図1〜図3は、本願発明の実施の形態に係る調理器の本体および要部の構成を、また図4〜図12は、同調理器の各種調理制御の内容を示している。
(調理器本体の構成)
この調理器1は、例えば図1に示すように、例えば内鍋(飯器ないし保温容器)3として非金属材料からなる蓄熱性の高い鍋(例えば、セラミック製の土鍋)が一例として採用されており、その底壁部3aの底部中央面(フラット面部)および該底壁部3a外周の湾曲面部(R面部)には、それぞれ内部に誘起されるうず電流によって自己発熱が可能な例えば銀ペースト等の金属製の第1,第2の誘導発熱体G1,G2が設けられている。
そして、この調理器1は、同構成の内鍋3と、該内鍋3を任意に収納セットし得るように形成された下部側合成樹脂製の皿状の底壁部4aおよび上部側筒状の側壁部4bよりなる内ケース(保護枠)4と、該内ケース4を保持する外部筺体である有底筒状の外ケース5と、該外ケース5の下部に一体に嵌合された底ケース13と、上記外ケース5と上記内ケース4とを肩部10により一体化して形成された炊飯器本体の上部に開閉可能に設けられた蓋ユニット(蓋体)2とから構成されている。
外ケース5の前面部上方には、操作パネル部20が設けられている。そして、該操作パネル部20面には、例えば図2に示すように、大きな表示面積をもつ液晶表示部21と、タイマー炊飯用の炊飯予約スイッチ22a、炊飯スイッチ(調理開始スイッチ)22b、保温スイッチ22c、取消スイッチ22d、音声ガイドスイッチ22e、炊飯および調理メニュー(例えば白米、炊き込み、早炊き、おこわ、おかゆ、玄米等の炊飯メニューとその他の調理メニュー)を指定する炊飯メニュースイッチ22f、時計及びタイマーの時刻時設定スイッチ22g、時計及びタイマーの時刻分設定スイッチ22h、お米選択スイッチ22i、火加減レベル設定スイッチ22j等の各種操作スイッチが設けられている。
また、タイマー予約スイッチ22a、炊飯スイッチ22b、保温スイッチ22cには、それぞれ同スイッチ22a,22b,22cのON操作状態を示す表示用LEDが設けられている。
上記液晶表示部21の表示面には、各種炊飯メニューや設定された炊飯メニューの表示、炊飯予約状態、炊飯状態の他、現在時刻等の表示を行うようになっている。
また、該操作パネル部20の内側部分(裏側空間)には、内ケース4の側壁部4bの前側に設けられた制御基板B1の上端位置から斜め前方に下降する格好で、マイコン基板B2がマイコン基板カバー18を介して傾斜設置されている。
このマイコン基板B2上の外気に開放された所定の位置には、室内の温度等周囲環境温度を検出する環境温度検知センサーS2が設けられている。
一方、内ケース4の底壁部4aの下方側には、フェライトコア収納部を備えたコイルカバー(コイル台)6が設けられ、その下部にはフェライトコア(符号省略)を配置し、またそれらの間には、上記内鍋3の底壁部3aの中央部側フラット面部と外周部側湾曲面部の上記第1,第2の2組の誘導発熱体G1,G2位置に対応して各々リッツ線が同心状に巻成された第1,第2の2組のワークコイルC1,C2が設けられており、それらへの通電時には上記内鍋3の上記第1,第2の誘導発熱体G1,G2にうず電流を誘起して、上記内鍋3を効率良く加熱するようになっている。
上記内ケース4(側壁部4b)の前方部側には、上記のようにワークコイルC1,C2、保温ヒータH1等を駆動制御するIGBTやヒータ駆動回路、電源電圧整流用のダイオードブリッジよりなる整流回路、平滑回路などを備えた制御基板B1および制御基板カバー7が上下方向に立設する状態で設けられている。
この制御基板B1には、IGBTの側に隣接する形で、同部分の温度検出する基板センサーS3が設けられている。
上記内ケース4の皿状の底壁部4aは、その底面部の中央部に内鍋3の底壁部3aの温度を検知するサーミスタを内装した内鍋温度検知センサーS1のセンサー部嵌合口が形成されているとともに、同センサー部嵌合口の外周側上面にはドーナツ状の遮熱板8が設けられている。また、外周側湾曲面部の上端側には、所定幅半径方向外方に張り出したフランジ状の段部9が設けられ、この段部9部分に上記上部側筒状の側壁部4bの下端側が係合載置されている。
他方、同上部側筒状の側壁部4bの上端は、図示しない内枠部材を介して上記炊飯器本体側外ケース5上端の肩部材10側に連結して固定されるようになっている。
また、上記内ケース4の上部側筒状の側壁部4bの外周には、炊飯および保温時において加熱手段として機能する側面ヒータH1が設けられており、炊飯時および保温時において上記内鍋3の全周を有効かつ均一に加熱するようになっている。
なお、符号12,12・・・は、上記外ケース5の底部側に嵌合一体化された底ケース13の前部部分にグリル状に設けられた冷却ファン11用の空気吸込口である。
(蓋ユニット部の構成)
さらに図1中の符号2は上記蓋ユニットであり、該蓋ユニット2は、その外周面を構成するとともに中央部に調圧ユニット14を備えた合成樹脂製の外カバー2aと、該外カバー2aの外周部内側に嵌合一体化して設けられた合成樹脂製の内枠2bと、該内枠2bの内側開口部内に嵌合された金属製の放熱板2cと、放熱板2cの上面に設けられた蓋ヒータH2と、上記放熱板2cの下方に設けられた金属製の内蓋2dとを備えて構成されている。また、放熱板2cの外周縁部下方および内蓋2dの外周縁部下方には、それぞれパッキン19a,19bが設けられており、内蓋2dは、同パッキン19bを介して内鍋3の開口縁部3cの上面部に接触させられている。また、14dは、上記外カバー2aの調圧口2eに嵌合された調圧パイプ14a内の調圧弁(球体)、14cはその下部側の弁口部を有する弁座プレート、14bは調圧パイプ14aの下方側に拡大された開口部に嵌合された調圧キャップである。
この蓋ユニット2は、図示しない上記外ケース5上部の後端側で肩部材10に対してヒンジ機構を介して回動自在に取付けられており、その開放端側には、該蓋ユニット2の前端側所定位置に係合して該蓋ユニット2の上下方向への開閉を行うロック機構17が設けられている。
また、符号S4は、上記内鍋3内の温度および沸騰状態を検知する蓋センサー(蒸気センサー)であり、この蓋センサーS4は上記内蓋2dの開口部に蒸気通路16eを有した蒸気パイプ16cを嵌合するとともに、同蒸気パイプ16c内の蒸気通路16e内に上方側放熱板2c側に取付ホルダー16aおよび16dを介して取り付けられているサーミスタ16bの先端を挿入する形で設けられている。この場合、同サーミスタ16bは、図示のように上方から下方に向けて長く延びる軸体状のものよりなり、その先端側センサー部(温度検知部)が、上記内鍋3の開口縁部3cよりも内側に臨んで(侵入する形で)設けられている。
そして、それにより内鍋3内の温度を蒸気の発生前の段階から極めて精度良く検出するようになっている。
<制御回路の構成>
次に図3は、上述のように構成された炊飯器本体側の調理および保温加熱制御、液晶表示部21の表示制御、その他の制御を行うマイコン制御ユニット32を中心とする制御回路部分の構成を示す。
図3中、符号32が上述のような炊飯および調理加熱制御手段および保温加熱制御手段、液晶パネル表示制御手段に加え、内鍋温度判定手段、内鍋検知手段、ブザー報知手段等を備えた炊飯・パン・調理・保温・表示等制御用の基本となるマイコン制御ユニット(CPU)であり、該マイコン制御ユニット32はマイクロコンピュータを中心として構成され、例えば内鍋3の温度検知回路部、ワークコイル駆動制御回路部、ファン駆動制御回路部、発振回路部、リセット回路部、保温ヒータおよび肩ヒータ等駆動制御回路部、液晶表示制御回路部、ブザー報知部、電源回路部等を各々有して構成されている。
そして、先ず上記内鍋3の底壁部3a側センタセンサー部の内鍋温度検知センサーS1、環境温度検知センサーS2に対応して設けられた温度検知回路43および内鍋温度検知回路44には、例えば上記内鍋温度検知センサーSによる内鍋3の底壁部3aの温度検知信号、必要な内鍋検知スイッチによる鍋検知信号がそれぞれ入力されるようになっている。
また、上記ワークコイル駆動制御回路部は、例えばパルス幅変調回路41、同期トリガー回路40、IGBT駆動回路42、IGBT37、共振コンデンサ38によって形成されている。そして、上記マイコン制御ユニット32のワークコイル駆動制御回路部により、上記パルス幅変調回路41を制御することにより、例えば炊飯工程に応じて上記ワークコイルC(C1,C2)の出力値および同出力値でのONデューティー比(例えばn秒/16秒=通電率)をそれぞれ適切に変えることによって、炊飯、調理工程等の各工程における内鍋3の加熱温度と加熱パターンを炊飯量、調理量等を考慮して適切に可変コントロールし、均一な吸水作用と加熱ムラのないご飯の炊き上げ、良好な調理等を実現するための適切な出力制御が行われるようになっている。
また同マイコン制御ユニット32の保温ヒータ駆動制御回路部および肩ヒータ駆動制御回路部、ファン駆動制御回路部により、それぞれ保温ヒータ駆動回路33および肩ヒータ駆動回路34、ファン駆動回路46を制御することにより、例えば保温又は炊飯工程に応じて上記保温ヒータH1、肩ヒータH2の出力値および同出力値でのONデューティー比(例えばn秒/16秒)をそれぞれ適切に変え、また適切な発熱部の冷却を行うことによって、保温又は炊飯工程の各工程における内鍋3の加熱温度と加熱パターンとを実際の炊飯量を考慮して適切に可変コントロールするための適切な出力制御が行われるようになっている。
また、符号22a〜22jは上述した各種入力スイッチ部であり、同スイッチの必要なものが適切に操作されると、上記マイコン制御ユニット32側の認識手段によってユーザーの指示内容が認識され、その認識内容に応じて所望の炊飯、調理又は保温の各加熱パターンを設定して上記炊飯加熱制御手段又は保温加熱制御手段を適切に作動させて所望の炊飯/調理又は保温を行うようになっている。
したがって、ユーザーは、同入力スイッチ22a〜22jを使用して炊飯/調理又は保温、タイマー予約、予約時刻設定、白米又は玄米、早炊き、おかゆ、炊き込み、スープ煮込み等の炊き分け等の各種の炊飯/調理又は保温機能の選択設定内容を入力すれば、それに対応した機能内容が当該マイコン制御ユニット32の上述した認識手段を介して炊飯/調理又は保温の各加熱パターン設定部に自動的に設定入力されて、対応する炊飯、調理又は保温加熱制御が適切になされる。
なお、図3中の符号39は、上記IGBT37のフライホイールダイオード、35は、家庭用AC電源30との間に挿入された上記ワークコイル駆動用のダイオードブリッジを内蔵した電源側整流回路、36はその平滑回路である。
さらに、符号17aは炊飯完了を知らせるブザー、17はブザー駆動回路、21は液晶表示部である。この実施の形態の場合、上記液晶表示部21には、上記入力スイッチ22a〜22jのON操作に対応して所望のコース、メニュー、炊き分け項目や時刻その他の必要事項が表示され、以後設定内容に応じた必要な表示がなされて行くようになっている。
ところで、この調理器では、上記調理メニューの一例として、例えば「スープ」メニュー、「煮込み」メニューが設けられており、それらの適切な調理が可能となっている。
<スープメニューの調理シーケンス>
次に図4のフローチャート、図5のタイムチャートは、それぞれスープメニューの場合の調理シーケンスを示している。
先ず、上述したメニュースイッチ22fにより「スープ」メニューが選ばれ、調理開始スイッチである炊飯スイッチ22bがON操作されると、上記炊飯等制御用のマイコン制御ユニット32は調理を開始する。
そして、調理が開始されると、先ず最初に上記第1,第2のワークコイルC1,C2に最大通電率(フルパワー)で通電することにより、速やかに第1,第2の誘導発熱体G1,G2を発熱させて、内鍋3の底部全体を可能な限り速やかに加熱昇温させる(ステップS1の昇温工程を実行)。
この結果、図5のタイムチャートに示すように、内鍋3の温度は速やかに上昇し、やがて沸騰状態になる。
次に、上記内鍋温度検知センサーS1の検出値を入力し、同入力値から実際に内鍋3内の水が沸騰状態になった否かを判定、すなわち沸騰検知を行う(ステップS2)。
その結果、YESの時はステップS3の沸騰維持工程へ、他方NOの時は沸騰状態になるまで、上記ステップS2の昇温工程の制御を継続する。
沸騰維持工程(ステップS3)では、当該沸騰状態を維持するのに必要なワークコイル通電率に維持して、予じめ定められた所定の沸騰維持時間内沸騰維持制御を継続し、調理物の具材等に十分に熱および水分を通す。
そして、同沸騰維持時間が経過すると、今度は、上記沸騰維持工程における沸騰温度T0℃よりも少し低い温調温度T1℃に所定時間内維持して、温調制御を実行する。
これにより、調理物の具材にに調味料等の味が十分に滲み込み、また野菜等具材からの旨味成分がスープ中に溶出して、美味しいスープができ上る。
そして、予じめ設定された温調維持時間が経過すると、同スープ調理制御を終了し、必要な保温工程に移行する。
<煮込メニューの調理シーケンス>
次に図6のフローチャート、図7のタイムチャートは、それぞれ煮込メニューの場合の調理シーケンスを示している。
先ず、上述したメニュースイッチ22fにより、例えば豚肉の角煮やシチュー等などの「煮込」メニューが選ばれ、調理開始スイッチである炊飯スイッチ22bがON操作されると、上記炊飯等制御用のマイコン制御ユニット32は調理を開始する。
そして、調理が開始されると、先ず最初に上記第1,第2のワークコイルC1,C2に最大通電率(フルパワー)で通電することにより、速やかに第1,第2の誘導発熱体G1,G2を発熱させて、内鍋3の底部全体を可能な限り速やかに加熱昇温させる(ステップS1の昇温工程を実行)。
この結果、図7のタイムチャートに示すように、内鍋3の温度は速やかに上昇し、やがて沸騰状態になる。
次に、上記内鍋温度検知センサーS1の検出値を入力し、同入力値から実際に内鍋3内の水が沸騰状態になった否かを判定、すなわち沸騰検知を行う(ステップS2)。
その結果、YESの時はステップS3の沸騰維持工程へ、他方NOの時は沸騰状態になるまで、上記ステップS2の昇温工程の制御を継続する。
沸騰維持工程(ステップS3)では、当該沸騰状態を維持するのに必要なワークコイル通電率に維持して、予じめ定められた上記「スープ」メニューの場合よりも短かい所定の沸騰維持時間内沸騰維持制御を継続し、煮込調理物の具材等に十分に熱および水分を通す。
そして、同沸騰維持時間が経過すると、今度は温調工程に進み、上記沸騰維持工程における沸騰温度T0℃よりも少し低い温調温度T1℃に所定時間内維持して、温調制御を実行する。
ところで、この煮込メニューにおける温調工程は、上述のスープメニューの場合の温調工程と異なり、例えば第1,第2の(複数の)温調工程1,2(ステップS4,S5)に分割されており、第1の温調工程1における第1の温調温度(目標温度)T1℃は、上記沸騰維持工程における沸騰温度T0℃よりも所定温度ΔT0℃低く、また第1の温調工程2における第2の温調温度(目標温度)T2℃は、同第1の温調工程1における第1の温調温度T1℃よりも所定温度ΔT1℃低く設定されている。
「煮込み料理」はスープ料理とは異なり、水分量(煮汁量)が少ないため、スープ調理シーケンスと同じ内容で調理すると、煮込み工程(温調工程)が終了する頃には煮汁がなくなってしまい、焦げ付く等の不具合が生じる。
特に本実施の形態のような土鍋等セラミック製の内鍋3の場合、蓄熱性が高く、厚肉でもあることから、昇温工程、沸騰維持工程を経た段階で相当な熱量が蓄積されて高温の状態になっており、しかも冷めにくいために、従来の金属製の鍋の場合に比べて、より焦げ付きが発生しやすい。
このため、上述のように、スープメニューの場合に比べて沸騰維持時間自体を短かくすることに加えて、スープメニューの場合の温調工程と異なって、温調工程そのものをも第1,第2の(複数の)温調工程1,2(ステップS4,S5)に分割し、第1の温調工程1における第1の温調温度(目標温度)T1℃を、上記沸騰維持工程における沸騰温度T0℃よりも所定温度ΔT0℃低く、また第1の温調工程2における第2の温調温度(目標温度)T2℃を、同第1の温調工程1における第1の温調温度T1℃よりも所定温度ΔT1℃低く設定して、煮汁の減少に応じて段階的に温調温度を下げながら、ゆっくりと時間をかけて「とろ火」で煮込むことにより、可及的に焦げ付きが発生しないようにしている。
これにより、煮込調理物の具材が「とろ火」で十分に時間をかけて柔らかく煮込まれるとともに、具材中に味が十分に滲み込み、美味しい煮込み料理ができ上る。
そして、予じめ設定された第1,第2の各温調工程の維持時間が経過すると、同煮込調理制御を終了し、必要な保温工程に移行する。
従来の煮込調理メニューでは、一度沸騰された後、高い温度(約98℃)で一定温度での温調をかけて加熱をしている。しかし、それだと、上記豚の角煮のようなとろ火で長時間煮込むような料理では肉が締まってかたくなってしまう欠点がある。
また、スープは主にサラッとして液状のものが多いが、煮込みでは煮汁が少ないものや、シチューのような粘性のあるものが多いため、煮込みメニューでは焦げ付きが生じやすい。
ところが、以上のような構成によると、料理に合わせて適した調理シーケンスを選択できるようになり、一層おいしく調理することができるようになる。
また、煮込みメニューを選択することで、煮汁が少ないもの、粘性の高いものについても、干上がって焦げ付くといったリスクが減少する。
<スープおよび煮込メニューの周囲環境温度を考慮した調理シーケンス>
上述のように、土鍋等セラミック製の鍋は熱伝導性が悪く、一度温まると冷めにくいため、煮込み等の調理に適しているが、他方内容物の温度が鍋の外面に伝わり難いため、鍋外面の温度を検知して内容物の温度を的確に判断することができない問題がある。
つまり、内鍋3の温度と中身の調理物の温度とが追随せず、内鍋温度検知センサーS1の温度で中身の温度を読み取ることができない。そのため、同センサーS1の検知温度で温調をかけることが難しい。
また、上記スープ料理や煮込み料理は、上述のように一度沸騰させた後、中身の温度を一定に保つ温調制御を行うが、土鍋等セラミック製の鍋で温調をかけるときには周囲環境温度の影響が大きく、一定の温度で温調をかけると、周囲環境温度によってできあがりに差ができる。これは、上記内鍋温度検知センサーS1が気温の低いときは、鍋が冷たく中身の温度が低いと判断し、本当は中身が温かいのに加熱をしすぎて、調理物が煮詰まったり、干上がったりしてしまうことによる(気温が低いときは加熱を減らす必要がある)。また、他方、気温が高いときは、鍋が温かく中身の温度が高いと判断して、加熱が足りなくなることによる(気温が高いときは加熱を増やす必要がある)。
そこで、この実施の形態の調理シーケンスでは、どのような環境温度でも同等のできあがりとなるように、周囲環境温度に合わせて温調工程における温調温度を変更するような補正式を組み込んでおり、スープメニューでは温調1工程で、煮込みメニューでは温調1工程、温調2工程の各工程で、それぞれ自動的に温調温度が補正されるようにしている。
そして、外気温(室温)などの周囲環境温度の測定は、例えば調理開始後一定時間(例えば60秒)内は上記第1,第2のワークコイルC1,C2の駆動制御をせず、一定時間中は冷却ファン11のみを作動させることによって、周囲温度を炊飯器本体内部に設けた環境温度検知センサー(室温センサー)S2を周囲温度となじませる。
そして、その上で検知された環境温度に基いて、上記各温調工程における温調温度を変化させる。
この周囲温度と温調温度との関係は、従来の金属製の鍋と違い、セラミック製の鍋では、周囲温度が高い場合には温調温度を高くして加熱量を増やす一方、周囲温度が低い場合には温調温度を低くして加熱量を減らすように制御する。
これは、金属製の鍋とは逆の加熱制御であり、デメリットを補うための土鍋等セラミック製の内鍋ならではの特有の補正制御である。そして、スープメニューでは温調1工程で、煮込みメニューでは温調1工程、温調2工程の両工程でそれぞれ自動的に温調温度が補正される。
この補正は、どの環境温度でも同等のできあがりとなるように、環境温度に合わせて温調工程の温調温度を変更するものであり、内鍋温度検知センサーS1の検出値と環境温度検知センサーS2により検知された炊飯器本体内の温度の検出値とに基き、例えば図12のようなグラフと所定の補正式Y=9/32{(X−125)+B切片}を用いて増減すべき補正値が演算される。
なお、上記補正式のX=125は、図12のグラフ中のB切片(23℃)部分のヘキサ値である。またA,Bは、それぞれ切片部を示している。
そして、以上の補正式は、実験により各環境温度の下で最適な温調温度を求めて作成した。この補正式のB切片は、約23℃環境下(X=125)を基準として、自由に設定できるようにした。
補正式には、図12に示すように、下限値を設定し、上述した環境温度検知センサーS2の検出値がある一定値より小さくなると、温調温度も下限値で一定となるようにしている。上限値は設定した出力(ワークコイル通電率60%=6/16)以上には加熱されないので設定しなかった。
図12では傾きを固定し、B切片のみを変更して『温調1』と『温調2』とした。しかし、料理や温調温度によっては、もちろん傾きを変更することも可能である。また、いくつかの温度帯に分け、それぞれの温度帯で補正式を変更することも可能である。
調理終了後、加熱が足りない場合は追加加熱をすることができるが、このときも温調で加熱を行う。追加加熱開始時には室温センサーの値の読み込みはなく、最初の調理開始時の環境温度検知センサーS2の検出値を記憶しており、その値で温調温度を補正するようになっている。
(スープメニューの場合)
先ず図8のフローチャート、図9のタイムチャートは、それぞれスープメニューの場合の環境温度を考慮した調理シーケンスを示している。
すなわち、先ず上述したメニュースイッチ22fにより「スープ」メニューが選ばれ、調理開始スイッチである炊飯スイッチ22bがON操作されると、上記炊飯等制御用のマイコン制御ユニット32は調理を開始する。
そして、調理が開始されると、先ず最初に上記第1,第2のワークコイルC1,C2に通電する前に、所定時間内上記冷却ファン11のみを駆動して環境温度検知センサーS2部分に外気を流し、器体内と室内の温度が等しくなるようにした上で、初期室温を検出する(ステップS1)。そして、それが終わると、上記第1,第2のワークコイルC1,C2に最大通電率(フルパワー)で通電することにより、速やかに第1,第2の誘導発熱体G1,G2を発熱させて、内鍋3の底部全体を可能な限り速やかに加熱昇温させる(ステップS2の昇温工程を実行)。
この結果、図9のタイムチャートに示すように、内鍋3の温度は速やかに上昇し、やがて沸騰状態になる。
そこで、次に上記内鍋温度検知センサーS1の検出値を入力し、同入力値から実際に内鍋3内の水が沸騰状態になった否かを判定、すなわち沸騰検知を行う(ステップS3)。
その結果、YESの時はステップS4の沸騰維持工程へ、他方NOの時は沸騰状態になるまで、上記ステップS2の昇温工程の制御を継続する。
沸騰維持工程(ステップS4)では、当該沸騰状態を維持するのに必要なワークコイル通電率に維持して、予じめ定められた所定の沸騰維持時間内沸騰維持制御を継続し、調理物の具材等に十分に熱および水分を通す。
そして、同沸騰維持時間が経過すると、今度は、上記沸騰維持工程における沸騰温度T0℃よりも少し低い温調温度T1℃に所定時間内維持して、温調制御を実行する。
この場合、制御される温調温度T1℃は、先の図6の場合と異なり、上記ステップS1で検出された初期室温に基いて上述のように増減補正された適正な温度となっている。
上述のように、土鍋等セラミック製の鍋は熱伝導性が悪く、一度温まると冷めにくいため、煮込み等の調理に適しているが、他方内容物の温度が鍋の外面に伝わり難いため、鍋外面の温度を検知して内容物の温度を的確に判断することができない問題がある。
つまり、内鍋3の温度と中身の調理物の温度とが追随せず、内鍋温度検知センサーS1の温度で中身の温度を読み取ることができない。そのため、同センサーS1の検知温度で温調をかけることが難しい。
また、上記スープ料理や煮込み料理は、上述のように一度沸騰させた後、中身の温度を一定に保つ温調制御を行うが、土鍋等セラミック製の鍋で温調をかけるときには環境温度の影響が大きく、一定の温度で温調をかけると、環境温度によってできあがりに差ができる。これは、上記内鍋温度検知センサーS1が気温の低いときは、鍋が冷たく中身の温度が低いと判断し、本当は中身が温かいのに加熱をしすぎて、調理物が煮詰まったり、干上がったりしてしまうことによる。また、他方、気温が高いときは鍋が温かく中身の温度が高いと判断して、加熱が足りなくなることによる。
そこで、このスープメニューの調理シーケンス(図8,図9)では、どのような環境温度の下でも同等のできあがりとなるように、環境温度に合わせて温調工程における温調温度を変更するような上記補正式を組み込んでおり、スープメニューでも温調工程で自動的に温調温度が補正されるようにしている。そして、周囲温度が高い場合には温調温度を高くして加熱量を増やす一方、周囲温度が低い場合には温調温度を低くして加熱量を減らす。
この結果、スープメニューの調理シーケンスにおいても、外気温等周囲環境温度の変化の影響を受けることなく、適正な温調をかけることができるようになる。
(煮込メニューの場合)
次に図10のフローチャート、図11のタイムチャートは、それぞれ煮込メニューの場合の周囲環境温度を考慮した調理シーケンスを示している。
すなわち、先ず上述したメニュースイッチ22fにより、例えば豚肉の角煮やシチュー等などの「煮込」メニューが選ばれ、調理開始スイッチである炊飯スイッチ22bがON操作されると、上記炊飯等制御用のマイコン制御ユニット32は調理を開始する。
そして、調理が開始されると、先ず最初に上記第1,第2のワークコイルC1,C2に通電する前に、所定時間内上述のように冷却ファン11を回して環境温度検知センサーS2により初期室温を検出する。そして、その後で、上記第1,第2のワークコイルC1,C2に最大通電率(フルパワー)で通電することにより、速やかに第1,第2の誘導発熱体G1,G2を発熱させて、内鍋3の底部全体を可能な限り速やかに加熱昇温させる(ステップS2の昇温工程を実行)。
この結果、図11のタイムチャートに示すように、内鍋3の温度は速やかに上昇し、やがて沸騰状態になる。
次に、上記内鍋温度検知センサーS1の検出値を入力し、同入力値から実際に内鍋3内の水が沸騰状態になった否かを判定、すなわち沸騰検知を行う(ステップS3)。
その結果、YESの時はステップS4の沸騰維持工程へ、他方NOの時は沸騰状態になるまで、上記ステップS2の昇温工程の制御を継続する。
沸騰維持工程(ステップS4)では、当該沸騰状態を維持するのに必要なワークコイル通電率に維持して、予じめ定められた上記「スープ」メニューの場合よりも短かい所定の沸騰維持時間内沸騰維持制御を継続し、煮込調理物の具材等に十分に熱および水分を通す。
そして、同沸騰維持時間が経過すると、今度は温調工程に進み、上記沸騰維持工程における沸騰温度T0℃よりも少し低い温調温度T1℃に所定時間内維持して、温調制御を実行する。
ここで、該煮込メニューにおける温調工程は、上述のスープメニューの場合の温調工程と異なり、例えば第1,第2の(複数の)温調工程1,2(ステップS6,S8)に分割されており、第1の温調工程1における第1の温調温度(目標温度)T1℃は、上記沸騰維持工程における沸騰温度T0℃よりも所定温度ΔT0℃低く、また第1の温調工程2における第2の温調温度(目標温度)T2℃は、同第1の温調工程1における第1の温調温度T1℃よりも所定温度ΔT1℃低く設定されている。
すでに述べたように、「煮込み料理」はスープ料理とは異なり、水分量(煮汁量)が少ないため、スープ調理シーケンスと同じ内容で調理すると、煮込み工程(温調工程)が終了する頃には煮汁がなくなってしまい、焦げ付く等の不具合が生じる。
特に本実施の形態のような土鍋等セラミック製の内鍋3の場合、蓄熱性が高く、厚肉でもあることから、昇温工程、沸騰維持工程を経た段階で相当な熱量が蓄積されて高温の状態になっており、しかも冷めにくいために、従来の金属製の鍋の場合に比べて、より焦げ付きが発生しやすい。
このため、上述のように、スープメニューの場合に比べて沸騰維持時間自体を短かくすることに加えて、スープメニューの場合の温調工程と異なって、温調工程そのものをも第1,第2の(複数の)温調工程1,2(ステップS6,S8)に分割し、第1の温調工程1における第1の温調温度(目標温度)T1℃を、上記沸騰維持工程における沸騰温度T0℃よりも所定温度ΔT0℃低く、また第1の温調工程2における第2の温調温度(目標温度)T2℃を、同第1の温調工程1における第1の温調温度T1℃よりも所定温度ΔT1℃低く設定して、煮汁の減少に応じて段階的に温調温度を下げながら、ゆっくりと時間をかけて「とろ火」で煮込むことにより、可及的に焦げ付きが発生しないようにしている(この点は、図6の場合と同様である)。
一方、上述のように土鍋等セラミック製の鍋は熱伝導性が悪く、一度温まると冷めにくいため、煮込み等の調理に適しているが、他方内容物の温度が鍋の外面に伝わり難いため、鍋外面の温度を検知して内容物の温度を的確に判断することができない別の問題がある。
つまり、内鍋3の温度と中身の調理物の温度とが追随せず、内鍋温度検知センサーS1の温度で中身の温度を読み取ることができない。そのため、同内鍋温度検知センサーS1の検知温度で温調をかけることが難しい。
そして、煮込み料理は、上述のように一度沸騰させた後、中身の温度を一定に保つ温調制御を行うが、土鍋等セラミック製の鍋で温調をかけるときには周囲環境温度の影響が大きく、一定の温度で温調をかけると、周囲環境温度によってできあがりに差ができる。これは、上記内鍋温度検知センサーS1が気温の低いときは鍋が冷たく中身の温度が低いと判断し、本当は中身が温かいのに加熱をしすぎて、調理物が煮詰まったり、干上がったりしてしまうことによる。また、他方、気温が高いときは、鍋が温かく中身の温度が高いと判断して、加熱が足りなくなることによる。
そこで、この調理シーケンスでは、どのような環境温度の下でも同等のできあがりとなるように、環境温度に合わせて温調工程における温調温度を変更するような補正式を組み込んでおり、上記煮込みメニュー特有の温調1工程、温調2工程の各工程で自動的に温調温度が補正されるようにしている(ステップS5,S7を参照)。
すなわち、温調1,温調2の各工程で周囲温度が高い場合には温調温度を高くして加熱量を増やす一方、周囲温度が低い場合には温調温度を低くして加熱量を減らすように制御している。
そして、その上で、上述の各温調工程1(ステップS6)、温調工程2(ステップS8)を実行する。
このため、この煮込調理シーケンスでは、上記スープメニューと同様に、どのような環境温度の下でも同等のできあがりとなる。