JP4330470B2 - 相変化記録材料及び情報記録用媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、相変化記録材料およびそれを用いた情報記録用媒体に関する。
相変化を利用した記録方法としては、光、電流(ジュール熱)などのエネルギービームもしくはエネルギー流を作用させることで、金属または半導体の結晶構造を可逆的に変化せしめる方法が知られている(非特許文献1、特許文献1)。
相変化型記録材料を用いた情報記録用媒体の記録手法として現在実用化されているのは、結晶相と非晶質相(アモルファス相)との間での可逆的変化を利用する手法である。具体的には、結晶状態を未記録・消去状態とし、記録時に非晶質(アモルファス)のマークを形成する手法である。通常、記録層を局所的に、融点より高い温度まで加熱し急冷して非晶質のマークを形成する。一方、記録層を概ね融点以下、結晶化温度以上に加熱して徐冷することで、記録層を結晶化温度以上に一定時間保つことで再結晶化を行う。このように一般的には、安定な結晶相と非晶質相との間での可逆的変化を利用し、結晶状態と非晶質状態における物理的パラメーター、例えば、屈折率、電気抵抗、体積、密度変化等の差を検出することで、情報の記録再生を行うのである。
情報記録用媒体の中でも光学的情報記録用媒体においては、集束光ビームを照射して局所的に生起せしめた結晶状態と非晶質状態との可逆的な変化に伴う反射率変化を利用して記録再生が行われる。このような相変化型記録層を有する光学的情報記録用媒体は、可搬性、耐候性、耐衝撃性等に優れた安価な大容量記録媒体として開発および実用化が進んでおり、例えば、CD−RW、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAMなどの書き換え可能な相変化型の光学的情報記録用媒体(以下、相変化型の光学的情報記録用媒体を、単に「相変化型の光ディスク」、「光ディスク」、又は「ディスク」という場合がある。)が普及している。さらには、青色レーザー使用や対物レンズの高NA化による高密度化、記録パルス波形の改良による高速記録化などの開発が行われている。
このような相変化型記録層の材料としてはカルコゲン系合金が多く用いられる。カルコゲン系合金としては、例えば、Ge−Sb−Te系、In−Sb−Te系、Ge−Sn−Te系、Ag−In−Sb−Te系合金が挙げられる。これら合金は、通常オーバーライト可能な材料でもある。
ここでオーバーライトとは、一旦記録済みの媒体に再度記録をする際に、記録前に消去を行うことなくそのまま重ね書きする手法、いわば消去しながら記録する手法である。相変化型の光学的情報記録用媒体では、記録は通常オーバーライトによって行われるので、消去しながら記録すること(つまりオーバーライト)を単に記録と称することもある。
近年は情報量の増大に伴い、さらに高速の記録消去再生が可能な情報記録用媒体(特に光学的情報記録用媒体)の開発が望まれている。このような超高速記録においても優れたジッタ特性と非晶質マークの保存安定性の両特性を満足することが可能な材料としては、Sb−Ge−Inの3元組成を主成分とする材料が挙げられる(特許文献2、3)。この材料は、基準クロック周期15ns以下で情報信号の高速記録消去を行う相変化型の光ディスクに用いる材料として有望である。
Appl. Phys. Lett., Vol.18(1971), pp254-257 米国特許第3530441号明細書 特開2001−39031号公報 特開2002−347341号公報
しかし、上記Sb−Ge−Inの3元組成を主成分とする材料においては、繰り返し記録耐久性をより高めたいという課題がある。
例えば、CD−RWにおいては、1000回の繰り返し記録耐久性が保証されている場合が多い(1000回の繰り返し記録を保証するためには、CD−RWは2000回程度の繰り返し記録が可能である必要がある。)。これに対し、上記Sb−Ge−Inの3元組成を記録材料として用いたCD−RWは、実用的な観点から繰り返し記録可能な回数を評価した場合に、繰り返し記録可能な回数の上限が1000回付近となる場合がある。
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、高速での記録消去が可能で、優れたジッタ特性を有し、記録信号の保存安定性が高く、さらには繰り返し記録耐久性に優れる相変化記録材料、および前記材料を用いた情報記録用媒体を提供することにある。特に、情報記録用媒体の応用の一形態である光学的情報記録用媒体を提供することにある。
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、上記3元組成にランタノイドおよびTeの少なくとも一方を添加することにより、高速での記録消去に対するジッタ特性および記録信号の保存安定性の両特性を満足し、さらに繰り返し耐久性が著しく改善されることを見出して本発明に到達した。
すなわち、本発明においては、請求項1に記載するように、下記一般式(1)で表される組成を主成分とすることを特徴とする相変化記録材料を提供する。
{(Sb1−xGe1−yIn1−z―wTe (1)
(ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0<z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。)
また、本発明においては、請求項2に記載するように、前記一般式(1)において、z/yが0以上、1以下である請求項1に記載の相変化記録材料を提供する。
また、本発明においては、請求項3に記載するように、前記相変化記録材料が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とする請求項1または請求項2に記載の相変化記録材料を提供する。

また、本発明においては、請求項4に記載するように、記録層を有する情報記録用媒体であって、前記記録層が下記一般式(1)で表される組成を主成分とすることを特徴とする情報記録用媒体を提供する。
{(Sb1−xGe1−yIn1−z―wTe (1)
(ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0<z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。)
また、本発明においては、請求項5に記載するように、前記一般式(1)において、z/yが0以上、1以下である請求項4に記載の情報記録用媒体を提供する。
また、本発明においては、請求項6に記載するように、前記相変化記録用媒体が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とする請求項4または請求項5に記載の情報記録用媒体を提供する。

また、本発明においては、請求項7に記載するように、前記情報記録用媒体が光学的情報記録用媒体である請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載の情報記録用媒体を提供する。
また、本発明においては、請求項8に記載するように、前記光学的情報記録用媒体がさらに保護層を有する請求項7に記載の情報記録用媒体を提供する。
さらに、本発明においては、請求項9に記載するように、前記光学的情報記録用媒体がさらに反射層を有し、前記反射層がAgを主成分とする請求項7又は8に記載の情報記録用媒体を提供する。
本発明によれば、高速での記録消去が可能で、優れた記録特性を有し、記録信号の保存安定性が高く、さらには繰り返し記録耐久性に優れる相変化記録材料、および前記材料を用いた情報記録用媒体を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1]相変化記録材料
本発明の相変化記録材料は、下記一般式(1)で表される組成を主成分とする。
{(Sb1−xGe1−yIn1−z―wTe (1)
ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0≦z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。ただし、zおよびwはともに0となることはない。また、x、y、z、wはいずれも原子数比である。
本発明の相変化記録材料は、Sb−Ge−In系の特定組成に、ランタノイドおよびTeの少なくとも一方を所定の割合で添加することを特徴とするものである。本発明の相変化記録材料は、ジッタ特性および記録信号の保存安定性に加えて、繰り返し記録耐久性に優れるという効果を奏するものである。
Sb−Ge−In系合金が結晶・非晶質のいずれの状態も安定で、かつ、これらの状態間の比較的高速の相転移が可能な記録材料である点、及び、Sb−Ge−In系合金を特定組成で用いた記録層を有する光学的情報記録用媒体が優れたジッタ特性および記録信号の保存安定性を発揮する点については、本発明者等の一部が既に開示するところである(特開2001−39031公報等)。これらの点につき、相変化記録材料としてSb−Ge−In系合金が優れていることを本発明者等は以下のようにして見出した。
すなわち、Sbは結晶化速度が速いために通常の光ディスクで用いられるような記録条件では非晶質マークを形成することができないが、SbにGeを混合していくと結晶化速度は遅くなる。このため、SbにGeを混合することにより、記録可能な結晶化速度を持つように結晶化速度の調整をすることができる。
しかし、SbにGeを混合した組成を用いた記録層を有する光学的情報記録用媒体においては、記録された信号のジッタが大きくなる。このため、SbにGeを混合した相変化記録材料は、実用化するには問題がある。実際、Sb−Ge系合金の相変化型記録材料についてはAppl.Phys.Lett.60(25),22 June 1992,pp.3123−3125等の文献で論じられたことがあるが、本発明者等がSb−Ge系合金を記録層に用いた光ディスクに対して一般的な記録条件のもとで記録し評価した結果、この光ディスクへの記録は可能となるものの、記録信号のジッタが大きくなり、実使用に耐えるものとはならなかった。そこで、さらなる検討の結果、本発明者等は、上記Sb−Ge系合金に適量のInを添加することにより、記録信号のジッタ特性が良好になることを見出し、相変化記録材料としてSb−Ge−In系合金の組成が良好であることを見出した。
ところが、本発明者等がさらに検討を行った結果、Sb−Ge−In系合金の組成の相変化記録材料は繰り返し記録を行うことにより結晶化速度が初期と比較して次第に遅くなる傾向になることが判明した。つまり、Sb−Ge−In系合金の組成の相変化記録材料に対して数千回にもわたる繰り返し記録を行った場合には、上記結晶化速度の低下によって前に記録されていた非晶質マークが十分に消去されなくなるのである。このため、この非晶質マークの不十分な消去を原因として、ジッタ特性が悪化する傾向となる。この傾向はIn含有量が多いと顕著になる。
本発明は、特に上記傾向を改善するためになされたものであり、ランタノイドおよびTeの少なくとも一方を特定の組成で添加することにより繰り返し記録耐久性(例えば、繰り返し記録を行ったときのジッタ特性)を高めることを可能とするものである。これらの金属元素を添加することにより繰り返し記録耐久性が向上する理由については明らかではないが、以下のように推測される。
すなわち、Sb−Ge−In系合金の組成の相変化記録材料においては、繰り返し記録を行うことによって急激な温度変化が生じる場合において、偏析と同様の現象が生じうる場合がある。偏析が生じると結晶化速度が遅くなるため、前に記録した非晶質のマークが消去できずに残る場合がある。そして、この非晶質マークの未消去部分の存在によって、ジッタ特性が低下することになる。このため、Sb−Ge−In系相変化記録材料にランタノイドおよびTeの少なくとも一方を特定の組成で添加することにより、繰り返し記録を行っても偏析が生じにくくなり、繰り返し記録に伴う結晶化速度が遅くなる現象が生じにくくなるものと推測される。そしてこの結果、Sb−Ge−In系相変化記録材料にランタノイドおよびTeの少なくとも一方を特定の組成で添加した相変化記録材料を記録層に用いた光学的情報記録用媒体(例えばCD−RW)は、2000回程度の繰り返し記録によっても初期の結晶化速度を維持できるようになると推測される。
なお、本発明において、「所定組成を主成分とする」とは、所定組成が含有される材料全体または層全体のうち、前記所定組成の含有量が50原子%以上であることを意味するものである。本発明の効果をより発揮するためには、前記所定組成が、好ましくは80原子%以上、より好ましくは90原子%以上、特に好ましくは95原子%以上含有される。
また、本発明においては、相変化記録材料が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とすることが好ましい。これは、本発明の相変化記録材料中に結晶核が多く存在しないと推測されるためである。つまり、非晶質状態を未記録としてこの非晶質状態の中に結晶状態のマークを形成する場合においては、結晶核が多く存在するような相変化記録材料を用いることが好ましい。なぜなら、相変化記録材料中に結晶核が多く存在すれば、結晶状態のマークの形状が結晶核の位置に影響されることがなくなるためである。一方、上述の通り、本発明における相変化記録材料中には結晶核が多数存在しないため、非晶質状態を未記録状態とし、非晶質状態の中に結晶状態の記録マークを形成するよりは、結晶状態を未記録状態とし、結晶状態の中に非晶質状態の記録マークを形成する方が、良好な記録を行いやすくなる。
このように本発明の相変化記録材料が、ジッタ特性および記録信号の保存安定性に加えて、優れた繰り返し記録耐久性を実現するためには、その主成分となる各金属元素が特定の組成で用いられることが必要である。以下に詳しく説明する。
(Sb、Ge)
SbとGeの合計量におけるGe量、すなわち上記一般式(1)におけるxは、0.001以上、0.3以下である。Geは、結晶化速度を遅くし、非晶質相を形成しやすくし、また非晶質相の保存安定性を高める作用がある。このため、Ge含有量が少なくなると、結晶化速度が速くなりすぎ非晶質相の形成が困難となるか、または非晶質相の保存安定性が不十分となる場合がある。したがって、Geが所定量以上含まれる必要があるため、上記一般式(1)において、0.001≦xとするが、好ましくは0.005≦xであり、より好ましくは0.01≦xであり、さらに好ましくは0.02≦xであり、特に好ましくは0.03≦xである。
一方、Ge含有量が多すぎると、結晶化速度が遅くなりすぎ非晶質マークの消去(結晶化)ができなくなる場合がある。したがって、上記一般式(1)において、x≦0.3とする。結晶化速度を良好に制御する観点から、x≦0.25とすることが好ましく、x≦0.2とすることがより好ましく、x≦0.15とすることがさらに好ましく、x≦0.1とすることが特に好ましい。
(In)
Inを含有させると信号振幅が大きくなりジッタ特性が改善される効果がある。含有量が少なすぎると改善効果が得られない場合があるため、上記一般式(1)においてInの含有量を示すyは、0≦yとする。好ましくは0<y、より好ましくは0.01≦y、さらに好ましくは0.05≦y、特に好ましくは0.1≦y、最も好ましくは0.15≦yとする。逆にIn量が多くなりすぎると、記録に使用する結晶相とは別に低反射率のIn−Sb系の安定結晶相(低反射率結晶相)が常に形成される状態となる場合があり、この場合は相変化が全く起こらず記録ができなくなってしまう。したがって、上記一般式(1)においてInの含有量を示すyは、y≦0.4とし、好ましくはy≦0.35、より好ましくはy≦0.3、さらに好ましくはy≦0.25、特に好ましくはy≦0.2とする。また、In含有量が多くなると最適記録パワーが小さくなる傾向にあるため、上記範囲とすることが好ましい。
(ランタノイド)
ランタノイドの含有量は、上記一般式(1)において0以上、0.2以下とする。すなわち、上記一般式(1)においてランタノイドの含有量を示すzは、0≦z≦0.2とする。
ランタノイドを含有させた場合は、繰り返し記録による結晶化速度低下が抑制される。この効果を得るには、Teが含有されていない場合は、上記一般式(1)において、0<zとする。繰り返し記録による結晶化速度低下の抑制の観点からも、0<zとすることが好ましく、0.005≦zとすることがより好ましく、0.01≦zとすることがさらに好ましく、0.02≦zとすることが特に好ましい。ランタノイドは、繰り返し記録した場合の相変化記録材料の結晶化速度を早める役割を有するものと推測される。このため、繰り返し記録により結晶化速度が遅くなる傾向にあるSb−Ge−In系合金の組成の相変化記録材料にランタノイドを添加すると、繰り返し記録を行うことによる結晶化速度の低下が抑制されるものと推測される。このように、ランタノイドは、繰り返し記録時の相変化記録材料の結晶化速度を速める役割を有するため、ランタノイドが多くなると繰り返し記録により結晶化速度が初期より速くなることもある。
一方、ランタノイドの含有量が多くなりすぎると初期結晶化が困難になったり、初期の結晶化速度が遅くなりすぎたり、信号振幅が小さくなる傾向にある。したがって、上記一般式(1)において、z≦0.2とするが、z≦0.15とすることが好ましく、z≦0.1とすることがより好ましく、z≦0.07とすることがさらに好ましい。後述のTeを添加する場合と比較すると、ランタノイドを添加した場合の方が信号振幅の低下は小さいため、この点ではランタノイドの添加が好ましい。
ランタノイドとは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素をいう。これらランタノイドは、電子配置上4f電子が順次満たされていく系列であり、類似する性質を有するため好ましい。これらランタノイドの中でも好ましいのは、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの少なくともいずれかであり、より好ましいのは、GdまたはTbである。上記ランタノイドを用いることにより、繰り返し記録時の結晶化速度の変化を抑制できるようになる。ランタノイドは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(Te)
Teの含有量は、上記一般式(1)において0以上、0.1以下とする。すなわち、上記一般式(1)においてTeの含有量を示すwは、0≦w≦0.1とする。
Teを添加する場合も繰り返し記録による結晶化速度低下が抑制される。この効果を得るには、ランタノイドが含有されていない場合は、上記一般式(1)において、0<wとする。繰り返し記録による結晶化速度低下の抑制の観点からも、0<wとすることが好ましく、0.005≦wとすることがより好ましく、0.01≦wとすることがさらに好ましく、0.02≦wとすることが特に好ましい。
一方、Teの添加により媒体の反射率、信号振幅が小さくなる傾向があるため、上記一般式において、w≦0.1とするが、w≦0.09とすることが好ましく、w≦0.08とすることがより好ましく、w≦0.07とすることがさらに好ましく、w≦0.06とすることが特に好ましい。
(Inとランタノイドの関係)
本発明の相変化記録材料においては、相変化記録材料中のIn含有量が多くなると繰り返し記録による結晶化速度低下が大きくなる傾向にある。一方で、相変化記録材料中のランタノイドの含有量が多くなると繰り返し記録により結晶化速度が速くなる傾向にある。このため、繰り返し記録による結晶化速度の変化を小さくするためには、Inおよびランタノイドの含有量の関係を制御することが好ましい。
このような観点から、上記一般式(1)におけるz/yは、通常0以上とするが、0.001以上とすることが好ましく、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上、最も好ましくは0.15以上とする。この範囲とすれば、繰り返し記録時の結晶化速度の変化を小さくすることができる。
また、上記一般式(1)におけるz/yは、1以下とすることが好ましく、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.3以下、最も好ましくは0.25以下とする。この範囲とすれば、初期結晶化(情報記録用媒体製造後の一回目に行う初期化)を良好に行うことができるのみならず、信号振幅を大きく保つことができるようになる。
(InとTeの関係)
本発明の相変化記録材料においては、Teを含有させると信号振幅が低下する傾向がある。このため、Teを含有させる場合には、Inを多く含有させることにより信号振幅を良好とすることができるようになる。したがって、Inの含有量(原子%)とTeの含有量(原子%)との比は、(Inの含有量)>(Teの含有量)とすることが好ましく、(Inの含有量)>1.5×(Teの含有量)とすることがより好ましく、(Inの含有量)>2×(Teの含有量)とすることがさらに好ましく、(Inの含有量)>3×(Teの含有量)とすることが特に好ましく、(Inの含有量)>3.5×(Teの含有量)とすることが最も好ましい。一方、信号振幅を確保する観点から、通常、(Inの含有量)<70×(Teの含有量)とするが、(Inの含有量)<30×(Teの含有量)とすることが好ましい。
(ランタノイドとTeの関係)
本発明の相変化記録材料には、ランタノイドおよびTeの少なくとも一方が添加される。すなわち、ランタノイドまたはTeのいずれか一方を用いるのでも良く、両方を組み合わせて用いるのでもよい。これらの元素を添加することにより繰り返し記録による結晶化速度低下が抑制されるという効果が得られるが、この効果をより確実に発揮するためには、z+wは0.01以上とすることが好ましく、より好ましくは0.02以上とする。一方、ランタノイドおよびTeを過度に含有させると信号振幅が低下する、または初期結晶化が困難となる場合があるため、z+wは、通常0.3以下とするが、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.1以下とする。
ランタノイドは、繰り返し記録による相変化記録材料の結晶化速度を速める性質を有する。このため、ランタノイドの添加により、Sb−Ge−In系合金の組成の繰り返し記録による結晶化速度の低下が抑制されるようになる。一方で、ランタノイドを過度に多く含有させると、初期結晶化が困難となる傾向にある。
Teは、繰り返し記録による相変化記録材料の結晶化速度の低下を抑制できるようになる。一方で、Teを過度に多く含有させると、媒体の反射率や信号振幅が小さくなる傾向にある。
このように、ランタノイドとTeとは、繰り返し記録による相変化記録材料の結晶化速度の低下を抑制する効果がある一方で、初期結晶化を困難とする又は媒体の反射率や信号振幅を小さくするという異なる性質をそれぞれ有する。従って、ランタノイドとTeとを併用して、これらの含有量を上記範囲内に制御すれば、繰り返し記録による相変化記録材料の結晶化速度の低下を抑制しつつ、初期結晶化が良好となりかつ媒体の反射率や信号振幅も良好とすることができるようになる。
以上から、本発明においては、ランタノイドとTeとを併用することが好ましい。
(その他の事項)
ところで、記録消去は一般に、媒体を高速で回転させながら光照射部から出射した光ビーム(レーザービーム)スポットを記録層に照射し、光照射部と媒体とを高速で相対移動させながら行われる。相対移動速度が大きい場合を記録線速度(記録速度)が大きいと称し、相対移動速度が小さい場合を記録線速度(記録速度)が小さいと称する。
記録線速度が大きい状態では、記録層は一旦光ビームスポットにより加熱された後、急速に冷却される。すなわち記録層の温度履歴は急冷的になり、同じ組成の記録層では、記録線速度が大きいほど非晶質相が形成されやすく結晶相が形成されにくくなる。
このため、目的とする記録線速度がより大きい媒体では結晶化速度を速くし、目的とする記録線速度が小さい媒体では結晶化速度を遅くするなど、前述の含有量の範囲内で記録線速度に応じてGe、In、ランタノイドの量を調整するのが望ましい。
種々の特性改善のために、必要に応じてこの相変化記録材料に、Au、Ag、Al、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Mn、Pd、Pt、Rh、Pb、Cr、Co、Mo、W、Mn、O、N、Se、V、Nb、Ta、Ti、及びBi等を添加してもよい。特性改善の効果を得るために、添加量は合金の全体組成の0.1at.%(原子%)以上が好ましい。ただし、本発明組成の好ましい特性を損なわないため10at.%以下にとどめるのが好ましい。
[2]情報記録用媒体
次に、本発明の情報記録用媒体について説明する。
本発明の情報記録用媒体は、記録層を有する情報記録用媒体であって、前記記録層が下記一般式(1)で表される組成を主成分とすることを特徴とするものである。
{(Sb1−xGe1−yIn1−z―wTe (1)
(ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0≦z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。ただし、zおよびwが共に0となることはない。)
なお、本発明においては、情報記録用媒体が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とすることが好ましい。これは、本発明の記録層組成中に結晶核が多く存在しないと推測されるためである。つまり、非晶質状態を未記録としてこの非晶質状態の中に結晶状態のマークを形成する場合においては、結晶核が多く存在するような記録層組成を用いることが好ましい。なぜなら、記録層に結晶核が多く存在すれば、結晶状態のマークの形状が結晶核の位置に影響されることがなくなるためである。一方、上述の通り、本発明における記録層組成中には結晶核が多数存在しないため、非晶質状態を未記録状態とし、非晶質状態の中に結晶状態の記録マークを形成するよりは、結晶状態を未記録状態とし、結晶状態の中に非晶質状態の記録マークを形成する方が、良好な記録を行いやすくなる。
記録層として上記一般式(1)で表される組成を用いることにより、超高速記録においてもジッタ特性、非晶質マークの保存安定性、及び繰り返し記録耐久性等の記録特性において優れた特性を有する情報記録用媒体を実現することができる。
このような情報記録用媒体としては、結晶状態と非晶質状態とにおける物理的パラメーターの差を検出することにより情報の記録再生を行うものであれば特に限定されるものではなく、例えば屈折率、電気抵抗、体積、密度変化等の差を検出するような情報記録用媒体を挙げることができる。中でも、本発明の相変化記録材料を用いた情報記録用媒体は、レーザー光を照射することにより生じる結晶状態/非晶質状態の可逆的な変化に伴う反射率変化を利用した光学的情報記録用媒体への応用に適している。
また、本発明の情報記録用媒体は、電流を流すことによって発生するジュール熱を利用した結晶状態/非晶質状態の可逆的な変化に伴う電気抵抗率の変化を利用した情報記録用媒体への応用もできる。
以下、本発明の情報記録用媒体の一例として、光学的情報記録用媒体の具体的構成および記録再生方法について説明する。さらに、本発明の情報記録用媒体の他の一例として、本発明の情報記録用媒体を光学的情報記録用媒体以外の用途にもちいる場合についても説明する。
[2−1]光学的情報記録用媒体
(層構成)
光学的情報記録用媒体としては通常、図1(a)や、図1(b)に示すような多層構成のものが用いられる。すなわち、図1(a)、(b)より明らかなように、基板上に、上記一般式(1)で表される組成を主成分とする記録層を有し、さらに保護層を有するようにすることが好ましい。
光学的情報記録用媒体のさらに好ましい層構成は、再生光の入射方向に沿って順に、第1保護層、記録層、第2保護層、反射層が設けられている構成である。すなわち、基板側から再生光を入射する場合は、基板、第1保護層(下部保護層)、記録層、第2保護層(上部保護層)、反射層の層構成とし(図1(a)参照)、記録層側から再生光を入射する場合は、基板、反射層、第2保護層(下部保護層)、記録層、第1保護層(上部保護層)の層構成とする(図1(b)参照)のが好ましい。
無論、これらの各層はそれぞれ2層以上で形成されていても良く、また、それらの間に中間層が設けられていても良い。例えば、基板側から再生光を入射する場合の基板/保護層間や、基板とは反対側から再生光を入射する場合の保護層上に、半透明の極めて薄い金属、半導体、吸収を有する誘電体層等を設けて、記録層に入射する光エネルギー量を制御することも可能である。
尚、上記の通り記録再生光ビーム(記録再生光)入射とは反対側に反射層を設けることが多いが、この反射層は必須ではない。また、記録層の少なくとも一方の面に設けられることが好ましい保護層において、特性の異なる材料を多層化することも行われる。
以下、各層について詳しく説明する。
(A)記録層
(A−1)記録層に含有される材料とその量
記録層に含有される材料は、上記一般式(1)で表される組成を主成分とする。この組成についての詳細な説明はすでに行ったので、ここでの説明は省略する。本発明の効果を有効に発揮するためには、記録層全体のうち、上記一般式(1)で表される組成が、通常50原子%以上、好ましくは80原子%以上、より好ましくは90原子%以上、特に好ましくは95原子%以上含有される。含有量が高ければ高いほど本発明の効果が顕著に発揮されるようになるが、記録層の成膜時にOやN等の他の成分が含有されたとしても数原子%から20原子%の範囲内であれば、高速記録消去等の本発明の効果が発揮される。
(A−2)記録層の膜厚
記録層の厚さは、通常1nm以上であるが、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、特に好ましくは10nm以上である。このようにすれば、結晶と非晶質状態と間の反射率のコントラストが十分となり、また結晶化速度も十分となり、短時間での記録消去が可能となる。また、反射率自体も十分な値となる。一方、記録層の厚さは、通常30nm以下、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは12nm以下、特に好ましくは11nm以下である。このようにすれば、光学的なコントラストを十分に得ることができ、また、記録層にクラックが生じにくくなる。また、熱容量が大きくなることによる記録感度の悪化も発生しない。また、上記膜厚範囲とすれば、相変化に伴う体積変化を適度に抑制することができ、記録を繰り返した際にノイズの原因となる、記録層自身やその上下に設けることができる保護層の微視的かつ不可逆な変形が蓄積されにくくなる。このような変形の蓄積は、繰り返し記録耐久性を低下させる傾向があるため、記録層の膜厚を上記範囲内にすることによりこの傾向を抑制することができる。
書き換え型DVDのように波長約650nmのLD(レーザーダイオード)、開口数約0.6〜0.65の対物レンズの集束光ビームで記録再生を行う場合や、波長約400nmの青色LD、開口数約0.7〜0.85の対物レンズの集束光ビームにて記録再生を行う高密度媒体ではノイズに対する要求はいっそう厳しいために、このような場合には、より好ましい記録層の厚さは25nm以下である。
(A−3)記録層膜厚に関するさらに好ましい態様
本発明においては、高速記録消去が可能な上記一般式(1)で表される組成を主成分とする記録層を設けた光学的情報記録用媒体において、記録層の膜厚を非常に薄くすることにより、この光学的情報記録用媒体を長期保存した後の2回目の記録特性や長期保存後の反射率低下を良好にすることができると考えられる。具体的には、記録層の膜厚を好ましくは11nm以下とすることにより、上記一般式(1)で表される組成の記録層を用いた光学的情報記録用媒体において、長期保存後の2回目記録時における記録特性が改善される傾向、及び長期保存での反射率低下が改善される傾向があるようである。
上記一般式(1)で表される組成の記録層を用いた光学的情報記録用媒体においては、長期保存した後の2回目の記録におけるジッタが若干劣る場合がある。この理由は必ずしも明らかではないが、長期保存後の1回目記録における信号強度が小さくなる傾向にあることが関係していると思われる。すなわち、光学的情報記録用媒体を長期保存した後に記録を行うと1回目の記録における信号振幅が小さくなる傾向にある。信号振幅は、さらに数回記録することによって回復してくるため、この1回目の記録時における信号振幅の低下は、長期保存後の結晶部がはじめて非晶質化する場合に記録マークが大きくなりにくくなっていることが原因と考えられる。そして、長期保存後の2回目記録時にジッタが悪化しやすい理由は、長期保存後はじめて非晶質化する部分(1回目の記録において記録ビームが照射されなかった部分)と、再度(2回目)の非晶質化が行われる部分と、が混在するためと思われる。つまり、2回目の記録においては、上記混在のために非晶質のマークの大きさにばらつきが生じるためと思われる。
なお、長期保存後の1回目記録時に非晶質マークが大きくなりにくくなる傾向の原因は明らかではないが、数回記録後に特性が戻ることから、長期保存により記録層の結晶部に何らかの変化が起きたのではないかと考えられる。記録層を非常に薄く(好ましくは11nm以下)にすることにより長期保存後2回目記録時の特性が改善されるが、これは上記記録層結晶部の変化が抑制される傾向にあるためと思われる。
さらに、記録層を非常に薄くする(好ましくは11nm以下)ことにより長期保存による反射率低下も抑えられる傾向にある。この理由も明らかではないが、上記長期保存後の2回目記録における記録特性の改善の場合におけると同様に、長期保存時の記録層の変化が抑えられているのであろう。
但し、記録層を非常に薄くすると、信号振幅等の記録特性が損なわれる場合がある。しかしながら、この点については、光学的情報記録用媒体の層構成と膜厚の調整によって、信号振幅等の記録特性を十分に良好なレベルにすることができる。
つまり、基板上に保護層、上記一般式(1)で表される組成の記録層、保護層、反射層をこの順または逆の順序で設ける光学的情報記録用媒体の場合は、記録層膜厚を非常に薄く(例えば12nm程度より薄く)すると信号強度が小さくなる傾向にある。このため、記録層を非常に薄く(例えば11nm以下)した場合において、大きな信号強度を得るには工夫が必要である。
例えば、1つの方法は、レーザー光が記録層に入射してくる側に位置する保護層の膜厚を変化させることである。すなわち、光学的情報記録用媒体の反射率が極小値となる保護層膜厚よりも保護層の膜厚を薄くすることである。極小値となる膜厚は用いるレーザー波長にもよるが、例えば、DVDでの650nm付近の膜厚では50nm付近となる。こうすることにより光学的に信号強度は大きくなる。
しかし、一般的に光入射側保護層の膜厚が薄くなると、基板等への熱的な影響が大きくなり繰り返し記録耐久性が悪化する傾向となることが知られているため、保護層の膜厚を上記のように薄く(例えば50nm付近)する上記方法は用いづらい。この傾向に対し、記録層に対してレーザー光が入射してくる側の保護層の膜厚を薄くした(例えば、50nm以下)場合であっても、この保護層の全体を後述する保護層A(金属酸硫化物又は金属窒化物を含有する保護層)とするか、又はこの保護層のうち記録層と接する部分における保護層領域を後述する保護層Aとすることにより、光学的情報記録用媒体の十分な繰り返し記録耐久性が得られると考えられる。なお、保護層Aについての詳細は後程説明する。
以上を踏まえ、本態様における記録層の膜厚は、15nm以下とすることが好ましく、14nm以下とすることがより好ましく、13nm以下とすることがさらに好ましく、12nm以下とすることが特に好ましく、11nm以下とすることが最も好ましい。
一方、上記の通り、長期保存後の記録特性を改善するために記録層膜厚を非常に薄くした場合においても、記録層膜厚が過度に薄くなりすぎると記録層以外の層を調整しても十分な信号強度は得られなくなる。信号強度の下限値は再生装置の性能によるが、例えば書き換え型のDVDにおいては、記録層膜厚が3nm未満とすると信号強度が小さくなり使用は困難となる傾向にある。
(A−4)記録層の製造方法
上記記録層は所定の合金ターゲットを不活性ガス、特にArガス中でDCまたはRFスパッタリングにより得ることができる。
また、記録層の密度は、バルク密度の通常80%以上、好ましくは90%以上とする。ここでいうバルク密度ρとは、通常下記数式(2)による近似値を用いるが、記録層を構成する合金組成の塊を作製して実測することもできる。
Figure 0004330470
スパッタ成膜法においては、成膜時のスパッタガス(通常Ar等の希ガス:以下Arの場合を例に説明する。)の圧力を低くしたり、ターゲット正面に近接して基板を配置するなどして、記録層に照射される高エネルギーAr量を多くすることによって、記録層の密度を上げることができる。高エネルギーArは、通常スパッタのためにターゲットに照射されるArイオンが一部跳ね返されて基板側に到達するものか、プラズマ中のArイオンが基板全面のシース電圧で加速されて基板に達するものかのいずれかである。
このような高エネルギーの希ガスの照射効果をAtomic peening効果というが、一般的に使用されるArガスでのスパッタリングではAtomic peening効果によりArがスパッタ膜に混入される。したがって、膜中のAr量により、Atomic peening効果を見積もることができる。すなわち、Ar量が少なければ、高エネルギーAr照射効果が少ないことを意味し、密度の疎な膜が形成されやすい。
一方、Ar量が多ければ、高エネルギーArの照射が激しくなり、膜の密度は高くなるものの、膜中に取り込まれたArが繰り返し記録時にvoidとなって析出し、繰り返し記録耐久性を劣化させやすい。したがって、適度な圧力、通常は10−2〜10−1Paのオーダーの範囲で放電を行う。
次に、本発明の好ましい態様である、光学的情報記録用媒体の構造の他の構成要素について説明する。
(B)基板
本発明で使用する基板としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどの樹脂、あるいはガラス、アルミニウム等の金属を用いることができる。通常基板には深さ20〜80nm程度の案内溝が設けられているので、案内溝を成形によって形成できる樹脂製の基板が好ましい。また、記録消去再生用の集束光ビームが基板側から入射する、いわゆる基板面入射(図1(a)参照)の場合は、基板は透明であることが好ましい。
基板の厚さは、通常0.05mm以上、1.5mm以下とするが、CDでは1.2mm程度、DVDでは0.6mm程度のものが用いられる。
また、高密度化のためにレーザーの光学ヘッドを高NA(約0.7以上)、短波長とする場合には、図1(b)において、入射光側保護層の上面にさらに、透明樹脂からなるカバー層を設ける。その厚みは、通常、0.01mmから0.1mm程度の薄いものも用いられる。
(C)保護層
(C−1)本発明で用いる保護層に関する一般的説明
記録層の相変化に伴う蒸発・変形を防止し、その際の熱拡散を制御するため、本発明においては、光学的情報記録用媒体がさらに保護層を有することが好ましい。保護層は、通常記録層の上下一方または両方、好ましくは両方に形成される。保護層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物等の誘電体を用いることができる。
この場合、これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。繰り返し記録特性を考慮すると誘電体の混合物が好ましい。より具体的には、ZnSや希土類硫化物等のカルコゲン化合物と酸化物、窒化物、炭化物、弗化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。例えば、ZnSを主成分とする耐熱化合物の混合物や、希土類の酸硫化物、特にYSを主成分とする耐熱化合物の混合物は好ましい保護層組成の一例である。
保護層を形成する材料としては、通常、誘電体材料を挙げることができる。誘電体材料としては、例えば、Sc、Y、Ce、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Cr、In、Si、及びGe等の酸化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、及びSn等の窒化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、及びSi等の炭化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。また、誘電体材料としては、Zn、Y、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBi等の硫化物、セレン化物もしくはテルル化物、Y,及びCe等の酸硫化物、Mg、Ca等のフッ化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。
さらに誘電体材料の具体例としては、ZnS−SiO、SiN、SiO、TiO、CrN、TaS、YS等を挙げることができる。これら材料の中でも、ZnS−SiOは、成膜速度の速さ、膜応力の小ささ、温度変化による体積変化率の小ささおよび優れた耐候性から広く利用される。ZnS−SiOを用いる場合、ZnSとSiOとの組成比ZnS:SiOは、通常0:1〜1:0、好ましくは0.5:0.5〜0.95:0.05、より好ましくは0.7:0.3〜0.9:0.1とする。最も好ましいのはZnS:SiOを0.8:0.2とすることである。
繰り返し記録特性を考慮すると、保護層の膜密度はバルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい。誘電体の混合物を用いる場合には、バルク密度として上述の数式(2)の理論密度を用いる。
保護層の厚さは、一般的に通常1nm以上500nm以下である。1nm以上とすることで、基板や記録層の変形防止効果を確保することができ、保護層としての役目を果たすことができる。また、500nm以下とすれば、保護層としての役目を果たしつつ、保護層自体の内部応力や基板との弾性特性の差等が顕著になって、クラックが発生するということを防止することができる。
特に、第1保護層を設ける場合、第1保護層は、熱による基板変形等を抑制する必要があるため、その厚さは通常1nm以上、好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。このようにすれば、繰り返し記録中の微視的な基板変形の蓄積が抑制され、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなるということがなくなる。
一方、第1保護層の厚みは、成膜に要する時間の関係から、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。このようにすれば、記録層平面で見た基板の溝形状が変わるということがなくなる。すなわち、溝の深さや幅が、基板表面で意図した形状より小さくなったりする現象が起こりにくくなる。
一方、第2保護層を設ける場合、第2保護層は、記録層の変形抑制のために、通常その厚さは1nm以上、好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。また、繰り返し記録に伴って発生する第2保護層内部の微視的な塑性変形の蓄積を防止し、再生光の散乱によるノイズ上昇を抑制するため、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。
なお、記録層および保護層の厚みは、機械的強度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う干渉効果も考慮して、レーザー光の吸収効率が良く、記録信号の振幅が大きく、すなわち記録状態と未記録状態のコントラストが大きくなるように選ばれる。
保護層は、前述のような異なる材料からなる複数の層で構成されていても良い。特に、記録層と接する側の界面、及び/又は、Agを主成分とする反射膜と接する側の界面に、硫黄を含まないか又は硫黄含有量の少ない界面層を設けることが好ましい。
保護層は、通常、公知のスパッタリング法によって製造すればよい。
(C−2)保護層の好ましい態様
本発明に用いる情報記録用媒体においては、上記一般式(1)で示す組成(以下、「上記一般式(1)で示す組成」を「所定の組成」という場合がある。)を用いる記録層に接して保護層Aを有し、前記保護層Aが金属酸硫化物又は金属窒化物を含有することが好ましい。
本発明の情報記録用媒体を相変化型の光学的情報記録用媒体として用いる場合、保護層の材料としては、通常(ZnS)80(SiO220が用いられる。これは、この材料が、透明性、従来記録層に対する密着性、スパッタ速度、価格等において優れているからである。
しかし、高速記録消去が可能となる所定の組成を有する記録層に対して上記(ZnS)80(SiO220の保護層を用いると、繰り返し記録耐久性をより改善したいという課題が発生する場合があるようである。これは、低速記録用媒体の場合と比較して、高速記録用媒体での記録消去においては急激な温度変化を伴うようになることが原因の一つと考えられる。例えば、記録線速度が2倍になった場合、レーザー光を照射して記録層を昇温する時間は1/2となる上、冷却速度も急激になる傾向にある。なぜなら、記録層の溶融領域の温度分布は、低線速度で記録を行う場合にはなだらかとなる一方で、高線速度で記録を行う場合には急峻となる傾向にあるからである。さらに、溶融された領域とレーザー光との位置関係が、低線速度で記録を行う場合と比較して高線速度での記録においては、相対的に遠ざかる傾向にあるからである。もちろん、上記繰り返し記録耐久性が十分とならない原因としては、溶融、凝固に伴う物質移動に関する性質の相違等、記録層材料自身に関係する原因や、従来記録材料と組み合わせた場合で報告されているような硫黄等の原子拡散がさらに起こりやすくなっている原因も考えられる。
本発明においては、所定の組成の記録層材料を含有する記録層に接して、金属窒化物として例えばGeNを、金属酸硫化物として例えばYSを含有する保護層Aを設けることにより、情報記録用媒体の繰り返し記録耐久性のさらなる改善が期待される。GeN等の金属窒化物又はYS等の金属酸硫化物を含有する保護層Aを設けることにより繰り返し記録耐久性の改善が期待される理由は必ずしも明らかではないが、従来と比較して高速記録を行うことによる記録層の急激な温度変化による変形や記録層の物質移動や層間の原子拡散等の抑制効果が発揮されるためと考えられる。
(1)保護層A
本発明においては、記録層と接する保護層Aに金属酸硫化物又は金属窒化物を含有させることが好ましい。もちろん、金属酸硫化物と金属窒化物とを併用してもよい。以下さらに詳細に説明する。
(1−1)金属酸硫化物を含有する保護層A
本発明においては、金属酸硫化物を含有する保護層Aを用いることが好ましい。金属酸硫化物を含有するとは、保護層中の構成元素が、金属酸硫化物の形態を維持して存在することを意味する。
本発明においては、特定の組成を有する記録層に金属酸硫化物を含有する保護層Aを接して設けることにより、情報記録用媒体を繰り返し記録した場合の耐久性がさらに向上することが期待される。この理由は、未だ明確ではないが、金属酸硫化物を含有する保護層Aの熱伝導性および硬度が高いこと、構成元素の分布の均一性が高いことに関係していると考えられる。すなわち、本発明における保護層Aは、従来から一般的に使用されているZnS−SiO2膜に代表される様に、ZnSを主成分とする複合誘電体を用いる保護層と比較し、熱伝導率および硬度が高い。一方、保護層Aの屈折率は、組成比にもよるものの、通常1.7〜2.4程度であり、ZnSを主成分とする複合誘電体を用いる保護層とほぼ同等になる。
そして、金属酸硫化物を含有する保護層Aの熱伝導率が高いため、記録層の熱膨張による変形は小さくなると考える。すなわち、保護層Aの熱伝導率が高いため、レーザーにより記録マークが形成される際に昇温された記録層の熱を早く逃がすことが可能となる。このため、保護層Aの記録層に接している界面領域と記録層から離れた保護層Aの領域との温度差、または、マーク形成領域とその周囲の領域との温度差をいち早く解消できる。その結果、温度差起因の膜剥離やクラックの発生が抑制されるようになる。換言すれば、オーバーライト劣化を遅らせることが出来ると考えられる。熱伝導率は作成したディスクにおいて非晶質マークを形成する時のレーザーパワーの値から間接的に知ることが出来る。すなわち、熱伝導率が大きいほど記録層の昇温に必要なレーザーパワーは大きくなる傾向がある。例えば、金属酸硫化物を含有する保護層Aを用いた場合、ZnS:SiO2=80:20(mol%)の保護層を用いた場合と比較して、マーク形成に必要なレーザーパワーが高くなる傾向にあるが、これは、高い熱伝導率のために保護層Aの放熱層としての働きが増しているためである。
そして、ZnS:SiO2=80:20(mol%)を用いた保護層のJISヌープ硬度が280程度であるのに対し、金属酸硫化物として例えばY22Sを用いた保護層AのJISヌープ硬度は520程度である。高い硬度を有する保護層Aは、記録層の変形を防止する上で重要である。硬度が低い場合は、記録・消去に伴う記録層の体積変化、すなわち、非晶質−結晶間での体積差に起因する変形を適切に抑えることが難しく、繰り返しオーバーライト回数に伴い蓄積され、やがては信号強度の低下をもたらす。
さらに、金属酸硫化物を含む保護層Aは金属原子が硫黄とも酸素とも結合しているので、硫黄と酸素との混合性が、ZnS−SiOやZnS−Yの様な硫化物と酸化物の混合物を用いる保護層とは比較にならない程に高い。そのため、保護層Aは、硫黄、酸素、及びセレン原子等の金属原子の分散性が従来のZnS−SiO2よりも高いために、安定した高い特性を発揮していると考えられる。このため、繰り返しオーバーライト中に保護層から記録層へ硫黄が拡散して反射率低下や結晶化速度の変化が生じる現象も抑制されると推測される。
また、本発明に用いる所定の組成の記録層に、例えばYS等の金属酸硫化物を含有する保護層Aを接して設けた場合、保護層AにGeN等の金属窒化物を含有させる場合と比較して、情報記録用媒体の信号振幅が大きくなる傾向にある。この理由は明らかではないが、記録層の結晶成長の性質が、記録層に接する保護層Aによって多少変わり、形成される非晶質マークの大きさが異なる等の理由が考えられる。なお、このような性質は記録層材料と保護層Aの材料の組み合わせにより決まるものと思われるが、従来の記録層材料においては接する保護層Aの材料による信号強度の変化は注目されていなかった。
金属酸硫化物に使用する金属元素としては、Sc、イットリウム、及びLaやCeといったランタノイド元素等の希土類金属元素;Ti等の遷移金属元素;などが挙げられる。これらの中では、希土類金属元素が好ましく、イットリウム及びLa、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dyから成る群から選択される希土類金属元素が特に好ましい。イットリウムの酸硫化物(YS)は、1000℃程度までY23やY23より熱化学的に安定なので、最も好ましい元素はイットリウムである。
金属酸硫化物の保護層A中の含有量は、好ましくは5mol%以上、更に好ましくは10mol%以上、最も好ましくは15mol%以上とする。金属酸硫化物の含有量が少なすぎると、オーバーライト特性が低下することがある。一方、繰り返しオーバーライト特性等の観点からは、金属酸硫化物の保護層A中の含有量多ければ多いほど好ましく、保護層A中での金属酸硫化物の含有量は100mol%以下とすればよい。
また、金属酸硫化物を構成する金属元素の保護層A中の含有量は、通常10原子%以上、好ましくは20原子%以上、更に好ましくは25原子%以上とする。金属酸硫化物を構成する金属元素の含有量は保護層A中の金属酸硫化物の含有量を示す指標となるため、上記金属元素が少なすぎると、オーバーライト特性のさらなる改善の効果が十分とならないことがある。一方、繰り返しオーバーライト特性等の観点からは、保護層A中での金属酸硫化物の含有量が多ければ多いほど好ましいので、金属酸硫化物を構成する金属元素の含有量の上限は、保護層Aが全て金属酸硫化物で構成されるときの上記金属元素の含有量となる。
また、保護層Aは、金属酸硫化物と他の材料と併用してもよい。他の材料としては、保護層に一般的に用いる材料ならば特に制限されない。例えば、一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物等の誘電体を用いることができる。
この場合、これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。繰り返し記録特性を考慮すると誘電体の混合物が好ましい。
また、保護層Aに含有させる材料としては、通常、誘電体材料を挙げることができる。誘電体材料としては、例えば、Sc、Y、Ce、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Cr、In、Si、及びGe等の酸化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、及びSn等の窒化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、及びSi等の炭化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。また、誘電体材料としては、Zn、Y、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBi等の硫化物、セレン化物もしくはテルル化物、Y,及びCe等の酸硫化物、Mg、Ca等のフッ化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。
より具体的には、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、希土類酸化物、希土類硫化物、希土類フッ化物、フッ化マグネシウム等に代表される、金属又は半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物またはフッ化物を例示することが出来る。この中でも、特に好ましいのは、記録層との密着性に優れる、硫化亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛化合物である。その結果、より安定で高い耐久性を得ることが出来る。
金属酸硫化物以外に保護層A中に他の材料を含有させる場合、この材料の含有量は、通常99mol%以下、好ましくは90mol%以下とする。一方、通常1mol%以上、好ましくは5mol%以上とする。
ただし、混合する材料の種類によって、適切な含有量は変化する。例えば、上記材料として硫化亜鉛を用いる場合は、その含有量は多量でも問題はなく、通常、20mol%以上、好ましくは30mol%以上、更に好ましくは50mol%以上、最も好ましくは60mol%以上とする。
一方、上記材料として酸化亜鉛を用いる場合、あまりに多い含有量は好ましくない傾向にあり、通常30mol%以下、好ましくは20mol%以下、更に好ましくは10mol%以下とする。また、酸化亜鉛のモル含有量は、金属酸硫化物のモル含有量の半分以下であるのがより好ましい。
特に好ましい保護層A組成として、Y22SとZnSとを含む混合組成を挙げることができる。この場合、特に優れたオーバーライト特性を得ることが出来る。この場合の、Y22Sに対するZnSとのモル比は、通常1%以上、好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上であり、また通常1000%以下、好ましくは700%以下、更に好ましくは500%以下である。
なお、保護層A中に金属状の亜鉛を存在させることも可能である。但し、上述の酸化亜鉛や硫化亜鉛の様な亜鉛化合物の形態で含有する方が好ましい。
本発明における保護層Aの純度(保護層A中の金属酸硫化物の含有量、又は、金属酸硫化物と他の材料との混合物の含有量)は90mol%以上が好ましい。純度は高いほど好ましいが、10モル%を下回る量の不純物の保護層Aの特性に及ぼす影響は、無視できるほど小さい。特に、不純物が安定な化合物である場合には悪影響は小さいが、不純物が10モル%を超えると膜の硬度や応力といった物性値が変わる可能性が高く保護層Aの特性が劣化する恐れがある。
金属酸硫化物を含有する保護層Aは、金属酸硫化物を含有するターゲットを使用してスパッタリング法によって成膜することによって形成することが出来る。通常は、前記保護層Aで好ましいとした組成と略同一の組成範囲のターゲットを使用する。
すなわち、スパッタリング用のターゲットとして、金属酸硫化物を含有するものを使用することが好ましい。ターゲットに使用する金属酸硫化物の金属元素の種類は、保護層Aの組成に合わせて適宜選択される。
また、保護層Aが金属酸硫化物と他の保護層材料とを含有する場合、使用する他の材料の組成に対応させて、金属酸硫化物と上記他の材料との混合物のターゲットを使用することが出来る。また、金属酸硫化物のターゲットと前記他の材料のターゲットを別々に用意し、これらを同時にスパッタすることも出来る。
ターゲット中における金属酸硫化物の含有量は、通常10mol%以上、好ましくは30mol%以上、より好ましくは50mol%以上とする。ターゲット中における金属酸硫化物の含有量が過度に小さいと、金属酸硫化物がターゲット中で分解し、保護層A中に金属酸硫化物を含有させることができなくなる場合がある。一方、ターゲット中における金属酸化物の含有量は、用いる上記他の保護層材料の含有量に応じて変化することとなる。但し、金属酸硫化物単体からなるターゲットを用いる場合にはターゲット中の金属酸硫化物の含有量を、通常100mol%とする。
ターゲット中に金属酸硫化物が含有されているか否かは、ターゲットのX線回折を測定することによって確認することができる。
また、金属酸硫化物を含有するターゲットは、通常、金属酸硫化物の粉末又は、同一金属の酸化物と硫化物の混合粉末を用いてホットプレス法等の公知の方法を用いて製造される。ここで用いる金属元素として好ましいのは、希土類金属元素である。
スパッタリング時の条件は、公知の条件を用いればよい。
保護層Aの組成の分析は、一般に、オージェ電子分光法(AES)、ラザーフォード・バック・スキャッタリング法(RBS)、誘導結合高周波プラズマ分光法(ICP)等を組み合わせて同定することができる。
(1−2)金属窒化物を含有する保護層A
本発明においては、保護層Aとして金属窒化物を含有する保護層を用いることもまた好ましい。
金属窒化物は、金属酸硫化物と同様に熱伝導率が高い傾向にあるため、上記金属酸硫化物を含有する場合において説明したものと同様に、保護層Aの熱伝導率が高くなることによって、温度差起因の膜剥離やクラックの発生が抑制されるようになり、オーバーライト劣化を遅らせることができるようになると考えられる。
金属窒化物に用いる金属としては、例えば、Si、Ge、Al、Ti、Ta、Cr、Mo、Nb、Zr、及びHfからなる群から選ばれる元素の少なくとも1つを挙げることができる。これら元素の窒化物は安定であるため、情報記録用媒体の保存安定性が向上する傾向となる。上記元素は複数用いることもできる。上記元素として好ましくは、より透明性が高く密着性に優れたSi、Ge、Al、Crである。
上記元素の種類を1つ用いる場合、上記元素と窒素とが形成する材料として、上記元素単体の窒化物を挙げることができる。より具体的には、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N等の近傍組成が挙げられるが、これらの中でも、記録層に対する拡散防止効果がより高いという観点からは、Si−N(ケイ素の窒化物)、Ge−N(ゲルマニウムの窒化物)、Al−N(アルミの窒化物)を用いることが好ましく、Ge−N(ゲルマニウムの窒化物)を用いることがより好ましい。
上記元素を2つ以上用いる場合、上記元素と窒素とが形成する材料として、上記元素の複合の窒化物を挙げることができる。このような化合物として代表的にGe−Nを用いた例を示すと、Ge−Si−N、Ge−Sb−N、Ge−Cr−N、Ge−Al−N、Ge−Mo−N、Ge−Ti−N等のように、Geと共に、Al、B、Ba、Bi、C、Ca、Ce、Cr、Dy、Eu、Ga、In、K、La、Mo、Nb、Ni、Pb、Pd、Si、Sb、Sn、Ta、Te、Ti、V、W、Yb、Zn、及びZr等を含有したものが挙げられる。
金属窒化物の保護層A中の含有量は、好ましくは5mol%以上、更に好ましくは10mol%以上、最も好ましくは15mol%以上とする。金属窒化物の含有量が少なすぎると、オーバーライト特性が低下することがある。一方、繰り返しオーバーライト特性等の観点からは、金属窒化物の保護層A中の含有量多ければ多いほど好ましく、保護層A中での金属窒化物の含有量は、100mol%以下とすればよい。
また、金属窒化物を構成する金属元素の保護層A中の含有量は、通常10原子%以上、好ましくは20原子%以上、更に好ましくは25原子%以上とする。金属窒化物の含有量が少なすぎると、オーバーライト特性のさらなる改善の効果が十分とならないことがある。一方、繰り返しオーバーライト特性等の観点からは、保護層A中での金属窒化物の含有量が多ければ多いほど好ましいので、金属窒化物を構成する金属元素の含有量の上限は、保護層Aが全て金属窒化物で構成されるときの上記金属元素の含有量となる。
また、保護層Aは、金属窒化物と他の材料と併用してもよい。他の材料やその含有量としては、上記金属酸硫化物を含有する保護層Aで説明した材料と同様のものを用いればよい。
本発明における保護層Aの純度(保護層A中の金属窒化物の含有量、又は、金属窒化物と他の材料との混合物の含有量)は90mol%以上が好ましい。純度は高いほど好ましいが、10モル%を下回る量の不純物の保護層Aの特性に及ぼす影響は、無視できるほど小さい。特に、不純物が安定な化合物である場合には悪影響は小さいが、不純物が10モル%を超えると膜の硬度や応力といった物性値が変わる可能性が高く保護層Aの特性が劣化する恐れがある。
金属窒化物を含有する保護層Aは、金属窒化物を含有するターゲットを使用してスパッタリング法によって成膜することによって形成することが出来る。また、保護層Aは、真空チャンバー内で微量のAr、Nの混合ガスを流し、所定の真空圧力にして、所定の金属(保護層Aに含有される金属窒化物における金属元素単体又は金属元素の複合)からなるターゲットに電圧を加え放電させ弾きだされた金属元素単体または金属元素の複合をNで反応させ窒化物にして成膜する反応性スパッタリング法により形成してもよい。ここで留意すべき事項は、保護層A中の窒素含有量が過度に少ないと保護層Aの透明性が確保しにくくなることと、窒素含有量が過度に多すぎると光学的情報記録用媒体の繰り返し記録耐久性の改善が不十分になることである。このため、上記反応性スパッタリング法を用いる場合は、窒素流量の調整が重要である。また、スパッタ時の圧力も膜質に影響を与える。通常、圧力を低くすることにより、保護層Aを緻密に形成することができる。
保護層Aの組成の分析は、一般に、オージェ電子分光法(AES)、ラザーフォード・バック・スキャッタリング法(RBS)、誘導結合高周波プラズマ分光法(ICP)等を組み合わせて同定することができる。
(1−3)保護層Aの膜厚
保護層Aの膜厚の好ましい範囲は、保護層Aが用いられる位置によって異なる。
すなわち、保護層Aを第1保護層として設ける場合、第1保護層は、熱による基板変形等を抑制する必要があるため、その厚さは通常1nm以上、好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。このようにすれば、繰り返し記録中の微視的な基板変形の蓄積が抑制され、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなるということがなくなる。
一方、第1保護層の厚みは、成膜に要する時間の関係から、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。このようにすれば、記録層平面で見た基板の溝形状が変わるということがなくなる。すなわち、溝の深さや幅が、基板表面で意図した形状より小さくなったりする現象が起こりにくくなる。
保護層Aを第2保護層として設ける場合、第2保護層は、記録層の変形抑制のために、通常その厚さは1nm以上、好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。また、繰り返し記録に伴って発生する第2保護層内部の微視的な塑性変形の蓄積を防止し、再生光の散乱によるノイズ上昇を抑制するため、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。
但し、本発明においては、一般に熱伝導率が高くかつ硬度の大きい保護層Aを記録層に接して設けるため、記録層に対してレーザー光が入射する側に位置する保護層Aの膜厚を薄くできることは、上記記録層の説明において説明した通りである。すなわち、レーザー光が入射する側の記録層面に保護層Aを接して設けた場合に、保護層Aの膜厚を50nm以下とすることが好ましい。
なお、YS等の金属酸硫化物等を主成分とする材料のスパッタレートは、従来から用いられている(ZnS)80(SiO220等の材料のスパッタレートと比較して、遅くなる傾向にある。このため、情報記録用媒体の生産性を高める観点から、金属酸硫化物等を含有する保護層Aを記録層に接して比較的薄く設け、この保護層Aに保護層Bを接して設けてもよい。そして、保護層Bに、従来から用いられている材料(例えば、(ZnS)80(SiO220)を用いてもよい。このような情報記録用媒体の具体的な態様の詳細については後述する。
このように、保護層Aと保護層Bとを用いて多層化を行う場合、本発明における保護層Aの膜厚は通常0.1nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上、特に好ましくは5nm以上とする。一方、保護層Aの膜厚は、通常100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは25nm、更に好ましくは10nm以下である。
(1−4)保護層Aと記録層との位置
本発明においては、金属酸硫化物又は金属窒化物を含有する保護層Aが、記録層に接して設けられることが好ましい。より好ましいのは、記録層の両面に上記所定の保護層Aを設けることである。記録層の両面に上記所定の保護層Aを設けることにより、繰り返しオーバーライト特性をより向上させることができるようになるからである。一般的に、記録層の両面に上記所定の保護層Aを設けることにより、記録層と保護層Aとが剥離しやすい傾向となるが、本発明における所定の組成を用いた記録層においては、上記剥離の問題が起きにくいと考えられる。
例えば、従来のSbTe共晶(Sb70Te30)組成の記録層に接してYS等の金属酸硫化物を含有する保護層Aを設けると、耐環境試験での膜剥離が起きる傾向にある。この傾向は、記録層の両面に上記保護層Aを設けるとより顕著になる。例えば、従来SbTe共晶系組成を用いた記録層においては、記録層の両面に接してYS等の金属酸硫化物を含有する保護層Aを設けると高湿度を伴う耐環境試験で膜剥離が生じ、膜の密着性、耐候性は必ずしも十分とはならない傾向にある。
(2)保護層B
光学的情報記録用媒体の好ましい層構成の他の一例としては、第1保護層及び第2保護層のいずれか一方又は両方を保護層A及び保護層Bの2層構造とすることである。繰り返しオーバーライト等の観点から、レーザー光の入射側に位置する第1保護層を2層構造とすること(図6(a)、図6(b))が好ましく、第1保護層及び第2保護層をともに、保護層A及び保護層Bの2層構造とすること(図7(a)、図7(b)参照)がより好ましい。
なお、上記好ましい層構成においては、第1保護層や第2保護層を保護層Aと保護層Bとの2層構造としているが、保護層Aが記録層に接して設けられている限り、このような態様に限定されるわけではない。例えば、さらに別の材料で形成した保護層を保護層Bに接して設けることにより、第1保護層や第2保護層を3層以上に多層化することも適宜行うことができる。
(2−1)保護層Bの材料、製造方法等
保護層Bの材料は、保護層に一般的に用いられる材料を適宜用いればよい。このような材料については既に説明したので、ここでの説明は省略する。なお、保護層AとBは、異なる材料からなる2層となっていてもよいし、それぞれの成分が徐々に変化する傾斜組成を有していても良い。
また、保護層Bの製造方法についても、保護層に一般的に用いられている製造方法を用いればよい。
(2−2)保護層Bの膜厚
保護層Bは保護層Aに接し、保護層A及び保護層Bの2層構造で保護層としての役割を果たす。このため、保護層Bの膜厚は、一般的に保護層に必要とされる膜厚から保護層Aの膜厚を減じた膜厚となる。
但し、本発明においては、一般に熱伝導率が高くかつ硬度の大きい保護層Aを記録層に接して設けるため、記録層に対してレーザー光が入射する側に位置する保護層の膜厚(例えば、保護層を保護層Aのみで形成する場合は保護層Aの膜厚、保護層Aと保護層Bとを積層して保護層を形成する場合は保護層Aと保護層Bとの合計膜厚)を薄くできることは、上記記録層の説明において説明した通りである。
すなわち、レーザー光が入射する側の記録層面に、保護層Aが接して設けられてなり、さらにこの保護層Aに保護層Bが接して設けられている場合に、保護層Aの膜厚と保護層Bの膜厚との合計膜厚を50nm以下とすることが好ましい。
上記の通り、保護層Aと保護層Bとを用いて多層化を行う場合、本発明における保護層Aの膜厚は通常0.1nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上、特に好ましくは5nm以上とする。一方、保護層Aの膜厚は、通常100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは25nm、更に好ましくは10nm以下である。このため、保護層Bの膜厚は、保護層の全膜厚のうち、保護層Aを除く残部とすればよい。
なお、記録層及び保護層の厚みは、機械的強度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う干渉効果も考慮して、レーザー光の吸収効率がよく、記録信号の振幅が大きく、すなわち記録状態と未記録状態のコントラストが大きくなるように選ばれる。
(D)反射層
光学的情報記録用媒体においては、さらに反射層を設けることができる。本発明においては、記録層の放熱性を高める観点から、光学的情報記録用媒体がさらに反射層を有することが好ましい。
反射層の設けられる位置は、通常再生光の入射方向に依存し、入射側に対して記録層の反対側に設けられる。すなわち、基板側から再生光を入射する場合は、基板に対して記録層の反対側に反射層を設けるのが通常であり、記録層側から再生光を入射する場合は記録層と基板との間に反射層を設けるのが通常である(図1(a)、(b)参照)。
反射層に使用する材料は、反射率の大きい物質が好ましく、特に放熱効果も期待できるAu、AgまたはAl等の金属が好ましい。その放熱性は膜厚と熱伝導率で決まるが、熱伝導率は、これら金属ではほぼ体積抵抗率に比例するため、放熱性能を面積抵抗率で表すことができる。面積抵抗率は、通常0.05Ω/□以上、好ましくは0.1Ω/□以上、一方、通常0.6Ω/□以下、好ましくは0.5Ω/□以下、より好ましくは0.4Ω/□以下、さらに好ましくは0.2Ω/□以下とする。
これは、特に放熱性が高いことを保証するものであり、光学的情報記録用媒体に用いる記録層のように、非晶質マーク形成において、非晶質化と再結晶化の競合が顕著である場合に、再結晶化をある程度抑制するために必要なことである。反射層自体の熱伝導度制御や、耐腐蝕性の改善のため上記の金属にTa、Ti、Cr、Mo、Mg、V、Nb、Zr、Si等を少量加えてもよい。添加量は通常0.01原子%以上20原子%以下である。TaおよびTiの少なくとも一方を15原子%以下含有するアルミニウム合金、特に、Alα Ta1-α(0≦α≦0.15)なる合金は、耐腐蝕性に優れており、光学的情報記録用媒体の信頼性を向上させる上で特に好ましい反射層材料である。
なお、第2保護層の膜厚を40nm以上50nm以下とする場合には特に、反射層を高熱伝導率にするため、含まれる添加元素を2原子%以下とするのが好ましい。
反射層の材料として特に好ましいのは、Agを主成分とすることである。「Agを主成分とする」とは、反射層全体に対してAgが50原子%以上含有されていることをいう。反射層全体に対するAgの含有量は、70原子%以上とすることが好ましく、80原子%以上とすることがより好ましく、90原子%以上とすることがさらに好ましく、95原子%以上とすることが特に好ましい。放熱性を高める観点から最も好ましいのは、反射層の材料を純Agとすることである。
Agを主成分とすることが好ましい理由は以下のとおりである。すなわち、長期保存した記録マークを再度記録すると、保存直後の第一回目の記録だけ、相変化記録層の再結晶化速度が速くなる現象が発生する場合がある。このような現象が発生する理由は不明であるが、この保存直後における記録層の再結晶化速度の増加により、保存直後の第一回目の記録で形成した非晶質マークの大きさが所望するマークの大きさよりも小さくなるのではないかと推測される。したがって、このような現象が発生する場合には、反射層に放熱性が非常に高いAgを用いて記録層の冷却速度を上げることにより、保存直後における第一回目の記録時の記録層の再結晶化を抑制して非晶質マークの大きさを所望の大きさに保つことができるようになる。
AgにMg、Ti、Au、Cu、Pd、Pt、Zn、Cr、Si、Ge、Bi、希土類元素のいずれか一種を0.01原子%以上10原子%以下含むAg合金も反射率、熱伝導率が高く、耐熱性も優れていて好ましい。
反射層の膜厚としては、透過光がなく完全に入射光を反射させるために通常10nm以上とするが、20nm以上とすることが好ましく、40nm以上とすることがより好ましい。また、あまりに厚すぎても、放熱効果に変化はなくいたずらに生産性を悪くし、また、クラックが発生しやすくなるので、通常は500nm以下とするが、400nm以下とすることが好ましく、300nm以下とすることがより好ましい。
記録層、保護層および反射層は、通常スパッタリング法などによって形成される。
記録層用ターゲット、保護層用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で膜形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からも優れている。
(E)保護コート層
光学的情報記録用媒体の最表面側には、空気との直接接触を防いだり、異物との接触による傷を防ぐため、紫外線硬化樹脂や熱硬化型樹脂からなる保護コート層を設けるのが好ましい。保護コート層は通常1μmから数百μmの厚さである。また、硬度の高い誘電体保護層をさらに設けたり、その上にさらに樹脂層を設けることもできる。
(光学的情報記録用媒体の初期結晶化方法)
記録層は通常スパッタリング法等の真空中の物理蒸着法で成膜されるが、成膜直後の状態(as-deposited状態)では、記録層は通常非晶質であるため、本発明ではこれを結晶化させて未記録消去状態とすることが好ましい。この操作を初期化(または初期結晶化)と称する。初期結晶化操作としては、例えば、結晶化温度(通常150〜300℃)以上融点以下での固相でのオーブンアニールや、レーザー光やフラッシュランプ光などの光エネルギー照射でのアニール、溶融初期化などの方法が挙げられる。本発明においては、結晶核生成の少ない相変化記録材料を用いるため、上記初期結晶化操作のうち、溶融初期化を用いることが好ましい。
溶融初期化においては、再結晶化の速度が遅すぎると熱平衡を達成するための時間的余裕があるために他の結晶相が形成されることがあるので、ある程度冷却速度を速めるのが好ましい。また、溶融状態で長時間保持されると、記録層が流動したり、保護層等の薄膜が応力で剥離したり、樹脂基板等が変形するなどして、媒体の破壊につながるので好ましくない。
例えば、融点以上に保持する時間は、通常10μs以下、好ましくは1μs以下とすることが好ましい。
また、溶融初期化には、レーザー光を用いるのが好ましく、特に、走査方向にほぼ平行に短軸を有する楕円型のレーザー光を用いて初期結晶化を行う(以下この初期化方法を「バルクイレーズ」と称することがある)のが好ましい。この場合、長軸の長さは、通常10〜1000μmであり、短軸の長さは、通常0.1〜5μmである。
なお、ここでいうビームの長軸及び短軸の長さは、ビーム内の光エネルギー強度分布を測定した場合の半値幅から定義される。このビーム形状も短軸方向における局所加熱、急速冷却を実現しやすくするため、短軸長を5μm以下、さらには2μm以下とすることがより好ましい。
レーザー光源としては、半導体レーザー、ガスレーザー等各種のものが使用できる。レーザー光のパワーは通常100mWから10W程度である。なお、同等のパワー密度とビーム形状が得られるならば、他の光源を使用してもかまわない。具体的にはXeランプ光等が挙げられる。
バルクイレーズによる初期化において、例えば円盤状の記録媒体を使用した際、楕円ビームの短軸方向をほぼ円周方向と一致させ、円盤を回転させて短軸方向に走査するとともに、1周(1回転)ごとに長軸(半径)方向に移動させて、全面の初期化を行うことができる。こうすることで、周方向のトラックに沿って走査される記録再生用集束光ビームに対して、特定方向に配向した多結晶構造を実現できる。
1回転あたりの半径方向の移動距離は、ビーム長軸より短くしてオーバーラップさせ、同一半径が複数回レーザー光ビームで照射されるようにするのが好ましい。その結果、確実な初期化が可能となると共に、ビーム半径方向のエネルギー分布(通常10〜20%)に由来する初期化状態の不均一を回避することができる。一方、移動量が小さすぎると、かえって前記他の好ましくない結晶相が形成されやすいので、通常半径方向の移動量は、通常ビーム長軸の1/2以上とする。また、初期化エネルギービームの走査速度は、通常3〜20m/s程度の範囲である。
少なくとも、溶融初期化によって本発明の光学的情報記録用媒体を得ることができたかどうかは、初期化後の未記録状態の反射率R1と、実際の記録用集束光ビーム(例えば、直径が1μm程度の集束光ビーム)で非晶質マークの記録を行った後の再結晶化による消去状態の反射率R2と、が実質的に等しいかどうかで判断できる。ここでR2は、10回記録後の消去部の反射率である。
したがって、本発明の光学的情報記録用媒体は、初期結晶化後の未記録部の反射率R1、10回記録後の消去部の反射率をR2とするとき、下記関係式(3)を満たすことが好ましい。
Figure 0004330470
ここで、10回記録後の消去部の反射率R2を判断指標とする理由は、10回の記録を行えば、1回の記録だけでは未記録状態のまま残りうる結晶状態反射率の影響を除去し、光学的情報記録用媒体全面を少なくとも1回は記録・消去による再結晶化した状態とすることができるからである。一方、記録の回数が10回を大きく超えると逆に、繰り返し記録による記録層の微視的変形や、保護層から記録層への異元素の拡散等、記録層の結晶構造の変化以外の要因が反射率変化を引き起こすため、所望の結晶状態が得られたか否かの判断が困難となるからである。
上記関係式(3)においては、ΔRが10%以下なるようにしているが、5%以下とすることが好ましい。5%以下とすれば、より信号ノイズの低い光学的情報記録用媒体を得ることができる。
例えば、R1が17%程度の光学的情報記録用媒体では、概ねR2が16〜18%の範囲にあればよい。
なお、上記消去状態は、必ずしも記録用集束レーザー光を実際の記録パルス発生方法に従って変調しなくても、記録パワーを直流的に照射して記録層を溶融せしめ、再凝固させることによっても得られる。
本発明において記録層に用いる相変化記録材料に対して、所望の初期結晶状態を得るには、この初期化エネルギービームの記録層平面に対する走査速度の設定が特に重要である。基本的には、初期結晶化後の結晶状態が記録後の消去部分の結晶状態と類似することが重要であるから、集束光ビームを使って実際に記録する場合の集束光ビームの記録層面に対する相対的な走査線速度に近いことが望ましい。具体的には、光学的情報記録用媒体の記録を行う最高線速度の20〜80%程度の線速度で初期化エネルギービームを走査する。
なお、記録の最高線速度とは、例えば、ここではその線速度で消去パワーPeを直流的に照射したときに、消去比が20dB以上となるような線速度をいう。
消去比は、概ね単一周波数で記録された非晶質マークの信号のキャリアレベルとPeの直流照射による消去後のキャリアレベルとの差として定義される。消去比の測定は例えば以下のように行う。まず、十分な信号特性(すなわち反射率や信号振幅またはジッタなどが規定値を満たす特性)が得られる記録条件において、記録する変調信号のなかで周波数の高い条件を選び単一周波数として10回記録して非晶質マークをつくり、キャリアレベル(記録時C.L.)を測定する。その後、非晶質マークに対して直流照射を1回、消去パワーPeを変えながら行い、このときのキャリアレベル(消去後C.L.)を測定し、記録時C.L.と消去後C.L.の差、すなわち消去比を算出する。直流照射のパワーPeを変更すると消去比は一般に一度大きくなり、下がり、また大きくなる傾向があるが、ここではパワーPeを大きくし始めたときにみられる消去比のはじめのピーク値をそのサンプルの消去比とする。
初期化エネルギービームの走査速度は、上記のように規定された最高線速度の概ね20%より低い速度で初期化エネルギービームを走査すると相分離が生じて単一相が得られにくかったり、単一相であっても、結晶子が特に初期化ビーム走査方向に伸びて巨大化したり、好ましくない方向に配向したりする。好ましくは、記録可能な最高線速度の30%以上の速度で初期化エネルギービームを走査すればよい。
一方、記録可能な最高線速度と同等、すなわち概ねその80%より高い速度で初期化エネルギービームを走査した場合、初期化走査で一旦溶融した領域が再度非晶質化してしまうので好ましくない。走査線速度を速くすると溶融した部分の冷却速度は速くなり、再固化までの時間が短くなるからである。記録用の直径1ミクロン程度の集束光ビームでは、溶融領域周辺の結晶領域からの結晶成長による再結晶化は短時間でも完了できる。しかし、初期化楕円光ビームで走査した場合は、長軸方向の溶融領域面積が広くなるため、実際の記録時よりは、走査線速度を低くして、再凝固中の再結晶化を溶融領域全域に行き渡らせる必要がある。このような観点から、初期化エネルギービームの走査線速度は、記録の最高線速度の70%以下とすることが好ましく、60%以下とすることがより好ましく、50%より低くすることが最も好ましい。
本発明の光学的情報記録用媒体は、レーザー光の照射により初期結晶化を行う場合、レーザー光に対する媒体の移動速度を大きくすることが可能であるという特徴を有する。これは、短時間での初期結晶化が可能であるということに結びつき、生産性の向上やコスト削減が可能となる点で好ましい。
(光学的情報記録用媒体の記録再生方法)
本発明の光学的情報記録用媒体に使用できる記録再生光は、通常半導体レーザーやガスレーザーなどのレーザー光であって、通常その波長は300〜800nm、好ましくは350〜800nm程度である。特に1Gbit/inch以上の高面記録密度を達成するためには、集束光ビーム径を小さくする必要があり、波長350から680nmの青色から赤色のレーザー光と開口数NAが0.5以上の対物レンズを用いて集束光ビームを得ることが望ましい。
本発明では、前記のように、通常、非晶質状態を記録マークとすることが好ましい。また、本発明では、マーク長変調方式によって情報を記録するのが有効である。これは、特に最短マーク長が4μm以下、特に1μm以下となるマーク長記録の際に特に顕著である。
記録マークを形成する際、従来の記録光パワーの2値変調方式による記録を行うこともできるが、本発明においては下記のような記録マークを形成する際にオフパルス期間を設ける3値以上の多値変調方式による記録方法を採用することが特に好ましい。
図2は、光学的情報記録用媒体の記録方法における記録光のパワーパターンを示す模式図である。長さnT(Tは基準クロック周期、nはマーク長変調記録において取りうるマーク長であり、整数値である)にマーク長変調された非晶質マークを形成する際、m=n−k(ただしkは0以上の整数)個の記録パルスに分割し、個々の記録パルス幅をαT(1≦i≦m)とし、個々の記録パルスにβT(1≦i≦m)なる時間のオフパルス区間を付随させる。なお、図2の分割記録パルスにおいては、図の見やすさの観点から、基準クロック同期Tの表記を省略してある。つまり、図2において、例えばαTと記載すべきところは、単にαと記載してある。ここでα≦β、あるいはα≦βi−1(2≦i≦mないしはm−1)とするのが好ましい。なおΣα+Σβは通常nであるが、正確なnTマークを得るためΣαi+Σβ=n+j(jは、−2≦j≦2なる定数)とすることもできる。
記録の際、マーク間においては、非晶質を結晶化しうる消去パワーPeの記録光を照射する。また、αT(i=1〜m)においては、記録層を溶融させるのに十分な記録パワーPwの記録光を照射し、βT(1≦i≦m−1)なる時間においては、Pb<Pe、好ましくはPb≦(1/2)PeとなるバイアスパワーPbの記録光を照射する。
なお、期間βTなる時間において照射する記録光のパワーPbは、βT(1≦i≦m−1)の期間と同様、通常Pb<Pe、好ましくはPb≦1/2Peとするが、Pb≦Peとなっていてもよい。
上記の記録方法を採用することによって、パワーマージンや記録時線速度マージンを広げることができる。この効果は、特にPb≦1/2PeなるようにバイアスパワーPbを十分低くとる際に顕著である。
上記記録方式は、本発明の相変化記録材料を記録層に用いた光学的情報記録用媒体に特に適した方式である。短時間での消去(再結晶化)を確実にするために、Ge量を少なくしていくと、非晶質マーク記録のために必要な臨界冷却速度が極めて高くなり、逆に良好な非晶質マークの形成が困難になってしまうからである。
すなわち、Ge量を減らすことは、非晶質マークの周辺結晶部からの再結晶化を促進するとともに、溶融再凝固時の結晶成長速度をも増加させる。非晶質マーク周辺からの再結晶化速度をある程度以上増加させると、非晶質マーク記録のために形成した溶融領域の再凝固時に溶融領域周辺部からの再結晶化が進行するため、本来であれば非晶質化すべき領域が、非晶質化することなく再結晶化してしまう傾向が強くなるのである。従って、バイアスパワーPbを十分低くしたり、α≦βあるいはα≦βi−1(2≦i≦mないしm−1)として冷却区間を十分確保することが重要となる。
さらに、記録時の線速度が上昇すると、クロック周期が短縮されるためオフパルス区間が短くなって冷却効果が損なわれる傾向が強くなる。このような場合には、nTマーク記録の際に記録パルスを分割し、オフパルスによる冷却区間を実時間にして1nsec以上、より好ましくは、5nsec以上設定することが有効である。
[2−2]情報記録用媒体の光学的情報記録用媒体以外の用途
本発明の情報記録用媒体は、少なくとも光照射による可逆的な相変化記録が可能であるため、光学的情報記録用媒体として用いることが可能であることは、上述したとおりである。しかし、本発明に用いる書き換え型情報記録用媒体は、例えば微少領域に電流を流すことによる相変化記録にも適用できる。この点について以下説明する。
図4は、非晶質マーク記録時の温度履歴(曲線a)、及び再結晶化による消去時の温度履歴(曲線b)の概念図である。記録時には、記録層の温度は、高電圧かつ短パルスの電流または高パワーレベルの光ビームでの加熱によって短時間に融点Tm以上に昇温され、電流パルスもしくは光ビーム照射を切った後は、周辺への放熱により急冷されて非晶質化する。融点Tmから結晶化温度Tgまでの時間τ0における温度の冷却速度が非晶質化のための臨界冷却速度より大きければ、非晶質化される。一方、消去時には、比較的低電圧の印加もしくは低パワーレベルの光エネルギー照射によって、結晶化温度Tg以上、概ね融点Tm以下に加熱され、一定時間以上保持されることで、実質的に固相状態で非晶質マークの再結晶化が進む。すなわち、保持時間τ1が十分であれば、結晶化が完了する。
ここで、記録もしくは消去用のエネルギー印加前の記録層の状態がどのようなものであっても、前記記録層に曲線aの温度履歴を与えれば記録層が非晶質化され、前記記録層に曲線bの温度履歴を与えれば記録層が結晶化される。
本発明に用いる書き換え型情報記録が、光学的情報記録用媒体としてのみでなく、微小領域に電流を流すことによる相変化記録に用いることができる理由は次のとおりである。すなわち、可逆的相変化を生じせしめるのは、あくまで、図4に示すような温度履歴であって、その温度履歴を生じせしめるエネルギー源は、集束光ビームまたは電流加熱(通電によるジュール熱)のいずれでもよいからである。
本発明に用いる相変化記録材料の結晶と非晶質との相変化に伴う抵抗率変化は、現在、不揮発性メモリーとして開発の進んでいるGeTe−Sb Te 疑似2元合金、特に、Ge Sb Te 化合物量論組成合金で示されているような、2桁以上の抵抗率変化に十分匹敵するものである(J.Appl.Phys.,87巻,4130−4133頁,2000年)。すなわち、前記一般式(1)で表されるような組成を主成分とする相変化記録材料を用いた書き換え型情報記録用媒体のas-deposited状態の非晶質状態での抵抗率、及びアニールによる結晶化後の抵抗率をそれぞれ測定したところ、3桁以上の変化が確認される。電流パルスによる非晶質化、結晶化で得られる非晶質、結晶状態は、上記as-deposited状態の非晶質状態、及び上記アニールによる結晶状態とはそれぞれ若干異なるものと考えられる。しかし、上記3桁以上の抵抗率変化が得られることから、本発明に用いる相変化記録材料を電流パルスによって相変化させた場合においても、2桁程度の大きな抵抗率変化は十分生じうるものと期待される。
図5は、このような不揮発性メモリーの1セルの構造を示す断面図である。図5において上部電極1と下部電極2との間に電圧が印加され、相変化記録材料を含有する相変化記録層3(以下、単に相変化記録層3という場合がある。)とヒーター部4とが通電される。相変化記録層3はSiO2等の絶縁体10で覆われている。また、相変化記録層3は、初期状態においては結晶化されている。この場合の初期結晶化は、図5の系全体を記録層の結晶化温度(通常は100−300℃程度)に加熱して行う。集積回路の形成ではこの程度の昇温は普通に行われる。
さて、図5で特に、細くなっている部分4(ヒーター部)は、上部電極1と下部電極2との間の通電により、ジュール熱による発熱が生じやすいため、局所的なヒーターとして機能する。そこに隣接した可逆変化部5が、局所的に加熱され図4の曲線aで示したような温度履歴を経て非晶質化され、また、図4の曲線bで示したような温度履歴を経て再結晶化される。
読み出しは、ヒーター部4の発熱が無視できる程度に低電流を流し、上下の電極間に生じる電位差を読みとる。なお、結晶、非晶質状態間で電気容量にも差があるので、電気容量の差を検知してもよい。
実際には、半導体集積回路形成技術を用いて、さらに集積化したメモリーが提案されている(米国特許6314014号明細書)が、その基本構成は図5に示すものであり、相変化記録層3に、本発明に用いる相変化記録材料を含有させれば、全く同等の機能を実現できる。
なお、図4に示すような温度変化を生じさせるエネルギー源としては、電子ビームを挙げることもできる。電子ビームを用いる記録デバイスの例としては、米国特許5557596号明細書に開示されたような、フィールドエミッタで放出された電子ビームを局所的に照射して相変化記録材料に相変化を生じさせる方法がある。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に本発明の相変化記録材料を光学的情報用記録媒体に適用した実施例を用いて説明するが、その要旨の範囲を越えない限り本発明は光学的情報記録用媒体への応用のみに限定されるものではない。
なお、下記実施例においては、光学的情報記録用媒体を単に「ディスク」、「光ディスク」、「相変化型光ディスク」等と呼ぶ場合がある。
(実施例1〜3、比較例1、2)
光学的情報記録用媒体の記録層に用いた相変化記録材料の組成の測定には酸溶解ICP−AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置)および蛍光X線分析装置を用いた。酸溶解ICP−AESに関しては、分析装置はJOBIN YVON社製JY 38 Sを用い、記録層をdil−HNOに溶解しマトリクスマッチング検量線法で定量した。蛍光X線分析装置は、理学電機工業株式会社のRIX3001を用いた。
[相変化型光ディスクの作製]
溝幅0.31μm、溝深さ29nm、溝ピッチ0.74μmの案内溝を有する直径120mm、0.6mm厚のディスク状ポリカーボネート基板上に、(ZnS)80(SiO20層(80nm)、Sb−Ge−In−M−Te層(13nm)、(ZnS)80(SiO20層(20nm)、Ta層(2nm)、Ag層(200nm)をスパッタリング法により形成し、さらに紫外線硬化樹脂による保護コート層を形成して相変化型光ディスクを作製した。
Sb−Ge−In−M−Te記録層の組成を{(Sb1−xGe1−yIn1−z―wTeで表記した場合のx、y、z、wの値を表1に記載した。
Figure 0004330470
比較例2を除いてこれらの組成は後述の評価条件に適した結晶化速度にほぼ合わせ込んだものである。なお、以下の初期結晶化およびディスク特性の測定では0.6mmのガラス基板を光入射面と反対側に重ねて行った。
[初期結晶化]
これらのディスクは次のように初期結晶化を試みた。すなわち、幅約1μm、長さ約75μmの形状を有する波長810nmパワー800mWのレーザー光を長軸が上記案内溝に垂直になるようにして10m/sで回転させたディスクに照射し、レーザー光を1回転あたり送り量50μmで半径方向に連続的に移動させることにより初期結晶化を試みた。実施例1、2、3、比較例1のディスクは問題なく初期結晶化をすることができた。しかし、比較例2のディスクは結晶化しなかった(反射率変化はしなかった)。線速度を2m/sにしてレーザーパワーを400mW〜1000mWで同様に初期結晶化を試みたが、やはり結晶化はしなかった。したがって比較例2のディスクは実質的に相変化型光ディスクとしての使用は困難であると思われる。比較例2の記録層はTb含有量が多すぎるためと思われる。なお、Ge量を多くすると結晶化はさらに遅くなるため初期結晶化はさらに困難となる。
[ディスク特性]
実施例1、2、3、比較例1のディスクについて、レーザー波長650nm、NA0.65のピックアップを有するパルステック社製光ディスクテスタDDU1000を用い、以下のように案内溝内に記録・消去を行い、ディスク特性を評価した。
線速度14m/sとしてEFM+変調信号を2000回までオーバーライトし、記録回数と記録された信号を再生したときのジッタの関係を測定した。記録時の基準クロック周波数は104.9MHz(基準クロック周期は9.53ns)とし、記録レーザー分割法は以下のとおりとした。
すなわち、長さnT(Tは基準クロック周期で、nは3〜14の自然数)の非晶質マークを形成する際には、マーク形成用レーザー照射時間を図2(b)のように分割し、記録パワーPwを持つ記録パルス、バイアスパワーPbを持つオフパルスを交互に照射した。マーク間部(結晶部)を形成する期間は消去パワーPeを持つ消去光を照射した。図2(b)においてすべてのnに対してm=n−1、α=0.5(1≦i≦m)、β=0.5(1≦i≦m−1)、β=0とした。ここでPw=16mW、Pb=0.8mW、Pe=4.5mWとした。
再生時は線速度を3.49m/sとしてジッタ測定を行った。ジッタは再生線速度での基準クロック周期38.2nsで規格化した。ここで、本発明におけるジッタとは、再生信号をイコライザとLPFを通過させた後に、スライサにより2値化信号とし、該2値化信号のリーディングエッジとトレーリングエッジのPLLクロックに対する時間のずれの標準偏差(ジッタ)を基準クロック周期で規格化したものである。詳細な測定方法は、DVD−ROM規格書やDVD−RW規格書に規定されている。
記録回数(Recording cycle)と記録された信号を再生したときのジッタ(Jitter)の関係を測定した結果を図3に示す。Sb−Ge−In系相変化記録材料を用いた比較例1のディスクは2000回の繰り返し記録によりジッタ値が11%を越え使用が困難になるのに対し、Tb、Gd、Teを添加した実施例1、2、3のディスクは2000回の繰り返し記録後もジッタ値は10%以下であった。比較例1のディスクでは2000回繰り返し記録後に4.5mWのDC光を1回照射し記録マークの消去(結晶化)を試みたところ、オシロスコープでの観察で明らかな消え残りが見られた。一方、実施例1、2、3のディスクでは同様の観察で明らかな消え残りは見られなかった。
(実施例4)
本発明に用いる相変化記録材料に対する電気抵抗の変化による記録の可能性を示すために以下の実験を行った。
すなわち、直径120mmのポリカーボネート基板上に実施例1と同じ組成である50nmの膜厚のGe−In−Sb−Tb非晶質膜をスパッタリングで作製した。
上記非晶質膜の抵抗率の測定をした後、この非晶質膜を結晶化させ、結晶化後の膜の抵抗率を測定した。
初期結晶化のために、幅約1μm/長さ約75μmの形状を有し、波長が810nm、パワーが800mWのレーザー光を用いた。そして、上記基板上に形成されたGe−In−Sb−Tb非晶質膜を12m/sの線速度で回転させながら、上記レーザー光の長軸が上記基板に形成された案内溝に垂直になるようにして、上記レーザー光を上記非晶質膜に照射した。さらに、上記レーザー光を、1回転あたり送り量50μmで半径方向に連続的に移動させることにより初期結晶化を行った。
抵抗率測定にはダイアインスツルメント社製抵抗率測定装置ロレスタMP(MCP−T350)を用いた。
非晶質膜の抵抗値は、抵抗率が大きすぎ正確な値は得られなかった。しかし、同じ膜厚の別の材料における測定において、抵抗率1×10-1Ωcm程度の値は測定可能であるため、実施例1の組成の非晶質状態での抵抗率は1×10-1Ωcmより大きいといえる。一方、結晶化後のGe−In−Sb−Tb膜の抵抗率は、0.52×10-4Ωcmであった。
以上の結果から、本発明に用いる相変化記録材料において、非晶質状態と結晶状態との間で3桁以上の抵抗率の変化が生じることがわかった。従って、本発明に用いる相変化記録材料は、非晶質状態と結晶状態との間での相変化における抵抗率の差違が大きく、電気抵抗変化による記録を行う書き換え型情報記録用媒体への適用が可能であることがわかる。
本発明によれば、高速での記録消去が可能で、優れた記録特性を有し、記録信号の保存安定性が高く、さらには繰り返し記録耐久性に優れる相変化記録材料、および前記材料を用いた情報記録用媒体を得ることができる。
光学的情報記録用媒体の層構成を示す模式図である。 光学的情報記録用媒体の記録方法における記録光のパワーパターンを示す模式図である。 本実施例における記録回数と記録された信号を再生したときのジッタの関係を示すグラフである。 書き換え型情報記録の記録時又は消去時の温度履歴を示す概念図である。 不揮発性メモリーの1セルの構造を示す模式図である。 光学的情報記録用媒体の層構成を示す模式図である。 光学的情報記録用媒体の層構成を示す模式図である。
符号の説明
1 上部電極
2 下部電極
3 相変化記録層
4 ヒーター部
5 可逆変化領域
10 絶縁膜

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表される組成を主成分とすることを特徴とする相変化記録材料。
    {(Sb1−xGe1−yIn1−z―wTe (1)
    (ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0<z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。)
  2. 前記一般式(1)において、z/yが0以上、1以下である請求項1に記載の相変化記録材料。
  3. 前記相変化記録材料が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とする請求項1または請求項2に記載の相変化記録材料。
  4. 記録層を有する情報記録用媒体であって、前記記録層が下記一般式(1)で表される組成を主成分とすることを特徴とする情報記録用媒体。
    {(Sb1−xGe1−yIn1−z―wTe (1)
    (ただし、x、y、z、wは0.001≦x≦0.3、0≦y≦0.4、0<z≦0.2、0≦w≦0.1を満たす数であり、Mはランタノイドから選ばれる少なくとも1つの元素である。)
  5. 前記一般式(1)において、z/yが0以上、1以下である請求項4に記載の情報記録用媒体。
  6. 前記情報記録用媒体が、結晶状態を未記録状態とし、非晶質状態を記録状態とする請求項4または請求項5に記載の情報記録用媒体。
  7. 前記情報記録用媒体が光学的情報記録用媒体である請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載の情報記録用媒体。
  8. 前記光学的情報記録用媒体がさらに保護層を有する請求項7に記載の情報記録用媒体。
  9. 前記光学的情報記録用媒体がさらに反射層を有し、前記反射層がAgを主成分とする請求項7又は8に記載の情報記録用媒体。
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