JP2005248219A - 溶銑の予備処理方法 - Google Patents

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武 須藤
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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Abstract

【課題】 低コストで脱燐速度を充分に向上でき、さらには混銑車の開口(トピード口)不良の問題も容易に解消し得る溶銑予備処理方法を提供する。
【解決手段】 混銑車内の溶銑中に浸漬したランスから酸化剤等を吹込むことにより脱珪、脱燐する溶銑の予備処理に当たり、前記混銑車内の溶銑中に、2本のメンイランスを相対する向きに挿入して浸漬させ、これらのメンイランスからは前記酸化剤の量を脱燐反応末期の段階で減少させるとともに、そのメインランスの浸漬深さをさらに深くして吹込みを行う溶銑の予備処理方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、溶銑の予備処理方法、とくに混銑車内に収容した溶銑を、複数のランスから酸化剤の如き溶銑予備処理剤を吹込むことにより、脱珪、脱燐を図る溶銑の予備処理方法に関する。
近年、製鋼工程では、転炉吹錬の負荷軽減、製鋼卜ータルコストのミニマム化を図るため、溶銑中の珪素(元素記号Si)、燐(元素記号P)を、転炉での酸素吹錬の前に予め酸化剤を用いて除去する、いわゆる「溶銑予備処理」が行われている。
この溶銑予備処理には、使用する処理容器(例えば、転炉、溶銑鍋、混銑車等)に応じて様々な方法がある。なかでも、混銑車あるいは溶銑鍋などの処理容器内溶銑中に浸漬したランスを使って酸化剤(酸化鉄、気体酸素など)や塩基度調整剤(石灰系フラックスなど)を吹き込む方法は、転炉で脱珪、脱燐するのに比べると酸化剤の反応効率が高く、処理コストが低いことから有利である。
従来、混銑車や溶銑鍋の処理容器による溶銑予備処理技術としては、以下に示すようなものが知られている。
(1)脱珪後のSiO2リッチなスラグを除去した後、脱燐処理を行う方法(特許文献1)
(2)溶銑を脱珪、脱燐、脱硫する際に、処理中にスラグを真空吸引設備等により連続的に強制排除する方法(特許文献2)
(3)脱珪後のスラグ排出を混銑車の傾転により行う方法(特許文献3)
(4)脱珪後のスラグ排出を行わず脱燐処理を行う場合にソーダ灰を使用する方法(特許文献4)
(5)CaO及び酸化剤を溶銑中に吹込む際に、溶銑上へ別途酸化鉄を上添加する方法(特許文献5)
(6)溶銑中に酸化剤を分散させてスラグ−メタル間反応界面積を増大させるため、吹込み流を旋回流とする特殊なランスを用いる方法(特許文献6)
(7)インジェクション・ランスを2本使用し、1本からは脱燐剤を、もう1本からは脱硫剤を吹込む方法(特許文献7)
(8)インジェクション・ランスを2本使用し、酸化剤を吹込む脱燐方法(特許文献8)
特開昭61−33814号公報 特開昭63−18011号公報 特開平5−5114号公報 特開昭59−104412号公報 特開平4−218609号公報 特許第2856576号号公報 特開昭58−218311号公報 特開平2002−146423号公報
しかし、上記の従来技術のうち(1)、(2)は、脱珪後のスラグ除去のための、スラグの除去設備が必要であり、設備費がかかることや、脱珪処理から除滓、脱燐処理へと移行するのに時間がかかるという問題がある。
従来技術(4)は、処理剤の単価が高くコスト的に不利である。さらに、高炉の出銑[Si]が高い場合には、処理前に予備脱珪スラグの除去を行わねばならないことや、処理中のスロッピングにより処理が困難になるという問題がある。
従来技術(3)は、これらの問題を解決するために開発されたものであるが、脱燐処理段階での反応自体を促進し、スラグの排出を促進するという点についての配慮が欠けているため、脱燐速度を向上させるにはなお不十分であるという問題がある。
従来技術(5)は、添加した酸化鉄がスラグ上に未反応で残ってしまい、反応に寄与する酸化鉄の割合が少ないという問題がある。即ち、上方より添加された酸化鉄は、単にトップスラグの酸素ボテンシヤルを上昇させるにすぎず、脱燐反応に寄与する酸素源を効率よく添加したとは言いにくく、その結果として、スラグの滓化性が悪化するという問題がある。
従来技術(6)では、使用するランスの構造が複雑で単管ランスに比べて、製造コストが高いという問題がある。
従来技術(7)は、脱燐剤と脱硫剤を同時に吹込むため、脱燐反応がむしろ阻害されるという問題がある。
従来技術(8)は、インジェクション・ランスを2本使用することにより、効率よく酸化剤を吹込む予備処理方法が開示されているが、この方法を脱珪の初期から適用すると、スラグフォーミングが多発し、フォーミング防止剤の添加あるいは処理中断などスラグ沈静化処置が必要となって、処理時間の延長が起きる。さらには酸化剤吹込み効率はよいものの、酸化剤の反応効率の低下をきたすことなどの問題がある。
以上説明したように、従来技術が抱えている上述した問題を整理すると、脱珪、脱燐速度の充分な向上は実現されておらず、溶銑予備処理全体の処理時間も充分には短縮できていないという問題がある他、処理コストがかさむ等である。
また、従来技術が抱えている問題点には、その他、脱珪、脱燐効率の阻害因子として、処理容器開口部(例えば、混銑車の炉口)への凝固滓付着による作業障害の問題が考えられる。特に混銑車を使用する場合においては、この問題が発生しやすい傾向がある。即ち、混銑車の溶銑開口部の内壁面側にガラと呼ばれる凝固滓が多量に付着してこの部分を閉塞するため、溶銑予備処理に使用するランスの出し入れが困難になるとか、ランスは入ったとしても処理中の溶銑の循環流動を阻害して、時として溶銑の一部が流出するという問題が生じるため、溶銑処理を断念せざるを得なくなるという問題がある。
本発明の目的は、従来技術が抱えている上述した問題点に鑑み、低コストで脱珪、脱燐速度を向上させることができると共に、処理時間を充分に短縮することができ、さらには、処理容器開口部への凝固滓付着による作業障害の問題も容易に解消し得る溶銑予備処理方法を提案することにある。
本発明は、溶銑の予備処理中、とくに脱燐処理期の操業において、2本のメインランスとサブランスの溶銑内浸漬深さと酸化剤の吹込み量を脱燐反応の進行に合わせて制御することにより、反応効率の向上(デッドゾーンの解消)と内壁面耐火物の保護をともに実現することができる溶銑予備処理方法を提案する。さらに本発明においては、前記脱燐処理中に、各ランスの浸漬深さを制御すると共に、溶銑中への酸化剤の吹込み量制御を行うだけでなく、さらに溶銑浴面上に気体酸素の吹付けを行うことにより、開口部作業不良(トピード開口閉塞障害)の問題を解消するようにした溶銑予備処理方法である。
すなわち、本発明の基本的な考え方は、混銑車内の溶銑中に浸漬した2本のメインランスおよびサブランスから酸化剤を吹込むことにより脱珪、脱燐する溶銑の予備処理方法において、前記混銑車内の溶銑中に、長手方向を指向して挿入される2本のメンイランスを相対する向きにして浸漬し、これらのメンイランスから吹込む前記酸化剤の量を、脱燐反応末期の段階で減少させるとともに、そのメインランスの浸漬深さをさらに深くして、吹込みを継続することを特徴とする溶銑の予備処理方法である。
本発明においてはまた、前記脱燐反応末期とは、Pが0.008 mass%以下のレベルにあるとき、もしくは脱燐処理終了前の10分間のいずれかであること、溶銑浴面上に気体酸素を吹き付けること、酸化剤を溶銑浴面もしくは溶銑中に吹込むに当たり、メインランスの他に、そのメインランスよりも浅い位置に浸漬させるか浴面上に保持されるサブランスを使うこと、前記サブランスの浸漬深さを、溶銑の浴面下1m以内かつ前記メインランスの浸漬深さより0.1m以上浅い位置とすることが特徴的な技術事項である。
本発明によれば、混銑車による溶銑予備処理操業において、従来技術の下では到達しえなかったレベルでの、低コストかつ高速の脱珪・脱燐処理が可能となり、きらには処理容器口元不良の問題も同時に解消しうるという優れた効果を奏する。
以下、溶銑中に浸潰した2本のメインランス(ただし、これらは、混銑車の開口部からその長手(回転軸)を指向して斜めに挿入され、かつこれらの脱燐剤を相対する向きの斜めに挿入して溶銑中に浸漬させる)を使って、酸化剤等を吹き込んで溶銑の予備処理を行う方法について説明する。本発明において、酸化剤の吹込みは、脱珪、脱燐期のうち、とくに脱燐反応末期に主として2本のメンイランスを使って行うが、このときこれらのメインランスの溶銑内浸漬深さをより深い位置に移動させ、かつこのときの酸化剤の吹込み量を減少させる点に特徴がある。すなわち、脱珪、脱燐を通じて酸化剤を溶銑中に吹込むことは従来法と変わらないが、停滞の生じる脱燐処理期の末期に脱燐反応の促進を図るため、反応サイトを拡げることを目的としてメインランスの浸漬深さをより深い位置に移動させ、このことにより、迅速な溶銑脱燐のための予備処理を行うこと、および脱燐末期の脱燐反応に停滞の生じる時期での酸化剤(脱燐剤)の使用量を抑制することにより、低コストで効率よく溶銑予備処理を実現しようというものである。
本発明において用いる酸化剤としては、酸化鉄含有物質などの固体酸素源と気体酸素との2種類を用いることができる。気体酸素は、酸素濃度99%以上の純酸素でも、あるいは、酸化鉄含有物質の搬送気体に純酸素を加えたものの、いずれを使用してもかまわない。要は酸素濃度が高く酸化剤として有用なものであればよい(以下、気体酸素は単に「気酸」ともいう)。
本発明にかかる脱燐期の操業においては、この酸化剤の使用に併せて必要に応じてソーダ灰系フラックスあるいは固体酸素源とソーダ灰系フラックスを併用して用いてもよい。即ち、本発明では、酸化剤とともに、必要に応じ塩基度調整剤(石灰や生石灰、必要に応じて蛍石等の石灰系フラックス)を吹き込んでもよい。これらの固体酸素源や塩基度調整剤は、粉粒状のものをキャリアガスを介して吹込む方法が好ましい。そのキャリアガスとしては、空気または不活性ガスを用いることができる。
なお、酸化剤として、固体酸素源と気酸を併用して吹き込む場合は、キャリアガス搬送法により送給されてきた固体酸素源に気酸をランス部分で加えて吹き込みを行えばよい。
一般に、混銑車内溶銑中への酸化剤の吹込みは、メインランスの浸潰深さは一定にして行うのが定法である。この理由は、ランス浸漬深さを深くすると酸化剤の反応効率が向上することから、できるだけ深い一定の位置で行うこととしている。しかし、ランス浸漬深さをあまり大きくすると、吹込みによる溶銑の攪拌流動が大きくなり、混銑車内耐火物の損傷を招きやすくなるので、おのずと限界がある。その他、混銑車のように開口部が小さい場合、その開口部にスラグなどの付着物が発生し、ランスの挿入作業時に互いの干渉により必要なランス浸漬深さを維持できない(挿入できない)状況が発生することがある。
そこで本発明では、予備処理時の脱燐反応末期に生じる反応の停滞時期に着目し、当該脱燐反応末期では、酸化剤を多量に吹込んでも脱燐酸素効率の悪化(反応効率)を生じるため、この段階での酸化剤吹込み量を減少させ、その減少による溶銑攪拌流動の減衰分だけ、逆にメインランスの浸漬深さを深くして、耐火物損傷のおそれをなくす一方で反応サイトを移動させる操業を行なうようにしたのであり、このことにより溶銑予備処理の効率化と低コスト化が同時に実現できるのである。
一般に、脱燐速度を上げるためには、酸化剤の吹込み速度を大きくすることが有効であると考えられる。ただし、この場合、ガス(主にCOガス)が局所的に増加することになることから、トピード口からの溶銑の流出(吹き出し)や溶銑中での脱りん剤の凝集による溶銑−酸化剤反応界面の減少によって、脱りん酸素効率の低下を招くという問題がある。
一方、混銑車内溶銑の攪拌力の増大、酸化剤の反応界面積(酸化剤分散作用)増加のためには、ランス浸漬深さを大きくすることが有効であると考えられるが、この場合、脱りん剤キャリアガスや脱炭反応により発生するCOガス気泡による浮力が大きくなり、トピード口からの溶銑流出を促進することになる。
他方、酸化剤と溶銑の反応界面積(=接触面積)を大きくするためには、溶銑中への酸化剤の侵入を促進することが有効である。一般に、搬送ガスと共に溶銑中に吹込まれた酸化剤は、ランスの出口近傍で膨張したキャリアガスに包囲され、一部がそのガス気泡を離脱して、溶銑中に浸入していくことが知られている。そこで、本発明では、固体の脱りん剤に対する搬送ガスの比率を大きくすることにより、ガス気泡からの固体脱りん剤の離脱を促進させ、このことによって溶銑中への脱りん剤の侵入を促すことが有効であるとの結論に達した。
このような考え方の下で、発明者らは、異なる浸漬(挿入)方法をもつ2本のメインランスを用い、脱燐酸素効率と脱燐速度が最大となる最適の酸化剤吹き込み条件、ランス挿入位置について実験検討した。以下、その検討結果について説明する。
次に、発明者らは、400t混銑車を用い、その混銑車の長手方向に当る左右から(異なる向きから)挿入して溶銑中に浸漬した2本のメインランス1、1’を用いて脱りん処理する実験を行った。この実験は、メインランス先端の混銑車の長手方向における距離の影響を調べるためのものである。その結果を図7に示すように、2本のメンイランス先端間距離(m)が混銑車長手方向の最大距離L(m)が0.1以下の条件では混銑車開口部からの溶銑吹き出しにより、脱りん剤の吹き込みが困難となった。一方、メンイランス先端間距離W>0.5Lの条件では脱りん酸素効率が低下した。これは混銑車の構造が両端に近づくほど容器内体積が小さくなっており、インジェクション位置が周囲の耐火物の壁に近づくためにエネルギーの損失が顕著になるためと考えられる。従って、0.10L≦W≦0.50Lという上記関係が認められた。
なお、図7には、この図に示すように、メインランスを1本使用するものに比べ、メインランスを2本で吹き込むときの方が、ランス先端間距離の如何にかかわらず脱P酸素効率が明らかに良好である。しかも、それは、2本ランスで行う限り、ランス先端間距離を≦0.7Lのどの範囲においても同様に効果が得られる。これは細長い混銑車の形状の混合特性に起因するものと考えられる。
なお、この場合において2本ランスの浸漬深さは、基本的に同一にするが、互いの浸漬深さを、静止状態での溶銑深さ(バス深さ)Hに対し0〜0.2H程度変化させてもよい。また混銑車の混銑車から挿入するランスの挿入角度(θ)は0〜30°の範囲で調整することができる。
以下、本発明を図面の記載に基づき具体的に説明する。
図1に示すように、混銑車2内に収容した溶銑の脱珪、脱燐処理の開始に際し、混銑車2内の溶銑3中に、下端部の吹出し口1aが水平方向を指向するように設けれられた2本のメインランス1、1’を、混銑車2の長手方向(回転軸方向)を指向するような向きでかつ互いに相反する方向から挿入して浸漬させる。そして、これらのメインランス1、1’から酸化剤を吹き込むが、必要に応じ塩基度調整剤をも混合して用いる。例えば、酸化鉄(焼結鉱粉体)+石灰粉(生石灰)+気酸の混合吹込みを行うと、酸化剤(酸化鉄+気酸)の作用により、まず脱珪が進行すると共に、塩基度調整剤である石灰粉により溶銑3上に浮遊しているスラグ4の塩基度も調整される。
前記メインランス1、1’から原則として均等に合計酸素供給量(記号:QO:固体酸素源は気体換算して示す)で0.05Nm3/min/溶銑t以上の酸化剤を吹込む。それは、これらのメインランス1、1’からの前記酸素供給量QOが0.05Nm3/min/溶銑tに相当する酸化剤の吹込みがないと、脱珪、脱燐反応が著しく遅延するからである。一方、この酸素供給量QOに相当する酸化剤の量が多すぎても脱珪、脱燐速度が飽和して供給した酸素が無駄になることから、上限は0.4Nm3/min/溶銑t程度する。
酸化剤を吹込む脱珪、脱燐処理期間の内、脱珪期間は、脱珪の進行につれてスラグ4がフォーミングを起こしやすくなるので、混銑車開口部2aから脱燐時スラグが溢流しないように、メインランス1、1’からの酸化剤の吹込みは、前記酸素供給量QOを徐々に増加させる吹込みパターンをとることが好ましいが定量ないし段階的増加であってもよい。そして、脱燐期に入る段階では、酸素供給量QOが上限近くになるように増加させて、脱燐反応を起させることが有利である。
発明者らの研究によれば、脱燐処理期の後半になると、下記式(1)で定義される脱燐酸素効率が顕著に低下することがわかる。とくに脱燐反応末期の段階においては、前記酸素供給量QOを0.15Nm3/min/溶銑t以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05〜0.13Nm3/min/溶銑tとする。なお、この脱燐反応末期は、使用する処理容器や溶銑量、吹込み酸化剤の量を基に、実験あるいは処理パターンから上記の範囲内において適宜に定める。
脱燐酸素効率=溶銑中燐の酸化に用いられた酸素量/(溶銑中に吹き込んだ全酸素量−Siの酸化に使用された酸素量)(×100%) …(1)
ここに、式(1)右辺の各酸素量の単位は、Nm3/溶銑tである。
そして、この脱燐反応末期、即ち脱燐処理期後半の段階において、本発明では、前記メインランス1、1’の浸漬深さh’をさらに深い位置h’’に移動させることにした。それは、ランス深さの調整を行うことにより、脱燐酸素効率低下時の脱燐剤の溶銑内滞留時間の増加を図り、脱燐反応効率の向上を目指すことにある。
図2は、ランス浸漬深さh’(静止状態での溶銑深さ=H)と脱P酸素効率との関係を実験により求めた結果を示すものである。この図に示すように、ランス浸漬深さが深い方が、浅い場合よりも高いことがわかる。
そこで、本発明では、脱燐処理の後半の段階における脱燐酸素効率が低下する時期に、図3に示すように、前記メインランス1、1’の浸漬深さh’’をより深い位置0.5H〜0.9Hに移動させることにより、脱燐酸素効率の低下を補う操業を行うことにしたのである。
また、このことは、脱燐処理期後半の段階において、たとえメインランス1の浸漬深さを深くして容器底に近づけとしても、脱燐処理の後半段階においては、上述したように前記酸素供給量QOが0.15Nm3/min/溶銑t以下になり、脱燐処理期の前半に比べると減少させているため、容器底への吹込み流動による耐火物損耗などの影響をなくすことができる点で可能になったことである。
なお、脱燐処理期後半の段階、すなわち脱燐反応末期において、脱燐酸素効率が低下する理由は、この時期は、酸化剤の吹込みにより局所的に酸素ポテンシャルが増大し、過剰な酸素によって脱炭反応が起き、脱燐に使用される酸素量が減るためである。そのために、この脱燐反応末期の段階において前記第メインランス1からの酸化剤吹込み量を減少させることとしたのである。
また、脱燐反応の初期から中期にかけて、メインランス1からの酸化剤の吹込みに伴い、混銑車2のとくに、上壁部とりわけ開口部2aのまわりに凝固滓の付着が起り、ランスの作業を招くことがある。このことから、本発明では主として脱燐処理中期以降、前記開口部2aからサブランス6を降下挿入し、混銑車2内の溶銑浴面に気酸を吹付ける。この処理により、混銑車内発生ガスを燃焼させて発熱させ、溶銑の温度低下を補うと共に、前記凝固滓の溶解と付着防止によって除去を図る処理を行うようにすることが好ましい。
しかも、このサブランス6の役割についてはさらに、脱燐反応末期において、図3に示すように、このサブランス6を溶銑浴中に浅く(≦1m)浸漬させて、酸化剤+フラックス+気酸を吹込むことにより、全体的な脱燐効率の停滞が生じるのを補償するようにしてもよい。ただし、このサブランス6の浸漬深さは、前記メインランス1、1’の浸漬深さよりも0.1m以上浅い位置として反応サイトが競合しないようにする。
本発明では、サブランス6のこうした作用効果により、脱燐速度の低下を招くことなく、さらに混銑車開口部2aでのランス作業障害を招くことなく、トータルコストの低い溶銑予備処理が可能になるのである。
なお、本発明では、上記メインランス1、1’、サブランス6から、溶銑中に吹込む酸化剤としては、気酸、固体酸素源のいずれも用いることができるが、主として固体酸素源を用いる方が好ましい。その理由は、固体酸素源には、溶銑中で溶融してスラグとなることによりスラグ−メタル間の反応を促進する作用がある(気酸にはこの滓化作用はない)からである。そのためには、とくにメインランス1は、酸化剤として固体酸素源を中心に使用する方が好ましい。なお、固体酸素源としては、酸化鉄が最も好ましいが、その代替品としては、高炉原料の焼結鉱や鉄鉱石の粉体、製鉄ダスト、ミルスケール等の酸化鉄含有物質(ルームダスト;RD)が使用できる。
さらに、本発明では、前記メインランス1、1’から気酸のみを吹き出させる時期を設けてもよい。この気酸単独吹出し処理は、脱珪処理前、脱珪処理期、脱燐処理期のいずれかを問わず、溶銑の入った混鉄車2の開口部2aに凝固滓が付着、成長している情況により、それの除去が必要となった適宜の時期に行うことが好ましい。この処理により、混銑車2の開口部2aの内面に付着した凝固滓を確実に溶融除去することができるので、前記した混銑車作業障害の問題も、別段の設備追加を伴わずに容易に解決できる。なお、気酸単独吹出し量は、凝固滓の付着サイズ等に応じて適宜決定すればよい。また、気酸のうちとくに純酸素を用いると、前記凝固滓をより迅速に溶融できて好ましい。
また、この処理は、溶銑予備処理の完了末期に、メインランス1、1’もしくはサブランス6のいずれか少なくとも一方を溶銑上まで上昇させ気酸の吹出しを行うと、予備処理時に生じた前記開口部2aの凝固滓の付着を溶銑予備処理終了段階で除去することができ、次回の溶銑の受銑時および予備処理押始時の凝固滓付着に伴う作業障害を未然に解消できる点で特に好ましい。
さらに、本発明では、酸化剤吹込み時期の少なくとも一部と同期して、図4に示すように、混銑車2の回転軸を中心に傾転した状態にする。混銑車2を傾転させる操業は、酸化剤吹き込み前から行っておいてもよく、また、解除して適宜に復元させたりしてもよい。傾転の角度は、溶銑の溢流が起こらない角度を上限とし、好ましくは3°〜10°とする。この作業は、脱燐時に生成した低塩基度の不要となったスラグ4を、特段の除滓設備を用いることなく、必要に応じて、混銑車2の開口部2aから溢流させて傾転側に設けた流滓ビット7へ適時に排出することができるようにすることがある。
従来、脱珪処理の段階に、スラグフォーミングによる前記開口部2aからのスラグ4が溢流して、脱珪処理の中断を余儀なくされることがあったが、本発明のような傾転操作により、適時に溢流させて排出することができるようになり、脱珪処理を中断させることなく操業の継続実施ができる。
また、従来はスラグフォーミングを抑制するために塩基度調整剤を多量に使用していたが、本発明によれば、スラグ4を溢流排出させることにより、溶銑3上のスラグ量を減少させることができるため、その使用量を大幅に削減できる。
さらには、スラグフォーミングを積極的に起こさせ、フォーミングしたスラグ4を混銑車2の傾転操作により排出するようにすると、脱珪処理前の溶銑中[Si]が高い場合でも、生成するSiO2が脱珪処理の支障にならず、容易に短時間で脱珪処理を完了することができ、脱燐処理に遅滞なく移行することができる。
さらに、脱燐処理段階でも、混銑車2を随時適宜の角度に傾転させておくことにより、同様に除滓でき、処理時間の短縮、塩基度調整剤など使用量の削減を図ることができる。
以上は、混銑車2の使用例で述べたが、溶銑鍋を使用する場合も同様であり、処理容器を傾転操作により傾転状態としておくことにより、同様の効果を得ることができる。
以上のように、本発明方法によれば、従来技術(1)〜(7)の前記問題の全てを解決することができ、従来達し得なかったレベルでの、低コストかつ高速の脱珪、脱燐処理が可能となる。以下、実施例を説明する。
溶銑量280tの混銑車(静止状態での溶銑(バス)深さH:2.3m)を用いて以下条件での溶銑予備処理を行った。
(1) 溶銑成分:(C):4.3 mass%、(Si)0.20 mass%、(P)0.19 mass%、1370℃
脱珪、脱燐処理のための酸化剤、塩基度調整剤の吹込み処理パターンを図5に示す。
この処理では、図5に示すように、メインランス1、1’ともに浸漬深さ:800〜11000 mmの深さに挿入浸漬し、酸化剤として固体酸素源である焼結鉱粉体(RD<125μm)、200 kg/min(気体換算21.6Nm3/min)で吹込んだ。なお、予備処理での温度降下を軽減するため、メインランス1、1’には、合計量(1/2づつ)気酸10Nm3/minの吹込みを併用した。そして、塩基度調整剤として生石灰を脱珪期間中スラグ塩基度がほぼ1.0になるように、200 kg/min吹込んだ。
(2) その後、温度降下を防ぐための気酸の吹込みを維持したまま、焼結鉱粉体(RD)量を増加させ、脱珪を促進させた。即ち、この段階で焼結鉱粉体(RD)量を400 kg/min増加させることにより(10分経過時点)、異常なスラグフォーミングはみられず、約12分間の処理で(Si)0.01 mass%となり、脱燐反応末期までは焼結鉱粉体量を400 kg/min(気体換算57.6Nm3/min)のままの吹込みを行った。
(3) さらにその後、脱燐処理終了の前15分前からサブランス6を用いて吹込みを開始した。サブランス6の酸素供給量QOは、0.3Nm3/min/溶銑tとした。
(4) 脱燐処理終了10分前にメインランス1、1’の酸素供給量QOを0.206Nm3/min/溶銑tから、0.103Nm3/min/溶銑tに減らした。
(5) 処理終了の5分前にサブランス6を溶銑面上0.5mの高さまで上昇させ、気酸を15Nm3/minで噴射した。
その結果、280tの溶銑の予備処理を、35分間で終了させることができた。なお、上記の脱燐処理末期の溶銑上にサブランス6からの気酸噴射により、この予備処理で生じ易い混銑車上壁の開口部内面の大きな凝固滓の溶融除去に成功した。
図6は、脱燐酸素効率(%)と、脱燐区間との関係を示したものである。この図に明らかなように、本発明に係る溶銑予備処理方法(●印)による脱燐酸素効率の方が全区間に亘って高くなっており、高速での脱珪、脱燐処理が可能であり、脱燐酸素効率が高い分だけ酸化剤使用量の削減が実現できることがわかった。
本発明は、製鋼工程で使用する溶銑の予備処理、とくに脱珪、脱燐処理に適用できる。
本発明方法に基いて脱珪、脱燐処理のもようを示す断面図である。 脱P酸素効率とランス浸漬深さとの関係を示すグラフである。 本発明方法における脱燐反応末期における実施状態のもようを示す断面図である。 混銑車傾転によるスラグ除去のもようを示す断面図である。 本発明の実施例を説明するための固体酸化剤、気酸吹込みスケジュールの一例を示す模式図である。 実施例における各脱P区間毎の脱燐酸素効率の変化を示すグラフである。 メインランス先端間距離と脱P酸素効率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 メインランス
2 混銑車
1a 吹出し口
2a 混銑車開口部
3 溶銑
4 スラグ
6 サブランス
7 流滓ビット

Claims (5)

  1. 混銑車内の溶銑中に浸漬したランスから酸化剤を吹込むことにより脱珪、脱燐する溶銑の予備処理方法において、
    前記混銑車内の溶銑中に、2本のメンイランスを相対する向きに挿入して浸漬させ、これらのメンイランスからは前記酸化剤の量を、脱燐反応末期の段階で減少させるとともに、そのメインランスの浸漬深さをさらに深くして、吹込みを行うことを特徴とする溶銑の予備処理方法。
  2. 前記脱燐反応末期とは、Pが0.008 mass%以下のレベルにあるとき、もしくは脱燐処理終了前の10分間のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の溶銑の予備処理方法。
  3. 溶銑浴面上に気体酸素を吹き付けることを特徴とする請求項1または2に記載の溶銑の予備処理方法。
  4. 酸化剤を溶銑浴面もしくは溶銑中に吹込むに当たり、メインランスの他に、そのメインランスよりも浅い位置に浸漬させるか浴面上に保持されるサブランスを使うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
  5. 前記サブランスの浸漬深さを、溶銑の浴面下1m以内かつ前記メインランスの浸漬深さより0.1m以上浅い位置としたことを特徴とする請求項4に記載の溶銑の予備処理方法。
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