JP3877756B2 - 情報記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、エネルギービームの照射により情報の記録が行われる情報記録媒体に係り、特に、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の赤色レーザー対応の光ディスク、Blu−ray等の青色レーザー対応の相変化光ディスクに関する。
近年、DVD−ROM、DVD−Video等の再生専用型光ディスク市場が拡大している。また、DVD−RAMやDVD−RW、DVD+RWといった書き換え可能なDVDが市場投入され、コンピュータ用バックアップ媒体、VTRに代わる映像記録媒体として、市場が急拡大しつつある。さらに、ここ数年、記録型DVDに対する転送レート、アクセススピード向上、および大容量化に対する市場の要求が増大してきている。
DVD−RAM,DVD−RW等の記録消去可能な記録型DVD媒体では、相変化記録方式が採用されている。相変化記録方式では、基本的に「0」と「1」の情報を結晶とアモルファスに対応させ記録を行っている。また、結晶とアモルファスの屈折率が異なるため、結晶に変化させた部分とアモルファスに変化させた部分の反射率の差が最大になるように、各層の屈折率、膜厚を設計している。この結晶化した部分とアモルファス化した部分にレーザービームを照射し、反射光を再生することにより記録された「0」と「1」を検出できる。
また、所定の位置をアモルファスにする(通常、この動作を「記録」と呼ぶ)ためには、比較的高パワーのレーザービームを照射することにより、記録層の温度が記録層材料の融点以上になるように加熱し、所定の位置を結晶にする(通常、この動作を「消去」と呼ぶ)ためには、比較的低パワーのレーザービームを照射することにより、記録層の温度が記録層材料の融点以下の結晶化温度付近になるように加熱する。こうする事により、アモルファス状態と結晶状態を可逆的に変化させることができる。
記録型DVDが転送レート向上に対する要求にこたえるためには、媒体の回転数を上げ、短時間で記録消去を行う方法が一般的である。この際、問題となるのは媒体に情報をオーバーライトする際の記録消去特性である。以下に詳細に以上の問題を説明する。
ある所定の位置をアモルファスから結晶に変化させることを考える。媒体の回転数を上げた場合、レーザービームが上記所定の位置を通過する時間が短くなり、同時に、所定の位置が結晶化温度に保持される時間も短くなる。結晶化温度に保持される時間が短すぎると、十分に結晶成長することができないため、アモルファスが残ってしまうのである。これが、再生信号に反映され、再生信号品質が劣化するのである。
この問題を解決するための方法として、従来一般的に使用されているGe−Sb−Te系相変化記録材料にSnを添加した材料を使用する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、記録材料としてGe−Sn−Sb−Te系材料に、Ag,Al,Cr,Mn等の金属を添加した材料を使用することにより、高密度記録が可能で、繰り返し書換え性能に優れ、結晶化感度の経時劣化が少ない情報記録媒体が得られるとしている。また、特許文献1以外にもGe-Sb-Sn-Te系の記録層材料を用いた例がある(例えば、特許文献2参照。)。
また、記録材料にBi−Ge−Te系相変化記録材料を用いた例があり(例えば、特許文献3参照。)、この文献ではBi−Ge−Te系相変化記録材料の実用的な組成範囲が規定されている。また、Bi−Ge−Se−Te系相変化記録材料の実用的な範囲を規定した例もある(例えば、特許文献4及び5参照。)。さらに、Bi−Ge−Sb−Te系相変化記録材料の実用的な範囲を規定した例もある(例えば、特許文献6参照。)。
また、DVD−RAMの2倍速から4倍速に対応できる記録材料としてGe−Sn−Sb−Te系材料が報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。さらに、DVD−RAMの2倍速と5倍速に対応できる情報記録媒体が報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。ここでの5倍速媒体は、新たに核生成層を付加した8層構造にすることによって5倍速を実現している。
記録型DVDを大容量化する技術として、レーザー光の波長を405nmと短波長化し、対物レンズNAを0.85と大きくすることによりレーザースポット径を小さくしてより高密度の情報を記録する方法が良く知られている(例えば、非特許文献3参照。)。
この方法は通称Blu−ray Discの主要技術として利用されており、従来のDVDより薄い0.1mm基板を採用することによって、ディスクのチルトに対する影響を小さくしている。また、この0.1mm基板は記録層の機械的保護・電気化学的保護(腐食防止)といった重要な役割を果たす。DVD−RAM、DVD−RW等の従来の書換型の媒体は、0.6mmポリカーボネート(PC)基板上に誘電体層、相変化記録層、誘電体層、反射層の4層構造を基本とした積層構造をとり、0.6mm基板同士を貼り合せることによって実現できるが、前記大容量化技術の場合、0.1mm基板の剛性を保つことが難しいため、厚い基板、例えば1.1mmのPC基板上に反射層、誘電体層、相変化記録層、誘電体層と、従来の書換型媒体と逆の順序に積層し、最後に0.1mmカバー層を保護層として形成する方法によって作ることができる。
Blu−ray Discの記録材料としては、Ag−In−Sb−Te系記録材料を用いることができる(例えば、特許文献7参照。)。また、この文献にはAg−In−Sb−Te系記録材料に第5元素、第6元素を添加した記録材料の組成についても詳細に記述されている。
上記カバー層を形成する方法としては、0.1mm厚のシートを紫外線硬化樹脂接着剤で貼り付ける方法と、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により均一に塗布し、紫外線照射により硬化させてカバー層を形成する方法とが提案されている。
一方で、0.6mm基板上に従来と同様の順序で積層した媒体を作製し、レーザー光の波長405nm、対物レンズNAを0.65として情報を記録する方法が提案されている。この方法は上記0.1mmカバー層を用いる方法と比べて、対物レンズNAが小さいためにレーザースポット径が大きく、記録密度は小さくなるが、基板の剛性を保つことができ、記録層の多層化をしやすいという利点がある。また、ディスク上の埃や傷の影響を小さくできるという利点がある。
上記のDVD−RAM、DVD−RW、DVD+RWやBlu−ray Disc等の技術においては、記録トラックを蛇行させるいわゆるウォブルトラックが採用されている。このウォブルにはアドレス情報、同期信号等が記録されており、記録信号は和信号で再生し、ウォブル信号は差信号で再生することによってフォーマットの高効率化を図ることができる。また、ウォブル信号からも同期信号を取ることができるためアドレス情報や記録情報の信頼性向上等に極めて有効な手段であることが知られている。
特開2001−322357号公報(第3−6頁、第1−2図) 特開平2−147289号公報(第2−3頁、第1図) 特開昭62−209741号公報(第3−5頁、第1−2図) 特開昭62−73439号公報(第3−8頁、第1−2図) 特開平1−220236号公報(第3−8頁、第1図) 特開平1−287836号公報(第3−4頁) 特許第2941848明細書(第2−3頁) シゲアキ フルカワ(Shigeaki Furukawa)、他4名,「4Xデータ転送速度を有する新型4.7GB DVD−RAM(Advanced4.7GB DVD-RAM with a 4X Data Transfer Rate)」,プロシーディング オブ ザ 13ス シンポジウム オン フェーズ チェンジ オプティカル インフォメーション ストレージ PCOS2001(Proceedingsof The 13th Symposium on Phase Change Optical Information Storage PCOS2001),2001年12月,p.55 マコト ミヤモト(Makoto Miyamoto)、他4名,「高転送速度4.7GBのDVD−RAM(High-Transfer-Rate4.7-GB DVD-RAM)」,ジョイント インターナショナル シンポジウム オン オプティカル メモリ アンド オプティカル データ ストレージ 2002 テクニカル ダイジェスト(JointInternational Symposium on Optical Memory and Optical Data Storage 2002 TechnicalDigest),2000年7月,p.416 ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics),2000年,第39巻,p.756−761
相変化記録方式を採用した光ディスクに情報を記録する際には、通常、CLV(Constant Linear Velocity:一定線速度)方式により光ディスクの回転数を制御する。すなわち、レーザービームと光ディスクの相対速度が常に一定となるような制御方法である。これに対して、CAV(Constant Angular Velocity:一定角速度)方式は光ディスクを回転させる際の、角速度を一定にして回転を制御する方式である。
CLV方式の特徴は、(a)記録再生時のデータ転送レートが常に一定のため、信号処理回路を極めて簡素化できる、(b)レーザービームと光ディスクの相対速度を常に一定にできるため、記録消去時の記録層の温度履歴を一定にでき、そのため、情報記録媒体に対する負荷が小さい、(c)レーザービームを光ディスクの半径方向に動かした場合、半径位置に応じて、モーターの回転数を制御しなおす必要がある。このため、アクセス速度が大幅に低下する。
CAV方式の特徴は、(a)記録再生時のデータ転送レートが半径位置により異なるため、信号処理回路が増大する、(b)レーザービームと光ディスクの相対速度が、半径位置により異なるため、記録消去時の記録層の温度履歴が半径位置に大きく依存し、特別な構成の光ディスクが必要となる、(c)レーザービームを光ディスクの半径方向に動かした場合、半径位置に応じて、モーターの回転数を制御しなおす必要がないため、高速アクセスが可能となる。
発明者らは、前記従来例で開示されているBi−Ge−Te系相変化記録層材料を使用することにより、現在、開発を行っているディスク線速度が20m/sを超えるような高速記録においても、極めて良好な記録再生特性を実現できることを明らかにした。
しかしながら、前記従来例では、CAV記録を行う際の問題点を十分に考慮していないため、Bi−Ge−Te系相変化記録層材料の組成によっては、CAV記録を行う場合に、情報記録媒体の内周部において、記録された情報から再生される再生信号品質が大幅に劣化するという問題が発生した(課題1)。
また、発明者らは上記従来例のBi−Ge−Te系相変化記録材料を使用した場合、その組成によっては、1000回以上の多数回記録を行った場合、内周部においてのみ、再生信号が大幅に劣化する、特に記録マークのエッジ付近の形状が劣化するという問題を明らかにした。また、記録トラックをウォブルさせ、ウォブルにアドレス情報や同期信号情報を記録した場合に、和信号である再生信号の劣化が差信号であるウォブル信号に影響し、ウォブル信号の劣化が同時に起こるという問題点を明らかにした(課題2)。
また、発明者らは上記従来例のBi−Ge−Te系相変化記録材料を使用した場合、その組成によっては、内周部において記録された記録マーク(アモルファスマーク)と外周部において記録された記録マークの長期保存に対する保存寿命が異なり、外周部の記録マークの長期保存寿命を改善しようとすると、内周部に記録された記録マークの保存寿命が悪化し、反対に内周部の記録マークの長期保存寿命を改善しようとすると、外周部の記録マークの保存寿命が悪化する関係があることを明らかにした(課題3)。
また、発明者らは上記従来例のBi−Ge−Te系相変化記録材料を使用した場合、その組成によっては、内周部においてのみ、記録マークを記録すると隣接トラックに記録されたマークの一部が結晶化してしまうという現象(いわゆる、クロスイレーズ)が発生してしまうことを明らかにした(課題4)。
また、光ディスクのような可換型情報記録媒体にとって、様々な情報記録装置に対する互換性は極めて重要である。例えばDVD−RAM媒体を例にとると、既にCLV回転制御による2倍速記録(転送レート:22Mbps)に対応したDVD−RAMドライブが市場に存在する。このため、上記したCAV記録(22〜55Mbps)用DVD−RAM媒体の2倍速CLV対応ドライブによる記録再生を保証することは消費者の利益のためには欠かせないことである。また、2倍速CLV対応ドライブにより記録されたCAV対応DVD−RAM媒体に対する、CAV対応ドライブによる記録再生を保障することは、当然のことながら非常に重要なことである(発明者らは上記互換性に必要な性能をクロススピード性能と名づけた。)。
ここで、発明者らは、発明者らが開発したCAV対応DVD−RAM媒体のクロススピード性能を鋭意調査した結果、CAV回転制御により情報が記録された情報記録媒体に、CLV回転制御によって情報を再記録した際、あるいはCLV回転制御により記録された情報記録媒体に、CAV回転制御により情報を再記録した際に、記録層材料の組成によっては、以下に示す三つの問題が発生することを明らかにした。
(1)クロススピードオーバーライト性能の悪化(課題5)
(2)クロススピードクロストーク性能の悪化(課題6)
(3)クロススピードクロスイレーズの悪化(課題7)
これらの課題は、同一媒体の同一半径に、高速で記録された記録マークと比較的低速で記録された記録マークが混在して存在することに起因している。
なお、CAV記録対応情報記録媒体は最内周部の線速度から最外周部の線速度まで広い線速度領域で記録再生が可能であるため、例えばCAV記録以外にも消費者の用途に応じて様々な使用方法が可能となる。例えば、内周部においても外周部相当の線速度になるように回転させることにより、アクセススピードは遅くなるが、媒体への平均転送レートは格段に向上する。また、同じ情報記録媒体に対して、再びCAV記録を行うようなことも考えられる。このような場合にも、内周部には外周部相当の高速記録された記録マークと内周部相当の低速記録された記録マークは混在することとなるため、上記クロススピード性能が重要となる。また、用途によっては、CAV記録とCLV記録の両方のメリットを取り入れ、光ヘッドの半径移動に伴う回転数変化が比較的大きい内周部では、通常よりも高速回転させたCAV方式で回転させ(例えば通常のCAV記録回転数の2倍程度)、外周部では、高速CLV記録再生を行うという使用方法(いわゆるパーシャルCAV方式)も考えられる。この場合においても、同一媒体に対して異なった回転制御により再記録する場合、様々な線速度で記録されたマークが存在することになるため、上記クロススピード性能がきわめて重要となる。
また、CLV記録においても複数線速度記録に対応しようとした場合、例えばDVD-RAM媒体を例にとると、2倍速記録(転送レート:22Mbps)と3倍速記録(転送レート:33Mbps)に対応しようとする場合、CAV記録と同様に課題5,6,7に示される問題が発生する場合があることがわかった。またGe−Sn−Sb−Te系ではGeに変えてSnを増加させていくと屈折率変化量が少なくなり、反射率と変調度をDVD−RAMの仕様を満たすことが難しくなるという問題点があった。さらに、5倍速記録になると、従来のGe−Sb−Te系相変化記録材料では核生成層を少なくとも1層追加しなければ5倍速を実現出来ず、ディスクのコストアップ要因になる、ディスク構造が複雑になるといった問題点があった(課題8)。
したがって、本発明の目的は、以上詳細に説明した以下の課題をすべて解決可能な情報記録媒体を提供することにある。
課題1:CAV記録時の最内周部の信号劣化
課題2:CAV記録時の最内周部における多数回書換え性能の劣化
課題3:CAV記録時の最内周部と最外周部の保存寿命劣化
課題4:CAV記録時の最内周部におけるクロスイレーズ性能の悪化
課題5:クロススピードオーバーライト性能の悪化
課題6:クロススピードクロストーク性能の悪化
課題7:クロススピードクロスイレーズ性能の悪化
課題8:クロススピード性能確保の為の総数増加(核生成層付加)
次に、波長405nmの青色レーザービームを用いて相変化型光ディスクに情報を記録する際の問題点を説明する。
一般的に、レーザービームのスポット径はレーザー波長λ、レンズ開口数NAとしたときにλ/NAに比例することが知られており、波長405nmの半導体レーザー、開口数NA0.85の対物レンズを用いる場合のレーザースポット径は、DVDで用いられている波長650nmの半導体レーザー、開口数NA0.60の対物レンズを用いる場合の約半分、波長405nmの半導体レーザー、開口数NA0.65の対物レンズを用いる場合でもDVDの場合の6割程度に小さくなる。従って、同一の線速度でオーバーライトを試みた場合、記録トラック上のある地点を通過する時間も短くなるため、以前に記録した情報のオーバーライトによる消え残りが生じやすくなる。
また、一般的に短波長化されると記録材料の結晶部とアモルファス部の光学定数の差(Δn、Δk)が小さくなるため、記録部と未記録部の反射率差(コントラスト)が小さくなり再生信号振幅が低下する。
また、青色レーザーの方が、ビームが絞り込まれている分ビーム中心のエネルギー強度が赤色レーザーの場合よりも高いため、多数回書換による記録層へのダメージが大きくなる。また、多数回の再生による情報の劣化も大きくなる。
発明者等は、従来例に示した、Ge−Sb−Te系材料、Ge−Sn−Sb−Te系材料、Ag−In−Sb−Te系材料、Bi−Ge−Te系材料、Bi−Ge−Sb−Te系材料、Bi−Ge−Se−Te系材料等を検討し、青色レーザーを用いてもオーバーライトによる消え残りの少ない材料を開発したが、従来例の材料においては、上記の再生信号振幅が低下する問題点と多数回書換あるいは再生によるダメージの問題点を考慮していないため、1000回以上の書換によって信号が大幅に劣化したり、信号振幅が小さくなるなどの問題点を残したままであった。また、トラックピッチを狭くした場合や、記録トラックとして基板に設けられた溝(グルーブ)と溝間(ランド)の両方を用いた場合に隣接トラックに記録されたマークの一部を結晶化してしまうクロスイレーズが顕著になる問題点も残したままであった。クロスイレーズの問題が現れるとトラックピッチを狭くすることができず、青色レーザーによってビーム径を小さくした効果を十分に活かすことができなくなってしまう。
従って、本発明の目的は、以上詳細に説明した従来の記録層材料の問題をすべて解決可能な情報記録媒体を提供することにある。
課題を解決するための手段を説明するために、まず、はじめに、上記8つの課題をさらに整理して詳細に説明する。発明者らが実験を行い、その実験データを解析したところ、上記8つの課題は大きく四つの原因により引き起こされていることがわかった。すなわち、課題1、4、5、6、7、8は共通の原因(原因1:低線速記録時の記録マークの再結晶化)により引き起こされており、さらに課題2は別の原因(原因2:低線速記録を繰り返し行うことによる、記録層材料の偏析)により引き起こされていた。さらに課題3は二つの原因(原因3:記録マークのアモルファス状態の経時変化、原因4:記録マークの長期保存による結晶化)により引き起こされていた。以下に詳細に原因1、原因2、原因3、原因4と各課題の関係を説明し、その後、課題を解決するための手段を示す。
原因1:低線速記録時の記録マークの再結晶化
再結晶化とはレーザービームにより記録層材料を融点以上に加熱した直後の冷却過程で、溶融領域外縁から結晶成長が起こり、記録マークのサイズを小さくしてしまう現象(シュリンク)である。この現象は、記録層材料の結晶化速度を低下させることにより解決するため、現在、実用化されているCLV記録方式の相変化光ディスクでは問題となっていない。しかしながら、CAV記録を行う場合、内周部の再結晶化を抑制できる程度に記録層材料の結晶化速度を低下させた場合、外周部において記録マークの消去が不可能となり、再生信号品質を劣化させるという問題が発生するのである。
再結晶化による記録マークのシュリンクが大きすぎる場合、課題1にあるように再生信号劣化が発生する。これは記録マークのシュリンクによって再生信号振幅が低下すること、再結晶化した部分の結晶サイズは正常に結晶化された部分と結晶粒径が異なることに起因する反射率分散がノイズを発生することによる。また、再生信号振幅を向上させるため、レーザーパワーを高め、幅広い領域を溶融させることも可能であるが、この場合、隣接トラックの記録マークを消去してしまうという問題が発生するのである(課題4)。高線速記録時には記録層溶融後の溶融領域の冷却速度が速くなるため、再結晶化は引き起こされないため、この問題は発生しないが、記録されたマークのサイズが大きいため、隣接トラックに低速記録がなされた場合、より一層、クロスイレーズの問題が深刻となる(課題7)。また、あるトラックに低速記録を行い、その隣接トラックに高速記録を行った場合に、隣接トラックに記録された記録マークの幅が大きくなるため、隣接トラックからの再生信号の漏れこみ(クロストーク)が発生しやすくなる(課題6)。さらに、低速記録された記録マークの上に高速記録を行った場合、高速に記録するために引き起こされる記録マークの消去不足と、すでに記録されている低速記録によるノイズが二重に再生信号を劣化させるためオーバーライト性能が大幅に劣化する(課題5)。以上のように課題1、4、5、6、7は低速記録時の再結晶化によって引き起こされているのである。従来まではこの課題1、4、5、6、7を解決するには、核生成層を従来のGe−Sb−Te系相変化記録材料に付加しなければならず、層数の増加はコスト的に不利である(課題8)。
原因2:低線速記録を繰り返し行うことによる、記録層材料の偏析
発明者らはCAV記録対応のDVD−RAM媒体用にBi−Ge−Te系材料を使用した際、最外周部の線速度に相当する高速記録(転送レート:55Mbps、線速度20.5m/s)を行った際には10万回の繰り返し記録を行っても全く再生信号劣化が発生しないにもかかわらず、最内周相当の線速度に相当する低速記録(転送レート22Mbps、線速度8.2M/s)を行うと、わずか1000回程度の繰り返し記録を行うと、再生信号が大幅に劣化するという現象を明らかにした。この繰り返し書換え耐性の相違は、低速記録時と高速記録時のレーザービーム照射時間の違いからだけでは説明できないほどの大きさである。この現象を詳細に調べた結果、最内周部の線速度に相当する記録速度で記録した場合、繰り返し記録に伴い、再結晶化量が徐々に増大しており、このために特に記録マークのエッジの形状が変化していることがわかった。これは、再結晶化領域の結晶化速度が繰り返し記録により、徐々に増大していることに起因していると考えられる。マークエッジ記録においては、マークポジション記録に比べ、記録膜の劣化が信号品質に及ぼす悪影響の程度が大きいため、特に再生信号の劣化が大きい。
原因3:記録マークのアモルファス状態の経時変化
最外周部相当の高速記録を行うと、記録マークの結晶化速度が長期保存に伴い徐々に低下し、最悪の場合、ほとんど、結晶化しなくなるという現象が発生する。この原因は長期保存により、記録マークのアモルファス状態が徐々に変化し、より安定なアモルファス状態に変化するためと考えられる。このように、複数のアモルファス状態が存在する理由は、明らかになっていないが、おそらく、溶融前の記録膜内に複数の結晶状態が存在し、その結晶状態が溶融後にも反映され、様々なアモルファス状態が分散して存在しているからと考えられる。この結果、アモルファスの結晶化速度が経時変化し、徐々に結晶化速度が低下していくのであろう。
原因4:記録マークの長期保存による結晶化
原因3で述べた現象とは反対に、最内周相当の低速記録を行った場合、長期保存により、記録マークが徐々に結晶化されてしまうという問題が発生する。この原因は、記録層材料の結晶化温度が低すぎ、かつ、アモルファスから結晶に変化する際の活性化エネルギーが小さいことに起因しているものと考えられる。また、低速記録時には溶融領域の冷却速度が小さいことから、冷却過程において、結晶核が生成されているからと考えられる。
以上の詳細に説明したように、課題1、2、4、5、6、7、8は原因1,2により引き起こされており、原因1,2ともに再結晶化を抑制することにより解決可能となるものである。また、課題3を解決するためには記録マーク内のアモルファス状態が複数存在しないことが重要であり、かつ、記録層材料の結晶化温度が高く、さらにアモルファスが結晶化する際の活性化エネルギーが大きいことが重要である。
上記特許文献3にもあるように、Bi−Ge−Te系相変化材料の、実用的な組成範囲はBi,Ge,Teを頂点とする三角組成図のGeTeとBiTeを結ぶ領域に存在するが、発明者らはGeTeとBiTeを結ぶ線上よりもGeが過剰に添加された領域が、高速記録、特にCAV記録に適していることを実験的に明らかにした。
このメカニズムを説明するための発明者らの仮説は以下の通りである。すなわち、Bi−Ge−Te系材料には、現在までに明らかになっている範囲では、GeTe、BiTe、BiGeTe、BiGeTe、BiGeTeの化合物が存在する。記録層の溶融直後に再結晶化が起こる場合、その組成によって異なるが、以上の化合物、およびBi,Ge,Teのうち融点が高いものから順に溶融領域外縁部から再結晶化するものと考えられる。以下に、これらの物質を融点が高い順に並べると以下のようになる。
Ge:約937℃
GeTe:約725℃
BiGeTe:約650℃
BiTe:約590℃
BiGeTe:約584℃
BiGeTe:約564℃
Te:約450℃
Bi:約271℃
以上のようにGeの融点が最も高いため、Bi,Ge,Teを頂点とする三角組成図のGeTeとBiTeを結ぶ線上よりも、Geを過剰に添加することによって、溶融領域の外縁部にGeが偏析しやすくなるものと考えられる。もし、溶融領域の外縁部にGeが過剰に存在すると、溶融領域の外縁部の結晶化速度が遅くなり、結果的に外縁部からの再結晶化を抑制できる。これにより、低速記録時においても再結晶化が発生せず、この結果、上記課題1,2、4,5,6,7、8を解決できるのである。これと同時にトラック中心付近では結晶化速度が高速となり、高速記録時においても良好な消去性能が得られるのである。しかしながら、過剰なGe原子の数が多すぎると結晶化速度が低下してしまい、外周部の記録速度に相当するような高速記録は不可能となるため適度に過剰なGeを添加することが重要である。
また、課題3を解決するためには記録マーク内のアモルファス状態が複数存在しないことが重要であり、かつ、記録層材料の結晶化温度が高く、さらにアモルファスが結晶化する際の活性化エネルギーが大きいことが重要である。発明者らはBi,Ge,Teを頂点とする三角組成図のGe50Te50付近では上記条件を満足することを明らかにした。これは、従来例にもあるようにGeTeの結晶化温度が200℃程度と高く、BiTeに近づくに従って、結晶化温度が低下することが原因の一つである。また、発明者らは実験的にGe50Te50付近では長期保存後においても、アモルファスの状態が変化しにくく、良好な消去特性が得られることを明らかにした。しかしながら、GeTe量が多すぎると結晶化速度が低下し、外周部の記録速度に相当するような高速記録は不可能となる。また、BiTe量が多すぎると、結晶化温度が低下するため保存寿命が悪化する。したがって、最適な組成はGe50Te50近傍であり、かつ適当な量のBiTeを添加した組成が良い。しかも、過剰なGeが存在する領域である。
したがって、上記課題を解決するためには以下に示した情報記録媒体を用いればよい。
(1)波長が390nm以上420nm以下のレーザーを用いる方法は、ビームスポット径が小さくなるため大容量化にはきわめて有効な方法であるが、CDやDVDで一般に用いられている650〜780nm程度の波長のレーザーに比べて、(a)エネルギー強度が高く多数回書換が困難になる、(b)アモルファスと結晶との屈折率差が小さいため信号強度が小さくなる、といった問題が生じる。本発明者らは、レーザービームの波長が390nm以上420nm以下である情報記録媒体であっても、上記記録層材料がBi,GeおよびTeを含み、その組成が、Bi、Ge、Teを頂点とする三角組成図上の以下の各点により囲まれた範囲である組成の記録層を備えることによって良好な特性が得られることを見出した。
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
(2)上記()において、Bi,GeおよびTeの組成が、Bi、Ge、Teを頂点とする三角組成図上の以下の各点により囲まれた範囲である組成の記録層を備えた場合には、情報の記録を10万回程度繰り返した場合においても、再生信号劣化が極めて小さいため、多数回書換えに対する信頼性が飛躍的に向上する。
F2(Bi2.5,Ge47,Te50.5
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
F7(Bi19,Ge27,Te54
なお、記録層に隣接してBiTe,SnTe,PbTe等を含有した核生成層を設けることにより、再結晶化を抑制する効果はさらに向上する。
また、本発明の情報記録媒体に使用される記録層材料が上記組成式であらわされる範囲の関係を維持していれば、たとえ、不純物が混入していたとしても、不純物の原子%が1%以内であれば、本発明の効果は失われない。
また、本発明では上記情報記録媒体を相変化光ディスク、あるいは単に光ディスクと表現することがあるが、本発明はエネルギービームの照射により熱が発生し、この熱により原子配列の変化が起こり、これにより情報の記録が行われる情報記録媒体であれば適用可能であるので、特に情報記録媒体の形状によらず、光カード等の円盤状情報記録媒体以外の情報記録媒体にも適用できる。
また、本明細書中では上記したエネルギービームをレーザービーム、または単にレーザー光あるいは光と表現することがあるが、上記したように本発明は情報記録媒体上に熱を発生させることが可能なエネルギービームであれば効果が得られるので、電子ビーム等のエネルギービームを使用した場合にも、本発明の効果は失われない。
また、本発明では記録層の光入射側に基板が配置されるような構成を前提としているが、記録層の光入射側とは反対側に基板を配置し、光入射側には、基板よりも薄い保護シート等の保護材を配置するような場合においても、本発明の効果は失われない。
以下に、本発明の情報記録媒体の実施例について図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下に図1〜16を用いて本発明の実施例1を示す。
<媒体構成>
図1は本発明の情報記録媒体の基本構成である。すなわち、基板上に第1保護層、第1熱安定化層、記録層、第2熱安定化層、第2保護層、吸収率制御層、熱拡散層、紫外線硬化性保護層が順次積層された構造である。ここで、基板にはポリカーボネート製の厚さ0.6mmの基板を使用しており、基板にはあらかじめ4.7GBDVD−RAMと同じフォーマットの溝形状、および、プリピット形状が形成されている。具体的には記録領域内周23.8mmから外周58.6mmにランドとグルーブがトラックピッチ0.615μmで形成されている基板を用いた。各トラックはセクターに分割され、1セクターには43152チャネルビットの情報を格納した。このうちの2048チャネルビットはアドレス情報などを含むヘッダー信号領域、32チャネルビットはランドもグルーブも形成されていないミラー領域とした。記録可能領域41072チャネルビットは、ギャップ領域160+Jチャネルビット、ガード1領域320+(16×K)チャネルビット、VFO領域560チャネルビット、PS領域48チャネルビット、データ領域38688チャネルビット、ポストアンブル領域16チャネルビット、ガード2領域880−(16×K)チャネルビット、バッファー領域400−Jチャネルビットとし、同一のセクターに情報の書換(オーバーライト)を行う場合には、Jを0から15の間で、またKを0から7の間でランダムに変化させた。データ領域38688チャネルビットは32768チャネルビットのメインデータのほか、データID、エラーディテクションコード、エラーコレクションコード、パリティコード、SYNCコードなどからなる。トラックは186チャネルビットの周期でウォブルを施した。ウォブルC/Nは40dBであった。
スパッタリングプロセスにより、上記基板上に、第1保護層として(ZnS)80(SiO20を135nm、第1熱安定化層としてCrを7nm、後述する記録層を8nm、第2熱安定化層としてCrを5nm、第2保護層として(ZnS)90(SiO20を33nm、吸収率制御層としてCr90(Cr10を40nm、熱拡散層としてAlを150nm製膜した。さらに、UV樹脂をこの上に塗布し、UV照射しながら、厚さ0.6mmの透明基板を張り合わせることにより、以下の実施例1に使用した情報記録媒体を得た。記録層材料の詳細な説明は後述する。
<本実施例に使用した情報記録再生装置>
以下に本発明の情報記録媒体の情報記録、再生、及び装置の動作を、図2を使用して説明する。なお、記録再生を行う際のモーター制御方法としては、記録再生を行うゾーン毎にディスクの回転数を変化させるCAV方式を採用している。ディスク線速度は最内周(半径24mm)で8.2m/秒、最外周(半径58.5mm)で20m/秒である。なお、本発明では、基本的に「内周部」とは約半径24mm、外周部とは約半径58.5mmを指している。また、実験の都合上、中周部(半径40mm)において、回転数を変えることにより、内周部相当の記録線速度、外周部相当の記録線速度で上記情報記録媒体を回転させ、実験を行うこともあるが、このような実験を行っても本発明の効果が失われないことは言うまでもない。
次に、記録再生の過程を以下に示す。まず、記録装置外部からの情報は8ビットを1単位として、8−16変調器2−8に伝送される。情報記録媒体(以下、光ディスクと呼ぶ)2−1上に情報を記録する際には、マークエッジ方式を用い、情報8ビットを16ビットに変換する変調方式、いわゆる8−16変調方式を用い記録を行う。この変調方式では媒体上に、8ビットの情報に対応させた3T〜14Tのマーク長の情報の記録を行っている。図中の8−16変調器2−8はこの変調を行っている。なお、ここでTとは情報記録時のクロックの周期を表しており、ここでは最内周で17.1ns、最外周で7nsとした。
8−16変調器2−8により変換された3T〜14Tのデジタル信号は記録波形発生回路2−6に転送され、高パワーパルスの幅を約T/2とし、高パワーレベルのレーザー照射間に幅が約T/2の低パワーレベルのレーザー照射を行い、上記一連の高パワーパルス間に中間パワーレベルのレーザー照射が行われるマルチパルス記録波形が生成される。この際、記録マークを形成するための、高パワーレベルと、記録マークの結晶化が可能な中間パワーレベルを、測定する媒体、および半径位置ごとに最適な値に調整した。また、上記記録波形発生回路2−6内において、3T〜14Tの信号を時系列的に交互に「0」と「1」に対応させ、「0」の場合には中間パワーレベルのレーザーパワーを照射し、「1」の場合には高パワーレベルのパルスを含む一連の高パワーパルス列を照射するようにしている。この際、光ディスク2−1上の中間パワーレベルのレーザービームが照射された部位は結晶となり、高パワーレベルのパルスを含む一連の高パワーパルス列のレーザービームが照射された部位はアモルファス(マーク部)に変化する。また、上記記録波形発生回路2−6内は、マーク部を形成するための高パワーレベルを含む一連の高パワーパルス列を形成する際に、マーク部の前後のスペース長に応じて、マルチパルス波形の先頭パルス幅と最後尾のパルス幅を変化させる方式(適応型記録波形制御)に対応したマルチパルス波形テーブルを有しており、これによりマーク間に発生するマーク間熱干渉の影響を極力排除できるマルチパルス記録波形を発生している。
記録波形発生回路2−6により生成された記録波形は、レーザー駆動回路2−7に転送され、レーザー駆動回路2−7はこの記録波形をもとに、光ヘッド2−3内の半導体レーザーを発光させる。本記録装置に搭載された光ヘッド2−3には、情報記録用のレーザービームとして光波長655nmの半導体レーザーが使用されている。また、このレーザー光をレンズNA0.6の対物レンズにより上記光ディスク2−1の記録層上に絞り込み、上記記録波形に対応したレーザーのレーザービームを照射することにより、情報の記録を行った。
一般的に、レーザー波長λのレーザー光をレンズ開口数NAのレンズにより集光した場合、レーザービームのスポット径はおよそ0.9×λ/NAとなる。したがって、上記条件の場合、レーザービームのスポット径は約0.98ミクロンである。この時、レーザービームの偏光を円偏光とした。
また、本記録装置はグルーブとランド(グルーブ間の領域)の両方に情報を記録する方式(いわゆるランドグルーブ記録方式)に対応している。本記録装置ではL/Gサーボ回路2−9により、ランドとグルーブに対するトラッキングを任意に選択することができる。記録された情報の再生も上記光ヘッド2−3を用いて行った。レーザービームを記録されたマーク上に照射し、マークとマーク以外の部分からの反射光を検出することにより、再生信号を得る。この再生信号の振幅をプリアンプ回路2−4により増大させ、8−16復調器2−10に転送する。8−16復調器2−10では16ビット毎に8ビットの情報に変換する。以上の動作により、記録されたマークの再生が完了する。以上の条件で上記光ディスク2−1に記録を行った場合、最短マークである3Tマークのマーク長はおよそ0.42μm、最長マークである14Tマークのマーク長は約1.96μmとなる。
なお、内周部ジッター、外周部ジッターを行う際には上記3T〜14Tを含むランダムパターンの信号の記録再生を行い、再生信号に波形等価、2値化、PLL(Phase Locked Loop)処理を行い、ジッターを測定した。
<記録層材料の評価基準>
内周部および外周部の記録消去性能、信号品質を評価するため、内周部および外周部相当の記録線速度におけるジッター(ランダム信号を10回記録後のジッター)を測定した。また、書換寿命の試験を行うため、内周部および外周部相当の記録線速度における1万回書換え後のジッターをそれぞれ測定し、10回記録後のジッターからの上昇量を測定した。さらに、内周部相当の記録線速度で記録された記録マーク内の再結晶化の影響を評価するため、上記内周部相当の記録線速度と、外周部相当の記録線速度において11Tの単一周波数信号を記録し、内外周振幅比(内周部振幅/外周部振幅)を測定した。この際、レーザーパワー設定の誤差による影響を排除するため、最適パワーを記録開始パワーの1.7倍として記録を行った。また、保存寿命の評価を行うため加速試験を行った。具体的には測定対象媒体に内周部相当の線速度でランダム信号を10回記録し、そのジッターを測定しておき、90℃に加熱されたオーブンに20時間放置後のジッター上昇量との差を測定した(いわゆる、アーカイバル再生ジッター)。さらに、上記試験と同時に異なるトラックに外周部相当の記録線速度でランダム信号を10回記録後にジッターを測定しておき、90℃の温度で20時間維持した後に同一トラック上にオーバーライトを1回だけ行い、加速試験前のジッターとの差を測定した(いわゆる、アーカイバルオーバーライトジッター)。なお、本情報記録媒体ではランド-グルーブ記録を採用している。このため、ここではランドとグルーブに情報を記録した際の平均値を示した。なお、各性能の目標値は以下の通りである。
ジッター:10%以下
書換寿命:2%以下
内外周振幅比:0.8以上
保存寿命(内周):2%以下
保存寿命(外周):3%以下
なお、ジッターの目標値10%は規格値(9%以下)と比較して大きいが、先に説明したように本実施例に使用される情報記録媒体では、記録層の性能のみを比較するため、記録層の組成以外の構成は変化させていない。このため、各記録層に適した構成にした場合と比較して少なくとも、1%以上のジッター上昇が発生する。そこで、あえて、目標値を上げているのである。しかし、この試験により10%以下となったいくつかの記録層組成について、媒体構成の最適化を行ったところ、すべての媒体で、ジッターが9%以下に低下した。したがって、上記目標は記録層組成の性能を判断する上で妥当なものである。また、再結晶化量の評価として内周部振幅/外周部振幅を0.8以上とすることにしたが、以上の目標を達成した情報記録媒体では、十分に再結晶化が抑制されているため、最内周部におけるクロスイレーズ性能の悪化、クロススピードオーバーライト性能の悪化、クロススピードクロストーク性能の悪化、クロススピードクロスイレーズ性能の悪化といった問題は発生しなかった。一方、以上の目標を達成しなかった情報記録媒体では、上記のうち、いずれかの問題が発生する確率が格段に大きくなった。したがって、上記目標は妥当なものである。
なお、図3〜8及び11〜14において本実施例の評価結果を◎、○、×で表記するが、判定基準は以下の通りである。
ジッター
◎:9%以下、○:10%以下、×:10%より大きい
書換寿命
◎:1%以下、○:2%以下、×:2%より大きい
内外周振幅比
◎:0.9以上、○:0.8以上、×:0.8より小さい
保存寿命(内周)
◎:1%以下、○:2%以下、×:2%より大きい
保存寿命(外周)
◎:2%以下、○:3%以下、×:3%より大きい
総合評価
◎:以上の評価項目すべてが◎の場合、
○:以上の評価項目中に×がなく、一つでも○がある場合、
×:以上の評価項目中に一つでも×の項目がある場合、
<記録層の製膜方法>
記録層の組成を変化させるため、本実施例ではGe50Te50とBiTeターゲットの同時スパッタリングを行った。また、本実施例ではBi,Ge、Teを頂点とする三角組成図のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上以外にも過剰なGeが添加されている組成、過剰なTeが添加されている組成についても検討を行ったが、この際には、BiTeターゲットにGeの小片、あるいはTeの小片を貼り付けたスパッタリングターゲットを用い、Ge50Te50のスパッタリングターゲットと同時にスパッタリングした。さらに、同時スパッタリングする2種類のターゲットに印加するスパッタリングパワーを、各々調整することにより所望の組成の記録層材料を得た。
なお、この際、Ge50Te50ターゲットと、BiTeターゲットのサイズを同じにした場合、BiTeのスパッタレートが大きすぎるため、Ge50Te50膜へのBiTe添加量を正確に制御することが困難となった。そこで、Ge50Te50ターゲットのサイズよりも、BiTeターゲットのサイズを小さくした。具体的には、Ge50Te50ターゲットのサイズを直径5インチの円盤状とし、BiTeターゲットのサイズを直径3インチの円盤状とした。
<記録層材料の評価結果>
1.A系列
A系列ではBi,Ge,Teを頂点とする三角組成図上のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上よりも過剰にTeが添加されている記録層材料を有する情報記録媒体を作成し、評価を行った。この際、Bi−Te側のスパッタリングターゲットにより製膜された記録層材料の組成はBi35Te65であった。以下に各組成の記録層の評価結果を、図3を用いて説明する。
A1:記録層の組成はBiGe49Te50であった。内周部の書換寿命、外周部のジッター、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
A2:記録層の組成はBiGe44Te52であった。内周部の書換寿命、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
A3:記録層の組成はBiGe43Te52であった。内周部の書換寿命、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
A4:記録層の組成はBiGe41Te53であった。内周部の書換寿命、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
A5:記録層の組成はBiGe40Te53であった。内周部の書換寿命、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
A6:記録層の組成はBi10Ge36Te54であった。内周部の書換寿命、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
A7:記録層の組成はBi15Ge29Te56であった。内周部の書換寿命、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
A8:記録層の組成はBi18Ge24Te58であった。内周部の書換寿命、外周部の保存寿命、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
A9:記録層の組成はBi22Ge19Te59であった。内周部の書換寿命、内周部の保存寿命、外周部の保存寿命、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
以上のように、Bi,Ge、Teを頂点とする三角組成図のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上の記録層材料に、過剰なTeが添加された組成の記録層材料を使用した場合、すべての情報記録媒体で内周部ジッターおよび内周部の書換寿命が目標未達となり、CAV記録用情報記録媒体としては実用的ではないことがわかった。
2.B系列
B系列ではBi,Ge,Teを頂点とする三角組成図上のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上の記録層材料を有する情報記録媒体を作成し、評価を行った。この際、Bi−Te側のスパッタリングターゲットにより製膜された記録層材料の組成はBi40Te60であった。以下に各組成の記録層の評価結果を、図4を用いて説明する。
B1:記録層の組成はBiGe49Te50であった。内周部の書換寿命、外周部のジッター、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
B2:記録層の組成はBiGe47Te51であった。すべての項目で目標を達成しているが、外周部ジッターの評価が○であったため、総合評価は○であった。
B3:記録層の組成はBiGe46Te51であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
B4:記録層の組成はBiGe42Te52であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
B5:記録層の組成はBiGe41Te52であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
B6:記録層の組成はBi12Ge35Te53であった。すべての項目で目標を達成していたが、内周部ジッター、内周部書換寿命、内周部保存寿命、外周部保存寿命、内外周振幅比の評価が○であったため、総合評価は○であった。
B7:記録層の組成はBi19Ge26Te55であった。すべての項目で目標を達成していたが、内周部ジッター、内周部書換寿命、内周部保存寿命、外周部保存寿命、内外周振幅比の評価が○であったため、総合評価は○であった。
B8:記録層の組成はBi21Ge24Te55であった。内周部の保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
B9:記録層の組成はBi25Ge19Te56であった。内周部の保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
以上のように、Bi,Ge、Teを頂点とする三角組成図のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上の記録層材料を使用した場合であって、かつGe量が26〜47%の場合にすべての情報記録媒体ですべての目標を達成しており、特にGe量が41〜46%の場合に極めて良好な性能を示すことがわかった。
3.C系列
C系列ではBi,Ge,Teを頂点とする三角組成図上のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上よりも過剰にGeが添加されている記録層材料を有する情報記録媒体を作成し、評価を行った。この際、Bi−Te側のスパッタリングターゲットにより製膜された記録層材料の組成はBi32Ge20Te48であった。以下に各組成の記録層の評価結果を、図5を用いて説明する。
C1:記録層の組成はBiGe48Te50であった。外周部ジッターが目標未達であったため、総合評価は×であった。
C2:記録層の組成はBiGe47Te50であった。すべての項目で目標を達成していたが、外周部ジッターの評価が○であったため、総合評価は○であった。
C3:記録層の組成はBiGe46Te50であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
C4:記録層の組成はBiGe43Te50であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
C5:記録層の組成はBi10Ge41Te49であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
C6:記録層の組成はBi14Ge37Te49であった。すべての項目で目標を達成していたが、外周部の保存寿命の評価が○であったため、総合評価は○であった。
C7:記録層の組成はBi19Ge32Te49であった。すべての項目で目標を達成していたが、内周部ジッター、内周部書換寿命、内周部保存寿命、外周部保存寿命、内外周振幅比の評価が○であったため、総合評価は○であった。
C8:記録層の組成はBi30Ge22Te48であった。すべての項目で目標を達成していたが、内周部ジッター、内周部書換寿命、内周部保存寿命、外周部ジッター、外周部保存寿命、内外周振幅比の評価が○であったため、総合評価は○であった。
C9:記録層の組成はBi33Ge19Te48であった。外周部ジッターおよび外周部保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
以上のように、Bi,Ge、Teを頂点とする三角組成図のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上の記録層材料に、過剰なGeを適当な量添加した組成の記録層材料を使用した場合であって、かつGe量が22〜47%の場合にすべての情報記録媒体ですべての目標を達成しており、特にGe量が41〜46%の場合に極めて良好な性能を示すことがわかった。
4.D系列
D系列ではBi,Ge,Teを頂点とする三角組成図上のC系列の組成線上よりも、さらに過剰にGeが添加されている記録層材料を有する情報記録媒体を作成し、評価を行った。この際、Bi−Te側のスパッタリングターゲットにより製膜された記録層材料の組成はBi30Ge26Te44であった。以下に各組成の記録層の評価結果を、図6を用いて説明する。
D1:記録層の組成はBiGe48Te49であった。外周部ジッターが目標未達であったため、総合評価は×であった。
D2:記録層の組成はBiGe47Te49であった。すべての項目で目標を達成していたが、外周部ジッターの評価が○であったため、総合評価は○であった。
D3:記録層の組成はBiGe46Te49であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
D4:記録層の組成はBiGe44Te48であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
D5:記録層の組成はBi10Ge42Te48であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
D6:記録層の組成はBi16Ge37Te47であった。すべての項目で目標を達成していたが、外周部ジッターおよび外周部保存寿命の評価が○であったため、総合評価は○であった。
D7:記録層の組成はBi19Ge35Te46であった。外周部ジッターおよび外周部保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
D8:記録層の組成はBi23Ge31Te46であった。外周部ジッターおよび外周部保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
D9:記録層の組成はBi28Ge27Te45であった。外周部ジッターおよび外周部保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
以上のように、Bi,Ge、Teを頂点とする三角組成図のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上の記録層材料に、C系列と同様に、過剰なGeが適当な量添加された組成の記録層材料を使用した場合であって、かつGe量が37〜47%の場合にすべての情報記録媒体ですべての目標を達成しており、特にGe量が42〜46%の場合に極めて良好な性能を示すことがわかった。
5.E系列
E系列ではBi,Ge,Teを頂点とする三角組成図上のD系列の組成線上よりも、さらに過剰にGeが添加されている記録層材料を有する情報記録媒体を作成し、評価を行った。この際、Bi−Te側のスパッタリングターゲットにより製膜された記録層材料の組成はBi27Ge32Te41であった。以下に各組成の記録層の評価結果を、図7を用いて説明する。
E1:記録層の組成はBiGe49Te49であった。外周部ジッターが目標未達であったため総合評価は×であった。
E2:記録層の組成はBiGe48Te49であった。外周部ジッターが目標未達であったため総合評価は×であった。
E3:記録層の組成はBiGe45Te47であった。外周部ジッターが目標未達であったため総合評価は×であった。
E4:記録層の組成はBi11Ge43Te46であった。外周部ジッターが目標未達であったため総合評価は×であった。
E5:記録層の組成はBi13Ge41Te46であった。外周部ジッターおよび外周部保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
E6:記録層の組成はBi16Ge39Te45であった。外周部ジッターおよび外周部保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
E7:記録層の組成はBi20Ge37Te43であった。外周部ジッターおよび外周部保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
E8:記録層の組成はBi24Ge34Te42であった。外周部ジッターおよび外周部保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
E9:記録層の組成はBi27Ge32Te41であった。外周部ジッターおよび外周部保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
以上のように、Bi,Ge、Teを頂点とする三角組成図のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上の記録層材料に、過剰なGeが過剰に添加された組成の記録層材料を使用した場合、外周部におけるオーバーライト性能が急激に悪化するため、CAV記録用の情報記録媒体としては、実用的ではないことがわかった。
6.最適な記録層材料組成範囲
以上の実施例1の、総合評価の結果を図8にまとめた。また、この結果をもとに総合評価が○となる組成範囲を図9の三角組成図に示した。すなわち、以下の組成点により囲まれる組成範囲である。
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
さらに、全ての評価項目で極めて良好な性能を示した総合評価が◎となる組成範囲を図10に示した。すなわち、以下の組成点により囲まれる組成範囲である。
B3(Bi,Ge46,Te51
C3(Bi,Ge46,Te50
D3(Bi,Ge46,Te49
D5(Bi10,Ge42,Te48
C5(Bi10,Ge41,Te49
B5(Bi,Ge41,Te52
また、各ディスクに対して10万回の多数回書換えを行った場合の総合評価の結果を図11に示した。判定基準は1万回の多数回書換えを行った際と同じにしてある。図8との比較により明らかなように、B系列の総合評価が悪化している。この原因は図12に示した、B系列の各評価項目の評価結果から明らかである。B系列の媒体に対して10万回の多数回書換えを行った場合、外周部の書換寿命は1万回書換えを行った場合(図4)と同様に全ての条件で◎の評価となっている。これに対して、内周部相当の線速度で回転させ10万回の多数回書換えを行った場合、すべての媒体で目標未達となった。このようにB系列は1万回程度の書換え回数では、実用的であるが、10万回程度の多数回書換え可能回数が要求されるような用途では、実用的ではないことが明らかとなった。
7.F系列
上記したように、記録層に含有されるBi、Ge、およびTeの組成比がGeTeとBiTeを結ぶ線上よりもGeが過剰に存在する範囲にあることにより、記録時における溶融領域の外縁部にGeが偏析しやすくなる。また、Geの結晶化速度は上記したTe化合物、Biと比較して、非常に遅い。この結果、溶融領域の外縁部の結晶化速度が遅くなり、結果的に溶融領域外縁部からの再結晶化を抑制できる。特に、上記再結晶化を抑制できることによって、多数回書換え後の記録膜組成の偏析による信号劣化を抑制できる。したがって、わずかでも上記過剰なGeが存在することにより、本発明の効果が発現する。一例として以下に示したF系列の実験結果を示す。
F系列では記録層中のBi,GeおよびTeの組成比が、B系列とC系列の間に位置している組成の記録層材料を使用した。すなわち、Bi、GeおよびTeの組成比がBi,Ge,Teを頂点とする三角組成図上のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上の記録層材料を有する情報記録媒体を作成し、評価を行った。この際、Bi−Te側のスパッタリングターゲットにより製膜された記録層材料の組成はBi38GeTe57であった。また、書換え寿命の評価を行う際には、10万回の書換えを行い上記した判定基準により判定を行った。各組成の記録層の評価結果を、図13を用いて説明する。
F1:記録層の組成はBiGe49Te50であった。内周部の書換寿命、外周部のジッター、および内外周振幅比が目標未達であった。このため、総合評価は×であった。
F2:記録層の組成はBi2.5Ge47Te50.5であった。すべての項目で目標を達成しているが、外周部ジッターの評価が○であったため、総合評価は○であった。
F3:記録層の組成はBi3.5Ge46Te50.5であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
F4:記録層の組成はBi6.5Ge42Te51.5であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
F5:記録層の組成はBi7.5Ge41Te51.5であった。すべての項目で目標を十分に達成しているため、総合評価は◎であった。
F6:記録層の組成はBi13Ge35Te52であった。すべての項目で目標を達成していたが、内周部ジッター、内周部書換寿命、内周部保存寿命、外周部保存寿命、内外周振幅比の評価が○であったため、総合評価は○であった。
F7:記録層の組成はBi19Ge27Te54であった。すべての項目で目標を達成していたが、内周部ジッター、内周部書換寿命、内周部保存寿命、外周部保存寿命、内外周振幅比の評価が○であったため、総合評価は○であった。
F8:記録層の組成はBi22Ge24Te54であった。内周部の保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
F9:記録層の組成はBi26Ge19Te55であった。内周部の保存寿命が目標未達であったため、総合評価は×であった。
以上のように、Bi,Ge、Teを頂点とする三角組成図のGe50Te50とBiTeを結ぶ線上の記録層材料に、C系列と同様に、過剰なGeが適量添加された組成の記録層材料を使用した場合であって、かつGe量が27〜47%の場合に、すべての情報記録媒体ですべての目標を達成しており、特にGe量が41〜46%の場合に極めて良好な性能を示すことがわかった。
8.10万回の多数回書換寿命を有する最適な記録層材料組成範囲
以上の実施例の、総合評価の結果を図14にまとめた。また、この結果を元に総合評価が○となる組成範囲を図15の三角組成図に示した。すなわち、以下の組成点により囲まれる組成範囲である。
F2(Bi2.5,Ge47,Te50.5
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
F7(Bi19,Ge27,Te54
さらに、全ての評価項目で極めて良好な性能を示した総合評価が◎となる組成範囲を図16に示した。すなわち、以下の組成点により囲まれる組成範囲である。
F3(Bi3.5,Ge46,Te50.5
C3(Bi,Ge46,Te50
D3(Bi,Ge46,Te49
D5(Bi10,Ge42,Te48
C5(Bi10,Ge41,Te49
F5(Bi7.5,Ge41,Te51.5
<最適構成>
本発明の情報記録媒体に使用される、各層の最適組成、および最適膜厚について説明する。
(第1保護層)
第1保護層の光入射側に存在する物質はポリカーボネート等のプラスチック基板、あるいは、紫外線硬化樹脂等の有機物である。また、これらの屈折率は1.4から1.6程度である。上記有機物と第1保護層の間で反射を効果的に起こすためには第1保護層の屈折率は2.0以上であることが望ましい。第1保護層は光学的には屈折率が光入射側に存在する物質(本実施例では基板に相当する)以上であり、光の吸収が発生しない範囲において屈折率が大きいほうが良い。具体的には屈折率nが2.0〜3.0の間であり、光を吸収しない材料であり、特に金属の酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、セレン化物を含有することが望ましい。また、熱伝導率が少なくとも2W/mk以下である事が望ましい。特にZnS−SiO系の化合物は熱伝導率が低く第1保護層として最適である。さらに、SnO、あるいはSnOにZnS,CdS、SnS、GeS,PbS等の硫化物を添加した材料、あるいはSnOにCr、Mo等の遷移金属酸化物を添加した材料は、熱伝導率が低く、ZnS−SiO系材料よりも、熱的に安定であるため、第1熱安定化層の膜厚が2nm以下となった場合においても、記録膜への溶け込みが発生しないため、特に第1保護層として優れた特性を示す。また、基板と記録層との間の光学干渉を有効に利用するためには、レーザーの波長が650nm程度の場合、第1保護層の最適膜厚は110nm〜145nmである。
(第1熱安定化層)
本発明の相変化記録層材料の融点は650℃以上と高温であるため、第1保護層と記録層の間に熱的に極めて安定な第1熱安定化層を設けることが望ましい。具体的には、Cr、Ge、SiC等の高融点酸化物、高融点窒化物、高融点炭化物が熱的に安定で、長期保存時においても膜はがれによる劣化を引き起こさない材料が適している。また、第1熱安定化層にはBi,Sn,Pb等の記録層の結晶化を促進する材料が含有されていると、記録層の再結晶化を抑制する効果が得られるためさらに望ましい。特に、Bi,Sn,PbのTe化物、酸化物、あるいはBi,Sn,PbのTe化物、酸化物と窒化ゲルマニウムとの混合物、あるいはBi,Sn,PbのTe化物、酸化物と遷移金属酸化物、遷移金属窒化物との混合物が望ましい。遷移金属は価数を容易に変化させるため、たとえBi,Sn,Pb,Te等の元素が遊離しても、上記遷移金属が価数を変え、遷移金属とBi,Sn,Pb,Teの間で結合が起こり、熱的に安定な化合物を生成するからである。特に、Cr,Mo,Wは融点が高く、容易に価数を変えやすく、上記金属との間で、熱的に安定な化合物を生成しやすいため優れた材料である。第1熱安定化層中の上記Bi,Sn,PbのTe化物、酸化物の含有量は、記録層の結晶化を促進するためには可能な限り多いほうが、第1熱安定化層は第2熱安定化層と比較して、レーザービーム照射により、高温になりやすく記録膜に熱安定化層材料が溶け込む等の問題が発生するため、少なくともBi,Sn,PbのTe化物、酸化物の含有量を70%以下に抑える必要がある。
第1熱安定化層の膜厚は0.5nm以上であればその効果を発揮する。しかしながら、その膜厚が2nm以下の場合、第1保護層材料が第1熱安定化層通過し、記録層に溶け込み多数回書換え後の再生信号品質を劣化させる場合がある。したがって、2nm以上であることが望ましい。また、第1熱安定化層の膜厚が10nm以上と厚い場合、光学的に悪影響を与えるため、反射率低下、信号振幅低下等の弊害がある。したがって、第1熱安定化層の膜厚は2nm以上10nm以下が良い。
(記録層)
すでに述べたように、Bi−Ge−Te系相変化記録層材料の組成が以下の組成点B2,C2,D2,D6,C8,B7で囲まれている場合、Geの代わりに適当な量のSi,Sn,Pbを添加することにより、容易に、対応可能な線速度範囲を調整することができる。例えば、SiによりGeを置換した場合、GeやGeTeよりも融点が高く結晶化速度が小さいSiTeが生成するため、溶融部外縁部にSiTeが偏析し、再結晶化が抑制される。また、SnTeやPbTeによりGeTeを置換した場合、核生成速度が向上するため、高速記録時の消去不足を補うことができる。
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
すなわち、以下に示す組成系の記録層材料である。
4元系記録層材料:Bi−Ge−Si−Te,Bi−Ge−Sn−Te,Bi−Ge−Pb−Te
5元系記録層材料:Bi−Ge−Si−Sn−Te,Bi−Ge−Si−Pb−Te,Bi−Ge−Sn−Pb−Te
6元系記録層材料:Bi−Ge−Si−Sn−Pb−Te
以上のような多元系の組成にすることにより、記録層材料の性能をよりきめ細かに制御することが可能となる。
さらに、本発明の情報記録媒体に使用される記録層材料にBを添加すると、再結晶化が、より一層抑制され優れた性能を示す情報記録媒体が得られる。これは、BがGeと同様に再結晶化を抑制する効果があるからであるが、B原子は非常に小さいため、速やかに偏析することが可能であるからと考えられる。
なお、本発明の情報記録媒体に使用される記録層材料が上記組成式であらわされる範囲の関係を維持していれば、たとえ、不純物が混入していたとしても、不純物の原子%が1%以内であれば、本発明の効果は失われない。
また、本発明の媒体構造では記録層の膜厚は、5nm以上15nm以下が光学的に最適である。特に7nm以上11nm以下の場合、多数回書換え時の記録膜流動による再生信号劣化を抑え、しかも光学的に変調度を最適にすることができるため、都合が良い。
(第2熱安定化層)
第1熱安定化層と同様に、本発明の相変化記録層材料の融点は650℃以上と高温であるため、第2保護層と記録層の間に熱的に極めて安定な第2熱安定化層を設けることが望ましい。具体的には、Cr、Ge、SiC等の高融点酸化物、高融点窒化物、高融点炭化物が熱的に安定で、長期保存時においても膜はがれによる劣化を引き起こさない材料が適している。また、第2熱安定化層にはBi,Sn,Pb等の記録層の結晶化を促進する材料が含有されていると、記録層の再結晶化を抑制する効果が得られるためさらに望ましい。
特に、Bi,Sn,PbのTe化物、酸化物、あるいはBi,Sn,PbのTe化物、酸化物と窒化ゲルマニウムとの混合物、あるいはBi,Sn,PbのTe化物、酸化物と遷移金属酸化物、遷移金属窒化物との混合物が望ましい。遷移金属は価数を容易に変化させるため、たとえBi,Sn,Pb,Te等の元素が遊離しても、上記遷移金属が価数を変え、遷移金属とBi,Sn,Pb,Teの間で結合が起こり、熱的に安定な化合物を生成するからである。特に、Cr,Mo,Wは融点が高く、容易に価数を変えやすく、上記金属との間で、熱的に安定な化合物を生成しやすいため優れた材料である。第1熱安定化層中の上記Bi,Sn,PbのTe化物、酸化物の含有量は、記録層の結晶化を促進するためには可能な限り多いほうが、第1熱安定化層は第2熱安定化層と比較して、レーザービーム照射により、高温になりやすく記録膜に熱安定化層材料が溶け込む等の問題が発生するため、少なくともBi,Sn,PbのTe化物、酸化物の含有量を70%以下に抑える必要がある。
第2熱安定化層の膜厚は0.5nm以上であればその効果を発揮する。しかしながら、その膜厚が1nm以下の場合、第2保護層材料が第2熱安定化層を通過し、記録層に溶け込み多数回書換え後の再生信号品質を劣化させる場合がある。したがって、1nm以上であることが望ましい。また、第2熱安定化層の膜厚が5nmより厚い場合、光学的に悪影響を与えるため、反射率低下、信号振幅低下等の弊害がある。したがって、第2熱安定化層の膜厚は1nm以上5nm以下が良い。
(第2保護層)
第2保護層は光を吸収しない材料であり、特に金属の酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、セレン化物を含有することが望ましい。また、熱伝導率が少なくとも2W/mk以下である事が望ましい。特にZnS−SiO系の化合物は熱伝導率が低く第2保護層として最適である。さらに、SnO、あるいはSnOにZnS、CdS、SnS、GeS、PbS等の硫化物を添加した材料、あるいはSnOにCr、Mo等の遷移金属酸化物を添加した材料は、熱伝導率が低く、ZnS−SiO系材料よりも、熱的に安定であるため、第2熱安定化層の膜厚が1nm以下となった場合においても、記録膜への溶け込みが発生しないため、特に第2保護層として優れた特性を示す。また、記録層と吸収率制御層との間の光学干渉を有効に利用するためには、レーザーの波長が650nm程度の場合、第2保護層の最適膜厚は25nm〜45nmである。
(吸収率制御層)
吸収率制御層は複素屈折率n、kが1.4<n<4.5、−3.5<k<−0.5の範囲が良く、特に2<n<4、−3.0<k<−0.5の材料が望ましい。吸収率制御層では光を吸収するため、熱的に安定な材料が好ましく、望ましくは融点が1000℃以上であることが要求される。また、保護層に硫化物を添加した場合、特に大きなクロスイレーズ低減効果があったが、吸収率制御層の場合、ZnS等の硫化物の含有量が少なくとも保護層に添加される上記硫化物の含有量よりも少ないことが望ましい。融点低下、熱伝導率低下、吸収率低下等の悪影響が現れる場合があるからである。上記吸収率制御層の組成として、金属と金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物との混合物であることが望ましく、CrとCrの混合物が特に良好なオーバーライト特性向上効果を示した。特にCrが60〜95原子%の場合、本発明に適した熱伝導率、光学定数の材料を得ることができる。具体的には上記金属としてはAl、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Co、Ti、Cr、Ni、Mg、Si、V、Ca、Fe、Zn、Zr、Nb、Mo、Rh、Sn、Sb、Te、Ta、W、Ir、Pb混合物が望ましく、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物としてはSiO、SiO、TiO、Al、Y、CeO、La、In、GeO、GeO、PbO、SnO、SnO、Bi、TeO、MO、WO、WO、Sc、Ta、ZrOが好ましい。この他にSi−O−N系材料、Si−Al−O−N系材料、CrなどのCr−O系材料、Co,CoOなどのCo−O系材料などの酸化物、TaN,AlN,SiなどのSi−N系材料、Al-Si−N系材料(例えばAlSiN)、Ge−N系材料などの窒化物、ZnS,Sb,CdS,In,Ga,GeS,SnS,PbS,Biどの硫化物、SnSe,Sb,CdSe,ZnSe,InSe,GaSe,GeSe,GeSe,SnSe,PbSe,BiSeなどのセレン化物、あるいは、CeF,MgF,CaFなどの弗化物、または、上記の材料に近い組成のものを用いた吸収率制御層を用いてもよい。
また、吸収率制御層の膜厚としては10nm以上100nm以下が望ましく、20nm以上50nm以下の場合、特に良好なオーバーライト特性向上効果が現れる。また、保護層、吸収率制御層の膜厚の和が溝深さ以上である場合、クロスイレーズ低減効果が顕著に現れる。先に説明したように吸収率制御層は光を吸収する性質を有している。このため、記録層が光を吸収して発熱するように吸収率制御層も光を吸収して発熱する。また、吸収率制御層における吸収率は記録層がアモルファス状態の場合に、記録層が結晶状態の場合よりも大きくすることが重要である。このように、光学設計することにより、記録層がアモルファス状態における記録層での吸収率Aaを、記録層が結晶状態における記録層での吸収率Acよりも小さくする効果が発現する。この効果によりオーバーライト特性を大幅に向上することができる。以上の特性を得るためには吸収率制御層での吸収率を30〜40%程度に高める必要がある。また、吸収率制御層における発熱量は、記録層の状態が結晶状態であるか、アモルファス状態であるかにより異なる。この結果、記録層から熱拡散層への熱の流れが、記録層の状態により変化することになり、この現象によりオーバーライトによるジッター上昇を抑制することができる。
以上の効果は、吸収率制御層における温度が上昇することにより、記録層から熱拡散層への熱の流れを遮断する効果により発現する。この効果を有効に生かすためには、保護層と吸収率制御層の膜厚の和がランドグルーブ間の段差(基板上の溝深さ、レーザー波長の1/7〜1/5程度)以上である方がよい。保護層と吸収率制御層の膜厚の和がランドグルーブ間の段差以下の場合、記録層に記録した際に発生する熱が熱拡散層を伝熱し、隣接トラックに記録されている記録マークが消去されやすくなる。
(熱拡散層)
熱拡散層としては高反射率、高熱伝導率の金属あるいは合金が良く、Al、Cu、Ag、Au、Pt、Pdの総含有量が90原子%以上であることが望ましい。また、Cr,Mo,W等の高融点で硬度が大きい材料、および、これらの材料の合金も多数回書換え時の記録層材料の流動による劣化を防止することができ好ましい。特にAlを95原子%以上含有する熱拡散層とした場合、廉価であり、高CNR、高記録感度、多数回書換え耐性に優れ、しかもクロスイレーズ低減効果が極めて大きい情報記録媒体を得ることができる。特に、上記熱拡散層の組成がAlを95原子%以上含有する場合、廉価でしかも耐食性に優れた情報記録媒体を実現することができる。Alに対する添加元素としてはCo、Ti、Cr、Ni、Mg、Si、V、Ca、Fe、Zn、Zr、Nb、Mo、Rh、Sn、Sb、Te、Ta、W、Ir、Pb、BおよびCが耐食性の点において優れているが、添加元素がCo、Cr、Ti、Ni、Feの場合、特に耐食性向上に大きな効果がある。また、上記熱拡散層の膜厚は、30nm以上、100nm以下であることが良い。熱拡散層の膜厚が30nmより薄い場合、記録層において発生した熱が拡散しにくくなるため、特に10万回程度書換えた際に、記録層が劣化しやすくなり、また、クロスイレーズが発生しやすくなる場合がある。また、光を透過してしまうため熱拡散層として使用することが困難になり再生信号振幅が低下する場合がある。また、吸収率制御層に含まれる金属元素と熱拡散層に含まれる金属元素が同じ場合、生産上は大きな利点がある。すなわち、同一ターゲットを用いて吸収率制御層と熱拡散層の2層の層を製膜することができるからである。つまり、吸収率制御層製膜時にはAr−O混合ガス、Ar−N混合ガス等の混合ガスによりスパッタリングして、スパッタリング中に金属元素と酸素、あるいは窒素を反応させることにより適当な屈折率の吸収率制御層を作成し、熱拡散層の製膜時にはArガスによりスパッタリングし熱伝導率が高い金属の熱拡散層を作成するのである。
熱拡散層の膜厚は200nm以上の場合、生産性が悪く、熱拡散層の内部応力により、基板のそり等が発生し、情報の記録再生を正確に行うことができなくなる場合がある。また、熱拡散層の膜厚は、30nm以上90nm以下であれば、耐食性、生産性の点で優れており、さらに望ましい。
続いて図17を用いて青色レーザーを用いて記録する場合の本発明の実施例2を示す。
<媒体構成>
図17は本発明の情報記録媒体の基本構成である。すなわち、基板上に熱拡散層、第2保護層、第2熱安定化層、記録層、第1熱安定化層、第1保護層を順次積層し、最後にカバー層を形成している。ここで、基板にはポリカーボネート製の厚さ1.1mmの基板を使用しており、記録領域内周23.8mmから外周58.6mmにグルーブがトラックピッチ0.32μmで形成されている基板を用いた。
スパッタリングプロセスにより、上記1.1mm厚の基板上に、熱拡散層としてAg98RuAu(wt%)を100nm、第2保護層として(ZnS)80(SiO20を30nm、第2熱安定化層としてGe80Cr20−Nを2nm、後述する記録層を12nm、第1熱安定化層としてGe80Cr20−Nを2nm、第1保護層として(ZnS)80(SiO20を60nm製膜した。さらに、紫外線硬化樹脂層をスピンコート法により厚さ0.1mmで均一に塗布し、紫外線照射により硬化させてカバー層を形成して以下の実施例2に使用した情報記録媒体を得た。記録層材料の詳細な説明は後述する。
上記のように作製したディスクを、波長810nm、ビーム長径96μm、短径1μmの楕円ビームを持つレーザー光を照射することによって初期化をおこなった。
なお、本実施例では従来のDVD−RAM等の製品とは逆の順序に積層した構造のディスクを作製したが、従来と同様の順序で積層した構造をとっても本発明の効果は失われない。
また、吸収率制御層を必要に応じて積層しても問題ない。
<本実施例における記録再生条件>
以下に本発明の記録再生条件について説明する。モーター制御方法としては、ゾーンごとにディスクの回転数変化させるCAV方式を採用している。
情報記録媒体(以下、光ディスクと呼ぶ)上に情報を記録する際には、マークエッジ方式を用い、(1−7)RLL変調方式を用い記録を行う。情報記録時のクロック周波数は内周で66MHzとし、線速が大きくなるに従って増大させた。なお、内周での線速度は5.28m/sとした。初期化を行ったディスクを回転させ、カバー層を介して波長405nmの半導体レーザー光を開口数0.85の対物レンズで集光させて、プッシュプル方式でトラッキング制御を行いながらオングルーブに情報の記録・再生を行った。ここで、オングルーブとは、基板に形成された凹凸のうち光ヘッドから見て近い側の領域とする。記録マークを形成するために記録パルスを複数に分割するマルチパルス記録波形を用いた。まず結晶化が可能な中間のパワーレベルのレーザー光を照射した後アモルファス化するための高パワーレベルのレーザー光をクロック周期T毎に照射し、各高パワーレベルのパルス間に低パワーレベルのレーザー照射を行った。さらに一連の高パワーレベルパルスのうち最終パルス照射直後に低パワーレベルの冷却パルスを照射した後、結晶化が可能な中間のレーザーパワーレベルに戻した。nT(n:2〜8)の長さのマークを形成するときには、高パワーのパルス数はn−1とし、パルス幅は、記録層材料、線速等によって適宜最適化した。高パワーのレーザーパワーは5mW、中間パワーは1.5mW、低パワーレベルは0.3mWとしたが、これらのパワーも記録層材料、線速等によって適宜最適化した。
一般的に、レーザー波長λのレーザー光をレンズ開口数NAのレンズにより集光した場合、レーザービームのスポット径はおよそ0.9×λ/NAとなる。したがって、上記条件の場合、レーザービームのスポット径は約0.43μmである。この時、レーザービームの偏光を円偏光とした。
以上の条件で上記光ディスクに記録を行った場合、最短マークである2Tマークのマーク長はおよそ0.160μm、最長マークである8Tマークのマーク長は約0.64μmとなる。
なお、ジッター測定を行う際には上記2T〜8Tを含むランダムパターンの信号の記録再生を行い、再生信号に従来のイコライザーによる波形等価、リミットイコライザーによる波形等価、2値化、PLL(Phase Locked Loop)処理を行い、タイムインターバルアナライザー(TIA)を通してジッターを測定した。
<記録層材料の評価基準>
内周部、および外周部の記録消去性能、信号品質を評価するため、内周部および外周部相当の記録線速度におけるジッター(ランダム信号を10回記録後のジッター)を測定した。ここでのジッター測定は、連続する5トラックの内周から外周方向に順番にランダムパターンを記録した後に、5トラックの中心トラックでジッターを測定した。また、書換寿命の試験を行うため、内周部および外周部相当の記録線速度における1万回書換え後のジッターをそれぞれ測定し、10回記録後のジッターからの上昇量を測定した。また、10万回書換後のジッターも同様に測定し、10回記録後のジッターからの上昇量を測定した。さらに、内周部相当の記録線速度で記録された記録マーク内の再結晶化の影響を評価するため、上記内周部相当の記録線速度と、外周部相当の記録線速度において8Tの単一周波数信号を記録し、内外振幅比(内周部振幅/外周部振幅)を測定した。また、保存寿命の評価を行うため加速試験を行った。具体的には測定対象媒体に内周部相当の線速度でランダム信号を10回記録し、そのジッターを測定しておき、90℃に加熱されたオーブンに20時間放置後のジッター上昇量との差を測定した(いわゆる、アーカイバル再生ジッター)。さらに、上記試験と同時に異なるトラックに外周部相当の記録線速度でランダム信号を10回記録後にジッターを測定しておき、90℃の温度で20時間維持した後に同一トラック上にオーバーライトを1回だけ行い、加速試験前のジッターとの差を測定した(いわゆる、アーカイバルオーバーライトジッター)。なお、各性能の目標値は以下の通りである。
ジッター:7%以下
書換寿命:2%以下
内外周振幅比:0.8以下
保存寿命(内周):2%以下
保存寿命(外周):3%以下
なお、ジッターの目標値7%は規格値(6%以下)と比較して大きいが、先に説明したように本実施例に使用される情報記録媒体では、記録層の性能のみを比較するため、記録層の組成以外の構成は変化させていない。このため、各記録層に適した構成にした場合と比較して少なくとも、1%以上のジッター上昇が発生する。そこで、あえて、目標値を上げているのである。しかし、この試験により7%以下となったいくつかの記録層組成について、媒体構成の最適化を行ったところ、すべての媒体で、ジッターが6%以下に低下した。したがって、上記目標は記録層組成の性能を判断する上で妥当なものである。また、再結晶化量の評価として内周部振幅/外周部振幅を0.8以上とすることにしたが、以上の目標を達成した情報記録媒体では、十分に再結晶化が抑制されているため、最内周部におけるクロスイレーズ性能の悪化、クロススピードオーバーライト性能の悪化、クロススピードクロストーク性能の悪化、クロススピードクロスイレーズ性能の悪化といった問題は発生しなかった。一方、以上の目標を達成しなかった情報記録媒体では、上記のうち、いずれかの問題が発生する確率が格段に大きくなった。したがって、上記目標は妥当なものである。
本実施例の評価結果を◎、○、×で表記するが、判定基準は以下の通りである。
ジッター
◎:7%以下、○:8%以下、×:8%より大きい
書換寿命
◎:1%以下、○:2%以下、×:2%より大きい
内外周振幅比
◎:0.9以上、○:0.8以上、×:0.8より小さい
保存寿命(内周)
◎:1%以下、○:2%以下、×:2%より大きい
保存寿命(外周)
◎:2%以下、○:3%以下、×:3%より大きい
総合評価
◎:以上の評価項目すべてが◎の場合、
○:以上の評価項目中に×がなく、一つでも○がある場合、
×:以上の評価項目中に一つでも×の項目がある場合、
<記録層の製膜方法>
記録層の製膜方法は実施例1と同様の方法で行った。
<記録層材料の評価結果>
実施例1と同様にA〜F系列の記録層を検討し、実施例1と同様の結果が得られた。
なお、本実施例ではトラックピッチ0.32μmのオングルーブ記録を行ったがランド・グルーブ記録を行っても同様の結果が得られた。
また、本実施例ではCAV記録方式の例を示したが、CLV記録方式においても同様の結果が得られた。
さらに、実施例1で述べたように、Bi−Ge−Te系相変化記録層材料の組成が以下の組成点B2,C2,D2,D6,C8,B7で囲まれている場合、Geの代わりに同族元素であるSi,Sn,Pbを使用しても良く、Geの代わりに適当な量のSi,Sn,Pbを添加することにより、容易に、対応可能な線速度範囲を調整することができる。例えば、SiによりGeを置換した場合、GeやGeTeよりも融点が高く結晶化速度が小さいSiTeが生成するため、溶融部外縁部にSiTeが偏析し、再結晶化が抑制される。また、SnTeやPbTeによりGeTeを置換した場合、核生成速度が向上するため、高速記録時の消去不足を補うことができる。
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
すなわち、以下に示す組成系の記録層材料である。
4元系記録層材料:Bi−Ge−Si−Te,Bi−Ge−Sn−Te,Bi−Ge−Pb−Te
5元系記録層材料:Bi−Ge−Si−Sn−Te,Bi−Ge−Si−Pb−Te,Bi−Ge−Sn−Pb−Te
6元系記録層材料:Bi−Ge−Si−Sn−Pb−Te
以上のような多元系の組成にすることにより、記録層材料の性能をよりきめ細かに制御することが可能となる。
さらに、本発明の情報記録媒体に使用される記録層材料にBを添加すると、再結晶化が、より一層抑制され優れた性能を示す情報記録媒体が得られる。これは、BがGeと同様に再結晶化を抑制する効果があるからであるが、B原子は非常に小さいため、速やかに偏析することが可能であるからと考えられる。
なお、本発明の情報記録媒体に使用される記録層材料が上記組成式であらわされる範囲の関係を維持していれば、たとえ不純物が混入していたとしても、不純物の原子%が1%以内であれば、本発明の効果は失われない。
また、本発明の媒体構造では記録層の膜厚は、5nm以上15nm以下が光学的に最適である。特に7nm以上11nm以下の場合、多数回書換え時の記録膜流動による再生信号劣化を抑え、しかも光学的に変調度を最適にすることができるため、都合が良い。
本発明の情報記録媒体により、以下の課題が全て解決する情報記録媒体を得ることができる。
課題1:CAV記録時の最内周部の信号劣化
課題2:CAV記録時の最内周部における多数回書換え性能の劣化
課題3:CAV記録時の最内周部と最外周部の保存寿命劣化
課題4:CAV記録時の最内周部におけるクロスイレーズ性能の悪化
課題5:クロススピードオーバーライト性能の悪化
課題6:クロススピードクロストーク性能の悪化
課題7:クロススピードクロスイレーズ性能の悪化
課題8:クロススピード性能確保の為の総数増加(核生成層付加)
本発明の実施例1の情報記録媒体の構造を説明するための図である。 本発明の情報記録媒体を評価するための情報記録再生装置を示す図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1における最適な組成範囲を示した三角組成図である。 本発明の実施例1における最適な組成範囲を示した三角組成図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1の評価結果を示す図である。 本発明の実施例1における最適な組成範囲を示した三角組成図である。 本発明の実施例1における最適な組成範囲を示した三角組成図である。 本発明の実施例2の情報記録媒体の構造を説明するための図である。
符号の説明
2−1:光ディスク
2−2:モーター
2−3:光ヘッド
2−4:プリアンプ回路
2−6:記録波形発生回路
2−7:レーザー駆動回路
2−8:8−16変調器
2−9:L/Gサーボ回路
2−10:8−16復調器


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  1. 基板と、波長が390nm以上420nm以下であるレーザービームの照射による、相変化により情報の記録が行われ、複数回書換え可能な記録層を備え、上記レーザービームを相対的に走査することにより情報の記録が行われる情報記録媒体であって、上記記録層材料がBi,GeおよびTeを含み、その組成が、Bi、Ge、Teを頂点とする三角組成図上の以下の各点により囲まれた範囲である組成の記録層を備えることを特徴とした情報記録媒体。
    B2(Bi,Ge47,Te51
    C2(Bi,Ge47,Te50
    D2(Bi,Ge47,Te49
    D6(Bi16,Ge37,Te47
    C8(Bi30,Ge22,Te48
    B7(Bi19,Ge26,Te55
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