JP4546851B2 - 情報記録方法と光記録媒体 - Google Patents
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Description
このようにして作製された相変化光ディスクは、記録層に用いられている相変化材料がアモルファス状態であり、これを結晶化状態にする、所謂初期化工程を施す事が一般的である。相変化光ディスクの初期化はディスクを回転させながら幅数μm、長さ数十〜数百μmの半導体レーザからレーザ光を照射し、半径方向にレーザ光を移動させる事で行なう。レーザ光の照射にはフォーカシング機能を設けてより効率の良いレーザ照射を行なう場合が多い。
よく用いられる記録ストラテジとしては記録パワーPp、消去パワーPe、バイアスパワーPb(Pp>Pe>Pb)の3値制御がある。これらと種々のパルス幅を組み合わせて特定の長さのマークを記録する。データ記録・再生の変調方式としてはCDで使われているEFM変調やDVDで使われているEFM+変調などはマークエッジ記録方式である事からマーク長の制御が非常に重要である。このマーク長の制御の評価としてはジッタ特性が一般的に用いられる。ここでジッタとは、1倍速で再生したときの基本クロック周期Tw(対応するマーク長は約0.1333μm)と、それを単位とした9種類のマーク(3Tw〜11Tw及び14Twマーク)の、端部のずれを数値化したものであり、小さい値ほど特性が良いことになる。
最近では更なるデジタル容量の大容量化により、これらの光ディスクへの記録速度の向上が期待されている。相変化技術を用いた光ディスクへの高速記録には、より速い記録線速度での書換え性能とより広い記録線速度範囲での書換え性能の双方が要求される。前者は最高記録速度であり、後者は記録可能な速度範囲に相当する。この点について以下に説明する。
記録方式として、記録回転数一定で記録を行なうCAV記録と線速度一定で行なうCLV記録の2種類を考えた時、CLV記録の場合は半径値により回転数が変わり、内周側になるほど高い回転数が要求される。この為、最高線速は光ディスク用記録再生装置が有する光ディスクの回転能力の限界で決まってしまい、それ以上の線速での記録が可能な場合は回転能力限界の回転数一定のCAV記録を用いる必要性が出てくる。
以上のように、記録線速度の向上とは最高線速の向上だけでなく、ある一定の記録線速度範囲での書換え性能も同時に求められる。
CDやDVDでCAV記録を行なった場合、ディスクサイズが直径120mmである事から、(最外周での記録線速度)/(最内周での記録線速度)の比を求めると、約2.4倍である。具体的には、DVD+RWの4倍速ディスクでは、CAV記録に必要な記録線速範囲は、5.8m/s〜14.0m/sとなる。なお、ここでいう「4倍速」とはDVDの基準線速である3.5m/sの4倍の線速を示す。
ここまでCAV記録或いはZCLV記録の必要性が光ディスク用記録再生装置の有する光ディスクの回転能力の限界から来ていると説明してきたが、特にCAV記録は回転数が一定である事から、記録する半径値によって回転数を調整する必要が無く、その為ランダムアクセス記録の高速化に必須の技術でもある。ランダムアクセス記録の高速化はデータ転送の高速化でもあり、結果的に記録速度の向上にも繋がる。
即ち、ディスク特性としてジッタ特性が実用レベルにある記録線速範囲内に再生エラーが多くなるという現象を見出した。因みに、ここでいう再生エラーとは、実際に記録された信号をデジタルデータに変換する際の確かさを表したもので、その値が低い程良好である。
従来はジッタ特性が良好であれば再生エラーも低く、それぞれが相反するという現象は確認されていない。唯一、相反する場合として、ディスクに欠陥が多い場合にジッタ特性と再生エラー特性が相反することが稀にあるが、本発明者等が見出した現象はその程度が全く異なる範囲であった。以下に、その現象についての詳細を述べる。
上記再生信号をTIA(タイムインターバルアナライザ)により測定した結果を模式的に示すと、図4のようになる。これは3Tを中心とした正規分布をとる成分(図中の「正常マークの分布曲線」)と3Tより短い領域に分布する成分(図中の「異常マークの分布曲線」)とに分けることができる。この3Tより短い領域に分布する成分が記録マーク中に結晶が存在する異常マークの個数に当り、これがPIエラーの原因となる。図では異常マークの分布曲線として表現してあるが、このように連続的に存在する場合の他に、1Tマーク及び2Tマークとして認識された成分が不連続に点在する場合も非常によく起こる。
(1)余熱による再結晶化(例えば、特許文献1)
(2)高速記録時に十分な結晶化が行えずに消し残りが発生する(例えば、特許文献2)
(3)多数回のDOW記録を行う事でアモルファスマーク周辺に結晶が析出する(例えば、特許文献3〜5など)
等が知られているが、本発明で見出した現象は、DOW記録の回数に依らない点、アモルファスマークの全てでなく一部に微結晶が発生している点、ジッタ特性が良好であるにも関わらず再生エラーが非常に大きくなっている点などから、従来から知られている現象とは異なる事が分かる。
更に、記録密度がDVD程度に高くなると、このような微結晶が最短マークに存在する事が再生エラーの増加に繋がると考えられる。
以上の事実を踏まえ、本発明は再生エラー特性とDOW1000回記録後のジッタ特性が両立する情報記録方法、及び該記録方法の実施に適した相変化型光記録媒体の提供を目的とする。
1) 実用上記録可能な線速の最高値がV0(V0=DVD8倍速)である相変化型光記録媒体に対し、線速V=VH(0.5V0<VH≦V0)で走査して、時間的長さnTw(n;3以上の自然数、Tw;基本クロック周期)の記録マークを形成する場合に、線速Vとクロック周期Twが、V×Tw=一定なる関係を満足し、パワーPpの加熱パルスと、パワーPbの冷却パルスと、パワーPeの消去連続光の3つのパワーレベル(Pp>Pe>Pb)でレーザ光を強度変調し、パワーPpの加熱パルスとパワーPbの冷却パルスとをm回(m;1以上の自然数)交互に照射することによりアモルファスマークを形成する情報記録方法において、最短マーク(n=3、m=1)の記録におけるパワーPpの加熱パルス照射時間をT3[nsec]、パワーPbの冷却パルス照射時間をTc3[nsec]としたとき、比率T3/(T3+Tc3)を0.70〜1とすることを特徴とする情報記録方法。
2) パワーPpの加熱パルス照射時間T3を記録する速度でのクロック周期Tw[nsec]で規格化した値T3/Twが、1.18〜1.57に設定されていることを特徴とする1)記載の情報記録方法。
3) 実用上記録可能な線速の最高値がV0(V0=DVD8倍速)である相変化型光記録媒体に対し、線速V=VL(0<VL≦0.5V0)で走査して、時間的長さnTw(n;3以上の自然数、Tw;基本クロック周期)の記録マークを形成する場合に、線速Vとクロック周期Twが、V×Tw=一定なる関係を満足し、パワーPpの加熱パルスと、パワーPbの冷却パルスと、パワーPeの消去連続光の3つのパワーレベル(Pp>Pe>Pb)でレーザ光を強度変調し、パワーPpの加熱パルスとパワーPbの冷却パルスとをm回(m;1以上の自然数)交互に照射することによりアモルファスマークを形成する情報記録方法において、最短マーク(n=3、m=1)の記録におけるパワーPpの加熱パルス照射時間をT3、パワーPbの冷却パルス照射時間をTc3としたとき、比率T3/(T3+Tc3)を0.07〜0.11とするとともに、パワーPpの加熱パルス照射時間T3を記録する速度でのクロック周期Twで規格化した値T3/Twが、0.25〜0.35に設定されていることを特徴とする情報記録方法。
4) V=VHにおけるn≧4の長さのマークの記録に関して、パルスパワーPpのm(m;n/2を超えない最大の整数)個の加熱パルス幅をTmpとするとき、0.4×T3≦Tmp≦0.7×T3に設定されていることを特徴とする1)又は2記載の情報記録方法。
5) V=VLにおけるn≧4の長さのマークの記録に関して、パルスパワーPpのm(m;n/2を超えない最大の整数)個の加熱パルス幅をTmpとするとき、0.95×T3≦Tmp≦1.05×T3に設定されていることを特徴とする3記載の情報記録方法。
6) 1)〜5)の何れかに記載の情報記録方法を用いて記録を行なうための記録条件がプリフォーマットされており、相変化材料から成る記録層が、少なくともGa、Sb、Sn、Geの4元素を含有することを特徴とする相変化型光記録媒体。
7) プリフォーマットされた記録条件が、基板の案内溝を蛇行させて位相変調させることにより記載されていることを特徴とする6)記載の相変化型光記録媒体。
8) 透明基板上に少なくとも下部保護層30nm〜100nm、相変化材料から成る記録層10nm〜20nm、上部保護層3nm〜15nm、反射放熱層100nm〜300nmがこの順番に積層されていることを特徴とする6)又は7)記載の相変化型光記録媒体。
9) 基板が、トラックピッチ0.74±0.03μm、溝深さ22〜40nm、溝幅0.2〜0.3μmの蛇行溝を有することを特徴とする6)〜8)の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
実用上記録可能な線速の最高値をV0(V0=DVD8倍速)として、線速V=VH(0.5V0<VH≦V0)で走査する本発明1において、比率T3/(T3+Tc3)を下限値0.70よりも明らかに低い値に設定すると、DOW1000回記録後のジッタ特性は良好であるが、最短マーク中に結晶が発生する確率が高くなり、再生エラー特性が悪くなってしまう。例えば、後述する実施例で用いた相変化型光記録媒体について、比率T3/(T3+Tc3)を0.423に設定した場合、図5に示すように、DOW10回記録後のジッタ値は8.22%と良好であり、更に記録回数を多く重ねてDOW1000回記録を施してみると、マークの長さのずれが少ないのでDOW1000回記録後のジッタ値は7.75%と良好である。しかし、最短マークよりも短い成分(最短マーク中に結晶があることで発生する成分)が発生してしまう。これが再生エラー特性に影響を及ぼすことが研究の結果明らかとなっており、再生エラーを測定すると約210であった。したがって、最短マーク中に0.1%程度の確率で結晶が発生する現象が、再生エラーを高くしてしまう要因であり、比率T3/(T3+Tc3)を変えることによりその確率を低く抑える必要がある。なお、図5及び後述する図6は、タイムインターバルアナライザ(YOKOGAWA製のTA720装置)を用いて得た図であり、3T〜14Tまでのマーク長を波形干渉ソフトにより測定したものである。
後述する実施例で用いた相変化型光記録媒体について、Ppを35mW、33mWにして、比率T3/(T3+Tc3)を変化させた場合の結果を図7及び図8に示すが、何れの場合も、比率が0.7以上では、0.6の場合に比べてDOW1000回記録後のジッタ値を1〜2割程度改善することができ、再生エラー特性とDOW1000回記録後のジッタ特性を両立できることが分る。
なお、図7、図8及び後述する表1の実施例1、6、11に示したように、比率T3/(T3+Tc3)が1の場合、すなわちTc3=0の場合も本発明に含まれる。
一方、実用上記録可能な線速の最高値をV0として、線速V=VL(0<VL≦0.5V0)で走査する本発明3において、比率T3/(T3+Tc3)を0.07〜0.11に設定すると、再生エラー特性を低減させることができ、更にはDOW1000回記録後のジッタ特性をも良好とすることができる。V=VLで記録を行なう場合は、本発明1のようなV=VHのときとは挙動が異なり、比率T3/(T3+Tc3)を0.1程度と低い値に設定しなければならない。この場合、DOW1000回記録後の3Tマークの長さは短くなりにくく、4T〜14Tマークとのバランスが良い。
また、T3/Twを0.25〜0.35に設定すると、ジッタ特性を良好にすることができる。
また、アシンメトリとは、14Tスペースに相当する結晶質反射率I14Hと14Tマークに相当するアモルファス反射率I14Lの平均値と、3Tスペースに相当する結晶質反射率I3Hと3Tマークに相当するアモルファス反射率I3Lの平均値とがどの程度ずれているかを表す特性値である。式としては、(I14H+I14L)−(I3H+I3L)/2(I14H−I14L)で表現される(図10参照)。反射率信号はスライスレベルにより2値化されるため、アシンメトリは0に近いほど良い。アシンメトリが崩れていると、マークとスペースの境界が正しく認識されない可能性が出てきてしまう。
本発明4で規定するTmpの範囲において、下限を下回ると照射時間が短くなりすぎて記録時に充分な熱をかける事ができなくなり記録感度が悪くなる。また、上限を上回ると熱をかけすぎることになり、その余熱の影響で記録マークが再結晶化を起こし、変調度がとれなくなる。また本発明5では、Tmpの値はT3の値と同程度とした方がジッタ特性やアシンメトリが良い。
透明基板は、一般的にプラスチック製のものが主に用いられる。プラスチック製基板は透明性を有し、かつ平面精度に優れているものであれば良く、特に制限はない。従来から光記録媒体において透明基板として慣用されているものの中から任意のものを選択して用いることができる。透明基板の代表例としては、ガラス板やポリカーボネート板などが挙げられる。光学定数に関しては、屈折率1.5〜1.6であることが好ましい。
下部保護層は、透明で光を良く通し、かつ融点が1000℃以上の材料からなるものが好ましい。酸化物、窒化物、硫化物などが主に用いられるが、中でもZnSとSiO2を混合したZnS−SiO2がよく用いられる。特にその混合比としてはZnS:SiO2=80:20(モル%)が最も好ましい。屈折率nが高く消衰係数kがほぼゼロであるために、記録層の光の吸収効率を上げ、かつ、熱伝導率が小さく光吸収により発生した熱の拡散を適度に抑えることができるため、記録層を溶融可能な温度まで昇温することができる。また、下部保護層の膜厚は30〜100nmの範囲にあることが望ましい。この範囲から外れると、程好い変調度を確実に確保することが困難になる。また、30nmより薄い場合は膜厚に対する反射率変動が大きいことから安定に作成することが難しく、100nmより厚い場合は成膜時間が長くなり、光記録媒体の生産性が落ちる。
光記録媒体には、少なくとも情報を記録する前にその記録可能領域にセクタが予め形成されており、各々のセクタにはアドレスが割り振られている。そのアドレスは対応するセクタを特定し得るものである。このようなアドレスに関する情報の記録は、光記録媒体の案内溝のウォブルに位相変調信号として記載しておくことが好ましい。例えば、CD−R光記録媒体やCD−RW光記録媒体の場合におけるATIP(アブソリュート・タイム・イン・プレグルーヴ)や、DVD+RW光記録媒体の場合におけるADIPが(アドレス・イン・プレグルーヴ)が挙げられる。
DVD+RW光記録媒体の内周部には、リードインゾーンと呼ばれる領域が存在する。この領域では記録装置が記録動作時(実際の記録に先立つ処理動作時)にのみアクセスする領域である。リードインゾーンには、光記録媒体の最適な記録パワーを決定するための試し書き領域PCA(パワー・キャリブレーション・エリア)や、光記録媒体の製造者、追記型か書き換え型か、更には時間方向の記録条件(記録ストラテジ)や、試し書きを行なう際のパワー条件などの膨大な物理フォーマット情報がADIPとして予め記載されている。このような物理フォーマット情報を記録装置側が読み取り、記録ストラテジを把握し、試し書きを行なったり、実際の記録を行なったりする。
本発明では、予めADIPとして記載されている記録ストラテジとして、主に上記の時間方向のパラメータであるT3、Tc3、Tmp、および消去連続光パワーPeと加熱パルスパワーPpのパワー比εなどが記載されていることが好ましい。
したがって、記録層の構成として、Ga、Sb、Sn、Geの4元素から成るものが発見されてきている。これらの元素のそれぞれの組成比を変化させることによって、高速記録に対応できるほどの結晶化速度を持たせることができる。また、それぞれの元素を数パーセントの範囲で突き詰めていくことで、8倍速以上の記録に対応できる実用的な記録層材料組成を導き出すことが可能となった。
記録層の膜厚は、10〜20nmの範囲にあることが好ましい。10nmより薄いと繰り返し記録による劣化の不具合が生じる。20nmより厚い場合はジッタ特性が悪くなる。
反射放熱層は、金属材料が用いられるが、光学特性及び熱伝導率などからAl、Ag、Au、Cuなどの金属材料及びそれらの合金材料がよく用いられる。その膜厚は100〜300nmの範囲にあることが望ましい。100nmよりも薄い場合は放熱効果が得られなくなる可能性がある。また、300nmよりも厚くしてもそれ以上放熱効果は変わらず、単に必要の無い膜厚を成膜することになる。
界面層の役割としては、記録層へ熱を加えることによって生じる基板や下部保護層の劣化(熱ダメージ)を防いだりすることである。界面層に用いられる材料としては酸化物や窒化物などが挙げられるが、酸化物がより好ましく、具体的にはSiO2が好ましい。
硫化防止層の役割としては、例えば上部保護層がZnS−SiO2から構成され、更に反射層がAgから構成されている場合、ZnS−SiO2に含まれているSがAgと反応してAg2Sを形成してしまうのを防ぐことである。Ag2Sが形成されると、本来Agが持つ熱伝導率が下がるため、放熱層としての機能を果たせなくなる。また、ディスク面に斑点状のものができてしまい、見た目が良くない。硫化防止層に用いられる材料としては酸化物や炭化物などが挙げられるが、具体的にはTiC−TiO2、SiCなどが好ましい。
0.74±0.03μmのトラックピッチを持つDVD系の光記録媒体では、トラッキングエラーを検知するのに使われる信号としてプッシュプル信号が主に抽出されている。プッシュプル信号は、DVDで用いられているレーザ波長660nmにおいて、該光記録媒体の透明基板を用いると溝の深さが約55nmである時に最も大きな信号強度を得ることができる。反射率を低く調整し、なおかつエラー信号の振幅を大きくするための溝深さとしては深い方が良いが、記録特性も考慮した場合では、22〜40nmの範囲にあることが好ましい。また、溝幅は記録特性や信号特性を考慮すると0.2〜0.3μmの範囲にあるのが望ましいことが分かった。
らせん状の連続グルーブを転写したDVD+RW用のポリカーボネート基板上に、ZnS−SiO2からなる厚さ60nmの下部保護層、GaSbSnGeからなる厚さ16nmの相変化記録層、ZnS−SiO2からなる厚さ7nmの上部第一保護層、TiC−TiO2からなる厚さ4nmの上部第二保護層、Agからなる厚さ140nmの反射層をこの順番に積層した。ここで硫化防止層としてTiC−TiO2を用いたのは、反射層であるAgと、ZnS−SiO2からなる上部第一保護層に含まれる硫黄との反応を防ぐ為である。以上のような層構成を持つ相変化型光記録媒体(光ディスク)は、DVD8倍速(27.9m/s)を、実用上記録可能な線速の最高値として設計されている。
完成した光ディスクは相変化光ディスク用初期化装置で初期化し、DVD+RWディスクとした。初期化は集光ビーム径が75μmとなる光ヘッドを用い、パワー1800mW(ここではLDの消費電力であり、パルスパワーとは異なる)、走査速度19m/s、送り45μm/回転、の条件で結晶化することで行なった。
相変化記録層への情報の記録は、アモルファス状態を形成させて記録マークを作るための記録パワーPp、急冷効果を与えてアモルファスマークを作り易くするためのバイアスパワーPb、結晶質を形成させて情報を消去するための消去パワーPeの3レベル(Pp>Pe>Pb)で強度変調された2T周期記録ストラテジを用いて行なった。ストラテジのパルス発生装置はパルステック社製MSG2Bである。使用した評価装置は、パルステック社製のDDU−1000であり、対物レンズのNA=0.65、記録再生に用いられるレーザ波長λ=660nmである。パルスパワーのスペックはPpで最大40mW、Peで最大18mWである。またPbは、急冷効果を与えるには出来るだけ小さなパワーが良いため、0.1mWに固定して記録を行なった。記録ストラテジは、DOW10ジッタ値を最も良好にできるもので最適化した。再生エラー特性は、約400トラックにDOW10記録を行ない、そのバンドを再生することにより測定した。ジッタは、5トラックにDOW10又はDOW1000回記録を行ない、そのうちの真ん中のトラックを再生することにより測定した。3Tマークの記録ストラテジは図2のようになっている。加熱パルスパワーPpの照射時間をT3、冷却パルスパワーPbの照射時間をTc3とし、比率T3/(T3+Tc3)を変化させた。その他のマーク(4T〜14T)は3Tマークの書き方に合わせてその都度最適化した。そのほか、ε=Pe/Pp、ディスクチルト、アンプ、エコライザ、スライスレベル、フェイズロックトループも含め、全てDOW10ジッタボトムで最適化した。
実施例1〜15、比較例1〜21
表1に、DVD8倍速記録において、最短マークの比率T3/(T3+Tc3)を変える度に記録ストラテジをDOW10回で最適化し、DOW10回、DOW1000回記録を行なった結果を示す。判定は、PIエラー最大値(再生エラー特性)が50以下であり、かつ同じ記録パワーで比率T3/(T3+Tc3)を変化させたときの最も高いDOW1000回記録後のジッタ値を1として規格化したとき、1割以上DOW1000回記録後のジッタ値が低くなる場合を○とした。どちらか一方でも条件を満たさない場合は×とした。なお、ランダム記録において、3Tマーク以外の4T〜14Tマークを記録する際、記録ストラテジのm個のパルスのうち、初めのパルスの時間幅については3.6nsecとし、残りのパルスの時間幅については3nsecとした。
表1から、比率T3/(T3+Tc3)が0.70〜1の実施例1〜15は○であるが、0.70未満の比較例1〜21は×であることが分る。
表2に、DVD6倍速記録において、最短マークの比率T3/(T3+Tc3)を変える度に記録ストラテジをDOW10で最適化し、DOW10回、DOW1000回記録を行なった結果を示す。判定は、PIエラー最大値(再生エラー特性)が100以下であり、かつ同じ記録パワーで比率T3/(T3+Tc3)を変化させたときの最も高いDOW1000回記録後のジッタ値を1として規格化としたとき、1割以上DOW1000回記録後のジッタ値が低くなる場合を○とした。どちらか一方でも条件を満たさない場合は×とした。なお、ランダム記録において、3Tマーク以外の4T〜14Tマークを記録する際、記録ストラテジのm個のパルス時間幅については3.6nsecとした。
表2から、比率T3/(T3+Tc3)が0.70〜1の実施例16〜19は○であるが、0.70未満の比較例22〜25は×であることが分る。
実施例20〜24、比較例26〜27
表3に、DVD3.3倍速記録において、最短マークの比率T3/(T3+Tc3)を変える度に記録ストラテジをDOW10回で最適化し、DOW10回、DOW1000回記録を行なった結果を示す。判定は、PIエラー最大値(再生エラー特性)が100以下になる場合を○とした。V=VLでは比率T3/(T3+Tc3)を0.1程度と低く設定する方が好ましいため、同時にDOW1000回記録後のジッタ特性を良好とすることができる。なお、ランダム記録において、3Tマーク以外の4T〜14Tマークを記録する際、記録ストラテジのm個のパルス時間幅は、実施例20については3.6nsecとし、実施例21〜24については2.9nsecとした。
表3から、比率T3/(T3+Tc3)が0.07〜0.11の実施例20〜24は○であるが、この範囲を外れる比較例26〜27は×であることが分る。
Pe 消去パワー
Pb バイアスパワー
T 基本クロック周期
t 時間
T3 パワーPpの加熱パルス照射時間
Tc3 パワーPbの冷却パルス照射時間
Tw 基本クロック周期
Tmp マルチパルス部の記録パワーパルスの幅
Claims (9)
- 実用上記録可能な線速の最高値がV0(V0=DVD8倍速)である相変化型光記録媒体に対し、線速V=VH(0.5V0<VH≦V0)で走査して、時間的長さnTw(n;3以上の自然数、Tw;基本クロック周期)の記録マークを形成する場合に、線速Vとクロック周期Twが、V×Tw=一定なる関係を満足し、パワーPpの加熱パルスと、パワーPbの冷却パルスと、パワーPeの消去連続光の3つのパワーレベル(Pp>Pe>Pb)でレーザ光を強度変調し、パワーPpの加熱パルスとパワーPbの冷却パルスとをm回(m;1以上の自然数)交互に照射することによりアモルファスマークを形成する情報記録方法において、最短マーク(n=3、m=1)の記録におけるパワーPpの加熱パルス照射時間をT3[nsec]、パワーPbの冷却パルス照射時間をTc3[nsec]としたとき、比率T3/(T3+Tc3)を0.70〜1とすることを特徴とする情報記録方法。
- パワーPpの加熱パルス照射時間T3を記録する速度でのクロック周期Tw[nsec]で規格化した値T3/Twが、1.18〜1.57に設定されていることを特徴とする請求項1記載の情報記録方法。
- 実用上記録可能な線速の最高値がV0(V0=DVD8倍速)である相変化型光記録媒体に対し、線速V=VL(0<VL≦0.5V0)で走査して、時間的長さnTw(n;3以上の自然数、Tw;基本クロック周期)の記録マークを形成する場合に、線速Vとクロック周期Twが、V×Tw=一定なる関係を満足し、パワーPpの加熱パルスと、パワーPbの冷却パルスと、パワーPeの消去連続光の3つのパワーレベル(Pp>Pe>Pb)でレーザ光を強度変調し、パワーPpの加熱パルスとパワーPbの冷却パルスとをm回(m;1以上の自然数)交互に照射することによりアモルファスマークを形成する情報記録方法において、最短マーク(n=3、m=1)の記録におけるパワーPpの加熱パルス照射時間をT3、パワーPbの冷却パルス照射時間をTc3としたとき、比率T3/(T3+Tc3)を0.07〜0.11とするとともに、パワーPpの加熱パルス照射時間T3を記録する速度でのクロック周期Twで規格化した値T3/Twが、0.25〜0.35に設定されていることを特徴とする情報記録方法。
- V=VHにおけるn≧4の長さのマークの記録に関して、パルスパワーPpのm個(m;n/2を超えない最大の整数)の加熱パルス幅をTmpとするとき、0.4×T3≦Tmp≦0.7×T3に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の情報記録方法。
- V=VLにおけるn≧4の長さのマークの記録に関して、パルスパワーPpのm個(m;n/2を超えない最大の整数)の加熱パルス幅をTmpとするとき、0.95×T3≦Tmp≦1.05×T3に設定されていることを特徴とする請求項3記載の情報記録方法。
- 請求項1〜5の何れかに記載の情報記録方法を用いて記録を行なうための記録条件がプリフォーマットされており、相変化材料から成る記録層が、少なくともGa、Sb、Sn、Geの4元素を含有することを特徴とする相変化型光記録媒体。
- プリフォーマットされた記録条件が、基板の案内溝を蛇行させて位相変調させることにより記載されていることを特徴とする請求項6記載の相変化型光記録媒体。
- 透明基板上に少なくとも下部保護層30nm〜100nm、相変化材料から成る記録層10nm〜20nm、上部保護層3nm〜15nm、反射放熱層100nm〜300nmがこの順番に積層されていることを特徴とする請求項6又は7記載の相変化型光記録媒体。
- 基板が、トラックピッチ0.74±0.03μm、溝深さ22〜40nm、溝幅0.2〜0.3μmの蛇行溝を有することを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
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