JP4083490B2 - 光記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、書換え可能なDVRなど、相変化型記録層を有する高密度記録用の光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にコンパクトディスク(CD)やDVDは、凹ピットの底部及び鏡面部からの反射光の干渉により生じる反射率変化を利用して2値信号の記録及びトラッキング信号の検出が行われている。近年、CDと互換性のある媒体として相変化型の書換え可能なコンパクトディスク(CD−RW、CD−Rewritable)が広く使用されつつある。また、DVDについても、相変化型の書換え可能なDVDが各種提案されている。またDVDの容量が4.7GBに対して、記録再生波長を390〜420nmと短波長化し、開口数NA(NumericalAperture)を上げ、20GB以上の容量のシステムDVRが提案されている〔ISOM Technical Digest’00(2000),210〕。
【0003】
これら相変化型の書換え可能なCD、DVD及びDVRは、非晶質状態と結晶状態の屈折率差によって生じる反射率差及び位相差変化を利用して記録情報信号の検出を行う。通常の相変化型記録媒体は、基板上に下部保護層、相変化型記録層、上部保護層、反射層を設けた構造を有し、これらの層の多重干渉を利用して反射率差及び位相差を制御し、CDやDVDと互換性を持たせることができる。
CD−RWにおいては、反射率を15〜25%に落とした範囲内ではCDと記録信号及び溝信号の互換性を確保でき、反射率が低いことをカバーする増幅系を付加したCDドライブでは再生が可能である。
なお、相変化型記録媒体は消去と再記録過程を1つの集束光ビームの強度変調のみによって行うことができるため、CD−RWや書換え可能DVD等の相変化型記録媒体において、記録とは、記録と消去を同時に行うオーバーライト記録を含む。相変化を利用した情報の記録には、結晶、非晶質、又はそれらの混合状態を用いることができ、複数の結晶相を用いることもできるが、現在実用化されている書換可能相変化型記録媒体は、未記録・消去状態を結晶状態とし、非晶質のマークを形成して記録するのが一般的である。
【0004】
記録層の材料としてはカルコゲン元素、即ちS、Se、Teを含むカルコゲナイド系合金を用いることが多い。
例えば、GeTe−SbTe疑似二元合金を主成分とするGeSbTe系、InTe−SbTe疑似二元合金を主成分とするInSbTe系、Sb0.7Te0.3共晶系合金を主成分とするAgInSbTe系、GeSnTe系などである。このうち、GeTe−SbTe疑似二元合金に過剰のSbを添加した系、特に、GeSbTeやGeSbTeなどの金属間化合物近傍組成が主に実用化されている。
これらの組成は、金属間化合物特有の相分離を伴わない結晶化を特徴とし、結晶成長速度が速いため、初期化が容易で消去時の再結晶化速度が速い。そのため従来から、実用的なオーバーライト特性を示す記録層としては、疑似二元合金系や金属間化合物近傍組成が注目されていた〔参考文献:Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.69(1991),p2849,或いはSPIE,Vol.2514(1995),p294−301等〕。
【0005】
また、従来からGeSbTe三元組成、又はこの三元組成を母体とし添加元素を含有する記録層組成に関して報告がなされている(特開昭61−258787号公報、同62−53886号公報、同62−152786号公報、特開平1−63195号公報、同1−211249号公報、同1−277338号公報)。
しかしながら、このような組成の材料を書換え可能なDVRなどの高密度記録用の光記録媒体に適用することについては、まだ開発が始まったばかりであり、解決しなければならない問題が多々ある。
また、2層記録層に関しては学会等で発表されており〔ODS2001 Technical Digest(2001),p22〕、放熱層としてAg合金が使われている。しかし、Ag合金層との組み合わせで放熱層としてITO(InOとSnOの混合物)を使うのは本発明が初めてである。
【0006】
更に、特開2000−222777号公報には、反射放熱層とこれに隣接して設けられた熱拡散層とを備え、該熱拡散層の屈折率をnとしたとき、該拡散層の膜厚が0<d≦(5/16)λ/n 又は (7/16)λ/n≦d≦(1/2)λ/nの範囲内にあることを特徴とする光学情報記録媒体が開示されている。
しかし実際にはこの程度の膜厚では熱の拡散が不十分なため、結晶からアモルファス(非晶質)になるための急冷が不十分となり、記録マークであるアモルファスが綺麗に書けず、アモルファスマークのジッタが悪く、放熱性も悪いことからO/W(オーバーライト)特性が悪く、また樹脂層がUV硬化型であって酸が含まれていると、保護層材料によっては保護層として機能しなくなってしまうという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、その第一の目的は、書換え可能なDVRなど相変化型記録層を有する高密度記録用の光記録媒体において、保存特性を良くし、かつ高密度で記録可能とすることであり、第二の目的は、O/W特性を良くし且つ保存特性を良くすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の1)〜3)の発明(以下、本発明1〜3という)によって解決される。
1) 光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体であって、基板上に金属反射層、第1保護層、第1記録層、第2保護層、樹脂中間層、第3保護層、第1放熱層、第2放熱層、第4保護層、第2記録層、第5保護層をこの順序で積層した層構成を有し、第1放熱層は酸化物の混合物又は酸化物と窒化物の混合物からなり、第2放熱層はAg又はAg合金からなり、第1記録層及び第2記録層はGe、Sb、Teを主たる構成元素とし、第1〜第5保護層の各々はZnS・SiOを含有する層からなるか又はZnS・SiOを含有する層を含む複数の層からなり、第5保護層上には接着層を介してカバー基板を有することを特徴とする光記録媒体。
2) 第1放熱層の膜厚dが、(1/2)λ/n≦d≦λ/nなる式を満足する範囲にあることを特徴とする1)記載の光記録媒体。
3) 第1放熱層に、InO・SnO、ZrO・Y、Al・ZrO、ZnS・SiO・ZnO、Al・AlN、MgO・SiOからなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする1)又は2)記載の光記録媒体。
【0009】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
上記第一の目的は本発明1によって達成される。
本発明1において、金属反射層、第1保護層、第1記録層、第2保護層が第一の記録層構成であり、第3保護層、第1放熱層、第2放熱層、第4保護層、第2記録層、第5保護層が第二の記録層構成である。
第3保護層を設けたことで、InO・SnO等の酸化物の混合物又は酸化物と窒化物の混合物からなる膜にUV(紫外線硬化)樹脂などからなる樹脂中間層が接した場合に、樹脂中の塩素と反応して膜が劣化してしまい記録再生する際の放熱性が悪くなって記録マークが形成し難くなることを防ぎ、記録マークの保存性を向上させることができる。
また、第1、第2記録層が少なくともSbTeを含むこと、第一の記録層構成は放熱機能を有する金属反射層を有していること、第二の記録層構成も第1放熱層、第2放熱層を有することから、第1、第2記録層に光が吸収されたのち急冷されるので小さい記録アモルファスマークを形成でき、高密度記録が可能となる。
【0010】
また、本発明2のように、第1放熱層の膜厚dを、(1/2)λ/n≦d≦λ/nなる式を満足する範囲に設定することで、放熱性が良くなり、かつ第1放熱層を樹脂中間層から保護できるので、O/W特性を良くし、保存性も良くすることができる。
更に、本発明3のように、第1放熱層に、InO・SnO、ZrO・Y、Al・ZrO、ZnS・SiO・ZnO、Al・AlN、MgO・SiOからなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことにより、O/W特性を改善し、保存性を良くすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の光記録媒体の部分断面図を模式的に示したものであり、基板1/金属反射層2/第1保護層3/第1記録層4/第2保護層5/樹脂中間層6/第3保護層7/第1放熱層8/第2放熱層9/第4保護層10/第2記録層11/第5保護層12/接着層13/カバー基板14という層構成を有している。図1に示すような各層の順序は、透明基板を介して記録再生用の集束光ビーム、例えばレーザ光を第1、第2記録層に照射する場合に適している。
以下、上記各層について説明する。
基板1には、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィンなどの透明樹脂、或いは透明ガラスを用いることができる。中でもポリカーボネート樹脂は、CDにおいて最も広く用いられている実績があり、安価でもあるので最も好ましい。
基板1には記録再生光を案内するピッチ0.8μm以下の溝を設けるが、この溝は必ずしも幾何学的に矩形又は台形状の溝である必要はなく、例えば、イオン注入などによって、屈折率の異なる導波路のような光学的な溝が形成されていても良い。
【0012】
第1、第2記録層は相変化型の記録層であり、その厚みは一般的に5〜100nmの範囲が好ましい。5nmより薄いと十分なコントラストを得難く、また、結晶化速度が遅くなる傾向があり、短時間での消去が困難となり易い。一方100nmを越えると、やはり光学的なコントラストが得難くなり、また、クラックが生じ易くなる。
更に、DVDなどの再生専用ディスクと互換性を取れる程のコントラストを得る必要があり、かつ、最短マーク長が0.5μm以下となるような高密度記録を必要とする場合には、5〜25nmの範囲が好ましい。5nm未満では反射率が低くなり過ぎ、また、膜成長初期の不均一な組成、疎な膜の影響が現れ易いので好ましくない。一方、25nmよりも厚いと熱容量が大きくなり記録感度が悪くなるし、結晶成長が3次元的になるため、非晶質マークのエッジが乱れジッタが高くなる傾向にある。更に、第1、第2記録層の相変化による体積変化が顕著になり繰返しオーバーライト耐久性が悪くなるので好ましくない。
マーク端のジッタ及び繰返しオーバーライト耐久性の観点からは20nm以下とすることがより望ましい。また、第1、第2記録層の密度は、バルク密度の80%以上、より好ましくは90%以上とする。
【0013】
第1、第2記録層の密度を高くするには、スパッタ成膜法においては、成膜時のスパッタガス(Ar等の希ガス)の圧力を低くしたり、ターゲット正面に近接させて基板を配置するなどして、第1、第2記録層に照射される高エネルギーAr量を多くすることが必要である。
高エネルギーArは、スパッタのためにターゲットに照射されるArイオンが一部跳ね返されて基板側に到達するものか、プラズマ中のArイオンが基板全面のシース電圧で加速されて基板に達するものかの何れかである。
このような高エネルギーの希ガスの照射効果をatomic peening(アトミックピーニング)効果という。一般的にArガスを用いたスパッタではatomic peening効果により、Arがスパッタ膜に混入されるので、Ar量により、atomic peening効果を見積もることができる。即ち、Ar量が少なければ高エネルギーAr照射効果が少ないことを意味し、密度の疎な膜が形成され易い。一方、Ar量が多ければ高エネルギーArの照射が激しく、密度は高くなるものの、膜中に取り込まれたArが繰返しオーバーライト時にvoid(ボイド)となって析出し、繰返しの耐久性を劣化させる。第1、第2記録層中の適当なAr量は、0.1〜1.5原子%である。
更に、直流スパッタリングよりも高周波スパッタリングを用いた方が、膜中のAr量が少なくなり、高密度膜が得られるので好ましい。
【0014】
本発明において、第1、第2記録層はGe、Sb、Teを主たる構成元素とした合金を主成分とする薄膜からなる。第1、第2記録層には必要に応じて他の元素を合計10原子%程度まで添加してもよい。例えば、O、N、及びSから選ばれる少なくとも一つの元素を0.1〜5原子%添加することで、第1、第2記録層の光学定数を微調整することができる。しかし、5原子%を超えて添加すると、結晶化速度を低下させ消去性能を悪化させるので好ましくない。
また、オーバーライト時の結晶化速度を低下させずに経時安定性を向上させるため、V、Nb、Ta、Cr、Co、Pt及びZrの少なくとも一種を、8原子%以下添加するのが好ましい。より好ましい添加量は0.1〜5原子%である。
SbTeに対する、これらの添加元素とGeの合計の添加量は15原子%以下であることが望ましい。過剰に添加するとSb以外の相分離を誘起してしまう。特に、Ge含有量が3〜5原子%の場合には添加効果が大きい。
【0015】
経時安定性の向上と屈折率の微調整のためには、Si、Sn、及びPbの少なくとも一種を5原子%以下添加するのが好ましい。これらの添加元素とGeの合計の添加量は15原子%以下が好ましい。これら元素はGeと同じ4配位ネットワークを持つ。
Al、Ga、Inを8原子%以下の割合で添加すると、結晶化温度を上昇させると同時にジッタを低減させたり記録感度を改善する効果があるが、偏析も生じ易いため、6原子%以下とするのが好ましい。また、Geと併せた添加量は15原子%以下、好ましくは13原子%以下とする。
Agを8原子%以下添加することは、やはり記録感度を改善する上で効果があり、特にGe原子量が5原子%を超える場合に用いれば効果が顕著である。しかし、8原子%を超えて添加すると、ジッタを増加させたり、非晶質マークの安定性を損ねるので好ましくないし、Geと併せた添加量が15原子%を超えると偏析を生じ易いので好ましくない。Agの含有量として最も好ましいのは、5原子%以下である。
【0016】
さて、本発明の光記録媒体において第1、第2記録層の成膜後の状態は通常非晶質である。従って、成膜後に第1、第2記録層全面を結晶化して初期化された状態(未記録状態)とする必要がある。初期化方法としては、固相でのアニールによる初期化も可能であるが、一旦第1、第2記録層を溶融させ再凝固時に徐冷することにより結晶化させる溶融再結晶化による初期化が望ましい。
本発明の第1、第2記録層は、成膜直後には結晶成長の核が殆どなく、固相での結晶化は困難であるが、溶融再結晶化によれば、少数の結晶核が形成されてのち、結晶成長が主体となって高速で再結晶化が進む。
また、本発明の第1、第2記録層の場合、溶融再結晶化による結晶と、固相でのアニールによる結晶とで反射率が異なるため、混在するとノイズの原因となる。そして、実際のオーバーライト記録の際には、消去部は溶融再結晶化による結晶となるため、初期化も溶融再結晶化により行うことが好ましい。このとき、第1、第2記録層を溶融するのは局所的かつ1ミリ秒程度以下の短時間に限る。溶融領域が広かったり、溶融時間或いは冷却時間が長すぎると、熱によって各層が破壊されたり、プラスチック基板表面が変形したりするためである。
【0017】
このような熱履歴を与えるには、波長600〜1000nm程度の高出力半導体レーザー光を、長軸100〜300μm、短軸1〜3μmに集束して照射し、短軸方向を走査軸として、1〜10m/sの線速度で走査することが望ましい。同じ集束光でも円形に近いと溶融領域が広すぎて再非晶質化が起き易く、また、多層構成や基板へのダメージが大きく好ましくない。
初期化が溶融再結晶化によって行われたことは以下のようにして確認できる。即ち、初期化後の媒体に、径約1.5μmより小さいスポット径に集束された、第1、第2記録層を溶融するに足る記録パワーPwの記録光を、直流的に一定線速度で照射する。案内溝がある場合は、その溝又は溝間からなるトラックに、トラッキングサーボ及びフォーカスサーボをかけた状態で行う。
その後、同じトラック上に消去パワーPe(≦Pw)の消去光を直流的に照射して得られる消去状態の反射率が、全く未記録の初期状態の反射率と殆ど同じであれば、該初期化状態は溶融再結晶状態と確認できる。何故ならば、記録光照射により第1、第2記録層は一旦溶融されており、それを消去光照射で完全に再結晶化した状態は、記録光による溶融と消去光による再結晶化の過程を経ており、溶融再結晶化された状態にあるからである。
なお、初期化状態の反射率Riniと溶融再結晶化状態Rcryの反射率がほぼ同じであるとは、(Rini−Rcry)/{(Rini+Rcry)/2}で定義される両者の反射率差が20%以下であることを言う。通常、アニール等の固相結晶化だけでは、その反射率差は20%より大きい。
【0018】
このような本発明の第1、第2記録層は、図1に示すように、第1保護層3と第2保護層5及び第4保護層10と第5保護層12に挟み込まれた構成で基板1表面(溝形成面)に設けられる。
ここで第一の記録層構成に関して、第2保護層5は、主として記録時の高温による樹脂中間層6の表面の変形を防止するのに有効である。また第1保護層3は、第1記録層4と金属反射層2の相互拡散を防止し、第1記録層4の変形を抑制しつつ金属反射層2へ効率的に熱を逃すという機能を併せ持つ。
また、第二の記録層構成に関して、第5保護層12は、反射率の調整と記録時の高温による接着層13とカバー基板14の変形を防止するのに有効である。また第4保護層10は、第2記録層11と第2放熱層(Ag又はAg合金層)9に熱を逃がす機能と第2記録層11と第2放熱層(Ag又はAg合金層)9の相互拡散を防止する機能を併せ持つ。
【0019】
また第3保護層7に関しては、熱を逃がし且つ樹脂中間層の表面の変形を防止する機能と、樹脂中間層を形成する際の微量でも腐食作用を有するような酸などからの保護機能を有する。
第1〜第5保護層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定する。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、或いはCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができるが、本発明者らは種々の材料を検討した結果、上記観点及び本発明の第1、第2記録層を構成する材料との整合性を考慮して、ZnSとSiOの混合物が最も好ましいと考えている。なお、上記酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成を取る必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。
【0020】
保護層の機能等について説明する。
本発明の層構成は、急冷構造と呼ばれる層構成の一種に属する。急冷構造は、放熱を促進し、第1、第2記録層再凝固時の冷却速度を高める層構成を採用することで、非晶質マーク形成における再結晶化の問題を回避しつつ、高速結晶化による高消去比を実現するものである。このため、第2保護層の膜厚は5〜30nmとする。5nmより薄いと、第1記録層溶融時の変形等によって破壊され易く、また、放熱効果が大き過ぎて記録に要するパワーが不必要に大きくなってしまう。30nmより厚いと、記録時に、第2保護層の樹脂中間層側と第1記録層側とで温度差が大きくなり、保護層の両側における熱膨張差から保護層自体が非対称に変形し易くなる。この繰返しは、保護層内部に微視的塑性変形を蓄積させ、ノイズの増加を招くので好ましくない。
本発明の第1保護層3及び第4保護層10の膜厚は、繰返しオーバーライトにおける耐久性に大きく影響し、特にジッタの悪化を抑制する上でも重要である。
第4保護層10の膜厚は、3〜20nmにするとO/W特性がよくなるので好ましく、より好ましくは5〜15nmである。
また、第5保護層11の膜厚は、40〜160nmにするとO/W特性がよくなるので好ましく、より好ましくは70〜130nmである。
【0021】
上記のような本発明の記録層材料を用いると、最短マーク長0.3μm以下の高密度記録において低ジッタを実現できるが、本発明者らの検討によれば、高密度記録を実現するために短波長のレーザーダイオード(例えば、波長410nm以下)を用いる場合には、上記急冷構造の層構成についても、一層の留意が必要になる。特に、波長が500nm以下、開口数NAが0.55以上の小さな集束光ビームを用いた1ビームオーバーライト特性の検討において、マーク幅方向の温度分布を平坦化することが、高消去比及び消去パワーマージンを広く取るために重要であることが分っている。
この傾向は、波長390〜420nm、NA=0.85前後の光学系を用いた、DVR対応の光学系においても同様である。このような光学系を用いた高密度マーク長変調記録においては、特に熱伝導特性の低いものを第2保護層として用いる。好ましくはその膜厚を7〜25nmとする。何れの場合にも、その上に設ける高熱伝導率の保護層を設けることで、高速記録時に熱が急激に逃げず且つ熱傾斜ができていることから高速記録が可能となる。
【0022】
金属反射層2は、とりわけ高熱伝導率の材料とすることにより、消去比及び消去パワーマージンを改善できる。本発明者らの検討によれば、広い消去パワー範囲において、本発明の第1、第2記録層が持つ良好な消去特性を発揮させるには、単に膜厚方向の温度分布や時間変化のみならず、膜面方向(記録ビーム走査方向の垂直方向)の温度分布をできるだけ平坦化できるような層構成を用いることが望ましい。
また、本発明者らは、光記録媒体の層構成を適切に設計することにより、半透明であるが放熱性もあり、O/Wによる熱の変形にも耐えられるように、第1放熱層材料を選択し、かつ第1放熱層を保護するために第3保護層を形成し、記録再生特性、特にO/W特性と保存性を良好にすることを試みた。
第1保護層又は第4保護層の熱伝導率を高くしても放熱効果は促進されるが、あまり放熱が促進されると、記録に要する照射パワーが高くなり記録感度が著しく低下してしまうので、低熱伝導率の保護層を用いるのが好ましい。
低熱伝導率の薄い保護層を用いることにより、記録パワー照射開始直後の数nsec〜数10nsecにおいて、第1記録層から金属反射層への熱伝導に時間的な遅延を与え、その後に金属反射層への放熱を促進することができるため、放熱により必要以上に記録感度を低下させることがない。
従来知られている、SiO、Ta、Al、AlN、SiN等を主成分とする保護層材料は、それ自身の熱伝導率が高すぎて、単体で使用することは好ましくない。
【0023】
本発明の第1放熱層は、第2放熱層(Ag又はAg合金層)に隣接して設けられ、酸化物の混合物又は酸化物と窒化物の混合物からなる。また、第1放熱層と樹脂中間層との間に第3保護層を形成することで放熱性が向上してO/W特性が良くなり、保存性も良好になる。
第二の記録層構成のO/W特性が良くなったデータを図2に示した。
また、保存性(アーカイバル特性)は重要で、特に樹脂中間層の材料中に塩素等が微量でも存在すると、第1放熱層のInOとSnOの混合物だけでなく、第2放熱層(Ag層又はAg合金層)や第2記録層まで侵食されてしまうことに対する対策として、保存性の良好な材料からなる第3保護層を形成したことにより、保存信頼性が向上したデータを図3に示した。
第2放熱層であるAg又はAg合金層の膜厚が20nm以下であれば、第2放熱層の透過率が80%以上あるので、第二の記録層構成の透過率が40%以上となり、第一の記録層構成の記録再生が十分可能となる。
また、膜厚が20nm以下のAg又はAg合金層からなる第2放熱層と、InOとSnOの混合物からなる第1放熱層を形成することで、放熱による急激な冷却が必要なSb、Te及びGe原子を主成分とする相変化記録材料に対する最適な急冷構成となり、小さなアモルファスマークが形成可能となる。
【0024】
下記表1に実施例及び比較例を示した。これらの記録媒体は、保護層、記録層、放熱層を全てマグネトロンスパッタ装置にて作成し、樹脂中間層はUV硬化樹脂をスピンコートで形成し光照射で硬化させた。接着層はスパッタ膜とカバー基板の間に置き、カバー基板側から柔らかいゴム製のもので押しつけて形成した。
なお、表1中の「保存特性」「記録再生特性」は、媒体に記録しておいた信号が、温湿度80℃85%下で、500時間保存後にどのように変化したかを調べたものであり、ジッタ(%)は最初の状態からの増加率である。
表1の結果から、従来は樹脂中間層と第1放熱層の間に保護層がなかったが、本発明のように第3保護層を形成することにより、アーカイバル特性(保存性)が良くなることが分る。
即ち、比較例2〜3のように、第1放熱層と樹脂中間層の間に第3保護層がない場合には、媒体に記録しておいた信号が、温湿度80℃85%下で500時間後には消えていた。これに対し、第3保護層を形成した本発明の媒体は、記録直後の記録再生特性であるジッタに全く変化がなかった。
また第1放熱層の膜厚が(1/2)λ/n(波長405nmで、屈折率が2.2の場合、92.0nm)以下が良いとされているが、この膜厚では、比較例1〜2に示したように記録後のジッタは不十分である。
ジッタが低い程メディア特性は良く、9%以下であればエラーがなく記録再生ができる。
【0025】
【表1】
Figure 0004083490
【0026】
第二の記録層構成の放熱性としては、第1放熱層の放熱性だけでは不十分であり、第2放熱層であるAg又はAg合金層により放熱性を改善する。特に、熱の最初の急冷性がアモルファスマークを形成するSb及びTe原子をべースにした第2記録層では、Ag又はAg合金層と第1放熱層の組み合わせで高密度記録特性、O/W特性及び保存性が改善される。
一方、第一の記録層構成の金属反射層における放熱は、金属反射層の厚みを厚くしても達成できるが、金属反射層の厚みが300nmを超えると、第1記録層の膜面方向よりも膜厚方向の熱伝導が顕著になり、膜面方向の温度分布改善効果が得られない。また、金属反射層自体の熱容量が大きくなり、金属反射層、ひいては第1記録層の冷却に時間がかかるようになって、非晶質マークの形成が阻害される。最も好ましいのは、高熱伝導率の金属反射層を薄く設けて横方向への放熱を選択的に促進することである。従来用いられていた急冷構造は、膜厚方向の1次元的な熱の逃げにのみ注目し、第1記録層から金属反射層に早く熱を逃すことのみを意図しており、この平面方向の温度分布の平坦化に十分な留意が払われていなかった。
【0027】
なお、本発明の、いわば「第1放熱層及び第2放熱層での熱伝導遅延効果を考慮した超急冷構造」は、本発明に係る第2記録層に適用すると、従来のGeTe−SbTe記録層に比べて一層効果がある。何故ならば、本発明の第2記録層は融点近傍での再凝固時の結晶成長が再結晶化の律速になっているからである。融点近傍での冷却速度を極限まで大きくして、非晶質マーク及びそのエッジの形成を確実かつ明確なものとするには、超急冷構造が有効であり、かつ、膜面方向の温度分布の平坦化で、もともとTm近傍で高速消去可能であったものが、より高消去パワーまで確実に再結晶化による消去を確保できるからである。
【0028】
本発明において、第1〜第5保護層の材料としては熱伝導特性が低い方が望ましいが、その目安は1×10−3pJ/(μm・K・nsec)である。しかしながら、このような低熱伝導率材料の薄膜状態の熱伝導率を直接測定するのは困難であり、代りに、熱シミュレーションと実際の記録感度の測定結果から目安を得ることができる。
好ましい結果をもたらす低熱伝導率の第2保護層材料としては、ZnS、ZnO、TaS、希土類硫化物のうちの少なくとも一種を50〜90モル%含み、かつ、融点又は分解点が1000℃以上の耐熱性化合物を含む複合誘電体が望ましい。希土類硫化物の具体例としては、La、Ce、Nd、Yの硫化物が挙げられ、これらを60〜90モル%含む複合誘電体が望ましい。更に、ZnS、ZnO、TaS又は希土類硫化物の組成の範囲を70〜90モル%とすることがより望ましい。
これらの材料に混合する、融点又は分解点が1000℃以上の耐熱化合物材料としては、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ho、Er、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Si、Ge、Pb等の酸化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物が挙げられる。
特にZnSと混合する材料としてはSiOが望ましく、本発明ではこの組み合わせが最適であると考えている。
【0029】
第1保護層3はZnS・SiOとTaの2層構造にすると良い。
第1保護層の膜厚は、30nmよりも厚いとマーク幅方向の温度分布の十分な平坦化効果が得られないため、30nm以下とする。好ましくは25nm以下である。また、5nm未満では、第1保護層部での熱伝導の遅延効果が不十分で、記録感度低下が著しくなり好ましくない。
第1保護層の膜厚は、記録レーザー光の波長が600〜700nmでは15〜25nmが好ましく、波長が350〜600nmでは5〜20nmが好ましく、より好ましくは5〜15nmである。
なお本発明においては、上記のように第1、第2保護層ともZnSとSiOを混合したものとしているが、このように同じ材料にすると、製造上のコスト低減の面からも有利である。
【0030】
次に金属反射層2について説明する。
本発明においては、非常に高熱伝導率で膜厚300nm以下の薄い金属反射層を用いて、横方向の放熱効果を促進するのが特徴である。
一般に薄膜の熱伝導率はバルク状態の熱伝導率と大きく異なり、小さくなっている。特に膜厚40nm未満の薄膜では成長初期の島状構造の影響で熱伝導率が1桁以上小さくなる場合があり好ましくない。更に、成膜条件によって結晶性や不純物量が異なり、これが同じ組成でも熱伝導率が異なる要因になる。
第2放熱層であるAg又はAg合金層を形成する場合には、成膜時のデポジションレートを金属反射層の場合よりも遅くして膜厚の不均一性をなくすようにする。
本発明において、良好な特性を示す高熱伝導率の金属反射層、第1放熱層及び第2放熱層であるAg又はAg合金層を規定するために、金属反射層の熱伝導率を直接測定することも可能であるが、その熱伝導の良否を電気抵抗を利用して見積もることが可能である。金属膜のように電子が熱又は電気伝導を主として司る材料においては熱伝導率と電気伝導率は良好な比例関係にあるためである。
薄膜の電気抵抗はその膜厚や測定領域の面積で規格化された抵抗率値で表す。体積抵抗率と面積抵抗率は通常の4探針法で測定でき、JIS K 7194によって規定されている。この方法により、薄膜の熱伝導率そのものを実測するよりも遥かに簡便に再現性の良いデータが得られる。
【0031】
本発明において金属反射層、第2放熱層であるAg又はAg合金層、及び第1放熱層に望まれる特性としては、体積抵抗率が20〜150nΩ・m、より好ましくは20〜100nΩ・mを満足することである。体積抵抗率20nΩ・m未満の材料は薄膜状態では実質的に得にくい。体積抵抗率が150nΩ・mより大きい場合でも、例えば300nmを超える厚膜とすれば面積抵抗率を下げることはできるが、本発明者らの検討によれば、このような高体積抵抗率材料で面積抵抗率のみを下げても十分な放熱効果は得られなかった。厚膜では単位面積当りの熱容量が増大してしまうためと考えられる。
また、このような厚膜では成膜に時間がかかり材料費も増えるため製造コストの観点から好ましくない。更に、膜表面の微視的な平坦性も悪くなってしまう。好ましくは、膜厚300nm以下で面積抵抗率0.2〜0.9Ω/□が得られるような低体積抵抗率材料を用いる。最も好ましいのは0.5Ω/□である。
第2放熱層であるAg又はAg合金層の場合は、透過率の点から膜厚20nm以下が望ましい。また膜厚5nm未満ではデポジションレートを遅くしても不均一になるので5nm以上が望ましい。
【0032】
本発明に適した金属反射層の材料は、以下の通りである。
例えばCuを0.3〜5.0重量%含有するAl−Cu系合金が挙げられ、特にCuを0.5〜4.0重量%含有するAl−Cu系合金が、耐食性、密着性、高熱伝導率の全てをバランス良く満足する金属反射層として望ましい。
また、Siを0.3〜0.8重量%、Mgを0.3〜1.2重量%含有するAl−Mg−Si系合金も有効である。
更に、Alに対しTa、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo又はMnを0.2〜2原子%含むAl合金は、添加元素濃度に比例して体積抵抗率が増加し、また、耐ヒロック性が改善され、耐久性、体積抵抗率、成膜速度等を考慮して用いることができる。添加不純物量0.2原子%未満では、成膜条件にもよるが、耐ヒロック性は不十分であることが多く、2原子%より多いと上記の低抵抗率が得にくい。経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはTaが好ましい。
上記Al合金を金属反射層として用いる場合、好ましい膜厚は150〜300nmである。150nm未満では純Alでも放熱効果は不十分である。300nmを超えると、熱が水平方向より垂直方向に逃げて、水平方向の熱分布改善に寄与しないし、金属反射層そのものの熱容量が大きく、却って第1記録層の冷却速度が遅くなってしまう。また、膜表面の微視的な平坦性も悪くなる。
【0033】
更に、Agに対しTi、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo又はMnを0.2〜5原子%含むAg合金も望ましい。経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはTi、Mgが好ましい。
上記Ag合金を金属反射層として用いる場合の好ましい膜厚は30〜200nmである。30nm未満では純Agでも放熱効果は不十分である。200nmを超えると、熱が水平方向より垂直方向に逃げて、水平方向の熱分布改善に寄与しないし、不必要な厚膜は生産性を低下させる。また、膜表面の微視的な平坦性も悪くなる。
本発明者らは上記Alへの添加元素やAgへの添加元素は、その添加元素濃度に比例して体積抵抗率が増加することを確認している。
ところで、不純物の添加は一般的に結晶粒径を小さくし、粒界の電子散乱を増加させて熱伝導率を低下させると考えられる。添加不純物量を調節することは、結晶粒径を大きくすることで材料本来の高熱伝導率を得るために必要である。
【0034】
なお、金属反射層は通常スパッタ法や真空蒸着法で形成されるが、ターゲットや蒸着材料そのものの不純物量もさることながら、成膜時に混入する水分や酸素量も含めて全不純物量を2原子%以下とする必要がある。このためにプロセスチャンバの到達真空度は1×10−3Pa以下とすることが望ましい。また、10−4Paより悪い到達真空度で成膜する場合には、成膜レートを1nm/秒以上、好ましくは10nm/秒以上として不純物が取り込まれるのを防ぐことが望ましい。
或いは、意図的な添加元素を1原子%より多く含む場合は、成膜レートを10nm/秒以上として付加的な不純物混入を極力防ぐことが望ましい。
成膜条件は不純物量とは無関係に結晶粒径に影響を及ぼす場合もある。例えば、AlにTaを2原子%程度混入した合金膜は、結晶粒の間に非晶質相が混在するが、結晶相と非晶質相の割合は成膜条件に依存する。また、低圧でスパッタするほど結晶部分の割合が増え、体積抵抗率が下がり、熱伝導率が増加する。膜中の不純物組成或いは結晶性は、スパッタに用いる合金ターゲットの製法やスパッタガス(Ar、Ne、Xe等)にも依存する。
このように、薄膜状態の体積抵抗率は、金属材料や組成のみによっては決まらない。高熱伝導率を得るためには、上記のように、不純物量を少なくするのが望ましいが、一方で、AlやAgの純金属は耐食性や耐ヒロック性に劣る傾向があるため、両者のバランスを考慮して最適組成が決められる。
【0035】
更なる高熱伝導と高信頼性を得るために金属反射層を多層化することも有効である。このとき、少なくとも1層は全金属反射層膜厚の50%以上の膜厚を有する上記低体積抵抗率材料として実質的に放熱効果を司り、他の層が耐食性や保護層との密着性、耐ヒロック性の改善に寄与するように構成される。
具体的には、金属中で最も高熱伝導率及び低体積抵抗率であるAgは、Sを含む保護層との相性が悪く、繰返しオーバーライトした場合の劣化がやや速いという傾向がある。また、高温高湿の加速試験環境下で腐食を生じ易い傾向がある。そこで、第1層目として低体積抵抗率材料であるAg又はAg合金を用い、第2層目として、第1保護層との間に界面層の役割をするAlを主成分とする合金層を1〜100nm設けることも有効である。膜厚を5nm以上とすれば界面層が島状構造とならず均一に形成され易い。
界面層の材料としては、例えば、前述したのと同様な、Ta、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo又はMnを0.2〜2原子%含むAl合金が挙げられる。
界面層の厚さは1nm未満では保護効果が不十分で、100nmを超えると放熱効果が犠牲になる。界面層の使用は、特に金属反射層材料としてAg又はAg合金を用いる場合に有効である。何故ならば、Agは本発明で好ましいとされる硫化物を含む保護層との接触により、比較的硫化による腐食を起し易いからである。
【0036】
更に、金属反射層をAg合金反射層とAl合金界面層の2層構造とする場合、AgとAlは比較的相互拡散し易い組み合わせであるから、Al表面を1nmより厚く酸化して界面酸化層を設けることが一層好ましい。しかし、界面酸化層が5nm、特に10nmを越えると、界面酸化層が熱抵抗となり、本来の趣旨である、極めて放熱性の高い金属反射層としての機能が損なわれるので好ましくない。
金属反射層の多層化は、高体積抵抗率材料と低体積抵抗率材料を組み合わせて所望の膜厚で所望の面積抵抗率を得るためにも有効である。合金化による体積抵抗率の調節は、合金ターゲットの使用によるスパッタ工程の簡素化を実現できるが、ターゲット製造コスト、ひいては媒体の原材料比を上昇させる要因にもなる。
従って、純Alや純Agの薄膜と上記添加元素そのものの薄膜を多層化して所望の体積抵抗率を得ることも有効である。層数が3層程度までであれば、初期の装置コストは増加するものの、個々の媒体コストは却って抑制できる場合がある。金属反射層を複数の金属膜からなる多層金属反射層とし、全膜厚を40〜300nmとし、多層金属反射層の厚さの50%以上が体積抵抗率20〜150nΩ・mの金属薄膜層(多層であっても良い)とするのが好ましい。
【0037】
第1放熱層は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。
一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができるが、本発明者らは種々の材料を検討した結果、透過率が高く、熱伝導率の高いInO・SnO、ZrO・Y、Al・ZrO、ZnS・SiO・ZnO、Al・AlN、MgO・SiO、Al・SiO、AlN・SiO、InO・ZnO、InO・ZnO・SnOなどからなる保護層を形成することで急冷構造となり、小さいマークを書くことができるので高密度記録となり、かつ熱が逃げ易くなるので、O/W特性も良好となることを見出した。
本発明の層構成は、急冷構造と呼ばれる層構成の一種に属する。急冷構造は、放熱を促進し、第1、第2記録層再凝固時の冷却速度を高める層構成を採用することで、非晶質マーク形成のときの再結晶化の問題を回避しつつ、高速結晶化による高消去比を実現する。このため第1放熱層の膜厚は(1/2)λ/n〜λ/nとする。(1/2)λ/nより薄いと、第1、第2記録層溶融時の変形等によって破壊され易く、また、λ/nより厚いと製膜時の熱で膜にクラックが入るので媒体として使えない状態となってしまう。
【0038】
カバー基板14を設ける構成(図1参照)で、高NAの対物レンズを用いる場合、カバー基板14には、0.3mm以下の厚さ、より好ましくは0.06〜0.20mmの厚さが要求されるため、シート状であることが好ましい。
カバー基板の材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、光学特性、コストの点で優れたポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
透明シートを用いて薄型基板を形成する方法としては、紫外線硬化性樹脂或いは透明な両面粘着シートを介して、透明シートを貼り付ける方法が挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂を保護層上に塗布してこれを硬化させて薄型基板を形成してもよい。
【0039】
【発明の効果】
本発明1によれば、O/W特性が良く保存性も良好な光記録媒体を提供できる。
本発明2によれば、更に放熱性が良くなり、かつ第1放熱層をUV樹脂層から保護できる光記録媒体を提供できる。
本発明3によれば、更にO/Wの熱的体積変化に対応でき、O/W特性を改善できる光記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光記録媒体の部分断面図を模式的に示したものである。
【図2】第二の記録層構成のO/W特性が良くなったデータを示す図。
【図3】第3保護層を形成したことにより保存信頼性が向上したデータを示す図。
【符号の説明】
1 基板
2 金属反射層
3 第1保護層
4 第1記録層
5 第2保護層
6 樹脂中間層
7 第3保護層
8 第1放熱層
9 第2放熱層
10 第4保護層
11 第2記録層
12 第5保護層
13 接着層
14 カバー基板

Claims (3)

  1. 光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体であって、基板上に金属反射層、第1保護層、第1記録層、第2保護層、樹脂中間層、第3保護層、第1放熱層、第2放熱層、第4保護層、第2記録層、第5保護層をこの順序で積層した層構成を有し、第1放熱層は酸化物の混合物又は酸化物と窒化物の混合物からなり、第2放熱層はAg又はAg合金からなり、第1記録層及び第2記録層はGe、Sb、Teを主たる構成元素とし、第1〜第5保護層の各々はZnS・SiOを含有する層からなるか又はZnS・SiOを含有する層を含む複数の層からなり、第5保護層上には接着層を介してカバー基板を有することを特徴とする光記録媒体。
  2. 第1放熱層の膜厚dが、(1/2)λ/n≦d≦λ/nなる式を満足する範囲にあることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  3. 第1放熱層に、InO・SnO、ZrO・Y、Al・ZrO、ZnS・SiO・ZnO、Al・AlN、MgO・SiOからなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。
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