以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず図1について説明する。図1は、本発明を実施する走査型レーザ顕微鏡の構成の第一の例を示している。
図1において、レーザ光源1から出射されたレーザ光である照明光50は、偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitter)2を通過し、照明光51として二次元走査機構3に入射する。
二次元走査機構3はPBS2と対物レンズ5との間の光路上に配置されており、コンピュータ12に接続されている。二次元走査機構3は、入射した照明光51をコンピュータ12による制御に従って二次元走査して照明光52として出射すると、1/4波長板4及び対物レンズ5を介して集束される照明光53であるスポット光を、ステージ11上の試料台10に載置された試料6の表面においてXY方向(互いに直交しており対物レンズ5の光軸に垂直な2方向)に二次元走査させる。
なお、ステージ11はコンピュータ12に接続されており、コンピュータ12による制御に従ってZ方向(対物レンズ5の光軸方向)に移動する。ステージ11をZ方向に移動させると、対物レンズ5が集光したスポット光の試料6上での集光位置がZ方向に移動する。
一方、対物レンズ5が集光したスポット光を試料6に照射したときに試料6で反射したものである反射光54は、対物レンズ5及び1/4波長板4の通過後に反射光55として二次元走査機構3に戻り、更に二次元走査機構3から反射光56としてPBS2へ戻される。すると、PBS2はこの反射光56を反射して反射光57となり、結像レンズ7を透過する。
結像レンズ7を透過した反射光57のうちピンホール8を通過したものが、光検出器(例えばPMT:Photo Multiplier Tube )9に受光される。なお、ピンホール8は対物レンズ5の集光位置に対し光学的に共役な位置に配置されている共焦点絞りであり、試料6表面で反射した光のうち対物レンズ5の集光位置以外からのものをカットする。
光検出器9は、入射した反射光57の強度を検出し、当該強度に対応した大きさの電気信号をコンピュータ12へ出力する。コンピュータ12は、光検出器9から出力される電気信号を取り込み、当該電気信号に基づいて試料6の高さ情報を生成し、その生成結果等をモニタ13に表示する処理を行う。
なお、二次元走査機構3と対物レンズ5との間の光路上に配置されている1/4波長板4は挿脱機構20により保持されている。挿脱機構20は、モータなどの電動駆動により、1/4波長板4を移動させて当該光路上に対して挿脱することを可能としている。なお、挿脱機構20はコンピュータ12に接続されており、コンピュータ12がモニタ13に表示させるGUI(Graphical User Interface)設定画面と不図示の入力装置(キーボード装置やマウス装置など)とを通じ、走査型レーザ顕微鏡のユーザが所定の指示を行うと、当該指示を取得したコンピュータ12の制御により挿脱機構20が上記の挿脱動作を行う。
なお、コンピュータ12は、ごく標準的な構成のコンピュータ、すなわち、制御プログラムの実行によってコンピュータ12全体の動作制御を司るMPU等の演算処理装置と、この演算処理装置が必要に応じてワークメモリとして使用するメインメモリと、各種のプログラムや制御データなどを記憶して保存しておく例えばハードディスク装置などの記憶装置と、図1に示した走査型レーザ顕微鏡の各構成要素や不図示の入力装置などとの間で行われる各種のデータの授受を管理するインタフェース部と、を有しているコンピュータ、を利用することができる。このコンピュータ12により行われる各種の処理は、当該処理をコンピュータ12に行わせるための制御プログラムを当該記憶装置に予め格納しておき、当該演算処理装置が当該制御プログラムを読み出して実行することによって、実現される。
このような構成を有する図1の走査型レーザ顕微鏡における、1/4波長板4が当該光路上に配置されている状態の動作について、まず説明する。なお、この状態は、この走査型レーザ顕微鏡の動作モードのひとつである通常測定モードとしてコンピュータ12に予め設定されている。この通常測定モードは、平坦面や傾斜の緩やかな傾斜面のみで構成された試料6を、この走査型レーザ顕微鏡での測定対象とする場合に選択される動作モードである。従って、ここでは、このような試料6がステージ11上に載置されているものとする。
レーザ光源1から出射された照明光50は、直線偏光の特性を持っており、その偏光方向は、図1の紙面において光の進行方向を示す矢印に垂直な2方向の矢印で表現したように、ここでは当該紙面に平行になるように配置されている。この照明光50が入射するPBS2には、当該紙面に平行な偏光成分を透過し、紙面に垂直な成分を反射する特性を持たせておく。従って、PBS2に入射した照明光50はPBS2を透過しても、この直線偏光の特性を維持したまま照明光51として二次元走査機構3に入射する。二次元走査機構3が照明光51を二次元走査して、この直線偏光の特性を維持したまま照明光52として出射すると、照明光52は1/4波長板4に入射する。
1/4波長板4は、照明光52における直線偏光の方向に対し光学軸(速軸と遅軸とのどちらでも構わない)が45°となるように配置しておく。従って、1/4波長板4に照明光52を入射させると、偏光特性が変換され、出射する照明光53の偏光特性が円偏光となる。なお、図1の紙面においては、円偏光の特性を、光の進行方向を示す矢印を中心に回転する方向の矢印により表現している。この照明光53は、対物レンズ5により集光されて試料6に照射される。
照明光53であるスポット光を試料6に照射したときに試料6で反射したものである反射光54には、鏡面反射成分と拡散反射成分とが混在している。但し、前述したように、ここでは、試料6の表面が平坦面や傾斜の緩やかな傾斜面のみで構成されているものとしているので、二次元走査されているスポット光についての試料6上からの鏡面反射成分は、対物レンズ5の開口内に全て反射される。ここで、鏡面反射成分は、その偏光特性が入射光である照明光53と変化しないので、試料6からの反射光54は円偏光のままである。
その後、この反射光54は、対物レンズ5の通過後に再び1/4波長板4に入射する。すると、1/4波長板4は、円偏光である反射光54の偏光特性を変換し、偏光方向が図1の紙面に対し垂直な直線偏光の特性を有する反射光55として出射する。なお、図1の紙面においては、当該紙面に対し垂直な直線偏光の特性を、光の進行方向を示す矢印が貫いている黒丸と当該黒丸を囲む丸とにより表現している。
なお、図1における偏光特性の表現は、後に説明する各図においても同様の表現を用いることとする。
その後、反射光55は、二次元走査機構3を通過した後に、反射光56としてPBS2に入射する。ここで、反射光56は、図1の紙面に対し垂直な直線偏光の特性(反射光55と同特性)を有しているので、PBS2は、入射した反射光56を反射して照明光51の光路から分離し、反射光57として出射する。このようにしてPBS2が当該光路から分離した反射光57のうち、結像レンズ7を通過し更にピンホール8を通過したものが光検出器9により検出される。
次に、図1の走査型レーザ顕微鏡における、1/4波長板4が光路上から除かれた状態の動作について、まず説明する。なお、この状態は、この走査型レーザ顕微鏡の動作モードのひとつである急斜面測定モードとしてコンピュータ12に予め設定されている。この急斜面測定モードは、傾斜の急峻な傾斜面が含まれている試料6を、この走査型レーザ顕微鏡での測定対象とする場合に選択される動作モードである。従って、ここでは、このような試料6がステージ11上に載置されているものとする。
この場合には、二次元走査機構3から出射した照明光52は、1/4波長板4を通過しないので、紙面に平行な直線偏光のまま対物レンズ5を透過して試料6上に集光される。従って、試料6で反射した光のうちの鏡面反射成分は、紙面に平行な直線偏光の特性のまま、対物レンズ5及び二次元走査機構3を通過してPBS2に入射する。PBS2は、このような、紙面に平行な直線偏光である鏡面反射成分は反射せずに透過させるので、光検出器9には、この鏡面反射成分は到達しない。
一方、試料6で反射した光のうちの拡散反射成分は、偏光特性が完全な直線偏光ではなく、偏光特性が乱れた部分偏光となっている(試料6表面の粗面の程度が大きい(粗い)ほど、偏光特性がランダムになる)。従って、対物レンズ5及び二次元走査機構3を通過してPBS2に入射した当該拡散反射成分のうち、そのうちの図1の紙面に垂直な偏光成分には、PBS2で反射されて結像レンズ7及びピンホール8を通過し、光検出器9に到達して検出されるものがある。つまり、1/4波長板が光路上から除かれた状態の場合には、試料6で反射した光のうち、鏡面反射成分は光検出器9で検出されず、拡散反射成分のみが光検出器9で検出されることになる。
なお、試料6で反射した光における拡散反射成分は、鏡面反射成分に比べて通常は微弱である。そこで、コンピュータ12は、走査型レーザ顕微鏡の動作モードとして急斜面測定モードが選択された場合には、光検出器9の検出感度を変更して、通常測定モードにおける検出感度よりも高感度にする制御処理を行い、当該拡散反射成分を良好に検出できるようにする。
以上のような通常測定モード及び急斜面測定モードでの走査型レーザ顕微鏡の動作において、コンピュータ12は、二次元走査機構3によってスポット光の試料6表面での二次元走査を行うと共に、ステージ11で試料6をZ方向に離散的に移動させながら、測定領域の各測定点における光の強度の検出を光検出器9に行わせることで、各測定点における対物レンズ5と試料6との相対位置Zと光検出器9の出力Iとの関係を示す情報(IZデータ)を取得する処理を行う。
次に図2について説明する。図2は、図1に示した走査型レーザ顕微鏡により取得されるIZデータにより表されるI−Zカーブの例を示したものである。ここで、(a)は、通常測定モードでの動作におけるカーブ例を示しており、と(b)急斜面測定モードでの動作におけるカーブ例を示している。
図2の(a)における実線のカーブは、試料6における平坦面上の測定点についてIZデータを取得した場合についてのものを示している。このカーブから分かるように、試料6における平坦面上では、当該測定点が対物レンズ5の集光位置Z0に位置している場合には、光検出器9の出力は最大となり、この位置から対物レンズ5と試料6の相対位置が離れると、光検出器9の出力は急激に低下する。この特性を利用し、コンピュータ12は、試料6の各測定点で光検出器6の出力が最大になるステージ11の位置を検出し、この検出結果から試料6の高さ情報を取得する処理を行う。
このように、試料6が平坦面及び緩やかな傾斜面のみで構成されている場合には、走査型レーザ顕微鏡の動作モードとして通常測定モードを選択することにより、試料6の高さ情報を精度良く取得することができる。
一方、図2の(a)における破線のカーブは、試料6における急峻な傾斜面上の測定点についてIZデータを取得した場合についてのものを示している。このカーブから分かるように、試料6における急峻な傾斜面上では、当該測定点が対物レンズ5の集光位置Z0に位置している場合でも、光検出器9の出力は雑音レベルに近いほどの低レベルであり、非常にS/Nが悪いため、高さ情報を精度良く取得することは困難である。
これに対し、図2の(b)における破線のカーブは、急斜面測定モードでの動作を選択したときに、試料6における急峻な傾斜面上の測定点についてIZデータを取得した場合についてのものを示している。前述したように、図1に示した走査型レーザ顕微鏡では、急斜面測定モードでの動作時には、1/4波長板4を光路上から除去することで、試料6で反射した光の鏡面反射成分を光検出器9への光路から遮断する制御が行われる。この結果、図2の(b)における実線のカーブで表されているように、試料6における平坦面上の測定点のIZデータは通常測定モードでの動作時に比べてS/Nがやや低下するものの、急峻な傾斜面上の測定点のIZデータは、通常測定モードでの動作時に比べてS/Nが顕著に向上する。なお、急斜面測定モードでの動作時における試料6における平坦面上の測定点のIZデータのS/N比の低下は、コンピュータ12による光検出器9の検出感度の変更制御により補われる。この結果、試料6が平坦面と急峻な傾斜面との両方を含む場合でも、試料6表面の測定領域全体に亘り、高さ情報の取得を精度良く行うことができる。
ところで、前述した通常測定モードや急斜面測定モードといった、走査型レーザ顕微鏡の動作モードの選択は、コンピュータ12がモニタ13に表示させるGUI設定画面と不図示の入力装置(キーボード装置やマウス装置など)とを通じて、走査型レーザ顕微鏡のユーザが行う。コンピュータ12は、ユーザからの当該選択の指示を取得すると、当該選択の結果に応じて、挿脱機構20による1/4波長板4の挿脱動作の制御や、光検出器9に対する検出感度の変更制御などといった、走査型レーザ顕微鏡に対する各種の設定の切り換え処理を実行する。
ここで図3について説明する。図3は、コンピュータ12がモニタ13に表示させるGUI設定画面の一例を示している。この設定画面は、走査型レーザ顕微鏡のユーザが不図示の入力装置を操作して所定の設定画面表示指示を行うと、当該指示を入力装置から取得したコンピュータ12がモニタ13の表示制御処理を行うことにより表示される。
図3において、測定モード選択ボタン41は、走査型レーザ顕微鏡に対し予め複数設定されている動作モードのうち、通常測定モード若しくは急斜面測定モードのどちらか一方を選択するいわゆるラジオボタンである。ここで、入力装置に対するユーザの操作により「Normal」が選択された場合には、コンピュータ12は、ユーザによる動作モードの選択指示結果として、通常測定モードを取得する。一方、ここで、入力装置に対するユーザの操作により「Steep」が選択された場合には、コンピュータ12は、ユーザによる動作モードの選択指示結果として、急斜面測定モードを取得する。
検出感度設定部42は、走査型レーザ顕微鏡の各動作モードにおける光検出器9の検出感度を示す数値の設定欄であり、レーザ出力設定部43は、レーザ光源1から出射されるレーザ光の強度レベルを示す数値の設定欄である。また、高さ情報取得開始ボタン44は、試料6の高さ情報の取得開始を、コンピュータ12に指示するために押下操作されるボタンである。
例えば、図3において、測定モード選択ボタン41が操作されて、その選択状態が、「Normal」から「Steep」へと切り替えられると、この切り替えにより動作モードの通常測定モードから急斜面測定モードへの変更指示を取得したコンピュータ12は、当該変更指示に係る急斜面測定モードの選択に応じて、挿脱機構20を制御して1/4波長板4を光路上から外させる処理を行うと共に、光検出器9の検出感度を、検出感度設定部42において急斜面測定モード用として予め設定されていた感度(通常測定モードよりも高い感度)に変更する制御処理を行う。一方、測定モード選択ボタン41が操作されて、その選択状態が、「Steep」から「Normal」へと切り替えられると、この切り替えにより動作モードの急斜面測定モードから通常測定モードへの変更指示を取得したコンピュータ12は、当該変更指示に係る通常測定モードの選択に応じて、挿脱機構20を制御して1/4波長板4を光路上に挿入させる処理を行うと共に、光検出器9の検出感度を、検出感度設定部42において通常測定モード用として予め設定されていた感度(急斜面測定モードよりも低い感度)に変更する制御処理を行う。
以上のように、図1に示した走査型レーザ顕微鏡によれば、予め複数設定されている動作モードからそのうちのひとつを選択するという簡単な切り換え指示操作により、急峻な傾斜面を有する試料6でも、高さ情報を精度良く取得することができる。
なお、図1に示した走査型レーザ顕微鏡では、急斜面測定モードでの動作時には、試料6で反射した光のうちの微弱な拡散反射成分を良好に検出するために、光検出器9の検出感度を高感度に設定するようにしていた。この代わりに、レーザ光源1から出射されるレーザ光の強度を強めて、光検出器9にまで到達する拡散反射成分を増やすようにしてもよい。更には、光検出器9の検出感度の制御とレーザ光源1から出射されるレーザ光の強度の制御とを並行して行うようにしてもよい。
また、図1に示した走査型レーザ顕微鏡では、1/4波長板4の光路上に対する挿脱を、コンピュータ12での制御に基づく挿脱機構20の電動駆動により行うようにしていた。この代わりに、1/4波長板4の光路上に対する挿脱を、ユーザが手動で行うようにしてもよい。つまり、1/4波長板4を光路上から挿脱可能であるように単純に配置しておき、1/4波長板4の光路上に対する挿脱状態に応じ、ユーザがモニタ13に表示される観察画像を見ながら、レーザ光源1から出射されるレーザ光の強度や、光検出器9の検出感度を、図3に示したGUI画面を利用して設定するようにしてもよい。あるいは、1/4波長板4の光路上に対する挿脱状態を検出する図示しないセンサを手動の挿脱機構20に設け、このセンサの検出信号をコンピュータ12が取得するように構成し、光検出器9の検出感度、若しくは前述したレーザ光源1から出射されるレーザ光の強度を、コンピュータ12が、このセンサの検出信号に基づき自動的に変更する制御処理を行うようにしてもよい。
また、図1に示した走査型レーザ顕微鏡では、1/4波長板4を、二次元走査機構3と対物レンズ5との間の光路上で挿脱するようにしていたが、その挿脱の位置は、二次元走査機構3と試料6との間の光路上であれば、どの位置でもよい。更には、1/4波長板4の挿脱の位置は、PBS2と試料6との間の光路上であれば、どの位置でもよい。
また、以上までに説明した、図1に示した走査型レーザ顕微鏡の各構成要素間での照明光及び反射光における直線偏光の特性は、その偏光方向が紙面に対し平行若しくは垂直であるとしたが、この変更方向は説明上便宜的に設定したものに過ぎない。すなわち、実際には、その偏光方向が紙面に対し平行若しくは垂直であるとした直線偏光の2つの特性において、それらが空間的に直交する関係が保たれているものであれば、これに限定するものではない。
次に図4について説明する。図4は、本発明を実施する走査型レーザ顕微鏡の構成の第二の例を示している。
なお、図4において、図1に示した第一の例におけるものと実質上同一の構成要素には同一符号を付しており、それらについては詳細な説明を省略する。
図4に示した構成は、図1に示した第一の例の構成において、PBS2の位置に、PBS2の代わりに、無偏光ビームスプリッタ(NPBS:Non Polarization Beam Splitter)22を配置すると共に、レーザ光源1とNPBS22との間の光路上に第一の偏光板21を配置し、更に、NPBS22と結像レンズ7との間の光路上には、第二の偏光板23を配置して構成されている。なお、図4の構成では、1/4反射板4は、二次元走査機構3と対物レンズ5との間の光路上に常に配置されており、挿脱機構20は削除されている。
第一の偏光板21は、その透過軸が図4の紙面に平行に配置されており、レーザ光源1から出射される図4の紙面に平行な直線偏光の照明光50を透過する。
NPBS22は、試料6で反射した光を、1/4波長板4及び二次元走査機構3を通過した後に、透過光と反射光とに(例えば透過光:反射光=1:1の割合で)分割する。
第二の偏光板23は回転機構24により保持されている。回転機構24は、モータなどの電動駆動により、第二の偏光板23の透過軸(光の振動を透過させる軸であり、これに平行な方向に振動面を有する光を透過する。)を、NPBS22からの反射光の光軸周りに回転させることを可能としている。なお、回転機構24はコンピュータ12に接続されており、コンピュータ12の制御により回転機構24が上記の回転動作を行う。
このような構成を有する図4の走査型レーザ顕微鏡では、回転機構24で第二の偏光板23を回転させることで、試料6で反射した光の鏡面反射成分の検出に使用する動作モードである通常測定モードと、当該鏡面反射成分を遮断して当該光の拡散反射成分の検出に使用する動作モードである急斜面測定モードとの切り換えを行うことができる。
まず、図4の走査型レーザ顕微鏡において、表面が平坦面や緩やかな傾斜面で構成されている試料6を測定対象とした動作モードである、通常測定モードでの動作について説明する。
まず、レーザ光源1から出射された図4の紙面に平行な直線偏光の照明光50は、第一の偏光板21に入射する。この第一の偏光板21は、透過軸が図4の紙面に平行に配置されているので照明光50を透過する。その後、照明光50は、偏光特性を維持したままNPBS22を透過して照明光51となる。
次に、照明光51は二次元走査機構3によって二次元走査されて照明光52となって1/4波長板4に入射する。1/4波長板4は、照明光52における直線偏光の方向に対し光学軸(速軸と遅軸とのどちらでも構わない)が45°となるように配置されているので、1/4波長板4に照明光52を入射させると、偏光特性が変換され、出射する照明光53の偏光特性が円偏光となる。この照明光53が、対物レンズ5により集光されて試料6に照射される。
前述したように、試料6の表面は平坦面や傾斜の緩やかな傾斜面のみで構成されているので、二次元走査されているスポット光についての試料6上からの鏡面反射成分は、対物レンズ5の開口内に全て反射される。ここで、鏡面反射成分は、その偏光特性が入射光である照明光53と変化しないので、試料6からの反射光54は円偏光のままである。
この反射光54は、対物レンズ5の通過後に再び1/4波長板4に入射する。すると、1/4波長板4は、円偏光である反射光54の偏光特性を変換し、偏光方向が図1の紙面に対し垂直な直線偏光の特性を有する反射光55として出射する。
その後、反射光55は、二次元走査機構3を通過した後に、反射光56としてNPBS22に入射する。ここで、NPBS22は、反射光56の一部を反射して照明光51の光路から分離し、反射光57として出射する。その後、この反射光57は、第二の偏光板23に入射する。
第二の偏光板23は、通常測定モードでの動作時には、コンピュータ12が回転機構24を制御する処理を行うことで、その透過軸が図4の紙面に対し垂直となるように配置される。従って、反射光57における鏡面反射成分は、第二の偏光板23を透過し、その後結像レンズ7及びピンホール8を通過することで、光検出器9により検出される。
次に、図4の走査型レーザ顕微鏡において、表面に急峻な傾斜面が含まれている試料6を測定対象とした動作モードである、急斜面測定モードでの動作について説明する。
急斜面測定モードでの動作時には、第二の偏光板23は、コンピュータ12が回転機構24を制御する処理を行うことで、その透過軸が図4の紙面に対し平行となるように配置される。すると、試料6で反射した光のうちの鏡面反射成分は第二の偏光板23で遮断され、当該光の拡散反射成分のうち特定の偏光成分(第二の偏光板23に入射する拡散反射成分のうち、図4の紙面に垂直な偏光成分)のみが第二の偏光板23を透過できる。このときに透過した拡散反射成分は、その後結像レンズ7及びピンホール8を通過することで、光検出器9により検出される。
以上のように、図4に示した走査型レーザ顕微鏡では、通常測定モードと急斜面測定モードとの動作モードの切り替えを、回転機構24で第二の偏光板23の透過軸を、NPBS22からの反射光の光軸周りに回転させて、その透過軸の方向を変化させることで行う。
なお、動作モードの切り替えに伴うその他の動作(例えば、ユーザが不図示の入力装置を操作して、走査型レーザ顕微鏡に対し予め設定されている複数の動作モードからそのうちのひとつを選択する指示を行った場合に、コンピュータ12が当該指示を取得し、当該指示に係る動作モードの選択結果に応じて、回転機構24を制御して第二の偏光板23を回転させて、その透過軸を当該動作モードについて予め設定されている向きとすると共に、光検出器9の検出感度を、当該動作モードについて予め設定されている感度に変更する制御処理動作)については、図1に示した第一の例に係るものと同様に行う。また、高さ情報の取得動作についても、図1に示した第一の例に係るものと同様に行う。
以上のように、図4に示した走査型レーザ顕微鏡では、第二の偏光板23を光軸周りに回転させて透過軸の方向を変化させることで、図1に示したものと同様、急峻な傾斜面を有する試料6でも、高さ情報を精度良く取得することができる。
なお、図4に示した走査型レーザ顕微鏡では、第二の偏光板23の回転を、コンピュータ12での制御に基づく回転機構24の電動駆動により行うようにしていた。この代わりに、第二の偏光板23の回転を、ユーザが手動で行うようにしてもよい。また、このようにする場合において、ユーザが、第二の偏光板23の透過軸の方向に応じて、モニタ13に表示される観察画像を見ながら、レーザ光源1から出射されるレーザ光の強度や、光検出器9の検出感度を、図3に示したGUI画面を利用して設定するようにしてもよい。
また、図4に示した走査型レーザ顕微鏡では、第二の偏光板23を、NPBS22と結像レンズ7との間の光路上に配置していたが、第二の偏光板23の配置位置は、NPBS22と光検出器9との間の光路上であれば、どの位置でもよい。
また、図4に示した走査型レーザ顕微鏡におけるNPBS22による透過光と反射光との分割の割合は、透過光:反射光=1:1に限らず、この割合を異なるものとしてもよい。
ところで、第一の偏光板21及び1/4波長板4は、試料6で反射した光のレーザ光源1への戻り光、特に鏡面反射成分を遮断して、当該戻り光がレーザ光源1に入射してレーザ光の励起が不安定になることを防止するために備えている。すなわち、NPBS22に入射する反射光56の鏡面反射成分は、図4の紙面に垂直な直線偏光であるので、NPBS22を透過した鏡面反射成分は、透過軸が紙面に平行となるように配置されている第一の偏光板21によって遮断され、レーザ光源1には到達できない。
しかし、このレーザ光源1への戻り光の影響を無視できるのであれば、第一の偏光板21及び1/4波長板4は必ずしも必要ではない。これらを削除した場合には、試料6で反射した光のうち第二の偏光板23に入射する鏡面反射成分は、図4の紙面に平行な直線偏光になる。従って、この場合には、第二の偏光板23の透過軸が当該紙面に平行となるように(鏡面反射成分が透過するように)第二の偏光板23を配置する状態を通常測定モードとし、当該透過軸が当該紙面に対し垂直となるように(鏡面反射成分を遮断するように)第二の偏光板23を配置する状態を急斜面測定モードとすればよい。
また、図4に示した走査型レーザ顕微鏡では、レーザ光源1は直線偏光の照明光50を出射するものとしていたが、レーザ光源1の出射する照明光50は直線偏光でなくてもよい。但し、この場合には、レーザ光源1の出射部には第一の偏光板21が必須となる。このとき、第一の偏光板21は、透過軸と平行な直線偏光のみを透過するので、第一の偏光板21を透過した照明光51は、図4の紙面に平行な直線偏光となる。
次に図5について説明する。図5は、本発明を実施する走査型レーザ顕微鏡の構成の第三の例を示している。
なお、図5において、図1に示した第一の例におけるもの若しくは図4に示した第二の例におけるものと実質上同一の構成要素には同一符号を付しており、それらについては詳細な説明を省略する。
図5に示した構成は、図4に示した第二の例の構成において、結像レンズ7とピンホール8との間の光路上に偏光ビームスプリッタ(PBS)25を配置すると共に、結像レンズ7を透過した反射光57のうちPBS25が反射したものを通過させる第二のピンホール26と、第二のピンホール26を通過した光を受光する第二の光検出器27とを備えて構成されている。なお、図5の構成では、第二の偏光板23及び回転機構24は削除されている。
なお、以降の説明では、第二のピンホール26及び第二の光検出器27との区別を容易にするために、ピンホール8及び光検出器9を、それぞれ第一のピンホール8及び第一の光検出器9と称することとする。
PBS25は、NPBS22で分離した反射光57を2つの偏光成分に分離するものであり、反射光57における図5の紙面に対し垂直である偏光成分(第一の偏光成分)を透過し、反射光57における当該紙面に平行な偏光成分(第二の偏光成分)を反射するようにしている。PBS25により分離された反射光57の第一の偏光成分のうち第一のピンホール8を通過したものが、第一の光検出器9に受光され、PBS25により分離された反射光57の第二の偏光成分のうち第二のピンホール26を通過したものが、第二の光検出器27に受光される。
第二のピンホール26は、対物レンズ5の集光位置に対し光学的に共役な位置に配置されている共焦点絞りであり、試料6表面で反射した光のうち対物レンズ5の集光位置以外からのものをカットする。
第二の光検出器27は、第二のピンホール26を通過した光の強度を検出し、当該強度に対応した大きさの電気信号をコンピュータ12へ出力する。コンピュータ12は、光検出器9から出力される電気信号を取り込む処理を行う。
このような構成を有する図5の走査型レーザ顕微鏡では、試料6の高さ情報の生成を、第一の光検出器9から出力される電気信号と、第二の光検出器27から出力される電気信号とのどちらに基づいて行うかを選択することで、試料6で反射した光の鏡面反射成分の検出に使用する動作モードである通常測定モードと、当該鏡面反射成分を遮断して当該光の拡散反射成分の検出に使用する動作モードである急斜面測定モードとの切り換えを行うことができる。
図5の構成において、NPBS22によって反射されて結像レンズ7に到達した試料6からの反射光57の鏡面反射成分は、前述したように、図5の紙面に対し垂直な直線偏光である。従って、この鏡面反射成分はPBS25を透過する。一方、結像レンズ7に到達した試料6からの反射光57の拡散反射成分は、その一部の成分(図5の紙面に平行な偏光成分)がPBS25によって反射される。
従って、図5の走査型レーザ顕微鏡を通常測定モードでの動作させる場合には、コンピュータ12は、試料6の高さ情報の生成処理を、第一の光検出器9から出力される電気信号に基づいて行うようにする。一方、図5の走査型レーザ顕微鏡を急斜面測定モードでの動作させる場合には、コンピュータ12は、試料6の高さ情報の生成処理を、第二の光検出器27から出力される電気信号に基づいて行うようにする。
なお、前述したように、試料6で反射した光における拡散反射成分は、鏡面反射成分に比べて通常は微弱である。そこで、コンピュータ12は、試料6の高さ情報の生成処理の前に予め行っておく検出感度の設定処理において、第二の光検出器27の検出感度を、第一の光検出器9の検出感度と異なるように(第一の光検出器9の検出感度よりも高感度に)設定しておくようにして、当該拡散反射成分を良好に検出できるようにする。
なお、動作モードの切り替えに伴うその他の動作(例えば、ユーザが不図示の入力装置を操作して、走査型レーザ顕微鏡に対し予め設定されている複数の動作モードからそのうちのひとつを選択する指示を行った場合に、コンピュータ12が当該指示を取得し、当該指示に係る動作モードの選択結果に応じて、試料6の高さ情報の生成処理において使用する電気信号として、第一の光検出器9と第二の光検出器27とのどちらから出力されるものを使用するかを選択する制御処理動作)については、図1に示した第一の例に係るものと同様に行う。また、高さ情報の取得動作についても、図1に示した第一の例に係るものと同様に行う。
以上のように、図5に示した走査型レーザ顕微鏡では、第一の光検出器9から出力される電気信号と第二の光検出器27から出力される電気信号とのどちらかの選択を行い、選択した電気信号に基づいて試料6の高さ情報を生成することで、図1に示したものと同様、急峻な傾斜面を有する試料6でも、高さ情報を精度良く取得することができる。また、光検出器を2つ備えているので、光学素子の挿脱動作や回転動作等の機械的な切り換え無しに、通常測定モードでの試料6の高さ情報の生成と、急斜面測定モードでの試料6の高さ情報の生成とを並行して同時に行うようにすることもできる。
なお、図5に示した走査型レーザ顕微鏡では、PBS25が、試料6で反射した光のうちの鏡面反射成分を透過し、当該光のうちの拡散反射成分を反射するようにとしていたが、直線偏光特性を有するレーザ光源1の光軸方向の向きにより、これらの特性を逆にするように構成することもできる。
また、図5に示した走査型レーザ顕微鏡では、第一の偏光板21及び1/4波長板4は、試料6で反射した光のレーザ光源1への戻り光、特に鏡面反射成分を遮断して、当該戻り光がレーザ光源1に入射してレーザ光の励起が不安定になることを防止するために備えている。しかし、前述した図4に示したものと同様にすることにより、このレーザ光源1への戻り光の影響を無視できるのであれば、第一の偏光板21及び1/4波長板4は必ずしも必要ではない。
また、図5に示した走査型レーザ顕微鏡において、図6に示すように、NPBS22とPBS25との間の光路上に、NPBS22で分離した反射光57の偏光特性を変換する1/2波長板28を配置すると共に、1/2波長板28を保持しており、モータなどの電動駆動により、この1/2波長板28の光学軸を、NPBS22からPBS25への光軸周りに回転させることが可能な回転機構29を配置する構成とすることもできる。なお、回転機構29はコンピュータ12に接続されており、コンピュータ12の制御により回転機構29が上記の回転動作を行う。
このような構成を有する図6の走査型レーザ顕微鏡では、1/2波長板28の光学軸を回転させることで、1/2波長板28を透過する直線偏光の方向を任意に設定することができる。
ここで図7について説明する。図7は、1/2波長板28の光学軸を回転させたときの、試料6で反射した光の偏光特性を図示したものであり、光軸方向から見たときのその振動方向を示したものである。ここで、太線の矢印は、試料6で反射した光の鏡面反射成分の振動方向を表現しており、細線の矢印は、試料6で反射した光の拡散反射成分を表現している。
図7において、(a)は、1/2波長板28の光学軸を回転して、試料6からの反射光57の鏡面反射成分の直線偏光の方向に一致させた場合を示している。
このとき、1/2波長板28を透過した反射光58は、1/2波長板28に入射した反射光57と同一の偏光特性を維持している。従って、この後に結像レンズ7を透過してPBS25に入射した反射光58は、図5の走査型レーザ顕微鏡と同様に、PBS25によって鏡面反射成分(反射光59)と拡散反射成分の一部の成分(反射光60)とに分離される。
一方、図7において、(b)は、1/2波長板28の光学軸を回転して、試料6からの反射光57の鏡面反射成分の直線偏光の方向に対し、θだけ角度を持たせた場合を示している。
このとき、1/2波長板28を透過した反射光58の偏光特性は、反射光57の偏光特性を、光軸周りに2θの角度だけ回転させたものになっている。従って、この後に反射光58を結像レンズ7の透過後にPBS25に入射させると、PBS25を透過した反射光59は、鏡面反射成分がPBS25で減衰されるため、(a)の場合における反射光59に比べて光強度が低下する。一方、PBS25が反射した反射光60には、鏡面反射成分が拡散反射成分に一部混入するので、(a)の場合における反射光60に比べて光強度が増加する。これはつまり、1/2波長板28の光学軸を回転させることで、第一の光検出器9及び第二の光検出器27の各々で受光される鏡面反射成分と拡散反射成分との混合比を、任意に変えることができるということになる(反射光59にも鏡面反射成分だけではなく拡散反射成分も含まれていることは当然のことである)。
以上のように、図6に示した走査型レーザ顕微鏡では、例えば急斜面測定モードにおいて、試料6で反射した光のうちの鏡面反射成分を完全に遮断して拡散反射成分のみの光強度を第二の光検出器27で検出するのみではなく、試料6の表面の特性に合わせて、試料6で反射した光のうちの鏡面反射成分を任意の光強度だけ含めた反射光の光強度を第二の光検出器27で検出することも可能となる。
なお、図6に示した走査型レーザ顕微鏡では、1/2波長板28の回転を、コンピュータ12での制御に基づく回転機構29の電動駆動により行うようにしていた。この代わりに、1/2波長板28の回転を、ユーザが手動で行うようにしてもよい。
次に図8について説明する。図8は、本発明を実施する走査型レーザ顕微鏡の構成の第四の例を示している。
なお、図8において、図1に示した第一の例におけるもの若しくは図4に示した第二の例におけるものと実質上同一の構成要素には同一符号を付しており、それらについては詳細な説明を省略する。
図4に示した構成は、図1に示した第一の例の構成において、PBS2と二次元走査機構3との間の光路上に無偏光ビームスプリッタ(NPBS)30を配置すると共に、1/4反射板4及び二次元走査機構3を通過した反射光55のうちNPBS30が反射したものを透過する第二の結像レンズ32と、第二の結像レンズ32を透過した光を通過させる第二のピンホール33と、第二のピンホール33を通過した光を受光する第二の光検出器34と備え、更に、NPBS30と第二の結像レンズ32との間の光路上に偏光板31を配置して構成されている。なお、図8の構成では、1/4反射板4は、二次元走査機構3と対物レンズ5との間の光路上に常に配置されており、挿脱機構20は削除されている。
なお、以降の説明では、第二の結像レンズ32、第二のピンホール33、及び第二の光検出器34との区別を容易にするために、結像レンズ7、ピンホール8、及び光検出器9を、それぞれ、第一の結像レンズ7、第一のピンホール8、及び第一の光検出器9と称することとする。
NPBS30は、試料6で反射した光を、1/4波長板4及び二次元走査機構3を通過した後に、透過光と反射光とに(例えば透過光:反射光=1:1の割合で)分割する。
偏光板31は、その透過軸が図8の紙面に平行に配置されており、NPBS30で反射した光における図8の紙面に平行な直線偏光成分を透過する。
偏光板31を透過した光は、その後、第二の結像レンズ32を透過する。第二の結像レンズ32を透過した光のうち第二のピンホール33を通過したものが、第二の光検出器34に受光される。なお、第二のピンホール33は対物レンズ5の集光位置に対し光学的に共役な位置に配置されている共焦点絞りであり、試料6表面で反射した光のうち対物レンズ5の集光位置以外からのものをカットする。
第二の光検出器34は、入射した光の強度を検出し、当該強度に対応した大きさの電気信号をコンピュータ12へ出力する。コンピュータ12は、第二の光検出器34から出力される電気信号を取り込む処理を行う。
このような構成を有する図8の走査型レーザ顕微鏡では、図5に示したものと同様に、試料6の高さ情報の生成を、第一の光検出器9から出力される電気信号と、第二の光検出器34から出力される電気信号とのどちらに基づいて行うかを選択することで、試料6で反射した光の鏡面反射成分の検出に使用する動作モードである通常測定モードと、当該鏡面反射成分を遮断して当該光の拡散反射成分の検出に使用する動作モードである急斜面測定モードとの切り換えを行うことができる。
図8の構成において、NPBS30によって反射された試料6からの反射光61のうちの鏡面反射成分は、図5における反射光57と同様に、図8の紙面に対し垂直な直線偏光である。従って、透過軸が図8の紙面に平行に配置されている偏光板31により、反射光61の鏡面反射成分は遮断される。一方、反射光61の拡散反射成分のうち特定の偏光成分(偏光板31に入射する拡散反射成分のうち、図8の紙面に垂直な偏光成分)は偏光板31を透過し、その後、第二の結像レンズ32を透過して、第二のピンホール33を通過したものが第二の光検出器34によって受光される。
一方、NPBS30を透過した試料6からの反射光62は、図1に示した走査型レーザ顕微鏡の通常測定モードでの動作時における反射光56と同様に、PBS2により反射されて照明光51の光路から分離されて、反射光63として出射される。このようにしてPBS2が当該光路から分離した反射光63のうち、第一の結像レンズ7を通過し更に第一のピンホール8を通過したものが第一の光検出器9により検出される。
従って、図8の走査型レーザ顕微鏡を通常測定モードでの動作させる場合には、コンピュータ12は、試料6の高さ情報の生成処理を、第一の光検出器9から出力される電気信号に基づいて行うようにする。一方、図8の走査型レーザ顕微鏡を急斜面測定モードでの動作させる場合には、コンピュータ12は、試料6の高さ情報の生成処理を、第二の光検出器34から出力される電気信号に基づいて行うようにする。
なお、前述したように、試料6で反射した光における拡散反射成分は、鏡面反射成分に比べて通常は微弱である。そこで、コンピュータ12は、試料6の高さ情報の生成処理の前に予め行っておく検出感度の設定処理において、第二の光検出器34の検出感度を、第一の光検出器9の検出感度と異なるように(第一の光検出器9の検出感度よりも高感度に)設定しておくようにして、当該拡散反射成分を良好に検出できるようにする。
なお、動作モードの切り替えに伴うその他の動作(例えば、ユーザが不図示の入力装置を操作して、走査型レーザ顕微鏡に対し予め設定されている複数の動作モードからそのうちのひとつを選択する指示を行った場合に、コンピュータ12が当該指示を取得し、当該指示に係る動作モードの選択結果に応じて、試料6の高さ情報の生成処理において使用する電気信号として、第一の光検出器9と第二の光検出器34とのどちらから出力されるものを使用するかを選択する制御処理動作)については、図1に示した第一の例に係るものと同様に行う。また、高さ情報の取得動作についても、図1に示した第一の例に係るものと同様に行う。
以上のように、図8に示した走査型レーザ顕微鏡では、第一の光検出器9から出力される電気信号と第二の光検出器34から出力される電気信号とのどちらかの選択を行い、選択した電気信号に基づいて試料6の高さ情報を生成することで、図1に示したものと同様、急峻な傾斜面を有する試料6でも、高さ情報を精度良く取得することができる。また、光検出器を2つ備えているので、光学素子の挿脱動作や回転動作等の機械的な切り換え無しに、通常測定モードでの試料6の高さ情報の生成と、急斜面測定モードでの試料6の高さ情報の生成とを並行して同時に行うようにすることもできる。
なお、図8に示した走査型レーザ顕微鏡におけるNPBS30による透過光と反射光との分割の割合は、透過光:反射光=1:1に限らず、この割合を異なるものとしてもよい。
また、図8に示した走査型レーザ顕微鏡において、前述した図4や図5に示したものと同様にすることができるのであれば、1/4波長板4は必ずしも必要ではない。
なお、前述した、図5、図6、及び図8に構成を示した走査型レーザ顕微鏡において、第一の光検出器9により検出された光強度を示す第一の光強度情報と、第二の光検出器27(若しくは34)により検出された光強度を示す第二の光強度情報との両者を選択的に使用して、高さ情報を取得するようにすることもできる。
図9は、上述した走査型レーザ顕微鏡のコンピュータ12により行われる、第一の光検出器9及び第二の光検出器27(若しくは34)によって検出された光強度に基づく光強度情報の編集処理の機能構成の一例を示した図である。
図9に示されているように、コンピュータ12は、第一のメモリ12a、第二のメモリ12b、及び画像処理部12cを機能構成として備えている。
第一の光検出器9及び第二の光検出器27(若しくは34)から出力される電気信号は、コンピュータ12の有する不図示のインタフェース部が備えているアナログ−デジタル変換器により、当該電気信号の大きさを示すデジタルデータに逐次変換される。従って、このデジタルデータは、第一の光検出器9及び第二の光検出器27(若しくは34)それぞれにより検出された光の強度を表現している。
第一のメモリ12aは、第一の光検出器9により検出される光の強度を表現しているデジタルデータを、第一の光強度情報として逐次記憶しておく。また、第二のメモリ12bは、第二の光検出器27(若しくは34)により検出される光の強度を表現しているデジタルデータを、第二の光強度情報として逐次記憶しておく。
なお、コンピュータ12は、第一及び第二の光強度情報を、対物レンズ5と試料6との相対位置Zに対応付けて、第一のメモリ12a及び第二のメモリ12bにそれぞれ記憶させる処理を行う。従って、第一のメモリ12aには、第一の光検出器9により検出されたIZデータが記憶され、第二のメモリ12bには、第二の光検出器27(若しくは34)により検出されたIZデータが記憶される。
画像処理部12cは、所定の処理開始の指示を受け取ると、第一のメモリ12aに記憶されている第一の光強度情報を読み出し、試料6表面の各測定点について、IZデータのピーク値と、予め設定されている閾値(例えばノイズレベル相当の低レベルの値)との大小を比較する処理を行う。そして、当該比較処理の結果として、当該ピーク値が当該閾値以下であると判定したときには、第一のメモリ12aに記憶されている、その測定点についてのIZデータ(第一の光強度情報)を、第二のメモリ12bに記憶されている、対応する測定点についてのIZデータ(第二の光強度情報)に置き換える処理を行う。
その後、画像処理部12cは、上述した置き換えの処理が行われた後の光強度情報を第一のメモリ12aから読み出し、この光強度情報に基づいて、試料6の高さ情報を生成する処理を行う。
図9の機能構成による試料6の高さ情報の生成について、更に説明する。
まず、ユーザは、GUI設定画面上で、ハイブリッド測定モードを選択する。ハイブリッド測定モードとは、上述した走査型レーザ顕微鏡の動作モードのひとつとしてコンピュータ12に予め設定されているものであり、上述した第一の光強度情報と第二の光強度情報との両者を選択的に使用して、試料6の高さ情報を取得するように動作する動作モードである。例えば、図3で例示したGUI設定画面における測定モード選択ボタン41に、ハイブリッド測定モードの選択用のラジオボタンを追加しておき、ユーザは、このボタンを利用してハイブリッド測定モードの選択を行うようにする。
次に、ユーザによって、試料6の高さ方向の測定範囲、高さ方向の移動間隔(ステージ11のZ方向の移動間隔)、及び、試料6表面の測定範囲(二次元走査範囲)等が設定され、続いて高さ情報取得開始ボタン44(図3)の押下操作等により測定開始が指示される。
すると、この測定開始指示を取得したコンピュータ12は、当該設定に従ってステージ11をZ方向に移動させながら、試料6の各測定点についての反射光の強度を、第一の光検出器9と第二の光検出器27とで同時に並行して検出させて、各々から出力される電気信号を取り込み、第一の光強度情報及び第二の光強度情報としてそれぞれ第一のメモリ12a及び第二のメモリ12bに記憶させる処理を行う。
その後、ステージ11の高さ方向への移動が完了し、試料6表面の全測定点での光強度情報、すなわちIZデータの第一のメモリ12a及び第二のメモリ12bへの記憶処理が完了すると、コンピュータ12は、画像処理部12cとしての処理を開始し、まず、第一のメモリ12aから第一の光強度情報を読み出す処理を行う。次に、コンピュータ12は、第一の光強度情報で示されている各測定点でのIZデータのピーク値と、前述した閾値との大小を比較する処理を行う。ここで、コンピュータ12は、当該比較処理の結果として、当該ピーク値が当該閾値以下であると判定したときには、第一のメモリ12aに記憶されている、その測定点についてのIZデータ(第一の光強度情報)を、第二のメモリ12bに記憶されている、対応する測定点についてのIZデータ(第二の光強度情報)に置き換える処理を行う。コンピュータ12は、このような比較及び置き換えの処理を試料6表面の全測定点に対して行う。すると、この処理後に第一のメモリ12aに記憶されている第一の光強度情報は、一部が第二の光強度情報に置き換えられたものになる。
その後、コンピュータ12は、一部が第二の光強度情報に置き換えられた第一の光強度情報を第一のメモリ12aから読み出す処理を行う。そして、読み出した第一の光強度情報により表現されている各測定点のIZデータから、試料6の各測定点について、出力データI(すなわち光強度)が最大であるときの、対物レンズ107と試料108との相対位置Zを取得し、この相対位置Zより、試料6の高さ情報を生成する処理を行う。
以上のようにして試料6の高さ情報が取得される。その後、コンピュータ12は、必要に応じて、その高さ情報をモニタ13に表示する処理を行う。
コンピュータ12が以上の処理を行うと、試料6での反射光のうちの鏡面反射成分を検出できる平坦面や緩やかな傾斜面上の測定点については、通常測定モード用である第一の光検出器9によって取得された第一の光強度情報を採用する一方で、当該鏡面反射成分が殆ど検出されない急峻な傾斜面の部分(通常測定モードでの動作時には、第一の光検出器9から出力される信号が、ノイズに埋もれてしまうほど微弱になってしまう部分)については、急斜面測定モード用である第二の光検出器27(若しくは34)によって取得された第二の光強度情報を採用して、試料6の高さ情報の取得が行われることとなる。
以上のように、上述した構成の走査型レーザ顕微鏡において図9に示した機能構成をコンピュータ12が提供するようにして、通常測定モードと急斜面測定モードとのうち、各測定点の光強度情報から最適な方をコンピュータ12が自動的に選択し、それらを組み合わせて高さ情報の取得を行うことにより、2つの測定モードの利点を同時に生かすことができる。すなわち、前述したように、通常測定モードでの動作時には、試料6表面における急峻な傾斜面については、反射光の鏡面反射成分を検出できないために高さ情報の取得を精度良く行うことができないが、試料6表面における平坦面や緩やかな傾斜面については、高さ情報の取得を精度良く行える。その一方、前述したように、急斜面測定モードでの動作時には、反射光の鏡面反射成分を遮断することで、急峻な傾斜面に対しては高さ情報の取得を精度良く行うことができるが、試料6表面における平坦面や緩やかな傾斜面については、検出信号のS/Nを相対的に落とすことになるため、高さ情報の取得を精度良く行うことができない。従って、上述したようにすることで、試料6表面における測定点毎に、通常測定モードと急斜面測定モードとのうち適切である方が選択されるので、精度のよい高さ情報の取得を、試料6表面の測定対象領域全体に亘って行えるようになる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。