JP5093572B2 - 積層体コアおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
特に鉄損を低減させることはモータ用途で重要である。鉄損は、渦電流損失とヒステリシス損失の和である。この渦電流損失とヒステリシス損失は、モータ用のステータやロータなどのコア材に使用される軟磁性材料の特性でほぼ決る。この軟磁性材料の特性として、高飽和磁束密度であり、かつ低保磁力である必要がある。
また、フェライト材料は飽和磁束密度が低く、温度特性が悪い問題があり、動作磁束密度が大きいハイパワーの用途には磁気的に飽和しやすいフェライトは不向きである。
ただし、打ち抜いた軟磁性金属薄帯を樹脂によって積層体とする場合、既に軟磁性金属薄帯が帯状ではないので樹脂を打ち抜いたコア形状部に各々塗布する必要があるため手間がかかる。
また、軟磁性金属薄帯の全面に樹脂を塗布し、その後軟磁性金属薄帯からコア形状に打ち抜き、打ち抜いたコア形状部を積層することも可能であるが、打ち抜いた後に残る薄帯のリサイクルが難しい。残った薄帯にも樹脂が塗布されているため、これらの樹脂を除去しない限り原料をリサイクルすることはできない。樹脂の除去には有機溶剤を使用する必要があり、コストの他にも管理面での煩雑さや溶剤廃棄の際の環境への影響も問題となる。
また、樹脂を塗布せずに軟磁性金属薄帯を積層してカシメにより一体化する技術は、特許文献3に記載されている通り、軟磁性金属薄帯の単体からなる積層体には適用することが難しく、回転器用途などで用いるには信頼性が低いという問題がある。また、カシメによる一体化は軟磁性金属薄帯の層間絶縁が困難であり、結局なんらかの絶縁層を設ける必要がある。
また、本発明は、(Fe,Co)SiB系のアモルファス金属薄帯を用いた積層体コアの製造方法であって、金属薄帯に乾燥後のイミド化率が30%以下のポリアミド酸樹脂がコア形状に塗布されたコア形状部を作製すると共に、前記樹脂が前記コア形状部同士を部分的に繋ぐように塗布された連結部を作製し、前記コア形状部および連結部以外の部分の金属薄帯をエッチング処理により除去してコア連結薄帯とし、前記コア連結薄帯を複数枚積層し、その後、前記樹脂を接着剤として樹脂のガラス転移点以上、熱分解開始温度未満の温度で各コア連結薄帯を圧着一体化し、無負荷状態で焼鈍熱処理し、前記焼鈍処理後の樹脂のイミド化率が30%越であることを特徴とする。
また、本発明は、(Fe,Co)SiB系のアモルファス金属薄帯を用いた積層体コアの製造方法であって、金属薄帯に乾燥後のイミド化率が30%以下のポリアミド酸樹脂がコア形状に塗布されたコア形状部と、前記コア形状部と部分的に連結するように前記樹脂が塗布された位置決め部を作製し、前記コア形状部および位置決め部以外の部分の金属薄帯をエッチング処理により除去してコア接続薄帯とし、前記位置決め部を基準にして前記コア接続薄帯を複数枚積層し、その後、前記樹脂を接着剤として樹脂のガラス転移点以上、熱分解開始温度未満の温度で各コア接続薄帯を圧着一体化し、無負荷状態で焼鈍熱処理し、前記焼鈍処理後の樹脂のイミド化率が30%越であることを特徴とする。
アモルファス金属薄帯が体積分率で全体の9割以上を占める積層体コアとすることができ、高飽和磁束密度のモータ用コアなどを簡単に製造できる。
また、ポリアミド酸NMP溶液は、金属薄帯との濡れ性に優れるため、金属薄帯の両面に塗布することにより、乾燥後以降の工程において樹脂と金属間で十分な密着強度が得られる。
加圧する圧力は、樹脂溶液が隣接する樹脂膜もしくは金属薄帯の表面へ十分なじむために1MPa以上とすることが好ましい。一方、20MPaを超えると隣接する金属薄帯同士が接触する恐れがある。ただし、乾燥雰囲気など条件が会えば加圧力は必ずしも必要ではなく、単に積層したままで積層体とすることも可能である。
炉内の雰囲気は、乾燥窒素雰囲気とすることが好ましい。窒素純度98vol%以上で、かつ露点が−30℃以下の雰囲気であれば、樹脂から際発生する水分をすばやく除去し、かつ金属薄帯表面の酸化を防止することができる。液体窒素からの窒素ガスは、純度99.9998%、露点−50℃以下であるため、より好ましい。
(実施例1)
図1のフローチャート、図2(a)〜(d)の模式図により本発明のロータ用コアの製造方法を説明する。
単ロール装置を用い、FeSiB系の合金溶湯をシリコンナイトライドを主体とするセラミックス製のノズルから外径800mmのCu−Be合金製の冷却ロール上に出湯し、幅25mmのアモルファス状態の金属薄帯10kgを作製した。溶湯の出湯温度は1300℃、ノズルのスリットは25mm×0.6mm、ノズル先端と冷却ロール間のギャップは100μmとし、冷却ロール表面温度を加熱して変え、ノズルスリット直下ロール外周の位置からロール外周にそって測定した距離で630mmの位置で剥離して幅25mm、厚さ約22μmのアモルファス状態の金属薄帯1を作製した。(Step1、図2(a))なお、薄帯の側部には係止・位置決め用の孔5が開けられる。
図2(b)に示すように、この金属薄帯にエッチング用のマスキング材、兼、積層時の接着剤として熱硬化性のポリイミド酸溶液からなる樹脂2を塗布した。金属薄帯を300mm/sの速度でロールから引き出し、引き出した金属薄帯に回転器用のロータコア形状に樹脂を塗布してコア形状部2を作成した。樹脂はスクリーン印刷にて塗布した。コア形状部2同士の間隔は12mmとした。(Step2)
ポリアミド酸溶液として、宇部興産製UワニスAをNMPで2倍に希釈したものを3リットル準備した。希釈後の固形分量は約9重量%であった。このポリアミド酸溶液から成形したポリイミド膜のガラス転移点は285℃である。ガラス転移点は、乾燥後のポリイミド膜を削り取り、DSC−200(セイコー電子工業(株)製)を用い、DSC測定のチャートから読みとった。また、ポリアミド酸溶液を塗布した後、軟磁性金属薄帯を炉内温度が180℃の乾燥炉内に約20秒通過させて乾燥させた。この乾燥工程によるポリアミド酸溶液のイミド化率は、30%以下である。イミド化率の測定方法は、宇部興産製のポリイミドフィルム ユーピレックス−Sをイミド化率100%として、赤外線吸収スペクトル1500cm−1のベンゼン環伸縮の吸光度に対する1367cm−1のイミドのC=N伸縮の吸光度との比率から算出した。
この樹脂が塗布されたコア形状部2の周囲にエッチング液として燐酸溶液をスプレー式で供給した。その後、軟磁性金属薄帯1からコア形状部2が分離されるまで放置し、コア形状薄帯3を取り出してエッチング液を有機溶剤により洗浄した。(Step3、図2(c))
分離されたコア形状薄帯3を熱圧着用のステンレス製の積層金型内に450枚積層した。(Step4、図2(d))
積層したコア形状薄帯3の上下端面と積層金型との間にはポリイミドフィルムを挟み、コア形状薄帯3と金型が固着するのを防止した。この積層金型をポットプレス炉内にセットし、液体窒素からの窒素雰囲気に十分置換した後、金型の温度が、ポリイミド膜のガラス転移点より15℃高い、300℃に昇温し、保持した。この300℃での保持中に、非晶質金属薄帯の積層方向に、圧力5MPaを10分間加えた。その後、炉内を降温し、積層金型から、回転器用ロータコアに用いる積層体4を取り出した。(Step5)
このロータ用コア4を、液体窒素からの窒素雰囲気炉にて、360℃、1.5時間の焼鈍熱処理を行った。この焼鈍処理後のポリイミド膜のイミド化率は30%を越していた。熱処理後のロータ用コア4の高さを測定し、占積率を算出したところ97%であった。
また、このロータ用コア4の表面を20倍の実体顕微鏡で観察したが、膨れなどの欠陥は認められなかった。更に、日立建機ファインテック製の超音波イメージング装置で、周波数50MHzの超音波で内部の欠陥を調べたが、剥離などの欠陥は認められなかった。
以下は、EIコアの製造方法の一例である。実施例1と同様にして、金属薄帯1を作成した。図3(b)に示すように、この金属薄帯にエッチング用のマスキング材、兼、積層時の接着剤として熱硬化性のポリイミド酸溶液からなる樹脂を塗布した。金属薄帯を300mm/sの速度でロールから引き出し、引き出した金属薄帯にトランス等に用いるEI形状に樹脂を塗布してE型(I型の方は図示せず)のコア形状部2を作成した。樹脂はスクリーン印刷にて塗布した。また、コア形状部2同士がマスキングされた樹脂で部分的に連結されるように、略線状に樹脂を塗布して連結部6を作成した。図3(b)中では、E型コアの上下端部でこの連結部6を作成している。この梁を持たせた形状にしたことで、後の工程でコア形状薄帯を一括して積層できるような構成とした。
この樹脂が塗布されたコア形状部2および連結部6の周囲にエッチング液として燐酸溶液をスプレー式で供給した。その後、軟磁性金属薄帯1からコア連結薄帯3’が分離されるまで放置し、コア連結薄帯3’を取り出してエッチング液を有機溶剤により洗浄した。(Step3、図3(c))
分離されたコア連結薄帯3’を熱圧着用のステンレス製の積層金型内に積層した。(Step4、図3(d))
この積層したコア連結薄帯3’を実施例1と同様にして圧着し、E型コアの積層体が端部の連結部6の積層部で繋がった積層ブロック4’を取り出した。この積層ブロック4’の連結部6の積層部を加工により除去し、E型コアの積層体4を作製した。(Step5、図3(e))
このE型コアに巻線を施し、別途同様に作成したI型コアと樹脂で接着させて、EIコアとした。
実施例1と同様にして、金属薄帯1を作成した。図4(b)に示すように、この金属薄帯にエッチング用のマスキング材、兼、積層時の接着剤として熱硬化性のポリイミド酸溶液からなる樹脂を塗布した。金属薄帯を300mm/sの速度でロールから引き出し、引き出した金属薄帯にトランス等に用いるEI形状に樹脂を塗布してE型(I型の方は図示せず)のコア形状部2を作成した。樹脂はスクリーン印刷にて塗布した。また、コア形状部2の周囲にも樹脂を塗布し、その樹脂を塗布した部分とコア形状部2の上下側で連結部6を作成して、樹脂の塗布部分を連結させた。この梁を持たせた形状にしたことで、後の工程でコア形状薄帯を一括して積層できるような構成とした。(Step2、図4(b))、また同時に両端部に孔部5を設け、位置決め部7を作成した。
この樹脂が塗布された金属薄帯の表面全体にエッチング液として燐酸溶液をスプレー式で供給した。その後、軟磁性金属薄帯1からコア接続薄帯3’’が分離されるまで放置し、コア接続薄帯3’’を取り出してエッチング液を有機溶剤により洗浄した。(Step3、図4(c))
分離されたコア連結薄帯3’’を熱圧着用のステンレス製の積層金型内に積層した。積層させる際には、積層金型に設けられたピンが位置決め部7の孔部に貫通するように順次積載積し、各コア連結薄帯3’’の積層体にズレが発生しないように配慮した。(Step4、図3(d))
この積層したコア接続薄帯3’’を実施例1と同様にして圧着し、E型コアの積層体が上下端の連結部6の積層部で繋がった積層ブロック4’’を取り出した。この積層ブロック4’’の連結部6の積層部を加工により除去し、E型コアの積層体4を作製した。(Step5、図4(e))
このE型コアに巻線を施し、別途同様に作成したI型コアと樹脂で接着させて、EIコアとした。
Claims (5)
- (Fe,Co)SiB系のアモルファス金属薄帯を用いた積層体コアの製造方法であって、金属薄帯に乾燥後のイミド化率が30%以下のポリアミド酸樹脂がコア状に塗布されたコア形状部を作製し、前記コア形状部以外の部分の金属薄帯をエッチング処理により除去してコア形状薄帯とし、前記コア形状薄帯を複数枚積層し、その後、前記樹脂を接着剤として樹脂のガラス転移点以上、熱分解開始温度未満の温度で各コア形状薄帯を圧着一体化し、無負荷状態で焼鈍熱処理し、前記焼鈍処理後の樹脂のイミド化率が30%越であることを特徴とする積層体コアの製造方法。
- (Fe,Co)SiB系のアモルファス金属薄帯を用いた積層体コアの製造方法であって、金属薄帯に乾燥後のイミド化率が30%以下のポリアミド酸樹脂がコア形状に塗布されたコア形状部を作製すると共に、前記樹脂が前記コア形状部同士を部分的に繋ぐように塗布された連結部を作製し、前記コア形状部および連結部以外の部分の金属薄帯をエッチング処理により除去してコア連結薄帯とし、前記コア連結薄帯を複数枚積層し、その後、前記樹脂を接着剤として樹脂のガラス転移点以上、熱分解開始温度未満の温度で各コア連結薄帯を圧着一体化し、無負荷状態で焼鈍熱処理し、前記焼鈍処理後の樹脂のイミド化率が30%越であることを特徴とする積層体コアの製造方法。
- (Fe,Co)SiB系のアモルファス金属薄帯を用いた積層体コアの製造方法であって、金属薄帯に乾燥後のイミド化率が30%以下のポリアミド酸樹脂がコア形状に塗布されたコア形状部と、前記コア形状部と部分的に連結するように前記樹脂が塗布された位置決め部を作製し、前記コア形状部および位置決め部以外の部分の金属薄帯をエッチング処理により除去してコア接続薄帯とし、前記位置決め部を基準にして前記コア接続薄帯を複数枚積層し、その後、前記樹脂を接着剤として樹脂のガラス転移点以上、熱分解開始温度未満の温度で各コア接続薄帯を圧着一体化し、無負荷状態で焼鈍熱処理し、前記焼鈍処理後の樹脂のイミド化率が30%越であることを特徴とする積層体コアの製造方法。
- 前記コア連結薄帯またはコア連結薄帯を一体化した後に加工して積層体コアとすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の積層体コアの製造方法。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の製造方法により製造された積層体コアであって、アモルファス金属薄帯が体積分率で全体の8割以上を占めることを特徴とする積層体コア。
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