JP2004018942A - 溶銑の予備処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ランスの溶銑2内浸漬深さを相互に違えた第一、 第二の2本以上の複数の浸漬ランス4,5を用いて、予備処理中における第一、第二の浸漬ランスの使用時期を適正化し、かつ適正な酸素供給速度で処理剤(酸化剤あるいはさらに塩基度調整剤)Z1,Z2の吹込みを行い、さらには、随時第一または第二の浸漬ランスから気体酸素を処理容器1内に吹込む。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶銑の予備処理方法に係わり、とくに混銑車および溶銑鍋など処理容器内の溶銑を、浸漬ランスからの処理剤の吹込みにより、脱珪・脱燐する溶銑の予備処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、製鋼工程では、転炉吹錬の負荷軽減、製鋼ト−タルコストのミニマム化を図るため、溶銑が含有する珪素(元素記号Si)、燐(元素記号P)を、転炉での酸素吹錬の前に予め酸化剤を用いて除去する所謂「溶銑予備処理」が行われる。
【0003】
その除去方式は、使用する処理容器(例えば、転炉、溶銑鍋、混銑車等)に応じて様々である。このうち、混銑車あるいは溶銑鍋などの処理容器に保持した溶銑へ浸漬したランスを介して酸化剤(固体酸素源(酸化鉄)、気体酸素源など)や塩基度調整剤(石灰系フラックスなど)を吹き込む混銑車、溶銑鍋の処理容器による除去方式が、転炉を用いるものと比べて酸化剤の反応効率が高く、処理コストが低いという利点があるので多用されている。
【0004】
この混銑車、溶銑鍋などの処理容器による除去方式において、溶銑予備処理効率の向上を指向した技術として以下のようなものが知られている。
(1)脱珪後のSiO2リッチなスラグを除去した後、脱燐処理を行う方法(特開昭56−166315、特開昭56−133413、特開昭59−59815 、特開昭61−33814 の各号公報)。
【0005】
(2)溶銑を脱珪、脱燐、脱硫する際に、処理中にスラグを真空吸引設備等により連続的に強制排除する方法(特開昭63−18011 号公報)。
(3)脱珪後のスラグ排出を混銑車の傾転により行う方法(特開平5−33814 号公報)。
(4)脱珪後のスラグ排出を行わず脱燐処理を行う場合にソーダ灰を使用する方法(特開昭59−104412号公報)。
【0006】
(5) CaO及び酸化剤を溶銑中に吹込む際に、別途溶銑上へ酸化鉄を上添加する方法(特公平6−11885 号公報、特開平4−218609号公報)。
(6)吹込み流を旋回流とする特殊なランスを用いる方法(日本国特許第2856576 号公報)
((5),(6) は、溶銑中に酸化剤を分散させてスラグ− メタル間反応界面積を増大させるもの)
(7)インジェクション・ランスを2本使用し1本から脱燐剤、もう1本から脱硫剤を吹込む方法(特開昭58−218311号公報)。
【0007】
(8)インジェクション・ランスを2本使用し、酸化剤を吹込む脱燐方法(特開2002−69519 号公報、特開2002−146423号公報)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術の(1),(2) では、脱珪後のスラグ除去のために、例えば特開昭62−127416号公報や特開昭63−18011 号公報に示されるようなスラグの除去設備が必要であり、設備費がかかることや、脱珪処理から除滓、脱燐処理へと移行するのに時間がかかる問題がある。また、(4) では、処理剤の単価が高くコスト的に不利になる問題がある。さらに、高炉の出銑〔Si〕が高い場合には、処理前に予備脱珪スラグの除去を行わねばならないことや、処理中のスロツピングにより処理が困難になるという問題がある。(3) は、これらの問題を解決しようとしたものである。しかし、脱燐処理段階での反応自体を促進し、スラグ排出を促進する点について考慮されていないため、脱燐速度を向上させるには未だ不十分であるという問題がある。
【0009】
また、(5) では、上添加した酸化鉄がスラグ上に未反応で乗ってしまい、反応に寄与する酸化鉄の割合が減少する。つまり上方より添加する酸化鉄は、トップスラグの酸素ポテンシャルを上昇させるにすぎす、脱燐反応に対して酸素源を効果的に使用しているとは言い難い。さらに、その結果として、スラグの滓化性が悪化する等の問題もある。(6) では、用いるランスの構造が単管ランスに比べて複雑であるため、製造コストが高いという欠点がある。(7) では、脱燐剤と脱硫剤を同時に吹込むため、脱燐反応がむしろ阻害されてしまう。
【0010】
また、(8) では、インジェクション・ランスを2本使用することにより、効率良く酸化剤を吹き込む予備処理方法が開示されているが、この方法を脱珪の初期から適用すると、スラグフォーミングが多発し、フォーミング防止剤の添加あるいは処理中断などスラグ鎮静化処置が必要となり、処理時間の延長が起きることがあること、並びに酸化剤吹込み効率は良いものの、酸化剤の反応効率の低下をきたすことなどの問題がある。
【0011】
このように、上記従来の技術では、脱珪・脱燐速度の充分な向上が得られておらず、溶銑予備処理全体の処理時間を充分短縮できていない問題がある他、処理コストがかさむ問題もあった。
また、脱珪・脱燐効率の阻害因子として、処理容器への凝固滓付着による処理障害の問題があり、特に混銑車では、溶銑通用口口元不良(トピード口元不良)の問題が発生しやすい。これは、混銑車の溶銑通用口の内面側にガラ(凝固滓)が多量に付着して、予備処理のためのランスが入らない、あるいはランスが入ったとしても処理中の溶銑の循環を圧迫し、溶銑が流出するため処理を断念せぎるを得なくなるという問題でもある。上記従来の技術ではこの問題を解決することは困難であった。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、低コストで脱珪・脱燐速度を充分に向上でき、さらには溶銑通用口口元不良の問題も容易に解消し得る溶銑の予備処理方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ランスの溶銑内浸漬深さを相互に違えた第一、 第二の2本以上の複数の浸漬ランスを用いて、予備処理中における第一、第二の浸漬ランスの使用時期を適正化し、かつ適正な酸素供給速度で酸化剤、塩基度調整剤の吹込みを行い、さらには、随時第一または第二の浸漬ランスから気体酸素を処理容器内に吹込むことにより、上記の問題を解決したものである。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、処理容器内に保持された溶銑中に2本以上の浸漬ランスを介して酸化剤を吹込み脱珪・脱燐を行う溶銑の予備処理方法において、処理開始時は、前記浸漬ランスのうち、最初に浸漬される第一の浸漬ランスから酸化剤を溶銑中に吹込み脱珪・脱燐を進行させ、脱燐末期の段階で、前記第一の浸漬ランスの浸漬深さより浅い部分に第二の浸漬ランスを浸漬して、溶銑の上下方向で互いに離隔した状態で第一、第二の浸漬ランスから酸化剤を吹込むことを特徴とする溶銑の予備処理方法である。
【0015】
これにより、脱燐反応が停滞する脱燐反応末期の段階の反応を促進させることができる。
また、本発明(2)は、前記脱燐末期の段階で、前記浸漬ランスのうち、下方に位置する第一の浸漬ランス側から吹き込む酸化剤の吹込み量を減少させ、第二の浸漬ランスの酸化剤吹込みを行うことを特徴とする、本発明(1)の溶銑の予備処理方法である。
【0016】
これにより、脱燐反応が停滞する脱燐反応末期の段階の酸化剤の反応効率を向上させ、酸化剤使用量の削減を図ることができる。
さらに、本発明(3)は、前記浸漬ランスのうち、上方に位置する第二の浸漬ランスの浸漬深さを、溶銑の浴面下1m以内および第一の浸漬ランスの浸漬深さより0.1 m以上浅くした範囲とすることを特徴する、本発明(1)または(2)の溶銑の予備処理方法である。
【0017】
これにより、スラグ− メタル界面反応を有利に利用するとともに、前記の如く、 脱燐反応が停滞する脱燐反応末期の段階の酸化剤の反応効率を向上させ、酸化剤使用量の削減を図ることができる。
また、本発明(4)は、前記脱燐の終了時、第一、第二の何れかのランスを溶銑浴面上まで上昇させ気体酸素を吹き付けることを特徴とする、本発明(1)〜(3)のいずれかの溶銑の予備処理方法である。
【0018】
これにより、予備処理終了時に発生している処理容器への付着物を除去することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明になる処理容器内の溶銑中に浸漬したランスを介して酸化剤を吹き込む溶銑予備処理方法について説明する。
酸化剤吹き込みは、脱珪・脱燐期に行い、本発明では、ランスの溶銑内浸漬深さを相互に違えた第一、第二の浸漬ランス(以下、単に第一のランス、第二のランスと言う)を用いるとともに、第一のランスは、脱珪・脱燐を通じて酸化物を溶銑中に吹込み、第二のランスは、脱燐期に酸化剤を溶銑中に吹込むことにより、脱燐末期に停滞の生じる脱燐反応を促進させることにより、迅速な溶銑の予備処理を行う。
【0020】
吹き込む酸化剤としては、酸化鉄含有物質などの固体酸素源と気体酸素の2種類を用いる。気体酸素は、酸素濃度99%以上の純酸素でも、あるいは、酸化鉄含有物質の搬送気体に純酸素を加えて供給しても、いずれでもかまわない。要は酸素濃度が高く酸化剤として寄与すればよい(以下、気体酸素は単に気酸ともいう)。あるいは、脱燐期にソーダ灰系フラックスを用いることができる。
【0021】
本発明では、酸化剤とともに、適宜の塩基度調整剤(:石灰系フラックス(石灰、生石灰、必要に応じ蛍石等))を吹き込んでもよい。固体酸素源や塩基度調整剤は粉粒状のものをキャリアガス搬送法により吹き込む。キャリアガスとしては、空気または不活性ガスを用いることができる。酸化剤として固体酸素源と気酸を併用して吹き込む場合は、キャリアガス搬送法により送給されてきた固体酸素源に気酸をランス部分で加えて吹き込みを行えば良い。
【0022】
本発明では、前記したように溶銑中に浸漬する浸漬ランスを2本以上用いるもので、まず、前記浸漬ランスのうち、最初に浸漬される第一のランスを浸漬使用して予備処理を開始する。
前記第一、第二のランスとして各1本づつ計2本のランスを用い、処理容器として混銑車を用いた例で以下説明する。
【0023】
図1(a)に示すように、脱珪・脱燐処理開始に際し、混銑車1内の溶銑2中に第一のランス4を、後述する第二のランス5よりも深く浸漬させて配置する。第一のランス4から酸化剤を吹き込むが、塩基度調整剤と併用するもので、ここでは処理剤Z1(脱珪・脱燐処理時の例:酸化鉄(焼結鉱粉体)+石灰粉(生石灰)+気酸)を吹込み、脱珪・脱燐処理を行う。酸化鉄+気酸の酸化剤(酸素源)により、まず、脱珪が進行し、溶銑2上に浮遊しているスラグ3の脱珪により生成されるSiO2による塩基度の変化は、同時に吹き込まれる塩基度調整剤である石灰粉により調整される。
【0024】
また、本発明では、ランス1本当りの酸素供給速度(記号:Qo2:固体酸素源は気体換算して示す)を0.05Nm3/min/溶銑t以上とする。Qo2が0.05Nm3/min/溶銑tに満たないと、脱珪・脱燐反応が著しく遅延するからである。なお、Qo2を大きくしすぎても脱珪・脱燐速度が飽和して供給した酸素が無駄となるから、Qo2は0.4 Nm3/min/溶銑t以下とするのが好ましい。
【0025】
従って図1(a)で示す脱珪・脱燐処理期間のうち、脱珪期間はスラグ3が脱珪進行につれフォーミングを生じ易くなるので、塩基度調整剤の吹込みと、溶銑通用口1aからスラグ溢流を生ぜぬように、第一のランス4の酸化剤の吹込みは、徐々に酸素供給速度Qo2を増加させる吹き込みパターンが好ましい。脱燐期に達した段階では酸素供給速度Qo2は上限近くまで増加させて脱燐反応を促進させる。
【0026】
また、本発明者らの知見によれば、脱燐処理後半に至ると次式(1) で定義される脱燐酸素効率が顕著に低下するので、とくに脱燐処理の後半段階においては、Qo2を0.15Nm3/min/溶銑t以下とするのが好ましい。また、より好ましくは0.05〜0.13Nm3/min/溶銑tとする。この脱燐処理後半の段階とは、〔P〕≦0.08mass%あるいは脱燐処理終了の10分前を指す。この脱燐処理後半の段階は、使用容器と溶銑量、吹込み酸化剤の量を基に、実験から、あるいは処理パターンから定めることができる。
【0027】
脱燐酸素効率=溶銑中燐の酸化に用いられた酸素量/(溶銑中に吹き込んだ全酸素量−Siの酸化に使用された酸素量)(×100 %) ‥‥(1)
ここに、式(1) 右辺の各酸素量の単位は、Nm3/min/溶銑tである。
この脱燐酸素効率が顕著に低下する理由は、脱燐処理の後半段階、すなわち脱燐末期では、酸化剤吹込みにより局所的に酸素ポテンシャルが増大し、過剰な酸素によって脱炭反応が起き、脱燐に使用される酸素量が減るためであり、この段階で前記第一のランス4の酸化剤吹込みを前記の如く減少させる。
【0028】
しかしながら、この酸化剤の吹込み量の削減によりトータルとして脱燐速度停滞が生じる可能性があるため、本発明では図1(b)に示すように、脱燐処理後半の段階では、さらに第二のランス5を浸漬して、該ランス5から酸化剤(処理剤Z2)の吹込みを行う。そして、この第二のランス5は、第一のランス4とは浸漬深さを異ならしめて、浸漬深さを浅くしているため、同一位置での酸化剤の供給とならず、局所的な酸素ポテンシャル増大を抑止する(局所的酸素ポテンシャル増大領域の上方は徐々に酸素ポテンシャルが低くなっている)。これにより、溶銑中に異なる二箇所から酸素源が供給され、酸素供給速度(:固体酸素源および気酸に含まれる酸素の合計吹込み流量)を局所的に過剰に増加させることなく(脱炭反応生起を抑制しながら)、トータルの酸素供給速度を大きくすることができ、脱燐反応を促進できることになり、予備処理時間短縮と脱燐酸素効率の向上による酸化剤の使用量削減が達成される。
【0029】
この過剰な酸素による脱炭反応生起を有効に防ぐには、図中に記号Dで示す、第一、第二のランス4、5の先端の浸漬深さの差Dを0.1 m以上にとるのが好ましく、より好ましくは、0.3 m以上、最も好ましくは、0.5 m以上である。また、第二のランス5の浸漬深さは、溶銑2の浴面下1m以内とすると、溶銑2上に浮遊するスラグ3が有効に撹拌され、スラグ− メタル間の反応界面積が増加するので好ましい。この第一、第二のランス4、5の浸漬配置は、図1(b)の配置の他、図2、図3の配置とすることもできる。図2の配置の如く、第一、第二のランス4、5からの処理剤吹き込み方向を揃えると、溶銑の対流をより強く付勢できて物質移動が促進され脱珪・脱燐反応がより速く進むようになる。また、図3のように、一方の第一のランス4を斜めに浸漬させ、第二のランス5を、溶銑浴面に対し垂直に浸漬させた配置とすることもできる。
【0030】
なお、本発明では、溶銑中に添加する酸化剤としては、気酸、固体酸素源のいずれも用いることができるが、主として固体酸素源を用いる方が好ましい。固体酸素源には、溶銑中で溶融してスラグとなることによりスラグ− メタル間の反応を促進する作用がある(気酸にはこの滓化作用はない)からである。そのためには、第二のランス5は、酸化剤として固体酸素源を主体に使用する方が好ましい。
【0031】
なお、固体酸素源としては、酸化鉄が最良であるが、代替として高炉原料の焼結鉱や鉄鉱石の粉体、製鉄ダスト、ミルスケール等の酸化鉄含有物質が使用できる。
さらに、本発明では、前記第一のランス4または第二のランス5から気酸のみを吹き出させる時期を設けることが好ましい。この気酸単独吹き出し時期は、脱珪前、脱珪期、脱燐期のいずれかを問わず、現に処理対象となっている溶銑の入った混鉄車の溶銑通用口の内面に大きなガラが付着している状態に遭遇した時期とするのが好ましい。これにより、混銑車1の溶銑通用口1aの内面側に付着したガラ7を溶融除去することができるので、前記したトピード口元不良の問題も、別段の設備追加を伴わずに容易に解決できる。なお、気酸単独吹き出し量は、ガラの付着サイズ等に応じて適宜決定すればよい。また、気酸のうちとくに純酸素を用いると、より迅速にガラを溶融できて好ましい。
【0032】
また、図1(c)に示すように、溶銑予備処理の完了末期に、一方のランスを溶銑上まで上昇させ気酸の溶銑通用口1a内への吹き出しを行うと、予備処理時に生じた溶銑通用口1aの内面のガラ7付着を溶銑予備処理終了段階で除去することができ、次回の溶銑の受銑時および予備処理開始時の溶銑通用口へのガラ付きによる口元不良の問題も予め解消でき特に好ましい。
【0033】
なお、図1(c)では、脱燐期のうちの一部の期間内で第二のランス5を溶銑2の浴面上に引き上げて該ランス5から溶銑2の浴面上に向けて気酸の吹き出しを行っている例を示したが、第一のランス4を用いて気酸の吹き出しを行ってもかまわない。
この気酸の吹き出し処理により、脱珪・脱燐の予備処理を施した混銑車は、終了時には図1(d)に示すように口元1aの付着物を除去したクリーニング状態にすることができる。
【0034】
また、トビード口元1a不良の混銑車の配車到着時に混銑車のガラ7の溶融除去を行うに際しては、最初に、下側に浸漬配置される第一のランス4を用いて、該ランス4を溶銑2に浸漬する前に浴面上に保持し、気酸(好ましくは純酸素)単独吹き出しを行うと、より能率よくガラ7を溶融除去することができて好ましい。
【0035】
さらに、本発明では、酸化剤吹き込み期の少なくとも一部と同期して、図4に示すように、混銑車1を傾転状態とするのが好ましい。この傾転は酸化剤吹き込み前から行っておいても良い。また、この傾転は適宜解除・復元してもよい。傾転角度は、溶銑の溢流が起こらない角度範囲の上限とするのが好ましい。これにより、不要となったスラグ3を、前述のような特段の除滓設備を用いずとも、必要に応じて、混銑車1の溶銑通用口1aから傾転側に設けた流滓ピット6へ溢流させて排出することができる。
【0036】
とくに、脱珪処理段階では、スラグフォーミングによる混銑車1の溶銑通用口1aからのスラグ3の溢流で、脱珪処理の中断を余儀なくされていたが、この傾転操作により、傾転側に溢流させることができるようになり、溢流したスラグ3は、傾転側に設けた流滓ピット6で受けるようにすることにより、脱珪処理を中断させることなく継続実施できる。
【0037】
また、スラグフォーミングを抑制するため塩基度調整剤を多量に使用していた点も、溶銑上のスラグを傾転側へ溢流させ排出を促進させることにより、溶銑上のスラグ量を減少させることができるため、使用量を大幅に削減できる。
さらに、積極的にスラグフオーミングを起こさせ、フォーミングしたスラグ3を混銑車1の傾転操作により傾転方向に排出するようにすると、脱珪処理前の溶銑中〔Si〕が高い場合でも、処理に伴い生成するSiO2が脱珪処理の支障にならず、容易に短時間で脱珪処理を完了でき、遅滞なく脱燐処理に移行することができる。
【0038】
さらに、脱燐処理段階でも、随時適宜の角度に混銑車を傾転させておくことにより、同様に除滓でき、処理時間の短縮、塩基度調整剤など使用量の削減を図ることができる。図4では、脱燐時期の第一のランス4、第二のランス5の配置例も併せて示す。
以上は、混銑車1を例に取ったが、溶銑鍋でも同様であり、処理中、傾転操作により傾転状態としておくことにより同様の効果を得ることができる。
【0039】
以上のように、本発明によれば、前記従来の技術(1) 〜(8) の問題点を全て解決でき、従来到達し得なかったレベルでの、低コストかつ高速の脱珪・脱燐処理が可能となる。なお、図1〜図4では、第一のランス、第二のランスを各1本として図示しているが、各複数本であってもかまわないことはもちろんである。
以下、実施例を説明する。
【0040】
【実施例】
〔実施例1〕
溶銑量280tの混銑車を用いて以下の溶銑予備処理を行った。
▲1▼ 溶銑280t、溶銑成分〔Si〕:0.20mass%、〔P〕:0.17mass%
▲2▼ 脱珪・脱燐処理のための酸化剤、塩基度調整剤の吹込み処理パターンを図5に示す。
【0041】
図1の手順中、図1(a)に示す段階では、第一のランス4を浸漬深さ1.5 mで挿入し、酸化剤として、固体酸素源である焼結鉱粉体を用い150kg/min (気体換算21.6Nm3/min)で吹込みを開始した。なお、予備処理での温度降下を軽減するため、第一のランス4には、気酸10Nm3/minの吹込みを併用した。塩基度調整剤として生石灰を脱珪期間中スラグ塩基度が1.0 にほぼなるように、図5に示すように徐々に吹込み量を増加させつつ吹込み、また、気酸10Nm3/min、焼結鉱粉体150kg/min で吹込み開始後の酸化剤の量については、温度降下を軽減する気酸の量は維持したまま、焼結鉱粉体の量を増加させ、脱珪を促進させた。
【0042】
焼結鉱粉体量を徐々に増加させることにより、異常なスラグフォーミングはみられず、約12分間の処理で〔Si〕:0.01mass%となり、脱燐時期には焼結鉱粉体量を400kg/min (気体換算57.6Nm3/min)とする吹込みを行った。
脱燐終了約10分前の段階では、焼結鉱粉体量を400kg/min から200kg/min まで低下させ、図1(b)に示す、第二のランス5を浸漬して同第二のランス5から200kg/min での焼結鉱の粉体吹込みを開始した。第二のランスの浸漬深さは、0.8 mとした。
【0043】
その結果、280tの溶銑を〔Si〕:0.20mass%、〔P〕:0.17mass%から〔Si〕:0.01mass%、〔P〕:0.050 mass%へと成分調整する処理を約35分間で終了させることができた。
〔実施例2〕
溶銑量280tの混銑車を用いて以下の溶銑予備処理を行った。
【0044】
▲1▼溶銑280t、溶銑成分〔Si〕:0.20mass%、〔P〕:0.19mass%
▲2▼脱珪・脱燐処理のための酸化剤、塩基度調整剤の吹き込み処理パターンを図6に示す。
▲3▼脱珪処理および脱燐処理前半は図5と同様の処理を行った。
▲4▼処理終了15分前から第二のランスを用いて吹込みを開始した。第二のランスのQo2は、0.103 Nm3/min/溶銑tとした。
【0045】
▲5▼脱燐処理終了10分前に第一のランスのQo2を0.206 Nm3/min/溶銑tから、0.103 Nm3/min/溶銑tとした。
▲6▼処理終了5分前に第二のランスを溶銑浴面上0.5 mの高さまで上昇させ、気酸を15Nm3/minで噴射した。
その結果、280tの溶銑を〔Si〕:0.20mass%、〔P〕:0.19mass%から〔Si〕:0.01mass%、〔P〕:0.055 mass%へと成分調整する処理を約30分間で終了させることができた。
【0046】
さらに、処理末期の混銑車内溶銑浴面上への気酸噴出により、予備処理で生じ易い溶銑通用口内面の大きなガラの溶融除去に成功した。
図7に脱燐時の酸素供給速度と、脱燐に使用された酸素の効率を示す。図中●は単一のランスを用いて酸素を供給した際の酸素効率を示したものであり、一方、 本発明になる、第一、第二のランスによる所謂二段吹込みによる酸素効率を○で示した。同じ酸素供給速度において明らかに本発明側の脱燐酸素効率が高くなっており、この結果、脱珪・脱燐処理速度は上昇して高速で脱珪・脱燐処理が可能になった他、脱燐酸素効率が高いため酸化剤使用量の削減が実現できた。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、混銑車および溶銑鍋など処理容器を用いて行う方式の溶銑予備処理操業において、従来到達しえなかったレベルでの、低コストかつ高速の脱珪・脱燐処理が可能となり、さらには処理容器口元不良の問題も容易に解消しうるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る脱珪・脱燐の各処理を示す側面断面模式図である。
【図2】本発明に係るランス2本の浸漬使用形態の一例を示す側面断面模式図である。
【図3】本発明に係るランス2本の浸漬使用形態の一例を示す側面断面模式図である。
【図4】本発明に係る混銑車傾転による除滓形態の一例を示す正面断面模式図である。
【図5】本発明に係る固体酸化剤、気酸吹込み形態の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る固体酸化剤、気酸吹込み形態の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る固体酸化剤、気酸吹込み時の脱燐酸素効率を示す図である。
【符号の説明】
1 処理容器(混銑車)
1a 溶銑通用口(口元、トピード口元)
2 溶銑
3 スラグ
4 第一のランス(第一の浸漬ランス)
5 第二のランス(第二の浸漬ランス)
6 流滓ピット
7 ガラ
D 浸漬深さの差
Z1,Z2 処理剤(酸化剤あるいはさらに塩基度調整剤)
Claims (4)
- 処理容器内に保持された溶銑中に2本以上の浸漬ランスを介して酸化剤を吹込み脱珪・脱燐を行う溶銑の予備処理方法において、処理開始時は、前記浸漬ランスのうち、最初に浸漬される第一の浸漬ランスから酸化剤を溶銑中に吹込み脱珪・脱燐を進行させ、脱燐末期の段階で、前記第一の浸漬ランスの浸漬深さより浅い部分に第二の浸漬ランスを浸漬して、溶銑の上下方向で互いに離隔した状態で第一、第二の浸漬ランスから酸化剤を吹込むことを特徴とする溶銑の予備処理方法。
- 前記脱燐末期の段階で、前記浸漬ランスのうち、下方に位置する第一の浸漬ランス側から吹込む酸化剤の吹込み量を減少させ、第二の浸漬ランスの酸化剤吹込みを行うことを特徴とする請求項1記載の溶銑の予備処理方法。
- 前記浸漬ランスのうち、上方に位置する第二の浸漬ランスの浸漬深さを、溶銑の浴面下1m以内および第一の浸漬ランスの浸漬深さより0.1 m以上浅くした範囲とすることを特徴とする請求項1または2記載の溶銑の予備処理方法。
- 前記脱燐の終了時、第一、第二の何れかのランスを溶銑浴面上まで上昇させ気体酸素を吹き付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶銑の予備処理方法。
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JP2002175746A JP3786056B2 (ja) | 2002-06-17 | 2002-06-17 | 溶銑の予備処理方法 |
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