JP2005205762A - 情報記録媒体 - Google Patents

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寛 白井
Norihito Tamura
礼仁 田村
Makoto Miyamoto
真 宮本
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Abstract

【課題】 Bi−Ge−Te系相変化材料を記録層として用いた情報記録媒体において、記録データの信頼性が高く、データの繰返し記録に対する耐久性の高く、且つ、耐酸化性に優れた情報記録媒体を提供する。
【解決手段】 基板と、基板上に設けられ、Bi、Ge、Te及びこれらの元素以外の元素Mを含む相変化材料で形成された記録層とを備え、Geの一部が元素Mで置換されており、記録層中の元素Mの含有量が10原子%以下であることを特徴とする情報記録媒体を提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、エネルギービームの照射により情報の記録が行われる情報記録媒体に関し、特に、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の赤色レーザー対応の相変化型光ディスク及びBlu−ray等の青色レーザー対応の相変化型光ディスクに関する。
近年、DVD−ROM、DVD−Video等の再生専用型光ディスクの市場が拡大している。それに続き、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の書換え可能なDVDの市場がコンピュータ用バックアップ媒体及びVTRに代わる映像記録媒体として急速に拡大しつつある。この市場の拡大に伴い、ここ数年、記録型DVDに対する転送レート及びアクセススピードの向上並びに大容量化への要望が増大している。
DVD−RAM、DVD−RW等の記録消去可能な記録型DVDでは、情報が記録される記録層に相変化材料を用いる相変化記録方式が採用されている。相変化記録方式では、基本的に「0」と「1」の情報を相変化材料の結晶状態とアモルファス状態に対応させて記録している。また、相変化材料の結晶状態とアモルファス状態の屈折率が異なるため、結晶に変化させた部分とアモルファスに変化させた部分の反射率の差が最大になるように、記録型DVDを構成する各層の屈折率、膜厚等を設計している。この結晶化した部分とアモルファス化した部分にレーザー光を照射し、光ディスクの各部分からの反射光量の違いを検出して記録層内に記録された「0」と「1」を検出する。
また、所定の位置をアモルファスにする(通常、この動作を「記録」と呼ぶ)ためには、比較的高パワーのレーザー光を照射して、記録層の温度が記録層材料の融点以上になるように加熱する。一方、所定の位置を結晶にする(通常、この動作を「消去」と呼ぶ)ためには、比較的低パワーのレーザー光を照射して、記録層の温度が記録層材料の融点以下の結晶化温度付近になるように加熱する。このように、記録層の所定部分に照射するレーザー光のパワーを調整することにより、所定部分の状態をアモルファス状態と結晶状態との間で可逆的に変化させることができる。
上述のことから、相変化記録方式の情報記録媒体の記録層に用いる相変化材料としては、アモルファス状態と結晶状態との屈折率の差が大きく、且つ消去動作においてアモルファスが極めて短時間で結晶化する材料が好ましい。また、記録と消去を繰り返すことによる劣化の小さい材料が好ましい。このような観点から、従来、様々な相変化材料が検討されてきた。
例えば、特開2001−322357では、記録材料としてGe−Sn−Sb−Te系材料に、Ag、Al、Cr、Mn等の金属を添加した材料を使用することにより、高密度記録が可能で、繰返し書換え性能に優れ、結晶化感度の経時劣化が少ない情報記録媒体が得られることが開示されている。特開平2−14289には、Ge-Sb-Sn-Te系の記録層材料が開示されている。
また、特開昭62−209741には、Bi−Ge−Te系相変化記録材料が開示されており、その材料の実用的な組成範囲が規定されている。特開平1−287836には、Bi−Ge−Sb−Te系相変化記録材料の実用的な範囲が開示されている。また、記録層の形成材料として、Bi−Ge−Se−Te系相変化記録材料も提案されており、その実用的な範囲が開示されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
さらに、PCOS2001ではDVD−RAMの2倍速から4倍速に対応できる記録材料としてGe−Sn−Sb−Te系材料が報告されている。ISOM/ODS2002ではDVD−RAMの2倍速と5倍速に対応できる情報記録媒体が報告されており、この5倍速媒体は、新たに核生成層を付加した8層構造にすることによって5倍速を実現している。
また、記録型DVDを大容量化する技術としては、レーザー光の波長を405nmと短波長化し且つ対物レンズNAを0.85と大きくすることにより、レーザースポット径を一層小さくし、より高密度の情報を記録する方法が知られている(例えば、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.39(2000),pp.756-761,Part1,No.2B,Feb.2000)。この方法は、通称Blu−ray Discの主要技術として利用されており、従来のDVDより薄い0.1mm厚の基板を採用することによって、ディスクのチルトに対する影響を小さくしている。なお、Blu−ray Discに用いられる0.1mm厚の基板は記録層の機械的保護、電気化学的保護(腐食防止)等の重要な役割を果たす。
従来のDVD−RAM、DVD−RW等の書換え型の光ディスクの基本構造は、0.6mm厚のポリカーボネート(PC)基板上に第1誘電体層、相変化記録層、第2誘電体層及び反射層を順次積層した4層構造であり、さらに反射層側から0.6mm厚の基板を貼り合せることによって作製される。しかしながら、上述のBlu−ray Discでは、従来の光ディスクと同様の積層構造で作製すると基板の厚さが0.1mmと薄いため、基板の剛性を保つことが難しくなる。それゆえ、Blu−ray Discは、厚い基板、例えば、1.1mm厚のPC基板上に反射層、第2誘電体層、相変化記録層及び第1誘電体層を順次積層し(従来の書換え型光ディスクと逆の順序に積層)、最後に第1誘電体側から0.1mm厚の基板をカバー層として形成して作製される。Blu−ray Discのカバー層の形成方法としては、第1誘電体層上に0.1mm厚のシートを紫外線硬化樹脂接着剤で貼り付ける方法と、第1誘電体層上に紫外線硬化樹脂をスピンコート法により均一に塗布し、紫外線照射により紫外線硬化樹脂を硬化させてカバー層を形成する方法とが提案されている。
Blu−ray Discの記録層の形成材料としては、例えば、特許2941848に開示されているAg−In−Sb−Te系記録材料が用い得る。また、この文献にはAg−In−Sb−Te系記録材料に第5元素及び第6元素を添加した材料の組成についても詳細に開示されている。
また、記録型DVDを大容量化する方法として、0.6mm厚の基板上に従来と同様の順序で各層を積層した光ディスクを作製し、レーザー光の波長405nm、対物レンズNAを0.65として情報を記録する方法も提案されている。この方法は、上述のBlu−ray Discのような0.1mm厚のカバー層を用いる方法と比べて、対物レンズNAが小さいためにレーザースポット径が大きく、記録密度は低くなる。しかしながら、基板の剛性を保つことが容易であり、記録層の多層化が容易になるという利点がある。また、媒体上の埃や傷の影響を小さくすることができるという利点もある。
特開昭62−73439号公報(第1頁、第1図) 特開平1−220236号公報(第1頁、第1図)
本発明の目的は、Bi−Ge−Te系相変化材料を記録層として用いた情報記録媒体において、記録データの信頼性が高く、データの繰返し記録に対する耐久性の高く、且つ、耐酸化性に優れた情報記録媒体を提供することである。
本発明の第1の態様に従えば、情報記録媒体であって、基板と、基板上に設けられ、Bi、Ge、Te及びこれらの元素以外の元素Mを含む相変化材料で形成された記録層とを備え、Geの一部が元素Mで置換されており、該記録層中のBi、(Ge+M)及びTeの組成比率がBi、(Ge+M)及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲にあり、
B2’(Bi,(Ge+M)47,Te51
C2’(Bi,(Ge+M)47,Te50
D2’(Bi,(Ge+M)47,Te49
D6’(Bi16,(Ge+M)37,Te47
C8’(Bi30,(Ge+M)22,Te48
B7’(Bi19,(Ge+M)26,Te55
元素Mが元素MA及び元素MBを含み、該記録層中の元素MAの含有量αと元素MBの含有量βとの間に、α×β≠0原子%、且つ、0原子%<α+β≦10原子%の関係が成立し、元素MAはSn、Pb、In、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であり、元素MBはAu、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることを特徴とする情報記録媒体が提供される。
本発明の第2の態様に従えば、情報記録媒体であって、基板と、基板上に設けられ、Bi、Ge、Te及びこれらの元素以外の元素Mを含む相変化材料で形成された記録層とを備え、該記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率がBi、Ge及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲にあり、
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
元素Mが元素MA及び元素MBを含み、該記録層中の元素MAの含有量αと元素MBの含有量βとの間に、α×β≠0原子%、且つ、0原子%<α+β≦10原子%の関係が成立し、元素MAはSn、Pb、In、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であり、元素MBはAu、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることを特徴とする情報記録媒体が提供される。
本発明者らは、上述の従来の相変化材料のうち、Bi−Ge−Te系相変化材料を記録層として用い、記録層中のBi、Ge及びTeの組成比率をBi、Ge及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲にすることにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性の高い情報記録媒体が得られること検証実験により見出した。
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
Bi、Ge及びTeの三角組成図上における上記各点により囲まれた組成範囲を、図3に示した。図3中の太線で囲まれた組成範囲が、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性の高い情報記録媒体を得るために最適な記録層の組成範囲である。
従来例(特開昭62−209741)には、Bi−Ge−Te系相変化材料の実用的な組成範囲がBi、Ge及びTeを頂点とする三角組成図上でGeTeとBiTeとを結ぶ線上の領域に存在することが開示されている。しかしながら、本発明者らの検証実験によると、GeTeとBiTeを結ぶ線上よりさらにGeが過剰に添加された領域の組成を有するBi−Ge−Te系相変化材料を記録層として用いることにより、信号品質が良好で、且つ、繰返し記録に対する耐久性に優れていることを見出した。
これは以下のような理由によるものと考えられる。Bi−Ge−Te系相変化材料には、現在までに明らかになっている範囲では、GeTe、BiTe、BiGeTe、BiGeTe及びBiGeTeの化合物が存在する。記録層の所定部分に情報を記録する(アモルファス化する)ために光ビームを照射して溶融した直後に、溶融領域の一部が再結晶化が起こるような場合、記録層の組成によって異なるが、以上に挙げた化合物、Bi、Ge及びTeのうち融点が高い物質から順に溶融領域外縁部から再結晶化するものと考えられる。これらの物質を融点が高い順に並べると以下のようになる。
Ge:約937℃
GeTe:約725℃
BiGeTe:約650℃
BiTe:約590℃
BiGeTe:約584℃
BiGeTe:約564℃
Te:約450℃
Bi:約271℃
上述のようにGeの融点が最も高いため、Bi、Ge及びTeを頂点とする三角組成図のGeTeとBiTeを結ぶ線上の組成材料より、Geを過剰に添加した相変化材料を記録層として用いた情報記録媒体では、溶融領域の外縁部にGeが偏析し易くなるものと考えられる。溶融領域の外縁部にGeが過剰に存在すると、溶融領域の外縁部の結晶化速度が遅くなり外縁部からの再結晶化を抑制できる。それゆえ、多数回書換えにより生じる再結晶化の「帯」の発生を抑制することができる。また、同時にトラック中心(溶融領域の中心部)付近では結晶化速度が高速となり、高速記録時においても良好な消去性能を得ることができる。しかしながら、Geの添加量が多すぎると記録膜全体の結晶化速度が低下してしまうので、過剰に添加するGeの量を適度な量に設定することが重要である。
また、相変化記録方式の情報記録媒体の記録層に用いる相変化材料としては、アモルファス状態にある記録マークの保存寿命の観点から、アモルファス状態の相が複数存在せず、材料の結晶化温度が高く、さらにアモルファスが結晶化する際の活性化エネルギーが大きいことが重要である。本発明者らはBi、Ge及びTeを頂点とする三角組成図のGe50Te50付近では上記条件を満足することを検証実験により見出した。これは、従来例にも記載されているように、GeTeの結晶化温度が200℃程度と高く、組成がBiTeに近づくに伴い、結晶化温度が低下することが原因の一つであると考えられる。また、本発明者らは、検証実験によりGe50Te50付近の組成では長期保存後でも、アモルファスの状態が変化し難く、良好な消去特性が得られることを見出した。しかしながら、GeTe量が多すぎると結晶化速度が低下し、高速記録は不可能となる。逆に、BiTe量が多すぎると、結晶化温度が低下するため保存寿命が悪化する。それゆえ、最適なBi−Ge−Te系相変化材料の組成は、Ge50Te50に適当な量のBiTeを添加した組成であり、且つ、過剰なGeが存在する領域の組成である。
また、更なる情報の高密度化のために波長405nmの青色レーザーを用いて記録を行った場合、Bi−Ge−Te系相変化材料の組成を、Bi、Ge及びTeを頂点とする三角組成図のGeTeとBiTeを結ぶ線上の組成よりもGeを過剰に添加した組成にすることにより、下記の問題点を解決することができることを見出した。
(1)一般に、レーザービームのスポット径はレーザー波長λ、レンズ開口数NAとしたときにλ/NAに比例することが知られている。波長405nmの半導体レーザー、開口数NA0.85の対物レンズを用いた場合のレーザースポット径は、従来のDVDで用いられている波長650nmの半導体レーザー(赤色レーザー)、開口数NA0.60の対物レンズを用いた場合のレーザースポット径の約半分の径となる。また、波長405nmの半導体レーザー、開口数NA0.65の対物レンズを用いた場合にも、そのレーザースポット径は、従来のDVDの場合のレーザースポット径の約6割程度のサイズとなる。それゆえ、従来のDVDと同一の線速度で、青色レーザービームを用いてオーバーライトを試みた場合、スポット径が小さくなるので、記録トラック上のある地点を加熱する時間が従来のDVDよりも短くなる。その結果、情報のオーバーライトを行った際に消え残りが生じ易くなる。
(2)一般に、レーザービームが短波長化されると、記録層内の結晶部(未記録部)とアモルファス部(記録部)との光学定数の差(Δn、Δk)が小さくなる。それゆえ、記録部と未記録部の反射率差(コントラスト)が小さくなり再生信号振幅が低下する。
(3)青色レーザーを用いた場合、ビーム径がより絞り込まれるので、ビーム中心のエネルギー強度が赤色レーザーの場合よりも高くなる。その結果、多数回書換えによる記録層へ与えるダメージが大きくなる。
(4)多数回の再生による情報の劣化も大きくなる。
(5)高記録密度化を図るため、トラックピッチを狭くした場合や、記録トラックとして基板に設けられた溝(グルーブ)と溝間(ランド)の両方を用いた場合、隣接トラックに記録されたマークの一部を結晶化してしまうクロスイレーズが顕著になる。クロスイレーズの問題が発生するとトラックピッチを狭くすることが困難になり、青色レーザーによりビーム径を小さくした効果を十分に活かすことができなくなってしまう。
上述したように、Bi−Ge−Te系相変化材料を記録層として用いた書換え型情報記録媒体では、信号品質が良好で、且つ、繰返し書換えに対する耐久性に優れた特性が得られるが、情報記録後、高温高湿度下で長時間保存すると、再生信号のエラーレートが増大したり、書換えが出来なくなるという問題が発生した。これは、記録層の酸化による記録膜の劣化が原因と考えられる。
記録層の酸化により記録膜の劣化が起こる場合、記録層界面からの緩やかな進行で劣化するものと考えられる。通常、記録層は無機物の保護膜に挟まれて設けられているが、保護膜内のピンホールの部分で、他の部分に比べて記録層界面からの酸化が進行し易くなることがある。また、記録層にGe、Teなどの酸化しやすい元素が多く含まれるような場合には、記録膜中を酸素や水の分子が移動拡散する。それにより、記録層が酸化されて劣化し易くなる。
情報記録媒体の使用環境を考慮した場合、酸素のない環境で情報記録媒体が使用される可能性は極めて低いため、情報記録媒体の耐酸化性は重要な課題となる。本発明は、この課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、記録データの信頼性が高く、データの繰返し記録に対する耐久性の高く、且つ、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られる。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、Bi、Ge及びTeを含む相変化材料に、第4の元素としてBi、Ge及びTe以外の元素Mを添加した材料で記録層を形成する。この際、記録層中のBi、Ge、Te及び元素Mの組成が、上述した組成範囲となるように形成する。これにより、記録データの信頼性が高く、データの繰返し記録に対する耐久性の高く、且つ、耐酸化性に優れた情報記録媒体を提供することができる。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、添加元素Mは元素MAと元素MBを含み、記録層中の元素MAの含有量αと元素MBの含有量βとの間に、α×β≠0原子%、且つ、0原子%<α+β≦10原子%の関係が成立する。以下、各添加元素MA及びMBに用いる元素及びその効果について説明する。
添加元素MAとしては、Sn、Pb、In、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を用いる。これらの元素のうちSn、In、Ga及びZnは酸素を取り込む、あるいは、安定な酸化物を形成しやすいという特徴がある。それゆえ、Bi−Ge−Te系相変化材料で形成された記録膜中にSn、In、Ga及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を添加することにより記録層の耐酸化性が向上する。さらに、Sn、In、Ga及びZnはBi−Ge−Te系相変化材料中のTeの鎖状原子配列を切断し結晶化速度を速くする効果があり、記録線速に対する結晶化速度の調整が容易になるという利点がある。なお、Sn、In、Ga及びZnは比較的融点が低いため、記録層にこれらの元素を添加することにより記録感度が向上するが、再生光耐性が若干劣化する恐れもある。
添加元素MAのうち、Pb及びSeは酸素に対する安定性に優れ、容易に酸化しない。それゆえ、Bi−Ge−Te系相変化材料で形成された記録膜中にPb及びSeの少なくとも一種の元素を添加することにより記録層全体の酸化を妨げる効果がある。さらに、PbはBi−Ge−Te系相変化材料中のTeの鎖状原子配列を切断し結晶化速度を速くする効果があり、記録線速に対する結晶化速度の調整が容易になるという利点がある。なお、Pb及びSeは比較的融点が低いため、記録層に添加することにより記録感度が向上するが、再生光耐性が若干劣化する恐れもある。また、Pb及びSeはいずれも有毒な元素であるので、添加量を制限することが望ましい。
また、添加元素MAとしてNを用いた場合には、Bi−Ge−Te系相変化材料で形成された記録層の一部若しくは全体を窒化し、記録層の酸化を防ぐ効果がある。さらに、Nを記録層に添加することにより結晶粒径を小さくすることができ、未記録ノイズを減少させる効果がある。また、Nを記録層に添加することにより非晶質記録マークの安定性が向上する効果も期待できる。
添加元素MAの添加量αは10原子%以下にする必要がある。添加元素MAの添加量αが10原子%を越えると、記録層中の非晶質部分(記録部分)と結晶部分(未記録部分)の光学定数の差(Δn、Δk)が小さくなり、結晶部分と非晶質部分のコントラストが小さくなる。なお、添加元素MAの添加量αを5原子%以下にすることにより、記録層中の結晶部分と非晶質部分のコントラストが一層大きくなる。
添加元素MBとしては、Au、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を用いる。これらの元素のうち、Au、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr及びRuは酸素に対する安定性に優れ、容易に酸化されない。それゆえ、Bi−Ge−Te系相変化材料で形成された記録層にAu、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr及びRuからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を添加することにより、記録層全体の酸化を抑制する効果がある。また、Au、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr及びRuは耐熱性に優れ、酸・アルカリに対する反応性もないので、Au、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr及びRuからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を記録層に添加することにより記録層の耐腐食性も強くなるという効果がある。
添加元素MBのうち、Co、Rh、Ni及びReもまた酸素に対する安定性に優れる。それゆえ、Bi−Ge−Te系相変化材料で形成された記録層にCo、Rh、Ni及びReからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を添加することにより、記録層全体の酸化を抑制する効果がある。なお、Co、Rh、Ni及びReは耐熱性に優れるが、酸若しくはアルカリと反応し易いので、記録層にCo、Rh、Ni及びReからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を添加した場合、記録層が腐食し易くなる恐れもある。
添加元素MBの添加量βは10原子%以下にする必要がある。添加元素MBの添加量βが10原子%を越えると、添加元素MAの場合と同様に、記録層中の非晶質部分(記録部分)と結晶部分(未記録部分)の光学定数の差(Δn、Δk)が小さくなり、結晶部分と非晶質部分のコントラストが小さくなる。なお、添加元素MBの添加量βを5原子%以下にすることにより、記録層中の結晶部分と非晶質部分のコントラストが一層大きくなる。
また、添加元素MBのうちPt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Rh、Os、Ir及びReは融点が1500℃以上と高いので、これらの元素をBi−Ge−Te系相変化材料で形成された記録層中に過剰に添加すると記録感度が極端に劣化する。それゆえ、添加元素MBの添加量βは10原子%以下に制限する必要がある。
上述のように、添加元素MA及びMBは単独で添加しても耐酸化性が向上するが、添加元素MAとMBを一緒に添加しても良い。ただし、この場合には、添加元素MAの含有量αと添加元素MBの含有量βの総和は10原子%以下にしなければならない。なお、添加元素MAの含有量αと添加元素MBの含有量βの総和を5原子%以下にした場合は記録層中の結晶部分と非晶質部分のコントラストが一層大きくなる。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、元素Mが、さらに、元素MCを含み、上記記録層中の元素MCの含有量γと元素MAの含有量αと元素MBの含有量βとの間に、0原子%<α+β+γ≦10原子%の関係が成立し、元素MCがAg、Cu、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al、La及びCeからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることが好ましい。
本発明の情報記録媒体の記録層に、上述の添加元素MA及びMB以外に、Ag、Cu、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al、La及びCeからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素MCをさらに添加することにより、非晶質部分(記録マーク)の安定性を一層向上させることができる。ただし、添加元素MCには酸化し易い元素が多いので、Bi−Ge−Te系相変化材料で形成された記録層に添加しても耐酸化性を向上させる効果はない。それゆえ、添加元素MCは、添加元素MA及びMBの少なくとも一方の添加元素と一緒に用いることが好ましい。
記録層中の添加元素MCの添加量γは10原子%以下であることが好ましい。添加元素MCの添加量γが10原子%を越えると、記録層中の非晶質部分(記録部分)と結晶部分(未記録部分)の光学定数の差(Δn、Δk)が小さくなり、結晶部分と非晶質部分のコントラストが小さくなる。なお、添加元素MCの添加量を5原子%以下にすることにより、記録層中の結晶部分と非晶質部分のコントラストが一層大きくなり、一層好ましい。
添加元素MCのうちSc、Y、V、Nb、Mo、Fe、Pd及びSiは、融点が1400℃以上と高く、これらの元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素をBi−Ge−Te系相変化材料で形成された記録層中に過剰に添加すると記録感度が極端に悪くなるため、添加量γを10原子%以下にすることが好ましい。
また、添加元素MCのうちAg、Cu及びAlは、融点が約600〜1000℃であるが、これらの元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素をBi−Ge−Te系相変化材料で形成された記録層中に添加することにより、結晶化温度を高くする効果があり、非晶質部分(記録マーク)の安定性を向上させることができる。
上述のように、添加元素MCは耐酸化性を向上させる効果がないため、添加元素MA及びMBの少なくとも一方の元素と一緒に用いることが好ましい。ただし、そのような場合には添加元素MA、MB及びMCの総和(α+β+γ)は10原子%以下であることが好ましく、特に5原子%以下であることがより好ましい。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、上記情報記録媒体の情報記録に用いられる光ビームの波長が390nm〜420nmであることが好ましい。
情報記録媒体の情報記録時に用いる光ビームとして、波長が390nm〜420nmの光ビームを用いる方法は、ビームスポット径が小さくなるので大容量化には極めて有効な方法である。しかしながら、CDやDVDで一般に用いられている波長650nm〜780nm程度の光ビームに比べて、(1)エネルギー強度が高く多数回書換えが困難である、(2)アモルファス状態と結晶状態との屈折率差が小さいため信号強度が小さくなる、といった問題が生じる。
本発明者らは、検証実験により、情報記録媒体の記録層をBi、Ge、Te及び上述の添加元素Mを含む相変化材料で形成し、且つ、その組成を上述したような組成範囲にすることにより、波長が390nm〜420nmの光ビームを用いて情報を記録しても、記録データの信頼性が高く、データの繰返し記録に対する耐久性の高く、且つ、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られることを見出した。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、上記基板上に同心円状あるいはスパイラル状の溝が形成されており、該溝及び溝間の少なくともいずれか一方を記録トラックとして用いることが好ましく、特に、上記溝及び上記溝間の両方を記録トラックとして用いることが好ましい。
溝(グルーブ)及び溝間(ランド)の両方を記録トラックとして用いる方法は、グルーブあるいはランドのどちらか一方のみを記録トラックで用いる場合に比べて、トラックピッチを狭くすることができるので、大容量化に極めて有効な方法である。しかしながら、グルーブ及びランドの両方を記録トラックとして用いた場合、グルーブとランドとの形状の違いに起因するグルーブとランドとの熱特性の違いから、記録層のグルーブ部とランド部ではその熱履歴が異なる。その結果、情報の記録消去特性においてグルーブとランドで差が生じたり、上述のクロスイレーズが発生するなどの問題が生じる。
しかしながら、本発明者らは、検証実験により、情報記録媒体の記録層をBi、Ge、Te及び上述の添加元素Mを含む相変化材料で形成し、且つ、その組成を上述したような組成範囲にすることにより、グルーブ及びランドの両方を記録トラックとして用いる場合でも、好適な特性が得られることを見出した。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、上記情報記録媒体の記録トラックのトラックピッチTPと、情報の記録再生に用いられる光ビームの波長λと、光ビームを集光するための対物レンズの開口数NAとの間に、
0.35×(λ/NA)≦TP≦0.7×(λ/NA)
なる関係が成立することが好ましい。
情報の大容量化を図るために、トラックピッチを狭くすることは極めて有効な方法である。しかしながら、トラックピッチを狭くすると、情報記録時に隣接トラックに記録されたマークの一部が結晶化してしまうという現象(いわゆる、クロスイレーズ)が極めて現れ易くなる。しかしながら、本発明者らは、検証実験により、情報記録媒体の記録層をBi、Ge、Te及び上述の添加元素Mを含む相変化材料で形成し、且つ、その組成を上述したような組成範囲にすることにより、トラックピッチTPが0.35×(λ/NA)≦TP≦0.7×(λ/NA)(λ:光ビームの波長、NA:対物レンズの開口数)となるような狭トラックピッチの場合であっても、クロスイレーズを大幅に低減できることを見出した。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、上記情報記録媒体が、さらに、界面層を備え、該界面層が上記記録層の少なくとも一方の側の表面に接して設けられていることが好ましい。
上述の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体において、本発明者らは、記録層の少なくとも一方の界面に接して界面層を形成することにより、書換え回数や保存寿命が飛躍的に向上することを検証実験により見出した。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、上記情報記録媒体が、さらに、熱拡散層と保護層とを備え、該熱拡散層が上記記録層の光ビーム入射側と反対側に設けられ、該保護層が上記記録層と該熱拡散層との間に設けられ、該保護層の膜厚が25nm〜60nmであることが好ましい。
上述の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体において、本発明者らは、記録層の光ビーム入射側と反対側に熱拡散層を形成し、記録層と熱拡散層との間に少なくとも保護層を設け、保護層の膜厚を25nm〜60nmとすることにより、上述したクロスイレーズが大幅に低減できることを検証実験により見出した。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、上記保護層が、上記光ビームの波長における屈折率が1.7以下で且つ消衰係数が0.1以下である材料を25%以上含むことが好ましい。具体的には、上記保護層が、SiO及びAlの少なくとも一方を25%以上含むことが好ましい。特に、波長が390nm〜420nmの光ビームを用いた場合に上記保護層を設けることが好ましい。以下に、保護層の最適構成について説明する。
クロスイレーズは、光ビームを照射して情報を記録した際に、光ビームの照射により発生した熱がディスク径方向に広がり、隣接トラックにすでに記録されているアモルファス状態の記録マークが熱せられ、その一部が結晶化してしまうという現象である。それゆえ、情報の大容量化を図るためにトラックピッチを狭くすると、その現象が顕著に現れる。特に溝(グルーブ)及び溝間(ランド)の両方を記録トラックとして用いた場合、グルーブのクロスイレーズ(グルーブに記録したアモルファスマークの一部が、隣接するランドに記録を行ったときに結晶化する現象)が大きくなる。
クロスイレーズが生じる原因としては以下の2つの原因が考えられる。
(1)アモルファス状態の記録マークを形成した際に生じる記録マーク周辺の再結晶化領域が大きい場合、所定の幅の記録マークを形成するためには、所定の幅より広い幅の領域を溶融しなければならない。その結果、加熱領域が広くなり、隣接トラックへの熱の広がりも大きくなり、クロスイレーズが生じる。
(2)光ビーム入射側から少なくとも相変化記録層、保護層、熱拡散層の順で構成した情報記録媒体で、ランド・グルーブ記録を行った場合、溝の段差によってランド部上の記録層とグルーブ部上の熱拡散層の高さがほぼ同じになるような構成であれば、ランドからグルーブに漏れ込む熱が大きくなり、ランド上の熱が膜面方向に広がり易くなる。その結果、グルーブのクロスイレーズが大きくなる。
(1)の原因については、上述のBi、Ge及びTeを含む相変化材料で記録層を形成することにより、記録マーク周辺の再結晶化が抑制されクロスイレーズを低減させることができる。
(2)の原因については、ランド部上の記録層とグルーブ部上の熱拡散層が同じ高さにならないように、溝深さ及び各層の膜厚を設定すれば良い。それを実現する方法として、光ビームが入射する側から順に、相変化記録層、保護層、熱拡散層を少なくとも設け、保護層の膜厚が溝深さよりも大きくなるように情報記録媒体を設計することが好ましい。
また、ランド・グルーブ記録の情報記録媒体では、情報再生時に隣接トラックのデータが当該トラックに漏れ込むいわゆるクロストークが発生し易くなる。クロストークを抑制するために、光ビームの波長λ、光ビーム入射側に存在する基材の屈折率nとしたときに、溝深さをλ/5n〜λ/7n程度にすればよいことが知られている(特許第2697555号、Miyagawa et. al.;Land and Groove Recording for High Track Density on
Phase-Change Optical Disks: Jpn. J. Appl. Phys. Vol.32 (1993) pp.5324-5328)。それゆえ、波長405nmの光ビームを用い、基材(基板)としてn=1.6程度のプラスチック材料を用いた場合、クロストークキャンセルとなる溝深さは36〜51nm程度となる。この溝深さに対して保護層を溝深さと同等にするためには、保護層の膜厚を最低でも36〜51nm程度としなければならない。そして、保護層をこの膜厚よりさらに厚くした場合には上述したようにクロスイレーズを低減することが可能になる。
さらに、保護層として要求される性能は、記録再生用の光ビーム波長に対して透明であり、且つ、記録層が溶融するような高温においても安定であることである。このような材料は種々知られており、酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、セレン化物など、あるいはこれらの混合物などがこれまで検討されてきた。また、保護層の膜厚は、クロスイレーズを抑制するために上記の膜厚(溝深さよりも大きくなるような程度)以上が必要であるが、同時に、十分な反射率が確保でき、結晶状態とアモルファス状態とのコントラストが大きく取れるように光学的に最適化される必要がある。さらに、ランド・グルーブ記録を行う場合には、ランドとグルーブの信号品質が同等である必要もある。
本発明者らは、上記の材料を種々検討した結果、保護層として、光ビームの波長での屈折率が1.7以下で且つ消衰係数が0.1以下であるような材料を25%以上含む材料を用いることにより、クロスイレーズ低減のために保護層の膜厚を溝深さ以上に設定しても、反射率やコントラストが損なわれることがなく、また、ランドとグルーブとの信号品質の差を小さく抑えることができることを見出した。光ビームの波長での屈折率が1.7より大きい材料が75%以上含まれるような、屈折率の大きい材料で保護層を形成した場合、クロスイレーズを低減するためにある程度膜厚を厚くすると、反射率低下、コントラスト低下、ランド・グルーブ信号の特性差の増大のいずれか、あるいは全部の現象が現れた。逆に、反射率低下、コントラスト低下を抑制し、且つランド・グルーブ信号の特性差を小さくするために、保護層の膜厚を薄くすると、クロスイレーズを低減することができなかった。
保護層に含まれる材料として、SiO及びAlは熱的に安定であるという点で好ましい。SiOは、波長405nmの光ビームに対して屈折率が約1.4と小さいため膜厚をより厚くすることができ、クロスイレーズがより小さくなるという点でより好ましい。また、Alは積層した際の界面における表面粗さが小さくので、反射光の散乱が小さくなり、未記録時のノイズが小さくなるという点でより好ましい。
本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、記録層に接してBiTe、SnTe、PbTe等を含有した核生成層を設けても良い。記録層に接して核生成層を設けると、記録マーク周辺の再結晶化の抑制効果がさらに向上する。これは、結晶核の増加速度が大きい場合、それぞれの結晶核から成長した結晶がその隣の結晶核から成長した結晶とすぐにぶつかり合い結晶成長を抑制するためであると考えられる。また、本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、記録層の形成材料が上述の組成範囲の関係を維持していれば、たとえ、不純物が混入していたとしても、不純物の原子%が1%以内であれば、本発明の効果は失われない。
また、本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体は、エネルギービームの照射により熱が発生し、この熱により原子配列の変化が起こり、これにより情報の記録が行われる情報記録媒体に適用可能であるので、特に情報記録媒体の形状によらず、光カード等の円盤状情報記録媒体以外の情報記録媒体にも適用できる。なお、本明細書では、本発明の情報記録媒体を相変化型光ディスク、あるいは単に光ディスクと記載することもある。また、本明細書中では上記したエネルギービームを光ビーム、または単にレーザー光と表現することもある。
また、本発明の第1及び第2の態様に従う情報記録媒体では、記録層の光ビーム入射側に基板が配置されるような構成を前提としているが、記録層の光ビーム入射側とは反対側に基板を配置し、光ビーム入射側には、基板よりも薄い保護シート等の保護材を配置しても良い。
また、本発明第1及び第2の態様に従う情報記録媒体に照射されるエネルギービームとしては、情報記録媒体上に熱を発生させることが可能なエネルギービームであれば同様の効果が得られるので、電子ビーム等のエネルギービームを使用しても良い。
本発明の情報記録媒体によれば、Bi、Ge及びTeを含む相変化材料に第4の元素としてBi、Ge及びTe以外の元素Mを10原子%以下の含有量で添加した材料で記録層を形成することにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られる。
以下、本発明の情報記録媒体の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。
[情報記録媒体及びその製造方法]
実施例1で作製した情報記録媒体は相変化型光ディスクであり、その概略断面図を図1に示した。この例で作製した光ディスク10は、図1に示すように、基板1上に第1保護層2、第1界面層3、記録層4、第2界面層5、第2保護層6、熱拡散層7、紫外線硬化樹脂層8が順次積層された構造を有する。次に、この例の光ディスク10の作製方法を説明する。なお、この例で作製した光ディスク10では、グルーブとランドの両方に情報を記録する、いわゆる、ランド・グルーブ記録方式を採用した。
まず、基板1には、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を用いた。基板1は射出成形により作製し、基板1の半径23.8mmから58.6mmの情報の記録領域には、ランドトラック及びグルーブトラックの各トラックピッチが0.34μmとなるような溝を形成した。また、トラックには93チャネルビットの周期でウォブルを施した。
次に、基板1上に、第1保護層2として(ZnS)80(SiO20をスパッタリングにより60nmの膜厚で形成した。次いで、第1保護層2上に、第1界面層3としてGeCr−N(相対比表示)をスパッタリングにより2nmの膜厚で形成した。
次に、第1界面層3上に、記録層4をスパッタリングにより11nmの膜厚で形成した。記録層4はBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48を母材としてGeの一部をIn(添加元素MA)に置換した種々の材料(以下では、A−1系列の材料ともいう)で形成した。記録層4の形成方法は次の通りである。スパッタリングターゲットとして、Ge50Te50及びBiTeターゲットを用意し、同時スパッタリングを行い記録層4を形成した。この際、InをGeの一部と置換するために、Ge50Te50ターゲットにIn50Te50の小片を貼り付けて同時スパッタリングを行った。また、記録層4の組成が、Bi、Ge及びTeを頂点とする三角組成図上のGe50Te50とBiTeとを結ぶ線上の組成よりもGeが過剰な組成となるように、各々のターゲットに印加するスパッタリングパワーを調整した。
この例では、同時スパッタリングする際に、2種類のターゲットに印加するスパッタリングパワーを、各々調整することにより所望の組成の記録層材料を得たが、必要に応じてGeターゲットに添加元素MA(この例ではIn)の小片を貼りつけたターゲットを用意し、上記2つのターゲットとともに3つのターゲットを同時スパッタリングして記録層4を形成しても良い。この場合には、3種類のターゲットに印加するスパッタリングパワーを、各々調整することにより所望の組成の記録層材料を得られる。
上記方法で形成された記録層4上に、第2界面層5としてGeCr−N(相対比表示)をスパッタリングにより2nmの膜厚で形成した。次いで、第2界面層5上に、第2保護層6(中間層ともいう)として(ZnS)50(SiO50をスパッタリングにより40nmの膜厚で形成した。さらに、第2保護層6上に、熱拡散層7としてAl99Tiをスパッタリングにより150nmの膜厚で形成した。
次に、熱拡散層7上に、紫外線硬化樹脂層8としてUV樹脂をこの上に塗布し、その上に、さらに厚さ0.6mmのポリカーボネート製の透明基板(不図示)を載置して、透明基板越しにUV照射を行い、UV樹脂を硬化させることにより透明基板を紫外線硬化樹脂層8上に張り合わせた。以上の製造方法により、図1に示した光ディスク10を得た。なお、この例では、記録層4に添加したInの含有量を変化させた種々の光ディスクを作製した。
上記の作製方法で得られた種々の光ディスクに対して、初期化装置(不図示)を用いて、波長810nm、ビームスポットの長径が96μm、短径が1μmである楕円ビームのレーザー光を照射して初期化を行った。
なお、この例では、図1に示すように、従来のDVD−RAM等の製品と同様の膜構成で光ディスクを作製したが、図1とは逆の順序で基板1上に各層を積層した構造の光ディスクであっても本発明と同様の効果が得られる。また、吸収率制御層を必要に応じて、所定の位置に積層しても良い。
[情報記録再生装置]
この例で作製した光ディスクに対して情報の記録及び再生を行うための情報記録再生装置の概略構成図を図2に示した。この例で用いた情報記録再生装置20は、図2に示すように、主に、この例で作製した光ディスク10を回転させるためのモーター21と、光ディスク10にレーザー光を照射する光ヘッド22と、トラッキング制御のためのL/Gサーボ回路23と、再生信号処理系24と、記録信号処理系27とから構成される。再生信号処理系24は、図2に示すように、再生信号のゲインを調整するプリアンプ回路25と、再生信号に基づいて情報再生を行う1−7復調器26とから構成される。記録信号処理系27は、図2に示すように、入力信号を所定の変調方式で変調する1−7変調器30と、記録信号波形を生成する記録波形発生回路29と、レーザー光の発光を制御するレーザー駆動回路28とから構成される。
この例で用いた光ヘッド22は、波長405nmの半導体レーザーと、開口数NAが0.65の対物レンズを備えている(不図示)。一般的に、波長λのレーザー光を開口数NAの対物レンズにより集光した場合、レーザー光のスポット径はおよそ0.9×λ/NAとなるので、この例の場合、レーザー光のスポット径は約0.6μmとなる。ただし、この例では、レーザー光の偏光を円偏光とした。また、この例では、トラックピッチTPを0.34μmとしたので、トラックピッチTPと、波長λと、開口数NAとの間には、
TP=0.55×(λ/NA)
の関係が成立する。
また、この例で作製した光ディスクはランド・グルーブ記録方式の光ディスクであるので、図2に示した情報記録再生装置20もランド・グルーブ記録方式に対応している。この例の情報記録再生装置20では、図2中のL/Gサーボ回路23により、ランドとグルーブに対するトラッキングを任意に選択することができる。
以下に、情報記録再生装置20の動作を図2を用いて説明する。なお、記録再生を行う際のモーター制御方法としては、記録再生を行うゾーン毎にディスクの回転数を変化させるZCLV方式を採用した。また、この例では、情報記録の際に、マークエッジ方式を用い、1−7変調方式で光ディスク10上に情報を記録した。この変調方式では、情報は2T〜8Tのマーク長で記録される。ここで、Tとは情報記録時のクロックの周期を表しており、この例ではT=15.4nsとした。すなわち、この例では、最短2Tのマーク長はおよそ0.17μm、最長8Tのマーク長は約0.7μmとなる。また、内周(記録領域の最内周:半径23.8mmの位置)での記録線速を5.64m/secとした。
まず、情報記録に必要な信号が記録装置外部から1−7変調器30に入力される。次いで、1−7変調器30に入力された信号は1−7変調方式で変調され、2T〜8Tのデジタル信号が出力される。次いで、1−7変調器30から出力された2T〜8Tのデジタル信号は記録波形発生回路29に入力される。
記録波形発生回路29では、入力された2T〜8Tのデジタル信号に基づいて、情報記録時のレーザー光照射に必要なマルチパルス記録波形が生成される。この例では、マルチパルス記録波形の高パワーレベル領域を、幅を約T/2の高パワーパルスと、高パワーパルス間に形成された幅が約T/2の低パワーパルスとで構成された一連のパルス列で形成した。また、マルチパルス記録波形の上記一連のパルス列の間の領域は中間パワーレベルのパルスで構成した。この際、記録層に記録マークを形成(アモルファス化)するための高パワーレベルのパルス強度と、記録マークを結晶化させるための中間パワーレベルのパルス強度を、記録再生を行う光ディスク毎に最適な値に調整した。
また、記録波形発生回路29内では、2T〜8Tのデジタル信号波形を時系列的に交互に「0」と「1」に対応させ、「0」の場合には、中間パワーレベルのレーザーパルスを照射し、「1」の場合には、上述の高パワーパルスと低パワーパルスで構成された一連のパルス列を照射するようにした。この際、中間パワーレベルのレーザーパルスが照射された光ディスク10上の部分は結晶となり、上述の高パワーパルスと低パワーパルスで構成された一連のパルス列が照射された部分はアモルファス(マーク部)に変化する。さらに、記録波形発生回路29は、上述の高パワーパルスと低パワーパルスで構成された一連のパルス列を形成する際に、マーク部の前後のスペース長に応じてマルチパルス波形の先頭パルス幅と最後尾のパルス幅を変化させる方式(適応型記録波形制御)に対応したマルチパルス波形テーブルを有しており、これによりマーク間に発生するマーク間熱干渉の影響を極力排除できるマルチパルス記録波形を発生している。
次に、上述の記録波形発生回路29で生成されたマルチパルス記録波形は、レーザー駆動回路28に転送され、レーザー駆動回路28は、入力されたマルチパルス記録波形に基づいて、光ヘッド22内の半導体レーザーの発光を制御する。そして、半導体レーザーから出射されたレーザー光を光ヘッド22内の対物レンズにより光ディスク10の記録層上に絞り込み、マルチパルス記録波形に対応したタイミングでレーザー光を照射することにより、情報の記録を行った。
上述のように記録された情報の再生動作を次に説明する。まず、光ヘッド22からレーザー光を光ディスク10の記録マーク上に照射し、記録マークと記録マーク以外の部分(未記録部分)からの反射光を光ヘッド22で検出して再生信号を得る。この再生信号の振幅をプリアンプ回路25により所定のゲインで増幅し、1−7復調器26に転送する。1−7復調器26では、入力された再生信号に基づいて情報を復調し再生データを出力する。以上の動作により、記録されたマークの再生が完了する。
[記録層材料の評価]
上記製造方法で作製した記録層に含まれるIn(添加元素MA)の含有量を変化させた種々の光ディスクに対して以下のような測定を行い評価した。
上記製造方法で作製した種々の光ディスクを、図2に示した情報記録再生装置に装着して、記録線速度におけるエラーレート(ただし、ランダムパターンを10回書換後のエラーレート)を測定した。その結果から、各光ディスクの記録消去性能及び信号品質を評価した。
ここでは、エラーレートの測定は、連続する5トラックの内周から外周方向に順番にランダムパターン(2T〜8Tのランダムパターン)を記録した後に、5トラックの中心トラックにおけるエラーレートを測定した。
また、この例では、記録層の酸化による信号劣化の評価を行うために加速試験を行った。具体的には、まず、測定対象の光ディスクに、内周部相当の線速度でランダム信号を10回記録してそのエラーレート(加速試験前のエラーレート)を測定し、その後、光ディスクを80℃、90%RHの環境に設定された恒温槽内に200時間放置しエラーレート(加速試験後のエラーレート)を測定した。これらのエラーレートの比(加速試験後のエラーレート/加速試験前のエラーレート)を測定した(いわゆる、アーカイバル再生)。
また、上記加速試験と同時に、上記加速試験でランダム信号を記録したトラックとは異なるトラックに外周部相当の記録線速度でランダム信号を10回記録して加速試験前のエラーレートを測定し、光ディスクを80℃、90%RH200時間放置した後に同一トラック上にオーバーライトを1回だけ行い、再度エラーレートを測定した。そして加速試験前後のエラーレートの比(加速試験後のエラーレート/加速試験前のエラーレート)を測定した(いわゆる、アーカイバルオーバーライト)。
さらに、上記加速試験終了後、測定対象の光ディスクを光学顕微鏡で観察して、記録層若しくは記録層界面で酸化による変色があるかどうかを確認した。
上記各測定の結果を表1及び2に示した。表1は、記録層の形成材料の母材にBiGe47Te50を用いた光ディスクの評価結果であり、表2は、記録層の形成材料の母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクの評価結果である。なお、この例で作製した種々の光ディスクではランド・グルーブ記録方式を採用しているので、この評価結果ではランドにおける評価結果とグルーブにおける評価結果との平均値を示した。なお、各評価の目標値は以下の通りである。
エラーレート:5×10−5以下
加速試験前後でのエラーレート比:2.0以下
また、表1及び2では評価結果を◎、○、×で表記したが、これらの判定基準は以下の通りである。
(1)エラーレート
◎:5×10−5以下、○:1.0×10−4以下、×:1.0×10−4より大きい
(2)加速試験前後でのエラーレート比
◎:2.0以下、○:3.0以下、×:3.0より大きい
(3)総合評価
◎:以上の評価項目すべてが◎の場合
○:以上の評価項目中に×がなく、一つでも○がある場合
×:以上の評価項目中に一つでも×の項目がある場合
Figure 2005205762
表1から明らかなように、記録層の形成母材にBiGe47Te50を用いた光ディスクでは、記録層中のInの含有量が0原子%の場合、加速試験後のエラーレートが増大し、加速試験前後のエラーレート比は目標未達となった。このため、総合評価は×となった。また、記録層中のInの含有量が0原子%である光ディスクでは、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、光ディスクの一部に酸化による記録層の変色が確認できた。
記録層中のIn含有量が1原子%及び5原子%である光ディスクでは、表1から明らかなように、すべての評価項目で目標値を達成したので総合評価は◎であった。記録層中のIn含有量が10原子%の光ディスクでは、表1から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○となった。
記録層中のIn含有量が11原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表1に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBiGe47Te51及びBiGe47Te49を用いた場合にも形成母材にBiGe47Te50を用いた場合と同様の特性が得られた。
Figure 2005205762
表2から明らかなように、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクでは、記録層中のIn含有量が0原子%の場合、加速試験後のエラーレートが増大し、加速試験前後のエラーレート比は目標未達となった。このため、総合評価は×となった。また、記録層中のIn含有量が0原子%である光ディスクでは、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、光ディスクの一部に酸化による記録層の変色が確認できた。
記録層中のIn含有量が1原子%及び5原子%である光ディスクでは、表2から明らかなように、すべての評価項目で目標値に達しているため総合評価は◎であった。また、記録層中のIn含有量が10原子%である光ディスクでは、表2から明らかなように、エラーレート及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が11原子%である光ディスクでは、表2から明らかなように、加速試験前後におけるエラーレート比の評価は○となったが、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、エラーレートは目標未達となった。このため、記録層中のIn含有量が11原子%である光ディスクでは、総合評価は×となる。
また、記録層の形成母材にBi16Ge37Te47及びBi19Ge26Te55を用いた光ディスクにおいても、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクと同様の特性が得られた。
さらに、この例では、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MAであるInの一部若しくは全部をSn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表1及び2と同様の特性が得られた。これらの元素のうち、Sn、Ga及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素でInを置換した場合には記録パワーを小さくすることができるという結果が得られた。InをPb及びSeの少なくとも一方の元素で置換した場合には、さらに長時間高温高湿下に保持しても記録層が酸化しないという結果が得られた。また、InをNで置換した場合には、媒体ノイズが減少し、より耐熱性が向上するという結果が得られた。
上述の結果から、BiGe47Te51、BiGe47Te49、BiGe47Te50、Bi16Ge37Te47、Bi19Ge26Te55及びBi30Ge22Te48を記録層の形成母材とし、各母材中のGeの一部をIn、Sn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MA)で置換した材料(A−1系列の材料)で記録層を形成した光ディスクでは、記録層中の添加元素MAの総原子数量を1〜10原子%とすることにより、上記の全評価項目の目標値が達成された。特に、添加元素MAの総原子数量が1〜5原子%の場合に極めて良好な特性が得られることが分かった。
すなわち、記録層中のBi、(Ge+MA)及びTeの組成比率を、Bi、(Ge+MA)及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲に設定し、
B2’(Bi,(Ge+MA)47,Te51
C2’(Bi,(Ge+MA)47,Te50
D2’(Bi,(Ge+MA)47,Te49
D6’(Bi16,(Ge+MA)37,Te47
C8’(Bi30,(Ge+MA)22,Te48
B7’(Bi19,(Ge+MA)26,Te55
且つ、記録層中の添加元素MAの含有量を1〜10原子%、特に1〜5原子%とすることにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られることが分かった。
実施例2では、記録層に添加する元素としてInの代わりにAu(添加元素MB)を用いた以外は、実施例1と同様にして、光ディスク(B−1系列の光ディスク)を作製した。すなわち、この例の光ディスクでは、記録層の形成母材にBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48を用い、各母材中のGeの一部をAuに置換した材料で記録層を形成した。また、この例では、記録層中のAu含有量の異なる種々の光ディスクを作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表3及び4に示した。なお、各評価項目の目標値及び表中の◎、○、×の評価基準は実施例1と同様である。
Figure 2005205762
表3から明らかなように、記録層の形成母材をBiGe47Te50を用いた光ディスクでは、記録層中のAu(添加元素MB)の含有量が0原子%の場合、加速試験後のエラーレートが増大し、加速試験前後のエラーレート比は目標未達となった。このため、総合評価は×となった。また、記録層中のAuの含有量が0原子%である光ディスクでは、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、光ディスクの一部に酸化による記録層の変色が確認できた。
記録層中のAu含有量が1原子%及び5原子%である光ディスクでは、表3から明らかなように、すべての評価項目で目標値を達成したので総合評価は◎であった。また、記録層中のAu含有量が10原子%の光ディスクでは、表3から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○となった。
記録層中のAu含有量が11原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表3に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBiGe47Te51及びBiGe47Te49を用いた場合にも形成母材にBiGe47Te50を用いた場合と同様の特性が得られた。
Figure 2005205762
表4から明らかなように、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクでは、記録層中のAu含有量が0原子%の場合、加速試験後のエラーレートが増大し、加速試験前後のエラーレート比は目標未達となった。このため、総合評価は×となった。また、記録層中のAu含有量が0原子%である光ディスクでは、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、光ディスクの一部に酸化による記録層の変色が確認できた。
記録層中のAu含有量が1原子%及び5原子%である光ディスクでは、表4から明らかなように、すべての評価項目で目標値に達しているため総合評価は◎であった。また、記録層中のAu含有量が10原子%である光ディスクでは、表4から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が11原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表4に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため、記録層中のAu含有量が11原子%である光ディスクでは、総合評価は×となる。
また、記録層の形成母材にBi16Ge37Te47及びBi19Ge26Te55を用いた光ディスクにおいても、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクと同様の特性が得られた。
さらに、この例では、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MBであるAuの一部若しくは全部をCr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表3及び4と同様の特性が得られた。これらの元素のうち、Co、Rh、Ni及びReからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素でAuを置換した場合、記録感度は若干劣化するが、耐熱性が向上するという結果が得られた。AuをCr、Ta及びWからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換した場合には、Co、Rh、Ni及びReを用いた場合よりも耐熱性が一層向上するだけでなく、密着性も向上し、さらに、酸・アルカリとの反応性が乏しくなり耐食性がさらに向上するという結果が得られた。また、AuをPt、Ti、Zr及びRuからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換した場合には、Cr、Ta及びWを用いた場合より、耐熱性及び耐食性がさらに向上するという結果が得られた。
上述の結果から、BiGe47Te51、BiGe47Te49、BiGe47Te50、Bi16Ge37Te47、Bi19Ge26Te55及びBi30Ge22Te48を記録層の形成母材とし、各母材中のGeの一部をAu、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MB)で置換した材料で記録層を形成した光ディスク(B−1系列の光ディスク)では、記録層中の添加元素MBの総原子数量を1〜10原子%とすることにより、上記の全評価項目の目標値が達成された。特に、添加元素MBの総原子数量が1〜5原子%の場合に極めて良好な特性が得られることが分かった。
すなわち、記録層中のBi、(Ge+MB)及びTeの組成比率を、Bi、(Ge+MB)及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲に設定し、
B2’(Bi,(Ge+MB)47,Te51
C2’(Bi,(Ge+MB)47,Te50
D2’(Bi,(Ge+MB)47,Te49
D6’(Bi16,(Ge+MB)37,Te47
C8’(Bi30,(Ge+MB)22,Te48
B7’(Bi19,(Ge+MB)26,Te55
且つ、記録層中の添加元素MBの含有量を1〜10原子%、特に1〜5原子%とすることにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られることが分かった。
実施例3では、記録層に添加する元素としてIn(添加元素MA)及びCu(添加元素MC)を用いた以外は、実施例1と同様にして、光ディスク(C−1系列の光ディスク)を作製した。すなわち、この例の光ディスクでは、記録層の形成母材にBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48を用い、各母材中のGeの一部をIn及びCuで置換した材料で記録層を形成した。なお、記録層の形成方法は次の通りである。
スパッタリングターゲットとして、Ge50Te50、BiTe及びGeターゲットを用意し、同時スパッタリングを行い記録層を形成した。この際、BiTeターゲットにはGeの小片あるいはTeの小片を貼り付け、Ge50Te50ターゲットには、Geの一部をInで置換するためにInの小片を貼り付け、そして、Geターゲットには、Geの一部をCuで置換するためにCuの小片を貼り付けて同時スパッタリングを行った。また、記録層4の組成が、Bi、Ge及びTeを頂点とする三角組成図のGe50Te50とBiTeとを結ぶ線上の組成よりもGeが過剰な組成となるように、3種類のターゲットに印加するスパッタリングパワーを各々調整して所望の組成の記録層を得た。
また、この例では、記録層中のIn含有量及びCu含有量の異なる種々の光ディスクを作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表5及び6に示した。なお、各評価項目の目標値及び表中の◎、○、×の評価基準は実施例1と同様である。
Figure 2005205762
表5から明らかなように、記録層の形成母材にBiGe47Te50を用いた光ディスクでは、記録層中のIn含有量が4原子%であり且つCu含有量が1原子%である場合に、すべての評価項目で目標値に達しており、そのため総合評価は◎であった。
記録層中のIn含有量が8原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表5から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のIn含有量が9原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表5から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が10原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表5に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のIn含有量が4原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表5から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のIn含有量が5原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表5から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が6原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表5に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため、総合評価は×となった。
記録層中のIn含有量が1原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、表5から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が2原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表5に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBiGe47Te51及びBiGe47Te49を用いた場合にも形成母材にBiGe47Te50を用いた場合と同様の特性が得られた。
Figure 2005205762
表6から明らかなように、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクでは、記録層中のIn含有量が4原子%であり且つCu含有量が1原子%である場合、すべての評価項目で目標値に達成した。そのため、総合評価は◎であった。
記録層中のIn含有量が8原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表6から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のIn含有量が9原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表6から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が10原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表6に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のIn有量が4原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表6から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のIn含有量が5原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表6から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が6原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表6に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のIn含有量が1原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、表6から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が2原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表6に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBi16Ge37Te47及びBi19Ge26Te55を用いた場合にも形成母材にBi30Ge22Te48を用いた場合と同様の特性が得られた。
さらに、この例では、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MCであるCuの一部若しくは全部をAg、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al及びLaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表5及び6と同様の特性が得られた。これらの元素のうちAg及びAlの少なくいとも一方の元素でCuを置換した場合は、結晶化温度が上昇するため、クロスイレーズが低減され、耐熱性が向上するという結果が得られた。CuをSc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S及びSiからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換した場合には、記録感度は若干劣化するが、耐熱性が格段に向上するという結果を得られた。
また、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MAであるInの一部若しくは全部をSn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表5及び6と同様の特性が得られた。添加元素Inの一部若しくは全部をSn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換した場合の効果は、実施例1で説明したA−1系列の光ディスクにおける効果と同様である。
上述の結果から、BiGe47Te51、BiGe47Te49、BiGe47Te50、Bi16Ge37Te47、Bi19Ge26Te55及びBi30Ge22Te48を記録層の形成母材とし、各母材中のGeの一部をIn、Sn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MA)と、Cu、Ag、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al及びLaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MC)とで置換した材料で記録層を形成した光ディスク(C−1系列の光ディスク)では、記録層中の添加元素MA及びMCの総原子数量を1〜10原子%とすることにより、上記の全評価項目の目標値が達成された。特に、添加元素MA及びMCの総原子数量が1〜5原子%の場合に極めて良好な特性が得られることが分かった。
すなわち、記録層中のBi、(Ge+MA+MC)及びTeの組成比率を、Bi、(Ge+MA+MC)及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲に設定し、
B2’(Bi,(Ge+MA+MC)47,Te51
C2’(Bi,(Ge+MA+MC)47,Te50
D2’(Bi,(Ge+MA+MC)47,Te49
D6’(Bi16,(Ge+MA+MC)37,Te47
C8’(Bi30,(Ge+MA+MC)22,Te48
B7’(Bi19,(Ge+MA+MC)26,Te55
且つ、記録層中の添加元素MA及びMCの総含有量を1〜10原子%、特に1〜5原子%とすることにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られることが分かった。
なお、この例で作製したすべての光ディスクにおいて、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、表5及び6から明らかなように、酸化による記録層の変色は認められなかった。
実施例4では、記録層に添加する元素としてAu(添加元素MB)及びCu(添加元素MC)を用いた以外は、実施例1と同様にして、光ディスク(D−1系列の光ディスク)を作製した。すなわち、この例の光ディスクでは、記録層の形成母材にBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48を用い、各母材中のGeの一部をAu及びCuで置換した材料で記録層を形成した。なお、記録層の形成方法は次の通りである。
スパッタリングターゲットとして、Ge50Te50、BiTe及びGeターゲットを用意し、同時スパッタリングを行い記録層を形成した。この際、BiTeターゲットにはGeの小片あるいはTeの小片を貼り付け、Ge50Te50ターゲットには、Geの一部をAuで置換するためにAuの小片を貼り付け、そして、Geターゲットには、Geの一部をCuで置換するためにCuの小片を貼り付けて同時スパッタリングを行った。また、記録層4の組成が、Bi、Ge及びTeを頂点とする三角組成図のGe50Te50とBiTeとを結ぶ線上の組成よりもGeが過剰な組成となるように、3種類のターゲットに印加するスパッタリングパワーを各々調整して所望の組成の記録層を得た。
また、この例では、記録層中のAu含有量及びCu含有量の異なる種々の光ディスクを作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表7及び8に示した。なお、各評価項目の目標値及び表中の◎、○、×の評価基準は実施例1と同様である。
Figure 2005205762
表7から明らかなように、記録層の形成母材にBiGe47Te50を用いた光ディスクでは、記録層中のAu含有量が4原子%であり且つCu含有量が1原子%である場合に、すべての評価項目で目標値に達しており、そのため総合評価は◎であった。
記録層中のAu含有量が8原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表7から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のAu含有量が9原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表7から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が10原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表7に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のAu含有量が4原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表7から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のAu含有量が5原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表7から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が6原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表7に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のAu含有量が1原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、表7から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が2原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表7に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBiGe47Te51及びBiGe47Te49を用いた場合にも形成母材にBiGe47Te50を用いた場合と同様の特性が得られた。
Figure 2005205762
表8から明らかなように、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクでは、記録層中のAu含有量が4原子%であり且つCu含有量が1原子%である場合に、すべての評価項目で目標値に達しており、そのため総合評価は◎であった。
記録層中のAu含有量が8原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表8から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のAu含有量が9原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表8から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が10原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表8に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のAu含有量が4原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表8から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のAu含有量が5原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表8から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が6原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表8に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のAu含有量が1原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、表8から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が2原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表8に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBi16Ge37Te47及びBi19Ge26Te55を用いた場合にも形成母材にBi30Ge22Te48を用いた場合と同様の特性が得られた。
さらに、この例では、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MCであるCuの一部若しくは全部をAg、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al及びLaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表7及び8と同様の特性が得られた。また、添加元素Cuの一部もしくは全部をこれらの元素で置換した場合の効果は、実施例3のC−1系列の光ディスクで説明した効果と同様である。
また、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MBであるAuの一部若しくは全部をCr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表7及び8と同様の特性が得られた。添加元素Auの一部もしくは全部をこれらの元素で置換した場合の効果は、実施例2のB−1系列の光ディスクで説明した効果と同様である。
上述の結果から、BiGe47Te51、BiGe47Te49、BiGe47Te50、Bi16Ge37Te47、Bi19Ge26Te55及びBi30Ge22Te48を記録層の形成母材とし、各母材中のGeの一部をAu、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MB)と、Cu、Ag、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al及びLaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MC)とで置換した材料で記録層を形成した光ディスク(D−1系列の光ディスク)では、記録層中の添加元素MB及びMCの総原子数量を1〜10原子%とすることにより、上記の全評価項目の目標値が達成された。特に、添加元素MB及びMCの総原子数量が1〜5原子%の場合に極めて良好な特性が得られることが分かった。
すなわち、記録層中のBi、(Ge+MB+MC)及びTeの組成比率を、Bi、(Ge+MB+MC)及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲に設定し、
B2’(Bi,(Ge+MB+MC)47,Te51
C2’(Bi,(Ge+MB+MC)47,Te50
D2’(Bi,(Ge+MB+MC)47,Te49
D6’(Bi16,(Ge+MB+MC)37,Te47
C8’(Bi30,(Ge+MB+MC)22,Te48
B7’(Bi19,(Ge+MB+MC)26,Te55
且つ、記録層中の添加元素MB及びMCの総含有量を1〜10原子%、特に1〜5原子%とすることにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られることが分かった。
なお、この例で作製したすべての光ディスクにおいて、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、表7及び8から明らかなように、酸化による記録層の変色は認められなかった。
実施例5では、記録層の形成母材にBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48を用い、各母材におけるBi、Ge及びTeの相対的な組成比を一定にしたまま、In(添加元素MA)を添加して記録層を形成した以外は、実施例1と同様に光ディスク(A−2系列の光ディスク)を作製した。なお、記録層の形成方法は次の通りである。
スパッタリングターゲットとして、Ge50Te50、BiTe及びGeターゲットを用意し、同時スパッタリングを行い記録層を形成した。この際、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比をBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48で一定にしたままInを添加するために、Inの小片をGe50Te50、BiTe及びGeターゲットに貼り付け、スパッタリングを行った。この際、ターゲットに貼り付けるIn小片の個数を調整することにより、In含有量を調整した。
また、この例では、記録層中のIn含有量の異なる種々の光ディスクを作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表9及び10に示した。なお、各評価項目の目標値及び表中の◎、○、×の評価基準は実施例1と同様である。
Figure 2005205762
表9から明らかなように、記録層の形成母材にBiGe47Te50を用いた光ディスクでは、記録層中のIn含有量が0原子%の場合、加速試験後のエラーレートが増大し、加速試験前後のエラーレート比は目標未達となった。このため、総合評価は×となった。また、記録層中のInの含有量が0原子%である光ディスクでは、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、光ディスクの一部に酸化による記録層の変色が確認できた。
記録層中のIn含有量が1原子%及び5原子%である光ディスクでは、表9から明らかなように、すべての評価項目で目標値を達成したので総合評価は◎であった。また、記録層中のIn含有量が10原子%の光ディスクでは、表9から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○となった。
記録層中のIn含有量が11原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表9に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBiGe47Te51及びBiGe47Te49を用いた場合にも形成母材にBiGe47Te50を用いた場合と同様の特性が得られた。
Figure 2005205762
表10から明らかなように、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクでは、記録層中のIn含有量が0原子%の場合、加速試験後のエラーレートが増大し、加速試験前後のエラーレート比は目標未達となった。このため、総合評価は×となった。また、記録層中のIn含有量が0原子%である光ディスクでは、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、光ディスクの一部に酸化による記録層の変色が確認できた。
記録層中のIn含有量が1原子%及び5原子%である光ディスクでは、表10から明らかなように、すべての評価項目で目標値に達しているため総合評価は◎であった。
記録層中のIn含有量が10原子%である光ディスクでは、表10から明らかなように、エラーレート及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
また、記録層中のIn含有量が11原子%である光ディスクでは、表10から明らかなように、加速試験前後におけるエラーレート比の評価は○となったが、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、エラーレートは目標未達となった。このため、記録層中のIn含有量が11原子%である光ディスクでは、総合評価は×となる。
また、記録層の形成母材にBi16Ge37Te47及びBi19Ge26Te55を用いた光ディスクにおいても、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクと同様の特性が得られた。
さらに、この例では、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MAであるInの一部若しくは全部をSn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表9及び10と同様の特性が得られた。これらの元素のうち、Sn、Ga及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素でInを置換した場合には記録パワーを小さくすることができるという結果が得られた。InをPb及びSeの少なくとも一方の元素で置換した場合には、さらに長時間高温高湿下に保持しても記録層が酸化しないという結果が得られた。また、InをNで置換した場合には、媒体ノイズが減少し、より耐熱性が向上するという結果が得られた。
上述の結果から、BiGe47Te51、BiGe47Te49、BiGe47Te50、Bi16Ge37Te47、Bi19Ge26Te55及びBi30Ge22Te48を記録層の形成母材とし、各母材中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比を一定にしたまま、In、Sn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MA)を添加した材料で記録層を形成した光ディスク(A−2系列の光ディスク)では、記録層中の添加元素MAの総原子数量を1〜10原子%とすることにより、上記の全評価項目の目標値が達成された。特に、添加元素MAの総原子数量が1〜5原子%の場合に極めて良好な特性が得られることが分かった。
すなわち、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率を、Bi、Ge及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲に設定し、
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
且つ、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率を一定に保ったまま、記録層中に添加元素MAを1〜10原子%、特に1〜5原子%の含有量で添加することにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られることが分かった。
実施例6では、記録層の形成母材にBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48を用い、各形成母材におけるBi、Ge及びTeの相対的な組成比を一定にしたまま、添加元素としてInの代わりにAu(添加元素MB)を添加して記録層を形成した以外は、実施例5と同様に光ディスク(B−2系列の光ディスク)を作製した。
また、この例では、記録層中のAu含有量の異なる種々の光ディスクを作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表11及び12に示した。なお、各評価項目の目標値及び表中の◎、○、×の評価基準は実施例1と同様である。
Figure 2005205762
表11から明らかなように、記録層の形成母材をBiGe47Te50を用いた光ディスクでは、記録層中のAu含有量が0原子%の場合、加速試験後のエラーレートが増大し、加速試験前後のエラーレート比は目標未達となった。このため、総合評価は×となった。また、記録層中のAu含有量が0原子%である光ディスクでは、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、光ディスクの一部に酸化による記録層の変色が確認できた。
記録層中のAu含有量が1原子%及び5原子%である光ディスクでは、表11から明らかなように、すべての評価項目で目標値を達成したので総合評価は◎であった。
記録層中のAu含有量が10原子%の光ディスクでは、表11から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○となった。
記録層中のAu含有量が11原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表11に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBiGe47Te51及びBiGe47Te49を用いた場合にも形成母材にBiGe47Te50を用いた場合と同様の特性が得られた。
Figure 2005205762
表12から明らかなように、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクでは、記録層中のAu含有量が0原子%の場合、加速試験後のエラーレートが増大し、加速試験前後のエラーレート比は目標未達となった。このため、総合評価は×となった。また、記録層中のAu含有量が0原子%である光ディスクでは、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、光ディスクの一部に酸化による記録層の変色が確認できた。
記録層中のAu含有量が1原子%及び5原子%である光ディスクでは、表12から明らかなように、すべての評価項目で目標値に達しているため総合評価は◎であった。
記録層中のAu含有量が10原子%である光ディスクでは、表12から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が11原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表12に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため、記録層中のAu含有量が11原子%である光ディスクでは、総合評価は×となる。
また、記録層の形成母材にBi16Ge37Te47及びBi19Ge26Te55を用いた光ディスクにおいても、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクと同様の特性が得られた。
さらに、この例では、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MBであるAuの一部若しくは全部をCr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表11及び12と同様の特性が得られた。これらの元素のうち、Co、Rh、Ni及びReからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素でAuを置換した場合、記録感度は若干劣化するが、耐熱性が向上するという結果が得られた。AuをCr、Ta及びWからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換した場合には、Co、Rh、Ni及びReを用いた場合よりも耐熱性が一層向上するだけでなく、密着性も向上し、さらに、酸・アルカリとの反応性が乏しくなり耐食性がさらに向上するという結果が得られた。また、AuをPt、Ti、Zr及びRuからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換した場合には、Cr、Ta及びWを用いた場合より、耐熱性及び耐食性がさらに向上するという結果が得られた。
上述の結果から、BiGe47Te51、BiGe47Te49、BiGe47Te50、Bi16Ge37Te47、Bi19Ge26Te55及びBi30Ge22Te48を記録層の形成母材とし、各母材中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比を一定にしたまま、Au、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MB)を添加した材料で記録層を形成した光ディスク(B−2系列の光ディスク)では、記録層中の添加元素MBの総原子数量を1〜10原子%とすることにより、上記の全評価項目の目標値が達成された。特に、添加元素MBの総原子数量が1〜5原子%の場合に極めて良好な特性が得られることが分かった。
すなわち、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率を、Bi、Ge及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲に設定し、
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
且つ、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率を一定に保ったまま、記録層中に添加元素MBを1〜10原子%、特に1〜5原子%の含有量で添加することにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られることが分かった。
実施例7では、記録層に添加する元素としてIn(添加元素MA)及びCu(添加元素MC)を用いた以外は、実施例5と同様にして、光ディスク(C−2系列の光ディスク)を作製した。すなわち、この例の光ディスクでは、記録層の形成母材にBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48を用い、各母材におけるBi、Ge及びTeの相対的な組成比を一定にしたまま、In及びCuを添加した材料で記録層を形成した。なお、記録層の形成方法は次の通りである。
スパッタリングターゲットとして、BiTe、Ge50Te50及びGeターゲットを用意し、同時スパッタリングを行い記録層を形成した。この際、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比をBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48で一定にしたままIn及びCuを添加するために、Inの小片をBiTe、Ge50Te50及びGeターゲットに貼り付け、さらにCuの小片もBiTe、Ge50Te50及びGeターゲットに貼り付けてスパッタリングを行った。この際、ターゲットに貼り付けるIn及びCuの小片の個数を調整することにより、In及びCuの含有量を調整した。
また、この例では、記録層中のIn含有量及びCu含有量の異なる種々の光ディスクを作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表13及び14に示した。なお、各評価項目の目標値及び表中の◎、○、×の評価基準は実施例1と同様である。
Figure 2005205762
表13から明らかなように、記録層の形成母材にBiGe47Te50を用いた光ディスクでは、記録層中のIn含有量が4原子%であり且つCu含有量が1原子%である場合に、すべての評価項目で目標値に達しており、そのため総合評価は◎であった。
記録層中のIn含有量が8原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表13から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のIn含有量が9原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表13から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が10原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表13に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のIn含有量が4原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表13から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のIn含有量が5原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表13から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が6原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表13に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため、総合評価は×となった。
記録層中のIn含有量が1原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、表13から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が2原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表13に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBiGe47Te51及びBiGe47Te49を用いた場合にも形成母材にBiGe47Te50を用いた場合と同様の特性が得られた。
Figure 2005205762
表14から明らかなように、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクでは、記録層中のIn含有量が4原子%であり且つCu含有量が1原子%である場合、すべての評価項目で目標値に達成した。そのため、総合評価は◎であった。
記録層中のIn含有量が8原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表14から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のIn含有量が9原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表14から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が10原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表14に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のIn有量が4原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表14から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のIn含有量が5原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表14から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が6原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表14に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のIn含有量が1原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、表14から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のIn含有量が2原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表14に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBi16Ge37Te47及びBi19Ge26Te55を用いた場合にも形成母材にBi30Ge22Te48を用いた場合と同様の特性が得られた。
さらに、この例では、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MCであるCuの一部若しくは全部をAg、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al及びLaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表13及び14と同様の特性が得られた。これらの元素のうちAg及びAlの少なくとも一方の元素でCuを置換した場合は、結晶化温度が上昇するため、クロスイレーズが低減され、耐熱性が向上するという結果が得られた。CuをSc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S及びSiからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換した場合には、記録感度は若干劣化するが、耐熱性が格段に向上するという結果を得られた。
また、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MAであるInの一部若しくは全部をSn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表13及び14と同様の特性が得られた。添加元素Inの一部もしくは全部をSn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換した場合の効果は、実施例5で説明したA−2系列の光ディスクにおける効果と同様である。
上述の結果から、BiGe47Te51、BiGe47Te49、BiGe47Te50、Bi16Ge37Te47、Bi19Ge26Te55及びBi30Ge22Te48を記録層の形成母材とし、各母材中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比を一定にしたまま、In、Sn、Pb、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MA)と、Cu、Ag、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al及びLaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(MC)とを添加した材料で記録層を形成した光ディスク(C−2系列の光ディスク)では、記録層中の添加元素MA及びMCの総原子数量を1〜10原子%とすることにより、上記の全評価項目の目標値が達成された。特に、添加元素MA及びMCの総原子数量が1〜5原子%の場合に極めて良好な特性が得られることが分かった。
すなわち、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率を、Bi、Ge及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲に設定し、
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
且つ、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率を一定に保ったまま、記録層中の添加元素MA及びMCの総含有量が1〜10原子%、特に1〜5原子%となるように添加元素MA及びMCを添加することにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られることが分かった。
なお、この例で作製したすべての光ディスクにおいて、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、表13及び14から明らかなように、酸化による記録層の変色は認められなかった。
実施例8では、記録層に添加する元素としてAu(添加元素MB)及びCu(添加元素MC)を用いた以外は、実施例5と同様にして、光ディスク(D−2系列の光ディスク)を作製した。すなわち、この例の光ディスクでは、記録層の形成母材にBiGe47Te50またはBi30Ge22Te48を用い、各母材におけるBi、Ge及びTeの相対的な組成比を一定にしたまま、Au及びCuを添加した材料で記録層を形成した。なお、記録層の形成方法は次の通りである。
スパッタリングターゲットとして、BiTe、Ge50Te50及びGeターゲットを用意し、同時スパッタリングを行い記録層を形成した。この際、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比をBiGe47Te50及びBi30Ge22Te48で一定にしたままIn及びCuを添加するために、Auの小片をBiTe、Ge50Te50及びGeターゲットに貼り付け、さらにCuの小片もまたBiTe、Ge50Te50及びGeターゲットに貼り付けてスパッタリングを行った。この際、ターゲットに貼り付けるAu及びCuの小片の個数を調整することにより、Au及びCuの含有量を調整した。
また、この例では、記録層中のAu含有量及びCu含有量の異なる種々の光ディスクを作製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表15及び16に示した。なお、各評価項目の目標値及び表中の◎、○、×の評価基準は実施例1と同様である。
Figure 2005205762
表15から明らかなように、記録層の形成母材にBiGe47Te50を用いた光ディスクでは、記録層中のAu含有量が4原子%であり且つCu含有量が1原子%である場合に、すべての評価項目で目標値に達しており、そのため総合評価は◎であった。
記録層中のAu含有量が8原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表15から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のAu含有量が9原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表15から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が10原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表15に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のAu含有量が4原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表15から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のAu含有量が5原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表15から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が6原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表15に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のAu含有量が1原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、表15から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が2原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表15に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBiGe47Te51及びBiGe47Te49を用いた場合にも形成母材にBiGe47Te50を用いた場合と同様の特性が得られた。
Figure 2005205762
表16から明らかなように、記録層の形成母材にBi30Ge22Te48を用いた光ディスクでは、記録層中のAu含有量が4原子%であり且つCu含有量が1原子%である場合に、すべての評価項目で目標値に達しており、そのため総合評価は◎であった。
記録層中のAu含有量が8原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表16から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のAu含有量が9原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、表16から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が10原子%であり且つCu含有量が1原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表16に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のAu含有量が4原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表16から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。また、記録層中のAu含有量が5原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、表16から明らかなように、エラーレートの評価及び加速試験前後におけるエラーレート比の評価がともに○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が6原子%であり且つCu含有量が5原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表16に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
記録層中のAu含有量が1原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、表16から明らかなように、エラーレートの評価が○となったため、総合評価は○であった。
記録層中のAu含有量が2原子%であり且つCu含有量が9原子%である光ディスクでは、信号変調度が小さくなるためエラーレートが増大し、表16に示すように、エラーレートは目標未達となった。このため総合評価は×となった。
また、記録層の形成母材としてBi16Ge37Te47及びBi19Ge26Te55を用いた場合にも形成母材にBi30Ge22Te48を用いた場合と同様の特性が得られた。
さらに、この例では、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MCであるCuの一部若しくは全部をAg、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al及びLaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表15及び16と同様の特性が得られた。また、添加元素Cuの一部もしくは全部をこれらの元素で置換した場合の効果は、実施例7のC−2系列の光ディスクで説明した効果と同様である。
また、上記の記録層材料を用いた光ディスクにおいて、添加元素MBであるAuの一部若しくは全部をCr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素で置換しても、上記表15及び16と同様の特性が得られた。添加元素Auの一部もしくは全部をこれらの元素で置換した場合の効果は、実施例6のB−2系列の光ディスクで説明した効果と同様である。
上述の結果から、BiGe47Te51、BiGe47Te49、BiGe47Te50、Bi16Ge37Te47、Bi19Ge26Te55及びBi30Ge22Te48を記録層の形成母材とし、各母材中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比を一定にしたまま、Au、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MB)と、Cu、Ag、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al及びLaからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素MC)とを添加した材料で記録層を形成した光ディスク(D−2系列の光ディスク)では、記録層中の添加元素MB及びMCの総原子数量を1〜10原子%とすることにより、上記の全評価項目の目標値が達成された。特に、添加元素MB及びMCの総原子数量が1〜5原子%の場合に極めて良好な特性が得られることが分かった。
すなわち、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率を、Bi、Ge及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲に設定し、
B2(Bi,Ge47,Te51
C2(Bi,Ge47,Te50
D2(Bi,Ge47,Te49
D6(Bi16,Ge37,Te47
C8(Bi30,Ge22,Te48
B7(Bi19,Ge26,Te55
且つ、記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率を一定に保ったまま、記録層中の添加元素MB及びMCの総含有量が1〜10原子%、特に1〜5原子%となるように添加元素MB及びMCを添加することにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が得られることが分かった。
なお、この例で作製したすべての光ディスクにおいて、加速試験後の光ディスクを光学顕微鏡で観察したところ、表15及び16から明らかなように、酸化による記録層の変色は認められなかった。
上記実施例1〜8では波長405nmの青色レーザーを用いて情報の記録再生を行った例を説明したが、本発明はこれに限定されず、波長640nm〜665nmの赤色レーザーを用いて情報の記録再生を行っても同様の結果が得られる。
[最適構成]
以下に、本発明の情報記録媒体を構成する各層の最適組成及び最適膜厚について説明する。
(第1保護層)
第1保護層の光ビーム入射側に存在する物質はポリカーボネート等のプラスチック基板、あるいは、紫外線硬化樹脂等の有機物である。また、これらの屈折率は1.4〜1.6程度である。上記有機物と第1保護層の間で反射を効果的に起こすためには、第1保護層の屈折率は2.0以上であることが望ましい。第1保護層の屈折率は光学的には光ビーム入射側に存在する物質(本実施例では基板に相当する)の屈折率よりも大きい値であり、光の吸収が発生しない範囲で第1保護層の屈折率がより大きいほうが良い。具体的には、第1保護層は、屈折率nが2.0〜3.0の間であり、光を吸収しない材料で形成され、特に金属の酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、セレン化物等を含有することが望ましい。
また、第1保護層の熱伝導率は少なくとも2W/mk以下であることが望ましい。特に、ZnS−SiO系の化合物は熱伝導率が低いので、第1保護層として最適である。さらに、SnO、あるいはSnOにZnS,CdS、SnS、GeS、PbS等の硫化物を添加した材料、あるいはSnOにCr、Mo等の遷移金属酸化物を添加した材料は、熱伝導率が低いだけでなく、ZnS−SiO系材料より熱的に安定であるので、第1保護層と記録層との間に設けられた第1界面層の膜厚が2nm以下となった場合にも、記録層への溶け込みが発生しないため、特に第1保護層として優れた特性を示す。
また、光ビームの波長が405nm程度の場合、基板と記録層との間の光学干渉を有効に利用するためには、第1保護層の最適膜厚は40nm〜100nmである。
(第1界面層)
本発明の情報記録媒体の記録層に用いる相変化材料の融点は650℃以上と高温であるため、第1保護層と記録層の間に熱的に極めて安定な第1界面層を設けることが望ましい。具体的には、第1界面層の形成材料としては、Cr、Ge、SiC等の高融点酸化物、高融点窒化物、高融点炭化物が望ましく、これらの材料は熱的に安定であり、長期間保存後も膜はがれによる劣化が発生しない。
また、第1界面層にBi、Sn、Pb等の記録層の結晶化を促進する材料が含有されていると、記録層の再結晶化を抑制する効果が得られるのでさらに望ましい。特に、Bi、Sn、PbのTe化物、酸化物、あるいは、Bi、Sn、PbのTe化物、酸化物と窒化ゲルマニウムとの混合物、あるいは、Bi、Sn、PbのTe化物、酸化物と遷移金属酸化物、遷移金属窒化物との混合物が望ましい。遷移金属は価数を容易に変化させるため、たとえBi、Sn、Pb、Te等の元素が遊離しても、上記遷移金属が価数を変え、遷移金属とBi、Sn、Pb、Te等の間で結合が起こり、熱的に安定な化合物を生成するからである。特に、Cr、Mo及びWは融点が高く、価数を変えやすく、上記金属との間で、熱的に安定な化合物を生成しやすいため優れた材料である。
第1界面層中の上記Bi、Sn、PbのTe化物、酸化物の含有量は、記録層の結晶化を促進するためには可能な限り多いほうが望ましい。しかしながら、第1界面層は第2界面層と比較して、光ビーム照射により、高温になりやすく記録膜に界面層材料が溶け込む等の問題が発生するために、少なくともBi、Sn、PbのTe化物、酸化物の含有量を70%以下に抑える必要がある。
第1界面層の膜厚は0.5nm以上であればその効果を発揮する。しかしながら、第1界面層の膜厚が2nmより薄い場合、第1保護層の形成材料が第1界面層通過して記録層に溶け込み、多数回書換え後の再生信号品質を劣化させる場合がある。それゆえ、第1界面層の膜厚は2nm以上であることが望ましい。また、第1界面層の膜厚が10nmより厚くなると、光学的に悪影響を与えるため、反射率低下、信号振幅低下等の弊害がある。従って、第1界面層の膜厚は2nm〜10nmが望ましい。
(記録層)
記録層の形成材料については、すでに実施例等で詳細に説明しているが、実施例以外では、上述のBi−Ge−Te系相変化材料の組成範囲内において、Geの代わりに同族元素であるSi、Sn及びPbからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を用いても良い。また、Si、Sn及びPbからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を適当な量で添加してGeの一部を置換しても良い。このような材料で記録層を形成することにより、容易に、対応可能な線速度範囲を調整することができる。例えば、SiでGeを置換した場合、GeやGeTeよりも融点が高く結晶化速度が小さいSiTeが生成するため、溶融部外縁部にSiTeが偏析して、溶融部外縁部の再結晶化が抑制される。また、SnTeやPbTeによりGeTeを置換した場合、核生成速度が向上するため、高速記録時の消去不足を補うことができる。
さらに、本発明の情報記録媒体に使用される記録層材料にBを添加すると、溶融部外縁部の再結晶化が一層抑制され、優れた性能を示す情報記録媒体が得られる。これは、BがGeと同様に溶融部外縁部の再結晶化を抑制する効果があり、また、B原子は非常に小さいため、速やかに偏析することが可能であるためであると考えられる。
なお、本発明の情報記録媒体に使用される記録層材料の各構成元素が上述の組成範囲の関係を維持していれば、たとえ、不純物が混入していたとしても、不純物の原子%が1%以内であれば、本発明の効果は失われない。
また、本発明の情報記録媒体の構造では記録層の膜厚を5nm〜15nmに設定することが光学的に最適である。特に7nm〜11nmの膜厚で記録層を形成した場合、多数回書換え時の記録膜流動による再生信号劣化を抑制し、さらに光学的に変調度を最適化することができる。
(第2界面層)
本発明の情報記録媒体の記録層に用いられる相変化材料の融点は650℃以上と高温であるため、第2保護層と記録層との間に熱的に極めて安定な第2界面層を設けることが望ましい。具体的には、第2界面層として、Cr、Ge、SiC等の高融点酸化物、高融点窒化物、高融点炭化物が望ましい。これらの材料は熱的に安定であり、長期保存後も膜はがれによる劣化が発生しない。
また、第2界面層にBi、Sn、Pb等の記録層の結晶化を促進する材料が含有されていると、記録層の再結晶化を抑制する効果が得られるのでさらに望ましい。特に、Bi、Sn、PbのTe化物、酸化物、あるいは、Bi、Sn、PbのTe化物、酸化物と窒化ゲルマニウムとの混合物、あるいは、Bi、Sn、PbのTe化物、酸化物と遷移金属酸化物、遷移金属窒化物との混合物が望ましい。遷移金属は価数を容易に変化させるため、たとえBi、Sn、Pb、Te等の元素が遊離しても、上記遷移金属が価数を変え、遷移金属とBi、Sn、Pb、Teの間で結合が起こり、熱的に安定な化合物を生成するからである。特に、Cr、Mo、Wは融点が高く、価数を変えやすく、上記金属との間で熱的に安定な化合物を生成しやすいため優れた材料である。
第2界面層中の上記Bi、Sn、PbのTe化物、酸化物の含有量は、記録層の結晶化を促進するためには可能な限り多いほうが望ましい。しかしながら、第2界面層は光ビーム照射により高温になりやすく、記録層に第2界面層材料が溶け込む等の問題が発生するため、少なくともBi、Sn、PbのTe化物、酸化物の含有量を70%以下に抑える必要がある。
第2界面層の膜厚は0.5nm以上であれば上記効果を発揮する。しかしながら、その膜厚が1nmより薄くなると、第2保護層の形成材料が第2界面層を通過して記録層に溶け込み、多数回書換え後の再生信号品質を劣化させる場合がある。それゆえ、第2界面層の膜厚は1nm以上であることが望ましい。また、第2界面層の膜厚が5nmより厚くなると、光学的に悪影響を与えるため、反射率低下、信号振幅低下等の弊害がある。従って、第2界面層の膜厚は1nm〜5nmが望ましい。
(第2保護層)
第2保護層は光を吸収しない材料で形成され、特に金属の酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、セレン化物を含有することが望ましい。また、第2保護層の熱伝導率は少なくとも2W/mk以下であることが望ましい。特に、ZnS−SiO系の化合物は熱伝導率が低いので第2保護層として最適である。さらに、SnO、あるいは、SnOにZnS,CdS、SnS、GeS,PbS等の硫化物を添加した材料、あるいは、SnOにCr、Mo等の遷移金属酸化物を添加した材料は、熱伝導率が低いだけでなく、ZnS−SiO系材料よりも熱的に安定であるため、第2界面層の膜厚が1nm未満となった場合においても、記録層への第2界面層の形成材料の溶け込みが発生しないため、特に第2保護層として優れた特性を示す。
また、情報記録媒体が第2保護層と熱拡散層との間に吸収率制御層を備え、光ビームの波長が405nm程度の場合、記録層と吸収率制御層との間の光学干渉を有効に利用するためには、第2保護層の最適膜厚は25nm〜60nmである。
(熱拡散層)
熱拡散層の形成材料としては、高反射率、高熱伝導率の金属あるいは合金が望ましく、Al、Cu、Ag、Au、Pt、Pdの総含有量が90原子%以上である材料が望ましい。また、熱拡散層の形成材料としてCr、Mo、W等の高融点で硬度の大きい材料及びこれらの材料の合金もまた望ましく、これらの材料を用いると、多数回書換え時の記録層材料の流動による劣化を防止することができる。
具体的には、特に、Alを95原子%以上含有する材料で熱拡散層を形成した情報記録媒体では、廉価であり、高CNR、高記録感度及び多数回書換え耐性が優れるといった効果だけでなく、クロスイレーズ低減効果が極めて大きくなるという効果が得られる。また、上記熱拡散層がAlを95原子%以上含有する材料で形成されている場合、廉価でしかも耐食性に優れた情報記録媒体を実現することができる。Alに対する添加元素としてはCo、Ti、Cr、Ni、Mg、Si、V、Ca、Fe、Zn、Zr、Nb、Mo、Rh、Sn、Sb、Te、Ta、W、Ir、Pb、B、C等が耐食性の点において優れているが、添加元素にCo、Cr、Ti、Ni、Feを用いた場合、特に耐食性向上に大きな効果がある。
熱拡散層の膜厚は、30nm〜100nmであることが望ましい。熱拡散層の膜厚が30nmより薄い場合、記録層において発生した熱が拡散し難くなるため、特に10万回程度書換えた際に、記録層が劣化し易くなり、また、クロスイレーズが発生し易くなる恐れがある。また、熱拡散層の膜厚が30nmより薄い場合、光を透過してしまうため熱拡散層として使用することが困難になり再生信号振幅が低下する恐れがある。また、熱拡散層の膜厚は100nmより厚くなると、情報書換え時に記録層に与えられた熱が拡散しやすくなるため、記録層が結晶化温度以上に保持される時間が短くなり、記録マークを充分に結晶化することができなくなる恐れがある。さらに、熱拡散層の膜厚は200nm以上となると、生産性が悪くなり、また、熱拡散層の内部応力により、基板のそり等が発生し、情報の記録再生を正確に行うことができなくなる恐れがある。また、熱拡散層の膜厚は、30nm〜90nmであれば、耐食性、生産性の点で優れており、さらに望ましい。
また、情報記録媒体が第2保護層と熱拡散層との間に吸収率制御層を備え、吸収率制御層に含まれる金属元素と熱拡散層に含まれる金属元素が同じ場合、生産上は大きな利点がある。この場合、同一ターゲットを用いて吸収率制御層と熱拡散層の2層の層を製膜することができる。すなわち、吸収率制御層製膜時にはAr−O混合ガス、Ar−N混合ガス等の混合ガスによりスパッタリングして、スパッタリング中に金属元素と酸素、あるいは窒素を反応させることにより適当な屈折率の吸収率制御層を形成し、熱拡散層の製膜時にはArガスによりスパッタリングし熱伝導率が高い金属の熱拡散層を形成することができる。
上述のように、本発明の情報記録媒体では、Bi、Ge及びTeを含む相変化材料に第4の元素としてBi、Ge及びTe以外の元素Mを10原子%以下の含有量で添加した材料で記録層を形成することにより、記録データの信頼性が高く且つデータの繰返し記録に対する耐久性が向上するだけでなく、耐酸化性に優れた情報記録媒体が提供される。
図1は、実施例1で作製した相変化記録方式の光ディスクの概略断面図である。 図2は、実施例1で作製した光ディスクの評価に用いた記録再生装置の概略構成図である。 図3は、Bi−Ge−Te系相変化材料の三角組成図であり、本発明の記録層に用いるBi−Ge−Te系相変化材料の最適な組成範囲を示した図である。
符号の説明
1 基板
2 第1保護層
3 第1界面層
4 記録層
5 第2界面層
6 第2保護層
7 熱拡散層
8 紫外線硬化樹脂層
10 光ディスク

Claims (11)

  1. 情報記録媒体であって、
    基板と、
    基板上に設けられ、Bi、Ge、Te及びこれらの元素以外の元素Mを含む相変化材料で形成された記録層とを備え、
    Geの一部が元素Mで置換されており、該記録層中のBi、(Ge+M)及びTeの組成比率がBi、(Ge+M)及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲にあり、
    B2’(Bi,(Ge+M)47,Te51
    C2’(Bi,(Ge+M)47,Te50
    D2’(Bi,(Ge+M)47,Te49
    D6’(Bi16,(Ge+M)37,Te47
    C8’(Bi30,(Ge+M)22,Te48
    B7’(Bi19,(Ge+M)26,Te55
    元素Mが元素MA及び元素MBを含み、該記録層中の元素MAの含有量αと元素MBの含有量βとの間に、α×β≠0原子%、且つ、0原子%<α+β≦10原子%の関係が成立し、元素MAはSn、Pb、In、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であり、元素MBはAu、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることを特徴とする情報記録媒体。
  2. 情報記録媒体であって、
    基板と、
    基板上に設けられ、Bi、Ge、Te及びこれらの元素以外の元素Mを含む相変化材料で形成された記録層とを備え、
    該記録層中のBi、Ge及びTeの相対的な組成比率がBi、Ge及びTeの三角組成図上の以下の各点により囲まれた組成範囲にあり、
    B2(Bi,Ge47,Te51
    C2(Bi,Ge47,Te50
    D2(Bi,Ge47,Te49
    D6(Bi16,Ge37,Te47
    C8(Bi30,Ge22,Te48
    B7(Bi19,Ge26,Te55
    元素Mが元素MA及び元素MBを含み、該記録層中の元素MAの含有量αと元素MBの含有量βとの間に、α×β≠0原子%、且つ、0原子%<α+β≦10原子%の関係が成立し、元素MAはSn、Pb、In、Se、Ga、Zn及びNからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であり、元素MBはAu、Cr、Pt、Ta、W、Ti、Zr、Ru、Co、Rh、Ni、Re、Os及びIrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることを特徴とする情報記録媒体。
  3. 元素Mが、さらに、元素MCを含み、上記記録層中の元素MCの含有量γと元素MAの含有量αと元素MBの含有量βとの間に、0原子%<α+β+γ≦10原子%の関係が成立し、元素MCがAg、Cu、Sc、Y、V、Nb、Mo、Mn、Fe、Pd、S、Si、Al、La及びCeからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることを特徴とする請求項1または2に記載の情報記録媒体。
  4. 上記情報記録媒体の情報記録に用いられる光ビームの波長が390nm〜420nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
  5. 上記基板上に同心円状あるいはスパイラル状の溝が形成されており、該溝及び溝間の少なくともいずれか一方を記録トラックとして用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
  6. 上記溝及び上記溝間の両方を記録トラックとして用いることを特徴とする請求項5に記載の情報記録媒体。
  7. 上記情報記録媒体の記録トラックのトラックピッチTPと、情報の記録再生に用いられる光ビームの波長λと、光ビームを集光するための対物レンズの開口数NAとの間に、
    0.35×(λ/NA)≦TP≦0.7×(λ/NA)
    なる関係が成立することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
  8. 上記情報記録媒体が、さらに、界面層を備え、該界面層が上記記録層の少なくとも一方の側の表面に接して設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
  9. 上記情報記録媒体が、さらに、熱拡散層と保護層とを備え、該熱拡散層が上記記録層の光ビーム入射側と反対側に設けられ、該保護層が上記記録層と該熱拡散層との間に設けられ、該保護層の膜厚が25nm〜60nmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の情報記録媒体。
  10. 上記保護層が、上記光ビームの波長における屈折率が1.7以下で且つ消衰係数が0.1以下である材料を25%以上含むことを特徴とする請求項9に記載の情報記録媒体。
  11. 上記保護層が、SiO及びAlの少なくとも一方を25%以上含むことを特徴とする請求項9または10に記載の情報記録媒体。
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