JP4357169B2 - 情報記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、書換え可能なDVRなど、相変化型記録層を有する高密度記録用の光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、コンパクトディスク(CD)やDVDは凹ピットの底部及び鏡面部からの反射光の干渉により生じる反射率変化を利用して2値信号の記録及びトラッキング信号の検出が行なわれている。近年、CDと互換性のある媒体として、相変化型の書換え可能なコンパクトディスク(CD−RW、CD−Rewritable)が広く使用されつつある。また、DVDについても、相変化型の書換え可能なDVDが各種提案されている。また、DVDの容量が4.7GBに対して、記録再生波長を390nm〜420nmと短波長化し、開口数、NA(Numerical Aperture)を上げ、20GB以上の容量のシステムDVRが提案されている(非特許文献1参照。)。
【0003】
これら相変化型の書換え可能なCD、DVDおよびDVRは、非晶質と結晶状態の屈折率差によって生じる反射率差および位相差変化を利用して記録情報信号の検出を行なう。通常の相変化媒体は、基板上に下部保護層、相変化型記録層、上部保護層、反射層を設けた構造を有し、これら層の多重干渉を利用して反射率差および位相差を制御しCDやDVDと互換性を持たせることができる。CD−RWにおいては、反射率を15〜25%に落とした範囲内ではCDと記録信号及び溝信号の互換性が確保でき、反射率の低いことをカバーする増幅系を付加したCDドライブでは再生が可能である。
【0004】
なお、相変化型記録媒体は消去と再記録過程を1つの集束光ビームの強度変調のみによって行なうことができるため、CD−RWや書換え可能DVD等の相変化型記録媒体において、記録とは、記録と消去を同時に行なうオーバーライト記録を含む。相変化を利用した情報の記録には、結晶、非晶質又はそれらの混合状態を用いることができ、複数の結晶相を用いることもできるが、現在実用化されている書換可能相変化型記録媒体は、未記録・消去状態を結晶状態とし、非晶質のマークを形成して記録するのが一般的である。記録層の材料としてはいずれもカルコゲン元素、即ちS、Se、Teを含むカルコゲナイド系合金を用いることが多い。
【0005】
例えば、GeTe−Sb2Te3疑似二元合金を主成分とするGeSbTe系、InTe−Sb2Te3疑似二元合金を主成分とするInSbTe系、Sb0.7Te3.3を共晶系を主成分とするAgInSbTe系合金、GeSnTe系などである。このうち、GeTe−Sb2Te3疑似二元合金に過剰のSbを添加した系、特にGe1Sb2Te4、もしくはGe2Sb2Te5などの金属間化合物近傍組成が主に実用化されている。
【0006】
これら組成は、金属間化合物特有の相分離を伴なわない結晶化を特徴とし結晶成長速度が速いため、初期化が容易で消去時の再結晶化速度が速い。このため、従来より実用的なオーバーライト特性を示す記録層としては、疑似二元合金系や金属間化合物近傍組成が注目されていた(非特許文献2参照。)。
【0007】
また、従来よりGeSbTe三元組成、もしくはこの三元組成を母体として添加元素を含有する記録層組成に関して報告がなされている(特許文献1〜4参照。)。しかしながら、このような組成の材料を書換え可能なDVRなどの高密度記録用の光記録媒体への適用は、まだ開発が始まったばかりであり、解決しなければならない問題が多々ある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−258787号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭62−152786号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平1−63195号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平1−211249号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
:ISOM Technical Digest'00 (2000)、210
【非特許文献2】
SPIE, Vol. 2514(1995), pp294-301
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、その目的は、第1に、このような書換え可能なDVRなど相変化型記録層を有する高密度記録用の光記録媒体において、高速記録に対応して記録感度も良く(ZnSSiO2の役割)、急冷構造(AlNと放熱層の役割)のメディアにさせることにある。
また第2に、このような光記録媒体において、急冷構成のAlNの膜厚とZnSSiO2の膜厚比を限定することで記録感度を悪くせず急冷構造にして高速記録で高密度記録させることにある。
さらに第3に、このような光記録媒体において、急冷構成のAlNの膜厚を限定することで記録感度を悪くせず急冷構造にして高速記録で高密度記録させることにある。
さらに第4に、このような光記録媒体において、基板の反りを矯正するだけでなく、ゴミ等が付着した場合ふき取ることができることやキズがつきにくくすることにある。
さらに第5に、このような光記録媒体において、基板の反りを矯正するだけでなく、ゴミ等が付着した場合ふき取ることができることやキズがつきにくくすることにある。
さらに第6に、基板に溝幅を最適化することでGe、Sb、Teを主たる構成元素とした相変化記録層で高密度で高振幅(高モジュレーション)が得られることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、第1に、光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体において、該光記録媒体は、基板上に反射層、第1の保護層、記録層、第2の保護層をこの順序で積層した構成とし、該第1、第2の保護層はZnSとSiO2の混合物よりなり、該記録層はGe、Sb、Teを主たる構成元素とし、該反射層はAl合金よりなる記録媒体であって、高速記録に対応して記録感度も良くするために熱伝導率が比較的高くないZnSSiO2層を形成し高速で記録できるように急冷構造するためにAlNをZnSSiO2と放熱層の間に形成した。
【0011】
また第2に、上記第1の光記録媒体において、前記急冷構成のAlNの膜厚とZnSSiO2の膜厚比を1/2以下であり1/5以上として、記録感度を悪くせず急冷構造にして高速記録で高密度記録させた。
【0012】
さらに第3に、上記第1もしくは第2の光記録媒体において、前記急冷構成のAlNの膜厚を反射層膜厚の0.20倍以上、0.80倍以下とすることで記録感度を悪くせず急冷構造にして高速記録で高密度記録させた。
【0013】
さらに第4に、ハードコートを形成することで、基板の反りを矯正するだけでなく、ゴミ等が付着した場合ごみをふけることやキズがつきにくくできる。
【0014】
さらに第5に、ハードコートの膜厚を1μm以上、5μm未満に形成することで、基板の反りを矯正することだけでなく、ゴミ等が付着した場合ふき取ることができ、キズがつきにくくさせた。
【0015】
さらに第6に、基板の平均溝幅をトラックピッチの0.3以上0.5以下にすることでGe、Sb、Teを主たる構成元素とした相変化記録層で高密度で高振幅(高モジュレーション)を得られるようにすることにある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の光記録媒体の記録部部分断面図を模式的に描いたものであり、基板(1)/反射層(2)/第1の保護層(3)/記録層(4)/第2の保護層(5)/の構成を有している。また、その上(第2の保護層(5)の上)に紫外線もしくは熱硬化性の樹脂で被覆(保護コート層(6))されたものを設けるか(これについては後述する)もしくは接着層(6)で接着されたカバー層(7)を設ける。ハードコートはカバー層(7)の上に紫外線もしくは熱硬化性の樹脂で被覆したものである。
図1のような各層の順序は、透明基板を介して記録再生用の集束光ビーム、例えばレーザ光を記録層に照射する場合に適している。
【0017】
最初に、基板(1)について説明する。
基板(1)には、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィンなどの透明樹脂、あるいは透明ガラスを用いることができる。中でも、ポリカーボネート樹脂はCDにおいて最も広く用いられている実績もあり、安価でもあるので最も好ましい。
基板(1)には記録再生光を案内するピッチ0.8μm以下の溝を設けるが、この溝は、必ずしも幾何学的に矩形あるいは台形状の溝である必要はなく、たとえば、イオン注入などによって、屈折率の異なる導波路のようなものを形成して光学的に溝が形成されていても良い。
【0018】
次に、本発明の記録層(4)について説明する。本発明の光記録媒体の記録層(4)は相変化型の記録層であり、その厚みは一般的に5nmから100nmの範囲が好ましい。記録層の厚みが5nmより薄いと充分なコントラストが得られ難く、また結晶化速度が遅くなる傾向があり、短時間での消去が困難となりやすい。一方100nmを越すとやはり光学的なコントラストが得にくくなり、また、クラックが生じやすくなる。さらに、DVDなど再生専用ディスクと互換性をとれるほどのコントラストを得る必要があり、かつ、最短マーク長が0.5μm以下となるような高密度記録では、5nm以上25nm以下が好ましい。5nm未満では反射率が低くなりすぎ、また、膜成長初期の不均一な組成、疎な膜の影響が現れやすいので好ましくない。
【0019】
一方、25nmより厚いと熱容量が大きくなり記録感度が悪くなるし、結晶成長が3次元的になるため、非晶質マークのエッジが乱れジッタが高くなる傾向にある。さらに、記録層の相変化による体積変化が顕著になり繰返しオーバーライト耐久性が悪くなるので好ましくない。マーク端のジッタ及び繰返しオーバーライト耐久性の観点からは20nm以下とすることがより望ましい。また、記録層の密度はバルク密度の80%以上、より好ましくは90%以上であることが望ましい。
【0020】
記録層(4)の密度はスパッタ成膜法においては、成膜時のスパッタガス(Ar等の希ガス)の圧力を低くする、ターゲット正面に近接して基板を配置するなどして、記録層に照射される高エネルギーAr量を多くすることが必要である。高エネルギーArはスパッタのためにターゲットに照射されるArイオンが、一部跳ね返されて基板側に到達するものか、プラズマ中のArイオンが基板全面のシース電圧で加速されて基板に達するものかのいずれかである。このような高エネルギーの希ガスの照射効果をatomic peening効果という。一般的に使用されるArガスでのスパッタではatomic peening効果により、Arがスパッタ膜に混入される。膜中のAr量により、atomic peening効果を見積もることができる。すなわち、Ar量が少なければ、高エネルギーAr照射効果が少ないことを意味し、密度の疎な膜が形成されやすい。一方、Ar量が多ければ高エネルギーArの照射が激しく、密度は高くなるものの、膜中に取り込まれたArが繰返しオーバーライト時にvoidとなって析出し、繰返しの耐久性を劣化させる。記録層膜中の適当なAr量は、0.1原子%以上、1.5原子%以下である。さらに、直流スパッタリングよりも高周波スパッタリングを用いた方が、膜中Ar量が少なくして、高密度膜が得られるので好ましい。
【0021】
本発明において、記録層は上述の組成を有するGe、Sb、Teを主たる構成元素とした合金を主成分とする薄膜からなる。すなわち、記録層中のGe、Sb、Teの各元素量の比が上述の組成範囲にあればよく、記録層には必要に応じて他の元素を、合計10原子%程度まで添加してもよい。記録層にさらに、O、N、及びSから選ばれる少なくとも一つの元素を、0.1原子%以上5原子%以下添加することで、記録層の光学定数を微調整することができる。しかし、5原子%を超えて添加することは、結晶化速度を低下させ消去性能を悪化させるので好ましくない。
【0022】
また、オーバーライト時の結晶化速度を低下させずに、経時安定性を増すために、V、Nb、Ta、Cr、Co、Pt及びZrの少なくとも一種を、8原子%以下添加するのが好ましい。より好ましくは、0.1原子%以上5原子%以下添加する。SbTeに対するこれら添加元素とGeの合計の添加量は全部で15原子%以下であることが望ましい。過剰に含まれるとSb以外の相分離を誘起してしまう。特に、Ge含有量が3原子%以上、5原子%以下の場合には添加効果が大きい。経時安定性の向上と屈折率の微調整のために、Si、Sn、及びPbの少なくとも一種を5原子%以下添加するのが好ましい。これら添加元素とGeの合計の含有量は15原子%以下が好ましい。これら元素はGeと同じ4配位ネットワークを持つ。
【0023】
Al、Ga、Inを8原子%以下添加することは、結晶化温度を上昇させると同時に、ジッタを低減させたり、記録感度を改善する効果もあるが、偏析も生じやすいため6原子%以下とするのが好ましい。また、Geとあわせた含有量は15原子%以下、好ましくは13%以下とすることが望ましい。Agを8原子%以下添加することはやはり記録感度を改善する上で効果があり、特にGe原子量が5原子%を超える場合に用いれば効果が顕著である。しかし、8原子%を超える添加は、ジッタを増加させたり、非晶質マークの安定性を損ねるので好ましくないし、Geと合わせた添加量が15原子%を超えると偏析を生じやすいので好ましくない。Agの含有量として最も好ましいのは、5原子%以下である。
【0024】
さて、本発明の記録媒体の記録層(4)は、成膜後の状態は、通常非晶質である。従って、成膜後に記録層全面を結晶化して初期化された状態(未記録状態)とする必要がある。初期化方法としては、固相でのアニールによる初期化も可能であるが、一旦記録層を溶融させ再凝固時に徐冷して結晶化させる溶融再結晶化による初期化が望ましい。本記録層は成膜直後には結晶成長の核がほとんどなく、固相での結晶化は困難であるが、溶融再結晶化によれば、少数の結晶核が形成されてのち、溶融して、結晶成長が主体となって高速で再結晶化が進む。
【0025】
また、本発明の記録層(4)は、溶融再結晶化による結晶と、固相でのアニールによる結晶とは反射率が異なるため混在するとノイズの原因となる。そして、実際のオーバーライト記録の際には、消去部は溶融再結晶化による結晶となるため、初期化も溶融再結晶化により行なうのが好ましい。このとき、記録層を溶融するのは局所的、かつ1ミリ秒程度以下の短時間に限る。溶融領域が広かったり、溶融時間あるいは冷却時間が長すぎると、熱によって各層が破壊されたり、プラスチック基板表面が変形したりするためである。このような熱履歴を与えるには、波長600〜1000nm程度の高出力半導体レーザー光を、長軸100〜300μm、短軸1〜3μmに集束して照射し、短軸方向を走査軸として、1〜10m/sの線速度で走査することが望ましい。同じ集束光でも円形に近いと溶融領域が広すぎ、再非晶質化が起き易く、また、多層構成や基板へのダメージが大きく好ましくない。
【0026】
初期化が溶融再結晶化によって行なわれたことは以下のようにして確認できる。すなわち、該初期化後の媒体に、直径約1.5μmより小さいスポット径に集束された記録層を溶融するにたる記録パワー(Pw)の記録光を、直流的に一定線速度で照射する。案内溝がある場合は、その溝もしくは溝間からなるトラックにトラッキングサーボ及びフォーカスサーボをかけた状態で行なう。
【0027】
その後、同じトラック上に消去パワー(Pe)(≦Pw)の消去光を直流的に照射して得られる消去状態の反射率が、全く未記録の初期状態の反射率とほとんど同じであれば、該初期化状態は溶融再結晶状態と確認できる。なぜなら、記録光照射により記録層は一旦溶融されており、それを消去光照射で完全に再結晶化した状態は、記録光による溶融と消去光による再結晶化の過程を経ており、溶融再結晶化された状態にあるからである。なお、初期化状態の反射率Rini と溶融再結晶化状態Rcryの反射率がほぼ同じであるとは、(Rini−Rcry)/{(Rini +Rcry)/2}で定義される両者の反射率差が20%以下であることを言う。通常、アニール等の固相結晶化だけでは、その反射率差は20%より大きい。
【0028】
このような本発明の記録層(4)は図1に示すように、第1の保護層(3)と第2の保護層(5)の間にはさみ込まれた構成となって基板(1)表面(溝形成面)に設けられる。ここで第1の保護層(3)は主として、記録時の高温による基板(1)表面の変形を防止するのに有効である。また第2の保護層(5)は記録層(4)と反射層(2)の相互拡散を防止し、記録層(4)の変形を抑制しつつ、反射層(2)へ効率的に熱を逃すという機能を併せ持つ。
【0029】
保護層(3)及び(5)の材料としては、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができるが、本発明者は種々の材料を検討した結果、上記観点および本発明の記録層(4)を構成する材料との整合性を考慮して、ZnSとSiO2の混合物が最も好ましいと考えている。なお、この材料に限らず、上記酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。
【0030】
保護層の機能等について、もう少し詳述する。
本発明の層構成は、急冷構造と呼ばれる層構成の一種に属する。急冷構造は、放熱を促進し、記録層再凝固時の冷却速度を高める層構成を採用することで、非晶質マーク形成のときの再結晶化の問題を回避しつつ、高速結晶化による高消去比を実現する。このため第1の保護層(3)の膜厚は、5nm以上30nm以下とする。5nmより薄いと、記録層溶融時の変形等によって破壊されやすく、また、放熱効果が大きすぎて記録に要するパワーが不必要に大きくなってしまう。
【0031】
本発明の、第1の保護層(3)の膜厚は、繰返しオーバーライトにおける耐久性に大きく影響し、特にジッタの悪化を抑制する上でも重要である。膜厚が30nmより厚い場合には、記録時に、第2の保護層(5)の記録側と、反射層(2)側とで温度差が大きくなり、保護層の両側における熱膨張差から、保護層自体が非対称に変形しやすくなる。この繰返しは、保護層内部に微視的塑性変形を蓄積させ、ノイズの増加を招くので好ましくない。上記のような本発明の記録層材料を用いると、最短マーク長0.3μm以下の高密度記録において低ジッタを実現できるが、本発明者の検討によれば、高密度記録を実現するために短波長のレーザーダイオード(例えば、波長410nm以下)を用いる場合には、上記急冷構造の層構成についても、一層の留意が必要になる。特に、波長が500nm以下、開口数NAが0.55以上の小さな集束光ビームを用いた1ビームオーバーライト特性の検討において、マーク幅方向の温度分布を平坦化することが、高消去比及び消去パワーマージンを広く取るために重要であることが分かっている。
【0032】
この傾向は、波長390〜420nm、NA=0.85前後の光学系を用いた、DVR対応の光学系においても同様である。このような光学系を用いた高密度マーク長変調記録においては、特に熱伝導特性の低いものを第2の保護層(5)として用いる。好ましくはその膜厚を7nm以上25nm以下とする。いずれの場合にも、その上に高熱伝導率な保護層を設けることで、高速記録時に熱が急激に逃げず、かつ熱傾斜ができていることから高速記録が可能となる。
【0033】
反射層(2)は、とりわけ高熱伝導率の材料とすることにより、消去比及び消去パワーマージンを改善できる。検討によれば、広い消去パワー範囲において、本発明の記録層が持つ良好な消去特性を発揮させるには、単に膜厚方向の温度分布や時間変化のみならず、膜面方向(記録ビーム走査方向の垂直方向)の温度分布をできるだけ平坦化できるような層構成を用いるのが好ましい。
【0034】
また、本発明者は、光記録媒体の層構成を適切に設計することにより、媒体中のトラック横断方向の温度分布を平坦にすることで、溶融して再非晶質化されることなく、再結晶化することのできる幅を広げ、消去率及び消去パワーマージンを広げることを試みた。
【0035】
一方、熱伝導率が低く、ごく薄い第1の保護層(3)を介して、記録層(4)から極めて高熱伝導率の反射層(2)への放熱を促進させるために第1の保護層(3)を2層にしたことで、記録層における温度分布が平坦になることがわかった。第2の保護層(5)の熱伝導率を高くしても放熱効果は促進されるが、あまり放熱が促進されると、記録に要する照射パワーが高くなる、すなわち、記録感度が著しく低下してしまう。
【0036】
本発明においては第1の保護層(3)を2層にし、記録層(4)側には低熱伝導率の保護層を用いるのが好ましい。低熱伝導率の薄い保護層を用いることにより、記録パワー照射開始時点の数nsec〜数10nsecにおいて、記録層(4)から反射層(2)への熱伝導に時間的な遅延を与え、その後に反射層(2)への放熱を促進することができるため、放熱により必要以上に記録感度を低下させることがない。従来知られている、SiO2、Ta2O5、Al2O3、AlN、SiN等を主成分とする保護層材料は、それ自身の熱伝導率が高すぎて、単体で使用することは好ましくないが、第1の保護層の2層の内、反射層側にこの熱伝導率の高く、しかも放熱層としてAg合金との相性からAlNを形成することで、高速で記録が可能となる。
【0037】
まず、記録時にはZnSSiO2の低熱伝導率層を用いて記録し、熱を逃がす際に、直接金属ではなく熱傾斜層として熱伝導率が高いAlN層を用いることで熱も急冷させることができるので、記録感度を悪くせずに、高速記録が可能な記録メディアが製作可能となる。
【0038】
図3には、膜厚比(AlN膜厚/ZnSSiO2膜厚)と記録できる線速および記録感度を示した。
モジュレーションが50%以上得られると、結晶とアモルファスの反射率差が急激に大きく取れ、かつ記録再生特性の良い許容範囲(エラーが106台となる領域)になる領域である。また記録パワーは青紫色LDでNA=0.85にしてビーム径(1/e2)で0.4μm近傍にすると媒体面でパルス8mW程度が最大出射パワーとなることから記録感度が8mW以下でモジュレーションが50%以上と結晶とアモルファスとの差が大きく取れることが必要となる。
【0039】
膜厚比(AlN膜厚/ZnSSiO2膜厚)が1/5(0.2)以上で記録できる線速(記録パワー8mW以下、モジュレーション50%以上)が急激に高速で記録でき、しかもAlNを形成しないメディアに比較して記録線速が約2倍早く記録可能となっている。
また、膜厚比(AlN膜厚/ZnSSiO2膜厚)が1/2(0.5)以上で急激に記録感度が悪くなり、記録パワーを入力したにもかかわらず記録線速が急激に減少した。
【0040】
すなわち、第1の保護層の2層の膜厚比(AlN膜厚/ZnSSiO2膜厚)は1/5以上1/2以下が記録感度が良く(8mW以下)線速が急激に早く記録できる範囲であった。
一方、反射層における放熱は、反射層の厚みを厚くしても達成できるが、反射層の厚みが300nmを超えると、記録層膜面方向よりも膜厚方向の熱伝導が顕著になり、膜面方向の温度分布改善効果が得られない。また、反射層自体の熱容量が大きくなり、反射層、ひいては記録層の冷却に時間がかかるようになって、非晶質マークの形成が阻害される。
【0041】
最も好ましいのは、高熱伝導率の反射層を薄く設けて横方向への放熱を選択的に促進することである。従来用いられていた急冷構造は、膜厚方向の1次元的な熱の逃げにのみ注目し、記録層から反射層に早く熱を逃すことのみを意図しており、この平面方向の温度分布の平坦化に充分な留意が払われていなかった。
【0042】
なお、本発明の、いわば「第1の保護層での熱伝導遅延効果を考慮した超急冷構造」は、本発明に係る記録層に適用すると、従来のGeTe−Sb2Te3記録層に比べて一層効果がある。なぜなら、本発明の記録層はTm近傍での再凝固時の結晶成長が再結晶化の律速になっているからである。Tm近傍での冷却即速度を極限まで大きくして、非晶質マーク及びそのエッジの形成を確実かつ明確なものとするには、超急冷構造が有効であり、かつ、膜面方向の温度分布の平坦化で、もともとTm近傍で高速消去可能であったものが、より高消去パワーまで確実に再結晶化による消去を確保できるからである。
【0043】
本発明においては、第2の保護層(5)の材料としては熱伝導特性が低い方が望ましいが、その目安は1×10−3pJ/(μm・K・nsec)である。しかしながら、このような低熱伝導率材料の薄膜状態の熱伝導率を直接測定するのは困難であり、代わりに、熱シミュレーションと実際の記録感度の測定結果から目安を得ることができる。好ましい結果をもたらす低熱伝導率の第2の保護層材料としては、ZnS、ZnO、TaS2又は希土類硫化物のうちの少なくとも一種を50mol%以上90mol%以下含み、かつ、融点又は分解点が1000℃以上の耐熱性化合物とを含む複合誘電体が望ましい。
【0044】
より具体的にはLa、Ce、Nd、Y等の希土類の硫化物を60mol%以上90mol%以下含む複合誘電体が望ましい。あるいは、ZnS、ZnOもしくは希土類硫化物の組成の範囲を70〜90mol%とすることが望ましい。
【0045】
これらと混合されるべき、融点又は分解点が1000℃以上の耐熱化合物材料としては、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ho、Er、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Si、Ge、Pb等の酸化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。
【0046】
特に、ZnSと混合されるべき材料としてはSiO2が望ましく、本発明ではこの組み合わせが最適であると考えている。また第1の保護層(3)はZnSSiO2とAlNの2層にすることが良い、この第1の保護層の膜厚が30nmより厚いとマーク幅方向の温度分布の充分な平坦化効果が得られないため、30nm以下とする。好ましくは25nm以下とする。5nm未満では、第1の保護層部での熱伝導の遅延効果が不充分で、記録感度低下が著しくなり好ましくない。第1の保護層の厚さは、記録レーザー光の波長が600〜700nmでは15nm〜25nmが好ましく、波長が350〜600nmでは5〜20nmが好ましく、より好ましくはは5〜15nmである。
なお本発明においては、上記のように第1、第2の保護層ともZnSとSiO2を混合したものとしているが、このように同じ材料にすると、製造上のコスト低減の面からも有利である。
【0047】
次に、反射層(2)について説明する。
本発明においては、非常に高熱伝導率で300nm以下の薄い反射層(2)を用いて、横方向の放熱効果を促進するのが特徴である。一般には薄膜の熱伝導率はバルク状態の熱伝導率と大きく異なり、小さくなっているのが普通である。特に40nm未満の薄膜では成長初期の島状構造の影響で熱伝導率が1桁以上小さくなる場合があり好ましくない。さらに、成膜条件によって結晶性や不純物量が異なり、これが同じ組成でも熱伝導率が異なる要因になる。
【0048】
本発明において良好な特性を示す高熱伝導率の反射層(2)を規定するために、反射層(2)の熱伝導率は直接測定することも可能であるが、その熱伝導の良否を電気抵抗を利用して見積もることができる。金属膜のように電子が熱もしくは電気伝導を主として司る材料においては熱伝導率と電気伝導率は良好な比例関係があるためである。薄膜の電気抵抗はその膜厚や測定領域の面積で規格化された抵抗率値で表わす。体積抵抗率と面積抵抗率は通常の4探針法で測定でき、JIS K 7194によって規定されている。本法により、薄膜の熱伝導率そのものを実測するよりもはるかに簡便かつ再現性の良いデータが得られる。
【0049】
本発明において好ましい反射層(2)の特性としては、体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下であり、より好ましくは20nΩ・m以上100nΩ・m以下である。体積抵抗率20nΩ・m未満の材料は薄膜状態では実質的に得にくい。体積抵抗率150nΩ・mより体積抵抗率が大きい場合でも、例えば300nmを超える厚膜とすれば面積抵抗率を下げることはできるが、本発明者の検討によれば、このような高体積抵抗率材料で面積抵抗率のみ下げても、充分な放熱効果は得られなかった。厚膜では単位面積当たりの熱容量が増大してしまうためと考えられる。また、このような厚膜では成膜に時間がかかり、材料費も増えるため製造コストの観点から好ましくない。さらに、膜表面の微視的な平坦性も悪くなってしまう。好ましくは、膜厚300nm以下で面積抵抗率0.2以上0.9Ω/□以下が得られるような低体積抵抗率材料を用いる。0.5Ω/□が最も好ましい。
また、Al合金の反射層の好ましい膜厚は100以上300nm以下である。
【0050】
本発明に適した材料は以下のとおりである。
例えば、Cuを0.3重量%以上5.0重量%以下含有するAg−Cu系合金である。特に、ZnSとSiO2を混合し、AlNの2層の保護層に対しては、Cuを0.5重量%以上4.0重量%以下含有するAg−Cu系合金が、耐食性、密着性、高熱伝導率のすべてをバランス良く満足する反射層として望ましい。
また、Siを0.3重量%以上0.8重量%以下、Pdを0.3重量%以上1.2重量%以下含有するAg−Pd−Cu系合金も有効である。
またAl合金でも熱伝導率は良いが、製膜後の表面性が悪くAg合金の方が高密度記録に適している。
また、ZnSとSiO2を混合したものを主成分とし、AlNの2層とした第1の保護層(3)に対しては、Cuを0.5原子%以上0.8原子%以下とするAgCu合金が、耐食性、密着性、高熱伝導率のすべてをバランス良く満足する反射層として望ましい。
上記Ag合金を反射層として用いる場合、好ましい膜厚は150nm以上300nm以下である。150nm未満では純Agでも放熱効果は不充分である。300nmを超えると、熱が水平方向より垂直方向に逃げて、水平方向の熱分布改善に寄与しないし、反射層そのものの熱容量が大きく、却って記録層の冷却速度が遅くなってしまう。また、膜表面の微視的な平坦性も悪くなる。
【0051】
さらに、AgにTi、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnを0.2原子%以上5原子%以下含むAg合金も望ましい。経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはPdが好ましい。上記Ag合金を反射層として用いる場合、好ましい膜厚は30nm以上200nm以下である。30nm未満では純Agでも放熱効果は不充分である。200nmを超えると、熱が水平方向より垂直方向に逃げて、水平方向の熱分布改善に寄与しないし、不必要な厚膜は生産性を低下させる。また、膜表面の微視的な平坦性も悪くなる。
【0052】
本発明者は、上記Alへの添加元素、Agへの添加元素は、その添加元素濃度に比例して、体積抵抗率が増加することを確認している。ところで、不純物の添加は一般的に結晶粒径を小さくし、粒界の電子散乱を増加させて熱伝導率を低下させると考えられる。添加不純物量を調節することは、結晶粒径を大きくすることで材料本来の高熱伝導率を得るために必要である。なお、反射層は通常スパッタ法や真空蒸着法で形成されるが、ターゲットや蒸着材料そのものの不純物量もさることながら、成膜時に混入する水分や酸素量も含めて全不純物量を2原子%以下とする必要がある。このためにプロセスチャンバの到達真空度は1×10-3Pa以下とすることが望ましい。また、10-4Paより悪い到達真空度で成膜するなら、成膜レートを1nm/秒以上、好ましくは10nm/秒以上として不純物が取り込まれるのを防ぐことが望ましい。
【0053】
あるいは、意図的な添加元素を1原子%より多く含む場合は、成膜レートを10nm/秒以上として付加的な不純物混入を極力防ぐことが望ましい。成膜条件は不純物量とは無関係に結晶粒径に影響を及ぼす場合もある。例えば、AgにCuを2原子%程度混入した合金膜は、結晶粒の間に非晶質相が混在するが、結晶相と非晶質相の割合は成膜条件に依存する。また、低圧でスパッタするほど結晶部分の割合が増え、体積抵抗率が下がり、熱伝導率が増加する。膜中の不純物組成あるいは結晶性は、スパッタに用いる合金ターゲットの製法やスパッタガス(Ar、Ne、Xe等)にも依存する。このように、薄膜状態の体積抵抗率は金属材料、組成のみによっては決まらない。高熱伝導率を得るためには、上記のように、不純物量を少なくするのが望ましいが、一方で、AlやAgの純金属は耐食性や耐ヒロック性に劣る傾向があるため、両者のバランスを考慮して最適組成が決まる。
【0054】
さらなる高熱伝導と高信頼性を得るために反射層を多層化することも有効である。このとき、少なくとも1層は全反射層膜厚の50%以上の膜厚を有する上記低体積抵抗率材料として実質的に放熱効果を司り、他の層が耐食性や保護層との密着性、耐ヒロック性の改善に寄与するように構成される。より具体的には、金属中最も高熱伝導率および低体積抵抗率であるAgはSを含む保護層との相性が悪く、繰返しオーバーライトした場合の劣化がやや速いという傾向がある。また、高温高湿の加速試験環境下で腐食を生じやすい傾向がある。そこで、低体積抵抗率材料としてAg及びAg合金を用い、上部保護層との間に界面層としてAlを主成分とする合金層を1nm以上100nm以下設けることも有効である。厚さを5nm以上とすれば、層が島状構造とならず均一に形成されやすい。
【0055】
さらにAg合金反射層を用いる場合、Agは比較的相互拡散しやすい組み合わせであるので、Ag表面を1nmより厚く酸化して界面酸化層を設けることがいっそう好ましい。界面酸化層が5nm、特に10nmを越えるとそれが熱抵抗となり、本来の趣旨である極めて放熱性の高い反射層としての機能が損なわれるので好ましくない。反射層の多層化は、高体積抵抗率材料と低体積抵抗率材料を組み合わせて所望の膜厚で所望の面積抵抗率を得るためにも有効である。合金化による体積抵抗率調節は、合金ターゲットの使用によりスパッタ工程を簡素化できるが、ターゲット製造コスト、ひいては媒体の原材料比を上昇させる要因にもなる。従って、純Alや純Agの薄膜と上記添加元素そのものの薄膜を多層化して所望の体積抵抗率を得ることも有効である。層数が3層程度までであれば、初期の装置コストは増加するものの、個々の媒体コストはかえって抑制できる場合がある。反射層を複数の金属膜からなる多層反射層とし、全膜厚を40nm以上300nm以下とし、多層反射層の厚さの50%以上が体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下の金属薄膜層(多層であっても良い)とするのが好ましい。
【0056】
Ag合金を反射層に用いる場合はAlNがZnSSiO2の間に形成されているのでZnS直接だと硫化するので信頼性にも効果がある。
単なる放熱層の多層よりも効果があるのは、図4に示す様に、反射層と保護層であるZnSSiO2の熱伝導率が中間で反射層よりも透過率があり、製膜時のデポレートがとれるAlNを反射層と記録層の間に形成することである、しかも膜厚比(AlN膜厚/反射層膜厚)と記録できる線速(Pw≦8mW & モジュレーション≧50%)および記録感度(50%モジュレーションが得られる記録パワー(mW))を、図4に示す様に、反射層とAlN膜厚比が0.2以上とすると、記録できる線速が0.1以下のほぼ倍以上と高速に記録できる。この効果は熱伝導率の良いAlN膜厚を限定することで、さらに熱伝導率の高い金属であるAl合金やAg合金へと熱の伝導をうまく処理できることを意味している。また、膜厚比を0.8より大きくすると急激に記録感度が悪くなるので、モジュレーションがとれなくなる。
以上から反射層とAlNの膜厚比を0.2から0.8にすることで記録感度も良好で高速で記録可能なメディアができる。
【0057】
カバー層(7)を設ける構成(図1参照)で、高NAの対物レンズを用いる場合、0.3mm以下の厚さ、より好ましくは0.06〜0.20mmの厚さが要求されるため、シート状であることが好ましい。材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、光学特性、コストの点で優れるポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。上記透明シートを用いて薄型基板を形成する方法としては、紫外線硬化性樹脂、あるいは透明な両面粘着シートを介して、透明シートを貼りつける方法が挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂を保護層上に塗布してこれを硬化させて薄型基板を形成してもよい。
【0058】
ハードコートについては、紫外線硬化樹脂で鉛筆硬度でH以上で傷をつけられない硬さとディイスクの面振れやチルト等の機械特性を調整するために10μm以下を形成する。
紫外線硬化樹脂として、紫外線硬化樹脂を用いる、たとえば三菱レーヨンのMH7617N(製品名)を1μm形成することでホコリや傷に強くなる。通常MO等で形成されているハードコートの膜厚は5μm以上である、この程度膜厚を厚くすると膜厚ムラ等が生じやすいので本発明では5μm未満の膜厚を形成することで膜厚ムラを減少させかつ、表面硬さを保ち機械特性は面振れやチルトを悪くしない膜厚で形成した。
【0059】
表1にハードコート膜厚とディスクのジッタ特性(内周、中周、外周)を示した。ハードコートはスピンコートで塗布するため、最外周で膜厚が厚くなるために、ハードコートの膜厚が6μm(設定)で外周のジッタ特性が9%以上と(クロック−データ)悪くなる。
ハードコートが5μm(設定)がジッタ特性で9%以下になる限界である。ハードコートは粘性によっても塗り方が変わるが、5μm以下を均一に塗るには70cps程度塗布する必要がある。なお下限であるが、0.5μm以下ではハードコート膜として機械的強度が不足して機能しないことがわかった。
【0060】
【表1】
測定位置:内周(r24mm)、中周(r40mm)、外周(r58mm)
【0061】
図2は、図1の保護基板(7)に代わって、保護コート層(6)を介して、もう1枚光記録媒体を下の光記録媒体と鏡像関係になるように貼り合わせたものである。
下の光記録媒体の基板(1)、反射層(2)、第1の保護層(3)、記録層(4)、第2の保護層(5)に対応して、基板(1’)、反射層(2’)、第1の保護層(3’)、記録層(4’)、第2の保護層(5’)よりなり、材料、各層の厚さも同じにされる。
このようにすると、単に光記録媒体を保護できるだけではなく、記録容量を2倍にすることができる。
【0062】
次に、本発明の他の特徴について説明する。
図5に平均溝幅をトラックピッチで割った値に対して、高速記録13m/s、最小マーク長さ0.160μmで記録したときのモジュレーションを示した。トラックピッチは0.33μmで溝記録である。比(平均溝幅をトラックピッチで割った値)が0.3以上でモジュレーションが50%を超える。該比が0.3以上でモジュレーションが急激に大きくなる。モジュレーションが50%以上得られると、結晶とアモルファスの反射率差が急激に大きく取れ、かつ記録再生特性の良い許容範囲(エラーが106台なる領域)になる領域である。また比(平均溝幅をトラックピッチで割った値)が0.6以上になるとランドの幅が狭くなりスタンパ形成する際にランドの幅変動が大きくなり、トラッキングが不安定でかからなかった。したがって、本発明では比(平均溝幅をトラックピッチで割った値)を0.3以上0.5以下で行なうことで安定したトラッキングで、モジュレーションも50%以上あるので記録再生特性も良好な特性が得られた。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
トラックピッチ0.32μm、比(平均溝幅0.15をトラックピッチで割った値0.32)を0.46とし、厚さ1.1mm、直径120mmのディスク状ポリカーボネート基板に、反射層(AgCu)120nm、第1保護層としてAlNを5nm、(ZnS−SiO2)を12nm厚、記録層(AglIn3Sb70Te23Ge3)を12nm厚、第2の保護層(ZnS・SiO2)を120nm厚、順次、枚葉スパッタ装置にて成膜し、さらに変性アクリル性接着剤(日東電工社製、商品名:DA8310−A50)で60μのポリカーボネートカバー層を設けるとともに、該ディスクの入射側にハードコートとして(三菱レーヨン社製、商品名:MH7617N)を1μm厚に形成し、最終厚み1.2mmの本発明による相変化型光ディスクを作製した。メディア構成は図1に示すとおりである。
評価は15m/s、線密度0.13μm/bit、405nm、NA=0.85で評価した。
記録パワー6mW、消去パワー3mWでマルチパルスで記録した(先頭パルス幅0.3T、マルチパルス幅0.3T、オフパルス0.8T)。マルチパルスオフパルスはボトムパワー0.2mWまで冷却した。
その結果モジュレーション65%、ジッタ6.9%と良好な特性を示した。
【0064】
比較例1
トラックピッチ0.32μm、比(平均溝幅0.15をトラックピッチで割った値0.32)を0.46とし、厚さ1.1mm、直径120mmのディスク状ポリカーボネート基板に、反射層(AgCu)140nm、第1保護層として(ZnS−SiO2)を12nm厚、記録層(Ag1In3Sb70Te23Ge3)を12nm厚、第2の保護層(ZnS・SiO2)を120nm厚、順次、枚葉スパッタ装置にて成膜し、さらに変性アクリル性接着剤(日東電工社製、商品名:DA8310−A50)で60μのポリカーボネートカバー層を設けるとともに、該ディスクの入射側にハードコートとして(三菱レーヨン社製、商品名:MH7617N)を1μm厚に形成し、最終厚み1.2mmの相変化型光ディスクを作製した。
実施例と同じ条件で記録しようとしたが、15m/sでは記録ができなかった。
【0065】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明より明らかなように、本発明の請求項1に記載の光記録媒体において、反射層と記録層の間の保護層を急冷構造するためにAlNをZnSSiO2の2層構成とし、さらに、反射層と記録層間の2層保護層の膜厚比を1/2以下であり1/5以上としたので、記録感度を悪くせず急冷構造にして高速記録で高密度記録できるという効果がある。
また、本発明の光記録媒体において、反射層と記録層間の保護層の一つであるAlNの膜厚が反射層膜厚の0.20倍以上0.80倍以下であることで、記録感度を悪くせず急冷構造にして高速記録で高密度記録できるという効果がある。
また、本発明の請求項2に記載の光記録媒体において、ハードコートを形成することで、基板の反りを矯正するだけでなく、ゴミ等が付着した場合ごみをふけることやキズがつきにくくできるという効果がある。
また、本発明の請求項3に記載の光記録媒体において、ハードコートの膜厚を5μm未満に形成することで、基板の反りを矯正するだけでなく、ハードコート自体の膜厚を減少させられ、ゴミ等が付着した場合ごみをふけることやキズがつきにくくできるという効果がある。
また、本発明の請求項4に記載の光記録媒体において、基板の平均溝幅をトラックピッチの0.3以上0.6以下とすることでGe、Sb、Teを主たる構成元素とした相変化記録層で高速、高密度記録が可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に適用される光記録媒体の層構成の一例を示した断面図である。
【図2】本発明に適用される光記録媒体の層構成の他の例を示した断面図である。
【図3】膜厚比と記録できる速度及び記録感度の関係を示した図である。
【図4】膜厚比と記録できる速度及び記録感度の関係を示した他の図である。
【図5】平均溝幅に対するモジュレーションを示した図である。
【符号の説明】
1 基板
1’ 基板
2 反射層
2’ 反射層
3 第1の保護層
3’ 第1の保護層
4 記録層
4’ 記録層
5 第2の保護層
5’ 第2の保護層
6 保護コート層又は接着層
7 カバー層
Claims (4)
- 光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体において、該光記録媒体は、基板上に反射層、第1の保護層、記録層、第2の保護層をこの順序で積層した構成であり、該反射層はAg合金よりなり、該第1保護層がZnSとSiO 2 の混合物層とAlNの2層とからなり、該記録層はGe、Sb、Teを主たる構成元素とし、該該第2の保護層はZnSとSiO2の混合物よりなり、該第2の保護層に接着層とカバー層が構成され、該反射層の膜厚が30〜200nmであり、該第1保護層の膜厚が5〜30nmであり、該記録層の膜厚が5〜100nmであり、該第1保護層のAlN層と該第1保護層のZnSとSiO 2 の混合物層との膜厚比(AlN層の膜厚/ZnSとSiO 2 の混合物層の膜厚)が1/5以上、1/2以下であり、且つAlN層が反射層側に形成されたことを特徴とする光記録媒体。
- 前記カバー層にハードコートを形成したことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
- 前記ハードコートの膜厚が1μm以上、5μm未満であることを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体。
- 前記基板が、グルーブの幅の平均がトラックピッチの0.3以上、0.5以下の溝形状を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光記録媒体。
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