JP5085096B2 - 高炉鋳床の連続精錬方法及び高炉鋳床設備 - Google Patents

高炉鋳床の連続精錬方法及び高炉鋳床設備 Download PDF

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Description

本発明は、溶銑を連続的に精錬する高炉鋳床の連続精錬方法及び高炉鋳床設備に関する。
高炉で還元されて出銑された溶銑は、通常0.3〜0.5%程度の珪素[Si]の他に、4.3〜4.6%程度の炭素[C],0.09〜0.13%程度のりん[P]を含んでいる。この溶銑を精錬して所定の鋼とするには、炭素[C]やりん[P]を所定濃度まで低減する必要があるが精錬効率の観点から脱炭,脱りんに先立って珪素[Si]や硫黄[S]を極力低濃度(例えば、珪素[Si]0.25%)まで除去しておくことが望ましい。
また、脱硫は吸熱反応であるため、高炉からの出銑後の最も高温時期である溶銑流路内を流れる過程で脱硫処理することが最も望ましい。
従来から、高炉から出銑した溶銑に対して脱珪,脱硫等の処理を行う装置や方法として、例えば、特許文献1〜3に示すものがある。
特許文献1は、高炉鋳床樋の上方に精錬剤(処理剤)噴射用のランスを樋の長手方向に設けた予備処理装置が記載されている。この予備処理装置では、精錬剤噴射用のランスを溶銑に浸漬して精錬剤をキャリアガスと共に溶銑内に吹き込んだり、精錬剤噴射用のランスを溶銑の上方に位置させて精錬剤をキャリアガスと共に吹き付けることによって、精錬処理を行っている。また、予備処理装置では、精錬剤噴射用のランスを移動させながら、精錬剤を溶銑に吹き付けたり、吹き込んだりしている。
特許文献2は、高炉鋳床のスキンマの下流側に予備処理反応槽を設け、この予備処理反応槽内の溶銑に脱流剤を添加することによって、溶銑の脱流処理を行う方法である。この脱硫処理を行う方法では、インジェクションランスを溶銑流れ方向の下流側に向かって浸漬し、当該ランスから脱硫剤をキャリアガスと共に吹き込みながらランスを予備処理反応槽の幅方向及び溶銑流れ方向に移動させながら脱流を行っている。
特許文献3は、高炉の傾注樋にて溶銑と精錬剤とを強制的に攪拌し、溶銑中に精錬剤を巻き込ませることによって、溶銑の精錬を行う精錬方法である。
特開昭63−317611号 特開平04−052205号 特開昭63−105914号
特許文献1に示すように、溶銑の精錬を行う際に精錬剤噴射用ランスを移動させることによって、精錬剤の吹き込みによる高炉鋳床樋の耐火物が局所的に損耗することを防ぐことができる。
しかしながら、特許文献1に示すものでは、耐火物の損耗を防ぐことが可能ではあるが精錬剤噴射用ランスの移動範囲が全く規定されておらず、このような技術では、反応効率が低下することが実情である。
特許文献2も特許文献1と同様に、溶銑の精錬(脱硫)を行う際にインジェクションランスを移動しているので、耐火物の局所的な損耗を防ぐことができるものの、インジェクションの移動範囲が全く規定されておらず、特許文献1と同様に、反応効率が低下する場合があった。
これに加え、特許文献1及び特許文献2のものでは、溶銑を精錬するのに精錬剤をランスを用いて溶銑内に吹き込むといったインジェクション方式であり、この方式では、反応効率がよくない場合があった。
特許文献3に示すように、溶銑を攪拌することによって精錬剤を溶銑中に巻き込ませるという方法では、一部の精錬剤が溶銑中に巻き込まれずに流れていくことがあり、反応に関与しない精錬剤が多く、反応効率がよくない場合がある。また、特許文献3では、溶銑同じ箇所で攪拌しているため、攪拌された溶銑が一定の耐火物だけに当たってしまい、これによって、局所的に耐火物が損耗してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、精錬処理を行うにあたって、耐火物の局所的な損耗を防ぐと共に、精錬処理の効率を向上させることができる高炉鋳床の連続精錬方法及び高炉鋳床設備を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、高炉鋳床の溶銑流路内を流れる溶銑に精錬剤を添加し、インペラを溶銑に浸漬して回転させることにより溶銑と前記精錬剤とを混合することで溶銑を連続的に精錬する高炉鋳床の連続精錬方法において、前記溶銑流路内に段差部を配置してこの段差部から溶銑を落下させ、前記段差部の下流側に前記インペラを配置して溶銑を攪拌しており、前記溶銑を精錬する際に、インペラを溶銑流路に沿って次式の範囲で移動させる点にある。
0<L/D≦1.5
ただし、
D:溶銑流路の最大幅(m)
L:段差部からインペラまでの距離(m)
発明者は、精錬剤を溶銑中に確実に巻き込ませることで、精錬処理の効率を向上させると共に、溶銑流路に設けた耐火物の局所的な損耗を防止する方法について様々な角度から検証した。
具体的には、発明者は、溶銑をインペラによって攪拌し且つ溶銑を落下によって攪拌するという両者の攪拌作用を用いることによって、確実に精錬剤を溶銑中に巻き込ませるという点に着目した。そこで、溶銑流路内に段差部を配置してこの段差部から溶銑を落下させ、前記段差部の下流側に前記インペラを配置して溶銑を攪拌することとした。
また、発明者は、両者による攪拌を最大限に生かすには、インペラと段差との位置関係が重要となると考え、インペラと段差部との位置を変化させたときの精錬処理の効率について実験を行った。実験の結果、インペラと段差部との位置関係が上記式を満たすことによって、精錬効率が向上することを見出した。
さて、耐火物の局所的な損耗を防ぐためには、精錬処理を行う際に、溶銑を攪拌するインペラを一定の位置に留まらせることなくインペラを上流側と下流側との範囲で移動させることが有効と考えられる。
そこで、発明者は、精錬処理の効率を向上させつつ耐火物の局所的な損耗を防ぐために、インペラを上記式(0<L/D≦1.5)を満たす範囲で移動させることにした。
本発明における課題解決のための他の技術的手段は、高炉から出銑された溶銑が流れる溶銑流路と、この溶銑流路内を流れる溶銑に精錬剤を添加する添加装置と、溶銑を攪拌するインペラを有する攪拌装置とを備えた高炉鋳床設備において、前記溶銑流路の上流側には溶銑を落下させるための段差部が設けられ、この段差部の下流側に前記インペラが位置するように攪拌装置が設けられており、前記攪拌装置は、インペラを溶銑流路に沿って次式の範囲で移動可能となっている点にある。
0<L/D≦1.5
ただし、
D:溶銑流路の最大幅(m)
L:段差部からインペラまでの距離(m)
これによれば、インペラを上記式を満たす範囲で移動させることで、耐火物の局所的な損耗を防ぐと共に、精錬処理の効率を向上させることができる。
なお、本発明における課題解決のための最も好ましい技術的手段としては、高炉鋳床の溶銑流路内を流れる溶銑に精錬剤を添加し、1基のインペラを溶銑に浸漬して回転させることにより溶銑と前記精錬剤とを混合することで溶銑を連続的に精錬する高炉鋳床の連続精錬方法において、前記溶銑流路内に段差部を配置してこの段差部から溶銑を落下させ、前記段差部の下流側に前記インペラを配置して溶銑を攪拌しており、前記インペラの下流側であって次式を満たす位置に精錬剤を添加し、
0<M/D≦0.8
ただし、
M:インペラの回転軸の軸芯から精錬剤の添加位置までの水平距離(m)
D:溶銑流路の最大幅(m)
前記溶銑を精錬する際に、インペラを溶銑流路に沿って次式の範囲で移動させるさせるものがある。
0<L/D≦1.5
ただし、
D:溶銑流路の最大幅(m)
L:段差部からインペラまでの距離(m)
また、本発明における課題解決のための最も好ましい技術的手段としては、高炉から出銑された溶銑が流れる溶銑流路と、この溶銑流路内を流れる溶銑に精錬剤を添加する添加装置と、溶銑を攪拌する1基のインペラを有する攪拌装置とを備えた高炉鋳床設備において、前記溶銑流路の上流側には溶銑を落下させるための段差部が設けられ、前記段差部の下流側に前記インペラが位置するように攪拌装置が設けられており、前記インペラの下流側であって次式を満たす位置に添加装置が配備され、
0<M/D≦0.8
ただし、
M:インペラの回転軸の軸芯から添加装置における精錬剤の添加位置までの水平距離(m)
D:溶銑流路の最大幅(m)
前記攪拌装置は、インペラを溶銑流路に沿って次式の範囲で移動可能となっているものもある。
0<L/D≦1.5
ただし、
D:溶銑流路の最大幅(m)
L:段差部からインペラまでの距離(m)
本発明によれば、耐火物の局所的な損耗を防ぐと共に、精錬処理の効率を向上させることができる。
以下、本発明の高炉鋳床設備について説明する。
図1、2に示すように、高炉2の周りには高炉鋳床1が設けられており、この高炉鋳床1は高炉2から出銑された溶銑が流れる出銑樋4を有している。
出銑樋4は、高炉2から出銑した溶銑を、溶銑を入れる溶銑鍋や混銑車等に導く溶銑流路である。図1の左側から右側へ溶銑が流れる。ゆえに、図1の左側を上流、図1の右側を下流と呼ぶ。
出銑樋4の上流側には、第1排滓樋5が分岐形成されており、この第1排滓樋5の分岐点よりも下流側には溶銑上に浮かぶスラグ6が第1排滓樋5に流れるように案内する第1潜り堰7が設けられている。潜り堰とは、矩形状のものであって、下部が出銑樋4の底部から離れ、上部が溶銑から突出している堰のことで、溶銑上に浮かぶスラグを堰止め、溶銑自体を下側から通すものである。
第1潜り堰7の下流側には、出銑樋4の底部から上方に突出した段差部8が設けられている。この段差部8は、出銑樋4の上流側の底部4a(言い換えれば、第1潜り堰7に近接する底部)から略直角に立ち上がる垂直部8aと、この垂直部8aから下流側に向けて水平に延びる水平部8bと、この水平部8bから出銑樋4の下流側の底部4bへ向けて傾斜する傾斜部8cとを有している。
図3、4に示すように、段差部8の高さHを、当該段差部8よりも下流側の出銑樋4の底部4bから段差部8の水平部8bまでの距離とし、溶銑の深さZを段差部8より下流側における溶銑の深さとしたとき、H/Z≧1を満たすように、当該段差部8の高さHを設定することが好ましい。
また、段差部8の勾配θ(deg)を出銑樋4の底部4bと段差部8の傾斜部8cとの成す狭角としたとき、θ≧30を満たすように、当該段差部8の勾配(傾斜角度)θを設定することが好ましい。
段差部8の下流側には、回転によって溶銑を攪拌するインペラ10を有する攪拌装置11が配置され、このインペラ10の下流側には精錬剤を添加する添加装置12が配置されている。
添加装置12の下流側には、インペラ10で攪拌した後に生成されたスラグ14を排滓する第2排滓樋13が分岐形成されている。第2排滓樋13の分岐点よりも出銑樋4の下流側には、インペラ10によって攪拌された後に生成されたスラグ14を第2排滓樋13に流れるように案内する第2潜り堰15が設けられている。
なお、第2排滓樋13の下流側の側壁13a(側壁13aの上端)から後述するインペラ10の回転軸15の中心までの水平距離Rが後述する溶銑流路4の最大幅Dに対して、1.2≦R/D≦5を満たすように、第2排滓樋13の位置を設定することが好ましい。
図5に示すように、出銑樋4は、断熱部60と、この断熱部60の内側に配置されて煉瓦等で構成された背面部61と、背面部61の内側に配置された耐火部62とを有している。
耐火部62は、不定形の耐火物を背面部61の内側に流し込むことで形成されたもので、底部4aや底部4bを構成する底壁20と、この底壁20の両端からから立ち上がる側壁21とを有している。この実施の形態では、耐火部62は、側壁21が底壁20の両端部から上方にいくにしたがって徐々に外側に移行する台形状に形成されている。
前記溶銑流路の最大幅Dは、出銑樋4に溶銑を通過させた際に、溶銑と耐火部62の側壁21とが接触している接触部分での耐火部62の最大幅である。言い換えれば、溶銑流路の最大幅Dは、出銑樋4に溶銑を通過させた際、出銑樋4内を流れる溶銑の最大幅である。図5に示すように、耐火部62の形状が断面視で台形であるときには、出銑樋4を流れる溶銑の湯面幅が溶銑流路の最大幅Dとなる。
以下、攪拌装置11、添加装置12について、詳しく説明する。
[攪拌装置について]
図7,8に示すように、攪拌装置11は、溶銑を攪拌するインペラ10と、このインペラ10を回転駆動させる駆動部30と、インペラ10及び駆動部30を昇降させる昇降部31と、インペラ10,駆動部30及び昇降部31を移動させる移動部50を備えている。
駆動部30は、インペラ10を回転させるための駆動モータ32と、駆動モータ32から下側に突出した出力軸である第1回転軸33と、この第1回転軸33の先端に取り付けられた第1歯車34と、この第1歯車34に噛合する第2歯車35と、この第2歯車35が上端に設けられ且つ軸芯が上下に向く第2回転軸36とを有している。これら駆動モータ32、第1回転軸33及び第2回転軸36は、支持体37に配備されている。
第2回転軸36は、上下一対のベアリング38によって支持体37に回転自在に支持されている。第2回転軸36の下部には後述するインペラ10の回転軸15と当該第2回転軸36と同軸上に接続する接続具39が設けられている。
昇降部31は、一対のシリンダ(ロック付きエアシリンダ)40を有しており、このシリンダ40はその軸芯を上下に向けて支持体37の両側に配置されている。
シリンダ40のシリンダ本体41aは踏み板42上に固定されたフレーム41に取り付けられている。シリンダ40のロッド40bの先端は支持体37に接続されており、ロッド40bの伸縮によって、支持体37を昇降できるようになっている。
インペラ10は、筒状又は棒状の回転軸15と、回転軸15の先端に設けられた複数の羽根16とを有している。
インペラ10の回転軸15は、出銑樋4を覆う溶銑樋カバー43に設けられた第1開口部25を貫通すると共に、溶銑樋カバー43の上方に設けられた踏み板42の第2開口部26を貫通している。第1開口部25は、出銑樋4を覆う溶銑樋カバー43に出銑樋4の長手方向に沿って延設された開口であって、第2開口部26は、踏み板42に出銑樋4の長手方向に沿って延設された開口である。
回転軸15の上端は、接続具39を介して駆動部30の第2回転軸36に接続されている。
インペラ10の各羽根16は回転軸15の先端から径外方向に突出した略矩形状のものである。インペラ10の羽根16の枚数は4枚とされている。各羽根16はその枚数に対応して回転軸15に対し均等な角度(例えば、90deg)の間隔で回転軸15に取り付けられている。
図3、4に示すように、インペラの幅dを、互いに対向しているそれぞれの羽根16の幅(回転軸15から突出している長さ)と回転軸15の直径とを加算(d=d1+d2+d1)したものとしたとき、インペラ10の幅dは、溶銑流路の最大幅Dに対して、0.3≦d/D<1を満たすのが好ましい。
移動部50は、インペラ10を出銑樋4に沿って、式(1)を満たすように、インペラ10を移動させるものである。
0<L/D≦1.5 ・・・(1)
ただし、
D:溶銑流路の最大幅(m)
L:段差部(段差)からインペラまでの距離(m)
図3、4に示すように、段差部8からインペラ10までの距離Lは、溶銑と段差部8の傾斜部8cとが接触している接触部分Tから羽根16を回転させたときの軌道Kまでの水平距離である。言い換えれば、段差部8からインペラ10までの距離Lは、溶銑と段差部8の傾斜部8cとが接触している接触部分Tから羽根16の先端部までの水平距離である。
前記移動部50は、インペラ10,駆動部30及び昇降部31等を支持するフレーム41と、このフレーム41に回転自在に支持され且つ出銑樋4カバー43上を転動する転動輪51とを有している。フレーム41は、出銑樋4に沿って延設されたベース部52を有している。ベース部52には、当該ベース部52から下方に延びる脚部53が設けられ、この脚部53は、第2開口部26を介して(通って)踏み板42近傍まで達するものとなっている。脚部53の先端(下端)には、転動輪51が出銑樋4に沿って移動可能となるように回転自在な転動輪51が設けられている。なお、踏み板42上には、転動輪51が踏み板42上を出銑樋4に沿って直線的に移動できるように、転動輪51が走行する軌道(例えば、レール)が設けられている。
攪拌装置12によれば、駆動モータ32を駆動させることで、第2回転軸36を回転駆動させることができ、第2回転軸36の回転によって、インペラ10の羽根16をインペラ10の回転軸15回りに回転させることができる。
また、攪拌装置12の昇降部31で支持体37を昇降させることで、インペラ10の羽根16を溶銑に浸す浸し姿勢と、インペラ10の羽根16を溶銑に浸さない退避姿勢とに姿勢変更することができる。
したがって、昇降部31によって支持体37を下降させ、インペラ10の羽根16を浸す状態にした後、駆動モータ32の駆動によって溶銑に浸した羽根16を回転させることで脱珪処理及び脱硫処理を行う際に、溶銑を攪拌することができる。
その状態において、転動輪51のいずれか又は全てを回転させ、攪拌装置11すなわちインペラ10を式(1)を満たす範囲で移動させることが可能である。なお、転動輪51を回転させる電動モータをフレーム41に設け、この電動モータの駆動によって自動的に転動輪51を回転させることが好ましい。
[添加装置について]
図7、8に示すように、添加装置12は、精錬剤を貯蔵するホッパー45と、ホッパー45の下部から排出された精錬剤を細かく切り出す切り出し部46と、切り出された精錬剤を搬送するスクリューコンベア47と、スクリューコンベア47の精錬剤の送り出し側(先端部ということがある)に設けられた剤投入ランス17とを有している。
スクリューコンベア47は、出銑樋4に沿って延びる筒体48と、この筒体48内に当該筒体48の軸芯と同軸上に設けられ且つ筒体48内を回転自在なスクリュー49とを有しており、スクリュー49の回転によって、回転によって切り出し部46から切り出された精錬剤を剤投入ランス17へ向けて搬送するように構成されている。
剤投入ランス17は、その軸芯が上下に向けられ、溶銑樋カバー43及び踏み板42を貫通している。剤投入ランス17の上端はスクリューコンベア47の先端に接続され、剤投入ランス17の下端は、溶銑の上側に達している。
添加装置12、即ち、ホッパー45、切り出し部46と、スクリューコンベア47及び剤投入ランス17は攪拌装置11のフレーム41(ベース部52)に支持されている。これにより、添加装置12は、攪拌装置11と共に移動するようになっている。
詳しくは、 脱珪処理及び脱硫処理を行う際に攪拌装置11のインペラ10が移動すると、添加装置12の剤投入ランス17も同時に移動する。
なお、図3、4に示すように、インペラ10の回転軸15の中心(軸芯)から剤投入ランス17の中心(軸芯)までの水平距離Mが0<M/D≦0.8を満たすように、剤投入ランス17の位置が設定されていることが好ましい。
次に、本発明の高炉鋳床の連続精錬方法について説明する。
高炉鋳床の連続精錬方法では、出銑樋4内に段差部8を配置してこの段差部8から溶銑を落下させ、段差部8の下流側にインペラ10を配置して溶銑を攪拌し、インペラ10を出銑樋4に沿って、式(1)を満たすように移動させる。
具体的には、高炉2から出銑した溶銑は、第1潜り堰7下を通過して段差部8に向けて下流側へと流れ、スラグ6は第1排滓樋5に流れる。そして、段差部8へ向けて流れる溶銑は、段差部8の水平部8bを通過して、段差部8の傾斜部8cに到達し、傾斜部8cに沿ってさらに下流側に流れる。
傾斜部8cに到達した溶銑は傾斜部8cに沿って流れるが、このとき、当該溶銑は段差部8(水平部8b)から出銑樋4の底部4bに向けて落下する。段差部8から落下した溶銑は、段差部8から落下したことで攪拌される。
段差部8から落下して攪拌された溶銑は、インペラ10に到達して当該インペラ10によって機械攪拌され、インペラ10よりもさらに下流側に流れる。添加装置12付近に到達した溶銑には、精錬剤(例えば、脱珪剤又は脱硫剤)が添加され、溶銑の脱珪や脱硫が行われる。脱珪処理又は脱硫処理された溶銑は、第2潜り堰15下を通過して段差部8に向けて下流側へ流れ、インペラ10の攪拌又精錬剤の添加によって生成されたスラグ14は第2排滓樋13に流れることになる。
本発明の高炉鋳床の連続精錬方法では、出銑樋4に段差部8を設けることで溶銑を落下させ、この落下によって溶銑に乱流を発生させることができる。溶銑の乱流によって、溶銑は攪拌されるため精錬剤を溶銑に巻き込ませる効果が期待できる。
即ち、インペラ10よりも下流側で添加された精錬剤の一部は、インペラ10の回転によって段差部8の傾斜部8cへ向けて戻ってくることがあるが、段差部8側へ戻ってきた未反応の精錬剤を段差による攪拌によって、溶銑内に確実に巻き込ませることができる。
これに加え、段差部8の傾斜部8cが邪魔板として働いて溶銑の流れに乱れを起こし、その結果、戻ってきた未反応の精錬剤を溶銑に巻き込ませるという邪魔板効果も期待できる。
このように、段差部8を設けることで溶銑の攪拌を引き起こさせ、未反応の精錬剤を溶銑に巻き込ませるという効果を得ることができるため、段差部8による攪拌とインペラ10による機械攪拌との両者を合わせることで、溶銑に精錬剤を確実に巻き込ませることができることが期待できる。
さて、両者による攪拌を最大限に生かすには、段差部8とインペラ10との位置関係が重要となる。図3、4に示すように、段差部8とインペラ10との位置関係は、溶銑流路の最大幅Dに対する段差部8の立ち上がりとインペラ10までの距離との割合(L/D)で示すことができる。L/Dの値が大きくなればなるほど、段差部8とインペラ10とが離れていることを意味する。
そこで、段差部8とインペラ10との位置関係と、脱珪酸素効率ηO2との関係を過去の操業等から図9のようにまとめると、L/Dの値が1.5よりも大きいとき、脱珪酸素効率ηO2が50%未満となった。
L/Dの値が1.5を超えると、段差とインペラ10とが離れ過ぎているため、殆どの精錬剤がインペラ10の攪拌によって段差部8側に戻ってくることが無く、その結果、脱珪酸素効率ηO2が低下したと考えられる。即ち、L/Dの値が1.5より大きい場合は、段差部8による溶銑の攪拌では精錬剤を溶銑に巻き込ませるという巻き込み効果は非常に小さく、実質的に、インペラ10の攪拌のみで精錬剤を溶銑に巻き込ませているのと同じである。
なお、L/D=0であるときは、段差部8とインペラ10との両者の位置が同じであることを意味するが、この条件ではインペラ10自体を回転させることができず操業として成り立たないため、L/D=0を除外し、脱珪酸素効率ηO2が50%以上となる0<L/D≦1.5とした。また、0<L/D≦1.5であるとき、脱硫効率ηSも50%以上となった。
段差部8に対するインペラ10の位置を0<L/D≦1.5を満たすようにすることで、精錬効率を向上させることができる。
さて、図6(a)に示すように、精錬処理の際に、インペラ10の位置を固定した状態で当該インペラ10を回転させると、インペラ10によって攪拌された溶銑は耐火物の同じ箇所(場所)に当たることになり、溶銑が常に当たる箇所が局所的に摩耗してしまう虞がある。
一方で、図6(b)に示すように、精錬処理の際に、インペラ10の位置を固定せず、当該インペラ10を出銑樋4に沿って移動し、インペラ10を回転させると、インペラ10によって攪拌された溶銑は耐火物の異なる箇所(場所)に当たることになるため、耐火物を満遍なく摩耗させることができ、溶銑樋4の寿命を長くすることができる。
そこで、本発明では、耐火物の局所的な摩耗を防止つつ、上述したように精錬効率を向上させるため、インペラ10を出銑樋4に沿って、式(1)を満たすように移動させていいる。
インペラ10の移動は、攪拌装置11を出銑樋4の長手方向に沿って移動させることによってなすことができる。例えば、出銑した溶銑量が所定量になる毎にインペラ10を所定ピッチずつ式(1)の範囲で移動させたり、出銑した溶銑量に関わらずインペラ10を連続的に式(1)の範囲で移動させる。
以下、式(1)に基づいて、インペラを移動させて、脱珪処理又は脱流処理を行った本発明の実施例と、比較例とを例示して説明する。実施条件は表1の通りである。
Figure 0005085096
溶銑中の珪素[Si]は、脱珪剤(精錬剤)中の酸素[O]と反応して、Si+2O=SiO2の反応式にしたがって(SiO2)として溶銑から除去される。溶銑へ添加された脱珪剤が効率的に脱珪反応に寄与したかを表す指標として、式(2)に示される脱珪酸素効率ηO2を用いた。
脱珪酸素効率ηO2は、脱珪剤中の酸素分に対して溶銑中のSiの酸化に使用された酸素分の割合を示したものである。
溶銑へ添加された脱硫剤(精錬剤)が効率的に脱硫反応に寄与したかを表す指標として、式(3)に示される脱硫効率を用いた。
Figure 0005085096
Figure 0005085096
精錬剤の組成は、脱珪剤の場合、FeO及び/又はFe23を、脱硫剤の場合、CaOを含んでいればよい。この実施の形態では、脱珪剤として5FeO−58Fe23−21CaO−8SiO2(in mass%)、脱硫剤として80CaO−3SiO2−3MgO−6Al23−8M.Al(in mass%)を用いた。
従来ような機械的な攪拌のみの精錬では、同じ脱珪剤原単位で比較した場合、従来での脱珪酸素効率ηO2は30〜40%であった。それを鑑み、この実施例では、脱珪酸素効率ηO2は高効率である50%以上になることを基準とした。この場合、出銑時の珪素[Si]が0.38〜0.42mass%であったが、処理後の珪素[Si]は、0.2mass%以下となる。
同様に、同じ脱硫剤原単位で比較した場合、従来での脱硫効率ηSは30〜40%であった。それを鑑み、この実施例では、脱硫効率ηSは高効率である50%以上になることを基準とした。この場合、出銑時の硫黄[S]が0.022〜0.023mass%であったが、処理後の硫黄[S]は、0.010mass%以下とした。
脱珪酸素効率ηO2の基準を50%以上とすることで、本処理の後工程に行われる脱りん処理における効率(脱りん時間の短縮、脱りん量の向上)を向上させることができる。
また、脱硫効率ηSが50%未満の場合、さらに追加の脱硫工程が必要となる場合があり、生産性低下や熱ロスを招くため、操業上好ましくない。したがって、脱硫効率ηSは50%以上確保する必要がある。
また、出銑終了後の耐火物の最大摩耗量Sは200mm未満であることを基準とした。
耐火物の最大摩耗量Sを200mm未満とすることは、過去の操業実績から得られたものであって、最大摩耗量Sが200mmを超えると、それが例え1箇所であったとしても出銑樋4が寿命を迎えることになる。出銑樋4が寿命を迎えると、出銑樋4全体に対して耐火物の流し込みを行って、出銑樋4全体の耐火物を取り替えるという大がかりな作業を行わなければならない(以降、耐火物を取り替えることを、流し込み施工後ということがある)。
以下、表2は実施例及び比較例をまとめたものである。
Figure 0005085096
実施例1では、脱珪処理の際に、インペラ10を式(1)を満たす範囲で連続的に移動
させた。実施例2〜9では、出銑された溶銑が下流側で溶銑鍋に入れられる毎(例えば1鍋、5鍋、10鍋、50鍋ごと)にインペラ10を式(1)を満たす範囲で移動させながら脱珪処理を行った。実施例10では、脱硫処理の際に、出銑された溶銑が下流側で溶銑鍋に入れられる毎(5鍋ごと)にインペラ10を式(1)を満たす範囲で移動させた。1つの溶銑鍋の容量は90tonである。
なお、表2で示す攪拌位置は、インペラ10を移動させたときの、段差部8からインペラ10までの距離Lを示したものである。表2で示す攪拌位置の欄においては、例えば、実施例1では、L=0.25〜1.25(L/D=0.28〜1.39)となる範囲でインペラ10を連続的に往復移動させている。実施例2では、出銑した溶銑が1鍋に入る(出銑した溶銑量が90ton)毎にL=0.25〜1.25(L/D=0.28〜1.39)となる範囲を、0.05〜0.5m刻みにインペラ10を移動させている。
表2で示す損耗度とは、初期(流し込み施工後)の耐火物の厚み(溶銑の湯面と耐火物とが接触する接触部分Jにおける厚み350mm)に対して、100鍋処理後の耐火物の最大摩耗量Sの割合を示したものである。最大摩耗量Sの管理値を200mm未満としていることから、損耗度が57%を超えることは非常に好ましくない。表2で示す脱珪酸素効率ηO2や脱硫効率ηSは、100鍋処理を行った後の平均値である。
表2に示すように、精錬処理の際に、インペラ10を式(1)を満たす範囲で移動させた場合、脱珪酸素効率ηO2及び脱硫効率ηSを50%以上にすることができると共に、100鍋分の溶銑を出銑した後の耐火物の最大摩耗量Sが200mm未満であった。損耗量は全てにおいて57%以下であった。(実施例1〜10)。
一方で、インペラ10を式(1)を満たす範囲内に固定して精錬処理を行った場合、脱珪酸素効率ηO2及び脱硫効率ηSは50%以上にすることができたが、出銑後の耐火物の最大摩耗量Sは200mm以上となった。損耗量は57%を大きく超えている。(比較例11、13)。
また、インペラ10を式(1)を満たさない範囲で固定して精錬処理を行った場合、脱珪酸素効率ηO2及び脱硫効率ηSは50%未満であると共に、出銑後における耐火物の最大摩耗量Sも200mm以上となり、損耗量は57%を大きく超えている。(比較例12)。
以上、本発明によれば、溶銑を精錬する際に、インペラ10を溶銑流路に沿って、式(1)を満たすように、移動させることによって、耐火物の局所的な損耗を防ぐと共に、精錬処理の効率を向上させることができる。
本発明は、高炉から出銑した溶銑を連続的に精錬する方法に利用することができる。
図1は、高炉鋳床設備の概略平面図である。 図2は、高炉鋳床設備の概略断面図である。 図3は、高炉鋳床設備における寸法を説明する平面図である。 図4は、高炉鋳床設備における寸法を説明する斜視図である。 図5は、出銑樋にインペラを浸漬したときの概略断面図である。 図6は、インペラを移動した場合と移動しなかった場合の耐火物の溶損の状態図である。 図7は、攪拌装置及び添加装置の概略正面図である。 図8は、攪拌装置の概略側面図である。 図9は、L/Dと脱珪酸素効率との関係をまとめた図である。
符号の説明
1 高炉鋳床
2 高炉
4 出銑樋
8 段差部
10 インペラ
11 攪拌装置
12 添加装置
17 剤投入ランス

Claims (2)

  1. 高炉鋳床の溶銑流路内を流れる溶銑に精錬剤を添加し、1基のインペラを溶銑に浸漬して回転させることにより溶銑と前記精錬剤とを混合することで溶銑を連続的に精錬する高炉鋳床の連続精錬方法において、
    前記溶銑流路内に段差部を配置してこの段差部から溶銑を落下させ、
    前記段差部の下流側に前記インペラを配置して溶銑を攪拌しており、
    前記インペラの下流側であって次式を満たす位置に精錬剤を添加し、
    0<M/D≦0.8
    ただし、
    M:インペラの回転軸の軸芯から精錬剤の添加位置までの水平距離(m)
    D:溶銑流路の最大幅(m)
    前記溶銑を精錬する際に、インペラを溶銑流路に沿って次式の範囲で移動させることを特徴とする高炉鋳床の連続精錬方法。
    0<L/D≦1.5
    ただし、
    D:溶銑流路の最大幅(m)
    L:段差部からインペラまでの距離(m)
  2. 高炉から出銑された溶銑が流れる溶銑流路と、この溶銑流路内を流れる溶銑に精錬剤を添加する添加装置と、溶銑を攪拌する1基のインペラを有する攪拌装置とを備えた高炉鋳床設備において、
    前記溶銑流路の上流側には溶銑を落下させるための段差部が設けられ、
    前記段差部の下流側に前記インペラが位置するように攪拌装置が設けられており、
    前記インペラの下流側であって次式を満たす位置に添加装置が配備され、
    0<M/D≦0.8
    ただし、
    M:インペラの回転軸の軸芯から添加装置における精錬剤の添加位置までの水平距離(m)
    D:溶銑流路の最大幅(m)
    前記攪拌装置は、インペラを溶銑流路に沿って次式の範囲で移動可能となっていることを特徴とする高炉鋳床設備。
    0<L/D≦1.5
    ただし、
    D:溶銑流路の最大幅(m)
    L:段差部からインペラまでの距離(m)
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