本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関し、特にその定着装置の過熱に対する保護に関するものである。
従来から、電子写真プロセスを用いた画像形成装置が知られている。この画像形成装置においては、電子写真プロセスなどの画像形成部により転写紙(用紙、シート、被記録材などという)上に形成された未定着画像(トナー像)が、定着装置により転写紙上に加熱定着されるようになっている。定着装置としては、例えば、特許文献1ないし16に記載された、ハロゲンヒータを熱源とする熱ローラ式の定着装置や、セラミック面発ヒータを熱源とするフィルム加熱式の定着装置が知られている。
一般的に、このようなヒータへは、トライアック等のスイッチング素子を介して、交流電源から電力が供給されるようになっている。
ハロゲンヒータを熱源とする定着装置においては、定着装置の温度が、サーミスタ感温素子のような温度検出素子により検出され、検出された温度に基づいて、シーケンスコントローラによりスイッチング素子がオン/オフ制御される。すなわちハロゲンヒータへの電力供給がオン/オフ制御され、定着装置の温度が目標の温度になるように温度制御される。
他方、セラミック面発ヒータを熱源とする定着装置においては、シーケンスコントローラにより、温度検出素子により検出された温度と、予め設定されている目標温度との温度差に基づきスイッチング素子が制御される。すなわち、検出された温度と、予め設定されている目標温度との温度差に基づき算出されたセラミック面発ヒータに供給する電力比に相当する位相角または波数が決定される。そして、決定された位相または波数で、スイッチング素子がオン/オフ制御され、定着装置の温度が制御される。
また異常時のヒータの損傷を防ぐために、電流検出装置によりヒータに過電流が流れているのを検出した場合は、安全回路にてヒータへの通電を遮断するという制御を行っているものもある。しかしながら定着装置の状態によってヒータの損傷が発生するまでの時間が異なり、定着装置の状態に応じて安全回路を動作させる必要がある。
特開昭63−313182号公報
特開平2−157878号公報
特開平4−44075号公報
特開平4−44076号公報
特開平4−44077号公報
特開平4−44078号公報
特開平4−44079号公報
特開平4−44080号公報
特開平4−44081号公報
特開平4−44082号公報
特開平4−44083号公報
特開平4−204981号公報
特開平4−204982号公報
特開平4−204983号公報
特開平4−204984号公報
しかしながら、従来の定着装置の構成では、加圧部材が回転していないときに、ヒータ異常状態に陥った場合に発熱体の熱を十分に加圧部材に伝えることができなくなるため発熱体自体の損傷を招いてしまう可能性があった。
また前述のような加圧部材が停止している状態においては同様の原因で、発熱体の昇温速度が回転状態と比較して速くなってしまい、定着装置の過熱による損傷までの時間も短くなっていた。
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、定着装置の回転、停止にかかわらず、定着装置における発熱体およびその周辺部材の過熱による損傷の防止ができる画像形成装置を提供することを課題とするものである。
前記課題を解決するため、本発明では、画像形成装置を次の(1),(2)のとおりに構成する。
(1)筒状のフィルムと、前記フィルムの内面に接触するヒータと、前記フィルムを介して前記ヒータと共に記録紙を搬送するニップ部を形成する加圧ローラと、を有し、前記ニップ部で記録紙上の未定着画像を記録紙に加熱定着する定着部と、前記ヒータに供給する電力を制御するコントローラと、前記コントローラとは独立した回路であり、異常時に商用電源から前記ヒータへの給電回路を開放する安全回路と、を有する画像形成装置において、前記ヒータに流れる電流を検出する電流検出手段と、前記加圧ローラの回転を検知する回転検知手段と、を有し、前記回転検知手段の出力は前記安全回路に入力しており、前記安全回路は、前記電流検出手段の検出電流と電流閾値を比較するコンパレータと、前記電流閾値を前記回転検知手段からの出力に応じて設定する閾値設定部と、を有し、前記検出電流が前記電流閾値を超えると前記給電回路を開放する信号を出力し、前記閾値設定部は、前記加圧ローラが回転停止している時の前記電流閾値を、回転している時の前記電流閾値よりも低く設定することを特徴とする画像形成装置。
本発明によれば、定着装置の回転、停止にかかわらず、定着装置における発熱体およびその周辺部材の過熱による損傷を防止することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例により詳細に説明する。
図2は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置の1例であるレ−ザプリンタの概略構成を示す図である。以下このレ−ザプリンタを実施例1として説明する。
レーザビームプリンタ本体101(以下、本体101)は、記録紙Sを収納するカセット102を有している。カセット102には、記録紙Sの有無を検知する記録紙有無センサ103、記録紙Sのサイズを検知するカセットサイズセンサ104(復数個のマイクロスイッチで構成される)、カセット102から記録紙Sを繰り出す給紙ローラ105等が設けられている。そして、給紙ローラ105の下流には記録紙Sを同期搬送するレジストローラ対106が設けられている。また、レジストローラ対106の下流にはレーザスキャナ部107からのレーザ光に基づいて記録紙S上にトナー像を形成する画像形成部108が設けられている。さらに、画像形成部108の下流には記録紙S上に形成されたトナー像を熱定着する定着装置109が設けられている。定着装置109の下流には排紙部の搬送状態を検知する排紙センサ110、記録紙Sを排紙する排紙ローラ111、記録の完了した記録紙Sを積載する積載トレイ112が設けられている。この記録紙Sの搬送基準は、記録紙Sの搬送方向に直交する方向の長さ、つまり記録紙Sの幅に対して中央になるように設定されている。
また、前記レーザスキャナ107は、後述するビデオコントローラ127から送出される画像信号128(画像信号VDO)に基づいて変調されたレーザ光を発光するレーザユニット113、このレーザユニット113からのレーザ光を後述する感光ドラム117上に走査するためのポリゴンモータ114、結像レンズ115、折り返しミラー116等により構成されている。
前記画像形成部108は、公知の電子写真プロセスに必要な、感光ドラム117、1次帯電ローラ119、現像器120、転写帯電ローラ121、クリーナ122等から構成されている。また、定着装置109は、定着フィルム109a、加圧ローラ109b、定着フィルム内部に設けられたセラミックヒータ109c、セラミックヒータの表面温度を検出するサーミスタ109dから構成されている。
また、メインモータ123は、給紙ローラ105には給紙ローラクラッチ124を介して、レジストローラ対106にはレジストローラクラッチ125を介して駆動力を与えている。メインモータ123は、さらに感光ドラム117を含む画像形成部108の各ユニット、排紙ローラ111にも駆動力を与えている。定着装置109に対しては図示しない定着モータによって弾性加圧ローラ109bに駆動力を与える。
11は、エンジンコントローラであり、レーザスキャナ部107、画像形成部108、定着装置109による電子写真プロセスの制御、前記本体101内の記録紙の搬送制御を行っている。
127は、ビデオコントローラであり、パーソナルコンピュータ等の外部装置131と汎用のインタフェース(セントロニクス、RS232C等)130で接続されている。そして、この汎用インタフェースから送られてくる画像情報をビットデータに展開し、そのビットデータを画像信号128として、エンジンコントローラ11へ送出している。
図1に、本実施例の要部である、セラミックヒ−タの駆動および制御回路を示す。1は、本レーザビームプリンタを接続する交流電源である。本レーザビームプリンタは、交流電源1をACフィルタ2,リレー41を介してセラミックヒ−タ24の発熱体3へ供給することにより発熱体3を発熱させる。
この発熱体3への電力の供給は、トライアック4の通電、遮断により制御を行う。抵抗5、6はトライアック4のためのバイアス抵抗で、フォトトライアックカプラ7は、一次、二次間の沿面距離を確保するためのデバイスである。フォトトライアックカプラ7の発光ダイオードに通電することによりトライアック4をオンする。抵抗8はフォトトライアックカプラ7の電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ9によりフォトトライアックカプラ7をオン/オフする。トランジスタ9は抵抗10を介してエンジンコントロ−ラ11からのON信号にしたがって動作する。
また、ACフィルタ2を介して交流電源1は、ゼロクロス検出回路12に入力される。ゼロクロス検出回路12では、商用電源電圧の正負が切り替わるゼロクロスポイント、あるいは、このゼロクロスポイントを含むある閾値電圧以下になったことを検知しエンジンコントロ−ラ11に対してパルス信号として報知する。以下、エンジンコントロ−ラ11に送出されるこの信号をZEROX信号と呼ぶ。エンジンコントロ−ラ11はZEROX信号のパルスのエッジを検知し、位相制御または波数制御によりトライアック4をオン/オフする。
トライアック4に制御されて発熱体3に通電されるヒータ電流は、カレントトランス25によって電圧変換され、ブリーダ抵抗26を介して電流検出回路27に入力される。電流検出回路27では、電圧変換されたヒータ電流波形を平均値または実効値に変換し、HCRRT信号としてエンジンコントローラ11にA/D入力される。
また、21は発熱体3が形成されているセラミックヒ−タ24の温度を検知するための温度検出素子、例えば、サ−ミスタ感温素子であり、セラミックヒータ24上に発熱体3に対して絶縁距離を確保できるように絶縁耐圧を有する絶縁物を介して配置されている。この温度検出素子21によって検出される温度は、抵抗22と、温度検出素子21との分圧として検出され、エンジンコントロ−ラ11にTH信号としてA/D入力される。セラミックヒ−タ24の温度は、TH信号としてエンジンコントロ−ラ11において監視され、エンジンコントロ−ラ11の内部で設定されているセラミックヒ−タ24の設定温度と比較される。これにより、セラミックヒ−タ24を構成する発熱体3に供給するべき電力比を算出し、その供給する電力比に対応した位相角(位相制御)または波数(波数制御)に換算し、その制御条件によりエンジンコントロ−ラ11がトランジスタ9にON信号を送出する。発熱体3に供給する電力比を算出する際に、電流検出回路27から報知されるHCRRT信号を基に上限の電力比を算出して、その上限の電力比以下の電力が通電されるように制御する。例えば、位相制御の場合、下記のような表をエンジンコントローラ11内に有しており、この制御表に基づき制御を行う。
さらに、発熱体3に電力を供給しており、制御する装置が故障し、発熱体3が熱暴走に至った場合、過昇温を防止する一手法として、過昇温防止素子23がセラミックヒータ24上に配されている。過昇温防止素子23は、例えば温度ヒューズやサーモスイッチである。電力供給制御装置の故障により、発熱体3が熱暴走に至り過昇温防止素子23が所定の温度以上になると、過昇温防止素子23がOPENになり、発熱体3への通電が断たれる。
また、リレー41の駆動回路部は、抵抗44および45、トランジスタ43および46で構成され、42はリレー41の逆起電力による素子(43)破壊を防止するためのダイオードである。
エンジンコントローラ11よりRLDポートにLOW信号が出力されると、トランジスタ46はオフとなり、そしてトランジスタ43がオンすることによりリレー41はオンとなり、セラミックヒータ24への通電が可能となる。また、電流検出回路27のカレントリミット信号(CURLIM)がLOWとなることによって、トランジスタ43がオフし、強制的にリレー41をオフして、セラミックヒータ24への通電を遮断することができる。変形として、フォトカプラ7をオフすることでトライアック4を強制的にオフする構成でもよい。LOW信号を発信する条件は、予め設定されている電流閾値よりも、電流検出回路部27が大きいヒータ通電電流実効値を検出した場合である。検出電流値が電流閾値よりも低い値を検出している場合は、HIGH信号が出力される。この判定は電流検出回路部27内のコンパレータ(図示しない)によって、予め設定されている基準電圧と比較された結果として出力される。この基準電圧値を、定着モータ52が回転時と停止時において切り換えることができるような構成とするのが本発明の特徴である。
図3に、本実施例におけるセラミックヒータ24の構成を示す。(a)はセラミック面発ヒータの断面図であり、(b)は発熱体32が形成されている面を示しており、(c)は(b)の示している面と相対する面を示している。
セラミック面発ヒータ24は、SiC、AlN、Al2O3等のセラミックス系の絶縁基板31と、絶縁基板31面上にペースト印刷等で形成されている発熱体32と、発熱体32を保護しているガラス等の保護層34から構成されている。保護層34上に、セラミック面発ヒータ24の温度を検出する温度検出素子21、22と過昇温防止素子23が配設されている。発熱体32は、電力が供給されると発熱する部分32aと、コネクタを介して電力が供給される電極部32c、32dと、電極部32c、32dと発熱体を接続する導電部32bから構成されている。また、発熱体32が印刷されている絶縁基板31との対向面側に摺動性を向上させるためにガラス層が形成される場合もある。電極32cには、交流電源1のHOT側端子から過昇温防止素子23を介して接続される。電極部32dは発熱体32(3)を制御するトライアック4に接続され、交流電源1のNeutral端子に接続される。セラミックヒータ24は、図4に示したように、フィルムガイド62によって支持されている。61は、円筒状の耐熱材製の定着フィルムであり、セラミックヒータ24を下面側に支持させたフィルムガイド62に外嵌させてある。そして、フィルムガイド62の下面のセラミックヒータ24と、加圧部材としての弾性加圧ローラ63とを定着フィルム61を挟ませて弾性加圧ローラ63の弾性に抗して所定の加圧力をもって圧接させて加熱部としての所定幅の定着ニップ部を形成させてある。また、過昇温防止素子23、例えば、サーモスタットがセラミックヒータ24の絶縁基板31面上または、保護層34面上に当接されている。サーモスタット23は、フィルムガイド62に位置を矯正され、サーモスタット23の感熱面がセラミックヒータ24の面上に当接されている。図示はしていないが、温度検出素子21も同様にセラミックヒータ24の面上に当接されている。ここで、図4のように、セラミックヒータ24は、発熱体32がニップ部と反対側にあっても、発熱体32がニップ部側にあってもかまわない。また、フィルム61の摺動性を上げるために、フィルム61とセラミックヒータ24との界面に摺動性のグリースを塗布してもかまわない。
次に、本実施例の動作を図5に示すフローチャートにより説明する。
開始時点では定着モータ52が停止状態であるため、電流検出回路27で設定する電流閾値を定着モータ停止状態の値とする(S101)。定着モータ52が停止状態では、セラミックヒータ24の熱が加圧ローラ63へと逃げにくいため、昇温速度は定着モータ52が回転状態の時と比較して速くなる。そのため、電流閾値を定着モータ52が回転状態の時より低く設定して、異常時におけるセラミックヒータ24およびその周辺部材の破損を防止する。電流閾値は、定着モータ52が回転状態か否かにより可変であり、接続される商用電源の定格電流に対して、セラミックヒータ24以外の部分に供給される電流を差し引いたセラミックヒータ24に供給可能な許容電流値を設定している。
エンジンコントローラ11にて、セラミックヒータ24へのプリント開始の要求が発生すると(S102)、定着モータ52が停止状態において、ヒータ立上げ温調を行う(S103)。温調は、温度検出素子21の検出温度に基づいてエンジンコントローラ11が制御を行う。立上げ温調中、セラミックヒータ24へ流れる電流実効値が、前記S101で設定されている電流閾値以上かどうかを安全回路部は判断する(S104)。セラミックヒータ24へ流れる電流実効値が電流閾値以上であると判断された場合は、セラミックヒータ24への通電を遮断する(S117)。セラミックヒータ24への通電を遮断すると、セラミックヒータ24の温度が所定の温度まで上がらないため、昇温不良エラーを表示して(S118)終了となる。セラミックヒータ24へ流れる電流実効値が電流閾値以下で制御されていた場合は、セラミックヒータ24の温度が所定の温度に達したかどうかを判断する(S105)。ここでセラミックヒータ24の温度が所定の温度に達していない場合は、ヒータに通電を開始してから所定の時間が経過したかどうかを判断する(S119)。ヒータに通電を開始してから所定の時間が経過していない場合はS104の過程に戻る。
ヒータに通電を開始してから所定の時間が経過した場合は、定着モータ52を回転させ(S106)、電流閾値を定着モータ52が回転状態の時の値とする(S107)。S105にてセラミックヒータ24の温度が所定の温度に達した場合は、定着モータ52を回転させ(S106)、電流閾値を定着モータ52が回転状態の時の値とする(S107)。定着モータ52が回転時は、定着モータ52が停止時と比較してセラミックヒータ24の昇温速度も遅くなる。またプリントに必要な電力がより必要になることも考慮しなければならない。そのため、定着モータ52が回転状態の時の電流閾値は定着モータ52が停止状態の時と比較して高めに設定する。セラミックヒータ24へ流れる電流実効値が前記S107で設定されている電流閾値以上かどうかを安全回路部は判断する(S108)。セラミックヒータ24へ流れる電流実効値が電流閾値以上であると判断された場合は、セラミックヒータ24への通電を遮断し(S117)、エラーを表示して(S118)終了となる。この状態までが立上げ温調期間である。
次に、エンジンコントローラ11はセラミックヒータ24が所定の温度に達したかどうかを判断する(S109)。セラミックヒータ24が所定の温度に達していない場合は、所定の時間が経過しているかどうかを判断し(S116)、所定の時間経過していなければS108の過程へと戻り、S108、S109、S116の処理を繰り返す。所定の時間が経過していれば、セラミックヒータ24の通電を遮断し(S117)、エラーを表示して(S118)終了となる。セラミックヒータ24が所定の温度に達したらプリント温調制御を開始する(S110)。この期間中、電流値が前記S107で設定されている閾値以上かどうかを安全回路部は判断する(S111)。セラミックヒータ24へ流れる電流実効値が電流閾値以上であると判断された場合は、セラミックヒータ24への通電を遮断する(S117)。セラミックヒータ24への通電を遮断するとセラミックヒータ24の温度が所定の温度より低くなるためエラーを表示して(S118)終了となる。次に、エンジンコントローラ11はプリント要求があるかを判断し(S112)、プリント要求がある場合はS111の過程へと戻り、前記処理を繰り返す。プリント要求がない場合はプリント動作が終了する。プリント動作が終了すると、セラミックヒータ24への通電を遮断し(S113)、定着モータ52を停止させる(S114)。定着モータを停止させると電流閾値を定着モータ52が停止時の値にし(S115)、終了となる。このように動作させることで、プリント制御中のみならず、定着モータ52の停止時における全ての状態においてヒータの異常による定着装置の損傷を確実に阻止することができる。
次に本実施例での、定着モータ52の回転時と停止時における、セラミックヒータ24の昇温特性および電流閾値の変更による影響を説明する。
図6は、セラミックヒータ24への通電電流が一定である時の、セラミックヒータ24の昇温特性を定着モータ52が回転時と停止時で示したものである。
定着モータ52が停止時のほうが、セラミックヒータ24の発熱が加圧ローラ63など周辺部材に奪われることがないため昇温カーブはより厳しくなり、点線で示したセラミックヒータ24の割れが発生する温度までの到達時間が短くなる。よって、定着モータ52が回転時と比較してより低い電流値の時に異常を検知して、ヒータ通電を遮断する必要がある。
前述の構成とした加熱装置とすることにより、定着モータ52の動作状態を検知して、それぞれの状態における過電流を検出する閾値を設定する。発熱体の熱が回りの部材に伝わりにくくかつ発熱体の昇温速度が速い定着モータ52の停止時においては、最大供給可能電流値が低めに設定されるため、定着モータ52の回転時と比較し早めに発熱体への通電を遮断することができる。そのため、装置異常時における発熱体およびその周辺部材の損傷を確実に防止することができる。また、ソフトウェアを介さずにハードウェアのみで保護回路を構成することで信頼性の高い装置を提供することができる。
実施例2である“レーザビームプリンタ”を説明する。本実施例の全体構成は実施例1と同様なので、その説明をここで援用し説明を省略する。図7に本実施例におけるセラミックヒ−タの駆動および制御回路を示す。図7において、図1と同じ構成の部分の説明は省略する。
図1の回転検知回路51は、図7ではASIC57となっている。
図8は、本実施例における定着モータ52の回転検知部であるASIC57の構成、動作を示す図である。
図7中のASIC57に定着モータ52のFG(フリケンシジェネレータ)パルスが入力される。ASIC57内の立下り検出部91でFGパルスの立下りエッジ(立上りエッジでも構わない)を検出すると、立下り検出部の後段にあるカウンタ92がリセットされる。カウンタ92はリセットされた後、不図示のクロックによりカウントアップ(カウントダウンでも構わない)を行う。比較部93はカウンタ92の出力であるカウント値と所定のカウンタ閾値の比較を行う。比較部93によってカウンタ値が所定の閾値以下(以上)の場合には比較部93は回転検知信号(/MSTOP)をHIGH(LOW)レベルとして出力する。カウント値が所定の閾値以上(以下)の場合には比較部93は/MSTOPをLOW(HIGH)レベルとして出力する。この時、カウンタ92のカウンタ値はカウンタ保持部94によって保持される。そのため定着モータ52の次のFGパルスの立下りエッジ(立上りエッジ)を検出するまで/MSTOPはLOW(HIGH)レベルを出力する。
図7において、トランジスタ56、抵抗53、54、55は前記電流検出回路27内の不図示のコンパレータに基準電圧(CPREF)を入力する回路である。/MSTOPがHIGHレベルとなるとCPREFは/MSTOPがLOWレベルの時よりも高い値となる。ASIC57が前記FGパルスの立下りエッジを検出しない場合、もしくは検出後、ある所定の時間経過しても次のFGパルスの立下りエッジを検出しない場合は/MSTOPにLOWレベルを出力する。LOWレベルの/MSTOPがCPREFを入力する回路に入力されると、CPREFが低く設定される。その結果、定着モータ52が回転していない状態で定着装置109が異常状態に至った場合は、ヒータ電流を、定着モータ52回転時よりも低い値で通電を遮断する。そのため定着装置の部品が破損することなくヒータ通電を遮断することができる。電流検出回路27から出力されるCURLIMはラッチ回路50に入力される。電流検出回路27にてセラミックヒータ24へ予め設定されている電流閾値よりも大きいヒータ電流実効値が検出された場合は、電流検出回路27からLOWレベルのCURLIMが出力される。ラッチ回路50に入力されたCURLIMはLOWレベルにラッチされる。
よって、定着装置109が異常状態に至った場合は、リレー41はオンされず(フォトカプラ7がオンされない構成でもかまわない)、セラミックヒータ24への通電が遮断され、セラミックヒータ24が破損することなく動作停止することができる。
実施例3である“レーザビームプリンタ”について説明する。実施例1、実施例2の説明と重複する説明は省略する。
本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置においても実施できる。以下に電磁誘導加熱方式の定着装置の説明をする。
図9において、定着装置201は電磁誘導加熱方式の装置である。装置201は円筒状の電磁誘導発熱性スリーブを用いた、加圧ローラ駆動方式、電磁誘導加熱方式の装置である。磁場発生部は、磁性コア213a・213b・213cおよび励磁コイル214からなる。
磁性コア213a・213b・213cは高透磁率の部材であり、フェライトやパーマロイ等といったトランスのコアに用いられる材料がよく、より好ましくは100kHz以上でも損失の少ないフェライトを用いるのがよい。
励磁コイル214には、その給電部214a・214bに励磁回路218(図10)を接続してある。この励磁回路218は20kHzから500kHzの高周波をスイッチング電源で発生できるようになっている。励磁コイル214は励磁回路218から供給される交番電流(高周波電流)によって交番磁束を発生する。
図11は交番磁束の発生の様子を模式的に表したものである。磁束Cは発生した交番磁束の一部を表す。磁性コア213a・213b・213cに導かれた交番磁束(C)は、磁性コア213aと磁性コア213bとの間、そして磁性コア213aと磁性コア213cとの間において定着スリーブ210の電磁誘導発熱層211(図9参照)に渦電流を発生させる。この渦電流は電磁誘導発熱層211の固有抵抗によって電磁誘導発熱層211にジュール熱(渦電流損)を発生させる。ここでの発熱量Qは電磁誘導発熱層211を通る磁束の密度によって決まり、図11のようなグラフ分布を示す。図11のグラフは、縦軸が磁性コア213aの中心を0とした角度θで表した定着スリーブ210における円周方向の位置を示し、横軸が定着スリーブ210の電磁誘導発熱層211での発熱量Qを示す。ここで、発熱域Hは最大発熱量をQとした場合、発熱量がQ/e以上の領域と定義する。これは、定着に必要な発熱量が得られる領域である。
定着ニップ部Nの温度は、不図示の温度検知装置を含む温調系により励磁コイル214に対する電流供給が制御されることで所定の温度が維持されるように温調される。
図9の216は、定着スリーブ210の温度を検知するサーミスタなどの温度センサであり、本実施例においては温度センサ216で測定した定着スリーブ210の温度情報をもとに定着ニップ部Nの温度を制御するようにしている。
而して、定着スリーブ210が回転し、励磁回路218から励磁コイル214への給電により前述のように定着スリーブ210の電磁誘導発熱がなされて定着ニップ部Nが所定の温度に立ち上がって温調された状態となる。この状態で、画像形成部から搬送された未定着トナー画像tが形成された転写紙Pが定着ニップ部Nの定着スリーブ210と加圧ローラ217との間に画像面が上向き、即ち定着ベルト面に対向して導入される。定着ニップ部Nにおいて画像面が定着スリーブ210の外面に密着して定着スリーブ210と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。この定着ニップ部Nを定着スリーブ210と一緒に転写紙Pが挟持搬送されていく過程において定着スリーブ210の電磁誘導発熱で加熱されて転写紙P上の未定着トナー画像tが加熱定着される。転写紙Pは定着ニップ部Nを通過すると回転定着スリーブ210の外面から分離して排出搬送されていく。転写紙上の加熱定着トナー画像は定着ニップ部通過後、冷却して永久固着像となる。
本実施例においては、図12に示すように、定着スリーブ210の発熱域H(図11)の対向位置に異常時の励磁コイル214への給電を遮断するため温度検知素子であるサーモスイッチ215を配設されている。
図12は本実施例における安全回路の回路図である。温度検知素子であるサーモスイッチ215は+24VDC電源とリレースイッチ219と直列に接続されている。サーモスイッチ215が切れると、リレースイッチ219への給電が遮断され、リレースイッチ219が動作し、励磁回路218への給電が遮断されることにより励磁コイル214への給電を遮断する構成をとっている。サーモスイッチ215はOFF動作温度を220℃に設定した。また、サーモスイッチ215は定着スリーブ210の発熱域Hに対向して定着スリーブ210の外面に非接触に配設した。サーモスイッチ215と定着スリーブ210との間の距離は約2mmとした。これにより、定着スリーブ210にサーモスイッチ215の接触による傷が付くことがなく、耐久による定着画像の劣化を防止することができる。本実施例では、トナーtに低軟化物質を含有させたトナーを使用したため、定着サーモスイッチ215が220℃を感知して、サーモスイッチが切れた時点で、リレースイッチ219により励磁コイル214への給電が遮断される。また、発熱量が多い発熱域Hには、サーモスイッチ215が配設してあるため、温度検知素子としてサーモスイッチのほかに温度ヒューズを用いることもできる。オフセット防止のためのオイル塗布機構を設けていないものの、低軟化物質を含有させていないトナーを使用した場合にはオイル塗布機構を設けてもよい。また、低軟化物質を含有させたトナーを使用した場合にもオイル塗布や冷却分離を行ってもよい。
また前述の定着装置構成においては、定着スリーブ210をトナー定着に必要な温度まで昇温させるのに長い時間を必要としてしまう。よって、スタンバイ時(本実施例においてはスタンバイ時は圧解除状態となっている)に定着装置温調をし、定着スリーブ210に熱を与える必要がある。そのような構成とすることにより、ファーストプリントアウトタイムをスタンバイ時温調をしない時と比較して短縮している。
しかしながら、定着モータ停止状態においては、回転状態と比較して定着スリーブの熱量の加圧ローラへの移動が少なく、発熱体の昇温速度がより速くなってしまう。そのため、装置故障時などの異常時における定着装置異常状態に陥った場合は、装置損傷までの時間が短くなってしまう。よって、定着モータ停止時における安全回路動作時間を、定着モータ回転時と比較してより短めに設定する必要がある。よって、定着モータ回転状態時と定着モータ停止時の安全回路動作、ここでは過電流を検出する閾値、を可変とすることが本実施例の特徴とする。
定着装置の温度制御は定着スリーブに摺動配置されたサーミスタにより定着スリーブの温度を検出し、CPUにより温度制御を行っている。定着装置の温度はソフトウェアにより検知を行っており、動作時において想定される温度よりも明らかに高温となった場合には異常高温と判断するようソフトウェアを構成し、定着装置の安全を確保している。しかしながら、万一のソフトウェア異常時にも定着装置の安全を確保するために、ハードウェアによる保護回路を設け、さらにサーモスイッチや温度ヒューズといった、温度保護素子を設けて3重の保護回路としている。
定着スリーブの温度を測定するために配置したサーミスタは、検出抵抗と直列接続して基準電源に接続されている。サーミスタは温度によって抵抗値が変化するため、検出抵抗と基準電圧によって抵抗値変化を電圧変化に変換している。サーミスタの検出電圧をコンパレータに入力し、予め定められた電圧値より低い電圧と成った場合に、リレー駆動回路を遮断することで定着装置への電力供給を停止する構成としている。
図13に実施例3の特徴を表す図を示す。図13において、300はサーモスイッチ、301はリレーである。302はブリッジダイオード、303はフィルタ回路、304は励磁コイル、305はサーミスタ、306は制御演算を行うCPUを含む制御回路、307はスイッチング素子、308は共振コンデンサ、309は逆導通ダイオードである。310はカレントトランス、311は電流検出回路からの信号の実効値、平均値またはピーク値を検出するフィルタ回路、312は電流検出回路、315はトランジスタ、316はON幅決定回路、317はスイッチング制御回路である。320は定着スリーブもしくは弾性加圧ローラを駆動するステッピングモータ、321はステッピングモータ320に接続されたエンコーダ、322はASICである。
本体の電源が投入され、不図示である画像形成装置のDC電源回路が動作して24V DC電圧318が供給されると、サーモスイッチ300の接点を通してリレー301に電圧が供給される。トランジスタ315は制御回路306によってONになっているため、リレー301のトランジスタ315側に接続されている端子はGNDの電位とほぼ同電位になり、リレーコイル301に電流が供給される。その結果リレー301の接点がONになり、AC電源ラインからAC電圧が回路に供給され、ダイオードブリッジ302により全波整流されて脈流化DC電圧となり、フィルタ303により波形整形されている。
本レーザビームプリンタが定着動作を開始すると、スイッチング制御回路317によりスイッチング素子307の制御が開始される。スイッチング素子307がONになると、303、304、307、310より成る回路に電流が供給され、励磁コイル304に流れる電流は時間の経過に伴って一様に上昇する。
制御回路306がスイッチング制御回路317のON時間決定回路316にON時間に相当する電圧を指示すると、スイッチング制御回路317は指示されたON時間が経過した後にスイッチング素子307をOFFにする。コイル304に流れた電流は、カレントトランス310により電圧に変換されて、フィルタ311による波形整形を受けて制御回路306へフィードバックされている。そして、コイル304に流れた電流値と、サーミスタ305からの信号電圧をCPUが演算し、スイッチング素子307のON時間を制御する動作を行っている。
また、一方でスイッチング素子307に流れる電流が大きすぎるとスイッチング素子307を破損させてしまう場合があるため、電流検出回路312が過電流を検知した場合にLOWレベルのCURLIM信号を出力しトランジスタ315をオフさせる。そのためリレー301の通電が遮断され励磁コイル304に過大電流が流れないように構成している。スイッチング素子307がOFFになると、素子303、304、308より成る共振回路による共振動作が開始される。その後にOFF幅決定回路により、予め定められた時間のOFF幅が出力される。出力フリップフロップF/Fは、スイッチング素子307のONとOFFが交互に発生するように構成されている。スイッチング素子307をON,OFF動作させることにより励磁コイル304に高周波電流が供給され、励磁コイル304より発生する高周波電磁界により定着スリーブ210が発熱する。
次に、励磁コイル304に過電流が流れた場合のカレントトランス310および電流検出回路部312による保護動作について説明する。
装置の何らかの異常などにより、励磁コイル304に流れる電流が異常となってしまった場合においても、安全上励磁コイル304への通電を遮断できるような構成としてある。これらの構成は確率的に故障の発生するCPUを介さないため、信頼性の高い安全装置といえる。また電流検出回路312における過電流を検知する閾値は、定着モータ回転時と定着モータ停止時において可変となるように構成したところが本実施例の特徴である。
弾性加圧ローラを駆動するステッピングモータ320の回転軸に接続されたエンコーダ321の出力がASIC322に入力される。ASIC322でステッピングモータ320の動作状態を判断して電流検出回路312内の不図示のコンパレータの基準電圧値(CPREF)を変更する。ステッピングモータ320が停止時のCPREFはステッピングモータ320が回転時のCPREFより低くなるように設定される。カレントトランス310により励磁コイル304に流れる電流値に対応した電圧値はCRフィルタ323を通してある時定数をもって電流検出回路312に入力される。電流検出回路312は、ステッピングモータ320の動作状態に応じたコンパレータの基準電圧値と励磁コイル304に流れる電流値に対応した電圧値を比較する。これにより、励磁コイル304に過電流が流れていると判断された場合は、リレーコイルへの通電を遮断し、励磁コイル304への通電を遮断する。
前述のような構成とした加熱装置とすることにより、ステッピングモータ320の動作状態を検知して、停止時、回転時それぞれの状態における過電流を検知する閾値を設定する。発熱体の熱が回りの部材に伝わりにくくかつ発熱体の昇温速度が速いステッピングモータ320の停止時においては、最大供給可能電流値が低めに設定されるため、ステッピングモータ320の回転時と比較し早めに発熱体への通電を遮断することができる。そのため、装置異常時における発熱体およびその周辺部材の損傷を確実に防止することができる画像形成装置を提供することができる。また、確率的に故障の発生する半導体などを介した構成をとらないハード構成をとることを特徴とすることにより、信頼性の高い装置を提供することができる。
実施例1における定着装置の駆動回路および安全回路を示す図
実施例1のレーザビームプリンタの構成を示す断面図
セラミック面発ヒータの構造を示す図
定着装置の構成を示す断面図
定着装置の制御シーケンスを示すフローチャート
発熱体の温度推移を示す図
実施例2における定着装置の駆動回路および安全回路を示す図
ASICによるモータの回転検知の一例を示す図
実施例3における定着装置の概略構成を示す図
定着装置の概略構成を示す図
定着装置における交番磁束の発生の様子を模式的に示す図
安全装置の回路構成を示す図
実施例3における定着装置の駆動回路を示す図
符号の説明
3 発熱体
11 エンジンコントローラ
21 温度検出素子
27 電流検出回路
41 リレー
109 定着装置