JP5069458B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
一般に相変化光ディスクは透明なプラスチック基板上に特定の溝を形成し、その上に薄膜を形成する。基板に用いられるプラスチック材料は主にポリカーボネートで、溝の形成には射出成形法がよく用いられる。基板上に成膜する薄膜は多層膜で、基板から順番に第1保護層、記録層、第2保護層、反射層の構成が基本的なものである。
第1及び第2保護層には酸化物、窒化物、硫化物などが用いられるが、中でもZnSとSiO2とを混合したZnS−SiO2がよく用いられる。
記録層にはSbTeを主成分とした相変化材料がよく用いられる。具体的には、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te、Ge−In−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Teなどが挙げられるが、これらの他にもGe−Te、In−Sb、Ga−Sb、Ge−Sbなどが用いられる。
反射層には金属材料が用いられるが、光学特性及び熱伝導率などからAl、Ag、Au、Cuなどの金属材料及びそれらの合金材料がよく用いられる。また、種々のディスク特性の改良を目的に、上述した各層の間に挿入層或いは界面層と称して、異なる層を設けたり、各層を複数層から形成したりすることもある。
これらの多層膜を形成後、薄膜を保護する為に樹脂層をスピンコートにより被覆する。
このようにして作製された相変化光ディスクは、記録層に用いられている相変化材料がアモルファス状態であり、これを結晶化状態にする、所謂初期化工程を施すことが一般的である。一般的な相変化光ディスクの初期化方法としては、ディスクを回転させながら幅数μm、長さ数十〜数百μmの半導体レーザからレーザ光を照射し、半径方向にレーザ光を移動させることにより行う。レーザ光の照射にはフォーカシング機能を設けてより効率の良いレーザ照射を行う場合が多い。
よく用いられる記録ストラテジとしては記録パワー(Pw)、消去パワー(Pe)、及びバイアスパワー(Pb)の3値制御(Pw>Pe>Pb)がある。これらと種々のパルス幅を組み合わせて特定のマーク長のマークを記録する。データ記録・再生の変調方式としてはCDで使われているEFM変調やDVDで使われているEFM+変調などがあり、これらはマークエッジ記録方式であることからマーク長の制御が非常に重要である。このマーク長の制御の評価としてはジッター特性が一般的に用いられる。
ここで言う高速記録とは主に回転数を速くすることにより実現したものを指し、DVDの基準線速の8倍速以上、線速では28m/s以上の記録を指す。
更に、実用的検地から、既に発売されている光ディスクドライブ装置との互換性、所謂下位互換性を有するディスクが望ましく、高速記録だけでなく同時に低速記録も必要となる。このような状況の中、本発明者等は高速記録に適した相変化材料で、ある記録線速範囲内で再生エラーが多くなるという現象を見出した。また、この現象については同様な報告がたとえば非特許文献1に記載されている。
以下に、本発明者等が見出した内容を基にこの現象について説明する。
図からも分かるように、3倍速から8倍速までジッター特性はほぼ9%以下と良好な特性であるのに対し、PIエラーが中間線速である4倍速から7倍速の範囲で急激に大きくなっている。PIエラーが280以上、特に350以上になると実用上問題があると考えられている。
図1では、それを遥かに上回る値を示しており、ジッター特性とエラー特性が大きく相反していることが分かる。なお、ここではDOW10記録の結果を示しているが、多少の程度の違いはあるものの、DOW回数には依存せず同様な現象が確認できている。このことから、この現象が熱ダメージなどに起因する現象ではないことが分かる。
そして、図のマークAとマークCとは正常な記録マークであるが、マークBはマーク中に結晶が発生している異常なマークであることが分かった。
図3(b)に記録マークの再生信号を示す。破線は記録マークが正常な場合であるが、マークBのような結晶がある場合、実線で示すように再生信号が歪んでしまう。その結果、2値化後の信号は図3(c)のようになり、結晶のある異常なマークBのみ、正常な3Tマークよりも短く再生されてしまう。なお、ここでは3T単一パターン記録のデータのみを示したが、他の単一パターンでも発生することが確認されている。
このような信号をTIA(タイム−インターバル−アナライザ)を用いて測定した結果を模式的に示すと、図4のようになる。この図は、前記異常マークと正常マークの分布を示しており、横軸はマーク長を示し、縦軸はマーク数(対数軸)を示す。
図に示したように、3Tを中心とした正規分布をとる成分と、3Tより短い領域に分布する成分とに分けることができる。この短い領域に分布する成分が、記録マーク中に結晶が存在する異常マークの個数に当り、これがPIエラーの原因となる。
(1)余熱によるマークの一部再結晶化、クロスイレーズと言われることも報告されている(例えば特許文献1参照)。
(2)高速記録時に十分な結晶化が行なえずに消し残りが発生することが報告されている(例えば特許文献2参照)。
(3)多数回のDOW記録を行うことにより、アモルファスマーク周辺に結晶が析出することが報告されている(例えば特許文献3〜5参照)。
今回の現象は、DOW記録の回数に依らない点、アモルファスマーク全てに結晶が発生していない点、ジッター特性が良好にも関わらず再生エラーが非常に大きくなっている点、マーク周辺でなくマーク内に結晶が存在する点などから、従来知られている現象とは異なることが分かる。
この中間線速でエラーが増大する現象について本発明者等が更に研究したところ、相変化材料の結晶化速度に大きく依存していることを見出した。
図5に、種々の相変化材料の結晶化速度と3Tマークでの異常マーク数の関係を示す。図の横軸は結晶化速度を示し、縦軸は異常マーク数を示す。
異常マーク数はTIAによる評価で得られた全個数で、3Tよりも短い領域に存在する個数を規格化したものである。図5から分かるように、特定の結晶化速度を境に速い領域で異常マークが増大している。このことから、異常マークの抑制には結晶化速度をある値以下に限定する必要があることが分かる。
また、特許文献7の発明は、記録条件である基準クロック周波数について記載されているが、記録線速や記録密度(最短マーク長)との関係が明確でない。
また、特許文献8には、記録原理が結晶−結晶間の変化であることは開示されているが、結晶−アモルファス間の変化についての記載はない。
また、以下の文献には、第2保護層の主成分が酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫の少なくとも1種から成る発明が開示されているが、それぞれ次のような問題がある。
特許文献9には、InSbXとの組み合わせに関する構成の記載がないので、本発明の目的を達成することはできない。
特許文献10には、2種類の保護層材料を組み合わせる構成が示されているのみであり、これも本発明の目的を達成することができない。
特許文献11に記載の発明は、記録層材料が異なっており、本発明の構成とは全く異なる技術である。
特許文献12〜13には、InSbXとの組み合わせに関する構成の記載がなく、本発明の目的を達成することができない。
特許文献14には、InSbXとの組み合わせに関する構成の記載がなく、また、保護層材料の位置が異なっており、本発明の目的を達成することができない。
また、DVD+RWの8倍速記録用ディスクでは、記録方法及び更なる材料や層構成の最適化で3.3倍速までの低速記録が可能となったが、更なる高速記録と下位互換性とを考慮した幅広い記録線速の両立は非常に困難であるという問題もある。
本発明は、上記のような実情を考慮してなされたもので、異常マークの発生を抑制することができ、DVDの基準線速の8倍速以上の高線速記録が可能で、広い線速範囲でジッター特性と再生エラー特性とが両立する相変化光ディスクの提供を目的とする。
1) 記録再生の為の光を入射する側からみて順に、少なくとも、第1保護層、相変化材料からなる記録層、第2保護層、及び反射層を順に設けた光記録媒体であって、相変化材料の主成分が下記組成式(1)を満足し、第2保護層が酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫の何れか又はそれらの混合物を主成分とすることを特徴とする光記録媒体。
Inα1Sbβ1Xγ1・・・(1)
(式中、XはTe、Zn、Mnの何れか又はそれらの混合物、α1、β1、γ1は原子比、0.10≦α1≦0.25、0.65≦β1≦0.80、0.04≦γ1≦0.15)
2) 第2保護層の電気抵抗率が1.0×10−4〜1.0×101Ω・cmであることを特徴とする1)に記載の光記録媒体。
3) 最高記録線速が30〜56m/s、最低記録線速が10〜14m/sであることを特徴とする1)又は2)に記載の光記録媒体。
4) 最短記録マークが0.5μm以下であることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の光記録媒体。
本発明1では、記録層の相変化材料の主成分を組成式(1)に示すものに限定して結晶化速度を可能な限り遅くすること、及び、第2保護層に酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫の何れか又はそれらの混合物を主成分とする材料を用いることにより、下位互換性に優れた広い記録線速範囲を確保した。なお、上記記録層における主成分とは、相変化材料全体の98重量%以上を占めることを意味し、上記第2保護層における主成分とは、第2保護層材料全体の65重量%以上、好ましくは90重量%以上を占めることを意味する。
酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫はInSb系相変化材料に対して結晶化促進効果があり、この効果が高速記録時での消去を可能にしていると考えられる。一方、結晶化促進効果があるため、低速記録ではアモルファス化(マーク形成)にとって好ましくないが、これらは透明導電膜用の材料であり、熱伝導率が通常の誘電体に比べて非常に大きい為、急冷効果が大きく、低速記録においても記録ストラテジを調整することにより十分にアモルファスマークが記録可能となる。このような急冷効果を十分得る為に、上記特定の材料を第2保護層に用いる必要がある。
InSb系相変化材料に添加する元素Xは、Te、Zn、及びMnの何れか又はそれらの混合物の元素が望ましい。Teを添加すると保存信頼性が向上し、ZnやMnを添加すると記録感度は変調度などが改善される。これらは何れも結晶化速度を遅くする為、その添加量γ1は、0.04≦γ1≦0.15の範囲とする必要がある。
記録層の膜厚は5〜20nmの範囲が望ましい。更に望ましくは10〜15nmの範囲である。この範囲を外れると十分な記録特性を得にくくなる。
第2保護層の膜厚は5〜50nmの範囲が望ましく、より望ましくは10〜40nm、更に望ましくは10〜20nmである。
誘電体材料の熱伝導率を正確に評価することは困難であるが、透明導電膜用誘電体材料の場合には電気抵抗率で代用することができ、電気抵抗率が小さいほど熱伝導率は高いと考えられる。透明導電膜用誘電体材料の電気抵抗率は、大体1.0×10−4Ω・cm程度が最低である。また、1.0×101Ω・cmを越すと十分な急冷効果を得ることができない。
本発明の光記録媒体に対する最も効果的な記録線速範囲は、最高記録線速が30〜56m/s、最低記録線速が10〜14m/sの範囲である。この範囲内ならば安定的に異常マークの発生もない良好な記録特性と、DVDの基準線速の8倍速以上の高速記録の両立が可能となる。また、本発明が最も有効に機能するのは、光記録媒体の記録最短マークが0.5μm以下であるような最短マーク長を記録する場合である。
また、第1保護層は光記録媒体の反射率を調整する働きがあり、望ましい膜厚の範囲は50〜80nmである。50nmより薄い場合は膜厚に対する反射率変動が大きく、80nmより厚い場合は成膜時間が長くなり、光記録媒体の生産性が落ちる。またDVDに用いるような薄い基板では基板変形が問題になる。
特に望ましいのは反射率が最低になる膜厚である。第1保護層の膜厚は反射率に大きく影響することが知られており、膜厚の変化に対して反射率が正弦波的な変化を示す。ここで反射率が最低になるような膜厚を選ぶと記録層への光の入射が最も効率が良いことになり、記録感度の改善や良好なマーク形成に繋がる。但し、反射率が低過ぎるとデータ信号の読み取りが困難になる為、最低になる反射率の絶対値には下限がある。
反射層の膜厚は、100〜300nmが望ましく、更に望ましくは120〜200nmである。100nmより薄いと放熱効果が得られなくなる可能性がある。また300nmより厚くしても放熱効果は変わらず、単に必要のない膜厚を成膜することになる。
また、本発明はBlue−Ray Discのような層構成、即ち、基板上に反射層、第2保護層、記録層、第1保護層、及びカバー層を設け、カバー層側から光を入射して記録再生を行うディスクにも適用することができる。
トラックピッチ0.74μm、グルーブ(凹部)幅0.3μm、溝深さ約30nmの案内溝を有する直径120mmφ、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板上に、ZnS・SiO2(80:20モル%)からなる膜厚60nmの第1保護層2、表1に示す組成の相変化材料(表中の数値は原子比)からなる膜厚14nmの記録層3、ZnO・Al・Mn(78:2:20重量%)からなる膜厚11nmの第2保護層4、Agからなる膜厚200nmの反射層5を順に成膜した。第1保護層の成膜にはRFマグネトロンスパッタ法を用い、記録層、第2保護層、反射層の成膜にはDCマグネトロンスパッタ法を用いた。
次いで、反射層上に、紫外線硬化樹脂(大日本インキ化学工業社製:SD−318)をスピンコート法で膜厚4〜5nm塗布して耐環境保護層6とし、最後に同様な基板(図示せず)を保護基板として貼り合わせて、厚さが約1.2mmの相変化光ディスクを得た。
次いで、この相変化光ディスクを、出力波長830nm、幅約1μm、長さ約75μm、最大出力約2Wのレーザ光にフォーカシング機能を付加したレーザーヘッドを有する初期化装置(日立CP社製POP120−7AH)を用いて初期化した。
記録ストラテジには2T周期ストラテジを用い、パルス幅や記録パワー、消去パワーなどは最適な条件を用いた。EFM+変調方式によるランダムパターンを、DVD3.3倍速(11.5m/s)、6倍速(21m/s)、8倍速(28m/s)、12倍速(42m/s)、16倍速(56m/s)の各線速で、同一トラックに繰り返し10回記録し、それを5トラック行い、真中のトラックを評価した。
評価基準は、ジッター(σ/Tw)が10%以下の場合を「○」、10%を超えた場合を「×」とした。
また、再生装置として、波長650nm、NA0.6のピックアップを有する光ディスク評価装置(パルステック社製DDU−1000)を用い、再生光パワーは0.7mWで評価した。評価結果を表1に示す。
再生エラーであるPIエラーは、各線速において、約400トラックに、10回繰り返し記録(DOW10)を行い、その記録部を1倍速で再生して測定した。
評価基準は、PIエラーが100以下の場合を「◎」、200以下の場合を「○」、300以下の場合を「△」、300を上回る場合を「×」とした。
表1から、本実施例の構成を採用すると、高速記録が可能で且つ広い線速範囲においてPIエラーとジッター特性を両立できることが分かる。
2 第1保護層
3 記録層
4 第2保護層
5 反射層
6 耐環境保護層
Pw 記録パワー
Pe 消去パワー
Pb バイアスパワー
TLP3 3Tマークの記録パルス幅
TCP3 3Tマークの冷却パワー幅
T 基本クロック周期
t 信号幅
Claims (4)
- 記録再生の為の光を入射する側からみて順に、少なくとも、第1保護層、相変化材料からなる記録層、第2保護層、及び反射層を順に設けた光記録媒体であって、相変化材料の主成分が下記組成式(1)を満足し、第2保護層が酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫の何れか又はそれらの混合物を主成分とすることを特徴とする光記録媒体。
Inα1Sbβ1Xγ1・・・(1)
(式中、XはTe、Zn、Mnの何れか又はそれらの混合物、α1、β1、γ1は原子比、0.10≦α1≦0.25、0.65≦β1≦0.80、0.04≦γ1≦0.15) - 第2保護層の電気抵抗率が1.0×10−4〜1.0×101Ω・cmであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
- 最高記録線速が30〜56m/s、最低記録線速が10〜14m/sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光記録媒体。
- 最短記録マークが0.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光記録媒体。
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