JP4330470B2 - 相変化記録材料及び情報記録用媒体 - Google Patents
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Description
(ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0<z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。)
また、本発明においては、請求項3に記載するように、前記相変化記録材料が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とする請求項1または請求項2に記載の相変化記録材料を提供する。
(ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0<z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。)
また、本発明においては、請求項6に記載するように、前記相変化記録用媒体が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とする請求項4または請求項5に記載の情報記録用媒体を提供する。
また、本発明においては、請求項8に記載するように、前記光学的情報記録用媒体がさらに保護層を有する請求項7に記載の情報記録用媒体を提供する。
さらに、本発明においては、請求項9に記載するように、前記光学的情報記録用媒体がさらに反射層を有し、前記反射層がAgを主成分とする請求項7又は8に記載の情報記録用媒体を提供する。
本発明の相変化記録材料は、下記一般式(1)で表される組成を主成分とする。
ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0≦z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。ただし、zおよびwはともに0となることはない。また、x、y、z、wはいずれも原子数比である。
すなわち、Sbは結晶化速度が速いために通常の光ディスクで用いられるような記録条件では非晶質マークを形成することができないが、SbにGeを混合していくと結晶化速度は遅くなる。このため、SbにGeを混合することにより、記録可能な結晶化速度を持つように結晶化速度の調整をすることができる。
SbとGeの合計量におけるGe量、すなわち上記一般式(1)におけるxは、0.001以上、0.3以下である。Geは、結晶化速度を遅くし、非晶質相を形成しやすくし、また非晶質相の保存安定性を高める作用がある。このため、Ge含有量が少なくなると、結晶化速度が速くなりすぎ非晶質相の形成が困難となるか、または非晶質相の保存安定性が不十分となる場合がある。したがって、Geが所定量以上含まれる必要があるため、上記一般式(1)において、0.001≦xとするが、好ましくは0.005≦xであり、より好ましくは0.01≦xであり、さらに好ましくは0.02≦xであり、特に好ましくは0.03≦xである。
Inを含有させると信号振幅が大きくなりジッタ特性が改善される効果がある。含有量が少なすぎると改善効果が得られない場合があるため、上記一般式(1)においてInの含有量を示すyは、0≦yとする。好ましくは0<y、より好ましくは0.01≦y、さらに好ましくは0.05≦y、特に好ましくは0.1≦y、最も好ましくは0.15≦yとする。逆にIn量が多くなりすぎると、記録に使用する結晶相とは別に低反射率のIn−Sb系の安定結晶相(低反射率結晶相)が常に形成される状態となる場合があり、この場合は相変化が全く起こらず記録ができなくなってしまう。したがって、上記一般式(1)においてInの含有量を示すyは、y≦0.4とし、好ましくはy≦0.35、より好ましくはy≦0.3、さらに好ましくはy≦0.25、特に好ましくはy≦0.2とする。また、In含有量が多くなると最適記録パワーが小さくなる傾向にあるため、上記範囲とすることが好ましい。
ランタノイドの含有量は、上記一般式(1)において0以上、0.2以下とする。すなわち、上記一般式(1)においてランタノイドの含有量を示すzは、0≦z≦0.2とする。
ランタノイドを含有させた場合は、繰り返し記録による結晶化速度低下が抑制される。この効果を得るには、Teが含有されていない場合は、上記一般式(1)において、0<zとする。繰り返し記録による結晶化速度低下の抑制の観点からも、0<zとすることが好ましく、0.005≦zとすることがより好ましく、0.01≦zとすることがさらに好ましく、0.02≦zとすることが特に好ましい。ランタノイドは、繰り返し記録した場合の相変化記録材料の結晶化速度を早める役割を有するものと推測される。このため、繰り返し記録により結晶化速度が遅くなる傾向にあるSb−Ge−In系合金の組成の相変化記録材料にランタノイドを添加すると、繰り返し記録を行うことによる結晶化速度の低下が抑制されるものと推測される。このように、ランタノイドは、繰り返し記録時の相変化記録材料の結晶化速度を速める役割を有するため、ランタノイドが多くなると繰り返し記録により結晶化速度が初期より速くなることもある。
Teの含有量は、上記一般式(1)において0以上、0.1以下とする。すなわち、上記一般式(1)においてTeの含有量を示すwは、0≦w≦0.1とする。
Teを添加する場合も繰り返し記録による結晶化速度低下が抑制される。この効果を得るには、ランタノイドが含有されていない場合は、上記一般式(1)において、0<wとする。繰り返し記録による結晶化速度低下の抑制の観点からも、0<wとすることが好ましく、0.005≦wとすることがより好ましく、0.01≦wとすることがさらに好ましく、0.02≦wとすることが特に好ましい。
一方、Teの添加により媒体の反射率、信号振幅が小さくなる傾向があるため、上記一般式において、w≦0.1とするが、w≦0.09とすることが好ましく、w≦0.08とすることがより好ましく、w≦0.07とすることがさらに好ましく、w≦0.06とすることが特に好ましい。
本発明の相変化記録材料においては、相変化記録材料中のIn含有量が多くなると繰り返し記録による結晶化速度低下が大きくなる傾向にある。一方で、相変化記録材料中のランタノイドの含有量が多くなると繰り返し記録により結晶化速度が速くなる傾向にある。このため、繰り返し記録による結晶化速度の変化を小さくするためには、Inおよびランタノイドの含有量の関係を制御することが好ましい。
本発明の相変化記録材料においては、Teを含有させると信号振幅が低下する傾向がある。このため、Teを含有させる場合には、Inを多く含有させることにより信号振幅を良好とすることができるようになる。したがって、Inの含有量(原子%)とTeの含有量(原子%)との比は、(Inの含有量)>(Teの含有量)とすることが好ましく、(Inの含有量)>1.5×(Teの含有量)とすることがより好ましく、(Inの含有量)>2×(Teの含有量)とすることがさらに好ましく、(Inの含有量)>3×(Teの含有量)とすることが特に好ましく、(Inの含有量)>3.5×(Teの含有量)とすることが最も好ましい。一方、信号振幅を確保する観点から、通常、(Inの含有量)<70×(Teの含有量)とするが、(Inの含有量)<30×(Teの含有量)とすることが好ましい。
本発明の相変化記録材料には、ランタノイドおよびTeの少なくとも一方が添加される。すなわち、ランタノイドまたはTeのいずれか一方を用いるのでも良く、両方を組み合わせて用いるのでもよい。これらの元素を添加することにより繰り返し記録による結晶化速度低下が抑制されるという効果が得られるが、この効果をより確実に発揮するためには、z+wは0.01以上とすることが好ましく、より好ましくは0.02以上とする。一方、ランタノイドおよびTeを過度に含有させると信号振幅が低下する、または初期結晶化が困難となる場合があるため、z+wは、通常0.3以下とするが、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.1以下とする。
ランタノイドは、繰り返し記録による相変化記録材料の結晶化速度を速める性質を有する。このため、ランタノイドの添加により、Sb−Ge−In系合金の組成の繰り返し記録による結晶化速度の低下が抑制されるようになる。一方で、ランタノイドを過度に多く含有させると、初期結晶化が困難となる傾向にある。
このように、ランタノイドとTeとは、繰り返し記録による相変化記録材料の結晶化速度の低下を抑制する効果がある一方で、初期結晶化を困難とする又は媒体の反射率や信号振幅を小さくするという異なる性質をそれぞれ有する。従って、ランタノイドとTeとを併用して、これらの含有量を上記範囲内に制御すれば、繰り返し記録による相変化記録材料の結晶化速度の低下を抑制しつつ、初期結晶化が良好となりかつ媒体の反射率や信号振幅も良好とすることができるようになる。
以上から、本発明においては、ランタノイドとTeとを併用することが好ましい。
ところで、記録消去は一般に、媒体を高速で回転させながら光照射部から出射した光ビーム(レーザービーム)スポットを記録層に照射し、光照射部と媒体とを高速で相対移動させながら行われる。相対移動速度が大きい場合を記録線速度(記録速度)が大きいと称し、相対移動速度が小さい場合を記録線速度(記録速度)が小さいと称する。
このため、目的とする記録線速度がより大きい媒体では結晶化速度を速くし、目的とする記録線速度が小さい媒体では結晶化速度を遅くするなど、前述の含有量の範囲内で記録線速度に応じてGe、In、ランタノイドの量を調整するのが望ましい。
次に、本発明の情報記録用媒体について説明する。
本発明の情報記録用媒体は、記録層を有する情報記録用媒体であって、前記記録層が下記一般式(1)で表される組成を主成分とすることを特徴とするものである。
(ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0≦z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。ただし、zおよびwが共に0となることはない。)
このような情報記録用媒体としては、結晶状態と非晶質状態とにおける物理的パラメーターの差を検出することにより情報の記録再生を行うものであれば特に限定されるものではなく、例えば屈折率、電気抵抗、体積、密度変化等の差を検出するような情報記録用媒体を挙げることができる。中でも、本発明の相変化記録材料を用いた情報記録用媒体は、レーザー光を照射することにより生じる結晶状態/非晶質状態の可逆的な変化に伴う反射率変化を利用した光学的情報記録用媒体への応用に適している。
以下、本発明の情報記録用媒体の一例として、光学的情報記録用媒体の具体的構成および記録再生方法について説明する。さらに、本発明の情報記録用媒体の他の一例として、本発明の情報記録用媒体を光学的情報記録用媒体以外の用途にもちいる場合についても説明する。
(層構成)
光学的情報記録用媒体としては通常、図1(a)や、図1(b)に示すような多層構成のものが用いられる。すなわち、図1(a)、(b)より明らかなように、基板上に、上記一般式(1)で表される組成を主成分とする記録層を有し、さらに保護層を有するようにすることが好ましい。
(A)記録層
(A−1)記録層に含有される材料とその量
記録層に含有される材料は、上記一般式(1)で表される組成を主成分とする。この組成についての詳細な説明はすでに行ったので、ここでの説明は省略する。本発明の効果を有効に発揮するためには、記録層全体のうち、上記一般式(1)で表される組成が、通常50原子%以上、好ましくは80原子%以上、より好ましくは90原子%以上、特に好ましくは95原子%以上含有される。含有量が高ければ高いほど本発明の効果が顕著に発揮されるようになるが、記録層の成膜時にOやN等の他の成分が含有されたとしても数原子%から20原子%の範囲内であれば、高速記録消去等の本発明の効果が発揮される。
記録層の厚さは、通常1nm以上であるが、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、特に好ましくは10nm以上である。このようにすれば、結晶と非晶質状態と間の反射率のコントラストが十分となり、また結晶化速度も十分となり、短時間での記録消去が可能となる。また、反射率自体も十分な値となる。一方、記録層の厚さは、通常30nm以下、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは12nm以下、特に好ましくは11nm以下である。このようにすれば、光学的なコントラストを十分に得ることができ、また、記録層にクラックが生じにくくなる。また、熱容量が大きくなることによる記録感度の悪化も発生しない。また、上記膜厚範囲とすれば、相変化に伴う体積変化を適度に抑制することができ、記録を繰り返した際にノイズの原因となる、記録層自身やその上下に設けることができる保護層の微視的かつ不可逆な変形が蓄積されにくくなる。このような変形の蓄積は、繰り返し記録耐久性を低下させる傾向があるため、記録層の膜厚を上記範囲内にすることによりこの傾向を抑制することができる。
本発明においては、高速記録消去が可能な上記一般式(1)で表される組成を主成分とする記録層を設けた光学的情報記録用媒体において、記録層の膜厚を非常に薄くすることにより、この光学的情報記録用媒体を長期保存した後の2回目の記録特性や長期保存後の反射率低下を良好にすることができると考えられる。具体的には、記録層の膜厚を好ましくは11nm以下とすることにより、上記一般式(1)で表される組成の記録層を用いた光学的情報記録用媒体において、長期保存後の2回目記録時における記録特性が改善される傾向、及び長期保存での反射率低下が改善される傾向があるようである。
さらに、記録層を非常に薄くする(好ましくは11nm以下)ことにより長期保存による反射率低下も抑えられる傾向にある。この理由も明らかではないが、上記長期保存後の2回目記録における記録特性の改善の場合におけると同様に、長期保存時の記録層の変化が抑えられているのであろう。
つまり、基板上に保護層、上記一般式(1)で表される組成の記録層、保護層、反射層をこの順または逆の順序で設ける光学的情報記録用媒体の場合は、記録層膜厚を非常に薄く(例えば12nm程度より薄く)すると信号強度が小さくなる傾向にある。このため、記録層を非常に薄く(例えば11nm以下)した場合において、大きな信号強度を得るには工夫が必要である。
以上を踏まえ、本態様における記録層の膜厚は、15nm以下とすることが好ましく、14nm以下とすることがより好ましく、13nm以下とすることがさらに好ましく、12nm以下とすることが特に好ましく、11nm以下とすることが最も好ましい。
上記記録層は所定の合金ターゲットを不活性ガス、特にArガス中でDCまたはRFスパッタリングにより得ることができる。
また、記録層の密度は、バルク密度の通常80%以上、好ましくは90%以上とする。ここでいうバルク密度ρとは、通常下記数式(2)による近似値を用いるが、記録層を構成する合金組成の塊を作製して実測することもできる。
(B)基板
本発明で使用する基板としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどの樹脂、あるいはガラス、アルミニウム等の金属を用いることができる。通常基板には深さ20〜80nm程度の案内溝が設けられているので、案内溝を成形によって形成できる樹脂製の基板が好ましい。また、記録消去再生用の集束光ビームが基板側から入射する、いわゆる基板面入射(図1(a)参照)の場合は、基板は透明であることが好ましい。
また、高密度化のためにレーザーの光学ヘッドを高NA(約0.7以上)、短波長とする場合には、図1(b)において、入射光側保護層の上面にさらに、透明樹脂からなるカバー層を設ける。その厚みは、通常、0.01mmから0.1mm程度の薄いものも用いられる。
(C−1)本発明で用いる保護層に関する一般的説明
記録層の相変化に伴う蒸発・変形を防止し、その際の熱拡散を制御するため、本発明においては、光学的情報記録用媒体がさらに保護層を有することが好ましい。保護層は、通常記録層の上下一方または両方、好ましくは両方に形成される。保護層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物等の誘電体を用いることができる。
保護層は、前述のような異なる材料からなる複数の層で構成されていても良い。特に、記録層と接する側の界面、及び/又は、Agを主成分とする反射膜と接する側の界面に、硫黄を含まないか又は硫黄含有量の少ない界面層を設けることが好ましい。
保護層は、通常、公知のスパッタリング法によって製造すればよい。
本発明に用いる情報記録用媒体においては、上記一般式(1)で示す組成(以下、「上記一般式(1)で示す組成」を「所定の組成」という場合がある。)を用いる記録層に接して保護層Aを有し、前記保護層Aが金属酸硫化物又は金属窒化物を含有することが好ましい。
本発明の情報記録用媒体を相変化型の光学的情報記録用媒体として用いる場合、保護層の材料としては、通常(ZnS)80(SiO2)20が用いられる。これは、この材料が、透明性、従来記録層に対する密着性、スパッタ速度、価格等において優れているからである。
本発明においては、記録層と接する保護層Aに金属酸硫化物又は金属窒化物を含有させることが好ましい。もちろん、金属酸硫化物と金属窒化物とを併用してもよい。以下さらに詳細に説明する。
本発明においては、金属酸硫化物を含有する保護層Aを用いることが好ましい。金属酸硫化物を含有するとは、保護層中の構成元素が、金属酸硫化物の形態を維持して存在することを意味する。
本発明においては、特定の組成を有する記録層に金属酸硫化物を含有する保護層Aを接して設けることにより、情報記録用媒体を繰り返し記録した場合の耐久性がさらに向上することが期待される。この理由は、未だ明確ではないが、金属酸硫化物を含有する保護層Aの熱伝導性および硬度が高いこと、構成元素の分布の均一性が高いことに関係していると考えられる。すなわち、本発明における保護層Aは、従来から一般的に使用されているZnS−SiO2膜に代表される様に、ZnSを主成分とする複合誘電体を用いる保護層と比較し、熱伝導率および硬度が高い。一方、保護層Aの屈折率は、組成比にもよるものの、通常1.7〜2.4程度であり、ZnSを主成分とする複合誘電体を用いる保護層とほぼ同等になる。
さらに、金属酸硫化物を含む保護層Aは金属原子が硫黄とも酸素とも結合しているので、硫黄と酸素との混合性が、ZnS−SiO2やZnS−Y2O3の様な硫化物と酸化物の混合物を用いる保護層とは比較にならない程に高い。そのため、保護層Aは、硫黄、酸素、及びセレン原子等の金属原子の分散性が従来のZnS−SiO2よりも高いために、安定した高い特性を発揮していると考えられる。このため、繰り返しオーバーライト中に保護層から記録層へ硫黄が拡散して反射率低下や結晶化速度の変化が生じる現象も抑制されると推測される。
金属酸硫化物に使用する金属元素としては、Sc、イットリウム、及びLaやCeといったランタノイド元素等の希土類金属元素;Ti等の遷移金属元素;などが挙げられる。これらの中では、希土類金属元素が好ましく、イットリウム及びLa、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dyから成る群から選択される希土類金属元素が特に好ましい。イットリウムの酸硫化物(Y2O2S)は、1000℃程度までY2O3やY2S3より熱化学的に安定なので、最も好ましい元素はイットリウムである。
また、金属酸硫化物を構成する金属元素の保護層A中の含有量は、通常10原子%以上、好ましくは20原子%以上、更に好ましくは25原子%以上とする。金属酸硫化物を構成する金属元素の含有量は保護層A中の金属酸硫化物の含有量を示す指標となるため、上記金属元素が少なすぎると、オーバーライト特性のさらなる改善の効果が十分とならないことがある。一方、繰り返しオーバーライト特性等の観点からは、保護層A中での金属酸硫化物の含有量が多ければ多いほど好ましいので、金属酸硫化物を構成する金属元素の含有量の上限は、保護層Aが全て金属酸硫化物で構成されるときの上記金属元素の含有量となる。
この場合、これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。繰り返し記録特性を考慮すると誘電体の混合物が好ましい。
また、保護層Aに含有させる材料としては、通常、誘電体材料を挙げることができる。誘電体材料としては、例えば、Sc、Y、Ce、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Cr、In、Si、及びGe等の酸化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、及びSn等の窒化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、及びSi等の炭化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。また、誘電体材料としては、Zn、Y、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBi等の硫化物、セレン化物もしくはテルル化物、Y,及びCe等の酸硫化物、Mg、Ca等のフッ化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。
金属酸硫化物以外に保護層A中に他の材料を含有させる場合、この材料の含有量は、通常99mol%以下、好ましくは90mol%以下とする。一方、通常1mol%以上、好ましくは5mol%以上とする。
一方、上記材料として酸化亜鉛を用いる場合、あまりに多い含有量は好ましくない傾向にあり、通常30mol%以下、好ましくは20mol%以下、更に好ましくは10mol%以下とする。また、酸化亜鉛のモル含有量は、金属酸硫化物のモル含有量の半分以下であるのがより好ましい。
特に好ましい保護層A組成として、Y2O2SとZnSとを含む混合組成を挙げることができる。この場合、特に優れたオーバーライト特性を得ることが出来る。この場合の、Y2O2Sに対するZnSとのモル比は、通常1%以上、好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上であり、また通常1000%以下、好ましくは700%以下、更に好ましくは500%以下である。
本発明における保護層Aの純度(保護層A中の金属酸硫化物の含有量、又は、金属酸硫化物と他の材料との混合物の含有量)は90mol%以上が好ましい。純度は高いほど好ましいが、10モル%を下回る量の不純物の保護層Aの特性に及ぼす影響は、無視できるほど小さい。特に、不純物が安定な化合物である場合には悪影響は小さいが、不純物が10モル%を超えると膜の硬度や応力といった物性値が変わる可能性が高く保護層Aの特性が劣化する恐れがある。
すなわち、スパッタリング用のターゲットとして、金属酸硫化物を含有するものを使用することが好ましい。ターゲットに使用する金属酸硫化物の金属元素の種類は、保護層Aの組成に合わせて適宜選択される。
また、保護層Aが金属酸硫化物と他の保護層材料とを含有する場合、使用する他の材料の組成に対応させて、金属酸硫化物と上記他の材料との混合物のターゲットを使用することが出来る。また、金属酸硫化物のターゲットと前記他の材料のターゲットを別々に用意し、これらを同時にスパッタすることも出来る。
ターゲット中に金属酸硫化物が含有されているか否かは、ターゲットのX線回折を測定することによって確認することができる。
また、金属酸硫化物を含有するターゲットは、通常、金属酸硫化物の粉末又は、同一金属の酸化物と硫化物の混合粉末を用いてホットプレス法等の公知の方法を用いて製造される。ここで用いる金属元素として好ましいのは、希土類金属元素である。
スパッタリング時の条件は、公知の条件を用いればよい。
(1−2)金属窒化物を含有する保護層A
本発明においては、保護層Aとして金属窒化物を含有する保護層を用いることもまた好ましい。
金属窒化物は、金属酸硫化物と同様に熱伝導率が高い傾向にあるため、上記金属酸硫化物を含有する場合において説明したものと同様に、保護層Aの熱伝導率が高くなることによって、温度差起因の膜剥離やクラックの発生が抑制されるようになり、オーバーライト劣化を遅らせることができるようになると考えられる。
上記元素の種類を1つ用いる場合、上記元素と窒素とが形成する材料として、上記元素単体の窒化物を挙げることができる。より具体的には、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N等の近傍組成が挙げられるが、これらの中でも、記録層に対する拡散防止効果がより高いという観点からは、Si−N(ケイ素の窒化物)、Ge−N(ゲルマニウムの窒化物)、Al−N(アルミの窒化物)を用いることが好ましく、Ge−N(ゲルマニウムの窒化物)を用いることがより好ましい。
金属窒化物の保護層A中の含有量は、好ましくは5mol%以上、更に好ましくは10mol%以上、最も好ましくは15mol%以上とする。金属窒化物の含有量が少なすぎると、オーバーライト特性が低下することがある。一方、繰り返しオーバーライト特性等の観点からは、金属窒化物の保護層A中の含有量多ければ多いほど好ましく、保護層A中での金属窒化物の含有量は、100mol%以下とすればよい。
また、保護層Aは、金属窒化物と他の材料と併用してもよい。他の材料やその含有量としては、上記金属酸硫化物を含有する保護層Aで説明した材料と同様のものを用いればよい。
金属窒化物を含有する保護層Aは、金属窒化物を含有するターゲットを使用してスパッタリング法によって成膜することによって形成することが出来る。また、保護層Aは、真空チャンバー内で微量のAr、N2の混合ガスを流し、所定の真空圧力にして、所定の金属(保護層Aに含有される金属窒化物における金属元素単体又は金属元素の複合)からなるターゲットに電圧を加え放電させ弾きだされた金属元素単体または金属元素の複合をN2で反応させ窒化物にして成膜する反応性スパッタリング法により形成してもよい。ここで留意すべき事項は、保護層A中の窒素含有量が過度に少ないと保護層Aの透明性が確保しにくくなることと、窒素含有量が過度に多すぎると光学的情報記録用媒体の繰り返し記録耐久性の改善が不十分になることである。このため、上記反応性スパッタリング法を用いる場合は、窒素流量の調整が重要である。また、スパッタ時の圧力も膜質に影響を与える。通常、圧力を低くすることにより、保護層Aを緻密に形成することができる。
(1−3)保護層Aの膜厚
保護層Aの膜厚の好ましい範囲は、保護層Aが用いられる位置によって異なる。
すなわち、保護層Aを第1保護層として設ける場合、第1保護層は、熱による基板変形等を抑制する必要があるため、その厚さは通常1nm以上、好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。このようにすれば、繰り返し記録中の微視的な基板変形の蓄積が抑制され、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなるということがなくなる。
保護層Aを第2保護層として設ける場合、第2保護層は、記録層の変形抑制のために、通常その厚さは1nm以上、好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。また、繰り返し記録に伴って発生する第2保護層内部の微視的な塑性変形の蓄積を防止し、再生光の散乱によるノイズ上昇を抑制するため、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。
なお、Y2O2S等の金属酸硫化物等を主成分とする材料のスパッタレートは、従来から用いられている(ZnS)80(SiO2)20等の材料のスパッタレートと比較して、遅くなる傾向にある。このため、情報記録用媒体の生産性を高める観点から、金属酸硫化物等を含有する保護層Aを記録層に接して比較的薄く設け、この保護層Aに保護層Bを接して設けてもよい。そして、保護層Bに、従来から用いられている材料(例えば、(ZnS)80(SiO2)20)を用いてもよい。このような情報記録用媒体の具体的な態様の詳細については後述する。
本発明においては、金属酸硫化物又は金属窒化物を含有する保護層Aが、記録層に接して設けられることが好ましい。より好ましいのは、記録層の両面に上記所定の保護層Aを設けることである。記録層の両面に上記所定の保護層Aを設けることにより、繰り返しオーバーライト特性をより向上させることができるようになるからである。一般的に、記録層の両面に上記所定の保護層Aを設けることにより、記録層と保護層Aとが剥離しやすい傾向となるが、本発明における所定の組成を用いた記録層においては、上記剥離の問題が起きにくいと考えられる。
例えば、従来のSbTe共晶(Sb70Te30)組成の記録層に接してY2O2S等の金属酸硫化物を含有する保護層Aを設けると、耐環境試験での膜剥離が起きる傾向にある。この傾向は、記録層の両面に上記保護層Aを設けるとより顕著になる。例えば、従来SbTe共晶系組成を用いた記録層においては、記録層の両面に接してY2O2S等の金属酸硫化物を含有する保護層Aを設けると高湿度を伴う耐環境試験で膜剥離が生じ、膜の密着性、耐候性は必ずしも十分とはならない傾向にある。
光学的情報記録用媒体の好ましい層構成の他の一例としては、第1保護層及び第2保護層のいずれか一方又は両方を保護層A及び保護層Bの2層構造とすることである。繰り返しオーバーライト等の観点から、レーザー光の入射側に位置する第1保護層を2層構造とすること(図6(a)、図6(b))が好ましく、第1保護層及び第2保護層をともに、保護層A及び保護層Bの2層構造とすること(図7(a)、図7(b)参照)がより好ましい。
なお、上記好ましい層構成においては、第1保護層や第2保護層を保護層Aと保護層Bとの2層構造としているが、保護層Aが記録層に接して設けられている限り、このような態様に限定されるわけではない。例えば、さらに別の材料で形成した保護層を保護層Bに接して設けることにより、第1保護層や第2保護層を3層以上に多層化することも適宜行うことができる。
保護層Bの材料は、保護層に一般的に用いられる材料を適宜用いればよい。このような材料については既に説明したので、ここでの説明は省略する。なお、保護層AとBは、異なる材料からなる2層となっていてもよいし、それぞれの成分が徐々に変化する傾斜組成を有していても良い。
また、保護層Bの製造方法についても、保護層に一般的に用いられている製造方法を用いればよい。
保護層Bは保護層Aに接し、保護層A及び保護層Bの2層構造で保護層としての役割を果たす。このため、保護層Bの膜厚は、一般的に保護層に必要とされる膜厚から保護層Aの膜厚を減じた膜厚となる。
但し、本発明においては、一般に熱伝導率が高くかつ硬度の大きい保護層Aを記録層に接して設けるため、記録層に対してレーザー光が入射する側に位置する保護層の膜厚(例えば、保護層を保護層Aのみで形成する場合は保護層Aの膜厚、保護層Aと保護層Bとを積層して保護層を形成する場合は保護層Aと保護層Bとの合計膜厚)を薄くできることは、上記記録層の説明において説明した通りである。
上記の通り、保護層Aと保護層Bとを用いて多層化を行う場合、本発明における保護層Aの膜厚は通常0.1nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上、特に好ましくは5nm以上とする。一方、保護層Aの膜厚は、通常100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは25nm、更に好ましくは10nm以下である。このため、保護層Bの膜厚は、保護層の全膜厚のうち、保護層Aを除く残部とすればよい。
なお、記録層及び保護層の厚みは、機械的強度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う干渉効果も考慮して、レーザー光の吸収効率がよく、記録信号の振幅が大きく、すなわち記録状態と未記録状態のコントラストが大きくなるように選ばれる。
光学的情報記録用媒体においては、さらに反射層を設けることができる。本発明においては、記録層の放熱性を高める観点から、光学的情報記録用媒体がさらに反射層を有することが好ましい。
反射層の設けられる位置は、通常再生光の入射方向に依存し、入射側に対して記録層の反対側に設けられる。すなわち、基板側から再生光を入射する場合は、基板に対して記録層の反対側に反射層を設けるのが通常であり、記録層側から再生光を入射する場合は記録層と基板との間に反射層を設けるのが通常である(図1(a)、(b)参照)。
なお、第2保護層の膜厚を40nm以上50nm以下とする場合には特に、反射層を高熱伝導率にするため、含まれる添加元素を2原子%以下とするのが好ましい。
AgにMg、Ti、Au、Cu、Pd、Pt、Zn、Cr、Si、Ge、Bi、希土類元素のいずれか一種を0.01原子%以上10原子%以下含むAg合金も反射率、熱伝導率が高く、耐熱性も優れていて好ましい。
記録層、保護層および反射層は、通常スパッタリング法などによって形成される。
光学的情報記録用媒体の最表面側には、空気との直接接触を防いだり、異物との接触による傷を防ぐため、紫外線硬化樹脂や熱硬化型樹脂からなる保護コート層を設けるのが好ましい。保護コート層は通常1μmから数百μmの厚さである。また、硬度の高い誘電体保護層をさらに設けたり、その上にさらに樹脂層を設けることもできる。
(光学的情報記録用媒体の初期結晶化方法)
記録層は通常スパッタリング法等の真空中の物理蒸着法で成膜されるが、成膜直後の状態(as-deposited状態)では、記録層は通常非晶質であるため、本発明ではこれを結晶化させて未記録消去状態とすることが好ましい。この操作を初期化(または初期結晶化)と称する。初期結晶化操作としては、例えば、結晶化温度(通常150〜300℃)以上融点以下での固相でのオーブンアニールや、レーザー光やフラッシュランプ光などの光エネルギー照射でのアニール、溶融初期化などの方法が挙げられる。本発明においては、結晶核生成の少ない相変化記録材料を用いるため、上記初期結晶化操作のうち、溶融初期化を用いることが好ましい。
例えば、融点以上に保持する時間は、通常10μs以下、好ましくは1μs以下とすることが好ましい。
例えば、R1が17%程度の光学的情報記録用媒体では、概ねR2が16〜18%の範囲にあればよい。
なお、記録の最高線速度とは、例えば、ここではその線速度で消去パワーPeを直流的に照射したときに、消去比が20dB以上となるような線速度をいう。
本発明の光学的情報記録用媒体に使用できる記録再生光は、通常半導体レーザーやガスレーザーなどのレーザー光であって、通常その波長は300〜800nm、好ましくは350〜800nm程度である。特に1Gbit/inch2以上の高面記録密度を達成するためには、集束光ビーム径を小さくする必要があり、波長350から680nmの青色から赤色のレーザー光と開口数NAが0.5以上の対物レンズを用いて集束光ビームを得ることが望ましい。
本発明では、前記のように、通常、非晶質状態を記録マークとすることが好ましい。また、本発明では、マーク長変調方式によって情報を記録するのが有効である。これは、特に最短マーク長が4μm以下、特に1μm以下となるマーク長記録の際に特に顕著である。
なお、期間βmTなる時間において照射する記録光のパワーPbは、βiT(1≦i≦m−1)の期間と同様、通常Pb<Pe、好ましくはPb≦1/2Peとするが、Pb≦Peとなっていてもよい。
上記記録方式は、本発明の相変化記録材料を記録層に用いた光学的情報記録用媒体に特に適した方式である。短時間での消去(再結晶化)を確実にするために、Ge量を少なくしていくと、非晶質マーク記録のために必要な臨界冷却速度が極めて高くなり、逆に良好な非晶質マークの形成が困難になってしまうからである。
本発明の情報記録用媒体は、少なくとも光照射による可逆的な相変化記録が可能であるため、光学的情報記録用媒体として用いることが可能であることは、上述したとおりである。しかし、本発明に用いる書き換え型情報記録用媒体は、例えば微少領域に電流を流すことによる相変化記録にも適用できる。この点について以下説明する。
本発明に用いる書き換え型情報記録が、光学的情報記録用媒体としてのみでなく、微小領域に電流を流すことによる相変化記録に用いることができる理由は次のとおりである。すなわち、可逆的相変化を生じせしめるのは、あくまで、図4に示すような温度履歴であって、その温度履歴を生じせしめるエネルギー源は、集束光ビームまたは電流加熱(通電によるジュール熱)のいずれでもよいからである。
実際には、半導体集積回路形成技術を用いて、さらに集積化したメモリーが提案されている(米国特許6314014号明細書)が、その基本構成は図5に示すものであり、相変化記録層3に、本発明に用いる相変化記録材料を含有させれば、全く同等の機能を実現できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
なお、下記実施例においては、光学的情報記録用媒体を単に「ディスク」、「光ディスク」、「相変化型光ディスク」等と呼ぶ場合がある。
光学的情報記録用媒体の記録層に用いた相変化記録材料の組成の測定には酸溶解ICP−AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置)および蛍光X線分析装置を用いた。酸溶解ICP−AESに関しては、分析装置はJOBIN YVON社製JY 38 Sを用い、記録層をdil−HNO3に溶解しマトリクスマッチング検量線法で定量した。蛍光X線分析装置は、理学電機工業株式会社のRIX3001を用いた。
溝幅0.31μm、溝深さ29nm、溝ピッチ0.74μmの案内溝を有する直径120mm、0.6mm厚のディスク状ポリカーボネート基板上に、(ZnS)80(SiO2)20層(80nm)、Sb−Ge−In−M−Te層(13nm)、(ZnS)80(SiO2)20層(20nm)、Ta層(2nm)、Ag層(200nm)をスパッタリング法により形成し、さらに紫外線硬化樹脂による保護コート層を形成して相変化型光ディスクを作製した。
Sb−Ge−In−M−Te記録層の組成を{(Sb1−xGex)1−yIny}1−z―wMzTewで表記した場合のx、y、z、wの値を表1に記載した。
これらのディスクは次のように初期結晶化を試みた。すなわち、幅約1μm、長さ約75μmの形状を有する波長810nmパワー800mWのレーザー光を長軸が上記案内溝に垂直になるようにして10m/sで回転させたディスクに照射し、レーザー光を1回転あたり送り量50μmで半径方向に連続的に移動させることにより初期結晶化を試みた。実施例1、2、3、比較例1のディスクは問題なく初期結晶化をすることができた。しかし、比較例2のディスクは結晶化しなかった(反射率変化はしなかった)。線速度を2m/sにしてレーザーパワーを400mW〜1000mWで同様に初期結晶化を試みたが、やはり結晶化はしなかった。したがって比較例2のディスクは実質的に相変化型光ディスクとしての使用は困難であると思われる。比較例2の記録層はTb含有量が多すぎるためと思われる。なお、Ge量を多くすると結晶化はさらに遅くなるため初期結晶化はさらに困難となる。
実施例1、2、3、比較例1のディスクについて、レーザー波長650nm、NA0.65のピックアップを有するパルステック社製光ディスクテスタDDU1000を用い、以下のように案内溝内に記録・消去を行い、ディスク特性を評価した。
本発明に用いる相変化記録材料に対する電気抵抗の変化による記録の可能性を示すために以下の実験を行った。
すなわち、直径120mmのポリカーボネート基板上に実施例1と同じ組成である50nmの膜厚のGe−In−Sb−Tb非晶質膜をスパッタリングで作製した。
上記非晶質膜の抵抗率の測定をした後、この非晶質膜を結晶化させ、結晶化後の膜の抵抗率を測定した。
抵抗率測定にはダイアインスツルメント社製抵抗率測定装置ロレスタMP(MCP−T350)を用いた。
以上の結果から、本発明に用いる相変化記録材料において、非晶質状態と結晶状態との間で3桁以上の抵抗率の変化が生じることがわかった。従って、本発明に用いる相変化記録材料は、非晶質状態と結晶状態との間での相変化における抵抗率の差違が大きく、電気抵抗変化による記録を行う書き換え型情報記録用媒体への適用が可能であることがわかる。
2 下部電極
3 相変化記録層
4 ヒーター部
5 可逆変化領域
10 絶縁膜
Claims (9)
- 下記一般式(1)で表される組成を主成分とすることを特徴とする相変化記録材料。
{(Sb1−xGex)1−yIny}1−z―wMzTew (1)
(ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0<z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。) - 前記一般式(1)において、z/yが0以上、1以下である請求項1に記載の相変化記録材料。
- 前記相変化記録材料が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とする請求項1または請求項2に記載の相変化記録材料。
- 記録層を有する情報記録用媒体であって、前記記録層が下記一般式(1)で表される組成を主成分とすることを特徴とする情報記録用媒体。
{(Sb1−xGex)1−yIny}1−z―wMzTew (1)
(ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0<z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。) - 前記一般式(1)において、z/yが0以上、1以下である請求項4に記載の情報記録用媒体。
- 前記情報記録用媒体が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とする請求項4または請求項5に記載の情報記録用媒体。
- 前記情報記録用媒体が光学的情報記録用媒体である請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載の情報記録用媒体。
- 前記光学的情報記録用媒体がさらに保護層を有する請求項7に記載の情報記録用媒体。
- 前記光学的情報記録用媒体がさらに反射層を有し、前記反射層がAgを主成分とする請求項7又は8に記載の情報記録用媒体。
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