JP5084932B2 - 浮上搬送方法および浮上搬送装置 - Google Patents

浮上搬送方法および浮上搬送装置 Download PDF

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Description

本発明は浮上搬送方法に関するものである。
従来、帯状物30を浮上させた状態で搬送する装置としては、次のようなものがあった。図9および図10に基づいて説明する。
図9は従来の浮上搬送装置101の内部を側面方向から見た模式図である。従来の浮上搬送装置101において、中空直方体状の筐体102に帯状物搬入用の入口103が、入口103に対向する位置に帯状物搬出用の出口104がそれぞれ設けられている。帯状物30は、入口103近傍に配された入口ロール106および出口104付近に配された出口ロール107によって移動させられる。筐体102の内部には、帯状物30を走行させる搬送路の上側および下側にそれぞれ、幅方向に延びる細長状のエアー吹出ノズル108が設けられている。各エアー吹出ノズル108は、筐体102の入口103から出口104にわたって上下交互に設けられている。すなわち、搬送路の上側におけるノズル群を構成する1つのエアー吹出ノズル108と他の隣接するエアー吹出ノズル108との間の直下に、搬送路の下側におけるノズル群の一構成体としてのエアー吹出ノズル108が存在する。さらに、片吹ノズル110が筐体102内部において、帯状物30の搬送路の上側における長手方向中央部に設けられている。
図10は図9における従来の浮上搬送装置101の片吹ノズル110周辺を示した模式図である。帯状物30の搬送方向は紙面の左側から右側である。エアータンク109からエアー吹出ノズル108内に送り込まれたエアーは、帯状物30の搬送路側で開口する入口側通気路108aおよび出口側通気路108bにそれぞれ取り込まれる。
入口側通気路108aに取り込まれたエアーは、やや出口104の方向(搬送方向)に向けてノズル外部に噴射され、出口側通気路108bに取り込まれたエアーは、やや入口103の方向(搬送方向と逆向き)に向けて噴射される。これにより、エアー吹出ノズル108から噴射された2方向のエアーは互いに衝突し、入口側通気路108aおよび出口側通気路108bを有する面から垂直な方向に向きを変える。すなわち、2方向のエアーがエアー吹出ノズル108から噴射された後に合流し、搬送される帯状物30の下面あるいは上面に対して略直角に噴射される。
また、片吹ノズル110の、エアー吹出スリット110aから、帯状物30の上面に対し、帯状物30の搬送方向と同一か、あるいは略同一の方向に、幅方向左右両側部において略均等となるようにエアーが流される。さらに、整流板110bを、エアー吹出スリット110aより筐体102の出口104側の位置に設けると、片吹ノズル110との離れ際におけるエアーの乱流を抑えることができる。その結果、連続走行する帯状物30が上下に振動するのを抑え、筐体102内部の帯状物30を、図9に示したごとく、波型に浮上した状態(フローティング状態)で安定して走行させることができる。
特開平9−40242号公報
しかしながら、従来の浮上搬送装置は、次のような課題を有する。
従来の浮上搬送装置では、帯状物の上下の振動を抑え、安定して浮上搬送されているように見えても、突然、搬送装置内の帯状物に搬送路の右側あるいは左側へ大きな位置ずれが生じる場合があった。この大きな位置ずれが原因で帯状物の走行不良や皺の発生に伴う品質不良を招いてしまった。
これは搬送によって蓄積されたエネルギが、一気に開放させることによって、帯状物に大きな位置ずれが発生したためだと考えられる。
従来の浮上搬送装置では、このような大きな位置ずれの発生を防止することができなかった。
本発明は、かかる課題に鑑み、走行不良や皺の発生の原因となる大きな位置ずれの発生を防止できる浮上搬送方法を提供することを目的とする。
本発明の浮上搬送方法は、帯状物の上面および下面に気体を噴射して浮上状態にして、前記帯状物を搬送するに際し、前記帯状物の上面または下面のいずれか一方に気体を常に噴射して、前記帯状物の面内で、前記帯状物の搬送方向と直交する第1の方向へ前記帯状物を常に移動させる第1の気体噴射工程と、前記帯状物の前記第1の気体噴射工程で気体を噴射する面と同一の面に気体を常に噴射して、前記帯状物の面内で前記第1の方向と逆の第2の方向へ前記帯状物を常に移動させる第2の気体噴射工程とを有し、前記第1の気体噴射工程および第2の気体噴射工程を交互に複数繰り返すことを特徴とする。
かかる構成により、入口から出口にかけて繰り返し帯状物を幅方向へ移動させることで、帯状物の幅方向への移動量を調節し、突発的に生じる大きな位置ずれの発生を防止することができる。
さらに、本発明の浮上搬送方法は、前記帯状物が移動させられる量は、前記帯状物が前記第1の方向および前記第2の方向のいずれの方向にも移動していない状態から前記第1の方向および前記第2の方向にそれぞれ1mm以上10mm以下の範囲で移動させることを特徴とする。
かかる構成により、帯状物の幅方向への移動を制御して、この移動に伴って発生する皺や割れなどの品質不良の発生を防ぎ、突発的に生じる大きな位置ずれや蛇行の発生を防止することができる。
また、本発明の浮上搬送方法は、前記帯状物の前記第1の方向への移動量と、前記第2の方向への移動量が同じであることを特徴とする。
かかる構成により、エネルギを均一に開放できるため、大きな位置ずれの発生を防止できる。
また、本発明の浮上搬送装置は、互いに対向する入口と出口と、帯状物を搬送する搬送路と、前記搬送路の側方に位置する第1の側面と第2の側面とを有する筐体と、前記筐体内部の鉛直上部に設置され、前記搬送路と対向する面から気体を噴射する第1気体吹出ノズルと、前記筐体内部の鉛直下部に設置され、前記搬送路と対向する面から気体を噴射する第2気体吹出ノズルとを備え、前記第1気体吹出ノズルと前記第2気体吹出ノズルとが、前記搬送路を挟んで設置され、前記第1気体吹出ノズルまたは前記第2気体吹出ノズルのいずれか一方は第1の横移動ノズルと第2の横移動ノズルが前記入口から前記出口にかけて交互に複数配置されて構成され、前記第1の横移動ノズルは前記第2の側面方向へ前記帯状物を常に移動させる気体を噴射し、前記第2の横移動ノズルは前記第1の側面方向へ前記帯状物を移動させる気体を常に噴射することを特徴とする。
かかる構成により、気体の作用によって帯状物が入口から出口にかけて幅方向に移動を繰り返す。これにより帯状物の幅方向への移動量を制御し、突発的に生じる大きな位置ずれの発生を防止することができる。
また、上記目的を達成するために、本発明に係る浮上搬送装置は、前記第1の横移動ノズルは、前記第2の側面方向へ傾斜した方向に気体を噴出し、前記第2の横移動ノズルは、前記第1の側面方向へ傾斜した方向に気体を噴出することを特徴とする。
また、本発明の浮上搬送装置は、前記第1の横移動ノズルは、気体を噴射する位置が前記第1の側面に近づくほど気体の動圧が強く、前記第2の横移動ノズルは、気体を噴射する位置が前記第2の側面に近づくほど気体の動圧が強くなることを特徴とする。
かかる構成により、帯状物にモーメントを作用させることで、幅方向に移動させることができる。さらに、浮上ノズルから噴射する気体の方向が同じであるため、乱流の発生を抑え、安定して帯状物を搬送することができる。
また、本発明の浮上搬送装置は、前記第1の横移動ノズルは前記搬送路に向けて気体を噴射する面が、前記第1の側面側から前記第2の側面側へ向けて下り傾斜の面であり、前記第2の横移動ノズルは前記搬送路に向けて気体を噴射する面が、前記第2の側面側から前記第1の側面側へ向けて下り傾斜の面であることを特徴とする。
かかる構成により、モーメントと気体による作用によって、効果的に帯状物を移動させることができる。
さらに、本発明にかかる浮上搬送装置は、前記第1の横移動ノズルの気体を噴射する面と前記第1の横移動ノズルと前記搬送路を挟んで反対側に設置された前記第1気体吹出ノズルの前記搬送路と対向する面とが成す鉛直距離のうち、最も短い鉛直距離をH11、最も長い鉛直距離をH12としたとき、下記の第1式を満足し、前記第2の横移動ノズルの気体を噴射する面と前記第2の横移動ノズルと前記搬送路を挟んで反対側に設置された前記第1気体吹出ノズルの前記搬送路と対向する面とが成す鉛直距離のうち、最も短い鉛直距離をH22、最も長い鉛直距離をH21としたとき、下記の第2式を満足するとともに、下記の第3式および第4式を満足することを特徴とする。
H11 / H12 = a ( 0.4 ≦ a ≦ 0.8 ) ・・・・第1式
H22 / H21 = b ( 0.4 ≦ b ≦ 0.8 ) ・・・・第2式
/ b= c ( 0.7 ≦ c ≦ 1、nは入口からのノズルの順番を表す) ・・・・第3式
Σa/ Σb= d ( 0.8 ≦ d ≦ 1、nは入口からノズルの順番を表す) ・・・・第4式
かかる構成により、帯状物の幅方向への移動を制御して、幅方向の移動に伴って発生する皺や割れなどの品質不良の発生を防ぎ、突発的に生じる大きな位置ずれの発生を防止することができる。
本発明によると、帯状物の搬送時に生じる大きな位置ずれを防止して、帯状物を安定して搬送できる。
本発明の実施の形態1に係る浮上搬送装置の搬送経路に沿った縦断面図 図1のA−AA断面図 図2に示した右傾斜浮上ノズル付近における帯状物の状態を上側から見た図 図1のB−BB断面図 図4に示した左傾斜浮上ノズル付近における帯状物の状態を上側から見た図 浮上搬送装置の搬送経路に沿った水平断面図 本発明の実施の形態2に係る浮上搬送装置の横断面図 本発明の実施の形態3に係る浮上搬送装置の横断面図 従来の浮上搬送装置の搬送経路に沿った縦断面図 図9の要部の拡大図
以下、本発明の各実施の形態を、図面に基づいて説明する。
これらの図において共通する要素には、同一の符号を付している。但し、以下の実施形態は一例に過ぎず、本発明はこの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
(実施の形態1)
図1〜図6は本発明の実施の形態1を示す。
図1は、浮上搬送装置1の内部を図2に示す右側面2bの方向から見た模式図である。
中空直方体状の筐体2の一端に、帯状物搬入用の入口3が設けられている。また筐体2の他端に、帯状物搬出用の出口4がそれぞれ設けられている。帯状物30は、入口3の近傍に配された入口ロール5に案内されながら、入口3を通って筐体2の内部に送り込まれ、筐体2の内部を搬送されて出口4の近傍に配された出口ロール6に従って出口4から搬出される。
なお、筐体2の入口3の側を後側と呼び、筐体2の出口4の側を後側と呼ぶ。また、帯状物30が筐体2内で搬送される通路を搬送路Cとし、筐体2の左側に位置する側面を左側面2a、右側に位置する側面を右側面2bとする。「上」とは「帯状物30の鉛直方向の上側」、「下」とは「前記上の反対側」をいう。「右」とは帯状物30の搬送方向に向かって「右手側」、「左」とは帯状物30の搬送方向に向かって「左手側」をいう。
筐体2の内部で帯状物30の搬送路の上側には、幅方向に延びる細長状の第1気体吹出ノズル7が設けられている。また筐体2の内部で帯状物30の搬送路の下側には、第2気体吹出ノズルとしての右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9が交互に設けられている。
なお、第1気体吹出ノズル7、右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9は、幅方向に延びる細長状の直方体状物からなり、帯状物30と対向する面にそれぞれ図示しない入口側通気路および出口側通気路を有している。各第1気体吹出ノズル7、右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9には、エアータンク11からエアーが供給される。ここでは、入口側通気路および出口側通気路を合わせて通気路とする。なお、通気路については図10に示した従来の吹出ノズル108における入口側通気路108aおよび出口側通気路108bと同様である。
この通気路から2方向に吹き出された気体としてのエアーは互いに衝突し、通気路を有する面から垂直な方向に向きを変え、帯状物30の下面あるいは上面に対し噴射される。 第1気体吹出ノズル7と、右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9は、筐体2の入口3から出口4にわたって上下交互に設けられている。
右傾斜浮上ノズル8は、図2に示すように右側面2bの側が左側面2aよりも低くなるように右傾斜している。左傾斜浮上ノズル9は、図4に示すように左側面2aの側が右側面2bよりも低くなるように左傾斜しており、帯状物30は図3のように第1気体吹出ノズル7と右傾斜浮上ノズル8の間を浮上して通過し、図5に示すように第1気体吹出ノズル7と左傾斜浮上ノズル9の間を浮上して通過し、また、第1気体吹出ノズル7と右傾斜浮上ノズル8の間を浮上して通過しながら、図6に示すように入口3に搬入された帯状物30が出口4へ向かって搬送される。
この搬送状態を更に詳しく説明する。
搬送路の上側におけるノズル群を構成する1つの第1気体吹出ノズル7と他の隣接する第1気体吹出ノズル7との間の直下に、搬送路の下側におけるノズル群の一構成体としての右傾斜浮上ノズル8もしくは左傾斜浮上ノズル9が存在する。右傾斜浮上ノズル8と左傾斜浮上ノズル9は、筐体2の内部で帯状物30の搬送路の下側に、入口3から出口4にわたって交互に設けられている。
第1気体吹出ノズル7は、搬送される帯状物30の上面に対して略直角に噴射する。また、右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9は通気路から噴射するエアーによって略直角に帯状物30の下面を下側から上側に持ち上げるようにエアーを噴射する。また、各ノズルからのエアー噴射量や、出口ロール6の動作は制御部10によって制御される。
これにより、筐体2の内部の帯状物30を、図1に示したごとく、上下方向に波型に浮上した状態(フローティング状態)で、帯状物30を出口ロール6によって進行方向に引っ張るような力を加えて搬送できる。
− 第1の気体噴射工程 −
右傾斜浮上ノズル8の作用について説明する。
図2の右傾斜浮上ノズル8の左側面2aの側を左端部8a、右側面2bの側を右端部8bとする。右傾斜浮上ノズル8の通気路を有する面が、左端部8aから右端部8bに向けて下向きの傾斜面の通気路から略垂直にエアーが噴出される。このエアー噴出方向を第1の方向と呼んでいる。
このため、左端部8aに近いほどエアーの作用が大きく、帯状物30は左側面2aの側が盛り上がるように搬送される。このとき、盛り上がった分だけ実質的に左側面2aの側が右側面2bの側よりも帯状物30の走行距離が長くなる。しかし、出口ロール6から、帯状物30を進行させるために加える張力は一様に作用している。このように張力が一様にかかるため、右側面側2bに比べ左側面側2aが長いと言う実質的な走行距離の違いである周差により左回りの回転モーメントが生じる。
さらに、右傾斜浮上ノズル8の傾斜面から略垂直に噴出されるエアーは、鉛直方向よりも右側面2bの方向に傾いて進行する。ゆえに、このエアーは帯状物30を右側面2b方向へ移動させるように作用する。
このような、左回りの回転モーメントと、右側面2b方向へ噴射されるエアーの作用により、帯状物30は図3に示すように右側面2bに近付く方向に移動させられる。この移動量は、出口ロール6部における帯状物30の進行方向に対する幅方向の中央部を通り、入口3から出口4まで一直線に搬送される状態、すなわち幅方向に移動しない状態と比べると、図3に示すように帯状物30が右側面2bに近付く方向に移動量W1だけ幅寄せられることになる。帯状物30の厚み10〜20μm,幅500mm〜1500mm程度の場合には、W1の値は1mm以上10mm以下であることが望ましい。W1が1mm未満の場合は、後述する大きな位置ずれの発生を防ぐことができず、10mmより大きい場合は、帯状物30がねじられ、搬送中の帯状物30に皺などの不良が発生してしまうからである。
− 第2の気体噴射工程 −
左傾斜浮上ノズル9の作用について説明する。
図4の左傾斜浮上ノズル9の左側面2a側を左端部9a、右側面2b側を右端部9bとする。左傾斜浮上ノズル9の通気路を有する面が右端部9bから、左端部9aに向けて下向きの傾斜面の通気路から略垂直にエアーが噴出される。このエアー噴出方向を第2の方向と呼んでいる。
なお、左傾斜浮上ノズル9の作用は、上記の右傾斜浮上ノズル8の左右を反転したものと同様である。この左傾斜浮上ノズル9により、図5のように帯状物30は左側面2aに近付く方向へ移動させられる。
この移動量は、出口ロール6における帯状物30の進行方向に対する幅方向の中央部を通り、入口3から出口4まで一直線に搬送される状態、すなわち幅方向に移動しない状態と比べると、図5に示すように帯状物30が左側面2aに近付く方向に移動量W2だけ幅寄せられることになる。帯状物30が厚み10〜20μm,幅500mm〜1500mm程度の場合には、W2の値は1mm以上10mm以下であることが望ましい。W2が1mm未満の場合は、後述する大きな位置ずれの発生を防止することができず、10mmより大きい場合は、帯状物30がねじられ、搬送中の帯状物30に皺などの不良が発生してしまうからである。
入口ロール5より送られた帯状物30は、図6に示すように右傾斜浮上ノズル8により右側面2b方向にW1だけ移動させられ、次に右傾斜浮上ノズル8に前側で隣接した左傾斜浮上ノズル9により左側面2a方向にW2だけ移動させられる。さらに左傾斜浮上ノズル9に前側で隣接した右傾斜浮上ノズル8により右側面2b方向にW1だけ移動させられる。
このように、帯状物30は交互に配置された右傾斜浮上ノズル8と左傾斜浮上ノズル9により、左右に移動させられ、帯状物30を幅方向へわずかに蛇行させながら搬送することで、帯状物30にひずみエネルギが蓄積されるのを防ぎ、大きな位置ずれの発生を防止することができる。
次に、具体的な数値を挙げて説明する。
まず、右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9を設けない従来の状態で帯状物30を浮上搬送した。この場合、安定した状態では、筐体2内で左右側面方向への移動量の最大値が1mm未満で、蛇行)は生じない。
しかし、この安定状態が崩れると、突然、図6の二点鎖線で示すような左側面2aの側あるいは右側面2bの側に、30mm以上の大きな位置ずれが発生する場合があった。
これは、浮上搬送中の帯状物30は蛇行を生じることなく、安定して直進しているように見えても、この帯状物30の内部に、ひずみエネルギなどが蓄積されていくことに起因すると思われる。この蓄積されたエネルギが突然、平衡状態を崩すことで、蓄えられたエネルギを開放するかのごとく前述の大きな位置ずれが生じると考えられる。
仮に、蛇行が生じた後に、この蛇行を修正するために何らかの手段を用いたとしても、前述の大きな位置ずれが一度でも生じてしまえば、帯状物30の走行不良や皺の発生に伴う品質不良を免れ得ない。しかも、安定搬送時に噴射しているエアーの状態とは異なった強さ、または向きのエアーを蛇行防止のために噴射すれば、新たなエアーによる乱流が発生してしまう。この乱流の影響により、連続走行する帯状物30が上下に振動して安定走行が困難になったり、皺などが発生して品質不良を招いたりしてしまうことがある。
この問題点を解消できる実施の形態1における浮上搬送装置では、右傾斜浮上ノズル8と左傾斜浮上ノズル9とが交互に配列されているため、帯状物30は図6で示すように、左傾斜浮上ノズル8でW1、右傾斜浮上ノズル9でW2だけ移動させられ、左側面2aの方向、右側面2b方向に交互に繰り返し移動させられて搬送される。このときの左右側面方向への移動量の最大値は、それぞれ1mm以上10mm以下の状態であった。
このように、右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9を配置したことで、これらのノズルを設けない状態に比べて帯状物30が左右側面方向へわずかに蛇行することを許して、あえて左右側面方向に帯状物30を移動させることで、蓄積したエネルギを開放して、エネルギの爆発を未然に防ぐことが可能である。
このため、前述の大きな位置ずれの発生を防止することができる。しかも、常に一定のエアーを一定の方向へ噴射しているため、乱流の発生を抑え、安定した状態で帯状物30を搬送することができる。
つまり、左側面2aに近付く方向、右側面2bに近付く方向に交互に繰り返し移動させながら搬送させることで、特に、帯状物30を20m/分〜60m/分の高速走行させる際に、帯状物30の大きな蛇行の発生を避けることができ、走行不良や皺などの不良を回避することができる。
帯状物30と第1気体吹出ノズル7、右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9との位置関係について説明する。
図2に示すように、第1気体吹出ノズル7の帯状物30と対向する面と、右傾斜浮上ノズル8の帯状物30と対向する面における左端部8aとの鉛直距離をH11とし、第1気体吹出ノズル7の帯状物30と対向する面と、右傾斜浮上ノズル8の帯状物30と対向する面における右端部8bとの鉛直距離をH12とし、このH11をH12で割った値をaとする。
また、図4に示すように、第1気体吹出ノズル7の帯状物30と対向する面と、左傾斜浮上ノズル9の帯状物30と対向する面における左端部9aとの鉛直距離をH21とし、第1気体吹出ノズル7の帯状物30と対向する面と、左傾斜浮上ノズル9の右端部9bとの鉛直距離をH22とし、このH22をH21で割った値をbとする。
この場合、下記のそれぞれ第1式および第2式を満足するのが、後述する理由から好ましい。ここで、左端部8aは実際の右傾斜浮上ノズル8の左端ではなく、通気路が存在するノズルの左端部である。これは右端部8bでも同様であり、左傾斜浮上ノズル9においても同様である。
H11 / H12 = a ( 0.4 ≦ a ≦ 0.8 ) ・・・・第1式
H22 / H21 = b ( 0.4 ≦ b ≦ 0.8 ) ・・・・第2式
発明者らは、種々の実験を行い、第1式、第2式の範囲で下記の現象が現れることを見出した。上記の第1式および第2式を満たす場合、帯状物30を20m〜60m/分の高速走行させる際にも、30mm以上の大きな蛇行は発生しなかった。
なお、第1式および第2式のa,bの値が0.4に満たない場合は、右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9の傾斜面の傾斜角が大きく、左右方向の曲げモーメント(曲げ力)が大きくなることにより、帯状物30がねじられることによる皺が発生した。また、第1式および第2式のa,bの値が0.8を超える場合は、右傾斜浮上ノズル8および左傾斜浮上ノズル9の傾斜面の傾斜角が小さく、20m/分〜60m/分の高速走行させた場合、帯状物30が左側面2a方向あるいは右側面2b方向に大きな位置ずれを起こしてしまった。
なお、各ノズルから噴射されるエアーの量は制御部10によって調節される。この場合、全てのノズルから噴射されるエアーの量は一定でなくともよい。さらに、帯状物30を左右側面方向へ移動させる際に、全ての移動量が同じでなくともよい。いずれの場所においても筐体2内を入口3から出口4まで一直線に搬送される状態から左右側面方向へ1mm以上、10mm以下の移動であればよいからである。しかし、蓄積されるひずみエネルギ等は、何が原因で爆発的に開放され、前記の大きな位置ずれを発生させるのか解明されていない。よって、右傾斜浮上ノズル8と左傾斜浮上ノズル9による帯状物30の移動量W1と移動量W2が同じになるようにエアーの量を制御するのが好ましい。
例えば、隣り合う右傾斜浮上ノズル8と左傾斜浮上ノズル9において、第1式および第2式のa,bの値の内、小さいほうをa、大きいほうをbとしたとき、その関係が下記の第3式を満たすことが好ましい。これは、第3式のc値が0.7に満たない場合は、左右の蛇行の不均一が起こり、それが起因して、帯状物30が左側面2a方向あるいは右側面2b方向に大きな位置ずれを起こす。
/ b= c ( 0.7 ≦ c ≦ 1、nは入口からのノズルの順番を表す) ・・・・第3式
また、右傾斜浮上ノズル8と左傾斜浮上ノズルのa,bの値の全ての積算値の内、小さいほうをΣa、大きいほうをΣbとしたとき、その関係が下記の第4式を満たすことが好ましい。これは、第4式のdの値が0.8に満たない場合は、左傾斜浮上ノズルによる左方向への移動と右傾斜浮上ノズルによる右方向の移動の均衡を保つことができないため、帯状物30が左側面2a方向あるいは右側面2b方向に大きな位置ずれを起こす。
Σa/ Σb= d ( 0.8 ≦ d ≦ 1、nは入口からノズルの順番を表す) ・・・・第4式
ひずみエネルギが集中して、爆発の起点となり得る箇所を作らないためである。なお、制御部10で、各ノズルからのエアー噴射量、および出口ロール6を調節することで、帯状物30の左右側面方向への移動量を制御する。
帯状物30が厚み10〜20μm,幅500mm〜1500mmの銅箔やアルミ箔などの金属箔や樹脂フィルムの場合、第1気体吹出ノズル7の左右方向の幅は500mm〜2000mmである。また右傾斜浮上ノズル8の左右方向の幅は500mm〜2000mm、帯状物30の搬送方向に対する幅は400mm〜1900mmである。また左傾斜浮上ノズル9の左右方向の幅は500mm〜2000mm、帯状物30搬送方向に対する幅は400mm〜1900mmである。図6に示すように隣接する右傾斜浮上ノズル8と左傾斜浮上ノズル9との間隔Pは500mm〜1000mmである。
また第1気体吹出ノズル7の高さは50mmである。右傾斜浮上ノズル8の左端部8aの高さは52〜59mm、右端部の高さは50mmである。左傾斜浮上ノズル9の左端部9aの高さは50mm、右端部9bの高さ52〜59mmである。また、H11の値は5〜10mm、H12の値は10〜15mm、H21の値は10〜15mm、H22の値は5〜10mmである。なお、これらの値は、本発明の構成および趣旨を逸脱しない範囲内で変更可能である。
このように、金属箔や樹脂フィルムなどの帯状物の搬送において、左右幅方向へ移動させながら搬送することで、生産性を向上するために高速走行した際にも帯状物30の大きな位置ずれを防止し、位置ずれの発生に伴う走行不良や、皺などの品質不良を軽減することができ、生産性向上と品質向上を同時実現することができる。
(実施の形態2)
図7(a)(b)は本発明の実施の形態2を示す。
実施の形態1ではエアーの噴出面が傾斜した右傾斜浮上ノズル8,左傾斜浮上ノズル9を使用して帯状物30に移動量W1,W2の蛇行を積極的に付与していたが、この実施の形態2では、右傾斜浮上ノズル8に代わって、図7(a)に示すように右側吹出浮上ノズル12aを使用したものである。右側吹出浮上ノズル12aは、左側面2aの側の高さと、右側面2bの側の高さが同じでエアーの噴出面が傾斜していない。さらに、帯状物30に対して傾斜していないこの面から噴出するエアーが、矢印で示すように右側面2bの方向に噴出させるものである。
さらに、実施の形態1の左傾斜浮上ノズル9に代わって、右側吹出浮上ノズル12aと同じように左側面2aの側の高さと、右側面2bの側の高さが同じでエアーの噴出面が傾斜していない。さらに、帯状物30に対して傾斜していないこの面から噴出するエアーが、図7(b)に示すように左側面2aの方向に噴出させる左側吹出浮上ノズル12bを使用する。
この構成によっても、右側吹出浮上ノズル12aから噴出するエアーによって帯状物30を押し出して右側面2bの側に移動させる。また、上記の左側吹出浮上ノズル12bから噴出するエアーによって帯状物30を押し出して左側面2aの側に移動させる。このようにして、帯状物30を左右側面方向へ蛇行させることができ、大きな位置ずれの発生を防ぐことができる。
なお、実施の形態1で示した右傾斜浮上ノズル8、左傾斜浮上ノズル9に比べて、帯状物30を左右方向へ蛇行させる作用は小さいが、帯状物30に回転モーメントを加えたくない場合などに、特に実施の形態2は有効である。また、従来のエアー吹出ノズル108を利用して、容易に右側吹出浮上ノズル12aおよび左側吹出浮上ノズル12bを作成できる。
(実施の形態3)
図8(a)(b)は本発明の実施の形態3を示す。
実施の形態2の右側吹出浮上ノズル12および左側吹出浮上ノズルでは、エアーが右側面2bまたは左側面2aに向かって噴出していたが、この実施の形態3では、噴出の方向は鉛直方向で、かつ、エアーの強さに幅方向の傾きを持たせたものを使用している。
実施の形態1の右傾斜浮上ノズル8の代わりに使用する右側動圧浮上ノズル13aを図8(a)に示す。右側動圧浮上ノズル13aは、左側面2aの側の端部に近づくほどエアーの動圧が強い。係る構成により帯状物30が左側面2aの側で盛り上がるように搬送されるので、帯状物30の走行距離は右側面2bの側に比べ左側面2aの側で長くなる。この走行距離の違いによる周差のため左回りの回転モーメントが生じ、右側面2bに近付く方向へ帯状物30の移動を生じさせることが可能である。
同様に、実施の形態1の左傾斜浮上ノズル9の代わりに使用する左側動圧浮上ノズル13bは、図8(b)に示すように右側面2bの側の端部に近づくほどエアーの動圧が強いものを使用する。
この構成によると、帯状物30が左右側面方向へ繰り返し移動させることができ、大きな位置ずれの発生を防ぐことができる。
なお、実施の形態1で示した右傾斜浮上ノズル8、左傾斜浮上ノズル9に比べて、帯状物30を左右方向へ蛇行させる作用は小さいが、左右方向へエアーを噴射することによる乱流の発生を抑えたい場合には実施の形態3に係る構成は有効である。また、従来のエアー吹出ノズル108を利用して、右側動圧浮上ノズル13aおよび左側動圧浮上ノズル13bを容易に作成できる。
上記の実施の形態1では、第1の気体噴射工程において、帯状物30の下面に第2気体吹出ノズルとしての右傾斜浮上ノズル8から気体を噴射して、帯状物30の面内で、帯状物の搬送方向と直交する第1の方向として右側面2bに向かって帯状物30を移動させ、第2の気体噴射工程において、帯状物30の下面に第2気体吹出ノズルとしての左傾斜浮上ノズル9から気体を噴射して、帯状物30の面内で、帯状物の搬送方向と直交する第2の方向として左側面2aに向かって帯状物30を移動させたが、第1の気体噴射工程において、帯状物30の上面に第2気体吹出ノズルとしての右傾斜浮上ノズル8から気体を噴射して、帯状物30の面内で、帯状物の搬送方向と直交する第1の方向として右側面2bに向かって帯状物30を移動させ、第2の気体噴射工程において、帯状物30の上面に第2気体吹出ノズルとしての左傾斜浮上ノズル9から気体を噴射して、帯状物30の面内で、帯状物の搬送方向と直交する第2の方向として左側面2aに向かって帯状物30を移動させることもできる。この場合、第1気体吹出ノズル7を下側に設ける。
上記の各実施の形態では、気体としてエアーを使用したが、不活性ガスなどのその他の気体も使用できる。
本発明は、金属箔や樹脂フィルムなどを材料として使用している各種製品の生産性向上と品質向上に寄与する。
1 浮上搬送装置
2 筐体
2a 左側面
2b 右側面
3 入口
4 出口
7 第1気体吹出ノズル
8 右傾斜浮上ノズル(第2気体吹出ノズル,第1の横移動ノズル)
9 左傾斜浮上ノズル(第2気体吹出ノズル,第2の横移動ノズル)
12a 右側吹出浮上ノズル(第2気体吹出ノズル,第1の横移動ノズル)
12b 左側吹出浮上ノズル(第2気体吹出ノズル,第2の横移動ノズル)
13a 右側動圧浮上ノズル(第2気体吹出ノズル,第1の横移動ノズル)
13b 左側動圧浮上ノズル(第2気体吹出ノズル,第2の横移動ノズル)
30 帯状物

Claims (8)

  1. 帯状物の上面および下面に気体を噴射して浮上状態にして、前記帯状物を搬送するに際し、
    前記帯状物の上面または下面のいずれか一方に気体を常に噴射して、前記帯状物の面内で、前記帯状物の搬送方向と直交する第1の方向へ前記帯状物を常に移動させる第1の気体噴射工程と、
    前記帯状物の前記第1の気体噴射工程で気体を噴射する面と同一の面に気体を常に噴射して、前記帯状物の面内で前記第1の方向と逆の第2の方向へ前記帯状物を常に移動させる第2の気体噴射工程とを有し、
    前記第1の気体噴射工程および第2の気体噴射工程を交互に複数繰り返す
    浮上搬送方法。
  2. 前記帯状物が移動させられる量は、前記帯状物が前記第1の方向および前記第2の方向のいずれの方向にも移動していない状態から前記第1の方向および前記第2の方向にそれぞれ1mm以上10mm以下の範囲で移動させる
    請求項1記載の浮上搬送方法。
  3. 前記帯状物の前記第1の方向への移動量と、前記第2の方向への移動量が同じである
    請求項1または請求項2記載の浮上搬送方法。
  4. 互いに対向する入口と出口と、帯状物を搬送する搬送路と、前記搬送路の側方に位置する第1の側面と第2の側面とを有する筐体と、
    前記筐体内部の鉛直上部に設置され、前記搬送路と対向する面から気体を噴射する第1気体吹出ノズルと、
    前記筐体内部の鉛直下部に設置され、前記搬送路と対向する面から気体を噴射する第2気体吹出ノズルとを備え、
    前記第1気体吹出ノズルと前記第2気体吹出ノズルとが、前記搬送路を挟んで設置され、
    前記第1気体吹出ノズルまたは前記第2気体吹出ノズルのいずれか一方は第1の横移動ノズルと第2の横移動ノズルが前記入口から前記出口にかけて交互に複数配置されて構成され、
    前記第1の横移動ノズルは前記第2の側面方向へ前記帯状物を移動させる気体を常に噴射し、
    前記第2の横移動ノズルは前記第1の側面方向へ前記帯状物を移動させる気体を常に噴射する
    浮上搬送装置。
  5. 前記第1の横移動ノズルは、前記第2の側面方向へ傾斜した方向に気体を噴出し、前記第2の横移動ノズルは、前記第1の側面方向へ傾斜した方向に気体を噴出する
    請求項4記載の浮上搬送装置。
  6. 前記第1の横移動ノズルは、気体を噴射する位置が前記第1の側面に近づくほど気体の動圧が強く、
    前記第2の横移動ノズルは、気体を噴射する位置が前記第2の側面に近づくほど気体の動圧が強くなる
    請求項4記載の浮上搬送装置。
  7. 前記第1の横移動ノズルは前記搬送路に向けて気体を噴射する面が、前記第1の側面側から前記第2の側面側へ向けて下り傾斜の面であり、
    前記第2の横移動ノズルは前記搬送路に向けて気体を噴射する面が、前記第2の側面側から前記第1の側面側へ向けて下り傾斜の面である
    請求項4記載の浮上搬送装置。
  8. 前記第1の横移動ノズルの気体を噴射する面と前記第1の横移動ノズルと前記搬送路を挟んで反対側に設置された前記第1気体吹出ノズルの前記搬送路と対向する面とが成す鉛直距離のうち、最も短い鉛直距離をH11、最も長い鉛直距離をH12としたとき、下記の第1式を満足し、
    前記第2の横移動ノズルの気体を噴射する面と前記第2の横移動ノズルと前記搬送路を挟んで反対側に設置された前記第1気体吹出ノズルの前記搬送路と対向する面とが成す鉛直距離のうち、最も短い鉛直距離をH22、最も長い鉛直距離をH21としたとき、下記の第2式を満足するとともに、下記の第3式および第4式を満足する
    請求項7記載の浮上搬送装置。
    H11 / H12 = a (0.4 ≦ a ≦ 0.8 ) ・・・・第1式
    H22 / H21 = b ( 0.4 ≦ b ≦ 0.8 ) ・・・・第2式
    an / bn = c ( 0.7 ≦c ≦ 1、nは入口からのノズルの順番を表す)
    ・・・・第3式
    Σan / Σbn= d ( 0.8 ≦d ≦ 1、nは入口からノズルの順番を表す)
    ・・・・第4式
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