第1の発明は、機器本体と、前記機器本体に装備される保護枠と、前記機器本体に装備される前記保護枠内に収納される鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記機器本体を覆う蓋と、前記保護枠に形成され前記鍋が放射する赤外線を透過する複数個の赤外線透過部と、前記鍋が放射して前記複数個の赤外線透過部を透過した赤外線を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサによる前記鍋の温度検出情報に応じて前記鍋加熱手段の加熱量を制御する制御手段と、を備え、前記赤外線センサは、前記複数個の赤外線透過部と対向する位置に配され樹脂フィルムで形成されたセンサ基材と、前記センサ基材の前記複数個の赤外線透過部に対向する面と反対の面側において、前記センサ基材に配置され前記複数個の赤外線透過部と各々対向する位置で前記センサ基材の温度変化を検出する複数個の検
出用感熱素子と、前記センサ基材に配置され前記複数個の赤外線透過部と対向しない位置で前記複数個の検出用感熱素子により検出した温度を補償する補償用感熱素子と、前記センサ基材の前記複数個の赤外線透過部に対向する面側において、前記センサ基材に配置され前記複数個の検出用感熱素子に相対して設け赤外線を吸収する赤外線吸収層と、前記センサ基材に配置され前記補償用感熱素子に相対して設け赤外線を反射する赤外線反射層とを有する炊飯器としたものである。これによって、鍋の温度が上昇すると、鍋から赤外線の放射が発生し、複数個の赤外線透過部を透過する赤外線を赤外線センサが検出する。赤外線センサを形成するセンサ基材は、赤外線吸収層が配置された部分では鍋からの赤外線が吸収され、複数個の検出用感熱素子がセンサ基材の温度を検出する。つまり、複数箇所の鍋温度を検出する。特に、複数個の検出用感熱素子に相対して赤外線を吸収する赤外線吸収層をセンサ基材に設けたことにより、赤外線吸収層が鍋の底部が放射する赤外線を高効率に吸収し、この熱量でセンサ基材を加熱するものであり、鍋が短時間で温度上昇する場合に、その温度変化に追従してセンサ基材および複数個の検出用感熱素子が温度上昇し、正確に鍋の温度を高速に検出できる。同時に、センサ基材は、赤外線反射層が配置された部分では鍋からの赤外線は吸収されずに、温度変化が発生せずに、補償用感熱素子がセンサ基材の設置されている周囲温度を検出する。特に、補償用感熱素子に相対して赤外線反射層をセンサ基材に設けたことにより、鍋の底部から補償用感熱素子の配置された部分のセンサ基材に、赤外線が放射されることを防止する。制御手段は、この複数個の検出用感熱素子と補償用感熱素子とによる鍋の温度検出情報に応じて鍋加熱手段の加熱量を制御することで、鍋の温度を高速に検出するとともに、温度検出精度をより一層高め、適切な鍋加熱手段の加熱量制御ができる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、赤外線透過部は鍋の底部との間に空隙を設けて相対していることにより、両者が直接接触することによる高温度の鍋から低温度の赤外線透過部への熱伝導の変動による鍋の温度低下によるバラツキが発生しないので、鍋の底部の温度変化、特に急速な温度上昇においても、赤外線の放射状態が安定し、正確に鍋の温度を検出できる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、複数個所の鍋温度の変化から、異常を検出しこれをお知らせする異常報知手段を有することにより、異常を知って赤外線透過部などのお手入れを行うことで、次回以降の運転でも炊飯性能を得ることができる。
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、赤外線吸収層は黒色の塗料で形成され、検出用感熱素子を覆うようにセンサ基材に塗布したことにより、鍋の底部が放射する赤外線を検出用感熱素子よりも広い面積で赤外線反射率の小さい赤外線吸収層で効率よく受熱すると同時に、この熱量でセンサ基材を加熱するものであるので、鍋が短時間で温度上昇する場合に、その温度変化に追従してセンサ基材および検出用感熱素子が温度上昇し、正確に鍋の温度を検出できる。
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、赤外線反射層は板金で形成され、補償用感熱素子を覆うようにセンサ基材と赤外線透過部の中間に配置したことにより、鍋の底部から補償用感熱素子の配置された部分のセンサ基材に、補償用感熱素子よりも広い面積で赤外線が放射されることを赤外線反射率の高い赤外線反射層で防止する。また、赤外線反射層とセンサ基材との間に空間があるので、補償用感熱素子およびその部分のセンサ基材の温度は、検出用感熱素子の温度とは異なり、赤外線センサの配置された雰囲気温度を保持するものであり、鍋温度を計測するための温度補償用感熱素子として作用できるものであって、正確に鍋の温度を検出できる。
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、センサ基材は検出用感熱素子と補償用感熱素子との中間部に断熱部を有することにより、中間部の断面積が小
さく、検出用感熱素子から補償用感熱素子への熱流を抑制する断熱部を有するものである。検出用感熱素子が配置された部分のセンサ基材から補償用感熱素子が配置されたセンサ基材へと、熱伝導で熱が移動することで、補償用感熱素子の温度が上昇することを抑制するものであり、低温度から高温度まで正確に温度を検出できる。
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、鍋内の圧力を調整する圧力調整手段を備えたことにより、赤外線センサによる鍋の温度変化の正確な検出と相俟って、鍋内を必要な圧力に制御することができて、調理性能が向上する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1〜図6は、本発明の実施の形態1における炊飯器を示している。
図1に示すように、本実施の形態における電磁誘導加熱式の炊飯器は、米や水などの被調理物を収容し機器本体13に装備する鍋1と、鍋1の底部を加熱する鍋加熱手段2および側面を加熱する鍋側面加熱手段3と、機器本体13を覆う蓋5と、機器本体13内において鍋1を着脱自在に収納する保護枠6と、保護枠6の底部の赤外線透過部7を透過する鍋1からの赤外線を検出する赤外線センサ8と、赤外線センサ8による鍋1の温度検出情報に応じて鍋加熱手段2および鍋側面加熱手段3の加熱量を制御する制御手段12とを備えている。
本実施の形態では、鍋加熱手段2と鍋側面加熱手段3はそれぞれ複数個の加熱コイルで鍋1を誘導加熱する。蓋5は機器本体13の一端に設けた蓋ヒンジ5aを中心に回転するもので、蓋5の下部を構成する蓋カバーに着脱自在に設けられ蓋5が閉じられた状態のときに鍋1の開口部を覆う内蓋4を有している。この内蓋4は炊飯中の蒸気を排出する蒸気孔4aを有している。また、蓋5が閉じられた状態のとき、鍋1と内蓋4の間には隙間ができるが、その隙間は内蓋4に取り付けられたループ状のパッキン4bで封止され、鍋1内は密閉される。
鍋1を収納する保護枠6の赤外線透過部7は、鍋1と赤外線センサ8間に複数個配置されており、鍋1が放射する赤外線を透過する材質の部材で形成されている。具体的には、ハロゲン化合物ガラス、結晶化ガラスやいわゆる赤外線透過性樹脂などが想定されるが、赤外線透過部7の大きさと赤外線センサ8の全体としての熱容量、感熱素子の熱容量により、種々のものが可能であり、鍋1の表面材料が放射する赤外線の透過率が高い材料であれば特に限定するものでない。この赤外線透過部7の下方には鍋1からの赤外線を検出する赤外線センサ8を配置している。また、鍋1を保護枠6に収納すると、保護枠6上端に設けた鍋支持部材6aが鍋1の上端フランジ部を支持することで、鍋1と保護枠6間全体および鍋1の底部と赤外線透過部7間に所定の空隙6bがある。
蓋5の上部には、鍋1内の蒸気を排出する第2の蒸気孔9aと、鍋1で炊飯中に発生する「おねば」の上昇を検出することで吹き零れを防止する球状のうまみセンサ9bとを有する蒸気筒9が配置されている。また、蓋5には内蓋4を加熱するために設けられた加熱コイルなどの内蓋加熱手段10と、内蓋4の温度を検出するために内蓋4の上面に接触する内蓋温度検出手段11がある。
制御手段12は、加熱手段制御部12aと、鍋温度計測制御部12bと、内蓋温度計測制御部12cとを有し、機器本体13の前面に設けられた入力操作部14により入力された信号、および記憶手段(図示せず)に記憶された、浸水工程における温度、温度上昇速
度、時間、炊き上げ工程における温度、温度上昇速度などの値に基づいて、炊飯工程を実行する。炊飯工程において、加熱手段制御部12aは赤外線センサ8および内蓋温度検出手段11の検出信号に基づいて鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段10を制御する。
次に、鍋1の温度を検出するための赤外線センサ8について説明する。
鍋1が高温になると放射する赤外線が、保護枠6の赤外線透過部7を透過して赤外線センサ8に至るように構成されている。ところで、鍋1の表面材料がステンレスのような金属材料と、コーティング樹脂材料とでは赤外線の放射特性が異なる。しかしながら、炊飯器においては、通常は用意された専用の1個の鍋1で炊飯するものであり、予め設定された感熱素子の温度変化で鍋1の温度変化を検出できる。なお、本実施の形態のような赤外線センサ8は熱型センサに分類されるものであり、量子型センサに比べると、一般的に安価であるが、感度が低く、時定数(熱応答時間)が大きいものであり、炊飯器の沸騰維持工程で水が無くなった時のような急速な温度上昇に対応できるものではないが、図2に示すような構成とすることにより、これらの問題を解消している。
すなわち、図2に示すように、赤外線センサ8は、樹脂フィルムのセンサ基材20と、センサ基材20に形成された配線パターン21と、赤外線の吸収によるセンサ基材20の温度変化を検出する複数個の検出用感熱素子22と、センサ基材20の雰囲気温度を検出し複数個の検出用感熱素子22により検出した温度を補償する単一の補償用感熱素子23とを有する。また、センサ基材20の表面には複数個の検出用感熱素子22に相対して設け赤外線を吸収する赤外線吸収層24を配置し、補償用感熱素子23には相対するように赤外線を反射する赤外線反射層25を配置している。さらに、電気的な絶縁性、耐熱性などを有する樹脂材料の保護層26が、複数個の検出用感熱素子22、補償用感熱素子23、配線パターン21などを保護する目的で、センサ基材20の片面を覆っている。
赤外線吸収層24の材質は赤外線反射率の小さい材料として黒色の樹脂材料などの塗料、赤外線反射層25の材質は赤外線反射率の高い材料として研磨されたアルミニウム金属材料などの板金を用いることができるが、特に限定するものではない。センサ基材20の樹脂フィルムの材質は、鍋1が放射する赤外線による温度上昇に対する耐熱性と、配線パターン21を印刷できる絶縁性などがあれば、薄いフィルム形状のポリイミド樹脂のような樹脂材料でよい。赤外線吸収層24と赤外線反射層25は、センサ基材20の表面に接着して一体的としているが、これらを別体に配置することもできる。
なお、図2においては、センサ基材20と、配線パターン21と、検出用感熱素子22と、補償用感熱素子23とは、センサ基材20に、まず検出用感熱素子22と補償用感熱素子23とを例えば印刷するように塗布することで配置し、その後に配線パターン21を配置している。また、図2ではセンサ基材20の厚さが保護層26より薄く、センサ基材20と検出用感熱素子22の厚さが同程度であるように見えるが、これに限定するものではなく、その大きさ、厚さなど形状を本発明の趣旨を逸脱しない範囲で調整してもよいものである。
また、既述したとおり、赤外線透過部7は、鍋1が放射する赤外線を透過する材質の部材で形成されているが、部材を用いることなく単なる開孔で形成して構成を簡単なものとすることもできる。そして、赤外線透過部7は、鍋1と赤外線センサ8間を仕切る仕切部材7aに複数個配置しているものである。この複数個の赤外線透過部7と相対して複数個の検出用感熱素子22が配置されている。
ここで、図3は入力操作部14を示しており、米と水を入れた鍋1を機器本体13にセ
ットし、炊飯スイッチ14aを押すことで、炊飯が開始する。入力操作部14には、かたさ設定スイッチ14bやコース設定スイッチなどがあり、入力表示部15aを見ながら、各種の設定ができる。また、運転中には、炊飯ランプ15b、保温ランプ15c、再加熱ランプ15d、センサお手入れ報知ランプ15eが炊飯、保温などの運転状態に合わせて点灯する。
次に、炊飯工程の各工程の運転方法について説明する。
本実施の形態における炊飯器の炊飯工程は、よく知られているように、図4に示す浸水工程A1、炊き上げ工程A2および蒸らし工程A3の順で構成される。なお、炊き上げ工程A2には鍋1内を高温に維持する工程が行われ、これを沸騰維持工程と呼ぶ。
浸水工程A1は、糊化温度よりも低温の水に米を浸し、予め米に吸水させておくことで、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化させるための工程である。そのため、米の糊化が開始しない温度まで米と水の温度が上昇するように鍋加熱手段2である鍋加熱コイルおよび鍋側面加熱手段3である鍋側面加熱コイルに通電し、鍋1の底面および側面を発熱させる。鍋1の米全体を目的の温度で均一に維持し、鍋1の米の吸水条件を均一に保つことが行われる。浸水工程A1時の所定温度としては米の糊化が起こらない40℃から60℃以下に保持される。
浸水工程A1を所定時間行うと、次に炊き上げ工程A2を実行する。炊き上げ工程A2では、主として鍋加熱手段2で鍋1の底面を発熱させ、炊飯中の米および水の温度を水の沸点まで上昇する。もちろん、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段8で加熱してもよい。
炊き上げ工程A2の加熱途中で、鍋1内の米および水の温度が60℃前後になるとデンプンの糊化が始まる。浸水工程A1で適度に吸水させることで、米内部への水や熱の伝達が十分に行え、米中心部まで糊化が行われ、炊き上げ工程A2の沸騰維持工程に移る。
沸騰維持工程では、底部からの沸騰により水が対流するため、水が米同士の間を激しく流れることにより、鍋1内の米全体に水と熱がまんべんなく供給され糊化が促進される。また、鍋1内の水が沸騰して蒸気となり、蒸気は米の間を通過して上昇して内蓋4の蒸気孔4aを経て第2の蒸気孔9aから機外へ放出される。蒸気が米の間を通過することによりさらに糊化が促進される。
鍋1内の炊飯水が蒸発してほぼ無くなると鍋1の温度が急激に上昇する。この急激な温度上昇により所定の温度を赤外線センサ8が検出したとき、制御手段12は沸騰維持工程を終了し、次の蒸らし工程A3に移る。すなわち、沸騰維持工程の時間は、浸水工程A1において鍋1内に供給する水量、米と水の割合(水加減という)や炊飯量などに依存する。
最後に、蒸らし工程A3では鍋加熱手段2が鍋1の底面のご飯が乾燥したり焦げたりしない程度に鍋1の底面を発熱させ、ご飯の糊化を持続させる。このように蒸らし工程A3においては、ご飯が芯まで糊化するように、ご飯が乾燥したりこげたりしない温度で、且つ鍋1全体、すなわちご飯を高温の状態に保つことが重要である。所定時間(例えば、15分前後)の蒸らし工程A3を行った後、鍋1内の温度を所定温度(例えば、70℃前後)に維持する保温工程を行う。このような運転は、制御手段12が炊飯工程および保温工程の進行、また蓋5の開閉、入力操作部14からの入力などに応じて、鍋加熱手段2などを動作させることで実現される。
次に、赤外線センサ8の動作について詳述する。
炊飯工程で、鍋加熱手段2が鍋1を加熱すると、鍋1の開口部が内蓋4で覆れており、加熱された鍋1に収納された米と水の温度が上昇し、鍋1の温度が上昇する。これにより、鍋1の外側面から保護枠6に向けた赤外線の放射が発生し、赤外線センサ8が赤外線を検出する。赤外線センサ8を形成する樹脂フィルムのセンサ基材20は、赤外線吸収層24が配置された部分では赤外線が吸収され温度が上昇するので、配線パターン21に配置された複数個の検出用感熱素子22がセンサ基材20の温度変化を検出する。
一方、センサ基材20は、赤外線反射層25が配置された部分では赤外線は吸収されずに、温度変化が発生せずに、配線パターンに配置された補償用感熱素子23はセンサ基材20の設置されている周囲温度を検出する。
特に、赤外線透過部7が複数個の検出用感熱素子22に対して個別に赤外線を放射することで、複数個の赤外線透過部7を透過する赤外線にて鍋1の温度を複数箇所で測定し、鍋温度計測制御部12bで鍋1温度の分布を検出し、鍋加熱手段2の加熱量、さらには鍋側面加熱手段3や内蓋加熱手段10を制御することで、炊飯の各工程で必要な温度と加熱量を得る。
なお、赤外線センサ8を鍋1の外側で機器本体13に配置するとともに、鍋1の上部を蓋5で覆う構成であるので、少なくとも炊飯や保温の運転中で蓋5が閉じられている時には、赤外線センサ8には機外の物体から放射される赤外線が到達しない。赤外線センサ8による温度計測に対する「外乱」がほとんどないので、鍋1の温度検出情報は高精度に維持される。
制御手段12は、複数個の検出用感熱素子22と補償用感熱素子23とで、鍋1の温度を高速に検出するとともに、このような鍋1の温度検出情報に応じて鍋加熱手段2などの加熱量を高速に制御する。したがって、鍋1の温度を高速に検出するとともに、温度検出精度をより一層高め、適切な鍋加熱手段2の加熱量制御ができる。すなわち、炊飯工程の各工程において必要な温度と加熱量を最大限に得るものであり、ご飯の加熱ムラが小さく十分に糊化を促進し全体をおいしく炊き上げることができる。
ここで、鍋支持部材6aにより鍋1の底部と保護枠6との間には空隙6bを設けたものであるので、両者が直接接触することによる高温度の鍋1から低温度の保護枠6への熱伝導が発生しない。また、鍋加熱手段2が誘導加熱方式である場合には、誘導加熱用の高周波電流が流れる加熱コイルおよび保護枠6よりも鍋1の温度が高いものであるから、鍋1から保護枠6および空隙6bに向かって赤外線が放射され、保護枠6から鍋1および空隙6bへの赤外線の放射はない。また、赤外線センサ8は、鍋1の底部との間に空隙を設けて鍋1の底部に相対して配置しているので、非接触で正確に鍋1の温度を検出できる。このような構成によって、鍋1の底部の温度および鍋1から放射する赤外線が安定し、赤外線センサ8はより正確に鍋1の温度を検出できる。
また、鍋1が放射する赤外線が透過する赤外線透過部7を仕切部材7aにより保護枠6に形成したことで、鍋1からの赤外線は保護枠6の複数個の赤外線透過部7を透過して赤外線センサ8に到達し、鍋1の温度を測定できることに加えて、仕切部材7aが鍋1と赤外線センサ8との間に配置されることにより赤外線センサ8に水滴が滴下することや、埃が堆積することを防止できるので、鍋1の温度測定が正確で、長期間炊飯性能を維持できる。
また、赤外線吸収層24は黒色の赤外線反射率の小さい塗料などで形成され、検出用感
熱素子22を覆うようにセンサ基材20に塗布したものでよく、鍋1の底部が放射する赤外線を受熱すると同時に、熱容量の小さいフィルム形状のセンサ基材20を加熱するものであるので、鍋1が短時間で温度上昇する場合にも、その温度変化により高速に追従して温度上昇し、より正確に温度を検出できる。
また、赤外線透過部7が複数個であるので、図5および図6に示すように、赤外線透過部7に米粒などの異物aが付着し、鍋1の放射する赤外線が相対する赤外線吸収層24および検出用感熱素子22に届かず、温度が上昇しない場合にも、他の赤外線透過部7を透過する赤外線が相対する赤外線吸収層24および検出用感熱素子22を加熱し、鍋温度計測制御部12bにより鍋1の温度検出情報が得られる。この温度検出情報に基づき、通常と同様に、制御手段12は鍋加熱手段2などの加熱量を制御して、おいしく炊き上げることができる。
さらに、このような場合には、炊飯運転や保温運転終了後に、図3に示すセンサお手入れ報知ランプ15eを点滅させて、赤外線透過部7のお手入れが必要である旨を報知することができる。すなわち、複数個の赤外線透過部7のうち、少なくとも1ヵ所の検出用感熱素子22の温度変化が小さい場合には、これを使用者にお知らせするとともに炊飯を通常通りに実行できる。
さらに、全ての検出用感熱素子22の温度変化が小さい場合には、運転を一時停止するとともに、センサお手入れ報知ランプ15eを点滅させて、赤外線透過部7のお手入れを催促してもよいものである。また、蓋5を開放し、鍋1を取り出して、複数個の赤外線透過部7のお手入れを終了した場合には、鍋1を再度セットし、蓋5を閉じた後に、炊飯スイッチ14aを押すことで、継続して炊飯するようにしてもよいものである。
すなわち、センサお手入れ報知ランプ15eは、複数個所の鍋温度の変化から異常をお知らせする異常報知手段を構成しているものである。
このように、本実施の形態では、鍋と赤外線センサ間に、鍋からの赤外線を透過する複数個の赤外線透過部を有し、赤外線センサは、センサ基材と、複数個の赤外線透過部と相対して設けセンサ基材の温度変化を検出する複数個の検出用感熱素子と、複数個の検出用感熱素子により検出した温度を補償する補償用感熱素子と、検出用感熱素子に相対して設け赤外線を吸収する赤外線吸収層と、補償用感熱素子に相対して設け赤外線を反射する赤外線反射層とを有する炊飯器としたものである。これによって、複数個の検出用感熱素子と補償用感熱素子とによる鍋の温度検出情報に応じて鍋加熱手段の加熱量を制御することで、鍋の温度を高速に検出するとともに、温度検出精度をより一層高め、適切な鍋加熱手段の加熱量制御ができる。
なお、本実施の形態では鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段10は、誘導加熱によるものを用いているが、それぞれ電気ヒータやガス燃焼など熱源は何でもよく、鍋加熱手段2以外は設けなくてもよい。また、それぞれが単一のリング形状であってもよく、複数個に分割されてあってもよい。もちろん、複数個のコイルで構成されてもよい。
なお、赤外線センサ8および内蓋温度検出手段11は、通常運転での温度から異常時の高温度までの範囲を検出できるものであればよい。
なお、入力操作部14に炊飯する米種(白米、玄米、無洗米)や新鮮度(新米、普通米、古米)などを選択する米種入力部(図示せず)を設け、制御手段12の記憶手段に、各米種や新鮮度に適切な温度上昇速度をそれぞれ記憶しておき、選択された米種や新鮮度に
応じた温度上昇速度で炊き上げ工程を実行することにより、芯が残らない適切なかたさに炊き上げることができる。
なお、本実施の形態では、鍋1の温度検出情報を得るために、非接触の赤外線センサ8単独で構成しているが、従来の接触式温度検出手段を併用して、鍋温度計測制御部12bで演算処理してもよい。
なお、赤外線センサ8の補償用感熱素子23を保護枠6下方に配置することで、鍋1の放射する赤外線を遮蔽する構成としてもよい。言い換えると、赤外線反射層25を保護枠6で形成してもよいものである。
なお、鍋1の温度を広範囲から測定できるように保護枠6の全体あるいは鍋1の底面に相対する部分を赤外線透過材料で形成してもよい。
なお、赤外線センサ8を鍋1の略中央の下方に配置しているが、鍋加熱手段2の近傍や、その内部などに設けてもよく、これに限定するものではない。また、鍋加熱手段2の近傍に配置することで、鍋1の加熱部で最も温度が高く、さらには温度上昇の変化が大きい部位を直接計測することが可能となり、例えば焦げる直前まで鍋1に大きな熱量を与えることができる。さらには、運転コースのひとつとして、適度な焦げを発生させて、食感と風味を変えるコースを設定することも可能となる。
なお、本実施の形態においては、鍋1の温度が赤外線センサ8の取り付け部の雰囲気温度より高い場合を想定して説明している。もちろん、炊飯運転開始時に、米と水の温度、鍋1の温度が赤外線センサ8の温度より低い場合もある。そのような場合には赤外線センサ8における検出用感熱素子22の上面を覆うセンサ基材20の表面に形成された赤外線吸収層24が、より低温度である鍋1の底面に向けて赤外線を放射するので、検出用感熱素子22の温度は下がる。一方、補償用感熱素子23の上面を覆うセンサ基材20の表面に形成された赤外線反射層25から赤外線の放射はない。その結果、鍋1の温度が雰囲気温度より高温度の場合と同様、鍋温度計測制御部12bで鍋1の温度検出情報が得られて、制御手段12は鍋加熱手段2などを制御して、炊飯することができる。
(実施の形態2)
図7、図8は、本発明の実施の形態2における炊飯器の赤外線センサを示している。炊飯器および赤外線センサの構成は、実施の形態1と同様であるのでその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図7に示すように、本実施の形態における赤外線センサ8は、複数個の検出用感熱素子22、すなわち赤外線吸収層24と、補償用感熱素子23、すなわち赤外線反射層25とのセンサ基材20の中間部に開口部などの断熱部27を設け、複数個の検出用感熱素子22から補償用感熱素子23への熱流を抑制するものである。すなわち、検出用感熱素子22が配置された部分のセンサ基材20から補償用感熱素子23が配置されたセンサ基材20に熱伝導で熱が移動することを阻止し、補償用感熱素子23の温度が上昇することを抑制するものであり、低温度から高温度までより正確に温度を検出できる。
また、図8に示すように、複数個の検出用感熱素子22を単一の赤外線吸収層24で覆い、補償用感熱素子23を覆う赤外線反射層25とのセンサ基材20の中間部に断熱部27を設け、複数個の検出用感熱素子22から補償用感熱素子23への熱流を抑制するものであってもよい。これにより、検出用感熱素子22が配置された部分のセンサ基材20から補償用感熱素子23が配置されたセンサ基材20に熱伝導で熱が移動することを阻止し、補償用感熱素子23の温度が上昇することを抑制する。この場合には、複数個の赤外線
透過部7を透過する赤外線でセンサ基材20を加熱することで、平均温度を測定することができる。
このように、本実施の形態における赤外線センサは、断熱部を設けることにより、検出用感熱素子が配置された部分のセンサ基材から、補償用感熱素子が配置されたセンサ基材へと熱伝導で熱が移動して補償用感熱素子の温度が上昇することを抑制するものであり、低温度から高温度まで正確に温度を検出できる。
なお、センサ基材20として、例えば、樹脂と金属粉とを組み合わせて、図の垂直方向には熱移動が可能であるが、横方向には熱移動ができないような構成としたり、センサ基材20の中間部に断熱部材を設けたりすることで、開口部などの断熱部27による断熱部と同様な効果を得ることができる。
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3における炊飯器の赤外線センサを示している。炊飯器および赤外線センサの構成は、実施の形態1と同様であるのでその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図に示すように、本実施の形態における赤外線センサ8は、センサ基材20に、まず配線パターン21を配置し、その後に複数個の検出用感熱素子22と単一の補償用感熱素子23を配置している。また、赤外線センサ8におけるセンサ基材20は基本構成部材であり、これに絶縁層を追加してもよい。
また、赤外線反射層25を、図のように、赤外線反射率の高い板金で形成し、同時に補償用感熱素子23を覆うようにセンサ基材20と赤外線透過部7との中間に空隙を設けて配置している。この構成により鍋1の底部から補償用感熱素子23の配置された部分のセンサ基材20に赤外線が放射されることを防止することができる。さらに赤外線反射層25とセンサ基材20との間に空隙があるので、補償用感熱素子23およびその部分のセンサ基材20の温度は、検出用感熱素子22とは異なり、赤外線センサ8の配置された雰囲気温度を保持するものであるから、より高精度な補償用感熱素子23として作用できるものであって、より正確に温度を検出できる。
このように、本実施の形態における赤外線センサは、赤外線反射層は、補償用感熱素子を覆うようにセンサ基材と鍋との間(具体的にはセンサ基材と赤外線透過部との間)に配置したことにより、鍋の底部から補償用感熱素子の配置された部分のセンサ基材に、補償用感熱素子よりも広い面積で赤外線が放射されることを防止する。さらには、赤外線反射層とセンサ基材との間に空隙を設けると、補償用感熱素子およびその部分のセンサ基材の温度は、検出用感熱素子のように鍋の温度に影響されず、赤外線センサの配置された雰囲気温度をほぼ保持するものである。すなわち、検出用感熱素子と補償用感熱素子とにより、正確に鍋の温度を検出できる。
(実施の形態4)
図10〜図12は、本発明の実施の形態4における炊飯器を示している。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
図10に示すように、本実施の形態における炊飯器は、電磁誘導加熱式であり、圧力調整手段31を有し、炊飯工程中に鍋1内の圧力を大気圧以上に高める点で実施の形態1と相違するものである。なお、機器本体13内には室温検出手段35をも有している。
圧力調整手段31は、蒸気孔4aを開閉する球状の調圧ボール31aと、球状の調圧ボ
ール31aを移動させて蒸気孔4aを開閉する調圧ボール駆動手段31bと、鍋1内の圧力を検出する圧力検出手段31cとにより構成される。調圧ボール31aによって蒸気孔4aを閉じ、鍋1内に蒸気を密封することより鍋1内の圧力を大気圧以上にする。また、調圧ボール31aを移動させて蒸気孔4aを開放し、蒸気孔4aと蓋5に設けられた蒸気通路を通じて、鍋1内の蒸気を機外へ放出することにより鍋1内の圧力を大気圧と同等にする。このように、この圧力調整手段31は鍋1内の圧力を高める機能を発揮するものであるから、加圧手段であるとも言える。
図11は本実施の形態における入力操作部14であり、米と水を入れた鍋1を本体13にセットし、炊飯スイッチ14aを押すことで、炊飯が開始する。入力操作部14には、かたさ設定スイッチ14bやコース設定スイッチなどがあり、入力表示部15aを見ながら、各種の設定ができる。また、運転中には、炊飯ランプ15b、保温ランプ15c、再加熱ランプ15d、センサお手入れ報知ランプ15e、圧力ランプ15fが炊飯、保温などの運転状態に合わせて点灯する。
次に、炊飯工程の各工程について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
図12における炊飯工程において、赤外線センサ8は鍋1の底面の温度を検出し、制御手段12へと信号を送る。赤外線センサ8よりの信号に基づき、制御手段12は浸水工程A1、炊き上げ工程A2、蒸らし工程A3に大分された炊飯工程のそれぞれにおいて、鍋1の内部の水と米の状態が適正値として設定された温度や所定時間に維持されるよう、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3、内蓋加熱手段10のそれぞれの加熱コイルへの通電量を制御する。
すなわち、鍋加熱手段2と鍋側面加熱手段6は制御手段12より供給される電流で誘導加熱により鍋1の底と側面を発熱させる。同様に、内蓋加熱手段10も制御手段12より供給される電流で誘導加熱により内蓋4を発熱させる。また、浸水、炊き上げ、蒸らしの各工程A1〜A3において、球状の調圧ボール31aの開閉状態を切り替えることなどにより、炊飯中の米の温度制御を行う。
本実施の形態では、「圧力炊飯」を行うものであるから、浸水工程A1、炊き上げ工程A2、蒸らし工程A3のうち、通常は炊き上げ工程A2では鍋1内の圧力を大気圧以上に高め、100℃以上に加熱するものである。そのために、炊き上げ工程A2の開始時には圧力調整手段31である調圧ボール駆動手段31bにより蒸気孔4aを閉じて鍋1内を密閉しておく。そして鍋加熱手段2が鍋1を加熱し、鍋1内の水と米が加熱され、水の沸騰により蒸気が生成すると、蒸気が鍋1内に密封されるので、鍋1内の圧力を大気圧より高圧に保持することができる。すなわち、水の沸点を高め、加圧した「高温高圧」状態で炊飯する。鍋1全体のご飯をすばやく加熱し、米澱粉の糊化を行う。
もちろん、この炊き上げ工程A2において、炊飯時間を短縮するために急激に沸騰させると、米表面が先に糊化してしまい米内部への水や熱の伝達が十分に行えず、特に米中心部の糊化が完了しない状態で炊飯工程が終了するため、粘りのないパサパサしたご飯になってしまう。しかしながら適度な浸水工程A1を経た米は、鍋1内の圧力が大気圧よりも高いため、100℃以上の水で炊き上げることができ、温度上昇速度を高めて急速に沸騰させ、100℃の水で炊く場合に比べて単位時間の加熱量が増え、糊化を促進させることができる。所定の「高温高圧」で炊き上げを実行していることを、圧力検出手段31cおよび内蓋温度検出手段11が検出すると、炊き上げ工程A2の後半部分である沸騰維持工程に移る。
沸騰維持工程では、制御手段12は圧力調整手段31の調圧ボール駆動手段31bを動
作させ調圧ボール31aを移動し、蒸気孔4aを開放する。鍋1内の圧力を大気圧と同等にしながら、鍋加熱手段2などの加熱によって沸騰を維持する。炊き上げ工程A2で最高温度および最高圧力による圧力処理を経た米の含水率は高くなっているため、米の吸水に要する時間を短縮することができる。これにより、炊き上げ工程A2、沸騰維持工程において水を加熱する加熱エネルギーの消費電力量を抑えることができる。
また、沸騰維持工程では、鍋1の底部からの沸騰により水が対流するため、水が米同士の間を激しく流れることにより、鍋1内の米全体に水と熱がまんべんなく供給され糊化が促進される。また、鍋1内の水が沸騰して蒸気となり、蒸気は米の間を通過して上昇して内蓋4の蒸気孔4aから圧力調整手段31を経て機外へ放出される。蒸気が米の間を通過することによりさらに糊化が促進される。
鍋1内の炊飯水が蒸発してほぼ無くなると鍋1の温度が急激に上昇する。この急激な温度上昇により所定の温度を赤外線センサ8が検出したとき、制御手段12は沸騰維持工程を終了し、次の蒸らし工程A3に移る。すなわち沸騰維持工程の時間は、浸水工程A1において鍋1内に供給する水量、米と水の割合(水加減という)や炊飯量などに依存する。
さらに、蒸らし工程A3で発生した余分な蒸気やご飯の付着水などは、使用者のほぐす操作で除去することが必要であるが、一方、保温工程では蒸気の流出はご飯の乾燥を進行しておいしさを低下させるので、このような蒸気の流出は抑制する必要がある。そこで圧力調整手段31の動作により、鍋1内の蒸気の流出を抑制することが行われる。
なお、蒸気孔4aを閉じ、蒸気の充満により鍋1内の圧力を大気圧より高圧に保持することで、加圧した状態で蒸らすこともできる。100℃以上の高温蒸気は細かい粒子となって、鍋1内の米の隙間を通り鍋1内の底部にも行き渡り、米の一粒、一粒を包み込む。高温蒸気が鍋1内のご飯にくまなく供給されて、糊化が均一に持続される。
なお、圧力調整手段31を、鍋1内の蒸気を放出する蒸気孔4aを開閉する調圧ボール31aと、調圧ボール駆動手段31bと、圧力検出手段31cとで構成することにより、炊飯量や水加減など、鍋1内で生成される蒸気量の変動による、鍋1内の圧力変化を検出して、蒸気孔4aの開放時間を制御し、蒸気の放出量を調整することができる。これにより、炊飯の各工程で所定の圧力および温度に制御するものであり、圧力の低下を確認し、所定の高温高圧に保持することで炊飯性能が安定するものである。
なお、米種に応じて、炊飯の各工程で蒸気孔4aを閉じて、必要な高温高圧の状態に保持することもできるので、例えば、白米と無洗米、雑穀米、発芽玄米、玄米などに合わせた高温高圧を得ることで、炊飯性能がより安定する。
なお、鍋1内の圧力を検出するために、圧力検出手段31cに代えて、鍋1内の温度を計測できる温度検出手段を設けてもよい。
なお、保温工程において、所定時間の間隔で、圧力調整手段31の球状の調圧ボール31aで蒸気孔4aを閉じ、鍋1内を密閉するとともに、減圧手段(図示せず)を作動させ、鍋1内の圧力を減圧することで、鍋1内の空気や保温臭を追い出し、保温したご飯のおいしさを維持することも可能なものである。
次に、赤外線センサ8の構成と動作を説明する。
赤外線センサ8による鍋1の温度検出の構成は実施の形態1と同様ではあるが、圧力調整手段31と併用することで、さらに炊飯性能が向上する。炊き上げ工程で沸騰が開始し
、鍋1内の温度が上昇し、密封された蒸気で鍋1内が大気圧以上、100℃以上の「高温高圧」になることを内蓋温度検出手段11および圧力検出手段31cで検出する。ここで鍋加熱手段2による加熱を継続することで、鍋1の底部をさらに加熱し、鍋1の上部より部分的な高温高圧状態になる直前に、赤外線センサ8で鍋1の表面温度を高速に検出し、制御手段12は加熱手段制御部12aにより鍋加熱手段2を停止する。すなわち、ぎりぎりの最高温度、最高圧力まで加熱して、米の糊化を促進させる。また、圧力調整手段31により鍋1内を大気圧に開放し、鍋1内を必要な圧力に制御することができて、炊飯性能が向上する。
また、通常炊飯より高温高圧で炊飯することで、玄米、発芽玄米などを比較的短時間でやわらかく炊き上げられるという点に優れているが、さらに赤外線センサ8で鍋1内の温度を高速に、高精度に検出できるので、炊飯の各工程でぎりぎりの高温度まで鍋加熱手段2で加熱することができて、加熱量の増大が図れて、炊飯性能が向上するものである。
なお、入力操作部14に炊飯する米種を選択する米種入力部(図示せず)を設け、各米種に適切な圧力値を記憶手段にそれぞれ記憶しておき、選択された米種に応じた圧力値になるよう圧力調整手段31により調節することにより、各米種に適切な温度、圧力で炊飯することができる。例えば、玄米の場合は、白米が選択された場合よりも圧力値を高くすることにより、かたさやぱさつきがなく炊き上げることができる。また、軟質米と硬質米、新米と古米、白米と玄米などより細かく米種を選択できるようにすることにより、より各米種に対して適切な炊飯を行うことができる。
このように、本実施の形態では、鍋内の圧力を調整する圧力調整手段を備え、赤外線センサが検出する鍋の温度に基づいて、制御手段は鍋内の圧力を調整するようにしたことにより、鍋内が発生する蒸気で充満され、さらに加熱を継続し高温度で大気圧以上の蒸気で充満された場合に、赤外線センサが鍋の温度を高速に温度検出することで、鍋内の温度変化を正確に検出する。これにより、炊飯の各工程において、適切なタイミングで圧力調整手段により鍋内を大気圧に開放したり、大気圧以上に高めたり、鍋内を必要な圧力に制御することができて、炊飯性能が向上する。
なお、圧力調整手段31は内蓋4の蒸気孔4aを開閉することにより鍋1内の圧力を調節したが、鍋1内の圧力を制御できるものであればどのようなものでもよい。
なお、炊飯工程または保温工程で、鍋1内の圧力を大気圧より高圧にした「圧力加熱」と鍋1内に蒸気発生手段(図示せず)が生成した蒸気を投入する「蒸気加熱」を交互に繰り返し行うことにより、上下の加熱ムラを無くすとともに、投入した蒸気を密封して加熱して高圧にすることで、炊飯工程ではより柔らかく炊き上げることもできる。また、炊飯工程や保温工程では投入した蒸気をさらに鍋1の底部へと浸透させるものであり、鍋1内の上下のムラなく、乾燥させずに加熱と加水ができるので、糊化を促進しておいしいご飯に炊き上げる炊飯性能と、適切な温度でしっとりとした保温ご飯に維持する保温性能とを得るものである。
なお、保温ご飯または冷めたご飯を加熱する再加熱工程で、少なくとも鍋1内の圧力を大気圧より高圧にする「圧力加熱」を実施することにより、圧力調整手段31により鍋1内の蒸気を密封し、蒸気発生手段(図示せず)で生成し蒸気投入口(図示せず)から投入した蒸気を加熱して高圧にすることで、蒸気をさらに鍋1の底部へと浸透させるものである。短時間でムラなく加熱と加水を実行できるので、ご飯を乾燥させずにおいしいご飯に再加熱できるものである。
なお、圧力調整手段31の球状の調圧ボール31aを移動させる調圧ボール駆動手段3
1bは、電動機、ソレノイド、温度に応じて伸縮する形状記憶合金などにより形成することができるものであるが、一般的なよく知られた技術である。
なお、蒸気発生手段(図示せず)が鍋1内に供給する蒸気を、さらに加熱する蒸気加熱手段(図示せず)を内蓋4、内蓋加熱手段10などで構成することにより、蒸気の温度を水の沸点を超える温度の高温蒸気にして、鍋1内に投入することができる。鍋1内の温度が圧力炊飯の炊き上げ工程では100℃以上であるのに対し、それと同程度以上の高温度の蒸気を投入するものであり、蒸らし工程でもご飯の温度を下げずに高温を維持できるものであり、赤外線センサ8により焦げる直前まで加熱を継続した米に高温蒸気でさらに甘みを引き出すことで、おいしさが向上する。
なお、白米と玄米、新米と古米など、米の種類、状態に応じ、赤外線センサ8による温度検出情報によって高精度に加熱量を調整し、蒸気発生手段(図示せず)と内蓋加熱手段10の動作を制御することで、必要な温度の高温蒸気を投入する構成が可能であり、十分な糊化による甘み、粘りがある良好な食味のご飯に炊き上げ、炊飯性能が向上するものである。また、炊飯工程後の保温工程や、冷めたご飯に対し、使用者が必要に応じてご飯を温めるための再加熱工程などにおいても、蒸気加熱を導入することで、おいしさを長時間持続することができる。
また、従来から行われているように、米の種類に応じ、炊き上げ工程の圧力と温度条件を設定し、選択することで、それぞれに適した炊飯を実現し、ご飯の粘り、硬さなどを制御することができるものであり、食味のバラツキを抑制し、食味の向上が図れる。