JP5078318B2 - 高炉鋳床の連続精錬方法 - Google Patents
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Description
特に、脱珪処理は、次工程の脱りんを効率よく行うために溶銑内の珪素濃度を0.25mass%以下まで低下させる必要がある。すなわち、珪素濃度が0.25mass%以下を得られない場合、製鋼での脱珪コストアップ、脱りん処理時間の延長による操業トラブルを引き起こす要因となる。
出銑樋における脱珪、脱硫処理には、
(1) 精錬剤を、窒素、空気などのキャリアガスに同伴させてランスより出銑樋内へインジェクションする方式、
(2) 精錬剤を溶銑の上面に添加した後出銑樋に設けられた落差部を通過させて行う、溶銑の落下エネルギーを利用する方式、
(3) 出銑樋に設けられた傾斜部分(傾注樋)の直前で精錬剤を添加し、出銑樋→傾注樋→溶銑鍋と順次流れる溶銑の落下エネルギーを利用する方式
が多く採用されている。
(2)の方式は、処理後のスラグ除去を高炉鋳床上で完了できるという実操業上極めて大きなメリットを有しているが、他の方法に比べて反応効率が低いという問題がある。
(3)の方式は反応効率が比較的高いが、スラグのフォーミングが激しいためにフリーボードの設置が必要となる。フォーミングは、溶銑鍋あるいはトピードカーへの溶銑装入量を大幅に減少させ、生産性を低下させる。また、スラグがフォーミングすると、溶銑とともにスラグが溶銑鍋またはトピードカーへ流入するため、別途、スラグ除去装置が必要となる。
そこで、出銑樋の途中に脱珪槽(湯たまり部)を設け、脱珪槽に脱珪剤を添加しながら機械撹拌処理する技術が開発され、珪素濃度の低い溶銑が得られている(特許文献1)。また、円筒状撹拌棒を精錬剤吹き込みノズルよりも上流側かつ精錬剤吹き込みノズルよりも側壁側に設け、円筒状撹拌棒によって溶銑の流れを精錬剤吹き込みノズル方向に導くことにより溶銑と精錬剤との接触を促進させて反応効率を上げる技術が開示されている(特許文献2)。
また、特許文献2に開示された技術では、溶銑の流れと撹拌による流れとが重なる場所で一部の精錬剤が溶銑中に巻き込まれないで下流に流され、反応に関与しない精錬剤の量が多くなるおそれがある。
すなわち、本発明に係る高炉鋳床の連続精錬方法は、高炉鋳床の出銑樋内に精錬剤を添加して1基のインペラにより溶銑と前記精錬剤とを混合し前記溶銑を連続的に精錬するに際し、前記インペラの回転方向と前記溶銑流れ方向とが直交または逆向きになる側であって、
(i) 前記インペラの上流側においては式(1)を満足する位置
(ii) 前記インペラの下流側においては式(2)を満足する位置
の少なくともいずれかに精錬剤を添加する。
0<M/D≦0.8 (2)
D:溶銑流路の最大幅(m)
M:インペラ回転中心から添加場所までの距離(m)
図1,2において、精錬装置71は移動部50、撹拌装置11および添加装置12等からなる。
移動部50は、撹拌装置11および添加装置12等をその上に固定して移動可能にするためのものである。移動部50は、ベース部52、フレーム41および転動輪51,…,51からなる。
ベース部52は略板状矩形であって、その上面には撹拌装置11を支持するためのフレーム41が垂直に固定されている。ベース部52の下方には1対の転動輪51,51が複数対設けられている。
撹拌装置11は、インペラ10、駆動部30および昇降部31等からなる。
インペラ10は回転自在に支持されており、当該インペラ10は耐火物などで構成されている。このインペラ10は、筒状又は棒状の回転軸15と、回転軸15の先端に設けられた複数の羽根16とを有している。各羽根16は回転軸15の先端から径外方向に突出した略矩形状のものである。
駆動部30は、駆動モータ32、連結歯車82および伝達軸(第2回転軸)36等からなる。
伝達軸36は、その他端が回転軸15に軸芯同士が一致するように連結され、連結歯車82から伝達される回転力によりインペラ10を回転させる。
支持体37は、駆動モータ32、連結歯車82のケーシングおよび伝達軸36の軸受け74,74を固定的に支持する。
2基のシリンダ装置40,40は、伝達軸36を挟んで各ロッドの軸芯が伝達軸36の軸芯を含む平面上に位置するように配置されている。シリンダ装置40,40のロッドの先端は支持体37に固定され、シリンダ41aは移動部50のフレーム41に固定されている。シリンダ装置40,40は、伸縮動作によりロッドが支持体37に支持された駆動部30を上昇または下降させることにより、インペラ10を、羽根16が出銑樋4内の溶銑に浸漬する位置とインペラ10を補修するための取り外し可能位置との間で昇降させる。
ホッパー45は、溶銑の精錬に使用される脱珪剤または脱硫剤(以下これらを「精錬剤」ということがある)を一時貯蔵するためのものである。ホッパー45の下方には切り出し部46が設けられている。
ロータリーフィーダは、ホッパー45から単位時間あたり一定容積の精錬剤をスクリューコンベア47に送り出す働きを行う。
剤投入ランス17は、移動部50のベース部52を垂直方向に上下動可能に貫通し、上端がスクリューコンベア47の吐出側に連結され、下端からスクリューコンベア47で搬送された精錬剤を吐出する。
ランス昇降装置は、ホッパー45、切り出し部46、スクリューコンベア47および剤投入ランス17を固定する図示しない添加装置支持部と、添加装置支持部を昇降させるための図示しない複数のシリンダ装置と、からなる。ランス昇降装置は、剤投入ランス17を、その下端の添加口75が出銑樋4を流れる溶銑の上面近傍と溶銑樋カバー43よりも上方の位置との間で上下動するように昇降させる。ランス昇降装置は、先に説明した昇降部31とほぼ同一の、添加装置支持部を昇降させるための構成を有する。
次に、精錬装置71が設置される高炉鋳床1について説明する。
図3は精錬装置71が設置された高炉鋳床1の一部平面概略図、図4は精錬装置71が設置された高炉鋳床1の一部の概略を示す図である。以下の説明において、図3,4における左側を上流側、右側を下流側という。
高炉鋳床1は高炉の周りに複数設けられ、各高炉鋳床1には順に高炉から溶銑が出銑される。
出銑樋4は、図2に示されるように、流路断面が略台形の溝であって断熱材76、耐火物である背面煉瓦77および溶銑に直接に接する内面の不定形耐火物78で形成される。出銑樋4の上方開口部は、溶銑樋カバー43により覆われている。なお、溶銑樋カバー43には、インペラ10および剤投入ランス17をそれぞれ貫通させるための孔が設けられている。
潜り堰30は、出銑樋4を流れる溶銑および溶銑上面に浮かぶスラグから溶銑とスラグとを分離するためのものである。潜り堰30は、その下端が溶銑とスラグとの界面の下方に底部4bとに間隙を有して位置し、上端がスラグの上方に位置して、スラグの流れを制限するように形成されている。出銑樋4において下層の溶銑は潜り堰30と底部4bとの間隙からさらに下流の出銑樋4に流出し、潜り堰30でせき止められた上層のスラグは排滓口79に流れ出る。
出銑樋4の上方には、高温の溶銑樋カバー43からの輻射熱を遮るための踏み板(熱遮断板)42が設けられている。
続いて、高炉鋳床1で行われる溶銑の連続精錬における剤投入ランス17の適正な配置位置、つまり溶銑への精錬剤の適正な添加位置について説明する。
添加装置12Bは、ホッパー45、切り出し部46、移送管80Bおよび剤投入ランス17からなる。ホッパー45、切り出し部46および剤投入ランス17は添加装置12におけるものと同一である。ホッパー45はベース部52Bの上面に固定された架台81Bに固定されている。移送管80Bは、切り出し部46と剤投入ランス17とを接続して切り出し部46から精錬剤を定量的に剤投入ランス17に移送する。移送管80Bには、摩擦係数が低く変形しやすい樹脂チューブが使用される。切り出し部46から剤投入ランス17への移送管80Bを経由する精錬剤の移送は、切り出し部46と剤投入ランス17との落差を利用して行われ、ホッパー45は架台81Bの十分に高い位置に取り付けられている。
表1は検討に用いた精錬装置Bおよび高炉鋳床1の概要、表2は精錬剤として脱珪剤である5Fe−58Fe2O3−21CaO−8SiO2(in mass%)を使用して行った脱珪処理の条件とその結果との関係である。図6は表2における精錬剤の添加位置をインペラ10との関係で示す図、図7は表2における精錬剤の添加位置と脱珪酸素効率ηO2との関係を示す図である。
表1において、撹拌装置11は、インペラ10の径dと出銑樋4の幅Dとの比d/Dが0.56であり回転数が100rpmであるが、発明者らは、0.3≦d/D<1を満たす径のインペラを用い、回転数80〜200rpmの範囲内で数々の実験を行い、すべてにおいて溶銑の渦が出銑樋4の幅方向全体に広がることを確認している。
溶銑流路の最大幅Dは、出銑樋4に溶銑を流した際に、溶銑と出銑樋4(出銑樋4の側壁)とが接触している接触部分における当該出銑樋4の最大幅である。言い換えれば、溶銑流路の最大幅Dは、出銑樋4に溶銑を通過させた際、出銑樋4内を流れる溶銑の最大幅である。
また、インペラの回転軸中心から添加場所までの距離Mは、インペラ10の回転軸15の中心(軸芯)から剤投入ランス17の中心(軸芯)までの水平距離のことである。
脱珪処理においては、溶銑中の珪素は脱珪剤中の酸素と反応して溶銑から除去される。そこで、脱珪処理において溶銑へ添加された脱珪剤が効率的に脱珪反応に寄与したかを表す指標として、下記式(3)に示される脱珪酸素効率ηO2を用いた。脱珪酸素効率ηO2は脱珪剤中の酸素分に対して溶銑中の珪素の酸化に使用された酸素分の割合を示したものである。
従来のような機械的な撹拌のみの精錬では、同じ脱珪剤原単位で比較した場合、脱珪酸素効率ηO2は30〜40%であった。それを鑑み、まず、脱珪酸素効率ηO2は高効率である50%以上になることを基準とした。この場合、出銑時の珪素が0.38〜0.42mass%であったが、処理後の珪素は、0.25mass%以下となる。
脱珪酸素効率ηO2の基準を50%以上とすることで、本処理の後工程に行われる脱りん処理における効率(脱りん時間の短縮、脱りん量の向上)を向上させることができる。
良好な脱珪処理を行うことができるインペラ回転中心から添加場所までの距離Mの範囲が、上流側と下流側とで異なるのは、図9(a)に示されるように、インペラ10の回転より生ずる撹拌渦が溶銑の流れにより下流側に偏っており、下流側の方が巻き込みに有利な条件になっているためである。
脱珪剤を下流側において上記範囲外で添加した場合にも、同じように脱珪剤は溶銑に浮いたまま脱珪反応に寄与せずに下流側に流れていく割合が多い。
回転するインペラ10周りの溶銑の流れは、図9(a),(b)に示されるようにインペラ10の下流側から溶銑の流れとは逆向きに上流側に向かう流れが生じ、この流れに脱珪剤を同伴させれば、脱珪剤添加からインペラ10が1/4〜1/2回転する時間だけ脱珪剤が反応に寄与する時間が長くなり、反応効率的にも有利である。したがって、インペラ回転中心から添加場所までの距離Mの値が同じであれば、下流側で脱珪剤を添加する方が好ましい。
図10は上記知見を撹拌渦と精錬剤の添加位置との関係として示した図である。
上述の実施形態においては、インペラ10として十字形(4枚羽根)を使用し、インペラ10は溶銑中に完全に浸漬される。昇降位置11にて任意の浸漬深さで停止が可能である。出銑樋幅D全体に撹拌渦を生じさせる条件であれば、インペラ10の形状、回転数などは特に限定されない。
また、精錬装置71,71B、高炉鋳床1、および精錬装置71,71B、高炉鋳床1の各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
上記の実施の形態では、溶銑を精錬する精錬剤の1つとして脱珪剤を用いた脱珪処理について説明したが、脱硫剤を用いた場合でも同様である。即ち、本発明は溶銑中に精錬剤を効率的に巻き込ませ、精錬剤と溶銑との反応界面積を大きくすることで反応速度を向上させるための最適な手段を示したものであり、脱珪処理と同様に脱硫処理であっても、精錬剤の種類や組成に依存せず精錬特性が高いことは同じである。
4 出銑樋
10 インペラ
Claims (1)
- 高炉鋳床の出銑樋内に精錬剤を添加して1基のインペラにより溶銑と前記精錬剤とを混合し前記溶銑を連続的に精錬するに際し、
前記インペラの回転方向と前記溶銑流れ方向とが直交または逆向きになる側であって、
(i) 前記インペラの上流側においては式(1)を満足する位置
(ii) 前記インペラの下流側においては式(2)を満足する位置
の少なくともいずれかに精錬剤を添加することを特徴とする高炉鋳床の連続精錬方法。
0<M/D≦0.5 (1)
0<M/D≦0.8 (2)
D:溶銑流路の最大幅(m)
M:インペラ回転中心から添加場所までの距離(m)
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