本発明の炊飯器は、被炊飯物を入れる内鍋と、前記内鍋を取り出し可能に収容する内鍋収容部を有する炊飯器本体と、前記内鍋収容部を開閉可能に覆う蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記内鍋の温度を検出する温度センサと、前記内鍋内部の圧力を調整する圧力調整手段と、前記加熱手段と前記圧力調整手段とを制御して、少なくとも、炊き上げ工程、追い炊き工程、むらし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記炊き上げ工程から前記追い炊き工程にかけて、連続して前記内鍋内部の圧力を高圧状態に維持するとともに、前記追い炊き工程において、前記圧力調整手段を開放して前記内鍋内部の圧力を低下させる。
本発明の炊飯器は、上記構成を備えることで、連続して加熱を行って内鍋内部を沸騰状態に保つ炊き上げ工程から間欠的に加熱を行う追い炊き工程にかけて、内鍋内部の圧力を高圧状態に保つとともに、追い炊き工程で内鍋内部の圧力を低下させる。炊き上げ工程から追い炊き工程まで、連続して高圧状態に保つことで、お米に甘みや粘り気を与えることができ、また、追い炊き工程で内鍋内部の圧力を低下させることで、お米の上部に集まったおねばを撹拌することができるので、炊きあがったお米のツヤを増すことができる。この結果、甘みやもちもち感がより一層強く、ハリとツヤのあるお米を炊き上げることができる。
上記本発明にかかる炊飯器において、前記制御手段は、前記追い炊き工程における複数回の間欠的な加熱が開始された後であって最後の加熱よりも前のタイミングで、前記内鍋内部の圧力を低下させることが好ましい。このようにすることで、内鍋内部に行き渡ったおねばを、その後に行う追い炊き工程での最後の加熱によって十分に糊化することかでき、炊きあがったお米の甘みを一層増すことができる。
また、前記追い炊き工程において、前記内鍋内部の圧力を前記高圧状態の圧力よりも低く大気圧よりも高い圧力である低圧状態へと低下させ、前記むらし工程における前記加熱手段による最後の加熱を行った後に前記内鍋内部の圧力を大気圧へと低下させることが好ましい。このようにすることで、むらし工程の開始時点で内鍋内部を大気圧よりも高い低圧状態に保つことができ、より効果的な高い温度でお米の周りの糊化を促進したり、焦げ目を付けたりすることができる。
なお、前記内鍋が非金属製鍋であることが好ましい。このようにすることで、非金属鍋の蓄熱効果を活かして、よりおいしいお米を炊くことができる。
以下、本発明にかかる炊飯器の実施形態として、内鍋が非金属製の土鍋釜であり、内鍋内部の圧力を圧力弁により調節して圧力炊飯を行う炊飯器を例示して説明する。
図1は、本実施形態の炊飯器の外観を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態の炊飯器の断面構成を示す垂直方向断面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の炊飯器は、米と水、さらに、具入り炊飯モードでは野菜や豆類、肉類などの各種の具である被炊飯物を入れる内鍋30と、この内鍋30を内鍋収容部20aに収容することができる炊飯器本体20と、炊飯器本体20の内鍋収容部20aを開閉可能に覆う蓋体10とを有している。なお、図1、および、図2は、いずれも内鍋収容部20aを覆う蓋体10が閉じた状態を示している。
蓋体10には、ユーザが炊飯器に各種設定を与えるための各種の操作ボタン11と、操作ボタン11による操作状況や炊飯器の動作状態等を表示するための液晶パネルその他の画像表示パネルにより形成された表示部12が配置されている。操作ボタン11は、炊飯ボタン、保温ボタンなどの動作を指示するボタンと、白米炊飯モードや具入り炊飯モードなどの調理メニューを選択したり、保温時間やタイマーを設定したりするメニューボタンとを含む各種のスイッチ類を含む。
蓋体10には、蓋体10が閉じた状態で内鍋内部の圧力を所定の圧力に調整可能な、圧力調整手段である圧力弁14が配置されている。
図2では、本実施形態の炊飯器の圧力弁14として、一例であるボール状圧力弁を図示している。なお、図2では、切断面の関係から一つのボール状圧力弁14しか示されていないが、重さの異なる2種類のボール状圧力弁と、これらの圧力弁の動作を規制する規制手段を備えることにより、内鍋内部の気圧を、最も気圧の高い高圧状態と、高圧状態よりは低く大気圧よりも高い気圧である低圧状態、大気圧の状態の3種類の圧力状態とすることができる。
なお、圧力調整手段として圧力弁を用いる場合には、弁の数や形状は上記説明したものに限られず、円板や矩形板などの板状の圧力弁など他の形状の圧力弁を1つ、2つ、もしくは、3つ以上用いるなど、さまざまな形態を採ることができる。さらに、圧力調整手段としては、弁を用いる以外にも、例えば、内鍋内部の圧力を測定する圧力センサと、この圧力センサで検出される圧力の値に基づいて適宜開閉動作を行う、ピエゾ素子などの電動素子または機械的開閉手段を用いた通気口を用いるなど、さまざまな形態が考えられる。
内鍋30内部の圧力が所定値より高いために圧力弁14が開放された場合は、内鍋30内部で発生した蒸気が、蓋体10の上面に形成された調圧キャップ13を経由して、調圧キャップ13に形成された蒸気放出口13aを介して外部に放出される。調圧キャップ13は、内鍋30方向に向かう経路15に接続されているため、調圧キャップ13内で気液分離したおねばは内鍋30内に戻されるようになっている。
蓋体10の上面における手前側中央部分には、ロックボタン16が設けられ、蓋体10が閉じている状態でロックボタン16を押し込むと、蓋体10のロックが外れ、図示しないバネ機構により蓋体10全体が図1における後方(奥)側に開くようになっている。
図2に示すように、蓋体10内部の表示部12の下側に位置する部分に、各種操作ボタン類11に接続された動作回路と、表示部12での表示画像を出力する駆動回路などが含まれた回路部17が配置されている。また、本実施形態の炊飯器において、ユーザにより設定された炊飯モードに従って炊飯プログラムの制御を行う、制御回路が搭載された制御手段であるマイコン(図示省略)も、回路部17を構成する回路基板上に搭載されている。
本実施形態の炊飯器では、回路部17に配置されたマイコンに含まれた制御回路が、後述する温度センサからの出力に基づいて加熱手段23(23a、23b、23c)への通電を制御して、内鍋30の温度制御を行うとともに、前記した圧力調整手段である圧力弁14を制御して、内鍋30内部の圧力を所定の値に調整する。
なお、加熱手段と圧力調整手段を制御する制御回路が搭載されたマイコンが、表示部12の下側の回路部17に配置されていることは一例に過ぎない。加熱手段の調整と圧力調整手段の調整とが、それぞれ別の回路基板上に搭載された電気回路で行われる場合もあり、また、加熱手段と圧力調整手段とを制御する制御回路が、蓋体10内の表示部12の下部ではなく、例えば炊飯器本体20内部に配置された回路基板上に形成される場合もある。
蓋体10は、炊飯器本体20の背面側上部に配置されたヒンジ機構21により炊飯器本体に対して回動することで、内鍋収容部20aを開閉することができる。そして、蓋体10が閉じられたとき、ロックボタン16に連動する図2では図示しないロック機構により、蓋体10が炊飯器本体20の上面にしっかりと押しつけられた状態で固定される。
蓋体10と炊飯器本体20とがしっかりと押しつけられた状態で固定された際、蓋体10の内側表面に配置されたパッキン材18が、内鍋30の内側面30aの上端部近傍と内鍋30の上端面部分30bとに当接して、蓋体10は、内鍋30の上部開口を気密状態で封鎖することができる。本実施形態の炊飯器では、内鍋30は、内鍋収容部20aの底部に配置された弾性支持機構22によって蓋体10側に付勢されているため、気密状態を確実に維持することができ、内鍋30内部を例えば1.25気圧などの所定の高圧状態とすることができる。
炊飯器本体20の内鍋収容部20aの底面と側面とを構成する周囲部分には、加熱手段23としての第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23b、加熱ヒータ23cが設けられている。
第1のワークコイル23aは、内鍋30の底面31に面して内鍋収容部20aの底面に配置されている。内鍋収容部20aの底面中央には、内鍋30の底面中央部の温度を検出する温度センサであるセンターセンサ24が配置されているため、第1のワークコイル23aは、平面視すると中央に穴の開いた円環(ドーナツ)状になっている。
第2のワークコイル23bは、内鍋30の底面31と側面32との境界に位置する傾斜部分33に対向するように配置されている。第2のワークコイル23bも第1のワークコイル23aと同様に円環状となっている。
これら第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23bは、いわゆる高周波コイルであり、コイルに流れる電流により渦電流が生じて誘導加熱が起きるように、内鍋30の第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23bに対向する部分の外面側に、図示しない発熱体が配置されている。発熱体は、銀もしくはステンレスなどの金属薄膜がコーティングされたもの、もしくは、金属箔が転写されたものなどとして非金属製の内鍋30の表面に形成されている。そして、第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23bに電流を流すことによって発熱体が発熱し、この発熱体の発熱が非金属製の内鍋30全体の温度を上昇させる。
なお、本実施形態では、発熱体が内鍋30の外表面の、ワークコイル23a、23bに対向する部分に形成された例を示したが、発熱体はワークコイル23からの誘導起電力により発熱して非金属製の内鍋30の温度を上昇させることができる、いずれの位置に配置することもできる。
内鍋30の側面32に対向する内鍋収容部20aの側壁部分には、側面ヒータ23cが配置されている。この側面ヒータ23cは、電流が流れることにより発熱してその輻射熱で内鍋を温めるものであり、炊飯工程後の保温工程において内鍋30を保温するために使用される。また、炊飯時に、側面ヒータ23cを第1のワークコイル23aおよび第2のワークコイル23bとともに、内鍋30の加熱に使用することができる。
本実施形態の炊飯器では、これら第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23b、側面ヒータ23cが加熱手段23を構成しており、蓋体10の回路部17のマイコンに搭載された制御手段により、それぞれに流れる電流量が制御されることで、加熱手段23のオンとオフ、また、オンの場合の発熱量の制御が行われる。なお、加熱手段23として、上記の第1のワークコイル23a、第2のワークコイル23b、側面ヒータ23cの他にも、内鍋収容部20aの周囲の他の部分や蓋体10の内部に、加熱のためのコイルやヒータなどを配置することも可能である。
また、本実施形態の炊飯器では、内鍋収容部20aの底部、具体的には、内鍋30の底面31から傾斜部分33にかかる部分と対向する位置に配置された保護枠として、内鍋30と同様のセラミックなどの非金属材料により構成される、かまど部材25が配置されている。このように、発熱体が配置されている内鍋30の部分に対向する位置の内鍋収容部20aに、非金属製の保護枠であるかまど部材25を配置することで、この保護枠部分を樹脂で構成する場合よりも耐熱性が向上する。このため、内鍋30の最高温度としてより高い温度を許容することができ、非金属製の内鍋30の蓄熱効果をより強く発揮させることができる。この結果、さらにおいしいお米を炊くことができる。
炊飯器本体20の背面側に配置されたヒンジ機構21の下部には、炊飯器に電力を供給するために商用電源に接続される、図1に示した電源プラグ26に接続された電源コードを収納するコードリール27などが配置されている。
本実施形態の炊飯器に用いられている内鍋30は、基体が焼き物であるいわゆる土鍋であり、基体部分はコーディエライト系の材料で形成されていて、成分としてSiO2を含んでいる。この基体部分の両面にリチア系の釉薬が塗布され、外表面には発熱体である銀ペーストがコーティングされている。また、内表面には、アルミ溶射膜を介してフッ素コーティングが施されている。なお、上記内鍋30の構成は例示であり、本実施形態の炊飯器として用いられる非金属製の内鍋としては、セラミックやガラス素材などの非金属製鍋、また、アルミやステンレスの金属層にセラミックや中空ガラスビーズなどの非金属部材の層をコーティングした内鍋などを好適に用いることができる。さらに、内鍋として、従来周知の銅やアルミ、ステンレスなどの金属層により形成される金属製内鍋を用いることもできる。
また、本実施形態の炊飯器では、センターセンサ24以外にも、例えば蓋体10の内鍋収容部20aと対向する部分や、炊飯器本体20の内鍋30の側面32と対向する部分などに1または2以上の温度センサを配置することができる。本実施形態の炊飯器に用いられるセンターセンサ24をはじめとする各温度センサは、例えばサーミスタに代表される熱的電気素子を用いて構成される従来周知の温度センサを、そのまま用いることができる。また、上記したように、内鍋収容部20a内部の圧力を検出可能な圧力センサを配置し、内鍋30内部の圧力数値を制御手段が把握する構成とすることもできる。
なお、図1および図2を用いて説明した本実施形態の炊飯器の全体の形状や、各部材の具体的な構成や配置はあくまで一例に過ぎず、本発明にかかる炊飯器において、上記図1および図2に例示した構成とは異なるさまざまな構成を採用することができる。
以下、本実施形態にかかる炊飯器における圧力炊飯モードの制御条件について説明する。
図3は、本実施形態における炊飯器での炊飯工程について、ワークコイル23aおよび23bのON/OFFのタイミングと投入電力の大きさ、内鍋30内部の圧力条件、内鍋30の温度をタイムチャートとして示したものである。
図3において、実線41は、内鍋30の外表面の温度変化を示し、点線42が図2に示すセンターセンサ24の温度変化を示す。なお、内鍋30の外表面の温度41は、内鍋30の底面31と傾斜部分33との境界部分、図2にXとして示す部分の温度を測定したものである。
また、炊飯工程において、制御手段によって加熱手段23のワークコイル23aおよび23bに電力が投入されたタイミングとその大きさを、図3下段の網掛部43として示している。さらに、制御手段により圧力弁14が制御されて調整される内鍋30内部の圧力数値を各工程の区分の下側に記載している。
図3に示すように、本実施形態の炊飯器における炊飯モード開始時の内鍋30の温度は、室温20℃である。
吸水工程において、ワークコイル23aおよび23bにより内鍋30が加熱されるが、本実施形態の炊飯器の内鍋30は非金属製の土鍋釜であるため、熱伝導性が低く大きなオーバーシュートが生じやすい。このため、被炊飯物の吸水ムラが生じないように、吸水工程の前半の吸水工程1では、ワークコイル23aおよび23bに間欠的に小さな電力を投入して、内鍋30の温度を従来の金属製内鍋での吸水工程の場合の設定温度よりも低く抑えている。
吸水工程の後半の吸水工程2では、ワークコイル23aおよび23bに投入する電力を少し大きくする。この結果、内鍋30の外表面温度41が150℃を超え、センターセンサ24の温度42も50℃まで上昇する。
続く昇温工程では、まず昇温工程1でワークコイル23aおよび23bに連続して電力を投入して、内鍋30の温度を一気に上昇させる。このとき、例えば、図示しない蓋体10の内表面の温度が50℃を超えるなど、所定の条件を満たした後に昇温工程2に移行して、圧力弁14を閉じることで内鍋30内部の圧力を高圧状態である1.25気圧まで上昇させて維持する。その後、ワークコイル23aおよび23bへの投入電力をさらに増加させる昇温工程3に移行する。
昇温工程で内鍋30の温度を上昇させるとともに、内鍋30と内鍋収納部20aのかまど部材25に十分蓄熱させると、炊き上げ工程に移行して、内鍋30内部を沸騰状態に維持する。炊き上げ工程1および2を経ることで、内鍋30内の水分が十分蒸発し、内鍋外表面の温度41が上昇して260℃に到達する。
この状態で、ワークコイル23aおよび23bへの電力投入を停止して、追い炊き工程に移行する。追い炊き工程では、所定間隔でワークコイル23aおよび23bに間欠的に電力を投入する。本実施形態の炊飯器では、追い炊き工程2、追い炊き工程4、追い炊き工程6において、ワークコイル23aおよび23bに間欠的に3回電力を投入するが、その2回目と3回目との間の追い炊き工程5で圧力弁14を一旦開放して、内鍋30内部の圧力を昇温工程2から維持してきた高圧状態である1.25気圧から低圧状態である1.05気圧まで急激に低下させる。このとき、内鍋30内部では、お米の間に残った水分が、圧力が急激に低下することによって突沸する。内鍋30の内部では、炊き上げ工程から追い炊き工程にかけて水分が水蒸気となってお米の間を上昇することから、お米の外表面のデンプン化により生じたおねばは、内鍋30内部のお米の上側に溜まる。また、本実施形態の炊飯器では、調圧キャップ13に溜まったおねばも経路15を通ってお米の上に落下してくる。このように、内鍋30の内部でお米の上に乗っている状態のおねばが、追い炊き工程で突沸現象を生じさせることでかき混ぜられて、おねばを内鍋30内部のお米の間に行き渡らせることができる。
追い炊き工程5で内鍋30内部の圧力を低下させた後、続く追い炊き工程6で、追い炊き工程における最後の3回目となる加熱を行う。このように、本実施形態の炊飯器における炊飯工程では、追い炊き工程において間欠的な加熱を3回にわたって行い、2回目の加熱の後に内鍋30内部の圧力を低圧状態に低下させ、その後に追い炊き工程における最後の加熱を行っている。
追い炊き工程6で、追い炊き工程での最後の加熱を行った後にむらし工程に移行する。むらし工程前半のむらし工程1で、ワークコイル23aおよび23bに追い炊き工程の時よりもより小さな電力をパルス的に投入して加熱を行った後、内鍋30内部の圧力を大気圧(=1.0気圧)に戻してむらし工程2に移行し、全炊飯工程を終了して保温工程に移行する。
本実施形態の炊飯器の炊飯工程では、追い炊き工程5で内鍋30内部の圧力を大気圧まで完全に下げずに、高圧状態(1.25気圧)より低く大気圧(1.0気圧)よりも高い圧力である1.05気圧の低圧状態に保っている。このように内鍋30内部の圧力を大気圧よりも高い低圧状態としていることと、内鍋30と内鍋収納部20aのかまど部材25とが十分に蓄熱していたこととの相乗効果によって、追い炊き工程の最終段階では内鍋30の外表面の温度41が300℃まで達し、高温でおいしいお米を炊くことができる。
図4は、比較例として、土鍋釜を内鍋として用いた従来の炊飯器における炊飯工程を示すタイムチャートである。図4に示す、実線51は、図3に示した本実施形態の炊飯器における測定場所(図2のX)と同じ位置の内鍋外表面底部の温度を示す。点線52は、センターセンサの温度を示す。ワークコイルへの電力投入のタイミングとその大きさを、図3と同様に下段の網掛部53として示す。
なお、図4に示す比較例の炊飯器における内鍋収容部の底部の保護枠は、耐熱性の高い樹脂部材が使用されている。また、図4に示す比較例の炊飯器では、内鍋内部の圧力を高圧状態とする加圧炊飯は行われていない。また、図4に示す従来の炊飯器での炊飯工程では、追い炊き工程での加熱手段による間欠的な加熱が2回である点、さらに、昇温工程と炊き上げ工程での電力投入量が少し小さい以外は、図3に示した本実施形態の炊飯器における炊飯工程と同様の加熱が行われている。
図3に示す、本実施形態の炊飯器による炊飯工程におけるセンターセンサの温度42と、図4に示す比較例の炊飯工程におけるセンターセンサの温度52とは、ほぼ同じ程度の推移を示している。しかし、本実施形態の炊飯器では、内鍋外表面底部の温度51が、昇温工程2以降で200℃を超え、炊き上げ工程終了時では260℃、追い炊き工程の最後では300℃に到達しているのに対し、比較例の炊飯器の内鍋外表面底部の温度61は、炊き上げ工程の最後で初めて200℃を超え、追い炊き工程における最高温度も260℃と本実施形態の炊飯器の内鍋温度よりも低い。
また、比較例の炊飯器では、追い炊き工程で内鍋内部の圧力を急激に低下させて突沸現象を生じさせていないため、内鍋内部でお米の上方に溜まっているおねばを撹拌して内鍋内部のお米全体に行き渡らせることができない。
図5は、本実施形態の炊飯器によって炊いたお米と、比較例の炊飯器によって炊いたお米との、官能検査の結果を比較したものである。図中一点鎖線62として示す、従来の土鍋炊飯を行う炊飯器で炊いたお米の評価を3として、図中実線61として示す、本実施形態の炊飯器で炊いたお米の評価をレーダーチャート上にプロットしている。
図5に示すように、金属製の内鍋の炊飯器よりもおいしいお米が炊けるという定評のある、従来の土鍋炊飯を行う炊飯器で炊いたお米の評価値62と比較しても、本実施形態の炊飯器で炊いたお米の評価値61が高く、さらにおいしいお米と評価されていることがわかる。特に、「ねばり」と「弾力」の評価項目での数値が上がっていて、もちもち感のあるお米が炊けていることが実証された。また、お米の大きさや白さ、輝きなどの状態を評価する「外観」の項目においても、従来の土鍋炊飯でのお米よりも高い評価となっていることから、本実施形態の炊飯器で炊いたお米では、おねばがお米の周りで十分に糊化されていることが確認できた。
以上説明したように、本実施形態の炊飯器では、炊き上げ工程から追い炊き工程にかけて、内鍋内部の圧力を連続して高圧状態に維持し、追い炊き工程で内鍋内部の圧力を急激に低下させている。このようにすることで、炊き上げ工程から追い炊き工程での内鍋の温度を高く維持することができるとともに、追い炊き工程において内鍋内部で突沸を生じさせて、内鍋内部のお米全体におねばを行き渡らせることができる。この結果、甘みや、ねばりや弾力の強いもちもち感を備え、ハリとツヤを有するお米を炊くことができる。
なお、上記実施形態では、追い炊き工程の最後の電力投入前に、内鍋内部の圧力を高圧状態から低圧状態へと低下させる例を示したが、このことは、本発明において必須の要件ではない。しかし、追い炊き工程で内鍋内部の圧力を急激に低下させた後に、一定以上の電力でもう一度加熱することによって、撹拌されたおねばを十分に糊化できるため、炊きあがったお米がさらにおいしくなるという利点を有する。
また、上記実施形態では、追い炊き工程では、一旦内鍋内部の圧力を低圧状態である1.05まで低下させ、その後のむらし工程で大気圧まで低下させているが、このことも本発明において必須の事項ではない。上記説明したように、内鍋内部の圧力を大気圧よりも高い低圧状態でむらし工程に移行することで、内鍋の温度をより高く維持することができ、よりおいしいお米を炊くことができるが、追い炊き工程で高圧状態から一気に大気圧まで圧力を低下させるような炊飯工程を行うこともできる。
なお、上記実施形態では、高圧状態を1.25気圧、低圧状態を1.05気圧として説明したが、それぞれの圧力の数値は、炊飯器の圧力調整手段の構造などにより適宜設計すべき数値である。ただし、追い炊き工程での減圧時に、内鍋上部のおねばを十分に撹拌できる突沸を生じさせることが重要であり、追い炊き工程での減圧時には、減圧幅が0.1気圧程度以上の圧力差での減圧を行うことが好ましい。また、追い炊き工程における減圧時に、内鍋内部の水分が完全に蒸発してしまっていると、十分な突沸が生じずにおねばの撹拌効果が低減する。このため、炊き上げ工程から追い炊き工程への移行条件を定めるに当たっては、従来の炊飯工程と比較して、内鍋内部に水分が多めに残っている状態で追い炊き工程へと移行する条件を設定することがより好ましい。