還元性(還元安定性ともいう)が向上することを意味する。
つまり、一般式(G1)で表されるイオン液体のR1〜R5、または、一般式(G2)で表されるイオン液体のR1〜R4に、上記した電子供与性である置換基を用いることが好ましい。例えば、一般式(G1)で表されるイオン液体のR1〜R5、または、一般式(G2)で表されるイオン液体のR1〜R4に、上記した電子供与性である置換基を用いることで誘起効果が生じ、当該誘起効果により、脂環式4級アンモニウムカチオンの電気的偏りが緩和されるために電子の受容を困難にし、イオン液体の還元電位を低電位化させることができる。
さらに、本発明の一態様に係る非水溶媒に含まれるイオン液体の還元電位は、代表的な低電位負極材料であるリチウムの酸化還元電位(Li+/Li)より低いことが好ましい。
しかし、電子供与性の置換基の数が増えるにつれて、イオン液体の粘度も増大する傾向を有する。そこで、電子供与性の置換基の数は、所望の還元電位及び所望の粘度に応じて適宜制御することが好ましい。
また、一般式(G1)で表されるイオン液体のR1〜R5の少なくとも1つ、または一般式(G2)で表されるイオン液体のR1〜R4の少なくとも1つを炭素数1〜20のアルキル基とする場合、その炭素数は小さい(例えば炭素数1〜4)方が好ましい。該炭素数1〜20のアルキル基の炭素数を小さくすることで、イオン液体の粘度を低くすることができ、結果的に、本発明の一態様に係る非水溶媒の粘度を低くすることができる。
さらに、本発明の一態様に係る非水溶媒は、環状炭酸エステルを有していることから、該非水溶媒の粘度をさらに低くすることができる。
また、イオン液体の酸化電位は、アニオン種によって変化する。そこで、酸化電位が高電位化したイオン液体を実現するために、本発明の一態様に係る非水溶媒に含まれるイオン液体のアニオンを、(CnF2n+1SO2)2N−(n=0〜3)、CF2(CF2SO2)2N−又は(CmF2m+1SO3)−(m=0〜4)から選択した1価のアニオンとすることが好ましい。なお、酸化電位を高電位化することは、耐酸化性(酸化安定性ともいう)が向上することを意味する。なお、耐酸化性の向上は、電子供与性の置換基を有することで電気的な偏りが緩和したカチオンと、上記したアニオンとの相互作用によるものである。
このように本発明の一態様に係る非水溶媒に、耐還元性及び耐酸化性が向上した(酸化還元の電位窓が拡大した)イオン液体を用いることで、充放電の動作による非水溶媒(詳細には当該非水溶媒を有する非水電解質)の分解を抑制できる。そのため、本発明の一態様に係る非水溶媒を用いることでサイクル特性が良好で、信頼性の高い蓄電装置を作製することができる。また、本発明の一態様に係る非水溶媒に上記イオン液体を用いることで、低電位負極材料、及び高電位正極材料を選択することができるようになり、エネルギー密度の高い蓄電装置を作製することができる。
また、本発明の一態様に係る非水溶媒(詳細には当該非水溶媒を有する非水電解質)の粘度を低くすることで、当該非水溶媒のイオン伝導性を向上させることができる。従って、本発明の一態様に係る非水溶媒を用いることで、充放電レート特性が良好な蓄電装置を作製できる。
また、本発明の一態様に用いることのできる環状炭酸エステル(環状カーボネートともいう)としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ペンテンカーボネート、1,2−ペンテンカーボネートなどが挙げられる。特に、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネートは、イオン液体と混合後の粘性を低くできるため、好ましい。
また、本発明の一態様の非水電解質に用いることのできるアルカリ金属塩としては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンを有する塩であればよい。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはカリウムイオンがある。アルカリ土類金属イオンとしては、例えばカルシウムイオン、ストロンチウムイオン、またはバリウムイオンがある。なお、本実施の形態において、当該塩は、リチウムイオンを含んだリチウム塩とする。当該リチウム塩としては、例えば、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、硼弗化リチウム(LiBF4)、LiAsF6、LiPF6、Li(CF3SO2)2N、Li(FSO2)2N(いわゆるLiFSA)などが挙げられる。
本発明の一態様の非水溶媒として、イオン液体と、環状炭酸エステルと、を有することによって、伝導性が高く、且つ難燃性が高い非水溶媒とすることができる。これは環状炭酸エステルの物性と、イオン液体の物性の双方の良い物性を掛け合わせることで得られる優れた効果である。
したがって、本発明の一態様の非水溶媒を用いる非水電解質、及び該非水電解質を用いる蓄電装置は、安全性が高く、且つ高性能である。
ここで、本実施の形態に記載のイオン液体の合成方法について以下説明を行う。
〈一般式(G1)で表されるイオン液体の合成方法〉
本実施の形態に記載のイオン液体の合成方法としては、種々の反応を適用することができる。例えば、以下に示す合成方法によって、一般式(G1)で表されるイオン液体を合成することができる。ここでは一例として、合成スキーム(S−1)を参照して説明する。なお、本実施の形態に記載のイオン液体の合成方法は、以下の合成方法に限定されない。
上記合成スキーム(S−1)において、一般式(β−1)から一般式(β−2)の反応は、ヒドリド存在下で、アミン化合物とカルボニル化合物から、アミンのアルキル化を行う反応である。例えば、過剰のギ酸を用いることで、ヒドリド源とすることができる。ここでは、カルボニル化合物としてCH2Oを用いている。
上記合成スキーム(S−1)において、一般式(β−2)から一般式(β−3)の反応は、3級アミン化合物とハロゲン化アルキル化合物とで、アルキル化を行い、4級アンモニウム塩を合成する反応である。ここでは、ハロゲン化アルキル化合物としてプロパンハライドを用いている。Xはハロゲンであり、反応性の高さから、好ましくは臭素又はヨウ素とし、より好ましくはヨウ素とする。
一般式(β−3)で表される4級アンモニウム塩と、A−を含む所望の金属塩とでイオン交換をさせることにより、一般式(G1)で表されるイオン液体を得ることができる。当該金属塩としては、例えば、リチウム塩を用いることができる。
〈一般式(G2)で表されるイオン液体の合成方法〉
次に、一般式(G2)で表されるイオン液体も種々の反応を適用することができる。ここでは一例として、合成スキーム(S−2)を参照して説明する。なお、本実施の形態に記載のイオン液体の合成方法は、以下の合成方法に限定されない。
上記合成スキーム(S―2)において、一般式(β−4)から一般式(β−5)の反応は、トリアルキルホスフィン等の三置換ホスフィンとハロゲン源を用いたハロゲン化を経由するアミノアルコールの閉環反応である。PR’は、三置換ホスフィンを表し、X1はハロゲン源を表す。ハロゲン源には、四塩化炭素、四臭化炭素、ヨウ素、ヨードメタン等を用いることができる。ここでは、三置換ホスフィンとしてトリフェニルホスフィン、ハロゲン源に四塩化炭素を用いている。
上記合成スキーム(S−2)において、一般式(β−5)から一般式(β−6)の反応は、ヒドリド存在下で、アミン化合物とカルボニル化合物から、アミンのアルキル化を行う反応である。例えば、過剰のギ酸を用いることで、ヒドリド源とすることができる。ここでは、カルボニル化合物としてCH2Oを用いている。
上記合成スキーム(S−2)において、一般式(β−6)から一般式(β−7)の反応は、3級アミン化合物とハロゲン化アルキル化合物とで、アルキル化を行い、四級アンモニウム塩を合成する反応である。ここでは、ハロゲン化アルキル化合物としてプロパンハライドを用いている。また、Xはハロゲンを表す。ハロゲンとしては、反応性の高さから、臭素又はヨウ素が好ましく、ヨウ素がより好ましい。
一般式(β−7)で表される四級アンモニウム塩と、A−を含む所望の金属塩とでアニオン交換をさせることにより、一般式(G2)で表されるイオン液体を得ることができる。当該金属塩としては、例えば、リチウム塩を用いることができる。
〈イオン液体と環状炭酸エステルとの調整方法〉
次に、本発明の一態様の非水溶媒の調整方法について、以下説明を行う。
上述のイオン液体と、環状炭酸エステル(例えば、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート)と、を混合することで、本発明の一態様の非水溶媒を調整することができる。なお、非水溶媒における環状炭酸エステルの含有量が増加することによって、該非水溶媒の難燃性が損なわれる。したがって、本発明の一態様の非水溶媒は、例えば、環状炭酸エステルの含有量が、該非水溶媒の単位重量に対して50重量パーセント未満、より好ましくは30重量パーセント以下である。
以上により、本発明の一態様である非水溶媒を作製することができる。本発明の一態様の非水溶媒は、イオン液体と環状炭酸エステルとを混合することで、難燃性を示す非水溶媒とすることができる。また、本発明の一態様の非水溶媒は、イオン伝導性が高い非水溶媒とすることができる。したがって、本発明の一態様の非水溶媒を用いた蓄電装置は、安全性が高く、充放電レート特性が良好な蓄電装置を提供することができる。
また、本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電装置、及びその作製方法について説明する。本発明の一態様に係る蓄電装置は、正極、負極、非水電解質、及びセパレータを有する。また、本実施の形態では、主にコイン型の二次電池を例に本発明の一態様に係る蓄電装置について、以下説明する。
〈コイン型二次電池の構成〉
図1(A)は蓄電装置200の斜視図である。蓄電装置200は、筐体211がガスケット221を介して筐体209上に設けられている。筐体209及び筐体211は、導電性を有するため外部端子として機能する。
図1(B)に、蓄電装置200の筐体211の上面に対して垂直方向の断面図を示す。
蓄電装置200は、正極集電体201及び正極活物質層202で構成される正極203と、負極集電体204及び負極活物質層205で構成される負極206と、正極203及び負極206で挟持されるセパレータ208とを有する。なお、セパレータ208中には非水電解質207が含まれる。また、正極集電体201は筐体211と接続し、負極集電体204は筐体209と接続されている。筐体211の端部はガスケット221に埋没しているため、筐体209と筐体211はガスケット221によって絶縁状態が保たれている。
以下、蓄電装置200の詳細について説明する。
正極集電体201には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高い材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。正極集電体201は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状などの形状を適宜用いることができる。
正極活物質層202としては、例えば、キャリアイオン及び遷移金属を含む物質(正極活物質)を用いる。
キャリアイオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ベリリウムイオン、又はマグネシウムイオンとすることができる。なお、アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンがある。アルカリ土類金属イオンとしては、例えばカルシウムイオン、ストロンチウムイオン、又はバリウムイオンがある。
正極活物質としては、キャリアイオン(例えば、リチウムイオン)の挿入及び脱離が可能な材料を用いることができ、例えば、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、またはスピネル型の結晶構造を有するリチウムを含む複合酸化物等が挙げられる。
オリビン型構造のリチウムを含む複合酸化物としては、例えば、一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上)で表される複合酸化物が挙げられる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が挙げられる。
特にLiFePO4は、安全性、安定性、高容量密度、高電位、初期酸化(充電)時に引き抜けるリチウムイオンの存在等、正極活物質に求められる事項をバランスよく満たしているため、好ましい。
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムを含む複合酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNiO2、LiMnO2、Li2MnO3、LiNi0.8Co0.2O2等のNiCo系(一般式は、LiNixCo1−xO2(0<x<1))、LiNi0.5Mn0.5O2等のNiMn系(一般式は、LiNixMn1−xO2(0<x<1))、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のNiMnCo系(NMCともいう。一般式は、LiNixMnyCo1−x−yO2(x>0、y>0、x+y<1))が挙げられる。さらに、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li2MnO3−LiMO2(M=Co、Ni、Mn)等も挙げられる。
特に、LiCoO2は、容量が大きい、LiNiO2に比べて大気中で安定である、LiNiO2に比べて熱的に安定である等の利点があるため、好ましい。
スピネル型の結晶構造を有するリチウムを含む複合酸化物としては、例えば、LiMn2O4、Li1+xMn2−xO4、Li(MnAl)2O4、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウムを含む複合酸化物に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1−xMO2(M=Co、Al等))を混合すると、マンガンの溶出を抑制する、電解液の分解を抑制する等の利点があり好ましい。
また、正極活物質として、一般式Li(2−j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)で表される複合酸化物を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiO4の代表例としては、Li(2−j)FeSiO4、Li(2−j)NiSiO4、Li(2−j)CoSiO4、Li(2−j)MnSiO4、Li(2−j)FekNilSiO4、Li(2−j)FekColSiO4、Li(2−j)FekMnlSiO4、Li(2−j)NikColSiO4、Li(2−j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FemNinCoqSiO4、Li(2−j)FemNinMnqSiO4、Li(2−j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等が挙げられる。
また、正極活物質として、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、Mn、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナシコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等が挙げられる。また、正極活物質として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般式で表される化合物、NaF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、MoS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆スピネル型の結晶構造を有するリチウムを含む複合酸化物、バナジウム酸化物系(V2O5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物系、有機硫黄系等の材料を用いることができる。
また、正極活物質層202は、導電助剤(例えばアセチレンブラック(AB))やバインダ(例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF))などを含んだ結着体としてもよい。そこで、本明細書等において、正極活物質層は、少なくとも正極活物質を有しているものをいい、正極活物質材料に導電助剤やバインダなどを含んでいるものも正極活物質層ということにする。
なお、導電助剤としては、上記した材料に限らず、蓄電装置中で化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば用いることができる。例えば、黒鉛、炭素繊維などの炭素系材料、又は銅、ニッケル、アルミニウム若しくは銀などの金属材料、又はこれら炭素系材料及び金属材料の混合物の粉末や繊維などを用いることができる。
バインダとしては、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、又はジアセチルセルロースなどの多糖類があり、他には、ポリビニルクロリド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)ゴム、スルホン化EPDMゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムなどのビニルポリマー、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテルなどがある。
また、正極活物質層202は、導電助剤及びバインダの代わりにグラフェン又は多層グラフェンを用いてもよい。なお、本明細書において、グラフェンとは、sp2結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、多層グラフェンとは、2乃至200枚のグラフェンが積み重なっているものであり、多層グラフェンには、15原子%以下の酸素、水素等、炭素以外の元素が含まれていてもよい。なお、グラフェン及び多層グラフェンは、カリウムなどのアルカリ金属が添加されているものであってもよい。
図2(A)は、導電助剤及びバインダの代わりにグラフェンを用いた正極活物質層202の平面図を示している。図2(A)の正極活物質層202は、粒子状の正極活物質217と、正極活物質217の複数を覆いつつ、正極活物質217が内部に詰められたグラフェン218とで構成される。そして、複数の正極活物質217の表面を異なるグラフェン218が覆う。なお、正極活物質層202の一部において、正極活物質217が露出していてもよい。
グラフェンは化学的に安定であり、且つ電気特性が良好である。グラフェンにおいて導電性が高いのは、炭素で構成される六員環が平面方向に連続しているためである。即ち、グラフェンは平面方向において、導電性が高い。また、グラフェンはシート状であるため、積層されるグラフェンにおいて平面に平行な方向に隙間を有し、当該領域においてイオンの移動は可能であるが、グラフェンの平面に垂直な方向においてのイオンの移動が困難である。
正極活物質217の粒径は、20nm以上200nm以下が好ましい。なお、正極活物質217内を電子が移動するため、正極活物質217の粒径はより小さい方が好ましい。
また、正極活物質217の表面にグラファイト層が被覆されていなくとも十分な特性が得られるが、グラファイト層が被覆されている正極活物質とグラフェンを共に用いると、キャリアが正極活物質間をホッピングし、電流が流れるためより好ましい。
図2(B)は、図2(A)の正極活物質層202の一部における断面図である。図2(B)の正極活物質層202は、正極活物質217、及び正極活物質217を覆うグラフェン218を有する。グラフェン218は断面図においては線状で観察される。複数の正極活物質は、同一のグラフェンまたは複数のグラフェンの間に挟まれるように設けられる。なお、グラフェンは袋状になっており、複数の正極活物質をその内部に包み込む場合がある。また、グラフェンに覆われず、一部の正極活物質が露出している場合がある。
正極活物質層202の厚さは、20μm以上200μm以下の間で所望の厚さを選択する。なお、クラックや剥離が生じないように、正極活物質層202の厚さを適宜調整することが好ましい。
正極活物質においては、キャリアイオンの挿入により体積が膨張する材料がある。このような材料を用いた蓄電装置は、充放電により、正極活物質層が脆くなり、正極活物質層の一部が微粉化又は崩壊してしまい、結果的に蓄電装置の信頼性が低下する。しかしながら、グラフェン又は多層グラフェンを用いる正極活物質層は、正極活物質が充放電により体積膨張しても、当該周囲をグラフェンが覆うため、正極活物質層の微粉化又は崩壊を抑制することができる。即ち、グラフェン又は多層グラフェンは、充放電にともない正極活物質の体積が増減しても、正極活物質同士の結合を維持する機能を有する。このため、信頼性の高い蓄電装置を作製することができる。
そして、導電助剤及びバインダの代わりにグラフェン又は多層グラフェンを用いることで、正極203中の導電助剤及びバインダの含有量を低減させることできる。つまり、正極203の重量を低減させることができ、結果として、電極の重量あたりの電池容量を増大させることができる。
なお、正極活物質層202は、グラフェンの体積の0.1倍以上10倍以下のアセチレンブラック粒子や1次元の拡がりを有するカーボンナノファイバー等のカーボン粒子など、公知のバインダを有してもよい。
次に、負極集電体204には、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、チタンなどの金属材料、又はこれら金属材料のうち複数で構成された合金材料(例えば、ステンレス)を用いることができる。なお、負極集電体204には、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることが好ましい。また、負極集電体204には、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属材料を用いてもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属材料としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。負極集電体204は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状などの形状を適宜用いることができる。
負極活物質層205は、リチウムの溶解・析出、またはリチウムイオンの挿入・脱離が可能な材料(負極活物質)を用いることができる。負極活物質は、例えば、リチウム金属、炭素系材料、合金系材料等が挙げられる。
リチウム金属は、酸化還元電位が低く(標準水素電極に対して−3.045V)、重量及び体積当たりの比容量が大きい(それぞれ3860mAh/g、2062mAh/cm3)ため、好ましい。
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等が挙げられる。
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛が挙げられる。黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入したとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1〜0.3V vs.Li+/Li)。これにより、リチウムイオン電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
負極活物質として、リチウム金属との合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な合金系材料も用いることができる。例えば、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ag、Zn、Cd、In、Ga等のうち少なくとも一つを含む材料が挙げられる。このような元素は炭素に対して容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。このような元素を用いた合金系材料としては、例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等が挙げられる。
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
Li3−xMxNを用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させておくことでLi3−xMxNを用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。なお、上記フッ化物の電位は高いため、正極活物質として用いてもよい。
また、負極集電体204を用いず、上記列挙した負極活物質層205に適用できる材料(負極活物質)単体を負極206として用いてもよい。
また、負極活物質層205の表面にグラフェン又は多層グラフェンを形成してもよい。このようにすることで、リチウムの溶解若しくは析出、又は、リチウムイオンの吸蔵(挿入)若しくは放出(脱離)によって生じる負極活物質層205に与える影響を抑制することができる。該影響とは、負極活物質層205が膨張又は収縮することによる負極活物質層205の微粉化又は剥離である。
非水電解質207は、実施の形態1に記載した非水電解質を用いることができる。本実施の形態では、蓄電装置200をリチウム二次電池として機能させるため、キャリアイオンであるリチウムイオンを移送することが可能で、且つリチウムイオンが安定して存在することが可能なリチウム塩を用いる。当該リチウム塩としては、実施の形態1に列挙したリチウム塩が挙げられる。
なお、非水電解質207に含まれる塩は、上記列挙したキャリアイオンを有し、正極活物質層202に対応した塩であればよい。例えば、蓄電装置200のキャリアイオンを、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとする場合には、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、ストロンチウム塩又はバリウム塩など)、ベリリウム塩又はマグネシウム塩などを用いればよい。
セパレータ208として、絶縁性の多孔体を用いる。例えば、紙、不織布、ガラス繊維、又はナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンといった合成繊維、又は合成樹脂、セラミックなどで形成されたものを用いればよい。ただし、非水電解質207に溶解しない材料を選ぶ必要がある。
また、蓄電装置200では、正極203、負極206、及びセパレータ208が積層された構造を示しているが、蓄電装置の外装形態によっては、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
なお、本実施の形態では、蓄電装置の外装形態として、密封されたコイン型を示しているが、これに限定されない。つまり、本発明の一態様に係る蓄電装置の外装形態として、ラミネート型、円筒型、角型など様々な形状を採用することができる。例えば、蓄電装置の外装形態をラミネート型とした場合、蓄電装置に可撓性が付与されるため、フレキシビリティを要求される用途に好適である。ラミネート型の外装形態の一例としては、図5に示す構成とすることができる。
〈ラミネート型二次電池の構成〉
図5にラミネート型の蓄電装置200aの上面図を示す。
図5に示すラミネート型の蓄電装置200aは、上記に示した正極集電体201と正極活物質層202を有する正極203と、負極集電体204と負極活物質層205を有する負極206を有している。
また、図5に示すラミネート型の蓄電装置200aは、正極203及び負極206との間にセパレータ208を有する。つまり、ラミネート型の蓄電装置200aは、正極203、負極206、セパレータ208を筐体209a中に設置し、筐体209a中に非水電解質207を有する蓄電装置である。
図5では、下から順に負極集電体204、負極活物質層205、セパレータ208、正極活物質層202、正極集電体201が配置されている。負極集電体204、負極活物質層205、セパレータ208、正極活物質層202、正極集電体201は、筐体209a内に設けられる。また筐体209a内は非水電解質207で満たされている。
図5の正極集電体201及び負極集電体204は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体201の一部及び負極集電体204の一部は、筐体209から外側に露出するように配置される。
また、筐体209aは、上述した筐体209に用いることのできる材料の他に、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる内面の上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。このような三層構造とすることで、電解液や気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保し、併せて耐電解液性を有する。
なお、ラミネート型の蓄電装置200aは、図5に示した構造に限定されるものではなく、他の構造を有するものであってもよい。例えば、図5においては、シート状の正極203と負極206とを一枚ずつ重ねた構造について説明したが、電池容量を増加させるためにシート状の正極203と負極206の積層構造を捲回し、または複数枚重ね合わせる構造としてもよい。
〈コイン型二次電池の作製方法〉
次に、図1(A)、(B)に示す蓄電装置200の作製方法について説明する。まず、正極203の作製方法について説明する。
正極集電体201及び正極活物質層202の材料ついては上記列挙した材料から選択する。ここでは、正極活物質層202の正極活物質をリン酸鉄リチウム(LiFePO4)とする。
正極集電体201上に、正極活物質層202を形成する。正極活物質層202の形成方法は、塗布法又は上記列挙した材料をターゲットに用いたスパッタリング法により形成すればよい。正極活物質層202を塗布法によって形成する場合は、正極活物質材料に、導電助剤やバインダなどを混合してペースト化したスラリーを作製した後、当該スラリーを正極集電体201上に塗布して乾燥させて形成する。正極活物質層202を塗布法で形成する際、必要に応じて加圧成形するとよい。以上により、正極集電体201上に正極活物質層202が形成された正極203を作製できる。
正極活物質層202にグラフェン又は多層グラフェンを用いる場合は、少なくとも正極活物質材料及び酸化グラフェンを混合してスラリーを作製し、当該スラリーを正極集電体201上に塗布して乾燥させて形成する。当該乾燥は、還元雰囲気での加熱によって行う。これにより、正極活物質を焼成すると共に、酸化グラフェンに含まれる酸素を脱離させる還元処理を行うことができ、グラフェンを形成することができる。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て還元されず、一部の酸素はグラフェンに残存する。
次に、負極206の作製方法について説明する。
負極集電体204及び負極活物質層205の材料(負極活物質)は上記列挙した材料から選択し、塗布法、化学気相成長法又は物理気相成長法を用いて、負極集電体204上に負極活物質層205を形成すればよい。なお、負極活物質層205に導電助剤及びバインダを用いる場合は、上記列挙した材料から適宜選択して用いる。
ここで、負極集電体204は、上記列挙した形状の他に、図3(A)のように凹凸を有する形状に加工したものを用いてもよい。図3(A)は、負極集電体の表面部分を拡大して模式的に示した断面図である。負極集電体204は、複数の突起部301bと、複数の突起部のそれぞれが共通して接続する基礎部301aを有する。図3(A)においては基礎部301aを薄く図示しているが、突起部301bに対して基礎部301aは極めて厚い。
複数の突起部301bは、基礎部301aの表面に対して実質的に垂直方向に延びている。ここで「実質的に」とは、基礎部301aの表面と突起部の長手方向における中心軸とのなす角が90°であることが好ましいが、負極集電体の製造工程における水平だしの誤差や、突起部301bの製造工程における工程ばらつき、充放電の繰り返しによる変形等による垂直方向からの若干の逸脱を許容することを趣旨とした語句である。具体的には、基礎部301aの表面と突起部の長手方向における中心軸とのなす角が90°±10°以下であればよく、好ましくは90°±5°以下である。
なお、図3(A)に示した凹凸を有する形状の負極集電体204を作製するには、負極集電体上にマスクを形成し、当該マスクを用いて当該負極集電体をエッチングし、当該マスクを除去することで作製できる。それゆえ、図3(A)に示した凹凸を有する形状の負極集電体204を作製する場合は、負極集電体204として、ドライエッチングの加工に非常に適した材料であり、高いアスペクト比の凹凸形状を形成することが可能であるチタンを用いることが好ましい。また、当該マスクは、フォトリソグラフィの他、インクジェット法、印刷法等を用いて形成することもでき、特に、熱ナノインプリント法及び光ナノインプリント法に代表される、ナノインプリント法を用いても形成することができる。
図3(A)に示した凹凸を有する形状の負極集電体204上に負極活物質層205を形成すると、当該凹凸を覆うように負極活物質層205が形成される(図3(B)参照)。
ここでは、負極集電体204としてチタン箔を用い、負極活物質層205として、化学気相成長法又は物理気相成長法により形成したシリコンを用いる。
負極活物質層205としてシリコンを用いる場合、当該シリコンは、非晶質シリコン、又は、微結晶シリコン、多結晶シリコン若しくは単結晶シリコンなど結晶性を有するシリコンとすることができる。
また、負極活物質層205として、微結晶シリコンを負極集電体204上に形成し、微結晶シリコン中に存在する非結晶シリコンをエッチングにより除去したものを用いてもよい。微結晶シリコン中に存在する非結晶シリコンを除去すると、残った微結晶シリコンの表面積が大きくなる。微結晶シリコンの形成方法としては、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタリング法を用いることができる。
また、負極活物質層205を、負極集電体204上にLP(Low Pressure)CVD法を用いて形成したウィスカー状のシリコンとしてもよい(図4(A)乃至図4(C)参照)。なお、本明細書等において、ウィスカー状のシリコンとは、共通部401aと、共通部401aから髭状(紐状又は繊維状)に突出した領域401bを有するシリコンをいう。
ウィスカー状のシリコンが、非晶質シリコンで形成されている場合、イオンの吸蔵放出に伴う体積変化に強い(例えば、体積膨張に伴う応力を緩和する)ため、繰り返しの充放電によって、負極活物質層が微粉化又は剥離することを防止でき、サイクル特性がさらに向上した蓄電装置を作製することができる(図4(A)参照)。
ウィスカー状のシリコンが、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンのように結晶性を有するシリコンで形成されている場合、電子及びイオンの伝導性に優れた結晶性を有する結晶構造が集電体と広範囲に接している。そのため、負極全体の導電性をさらに向上させることができ、充放電レート特性がさらに向上した蓄電装置を作製することができる(図4(B)参照)。
さらに、ウィスカー状のシリコンは、結晶性を有するシリコンで形成された芯402と、非晶質シリコンで芯を覆う外殻404と、で構成されていてもよい(図4(C)参照)。この場合、外殻404である非晶質シリコンは、イオンの吸蔵放出に伴う体積変化に強い(例えば、体積膨張に伴う応力を緩和する)という特色を有する。また、芯402である結晶性を有するシリコンは、電子及びイオンの伝導性に優れており、イオンを吸蔵する速度及び放出する速度が単位質量あたりで速いという特徴と有する。従って、芯402及び外殻404を有するウィスカー状のシリコンを負極活物質層205として用いることで、充放電レート特性及びサイクル特性が向上した蓄電装置を作製することができる。
なお、図4(C)において、共通部401aは、芯402を構成する結晶性を有するシリコンが負極集電体204の上面の一部と接する形態の他に、負極集電体204の上面全てが結晶性を有するシリコンと接する形態であってもよい。
負極活物質層205の厚さは、20μm以上200μm以下の間で所望の厚さを選択する。
また、負極活物質層205の表面にグラフェン又は多層グラフェンで形成する場合は、グラファイト又は酸化グラファイトが含まれる溶液に、負極活物質層205を設けた負極集電体204を参照電極と共に浸し、当該溶液を電気泳動し、加熱して還元処理をすることで実施できる。また、負極活物質層205の表面にグラフェン又は多層グラフェンで形成するには、当該溶液を用いたディップコート法でも実施でき、ディップコートした後は、加熱し還元処理すればよい。
なお、負極活物質層205にリチウムイオンをプレドープしてもよい。リチウムイオンのプレドープ方法としては、スパッタリング法により負極活物質層205表面にリチウム層を形成すればよい。又は、負極活物質層205の表面にリチウム箔を設けることでも、負極活物質層205にリチウムイオンをプレドープすることができる。
非水電解質207は実施の形態1に記載した方法で作製することができる。
次に、正極203、セパレータ208、及び負極206を非水電解質207に含浸させる。次に、筐体209上に、負極206、セパレータ208、ガスケット221、正極203、及び筐体211の順に積層し、「コインかしめ機」で筐体209及び筐体211をかしめれば、蓄電装置200を作製することができる。
なお、筐体211及び正極203の間、または筐体209及び負極206の間に、スペーサー、及びワッシャーを入れて、筐体211及び正極203の接続、並びに筐体209及び負極206の接続をより高めてもよい。
本実施の形態では、蓄電装置の一例としてリチウム二次電池について説明したが、本発明の一態様に係る蓄電装置はこれに限定されない。例えば、本発明の一態様に係る非水電解質を用いることで、リチウムイオンキャパシタを作製できる。
リチウムイオン及びアニオンの一方又は双方を可逆的に吸着と脱離できる材料を用いて正極を形成し、上記列挙した負極活物質材料やポリアセン有機半導体(PAS)のような導電性高分子などを用いて負極を形成し、実施の形態1で説明した非水電解質を用いてリチウムイオンキャパシタを作製することができる。
また、リチウムイオン及びアニオンの一方又は双方を可逆的に吸着と脱離できる材料を用いて、正極及び負極を形成し、実施の形態1で説明した非水電解質を用いることで電気二重層キャパシタを作製できる。
また、本実施の形態は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本発明の一態様に係る蓄電装置は、電力により駆動する様々な電気機器の電源として用いることができる。
本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器の具体例として、表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、エアコンディショナーなどの空調設備、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、透析装置などが挙げられる。また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車、内燃機関と電動機を併せ持った複合型自動車(ハイブリッドカー)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車などが挙げられる。
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための蓄電装置(主電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができる蓄電装置(無停電電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行うための蓄電装置(補助電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。
図6に、上記電気機器の具体的な構成を示す。図6において、表示装置5000は、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器の一例である。具体的に、表示装置5000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体5001、表示部5002、スピーカー部5003、蓄電装置5004等を有する。蓄電装置5004は、筐体5001の内部に設けられている。表示装置5000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、蓄電装置5004を無停電電源として用いることで、表示装置5000の利用が可能となる。
表示部5002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図6において、据え付け型の照明装置5100は、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置5100は、筐体5101、光源5102、蓄電装置5103等を有する。図6では、蓄電装置5103が、筐体5101及び光源5102が据え付けられた天井5104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置5103は、筐体5101の内部に設けられていても良い。照明装置5100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、蓄電装置5103を無停電電源として用いることで、照明装置5100の利用が可能となる。
なお、図6では天井5104に設けられた据え付け型の照明装置5100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井5104以外、例えば側壁5105、床5106、窓5107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
また、光源5102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
図6において、室内機5200及び室外機5204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機5200は、筐体5201、送風口5202、蓄電装置5203等を有する。図6では、蓄電装置5203が、室内機5200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置5203は室外機5204に設けられていても良い。或いは、室内機5200と室外機5204の両方に、蓄電装置5203が設けられていてもよい。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機5200と室外機5204の両方に蓄電装置5203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
なお、図6では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
図6において、電気冷凍冷蔵庫5300は、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫5300は、筐体5301、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303、蓄電装置5304等を有する。図6では、蓄電装置5304が、筐体5301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫5300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫5300の利用が可能となる。
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫5300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置5304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置5304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
また、本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
次に、電気機器の一例である携帯情報端末について、図7を用いて説明する。
図7(A)及び図7(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。図7(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a及び表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルの領域9632b表示されているテンキーのうち、キーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図7(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図7(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する。なお、図7(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示しており、バッテリー9635は、本発明の一態様に係る蓄電装置を有している。
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図7(A)及び図7(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の一面または二面に効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図7(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図7(C)にブロック図を示し説明する。図7(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至スイッチSW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至スイッチSW3が、図7(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力電送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
また、本発明の一態様に係る蓄電装置を具備していれば、図7に示した電気機器に特に限定されないことは言うまでもない。
また、本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
さらに、本発明の一態様に係る蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体の例について、図8を用いて説明する。
本発明の一態様に係る蓄電装置を制御用のバッテリーに用いることができる。制御用のバッテリーは、プラグイン技術や非接触給電による外部からの電力供給により充電をすることができる。なお、移動体が鉄道用電気車両の場合、架線や導電軌条からの電力供給により充電をすることができる。
図8(A)及び(B)は、電気自動車の一例を示している。電気自動車9700には、蓄電装置9701が搭載されている。蓄電装置9701の電力は、制御回路9702により出力が調整されて、駆動装置9703に供給される。制御回路9702は、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置9704によって制御される。
駆動装置9703は、直流電動機若しくは交流電動機単体、又は電動機と内燃機関と、を組み合わせて構成される。処理装置9704は、電気自動車9700の運転者の操作情報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路9702に制御信号を出力する。制御回路9702は、処理装置9704の制御信号により、蓄電装置9701から供給される電気エネルギーを調整して駆動装置9703の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
蓄電装置9701は、プラグイン技術による外部からの電力供給により充電することができる。例えば、商用電源から電源プラグを通じて蓄電装置9701に充電する。充電は、AC/DCコンバータ等の変換装置を介して、一定の電圧値を有する直流定電圧に変換して行うことができる。蓄電装置9701として、本発明の一態様に係る蓄電装置を搭載することで、充電時間の短縮化などに寄与することができ、利便性を向上させることができる。また、充放電速度の向上により、電気自動車9700の加速力の向上に寄与することができ、電気自動車9700の性能の向上に寄与することができる。また、蓄電装置9701の特性の向上により、蓄電装置9701自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、燃費を向上させることができる。
また、本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例では、本発明の一態様である非水電解質に含まれる非水溶媒の燃焼性について説明する。具体的には、構造式(α−11)で表されるイオン液体の1,3−ジメチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(略称:3mPP13−FSA)と、環状炭酸エステル(本実施例においては、エチレンカーボネート(EC)及びプロピレンカーボネート(PC))とを混合した非水溶媒について、引火の有無を確認した。
まず、3mPP13−FSA(略称)の合成例を説明する。
大気中で、ギ酸(15.6g,300mmol)に、水冷下において3−メチルピペリジン(19.8g,200mmol)をゆっくり加えた。次いで、この溶液に、ホルムアルデヒド(22.5ml,300mmol)を加え、この溶液を100℃で加熱し、気泡発生を確認した後、室温に戻し約30分攪拌を行った。その後、加熱還流を1時間行った。
得られた溶液を、炭酸ナトリウムを用いて中和後、ヘキサンにてその溶液を抽出し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した。この混合物をろ過して硫酸マグネシウムを除去し、得られたろ液を濃縮することにより、淡黄色液体;1,3−ジメチルピペリジン(12.8g,113mmol)を得た。
この淡黄色液体を加えたテトラヒドロフラン(10ml)中に、ブロモプロパン(20.85g,170mmol)を加え、24時間、加熱還流を行ったところ、白色沈殿が生じた。この混合物をろ過し、得られた固体を、エタノール/酢酸エチルで再結晶した。得られた固体を80℃で24時間減圧乾燥を行うことで、白色固体;1,3−ジメチル−1−プロピルピペリジニウムブロミド(19.4g,82mmol)を得た。
次に、1,3−ジメチル−1−プロピルピペリジニウムブロミド(17.0g,72mmol)とカリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(17.0g,78mmol)を純水に入れ、溶液を攪拌することにより直ちに純水に不溶なイオン液体を得た。得られた混合物を塩化メチレンで抽出した後、抽出溶液を純水で6回洗浄し、−80℃のトラップを介しながら60℃で真空乾燥することによって、イオン液体;1,3−ジメチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(20.6g,61mmol)を得た。
核磁気共鳴法(NMR)及び質量分析法(MS)によって、上記ステップで合成した化合物が目的物である3mPP13−FSA(略称)であることを確認した。
得られた化合物の1H NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl3,400MHz,298K):δ(ppm)1.02〜1.09(m,6H),1.21〜1.75(m,2H),1.83〜1.91(m,2H),1.94〜1.97(m,2H),1.97〜2.15(m,1H),2.77〜3.43(m,2H),3.05,3.10(m,3H),3.15〜3.54(m,2H),3.25〜3.29(m,2H)
また、1H NMRチャートを図9(A)、(B)に示す。なお、図9(B)は、図9(A)における0.75ppm〜3.75ppm範囲を拡大して表したチャートである。
得られた化合物の質量分析(Electro Ionization Mass Spectrum、EI−MS)の測定結果を以下に示す。
MS(EI−MS):
M+= 156.2 (156.2;C10H22N)
M−= 180.0 (179.9;F2NO4S2)
次に、得られた3mPP13−FSA(略称)とエチレンカーボネート(EC)を混合した試料を作製した。なお、3mPP13−FSA(略称)とエチレンカーボネート(EC)の混合比(重量比)を1:1とした非水溶媒を非水溶媒1、当該混合比を7:3とした非水溶媒を非水溶媒2とする。また、3mPP13−FSA(略称)とプロピレンカーボネート(PC)の混合比(重量比)を1:1とした非水溶媒を非水溶媒3、当該混合比を7:3とした非水溶媒を非水溶媒4とする。
非水溶媒1乃至非水溶媒4をそれぞれガラス繊維濾紙に染み込ませ、非水溶媒1を染み込ませたガラス繊維濾紙を試料1とし、非水溶媒2を染み込ませたガラス繊維濾紙を試料2とし、非水溶媒3を染み込ませたガラス繊維濾紙を試料3とし、非水溶媒4を染み込ませたガラス繊維濾紙を試料4とした。
また、比較例として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DEC)を体積比1:1で混合した非水溶媒に六フッ化リン酸リチウムが1mol/Lで含まれている非水電解質を染み込ませたガラス繊維濾紙を試料5とした。
次に、試料1乃至試料5それぞれに炎を近づけ、3秒後に引火の有無を確認した。3秒後に引火が無かった場合は、さらに2秒間炎にさらし、引火の有無を確認した。炎を近づけてから5秒後に引火が無かった場合は、さらに5秒間炎にさらし、引火の有無を確認した。つまり、引火の有無の確認は、炎を近づけてから3秒後、5秒後、10秒後に行った。
表1に結果を示す。表1において、バツ印は試料に引火したことを示し、マル印は試料に引火しなかったことを示す。
表1より、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DEC)のみを有する試料5は炎を近づけた後、すぐに引火することが確認された。試料1及び試料3は、炎を近づけてから3秒間は引火しなかったが、炎を近づけてから5秒後では引火することが確認された。試料2及び試料4は、炎を近づけてから10秒間引火は確認されなかった。
以上より、本発明の一態様に係る非水溶媒に含まれる環状炭酸エステルの含有量が50重量パーセント未満であると、難燃性の非水溶媒として機能することが確認できた。とくに、試料2及び試料4の結果が示すように、非水溶媒に含まれる環状炭酸エステルの含有量が30重量パーセント以下であると、好ましい。したがって、本発明の一態様の非水溶媒は、環状炭酸エステルの含有量が、該非水溶媒の単位重量に対して50重量パーセント未満、より好ましくは30重量パーセント以下である。このように本発明の一態様に係る非水溶媒を用いることで、安全性の高い蓄電装置を作製することができる。
また、本実施例は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例においては、本発明の一態様である非水電解質(試料6及び試料7)、並びに比較用の非水電解質(試料8及び試料9)の熱重量−示差熱分析(TG−DTA分析:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)について説明する。
本実施例で作製した各試料の詳細は以下の通り。
(試料6)
試料6は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)を30重量%混合させた混合液体に、アルカリ金属塩であるリチウムビストリフルオロメタンスルホニルアミド(略称:LiTFSA)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料7)
試料7は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるプロピレンカーボネート(PC)を30重量%混合させた混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料8)
試料8は、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、をそれぞれ体積比1:1の割合で混合された混合液体に、アルカリ金属塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度1mol/Lで溶解された市販の非水電解質を用いた。
(試料9)
試料9は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
なお、TG−DTA分析としては、Ar雰囲気中でサンプリングを行い、He雰囲気中において昇温速度10℃/minにて600℃まで昇温し測定を行った。
試料6のTG−DTA分析結果を図10に、試料7のTG−DTA分析結果を図11に、試料8のTG−DTAの分析結果を図12に、試料9のTG−DTAの分析結果を図13に、それぞれ示す。なお、図10乃至図13において、第1の縦軸は、wight(%)を、第2の縦軸は、Heat Flow(μV)を、横軸は、Temperature(℃)を、それぞれ表す。また、図10乃至図13において、太線は、熱重量(TG)の結果を、細線は、示差熱(DTA)の結果を、それぞれ表す。
図10に示す熱重量(TG)曲線では、初期重量から250℃までの重量減少は、概ね24%と確認された。また、初期重量から約600℃までの重量減少は、概ね93%と確認された。また、図10に示す示差熱(DTA)曲線では、ピークトップ159℃付近において吸熱反応が、ピークトップ325℃付近、335℃付近、及び444℃付近において発熱反応が、それぞれ確認された。
図11に示す熱重量(TG)曲線では、初期重量から250℃までの重量減少は、概ね24%と確認された。また、初期重量から約600℃までの重量減少は、概ね94%と確認された。また、図11に示す示差熱(DTA)曲線では、ピークトップ159℃付近において吸熱反応が、ピークトップ327℃付近、335℃付近、及び445℃付近において発熱反応が、それぞれ確認された。
図12に示す熱重量(TG)曲線では、初期重量から250℃までの重量減少は、概ね68%と確認された。また、270℃近傍で初期重量から95%以上の重量減少が確認された。また、図12に示す示差熱(DTA)曲線では、ピークトップ135℃付近において吸熱反応が、ピークトップ265℃付近において発熱反応が、それぞれ確認された。
図13に示す熱重量(TG)曲線では、初期重量から250℃までの重量減少は、概ね0.5%と確認された。初期重量から600℃までの重量減少は、概ね87%と確認された。また、図13に示す示差熱(DTA)曲線では、ピークトップ140℃付近において吸熱反応が、ピークトップ318℃付近、325℃付近、328℃付近、399℃付近、及び424℃付近において発熱反応が、それぞれ確認された。
図10及び図11より本発明の一態様の試料6及び試料7は、250℃までに初期重量から24%の重量減少が確認される。これは、非水電解質中に混合している環状炭酸エステル(本実施例においては、エチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネート)が、蒸発した結果を示唆している。
また、図12より比較用の試料8は、250℃までに初期重量から68%の重量減少が確認される。これは、比較用の試料8は環状炭酸エステルを含む有機溶媒とアルカリ金属塩で構成された非水電解質のため、有機溶媒の揮発性が高く蒸発した結果を示唆している。また、図13より比較用の試料9は、非水電解質中に環状炭酸エステルを有さないため、初期重量から250℃までの重量減少が少ない。
以上のように、本発明の一態様の非水電解質は、環状炭酸エステルを含む有機溶媒とアルカリ金属塩で構成された非水電解質よりも耐熱性が優れていることが確認された。一方でイオン液体とアルカリ金属塩で構成された非水電解質よりも耐熱性が低い。しかしながら、本発明の一態様の非水電解質は、250℃までの初期重量の重量減少が24%と低いため、環状炭酸エステルを含む有機溶媒とアルカリ金属塩で構成された非水電解質よりも高温側での使用できる温度範囲が広い。したがって、本発明の一態様の非水電解質は、使用できる温度範囲が広く、且つ難燃性であることが確認された。
また、本実施例は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例においては、本発明の一態様である非水電解質(試料10及び試料11)、並びに比較用の非水電解質(試料12)の示差走査熱量測定(DSC測定:(Differential Scanning Calorimetry))を行った。
本実施例で作製した各試料の詳細は以下の通り。
(試料10)
試料10は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)を30重量%混合させた混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料11)
試料11は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるプロピレンカーボネート(PC)を30重量%混合させた混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料12)
試料12は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
なお、DSC測定の測定方法としては、各試料をそれぞれ大気雰囲気で室温から−120℃付近まで降温速度−10℃/minで冷却し、その後、−120℃付近から100℃まで昇温速度10℃/minで加熱した。その後、各試料をさらに100℃〜−100℃まで冷却し、−100℃から100℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、その後−120℃まで冷却し、再び−100℃から100℃まで測定を行った。
試料10のDSC測定結果を図14に、試料11のDSC測定結果を図15に、試料12のDSC測定結果を図16に、それぞれ示す。なお、図14乃至図16において、縦軸が熱量(mW)を、横軸が温度(℃)を、それぞれ示す。
図14乃至図16より、試料10乃至試料12は、−80℃付近にガラス転移点(TG)を有するのが確認される。また、図14及び図15より、本発明の一態様である試料10及び試料11は、明確な凝固点が確認されない。一方、図16に示す比較用の試料12は、−20℃付近に凝固点が確認された。
なお、図14及び図15にて確認される98℃付近のベースラインのシフトは、試料起因ではなく、測定起因に由来するものである。
以上のように、本発明の一態様である試料10及び試料11は、明確な凝固点を確認することが出来なかった。一方で比較用の試料である試料12は、−20℃付近に凝固点が確認された。本発明の一態様である試料10及び試料11は、イオン液体と、環状炭酸エステル(本実施例においては、エチレンカーボネート及び/またはプロピレンカーボネート)と、アルカリ金属塩により構成された非水電解質である。一方で比較用の試料である試料11は、イオン液体と、アルカリ金属塩により構成された非水電解質である。このように、非水電解質中の環状炭酸エステルの有無によって、凝固点が消失または凝固点が発現する現象が生じる。本発明の一態様である試料10及び試料11は、明確な凝固点を有さないことから、低温環境下でも非水電解質として機能できることが示唆される結果である。
また、本実施例は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例においては、本発明の一態様である非水電解質(試料13乃至試料16)、並びに比較用の非水電解質(試料17乃至試料18)の粘性について測定を行った。
なお、本実施例の非水電解質の粘性は、回転式粘度計を用いて測定を行った。粘度測定の条件としては、測定機器として、VT−35型粘度計Model VTE−35(東機産業株式会社製)を用いた。また、測定方法としては、装置を25℃に設定し、各試料0.6mLを試料台上に載せ、コーンローターを設置し、該コーンローターを各試料、それぞれ一定の回転速度で90秒以上回転させ、数値が安定した時の粘度値を読み取った。
本実施例で作製した各試料の詳細は以下の通り。
(試料13)
試料13は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)を10重量%混合された混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料14)
試料14は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)を30重量%混合された混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料15)
試料15は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるプロピレンカーボネート(PC)を10重量%混合された混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料16)
試料16は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるプロピレンカーボネート(PC)を30重量%混合された混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料17)
試料17は、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、をそれぞれ1:1の割合で混合された混合液体に、アルカリ金属塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度1mol/Lで溶解された市販の非水電解質を用いた。
(試料18)
試料18は、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
表2に示すように、試料13の粘度は156mPa・sであり、試料14の粘度は66mPa・sであり、試料15の粘度は166mPa・sであり、試料16の粘度は83mPa・sであり、試料17の粘度は5mPa・sであり、試料18の粘度は296mPa・sであった。
以上の結果より、本発明の一態様である試料13乃至試料16は、比較用の試料17と比較し粘度が高く、比較用の試料18と比較し粘度が低い結果であった。
本発明の一態様の試料13乃至試料16は、イオン液体と、環状炭酸エステルと、アルカリ金属塩と、を含む非水電解質の構成であり、比較用の試料17は、環状炭酸エステルと、アルカリ金属塩と、を含む非水電解質の構成であり、比較用の試料18は、イオン液体と、アルカリ金属塩と、を含む非水電解質の構成である。
このように、非水電解質中の構成によって、粘度を調整できることが確認できた。別言すると、本発明の一態様の非水電解質は、環状炭酸エステルとアルカリ金属塩からなる非水電解質よりも粘度が高く、イオン液体とアルカリ金属塩からなる非水電解質よりも粘度が低い。したがって、本発明の一態様の非水電解質の粘度は、5mPa・sよりも大きく296mPa・sよりも低い粘度であればよく、好ましくは6mPa・s以上250mPa・s以下であり、さらに好ましくは、6mPa・s以上200mPa・s以下である。
また、本実施例は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例においては、本発明の一態様である非水溶媒及び非水電解質を用いて蓄電装置を作製し、該蓄電装置の評価を行った。なお、該蓄電装置は、コイン型リチウムイオン二次電池とした。また、本実施例におけるコイン型リチウムイオン二次電池は、一方の電極にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いて、他方の電極にLi金属を用いたリン酸鉄リチウム−Li金属のハーフセルと、一方の電極にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いて、他方の電極に黒鉛を用いた、リン酸鉄リチウム−黒鉛のフルセルと、の2種類のセル構造の蓄電装置を作製した。
なお、フルセルとは、正極材料、及び負極材料ともに、Li金属以外の活物質を用いたリチウムイオン二次電池のセルを示し、ハーフセルとは、正極にLi金属以外の活物質を用い、負極にLi金属を用いたリチウムイオン二次電池のセルを示す。本実施例に示すハーフセルは、正極に活物質としてリン酸鉄リチウムを用い、負極にはLi金属を用いた。
また、本発明の一態様である非水溶媒と比較するため、上記ハーフセル、及びフルセルと同じセル構造で、非水溶媒及び非水電解質の条件を変えて、試料19乃至試料26を作製した。本実施例で作製したセル構造、正極、負極、及び非水電解質の条件を表3に示す。
ここで、表3に示す本実施例で作製した各試料の作製方法について、図17(A)、(B)を用いて以下説明を行う。なお、図17(A)は、ハーフセルの断面構造を示し、図17(B)はフルセルの断面構造を示す。
(試料19〜試料22:ハーフセル構造の作製方法)
試料19〜試料22は、外部端子として機能する筐体171及び筐体172と、正極148と、負極149と、リング状絶縁体173と、セパレータ156、スペーサー181と、ワッシャー183とを有する。
筐体171、及び筐体172は、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。また、スペーサー181、及びワッシャー183もステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。
正極148は、アルミニウム箔(15.958φ)の正極集電体142上に、正極活物質と導電助剤とバインダを85:8:7(重量比)の割合で有する正極活物質層143が設けられている。なお、正極活物質にはリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いた。また、導電助剤にはアセチレンブラック(AB)を用いた。また、バインダにはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。なお、正極活物質層143の条件は、膜厚50〜60μm、担持量6〜7mg/cm2、密度1.4〜1.5g/ccとした。
負極149は、Li金属を用いた。
セパレータ156は、Whatman社製のガラス繊維濾紙であるGF/Cを用いた。なお、GF/Cの膜厚は260μmとした。
試料19の非水電解質としては、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、をそれぞれ1:1の割合で混合された混合液体に、アルカリ金属塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度1mol/Lで溶解された市販の非水電解質を用いた。
試料20の非水電解質としては、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
試料21の非水電解質としては、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)を30重量%混合された混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
試料22の非水電解質としては、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるプロピレンカーボネート(PC)を30重量%混合された混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
なお、上記試料19乃至試料22の非水電解質は、正極148、負極149、及びセパレータ156に含浸させた。
その後、図17(A)に示すように、筐体171を下にして正極148、セパレータ156、リング状絶縁体173、負極149、スペーサー181、ワッシャー183、筐体172を底側から順に積層し、「コインかしめ機」で筐体171及び筐体172をかしめ、試料19乃至試料22を作製した。
(試料23〜試料26:フルセル構造の作製方法)
試料23〜試料26は、外部端子として機能する筐体171及び筐体172と、正極148と、負極150と、リング状絶縁体173と、セパレータ156、スペーサー181と、ワッシャー183とを有する。
なお、試料23〜試料26のフルセル構造の蓄電装置は、図17(A)に示すハーフセル構造の蓄電装置と、負極の構造が異なる。すなわち、試料23〜試料26は、図17(A)に示す負極149の代わりに、図17(B)に示すように負極150を用いた。
負極150は、アルミニウム箔(16.156φ)の負極集電体145上に、負極活物質とバインダを90:10(重量比)の割合で有する負極活物質層146が設けられている。なお、負極活物質には黒鉛(メソカーボンマイクロビーズ(略称:MCMB))を用い、バインダにはPVdF(略称)を用いた。
なお、試料23〜試料26の負極150以外の構成(筐体171、筐体172、正極148、リング状絶縁体173、スペーサー181、ワッシャー183)は、図17(A)に示すハーフセル構造の蓄電装置と同様の材料を用いた。
試料23の非水電解質としては、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、をそれぞれ1:1の割合で混合させた混合液体に、アルカリ金属塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度1mol/Lで溶解させた市販の非水電解質を用いた。
試料24の非水電解質としては、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
試料25の非水電解質としては、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)を30重量%混合させた混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
試料26の非水電解質としては、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるプロピレンカーボネート(PC)を30重量%混合させた混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
なお、上記試料23乃至試料26の非水電解質は、正極148、負極150、及びセパレータ156に含浸させた。
その後、図17(B)に示すように、筐体171を下にして正極148、セパレータ156、リング状絶縁体173、負極150、スペーサー181、ワッシャー183、筐体172を底側から順に積層し、「コインかしめ機」で筐体171及び筐体172をかしめ、試料23乃至試料26を作製した。
(各試料の初回充放電特性評価)
まず、上記試料19乃至試料26の初回充放電について測定を行った。該測定は、充放電測定機(東洋システム社製)を用いて、試料19乃至試料22については、25℃の恒温槽で行い、試料23乃至試料26については、60℃の恒温槽で行った。また、該測定の充電方式は、定電流方式を採用し、概略0.1C(0.1mA/cm2)のレートで定電流充電を行った後、同じCレートで放電した。
試料19の初回充放電特性の結果を図18(A)に、試料20の初回充放電特性の結果を図18(B)に、試料21の初回充放電特性の結果を図19(A)に、試料22の初回充放電特性の結果を図19(B)に、試料23の初回充放電特性の結果を図20(A)に、試料24の初回充放電特性の結果を図20(B)に、試料25の初回充放電特性の結果を図21(A)に、試料26の初回充放電特性の結果を図21(B)に、それぞれ示す。なお、図18乃至図21は、横軸が容量(mAh/g)を、縦軸が電圧(V)を、それぞれ示す。
図18乃至図21に示す通り、各試料の放電特性のカットオフ電圧(2V)における放電容量は、それぞれ、試料19が139mAh/gであり、試料20が124mAh/gであり、試料21が135mAh/gであり、試料22が132mAh/gであり、試料23が113mAh/gであり、試料24が124mAh/gであり、試料25が127mAh/gであり、試料26が128mAh/gであった。
このように、初回充放電特性においては、試料19乃至試料22に示すハーフセル構造、試料23乃至試料26に示すフルセル構造ともに、各試料の非水電解質の条件に大きな差がなく、良好な結果が得られた。
(各試料の温度条件振りによる放電特性評価)
次に、上記の初回充放電を行った上記試料19乃至試料26について、温度条件振りによる放電特性について、測定を行った。該測定は、充放電測定機(東洋システム社製)を用いて恒温槽中で行った。なお、測定温度は、25℃、0℃、−10℃、及び−25℃の温度条件振りとした。また、該測定の充電方式は、定電流方式を採用し、概略0.1C(0.1mA/cm2)のレートで定電流充電を行った後、概略0.2C(0.2mA/cm2)のレートで放電した。なお、充電時の温度は、ハーフセル(試料19乃至試料22)が25℃、フルセル(試料23乃至試料26)が60℃とした。
試料19の放電特性の結果を図22(A)に、試料20の放電特性の結果を図22(B)に、試料21の放電特性の結果を図23(A)に、試料22の放電特性の結果を図23(B)に、試料23の放電特性の結果を図24(A)に、試料24の放電特性の結果を図24(B)に、試料25の放電特性の結果を図25(A)に、試料26の放電特性の結果を図25(B)に、それぞれ示す。なお、図22乃至図25は、横軸が放電容量(mAh/g)を、縦軸が電圧(V)を、それぞれ示す。
なお、試料19及び試料23については、用いた非水電解質が−25℃では抵抗が大きくなり、放電することが極めて困難であった。したがって、図22(B)及び図24(B)中に−25℃の放電特性の結果は記載していない。
また、試料19乃至試料26の放電特性のカットオフ電圧(2V)における、放電容量をプロットした結果を図26に示す。なお、図26は、横軸が温度(℃)を、縦軸が放電容量(mAh/g)を、それぞれ示す。
図22乃至図26に示すように、各試料の25℃での放電特性のカットオフ電圧(2V)における放電容量は、それぞれ、試料19が131mAh/gであり、試料20が124mAh/gであり、試料21が137mAh/gであり、試料22が135mAh/gであり、試料23が101mAh/gであり、試料24が108mAh/gであり、試料25が120mAh/gであり、試料26が123mAh/gであった。
また、各試料の0℃での放電特性のカットオフ電圧(2V)における放電容量は、それぞれ、試料19が89mAh/gであり、試料20が21mAh/gであり、試料21が83mAh/gであり、試料22が66mAh/gであり、試料23が81mAh/gであり、試料24が21mAh/gであり、試料25が81mAh/gであり、試料26が67mAh/gであった。
また、各試料の−10℃での放電特性のカットオフ電圧(2V)における放電容量は、それぞれ、試料19が72mAh/gであり、試料20が14mAh/gであり、試料21が63mAh/gであり、試料22が33mAh/gであり、試料23が21mAh/gであり、試料24が14mAh/gであり、試料25が53mAh/gであり、試料26が33mAh/gであった。
また、各試料の−25℃での放電特性のカットオフ電圧(2V)における放電容量は、それぞれ、試料19が34mAh/gであり、試料20が1mAh/g以下であり、試料21が24mAh/gであり、試料22が9mAh/gであり、試料23が18mAh/gであり、試料24が1mAh/g以下であり、試料25が23mAh/gであり、試料26が14mAh/gであった。
以上のように、本発明の一態様である試料21、試料22、試料25、試料26は、非水電解質が環状炭酸エステルとアルカリ金属塩で構成された試料19及び試料23と比較し、測定した温度(25℃、0℃、−10℃、−25℃)において、同等以上の温度特性を有していることが確認された。また、本発明の一態様である試料21、試料22、試料25、試料26は、非水電解質がイオン液体とアルカリ金属塩で構成された試料20及び試料24と比較し、測定した温度(25℃、0℃、−10℃、−25℃)において、同等以上の温度特性を有していることが確認された。とくに、非水電解質がイオン液体とアルカリ金属塩で構成された試料20及び試料24と比較した場合、25℃での放電容量の向上も確認できるが、低い温度域(0℃、−10℃、−25℃)での放電容量の向上が顕著である。これは、本発明の一態様である、非水電解質がイオン液体と、環状炭酸エステルと、アルカリ金属塩との混合物であるため、環状炭酸エステルの性質によって、低温領域での温度特性が向上した結果を示唆している。
また、本実施例は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例においては、先の実施例5に示す蓄電装置と異なる蓄電装置を作製し、該蓄電装置の評価を行った。なお、該蓄電装置は、コイン型リチウムイオン二次電池とした。また、本実施例におけるコイン型リチウムイオン二次電池は、一方の電極にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いて、他方の電極に黒鉛を用いた、リン酸鉄リチウム−黒鉛のフルセルのセル構造の蓄電装置を作製した。
本実施例で作製したセル構造、正極、負極、及び非水電解質の条件を表4に示す。
ここで、表4に示す本実施例で作製した各試料の作製方法について、図17(B)を用いて以下説明を行う。
(試料27〜試料30:フルセル構造の作製方法)
試料27〜試料30は、外部端子として機能する筐体171及び筐体172と、正極148と、負極150と、リング状絶縁体173と、セパレータ156、スペーサー181と、ワッシャー183とを有する。
筐体171、及び筐体172は、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。また、スペーサー181、及びワッシャー183もステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。
正極148は、アルミニウム箔(15.958φ)の正極集電体142上に、正極活物質と導電助剤とバインダを94.4:0.6:5(重量比)の割合で有する正極活物質層143が設けられている。なお、正極活物質にはリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いた。また、導電助剤には酸化グラフェン(GO)を用いた。また、バインダにはPVdF(略称)を用いた。なお、正極活物質層143の条件は、膜厚40μm、担持量7.5mg/cm2、密度2.0g/ccとした。また、正極活物質層143の形成方法については、先の実施の形態2に示す正極活物質層202の作製方法を参酌することで形成することができる。
負極150は、アルミニウム箔(16.156φ)の負極集電体145上に、負極活物質とバインダを90:10(重量比)の割合で有する負極活物質層146が設けられている。なお、負極活物質には黒鉛(メソカーボンマイクロビーズ(略称:MCMB))を用い、バインダにはPVdF(略称)を用いた。なお、負極活物質層146の条件は、膜厚80μm、担持量8.0mg/cm2、密度1.1g/ccとした。
セパレータ156は、Whatman社製のガラス繊維濾紙であるGF/Cを用いた。なお、GF/Cの膜厚は260μmとした。
(試料27)
試料27の非水電解質としては、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)を30重量%混合させた混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料28)
試料28の非水電解質としては、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、環状炭酸エステルであるプロピレンカーボネート(PC)を30重量%混合させた混合液体に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
(試料29)
試料29の非水電解質としては、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、をそれぞれ3:7の割合で混合させた混合液体に、アルカリ金属塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度1mol/Lで溶解させた市販の非水電解質を用いた。
(試料30)
試料30の非水電解質としては、イオン液体である3mPP13−FSA(略称)に、アルカリ金属塩であるLiTFSA(略称)を濃度1mol/Lで溶解させた非水電解質を用いた。
なお、上記試料27乃至試料30の非水電解質は、正極148、負極150、及びセパレータ156に含浸させた。
その後、図17(B)に示すように、筐体171を下にして正極148、セパレータ156、リング状絶縁体173、負極150、スペーサー181、ワッシャー183、筐体172を底側から順に積層し、「コインかしめ機」で筐体171及び筐体172をかしめ、試料24乃至試料27を作製した。
(各試料の初回充放電特性評価)
上記試料27乃至試料30の初回充放電について測定を行った。該測定は、充放電測定機(東洋システム社製)を用いて、25℃の恒温槽で行った。また、該測定の充電方式は、定電流方式を採用し、概略0.1C(0.1mA/cm2)のレートで定電流充電を行った後、同じCレートで放電した。
試料27の初回充放電特性の結果を図27(A)に、試料28の初回充放電特性の結果を図27(B)に、試料29の初回充放電特性の結果を図28(A)に、試料30の初回充放電特性の結果を図28(B)に、それぞれ示す。なお、図27及び図28は、横軸が容量(mAh/g)を、縦軸が電圧(V)を、それぞれ示す。
図27及び図28に示すように、試料27、試料28、試料29、及び試料30の放電特性のカットオフ電圧(2V)における放電容量は、それぞれ、128mAh/g、130mAh/g、103mAh/g、125mAh/gであった。したがって、本発明の一態様である試料27及び試料28は、比較用の試料29及び試料30よりも放電容量が大きいことが確認された。
また、本実施例は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。